(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017459
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】バラ科果実の冷凍品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23B 7/04 20060101AFI20220118BHJP
A23B 7/06 20060101ALI20220118BHJP
A23B 7/005 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A23B7/04
A23B7/06
A23B7/005
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179572
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2018091978の分割
【原出願日】2018-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】船津 宏之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 尚美
【テーマコード(参考)】
4B169
【Fターム(参考)】
4B169AA01
4B169AA04
4B169CA02
4B169CA04
4B169HA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バラ科果実の冷凍品を解凍した製品のカット断面からの褐変の抑制、果肉の硬度や風味の維持、並びに夾雑物や異物の除去・検品作業の容易化・負担軽減を同時に達成することができる、バラ科果実の冷凍品の製造方法を提供する。
【解決手段】大きさが40~80mmのバラ科果実を1/8~半分にカットするカット工程と、1/8~半分にカットされた前記バラ科果実に80~100℃で5~20分間の加熱処理を施すブランチング工程と、前記加熱処理された前記バラ科果実に冷却処理を施す冷却工程と、前記冷却処理された前記バラ科果実に凍結処理を施す凍結工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ科果実の冷凍品の製造方法であって、
大きさが40~80mmのバラ科果実を1/8~半分にカットするカット工程と、
1/8~半分にカットされた前記バラ科果実に80~100℃で5~20分間の加熱処理を施すブランチング工程と、
前記加熱処理された前記バラ科果実に冷却処理を施す冷却工程と、
前記冷却処理された前記バラ科果実に凍結処理を施す凍結工程とを含むことを特徴とする、バラ科果実の冷凍品の製造方法。
【請求項2】
前記ブランチング工程において、1/8~半分にカットされた前記バラ科果実に80~100℃で7~13分間の加熱処理を施す、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ブランチング工程において、前記バラ科果実の果肉内部温度が80℃以上に達温するように加熱処理を施す、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程において、前記加熱処理された前記バラ科果実に5~30℃で1~30分間の冷却処理を施す、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記凍結工程において、前記冷却処理された前記バラ科果実に-95~-20℃で1~100分間の凍結処理を施す、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記バラ科果実が、桃、ナシ、洋ナシ、リンゴ、スモモ、アンズ、プラム、及びビワからなる群より選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記バラ科果実が黄桃又は白桃である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記バラ科果実が黄桃又は白桃であり、該バラ科果実の冷凍品の解凍後の果肉硬度が0.4kg以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記バラ科果実の冷凍品が、その解凍後における果肉の褐変が防止されたものである、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラ科果実の冷凍品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果物は、従来、それ自体で生食されるほか、缶詰やびん詰の加工食品として出荷され、食されてきたが、近年では、生活スタイルの変化(女性の社会進出、単身世帯の増加等)により食の簡便化・多様化が進展し、手軽で簡便に果物の美味しさを味わうことができる製品、例えば、フルーツミックスしたヨーグルトやゼリーのようなフルーツミックス加工食品の形態で食される機会が増えてきた。このフルーツミックス加工食品には様々な種類の果物が用いられているが、その中でも黄桃や白桃等のバラ科果実は特に人気が高く、最近では多くのフルーツミックス加工食品に添加されている。このバラ科果実を加工食品に添加することにより、美味しさや栄養的価値を付与するだけでなく、各種の彩り、独特の食感、果肉の存在感等を付与することができるため、食品業界において、加工食品用のバラ科果実に対する需要は今後ますます増大していくことが予想される。
【0003】
バラ科果実の1つである黄桃を例にとって説明すると、黄桃は明るい黄色~オレンジ色の鮮やかな色沢を有しており、果肉が硬くしまっていて独特の歯ごたえがあり加熱しても煮崩れが少ないという特徴がある。また、桃特有の香味を有するものの甘味がそれほど強くないという特徴を有しているため、加工食品の味全体に対してそれほど強く影響するものでないことから、多くの加工食品に利用されており、需要が非常に高い。
【0004】
現在、我が国において加工食品に利用される業務用の黄桃は、アメリカ、中国、欧州等の海外からの輸入加工品がほとんどを占めている。この黄桃の輸入加工品は、従来、現地で黄桃をカットし、皮を剥き、種を取る等の必要な加工処理を施した後、缶に詰めてシロップを注入し、脱気・密封処理を行い、脱気・密封した缶詰を加熱殺菌、冷却することによって製造された、シロップ漬けの缶詰の荷姿の形で輸入されてきた。しかし、缶詰であると当然のことながら、缶、シロップが使用されることから原料コストが高くなり、また、容器が缶であるため嵩張り、しかもシロップ中で保存されているため重量があることから輸送に不便で、輸送コストもかかるという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題に対処するため、近年では、黄桃等のバラ科果実を冷凍処理した冷凍品、特に個別急速冷凍(IQF:Individual Quick Frozen)した冷凍品を包装袋に入れてパウチ詰した荷姿で輸入されるケースが増加する傾向にある。これにより原料コストや輸送コストを従来よりも低く抑えることができ、全体のコストダウンを図ることができるという利点がある。
【0006】
急速冷凍の冷凍方法の1つである個別急速冷凍は、最大氷結晶生成温度帯(-5~-1℃)を素早く一気に凍結させるため、従来の冷凍技術のように、細胞内の水分が膨張して、膨張した氷の結晶が細胞を内側から破壊させることがなく、そのため、食品の細胞破壊、品質の劣化をさせることなく、食品を長期保存することが可能となる。したがって、IQF冷凍品は、食感、色調、風味、硬度、栄養等を冷凍前とあまり変わらない状態で維持することができるという利点がある。
【0007】
従来、黄桃等のバラ科果実の冷凍品の製造は、一例を挙げると、1)原料である黄桃等を所望する大きさにカットする工程(皮剥き、種取り、果柄取り等の処理を適宜含む。)、2)殺菌を目的として、85~90℃で2~3分間、黄桃等の果肉を加熱する加熱殺菌工程、3)加熱殺菌した果肉を冷却する工程、4)冷却した果肉を凍結させる工程の手順で行われている。
【0008】
しかしながら、黄桃等のバラ科果実の冷凍品は、その解凍後にカット断面の果肉が褐変(browning)しやすいという問題がある。果肉が褐変する理由の1つとしては、黄桃等のバラ科果実の果肉にはポリフェノール酸化酵素が含まれており、その生果に対して皮剥き、すりおろし、カット等の処理を行って組織を傷つけると、ポリフェノール酸化酵素が活性化されて、果肉中に含まれるクロロゲン酸やタンニン等のポリフェノール類と反応して、メラニンという褐色物質が生成されることが知られている。そして、果肉の褐変が進行すると、外観や風味が損なわれるため、製品価値は著しく低下することになる。そのため、果肉が褐変した果実は、果実の外観や風味が重要視される加工食品への利用は難しくなる。なお、桃のポリフェノール酸化酵素については、活性を担う複数のアイソザイムの存在が報告されている。
【0009】
そこで、バラ科果実の冷凍品を製造するにあたり、上記のような事態を避けるため、果肉の褐変対策を講じる必要がある。果肉が褐変する前記機序を踏まえると、主として冷凍野菜を作るときの変色・変質を抑える方法として知られているブランチング(加熱処理)を、凍結前のバラ科果実に対して施し、それによりポリフェノール酸化酵素を失活させて褐変を抑える方法が、褐変対策として考えられる。
【0010】
しかしながら、この方法を実際に実施しようとする場合、適切な加熱条件を設定することは容易でなかった。なぜなら、加熱温度が低かったり、加熱履歴が少なかったりすると褐変を十分に防止することができず、他方、加熱温度が高かったり、加熱履歴が過剰になったりすると果肉が柔らかくなりすぎて、解凍後の果肉の食感、食味の劣化を招来することになるからである。そのため、これらの不都合が生じない範囲で加熱処理を行う必要がある。しかしながら、実際には、褐変の十分な抑制と解凍後の果肉硬度の保持を同時に両立させることができる加熱条件の設定は容易ではなかった。
【0011】
また、前記加熱条件を設定しようとする場合には、被加熱品の大きさを考慮する必要がある。例えば、黄桃の果肉にカット処理を施して、ダイスカット等の比較的小さいカット品にしてから加熱すると、加熱が過剰になりやすく、その結果、前述したように果肉硬度の低下を招来することになる。またそれに加えて、本来果肉が有していた特有の香りや味の流出が大きくなり、果実本来の風味が損なわれるという問題を引き起こすことにもなる。
【0012】
したがって、果肉の褐変を抑制し、なおかつ、果肉の硬度や風味を維持することができる加熱条件を、果実の大きさを考慮しつつ適切に設定することは、実際には非常に困難なことであった。
【0013】
しかしながら、消費者サイドから見ると、果実加工品に対して、生の果実に近い外観、硬度、食感、風味等を求める消費者が近年増えているため、上記のような問題が解消されたバラ科果実の冷凍品を製造する方法の確立が早急に求められている。
【0014】
従来、果物の褐変抑制に関連した発明がいくつか報告されており、例えば特許文献1~3を挙げることができる。特許文献1には、果実から取り出した褐変しやすい果肉(マンゴー、パパイヤ、洋なし、バナナ、アボガド、イチゴなど)を、褐変させず、また食味を劣化させることなく保存し、かつ解凍するときにも褐変しにくい果実の冷凍保存方法が開示されており、その内容として、果実を予め低温に冷却する予冷却工程と、予冷却した果実から果肉を取り出す工程と、 取り出した果肉を液糖に浸漬して及び/又は取り出した果肉を不活性ガスの充填した状態で密閉容器に封入する封入工程と、 この密閉容器に封入した果肉を凍結させる冷凍保存工程とからなる果肉の冷凍保存方法が開示されている。
【0015】
特許文献2には、バナナ、マンゴー、パパイヤなど、皮を剥くと果肉が褐変しやすい青果物の皮を剥いて冷凍果肉を製造する方法が開示されており、その内容として、青果物を冷凍する冷凍工程と、この冷凍した青果物の果皮を温熱源によって解凍する解凍工程と、解凍した果皮を剥皮する剥皮工程とからなる冷凍果肉の製造方法が開示されている。
【0016】
特許文献3には、密封袋又は容器で長期間冷蔵保存された後、開封しても、短時間での褐変現象が発生せず、食感、風味(食味)、色彩も新鮮な状態を保持するための皮剥き芯抜きカットりんごの鮮度保持方法が開示されており、その内容として、りんごを洗浄又は消毒し、りんごの皮を剥き芯を抜き、0.02~0.05%L-アスコルビン酸の酸化防止剤溶液に浸漬するか、又は、該酸化防止剤溶液を吹き付け、次いで所定の大きさにカットしてカットりんごとし、引き続き、所定の鮮度保持溶液に浸漬するか、又は、該鮮度保持溶液を吹き付け、りんごの果肉表面に付着した過剰の該鮮度保持溶液を除去した後、カットりんごと脱酸素剤とをガス不透過性の袋又は容器に一緒に収納し、該袋又は容器内に1~99vol%の炭酸ガスを含む窒素ガスを充填し、該袋又は容器を密封し、密封した該袋又は容器を1~10℃で冷蔵保存する方法が開示されている。
【0017】
ところで、黄桃等のバラ科果実の冷凍品を製造する場合、前述した果肉の褐変の問題に加えて、夾雑物や異物の混入という問題もある。バラ科果実の冷凍品を製造するには、通常、原料である果実を所望する大きさにカットし、皮、種、果柄等を取り除いて後続の加工工程に送るが、このような皮、種、果柄等の夾雑物が含まれたまま、後続の加工工程に送られることがある。そして、夾雑物が含まれたままバラ科果実の果肉の加工処理が行われると、その冷凍品中に夾雑物が残留してしまうこととなる。そうなると、食品の品質を低下させることになり、食品の品質の観点から好ましくない。
【0018】
また、バラ科果実の冷凍品の製造工程においては、その工程中の多くの段階で、毛髪、虫、プラスチック、金属、紙、石、ガラス、木片等の異物が混入する恐れがある。このような異物が混入した状態で加工が行われると、冷凍品中に異物が混入した状態で出荷されることになり、食品衛生上の観点から好ましくない。
【0019】
そこで、上記のような夾雑物及び異物を冷凍品の製造工程で除去する必要があるが、この除去方法としては、冷凍品の製造ライン中に配置された作業者が目視によって夾雑物及び異物を選別し、除去するという方法が通常採用されている。
【0020】
しかしながら、冷凍品の製造において、夾雑物や異物の除去作業は決して容易な作業ではない。特にダイスカット等の小さいカット品の場合は、夾雑物や異物を見落とす危険性が高くなり、検品作業において作業負担が大きくなる。
【0021】
従来、食品中に含まれる夾雑物や異物を高精度に除去する異物及び/又は夾雑物の検出方法が特許文献4に開示されており、その内容として、食品と、該食品に含まれる異物及び/又は夾雑物とに光を照射することによって得られる反射光の可視光及び近赤外光の吸収スペクトルを測定し、当該吸収スペクトルに対して2次微分処理を行い、上記食品と上記異物及び/又は夾雑物との間で異なる2次微分スペクトルを示す波長帯を選定し、上記食品について、上記波長帯の2次微分分光画像を作成することによって、上記食品に含まれる異物及び/又は夾雑物を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2013-5755号公報
【特許文献2】特開2011-229415号公報
【特許文献3】特開2006-191824号公報
【特許文献4】特開2004-301690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
前述したように、黄桃や白桃等のバラ科果実の冷凍品を製造するにあたっては、前記のような問題が存在しており、従来の技術ではバラ科果実の冷凍品を解凍した製品のカット断面からの褐変の抑制、果肉の硬度や風味の維持、並びに夾雑物や異物の除去・検品作業の容易化・負担軽減を同時に達成することは困難であった。そのため、バラ科果実の冷凍品の製造について、これらの技術的課題を解決した新たな製造方法が求められていた。
【0024】
こうした状況に鑑み、本発明の課題は、バラ科果実の冷凍品を解凍した製品のカット断面からの褐変の抑制、果肉の硬度や風味の維持、並びに夾雑物や異物の除去・検品作業の容易化・負担軽減を同時に達成することができる、バラ科果実の冷凍品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、前述の課題を解決するために、原料となるバラ科果実の大きさ、カットの仕方(どの程度の大きさ・形状にカットするか)、及びカットした果実の加熱条件を総合的、体系的に検討した結果、原料となる所定の大きさのバラ科果実を1/8~半分にカットし、かつ、加熱温度及び加熱時間をそれぞれ所定の範囲に設定することで、上記課題を解決できることを見出し、さらにはその他好ましい条件等について検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0026】
かくして本発明は、以下のものを提供する。
[1]バラ科果実の冷凍品の製造方法であって、
大きさが40~80mmのバラ科果実を1/8~半分にカットするカット工程と、
1/8~半分にカットされた前記バラ科果実に80~100℃で5~20分間の加熱処理を施すブランチング工程と、
前記加熱処理された前記バラ科果実に冷却処理を施す冷却工程と、
前記冷却処理された前記バラ科果実に凍結処理を施す凍結工程とを含むことを特徴とする、バラ科果実の冷凍品の製造方法。
[2]前記ブランチング工程において、1/8~半分にカットされた前記バラ科果実に80~100℃で7~13分間の加熱処理を施す、前記[1]に記載の製造方法。
[3]前記ブランチング工程において、前記バラ科果実の果肉内部温度が80℃以上に達温するように加熱処理を施す、前記[1]に記載の製造方法。
[4]前記冷却工程において、前記加熱処理された前記バラ科果実に5~30℃で1~30分間の冷却処理を施す、前記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記凍結工程において、前記冷却処理された前記バラ科果実に-95~-20℃で1~100分間の凍結処理を施す、前記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記バラ科果実が、桃、ナシ、洋ナシ、リンゴ、スモモ、アンズ、プラム、及びビワからなる群より選択される、前記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記バラ科果実が黄桃又は白桃である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記バラ科果実が黄桃又は白桃であり、該バラ科果実の冷凍品の解凍後の果肉硬度が0.4kg以上である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記バラ科果実の冷凍品が、その解凍後における果肉の褐変が防止されたものである、前記[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、バラ科果実の冷凍品を解凍した製品の褐変の抑制、果肉の硬度や風味の維持、並びに夾雑物や異物の除去・検品作業の負担軽減を同時に達成することができる、バラ科果実の冷凍品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、前述したように、大きさが40~80mmのバラ科果実を1/8~半分にカットするカット工程と、1/8~半分にカットされた前記バラ科果実に80~100℃で5~20分間の加熱処理を施すブランチング工程と、前記加熱処理された前記バラ科果実に冷却処理を施す冷却工程と、前記冷却処理された前記バラ科果実に凍結処理を施す凍結工程とを含むことを特徴とする、バラ科果実の冷凍品の製造方法である。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0029】
(カット工程)
本発明によりバラ科果実の冷凍品を製造するには、まず、バラ科果実の冷凍品の原料となるバラ科果実を用意する。バラ科果実は、バラ科植物由来の果実のことをいい、具体例としては、黄桃、白桃等の桃、ナシ、洋ナシ、リンゴ、スモモ、アンズ、プラム、ビワ、かりん、マルメロ、苺、梅、サクランボ等を挙げることができる。好ましくは、黄桃、白桃等の桃、ナシ、洋ナシ、リンゴ、スモモ、アンズ、プラム、又はビワであり、より好ましくは、黄桃、白桃等の桃である。各果実の品種は特に問わない。
【0030】
前記バラ科果実は、大きさ(直径ないし長径)が40~80mm、好ましくは50~75mmの範囲にあるものを使用する。この範囲外であると本発明の効果が十分に得られなくなる恐れがある。
【0031】
用意したバラ科果実は、通常、まず水で洗浄し、種子を除去したその後、本発明の特徴の1つである、バラ科果実の1/8~半分へのカットを行う。このカットは、ナイフ等を用いて手作業で行ってもよいし、果実をカットするための各種装置を用いて自動的にカットしてもよい。本発明では、前記バラ科果実をどのようにカットするか、その多数の可能性の中から、前記大きさのバラ科果実を1/8~半分にカットする工程を構成要素として採用したことにより、夾雑物や異物の除去・検品作業の負担軽減を図ることが可能となり、また本発明で設定した加熱条件に対して褐変の抑制効果を十分に発揮させることが可能になる。すなわち、1/8よりも小さくカットすると、夾雑物や異物の除去・検品作業の負担が増大し、加熱が過剰になる恐れがあり、他方、半分よりも大きくカットすると、歩留まりや作業効率が低下し、加熱が不十分となる恐れがある。
本発明において、「1/8~半分にカット」とは、カット前の果肉(すなわち、果実から種を除去した果肉部分)の体積の1/8から半分の範囲内の大きさにカット(分割)することを意味する。また、8等分、6等分、4等分、2等分等の等分割だけでなく、1/8カットと1/2カットが混在する場合や、1/4カットと1/2カットが混在する場合等、カットサイズが互いに異なる場合も含まれる。しかし、ブランチング後の果肉硬度をできるだけ均質にできる、等分割のカットが好ましい。等分割後の各果肉の大きさは完全に同一でなくてもよく、大きさの誤差が10%以内、8%以内、5%以内又は3%以内でよい。
カットの態様は限定されない。バラ科果実を3~8個にカットする場合は、くし形切り、輪切り、乱切り等が例示でき、好ましくはくし形切りである。また、1/8カットの場合は、まずくし形切りに4分割(好ましくは4等分)したあと、当該4分割のカット方向と直交する方向に2分割(好ましくは2等分)するカットする態様でもよい。
カット後のバラ科果実の寸法は、1/8~半分にカットされたものであれば特に限定はないが、好ましくは、厚さについては一番薄い部分の厚さが8mm以上、より好ましくは9mm以上である。
【0032】
本カット工程に後続するブランチング工程に先だって、そのブランチング(加熱処理)の効果が十分に得られるようにするため、予め、種(核)取り、果柄取り、花留まりの除去、皮剥き、夾雑物や異物の選別・除去等の処理を済ませておくことが望ましい。なお、これらの処理は通常果実のカット後に行うが、いずれの段階で行うかは本発明では限定されない。また、これらの各処理を行う順序も特に問わない。例えば、種取りの処理は、スプーン状のカッターを有する器具等を用いて手作業で行うか、種取り作業を機械化した種取り装置を用いて行うことができる。また、種子片、果柄の残り、花留まり、皮残り等の夾雑物、変色部分、傷み部分、さらには、毛髪、虫、プラスチック、金属、紙、石、ガラス、木片等の異物の選別、除去については、製造ラインに配置された作業者の目視により選別して除去するほか、自動で除去する専用の機械や器具を用いて行うことができる。また、皮剥きは、例えば、5%程度の希薄水酸化ナトリウム溶液に浸漬した後、手剥きや専用の機械を用いて行うことができる。なお、皮を剥きやすくするため、皮剥きする前に、バラ科果実を蒸して、その表面に水蒸気を当てる処理等を施してもよい。
【0033】
(ブランチング工程)
前記カット工程でカットされたバラ科果実は、次いで、ブランチング工程でのブランチング(加熱処理)に供される。ブランチングは、80~100℃、好ましくは90~100℃で、5~20分間、好ましくは7~13分間行うようにする。本発明の特徴の1つは、ブランチングについて、解凍後の果肉の硬度を維持しつつ、褐変を抑制することができる温度域及び時間域について詳細に検討を行い、その検討結果に基づき、所定の温度域及び時間域に加熱条件を最適化した点にある。ブランチングの温度、時間が上記設定範囲の下限よりも低いと、褐変の抑制効果が不十分となり、一方、上記設定範囲の上限よりも高いと、果肉の硬度が低下して食感や食味が損なわれる。ブランチングは、通常、上記温度範囲にある水浴中の熱水に浸漬させることによって行うが、水蒸気を当てるスチームブランチング等でもよく、そのやり方は特に限定されない。
【0034】
また、ブランチングは、カットされたバラ科果実の果肉内部温度が80℃以上、好ましくは85~95℃に達温するように加熱処理を施してもよい。例えば、ブランチングをバラ科果実の周囲温度が時間とともに上昇するような条件下で行う場合、例えば、水に浸漬し加熱して水の温度を上昇させていくような雰囲気下で行う場合は、バラ科果実の中心温度が80℃以上となる状態が1~15分間、好ましくは85~95℃となる状態が1~5分間継続されるようにして行うのがよい。
【0035】
(冷却工程)
前記ブランチング処理を施したバラ科果実は、冷凍効率を高めるため、直ちに冷却させる。冷却させる際の条件・方法は特に限定されず、例えば、5~30℃で1~30分間、水中又は大気雰囲気で冷却させる。
【0036】
(凍結工程)
冷却した後、バラ科果実を凍結させて、本発明の目的物であるバラ科果実の冷凍品を得る。凍結させる際の条件・方法は必ずしも限定されないが、通常、-95~-20℃の雰囲気温度中で1~100分間程度放置して凍結処理を施す。果実の硬度や風味等の維持という点からは、特にー30~-20℃で20~70分間、好ましくは30~40分間の個別急速冷凍を行うことが好ましい。また、凍結させるには、IQF装置、エアブラスト、ブロック凍結装置等の凍結装置を使用することができるが、個別急速冷凍が好ましいことを考慮するとIQF装置の使用が好ましい。凍結中は、バラ科果実製品の間に空気が循環するように、製品間に空間を設けるようにすることが好ましい。製品間に空間がないと、冷気を高速で吹き付けたとしても、製品内部が緩慢凍結する恐れがある。また、病原微生物の増殖等を防ぐため、バラ科果実製品の温点を可能な限り素早く冷却することが重要である。凍結が完了した後に凍結装置から取り出す際は、暖気や湿気への暴露を最低限に抑えるため、冷凍倉庫に素早く移動させ、また、食感や風味の低下を防ぐ点から、雰囲気温度が-18℃以下で、かつ、温度変化が最小となるように保存することが望ましい。
【0037】
前記製造方法によって得られたバラ科果実の冷凍品は、任意の解凍方法で解凍することにより、果実本来の硬度が十分に維持された、褐変の無いバラ科果実の解凍品が得られる。バラ科果実が黄桃又は白桃の場合は、本発明で得られた冷凍品の解凍後の好ましい果肉硬度は0.4kg以上である。より好ましくは0.5kg以上、さらに好ましくは0.6kg以上である。果肉硬度が0.4kg未満であると、食感が悪くなり、また、更なる加工中に果肉が崩れたり、加工後に形状を維持できなくなる恐れがあるため好ましくない。解凍方法は適宜選択すればよく、冷蔵庫内での解凍、冷凍品を室温で放置する自然解凍、水に浸漬することによる解凍、電子レンジによる解凍等が例示される。
【0038】
(果肉硬度の測定方法)
本発明において、果肉硬度の測定方法は特に限定されない。例えば、プランジャー等を貫入させて硬度を測定する等の破壊的方法、外部からの圧迫に対する抵抗力を測定する等の非破壊的方法が挙げられ、好ましくは非破壊的方法を採用する。測定器具は特に限定されず、市販の器具を用いてよいが、非破壊的測定方法を採用する場合、例えば、株式会社藤原製作所製の果実硬度計を使用してよく、同社製品のうち測定対象の果実に適したものを選択すればよい(例えば、KM型、MT型、又はCF型)。果肉硬度の測定タイミングは、冷凍果実が十分に解凍されていれば任意であるが、好ましくは、室温放置開始から一定時間経過したものを測定対象とし、例えば、室温放置開始から6時間、12時間、18時間、24時間、又は30時間経過後、好ましくは24時間経過したものを測定対象とする。
【0039】
(褐変確認方法)
本発明の効果の確認として、冷凍果実の内部が空気に触れた際に褐変するかを確認することができる。その方法は特に限定されないが、例えば、得られた冷凍バラ科果実(例えば、黄桃又は白桃)を、中心部が空気中に露出するようにカットし、カット品を室温放置して自然解凍し、解凍後一定時間(例えば、6時間、12時間、18時間、24時間、又は30時間)経過後に、解凍品の空気中に露出された断面の褐変の有無を目視により確認して、褐変の有無を評価することができる。
別法として、得られた冷凍バラ科果実(例えば、黄桃又は白桃)を、中心部が空気中に露出するようにカットし、カット品の断面にグアイヤコールを噴霧し、噴霧品を室温放置して自然解凍し、一定時間後に噴霧面の褐変の有無を目視により確認して、褐変の有無を評価してもよい。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
原料として、黄桃(長径:55~75mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、ハーフカットして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一であり、約12~18mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを10分間、88℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は82℃であった。ブランチング後、20℃で4分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-25℃で70分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、黄桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-24℃であった。
得られた黄桃の冷凍品を、果肉内部が露出するように半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた黄桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実中央(略円形である果実の中心付近)の表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。なお、果実硬度計の押し付けによって解凍果実が変形しないよう、ゴム製の台に解凍果実を載置して硬度の測定を行った(以下の実施例及び比較例も同様)。以上の結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2)
原料として、黄桃(長径:50~75mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、ハーフカットして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一であり、約13~20mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを9分間、90℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は83℃であった。ブランチング後、20℃で4分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-30℃で40分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、黄桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-24℃であった。
得られた黄桃の冷凍品を、果肉内部が露出するように半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた黄桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実中央(略円形である果実の中心付近)の表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例3)
原料として、白桃(長径:50~70mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、ハーフカットして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一であり、約9~14mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを12分間、98℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は92℃であった。ブランチング後、20℃で10分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-30℃で20分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、白桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-19℃であった。
得られた白桃の冷凍品を、果肉内部が露出するように半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた白桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実中央(略円形である果実の中心付近)の表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。以上の結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1)
原料として、白桃(長径:50~70mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、ハーフカットして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一であり、約10~15mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを4分間、98℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は70℃であった。ブランチング後、20℃で10分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-30℃で20分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、白桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-19℃であった。
得られた白桃の冷凍品を、果肉内部が露出するように半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた白桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実中央(略円形である果実の中心付近)の表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。以上の結果を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
原料として、白桃(長径:50~70mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、ハーフカットして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一であり、約11~15mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを26分間、98℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は90℃であった。ブランチング後、20℃で10分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-30℃で20分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、白桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-19℃であった。
得られた白桃の冷凍品を、果肉内部が露出するように半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた白桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実中央(略円形である果実の中心付近)の表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。以上の結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
表1からわかるように、実施例1~3は、解凍後の褐変が認められず、かつ、原料である黄桃又は白桃が本来有する硬度が十分に維持されたものであった。一方、比較例1は、解凍後の褐変が認められ、比較例2は、実施例1~3に比べて柔らかすぎるものであった。
【0048】
(実施例4)
原料として、黄桃(長径:55~75mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、くし形切りの1/8カットにして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一で約12~17mmであり、一番薄い種回りの厚さは約9~10.5mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを7分間、85℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は81℃であった。ブランチング後、20℃で4分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-25℃で70分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、黄桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-24℃であった。
得られた黄桃の冷凍品を、果肉内部が露出するようにさらに半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた黄桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実の一番薄い種回りの表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。以上の結果を表2に示す。
【0049】
(実施例5)
原料として、黄桃(長径:50~75mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、くし形切りの1/8カットにして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一で約11~16mmであり、一番薄い種回りの厚さは約9~11mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを10分間、85℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は83℃であった。ブランチング後、20℃で4分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-30℃で40分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、黄桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-27℃であった。
得られた黄桃の冷凍品を、果肉内部が露出するようにさらに半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた黄桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、該解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実の一番薄い種回りの表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。以上の結果を表2に示す。
【0050】
(実施例6)
原料として、白桃(長径:50~70mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、くし形切りの1/8カットにして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一で約10~15mmであり、一番薄い種回りの厚さは約9~10.5mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを13分間、90℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は85℃であった。ブランチング後、20℃で10分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-30℃で20分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、白桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-22℃であった。
得られた白桃の冷凍品を、果肉内部が露出するようにさらに半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた白桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実の一番薄い種回りの表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。以上の結果を表2に示す。
【0051】
(比較例3)
原料として、白桃(長径:50~70mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、くし形切りの1/8カットにして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一で約10~14mmであり、一番薄い種回りの厚さは約9~10mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを2分間、90℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は75℃であった。ブランチング後、20℃で10分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-30℃で20分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、白桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-21℃であった。
得られた白桃の冷凍品を、果肉内部が露出するようにさらに半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた白桃の冷凍品を室温雰囲気に24時間放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実の一番薄い種回り表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。以上の結果を表2に示す。
【0052】
(比較例4)
原料として、白桃(長径:50~70mm)を入手した。洗浄後、手作業により種取り、果柄取り等を行い、くし形切りの1/8カットにして、5%水酸化ナトリウム溶液に浸漬することにより剥皮した。カット後の果肉の厚さ(中心から表面にかけての厚さ)はほぼ均一で約11~16mmであり、一番薄い種回りの厚さは約9~11mmであった。そして、剥皮した果実の皮の残り、打ち身、核の残り等を除去した。その後、ブランチングを24分間、95℃の温水に浸漬して行った。ブランチング後の果実内部平均温度は92℃であった。ブランチング後、20℃で10分間、水中に曝すことにより冷却した。次いで、IQF装置を使用して、-30℃で20分間、凍結処理を施し、その後、目視によって選別、異物を除去することにより、白桃の冷凍品を得た。凍結処理後の該冷凍品の平均表面温度は-23℃であった。
得られた白桃の冷凍品を、果肉内部が露出するようにさらに半分にくし形切りし、それを室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍後24時間後の解凍品の褐変の有無を目視により評価した。また、得られた黄桃の冷凍品を室温雰囲気に放置して自然解凍し、解凍品の果肉硬度を、果実硬度計(KM-5、株式会社藤原製作所製)を解凍果実の一番薄い種回り表面に押し付けて測定し、平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0053】
【0054】
表2からわかるように、実施例4~6は、解凍後の褐変が認められず、かつ、原料である黄桃又は白桃が本来有する硬度が十分に維持されたものであった。一方、比較例3は、解凍後の褐変が認められ、比較例4は、実施例1~3に比べて柔らかすぎるものであった。