(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174590
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ヒートシンク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20221116BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080481
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】516025450
【氏名又は名称】株式会社ゴフェルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 敦志
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5F136BA04
5F136BA14
5F136BA22
5F136BA23
5F136BA38
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA82
5F136GA01
5F136GA08
5F136GA13
5F136GA14
5F136GA17
(57)【要約】
【課題】
発熱量の大きな電子部品等であっても好適に放熱することができる冷却効率の高いヒートシンクを提供する。
【解決手段】
一の方向(x軸方向)に並べられた複数の放熱フィン3で構成されるフィン列L
1~L
15が、前記一の方向(x軸方向)に非平行な他の方向(y軸方向)に繰り返し設けられたヒートシンク1において、同じフィン列L
1~L
15を構成する隣り合う放熱フィン3同士を非平行に配置するとともに、一のフィン列L
1~L
15を構成する放熱フィン3と、前記一のフィン列L
1~L
15に隣り合う他のフィン列L
1~L
15を構成する放熱フィン3とが、前記他の方向(y軸方向)において重なり合わないように配置した。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向に並べられた複数の放熱フィンで構成されるフィン列が、前記一の方向に非平行な他の方向に繰り返し設けられたヒートシンクであって、
同じフィン列を構成する隣り合う放熱フィン同士が非平行に配置されるとともに、
一のフィン列を構成する放熱フィンと、前記一のフィン列に隣り合う他のフィン列を構成する放熱フィンとが、前記他の方向において重なり合わないように配置された
ことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
放熱フィンが板状を為す請求項1記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記一の方向が、x軸に沿った方向であり、
前記他の方向が、x軸に直交するy軸に沿った方向である
請求項1又は2記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記一の方向が、円周に沿った方向であり、
前記他の方向が、前記円周の径方向である
請求項1又は2記載のヒートシンク。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載のヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を冷却するため等に用いられるヒートシンクと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を構成する電子部品のなかには、CPUやパワートランジスタのように、発熱するものがある。これらの電子部品に熱が溜まると、その電子部品が誤作動するおそれがあるだけでなく、最悪の場合、その電子部品が故障するおそれもある。このため、発熱する電子部品にヒートシンクを取り付けて放熱することが行われている。
【0003】
ヒートシンクは、これまでに各種のものが提案されている。例えば、特許文献1の
図1に示されるように、板状を為す複数の放熱フィン(同図におけるフィン31)を所定間隔で平行に配置したヒートシンクが知られている。電子部品で発生した熱は、このヒートシンクに伝わった後、放熱フィンから空気中に放出される。
【0004】
ヒートシンクによる冷却効率を高めるためには、放熱フィンの比表面積を広くした方が有利である。この点、これまでには、特許文献2の
図1に示されるように、複数の放熱フィン(同図におけるフィン部3)を横方向と縦方向とに二次元的に配列したヒートシンク(同図におけるコア部材4)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-140802号公報
【特許文献2】特開2013-239666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、電子部品の高性能化に伴い、特許文献1や特許文献2のように、複数の放熱フィンを配列したヒートシンクでも放熱しきれないような場合が生じるようになっている。例えば、CPUや、それを実装する電子基板は、その製造プロセスが同じであれば、クロック周波数が高くなればなるほど、消費電力が大きくなり、多く発熱するようになるところ、このようにクロック周波数が高く高性能な電子部品を如何に放熱するのかが課題となっている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、発熱量の大きな電子部品等であっても好適に放熱することができる冷却効率の高いヒートシンクを提供するものである。また、このヒートシンクの製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
一の方向に並べられた複数の放熱フィンで構成されるフィン列が、前記一の方向に非平行な他の方向に繰り返し設けられたヒートシンクであって、
同じフィン列を構成する隣り合う放熱フィン同士が非平行に配置されるとともに、
一のフィン列を構成する放熱フィンと、前記一のフィン列に隣り合う他のフィン列を構成する放熱フィンとが、前記他の方向において重なり合わないように配置された
ことを特徴とするヒートシンク
を提供することによって解決される。
【0009】
以下においては、説明の便宜上、前記一の方向(フィン列に沿った方向)を「列方向」と呼ぶことがある。これに対して、前記他の方向(フィン列を繰り返し設ける方向)を「横方向」と呼ぶことがある。
【0010】
上述した特許文献1や特許文献2のヒートシンクでは、隣り合う放熱フィンが平行に配されているため、
図1に示すように、一の放熱フィンの表面から輻射された熱(輻射熱)が、当該一の放熱フィンに隣り合う他の放熱フィンに垂直に入射するようになり、前記一の放熱フィンからの輻射熱が前記他の放熱フィンに吸収(吸熱)されやすくなっている。すなわち、輻射による冷却作用が、吸熱によって相殺されやすい構造となっている。
【0011】
これに対し、本発明のヒートシンクでは、
図2に示すように、同じフィン列を構成する放熱フィン同士が非平行に配されており、一の放熱フィンの表面から輻射された熱(輻射熱)が、当該一の放熱フィンに隣り合う他の放熱フィンに非垂直に入射(浅い入射角で入射)するか、或いは、前記一の放熱フィンに当たらずに逃げるようになる。加えて、隣り合うフィン列を構成する放熱フィン同士が横方向で重なり合わないように配されている。このため、前記一の放熱フィンからの輻射熱がその周囲の放熱フィンに吸収(吸熱)されにくくなっている。したがって、本発明のヒートシンクは、冷却効率が高く、発熱量の大きな電子部品等を冷却するのに好適に用いることができるものとなっている。
【0012】
本発明のヒートシンクにおいて、それぞれの放熱フィンの形態は、特に限定されず、ピン状等としてもよいが、板状とすることが好ましい。というのも、板状の放熱フィンを採用したヒートシンクでは、上述した問題(輻射による冷却作用が吸熱によって相殺される問題)がより顕著に表れるため、本発明のヒートシンクに係る構成を採用する意義が高まるからである。
【0013】
本発明のヒートシンクにおいて、放熱フィンは、上記の条件(同じフィン列を構成する隣り合う放熱フィン同士が非平行に配置され、且つ、隣り合う異なるフィン列を構成する放熱フィンが横方向で重なり合わない条件)を満たすのであれば、特に限定されない。このような条件を満たす放熱フィンの配置としては、例えば、以下のパターンが挙げられる。
【0014】
まず、複数の放熱フィンをx軸方向に沿って並べることによって構成したフィン列を、x軸に直交するy軸に沿った方向に繰り返し設けるパターンを挙げることができる。以下においては、このパターンで放熱フィンを配置したヒートシンクを、「直交座標配置型のヒートシンク」と呼ぶことがある。
【0015】
また、複数の放熱フィンを円周に沿って並べることによって構成したフィン列を、前記円周の径方向に繰り返し設けるパターンを挙げることもできる。以下においては、このパターンで放熱フィンを配置したヒートシンクを、「極座標配置型のヒートシンク」と呼ぶことがある。
【0016】
本発明のヒートシンクは、熱伝導性に優れた素材(金属等)を用いて製造される。本発明のヒートシンクは、別個に成形された放熱フィンを共通のベース部に固定(溶着や接着や嵌合等)することによって製造することもできるが、この場合には、放熱フィンとベース部との境界部分で熱が伝わりにくくなる。このため、本発明のヒートシンクは、放熱フィンとベース部とを一体的に連続させた構造とすることが好ましい。
【0017】
このような構造のヒートシンクは、例えば、共通の金属素材から放熱フィンとベース部とを削り出す切削加工によって製造することができる。また、金属用の三次元プリンタを用いることによっても製造することができる。さらに、型の構造がやや複雑にはなるものの、鋳造や鍛造によって製造することもできる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によって、発熱量の大きな電子部品等であっても好適に放熱することができる冷却効率の高いヒートシンクを提供することが可能になる。また、このヒートシンクの製造方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来のヒートシンクを、ベース部に垂直で且つフィン列を通る平面で切断した状態を示した断面図である。
【
図2】本発明のヒートシンクを、ベース部に垂直で且つフィン列を通る平面で切断した状態を示した断面図である。
【
図3】第一実施形態のヒートシンクを示した斜視図である。
【
図4】第一実施形態のヒートシンクを示した正面図である。
【
図5】第一実施形態のヒートシンクを示した背面図である。
【
図6】第一実施形態のヒートシンクを示した平面図である。
【
図7】第一実施形態のヒートシンクを示した底面図である。
【
図8】第一実施形態のヒートシンクを示した左側面図である。
【
図9】第一実施形態のヒートシンクを示した右側面図である。
【
図10】第一実施形態のヒートシンクを、
図4におけるY
1-Y
1面で切断した状態を示した断面図である。
【
図11】第一実施形態のヒートシンクを、
図4におけるY
2-Y
2面で切断した状態を示した断面図である。
【
図12】第二実施形態のヒートシンクを示した斜視図である。
【
図13】第二実施形態のヒートシンクを示した正面図である。
【
図14】第二実施形態のヒートシンクを示した背面図である。
【
図15】第二実施形態のヒートシンクを示した平面図である。
【
図16】第二実施形態のヒートシンクを示した底面図である。
【
図17】第二実施形態のヒートシンクを示した左側面図である。
【
図18】第二実施形態のヒートシンクを示した右側面図である。
【
図19】第二実施形態のヒートシンクを、
図13におけるY
3-Y
3面で切断した状態を示した断面図である。
【
図20】第二実施形態のヒートシンクを、
図13におけるX
1-X
1面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のヒートシンクの好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、2つの実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)を例に挙げて、本発明のヒートシンクを説明するが、本発明のヒートシンクの技術的範囲は、これらの実施形態で説明する構成に限定されない。本発明のヒートシンクには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0021】
1.第一実施形態のヒートシンク
まず、第一実施形態のヒートシンクについて説明する。第一実施形態のヒートシンクは、上述した「直交座標配置型のヒートシンク」と「極座標配置型のヒートシンク」とのうち、「直交座標配置型のヒートシンク」に該当するものとなっている。
【0022】
第一実施形態のヒートシンク1を、
図3~11に示す。
図3には斜視図を、
図4には正面図を、
図5には背面図を、
図6には平面図を、
図7には底面図を、
図8には左側面図を、
図9には右側面図をそれぞれ示す。また、
図10には、ヒートシンク1を
図4におけるY
1-Y
1面で切断した断面図を示し、
図11には、ヒートシンク1を
図4におけるY
2-Y
2面で切断した断面図を示す。
図3~11では、x軸、y軸及びz軸からなる直交座標系(xyz座標系)を表わしている。この直交座標系におけるx軸、y軸及びz軸の向きは、
図3~11で共通である。
【0023】
第一実施形態のヒートシンク1は、
図3に示すように、ベース部2と、ベース部2から突出して設けられた複数の放熱フィン3とを備えている。
図4に示すように、放熱フィン3は、一の方向(x軸方向)に並べられた複数の放熱フィン3で構成されるフィン列L
1~L
15を構成している。フィン列L
1~L
15は、前記一の方向(x軸方向)に非平行(垂直)な他の方向(y軸方向)に繰り返し配されている。
【0024】
それぞれのフィン列L1~L15を構成する放熱フィン3の数は、2個以上であれば、特に限定されない。しかし、それぞれのフィン列L1~L15を構成する放熱フィン3の数を少なくしすぎると、放熱フィン3を効率的に配置しにくくなり、ヒートシンク1の冷却効率を高めにくくなるおそれがある。一方、それぞれのフィン列L1~L15を構成する放熱フィン3の数を多くしすぎると、ヒートシンク1の製造が難しくなるおそれがある。このため、それぞれのフィン列L1~L15を構成する放熱フィン3の数は、通常、3~30個の範囲内とされ、好ましくは、5~20個の範囲内とされる。第一実施形態のヒートシンク1では、奇数番目のフィン列L1,L3,L5,L7,L9,L11,L13,L15を、それぞれ8個の放熱フィン3で構成しており、偶数番目のフィン列L2,L4,L6,L8,L10,L12,L14を、それぞれ7個の放熱フィン3で構成している。
【0025】
また、1つのヒートシンク1に設けるフィン列L1~L15の数(列数)は、2列以上であれば、特に限定されない。しかし、フィン列L1~L15の数を少なくしすぎると、放熱フィン3を効率的に配置しにくくなり、ヒートシンク1の冷却効率を高めにくくなるおそれがある。一方、フィン列L1~L15の数を多くしすぎると、ヒートシンク1の製造が難しくなるおそれがある。このため、1つのヒートシンク1に設けるフィン列L1~L15の数(列数)は、通常、3~50列の範囲内とされ、好ましくは、5~30列の範囲内とされる。第一実施形態のヒートシンク1において、フィン列L1~L15の数は、15列となっている。
【0026】
ベース部2と放熱フィン3とは、熱的に接触されている。このため、ベース部2(例えば、ベース部2における、放熱フィン3が設けられていない側の表面)を発熱部品(電子部品等)に対して熱的に接触させると、その発熱部品で発生した熱が、ベース部2を介して放熱フィン3に伝わり、それぞれの放熱フィン3から空気中に放出されるようになっている。これにより、発熱部品(電子部品等)に熱が蓄積されないようにして発熱部品(電子部品等)を冷却することが可能となっている。
【0027】
ただし、
図1を用いて既に説明したように、隣り合う放熱フィン3が平行に配されていると、一の放熱フィン3の表面から輻射された熱(輻射熱)が、当該一の放熱フィン3に隣り合う他の放熱フィン3に垂直に入射することで、ヒートシンクの冷却効率が低下するおそれがある。この点、第一実施形態のヒートシンク1では、
図10及び
図11に示すように、同じフィン列L
1~L
15(
図10ではフィン列L
7)を構成する放熱フィン3同士を非平行に配している。
【0028】
すなわち、同じフィン列L
1~L
15(
図10ではフィン列L
7)においては、ベース部2の表面(放熱フィン3が設けられる側の表面)に対して放熱フィン3が為す角度θ
1(
図10)を、放熱フィン3ごとに異ならせている。具体的には、ベース部2の両端部(x軸方向負側の端部及びx軸方向正側の端部)から、ベース部の中央部になるにつれて、角度θ
1が段階的に大きくなるようにしている。
【0029】
これにより、前掲の
図2に示すように、一の放熱フィン3の表面から輻射された熱(輻射熱)が、当該一の放熱フィン3に隣り合う他の放熱フィン3に非垂直に入射(浅い入射角で入射)するか、或いは、前記一の放熱フィン3に当たらずに逃げるようにすることができる。したがって、隣り合う放熱フィン3同士で放熱(輻射熱)と吸熱とが相殺されにくくして、ヒートシンク1の冷却効率を高めることができる。
【0030】
同じフィン列L1~L15において、一の放熱フィン3の角度θ1と、当該一の放熱フィン3の隣に配された他の放熱フィン3の角度θ1との間に、どの程度の差を設けるかは、特に限定されない。しかし、同じフィン列L1~L15で隣り合う放熱フィン3の角度θ1の差が小さすぎると、隣り合う放熱フィン3が平行に近い状態となり、上述した効果が奏されにくくなる。このため、同じフィン列L1~L15で隣り合う放熱フィン3の角度θ1の差は、5°以上に設定することが好ましい。同じフィン列L1~L15で隣り合う放熱フィン3の角度θ1の差は、10°以上とすることがより好ましく、15°以上とすることがさらに好ましい。
【0031】
ただし、同じフィン列L1~L15で隣り合う放熱フィン3の角度θ1の差を大きくしすぎると、同じフィン列L1~L15に配置できる放熱フィン3の数が少なくなり、ヒートシンク1の冷却効率を高めにくくなる。このため、同じフィン列L1~L15で隣り合う放熱フィン3の角度θ1の差は、40°以下とすることが好ましい。同じフィン列L1~L15で隣り合う放熱フィン3の角度θ1の差は、30°以下とすることがより好ましく、25°以下とすることがさらに好ましい。第一実施形態のヒートシンク1において、同じフィン列L1~L15で隣り合う放熱フィン3の角度θ1の差は、約20°に設定している。
【0032】
加えて、第一実施形態のヒートシンク1では、
図10及び
図11に示すように、一のフィン列L
1~L
15(
図10ではフィン列L
7、
図11では、フィン列L
8)を構成する放熱フィン3と、当該一のフィン列L
1~L
15の隣に配された他のフィン列L
1~L
15(
図10ではフィン列L
6、
図11では、フィン列L
7)を構成する放熱フィン3とが、横方向(y軸方向)で重なり合わないようにしている。換言すると、一のフィン列L
1~L
15(
図10の例ではフィン列L
7)を構成する放熱フィン3と、その隣の他のフィン列L
1~L
15(
図10の例ではフィン列L
6)を構成する放熱フィン3とが互い違いになるようにしている。
【0033】
これにより、隣り合うフィン列L1~L15間でも、放熱(輻射熱)と吸熱とが相殺されにくくする(一のフィン列L1~L15を構成する放熱フィン3から放出された輻射熱が、隣の他のフィン列L1~L15を構成する放熱フィン3に吸収されにくくする)ことができる。したがって、ヒートシンク1の冷却効率をさらに高めやすくなっている。
【0034】
ベース部2の形態は、特に限定されず、ブロック状等としてもよいが、第一実施形態のヒートシンク1においては、
図3に示すように、板状としている。ベース部2の正面視形状(z軸方向正側から見たときの形状)は、矩形となっている。また、それぞれの放熱フィン3の形態も、特に限定されず、ピン状等としてもよいが、第一実施形態のヒートシンク1においては、板状としている。放熱フィン3の先端部は、円弧状に湾曲させている。
【0035】
放熱フィン3の先端部を円弧状に形成したことによって、
図4に示すように、ヒートシンク1を放熱側(z軸方向正側)から見たときに、それぞれの放熱フィン3が重なり合う領域を狭くする(それぞれの放熱フィン3の広い範囲が露出するようにする)ことができる。したがって、放熱フィン3を密に配置しやすくなる(隣り合う放熱フィン3の間隔を狭くしやすくなる)。したがって、ヒートシンク1の冷却効率をさらに高めることができる。
【0036】
ところで、第一実施形態のヒートシンク1においては、既に述べたように、それぞれのフィン列L1~L15をx軸方向と平行に配するとともに、複数のフィン列L1~L15をy軸方向に繰り返し配したため、フィン列L1~L15の方向と、複数のフィン列L1~L15を繰り返し配する方向とが直交していた。しかし、フィン列L1~L15の方向と、複数のフィン列L1~L15を繰り返し配する方向とは、必ずしも直交させる必要はない。複数のフィン列L1~L15を繰り返し配する方向は、y軸に平行である必要はなく、y軸に対して傾斜させることも可能である。
【0037】
以上で述べた第一実施形態のヒートシンク1は、熱伝導性に優れた素材(金属等)を用いて製造される。具体的には、0℃における熱伝導率が200W・m-1・K-1以上の金属によってヒートシンク1を形成することが好ましい。これにより、ヒートシンク1の放熱性能を高めることができる。0℃における熱伝導率が200W・m-1・K-1以上の金属としては、アルミニウム(236W・m-1・K-1)や、銅(403W・m-1・K-1)や、銀(428W・m-1・K-1)等が例示される。
【0038】
第一実施形態のヒートシンク1は、例えば、別個に成形された放熱フィン3を共通のベース部2に固定(溶着や接着や嵌合等)することによって得ることができる。しかし、この場合には、放熱フィン3とベース部2との境界部分で熱が伝わりにくくなる。このため、ベース部2と放熱フィン3とを別体とする場合でも、フィン列L1~L15ごとにまとめて放熱フィン3を形成する等、放熱フィン3を複数個単位で一体的に形成し、境界部分ができるだけ少なくすることが好ましい。ベース部2と全ての放熱フィン3とを一体的に連続させた構造とすると、境界部分を完全に無くすこともできる。
【0039】
第一実施形態のヒートシンク1においても、その全体(ベース部2及び全ての放熱フィン3)を一体的に連続した状態で形成している。このような構造のヒートシンク1は、例えば、共通の金属素材からベース部2と放熱フィン3とを削り出す切削加工によって製造することができる。また、金属用の三次元プリンタを用いて金属材料を三次元的にプリントすることによっても製造することができる。さらに、鋳造や鍛造によって製造することもできる。
【0040】
2.第二実施形態のヒートシンク
続いて、第二実施形態のヒートシンクについて説明する。第二実施形態のヒートシンクは、上述した「直交座標配置型のヒートシンク」と「極座標配置型のヒートシンク」とのうち、「極座標配置型のヒートシンク」に該当するものとなっている。
【0041】
第二実施形態のヒートシンクについては、主に、上述した第一実施形態のヒートシンク(
図3~11)とは異なる構成の説明を行う。第二実施形態のヒートシンクで特に言及しない構成については、第一実施形態のヒートシンクで述べたものと同様の構成を採用することができる。
【0042】
第二実施形態のヒートシンク1を、
図12~20に示す。
図12には斜視図を、
図13には正面図を、
図14には背面図を、
図15には平面図を、
図16には底面図を、
図17には左側面図を、
図18には右側面図をそれぞれ示す。また、
図19には、ヒートシンク1を
図13におけるY
3-Y
3面で切断した断面図を示し、
図20には、ヒートシンク1を
図13におけるX
1-X
1面で切断した断面図を示す。
図12~20では、x軸、y軸及びz軸からなる直交座標系(xyz座標系)を表わしている。この直交座標系におけるx軸、y軸及びz軸の向きは、
図12~20で共通である。
【0043】
図12に示すように、第二実施形態のヒートシンク1も、第一実施形態のヒートシンク1(
図3)と同様、ベース部2と、ベース部2から突出して設けられた複数の放熱フィン3とを備えている。また、
図13に示すように、第二実施形態のヒートシンク1においても、一の方向に並べられた複数の放熱フィン3で構成されるフィン列L
1~L
5を、前記一の方向に非平行(垂直)な他の方向に繰り返し配している。ただし、第一実施形態のヒートシンク1(
図4)では、フィン列L
1~L
15の数が15列となっていたが、第二実施形態のヒートシンク1(
図13)では、フィン列L
1~L
5の数が5列となっている。
【0044】
さらに、上述した第一実施形態のヒートシンク1(
図4)は、それぞれのフィン列L
1~L
15を構成する放熱フィン3を、x軸方向に沿った直線上に配置するとともに、複数のフィン列L
1~L
15を、x軸方向に垂直な方向(y軸方向)に繰り返し配した「直交座標配置型のヒートシンク」となっていた。これに対し、第二実施形態のヒートシンク1は、
図13に示すように、それぞれのフィン列L
1~L
5を構成する放熱フィン3を、点Cを中心とする円周(同図における破線)に沿った曲線上に配置に配置するとともに、複数のフィン列L
1~L
5を、前記円周の径方向(点Cを通る直線に沿った方向)に繰り返し配した「極座標配置型のヒートシンク」となっている。
【0045】
このような「極座標配置型のヒートシンク」においては、中心Cに近いフィン列(例えば、
図13におけるフィン列L
1)よりも、中心Cから遠いフィン列(例えば、
図13におけるフィン列L
5)の方が、多くの放熱フィン3を配置することができる。第二実施形態のヒートシンク1では、内側(中心Cに近い側)から1~4番目までのフィン列L
1~L
4は、いずれも3個の放熱フィン3で構成しており、最も外側(中心Cから最も遠い側)のフィン列L
5は、6個の放熱フィン3で構成している。
【0046】
第二実施形態のヒートシンク1においても、同じフィン列L
1~L
5を構成する放熱フィン3が、隣同士で非平行となるようにしている。この点、上述した第一実施形態のヒートシンク1では、ベース部2の表面(放熱フィン3が設けられる側の表面)に対して放熱フィン3が為す角度θ
1(
図10)を放熱フィン3ごとに異ならせることで、同じフィン列L
1~L
15に属する放熱フィン3が隣同士で非平行となるようにしていた。
【0047】
これに対し、第二実施形態のヒートシンク1では、同じフィン列L
1~L
5に属する放熱フィン3であれば、ベース部2の表面(放熱フィン3が設けられる側の表面)に対して放熱フィン3が為す角度θ
2(
図19及び
図20)が同一となっている。例えば、フィン列L
5に属する放熱フィン3の角度θ
2は、約15°で一定となっている。しかし、同じフィン列L
1~L
5に属する放熱フィン3(例えばフィン列L
5に属する6個の放熱フィン3)は、花托に配置された花びらのように、点C(
図13)を中心とした回転対称に配置されているため、同じフィン列L
1~L
5で隣り合う放熱フィン3は、互いに非平行となっている。
【0048】
また、上述した第一実施形態のヒートシンク1では、
図10に示すように、一のフィン列L
1~L
15(
図10ではフィン列L
7)を構成する放熱フィン3と、当該一のフィン列L
1~L
15の隣に配された他のフィン列L
1~L
15(
図10ではフィン列L
6)を構成する放熱フィン3とが、横方向(y軸方向)で重なり合わないようにしていた。これに対し、第二実施形態のヒートシンク1では、
図13に示すように、一のフィン列L
1~L
5(例えばフィン列L
1)を構成する放熱フィン3と、当該一のフィン列L
1~L
5の隣に配された他のフィン列L
1~L
5(例えばフィン列L
2)を構成する放熱フィン3とが、フィン列L
1~L
5の径方向(点Cを通る直線に沿った方向)で重なり合わないようにしている。
【0049】
このため、第二実施形態のヒートシンク1では、
図13に示すように、ヒートシンク1を放熱側(z軸方向正側)から見たときに、内側のフィン列(例えばフィン列L
1)を構成する放熱フィン3の隙間から、その1つ外側のフィン列(例えばフィン列L
2)を構成する放熱フィン3が露出するように、一のフィン列L
1~L
5(例えばフィン列L
1)を構成する放熱フィン3と、当該一のフィン列L
1~L
5の隣に配された他のフィン列L
1~L
5(例えばフィン列L
2)を構成する放熱フィン3とが、互い違いに配された状態となっている。
【0050】
その他、上述した第一実施形態のヒートシンク1(
図3)では、ベース部2が、平面視矩形状を為す板状となっていたが、第二実施形態のヒートシンク1では、
図14に示すように、ベース部2が、平面視円形状を為す板状となっている。また、上述した第一実施形態のヒートシンク1(
図3)では、それぞれの放熱フィン3の先端部が円弧状に形成されていたが、第二実施形態のヒートシンク1では、
図13に示すように、それぞれの放熱フィン3の先端部が三角状に形成されている。
【0051】
このように、第二実施形態のヒートシンク1(極座標配置型のヒートシンク)でも、同じフィン列L1~L5を構成する隣り合う放熱フィン3同士を非平行に配置するとともに、一のフィン列L1~L5を構成する放熱フィン3と、当該一のフィン列L1~L5に隣り合う他のフィン列L1~L5を構成する放熱フィン3とを、フィン列L1~L5を繰り返し配置する方向において重なり合わないように配置することができる。このため、隣り合う放熱フィン3同士で放熱(輻射熱)と吸熱とが相殺されにくくして、ヒートシンク1の冷却効率を高めることが可能となっている。
【0052】
3.用途
本発明のヒートシンクは、発熱体を冷却する必要のある各種用途で用いることができる。なかでも、コンピュータ等の電子機器を構成する電子部品であって、発熱するもの(CPUや電源等)を冷却するのに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ヒートシンク
2 ベース
3 放熱フィン
L1~L15 フィン列