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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174625
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】空調制御システム及び空調設備
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20221116BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20221116BHJP
   F24F 8/90 20210101ALI20221116BHJP
【FI】
F24F7/007 B ZNM
F24F11/89
F24F8/90 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080545
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 貴弘
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD07
3L056BF06
3L260AB18
3L260BA32
3L260BA38
3L260CA17
3L260EA06
3L260FC23
(57)【要約】
【課題】空気質センサを用いた空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現すること。
【解決手段】空調設備に搭載されたセンサユニット50は、計測室MCを形成する筐体51と、計測室MCの検出領域DEに存在する微粒子を検出可能な微粒子センサ55と、計測室MC内の空気を攪拌させるファン58とを有している。キャリブレーションの準備を開始する場合には、ファン58を停止させてその状態を予め設定された待機時間が経過するまで維持する。この待機時間が経過したタイミングで、微粒子センサ55から受光量を取得し、この取得した受光量に基づいて補正値を決定する。空調設備は屋外の空気を取り込む換気機能を有しており、微粒子センサ55から取得される都度の受光量と、上記補正値を用いて補正された閾値とに基づいて換気モードを通常換気モード及び弱換気モードの何れとするかが決定される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置を制御する空調制御システムであって、
通気口が形成された筐体と、
前記筐体の所定領域に存在する微粒子を検出可能な微粒子センサと、
第1の状態及び当該第1の状態よりも前記所定領域に存在する微粒子が少なくなるように微粒子量を制御する第2の状態に切替可能な微粒子量制御手段と、
前記微粒子量制御手段が前記第1の状態となっている場合に、前記微粒子センサから取得した検出値と基準値とを比較する比較手段と
を備え、
前記比較手段による比較結果に基づいて所定の処理を実行する構成となっており、
前記微粒子量制御手段が前記第2の状態となっている状況下にて所定の条件が成立した場合に前記微粒子センサから検出値を取得し、当該取得した検出値に基づいて補正値を決定し、前記比較手段により比較対象とされる前記基準値及び前記検出値の何れかを前記補正値を用いて補正する補正手段を備えている空調制御システム。
【請求項2】
前記微粒子センサは、投光部と、当該投光部に前記所定領域を挟んで対向するように配設された受光部とを有する光学センサであり、前記投光部からの光が前記所定領域に存在する微粒子によって拡散されることで前記受光部に届く光の量が減少するように構成されている請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記微粒子量制御手段は、前記所定領域に存在する微粒子の前記筐体における前記所定領域とは異なる特定領域への移動を促し且つ他の微粒子の前記所定領域への移動を抑制することにより前記所定領域に存在する微粒子を減少させる構成となっている請求項1又は請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記筐体内の微粒子を撹拌可能な撹拌手段を有し、
前記微粒子量制御手段は、前記第1の状態においては前記撹拌手段を稼働させることで前記筐体内の微粒子を撹拌させる一方、前記第2の状態においては前記撹拌手段を停止させることで当該撹拌を抑える構成となっており、
前記所定領域は、前記筐体の底部から離れた位置に設定されている請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記撹拌手段を停止させてから所定時間が経過した場合に前記所定の条件が成立する構成となっており、
前記所定領域は、前記筐体の天井部及び底部のうち前記天井部側に偏倚した位置に設定されている請求項4に記載の空調制御システム。
【請求項6】
前記撹拌手段を停止させてから所定時間が経過した場合に前記所定の条件が成立する構成となっており、
前記微粒子センサは、投光部及び受光部を有する光学センサであり、
前記投光部の光軸は、横向きとなるように規定されている請求項4又は請求項5に記載の空調制御システム。
【請求項7】
前記筐体の前記通気口として、当該筐体へ空気が流入する流入口及び当該筐体から空気が流出する流出口を有し、
前記微粒子量制御手段は、前記流入口を覆う位置及び前記流入口を覆わない位置に移動可能な可動体を有し、
前記可動体が前記覆う位置に配置されることで前記流入口を通じた前記筐体内への微粒子の流入が不可となり、前記可動体が前記覆わない位置に配置されることで前記流入口を通じた前記筐体内への微粒子の流入が許容される構成となっており、
前記微粒子量制御手段は、前記第1の状態では前記可動体を前記覆わない位置に配置し、前記第2の状態では前記可動体を前記覆う位置に配置する請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の空調制御システム。
【請求項8】
前記可動体は空気の通過を不可とするシャッタである請求項7に記載の空調制御システム。
【請求項9】
前記可動体は空気の通過を許容する一方、前記微粒子の通過を不可とするフィルタである請求項7に記載の空調制御システム。
【請求項10】
前記筐体の前記通気口として、当該筐体へ空気が流入する流入口及び当該筐体から空気が流出する流出口を有し、
前記筐体内への空気の流入を促すファンを備え、
前記微粒子量制御手段は、空気の通過を許容する一方、前記微粒子の通過を不可とするフィルタを有し、前記微粒子量制御手段は、前記第1の状態では前記フィルタを前記流入口を覆わない位置に配置し、前記第2の状態では前記フィルタを前記流入口を覆う位置に配置する構成となっており、
前記フィルタが前記覆う位置に配置された状態であっても前記ファンを駆動させる請求項1又は請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項11】
前記微粒子量制御手段は、前記第2の状態となった場合に前記筐体内の微粒子を吸着する吸着手段を有している請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の空調制御システム。
【請求項12】
前記補正手段は、前記第2の状態となっている状況下にて前記微粒子センサから検出値を繰り返し取得し、繰り返し取得した検出値が所定の値となるように収束した場合に前記所定の条件が成立したと判定する構成となっている請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の空調制御システム。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1つに記載の空調制御システムと当該空調制御システムにより制御される空調装置とを備えている空調設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御システム及び空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物や自動車等の車両においては、空調設備を用いて室内の温度調整等を行うことにより快適さの向上が図られている。近年では、PM2.5等の微粒子(微粒子状物質)が健康に及ぼす影響について懸念が大きくなっていることもあり、室内における空気の清浄化に関するニーズが高まっている。上述した空調設備には、室内における空気の清浄化に寄与すべく、光学式の微粒子センサを用いて空気の清浄度を監視し、空気の清浄度に応じて空調制御等を実行するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-51697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、微粒子センサを具備する空調設備(空調制御システム)においては、当該微粒子センサの劣化によって空気の清浄化等の機能が上手く発揮されなくなる可能性がある。これは、空調設備に対する信頼性を低下させる要因になるため好ましくない。特に、微粒子センサの劣化の度合い(劣化速度)については個体差や当該微粒子センサが使用される環境等に大きく左右される可能性があり、劣化の影響が早期に顕在化する可能性も否定できない。このような事象は、空調設備に対する信頼性を低下させる要因となるため好ましくない。このように、上述した空調設備については、微粒子センサを搭載して多機能化又は高機能化を実現する上でその構成に未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、空気質センサを用いた空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0007】
第1の手段.空調装置(空調装置40)を制御する空調制御システムであって、
通気口(流入口52及び流出口53)が形成された筐体(ハウジング51)と、
前記筐体の所定領域(検出エリアDE)に存在する微粒子を検出可能な微粒子センサ(微粒子センサ55)と、
第1の状態(例えばファン58=ON、シャッタ61A=開位置、吸着装置65B=OFF)及び当該第1の状態よりも前記所定領域に存在する微粒子が少なくなるように微粒子量を制御する第2の状態(例えばファン58=OFF、シャッタ61A=閉位置、吸着装置65B=ON)に切替可能な微粒子量制御手段と、
前記微粒子量制御手段が前記第1の状態となっている場合に、前記微粒子センサから取得した検出値と基準値(例えば基準受光量)とを比較する比較手段(空調コントローラ42にてステップS203の比較処理を実行する機能)と
を備え、
前記比較手段による比較結果に基づいて所定の処理(換気のON/OFFや空気清浄度の表示)を実行する構成となっており、
前記微粒子量制御手段が前記第2の状態となっている状況下にて所定の条件が成立した場合(例えば待機時間が経過した場合)に前記微粒子センサから検出値を取得し、当該取得した検出値に基づいて補正値を決定し、前記比較手段により比較対象とされる前記基準値及び前記検出値の何れかを前記補正値を用いて補正する補正手段(空調コントローラ42にて閾値の補正処理を実行する機能)を備えている空調制御システム。
【0008】
第1の手段によれば、微粒子量制御手段が第2の状態となることで筐体内の所定領域、すなわち微粒子センサによる監視領域に存在する微粒子が減る。このように所定領域から微粒子を減らした状況下にて微粒子センサの検出値を取得すれば、当該検出値に反映される微粒子センサの劣化の度合いを明らかにすることができる。この検出値に基づいて決定された補正値を用いて、比較手段の比較対象となる検出値及び基準値の何れかを補正する構成とすれば、比較手段による比較結果に対する微粒性センサの劣化の影響を軽減し、当該比較結果に基づいて実行される所定の処理の結果、ひいては空調制御システム(空調設備)に対する信頼性の低下を抑制できる。故に、微粒子センサを用いた空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現できる。
【0009】
第2の手段.前記微粒子センサは、投光部(投光部56)と、当該投光部に前記所定領域を挟んで対向するように配設された受光部(受光部57)とを有する光学センサであり、前記投光部からの光が前記所定領域に存在する微粒子によって拡散されることで前記受光部に届く光の量が減少するように構成されている。
【0010】
第2の手段によれば、投光部の輝度が当該投光部の劣化等によって低下すると、受光部に届く光の量も減少する。第1の手段に示した構成との組み合せによれば、所定領域に存在する微粒子の量を減らした(理想的には0)状況下にて受光部に届いた光の量(検出値)を取得し、この取得した情報に基づいて補正を行うことができるため、劣化の度合いを比較結果に好適に反映可能となる。
【0011】
第3の手段.前記微粒子量制御手段は、前記所定領域に存在する微粒子の前記筐体における前記所定領域とは異なる特定領域(例えばハウジング51の底部51b付近)への移動を促し且つ他の微粒子の前記所定領域への移動を抑制することにより前記所定領域に存在する微粒子を減少させる構成となっている。
【0012】
第3の手段に示すように、所定領域から当該所定領域外への微粒子の移動を促すとともに所定領域への微粒子の移動を抑制する構成とすれば、当該所定領域に存在する微粒子を速やかに減少させることができる。これにより、上述した補正用の検出値を取得するまでの待ち時間を減らして応答性を向上させることができる。所定領域外への微粒子の移動を促す構成及び所定領域への微粒子の移動を抑制する構成の一方のみを採用した場合と比べて、所定の条件が成立した時点で所定領域に残存する微粒子の量を極力少なくすることが出来るため上記補正機能の確からしさを好適に向上させることができる。
【0013】
第4の手段.前記筐体内の微粒子を撹拌可能な撹拌手段(ファン58やヒータ等)を有し、
前記微粒子量制御手段は、前記第1の状態においては前記撹拌手段を稼働させることで前記筐体内の微粒子を撹拌させる一方、前記第2の状態においては前記撹拌手段を停止させることで当該撹拌を抑える構成となっており、
前記所定領域は、前記筐体の底部(底部51c)から離れた位置に設定されている。
【0014】
撹拌手段を停止すると筐体内での空気の流れ徐々に緩やかとなり、筐体内の微粒子は自重により筐体の底部へと降下する。微粒子センサによる監視領域である所定領域については底部から離れた位置に設定されているため、筐体の底部に溜まった微粒子に光が拡散されることを好適に回避できる。これにより、第1の手段等に示した補正機能の確からしさを好適に向上させることができる。
【0015】
第5の手段.前記撹拌手段を停止させてから所定時間が経過した場合に前記所定の条件が成立する構成となっており、
前記所定領域は、前記筐体の天井部(天井部51a)及び底部(底部51b)のうち前記天井部側に偏倚した位置に設定されている。
【0016】
空気中を漂っている微粒子については撹拌を止めたとしても直ちに底部へ降下するわけではなく、時間の経過に伴って徐々に降下することとなる。そこで、本手段に示すように、所定領域を天井部寄りとなる位置に設定すれば、所定時間が経過した場合に所定領域を未だ通過中となる微粒子の量を好的に減らすことができる。
【0017】
第6の手段.前記撹拌手段を停止させてから所定時間が経過した場合に前記所定の条件が成立する構成となっており、
前記微粒子センサは、投光部(投光部56)及び受光部(受光部57)を有する光学センサであり、
前記投光部の光軸は、横向きとなるように規定されている。
【0018】
投光部の光軸を横向きとなるように規定すれば、撹拌停止に伴って底部に向けて降下している微粒子が所定領域を通過するのに要する時間を短くすることができる。これは、撹拌停止から所定時間が経過したタイミングで所定領域に残留する微粒子を極力少なくする上で好ましい。
【0019】
第7の手段.前記筐体の前記通気口として、当該筐体へ空気が流入する流入口(流入口52)及び当該筐体から空気が流出する流出口(流出口53)を有し、
前記微粒子量制御手段は、前記流入口を覆う位置及び前記流入口を覆わない位置に移動可能な可動体(例えばシャッタ61A,フィルタ61X)を有し、
前記可動体が前記覆う位置に配置されることで前記流入口を通じた前記筐体内への微粒子の流入が不可となり、前記可動体が前記覆わない位置に配置されることで前記流入口を通じた前記筐体内への微粒子の流入が許容される構成となっており、
前記微粒子量制御手段は、前記第1の状態では前記可動体を前記覆わない位置に配置し、前記第2の状態では前記可動体を前記覆う位置に配置する。
【0020】
第7の手段に示すように、可動体を覆う位置(閉位置)に配置して筐体の流入口からの新たな微粒子の流入を不可とすれば、新たに流入する微粒子が補正精度の向上を図る上で妨げになることを好適に抑制できる。
【0021】
第8の手段.前記可動体は空気の通過を不可とするシャッタ(シャッタ61A)である。
【0022】
微粒子だけでなく空気の流入を不可とすることは、筐体内の空気の流れを止めて、沈下した微粒子が再び移動を開始することを抑制する上で好ましい。
【0023】
第9の手段.前記可動体は空気の通過を許容する一方、前記微粒子の通過を不可とするフィルタ(フィルタ61X)である。
【0024】
可動体をフィルタで構成して、新たな微粒子の流入を不可とすることで第7の手段に示した構成を好適に具現化できる。
【0025】
第10の手段.前記筐体の前記通気口として、当該筐体へ空気が流入する流入口(流入口52)及び当該筐体から空気が流出する流出口(流出口53)を有し、
前記筐体内への空気の流入を促すファン(ファン58等)を備え、
前記微粒子量制御手段は、空気の通過を許容する一方、前記微粒子の通過を不可とするフィルタ(フィルタ61X)を有し、前記微粒子量制御手段は、前記第1の状態では前記フィルタを前記流入口を覆わない位置に配置し、前記第2の状態では前記フィルタを前記流入口を覆う位置に配置する構成となっており、
前記フィルタが前記覆う位置に配置された状態であっても前記ファンを駆動させる。
【0026】
フィルタによって微粒子の流入を不可とした状態でもファンの駆動を継続すれば、筐体内の空気の流れに乗って微粒子が流出口から排出される。これにより、筐体内に残存する微粒子の数を0に近づけることができ、第1の手段等に示した補正の精度を好適に向上させることができる。
【0027】
第11の手段.前記微粒子量制御手段は、前記第2の状態となった場合に前記筐体内の微粒子を吸着する吸着手段(吸着装置65B)を有している。
【0028】
第2の状態となった場合に筐体内の微粒子を吸着手段によって吸着する構成とすれば、筐体内を浮遊する微粒子の数を減らして補正精度の向上に寄与できる。また、吸着手段によって特定箇所に微粒子を集める構成とすれば、微粒子センサや所定領域の位置に係る制約を好適に緩和できる。
【0029】
第12の手段.前記補正手段は、前記第2の状態となっている状況下にて前記微粒子センサから検出値を繰り返し取得し、繰り返し取得した検出値が所定の値となるように収束した場合に前記所定の条件が成立したと判定する構成となっている。
【0030】
第12の手段に示すように、第2の状態後に繰り返し取得された検出値が収束することで所定の条件が成立したと判定する構成とすれば、簡易な構成によって補正精度の向上を図りつつ補正精度の向上を図るための所要時間を短くすることができる。
【0031】
第13の手段.前記空調制御システムと当該空調制御システムにより制御される空調装置(空調装置30)とを備えている空調設備。
【0032】
微粒子センサを利用した空調設備の多機能化又は高機能化を好適に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の実施形態における建物及び空調設備を示す平面外略図。
図2】センサユニットを示す概略図。
図3】換気モード自動切替処理を示すフローチャート。
図4】ハウジング内の微粒子の様子を示す概略図。
図5】受光量の推移を示す概略図。
図6】キャリブレーション用処理を示すフローチャート。
図7】閾値の変化を示す概略図。
図8】第2の実施形態におけるセンサユニットを示す概略図。
図9】第4の実施形態におけるセンサユニットを示す概略図。
図10】第5の実施形態におけるセンサユニットを示す概略図。
図11】(a)受光量の推移を示す概略図、(b)閾値の変化を示す概略図。
図12】第6の実施形態におけるキャリブレーション用処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1の実施形態>
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物に設けられた空調設備に具体化されている。なお、本実施形態における「空調」とは、冷房/暖房、除湿/加湿、換気によって、温度、湿度、清浄度等の空気の状態を調整することを意味する。
【0035】
図1に示すように、建物10に設けられた空調設備30は、屋内(機械室34)に設置された空調装置40、屋外に設置された室外機41、空調装置40及び室外機41を制御する空調コントローラ42、空調装置40及び室外機41を繋ぐ熱交換用の配管43、空調装置40に空調用の空気を取り込む取込ダクト45~47、空調空気を建物10の居室21,22等へ供給する供給ダクト48,49、屋外へ空気を排出する排気ダクト(図示略)を備えている。
【0036】
建物10の内部空間(屋内空間IS)には複数の居室が設けられており、それら居室毎に上述した取込ダクトの吸込口と供給ダクトの供給口とが配設されている。例えば居室21には取込ダクト45に設けられた吸込口45aと供給ダクト48に設けられた供給口48aとが配されており、居室22についても取込ダクト46に設けられた吸込口46aと供給ダクト49に設けられた供給口49aとが配されている。本実施形態に示す建物10は高気密・高断熱住宅であり、空調設備30(空調装置40)によって館内全体の空調が行われる(所謂全館空調)。
【0037】
また、取込ダクト47は屋外へと延びており、取込ダクト47の吸込口47aは屋外空間OSに配設されている。空調装置40は、屋内の空気だけでなく屋外の空気についても空調用の空気として取込可能となっている。この吸込口47aには集塵用のフィルタが配設されており、ゴミやほこり等が取込ダクト47を通じて屋内に取り込まれることを抑制している。屋内を循環する空調空気の一部を外気と入れ替えることにより、循環中の空調空気の清浄度の低下を抑制している。なお、空調設備30による換気については暖房/冷房や除湿/加湿と組み合わせて実行されるだけでなく、送風と組み合わせて実行される場合もある。
【0038】
ここで、空調設備30による外気の取り込みのモード(換気モード)として、通常換気モードと、当該通常換気モードよりも単位時間あたりの外気の取り込み量が少ない弱換気モードと、ユーザの停止指示に従って換気を停止させる通常停止モードと、空調状況等に応じて換気を停止させる特殊停止モードとが設けられている。空調設備30の運転中は基本的に換気モードとして通常換気モード及び弱換気モードの何れかが設定される。また、これらの換気モードの切り替えについては空調コントローラ42が空気の状態(清浄度)を監視しその監視結果に基づいて自動で切り替える自動切替と、ユーザの指示に基づいて切り替える手動切替とがある。
【0039】
ここで、空気の状態を監視するための構成について補足説明する。図1に示すように、外気取込用の取込ダクト47にはダクト内に流入した外気に含まれるPM2.5等の特定の微粒子を検出可能なセンサユニット50が配設されている。図2に示すように、センサユニット50は、計測室MCを形成している筐体51と、計測室MCにおける所定の領域(以下、検出領域DEという)に存在する特定の微粒子を検出する微粒子センサ55とからなるセンサブロックをケース50aに収容してなる。ケース50aにおいて取込ダクト47の流路に面している部分には複数の開口が形成されており、これらの開口を通じてケース50aの内部と取込ダクト47の流路とが繋がっている。以下の説明では便宜上、センサユニット50(微粒子センサ55)による計測対象となっている「特定の微粒子」を単に「微粒子」と称する。
【0040】
筐体51の下部には、取込ダクト47を流れる外気の一部が流入する流入口52(「通気口」に相当)が形成されており、筐体51の上部には流入口52から流入した外気が流出する流出口53(「通気口」に相当)が形成されている。これら流入口52及び流出口53は、筐体51において対角となる隅部に位置している。
【0041】
また、筐体51には計測室MC内の空気及び微粒子を攪拌させる攪拌手段としてファン58が配設されている。ファン58は流入口52の上側に配置されており、当該ファン58が緩やかに回転することで流入口52側から流出口53側へ向かう緩やかな空気の流れが発生する。ファン58によって攪拌された空気については、上記検出領域DEを通過して流出口53から流出する。そして、計測室MC内の空気の流出にともなって流入口52から新たに外気が流入する。つまり、本実施形態に示すファン58については、計測室MC内の空気を入れ替える換気手段としても機能している。
【0042】
微粒子センサ55は、指向性の強い光(例えばレーザ光)を射出する投光部56と、投光部56から射出された光を受光する受光部57とで構成されており、それら投光部56及び受光部57が検出領域DEを挟んで対向するようにして配置されている。より詳しくは、投光部56は、光軸が水平となり且つ上記流入口52と流出口53とを繋ぐ直線と当該光軸とが交差するように配置されている。投光部56からの光は、検出領域DEを通過して受光部57に照射される。ここで、検出領域DEに微粒子が存在する場合には、投光部56からの光の一部は当該微粒子に当たることで拡散され、受光部57に届きにくくなる。つまり、受光部57の受光量は、検出領域DEに存在する微粒子の量が多くなることで(清浄度が低くなることで)少なくなり、検出領域DEに存在する微粒子の量が少なくなることで(清浄度が高くなることで)多くなる。
【0043】
ファン58及び微粒子センサ55は、何れも空調コントローラ42に接続されている。ファン58については空調装置40が稼動している間は基本的に速度一定のまま駆動状態が維持される。微粒子センサ55による微粒子の検出情報(受光量)は、空調コントローラ42に入力され、空調コントローラ42ではこの検出情報に基づいて換気モードを切替可能となっている。ここで、上述した自動切替がONとなっている場合に空調コントローラ42の制御部にて実行される換気モードの切替用の処理(換気モード自動切替処理)を、図3を参照して説明する。なお、換気モード自動切替処理は空調コントローラ42の制御部にて定期処理の一環として実行される処理である。
【0044】
換気モード自動切替処理においては先ず、ステップS101にて現在の換気モードが特殊停止モードであるか否かを判定する。特殊停止モードでない場合には、ステップS102に進む。ステップS102ではキャリブレーションの準備を開始するタイミングであるか否かを判定する。このキャリブレーションに係る構成については後述する。ステップS102にて否定判定をした場合にはステップS103に進む。ステップS103では微粒子センサ55から検出情報(受光量)を取得し、その取得した検出情報に基づいて取込ダクト47を流れる外気に含まれる微粒子量が閾値を超えているか否かを判定する。具体的には、受光部57の受光量が閾値を下回っているか否かを判定する。
【0045】
受光量が閾値を下回っている場合、すなわち外気の清浄度が低い場合には、ステップS103にて肯定判定をしてステップS104に進む。ステップS104では換気モードを弱換気モードとする処理を行う。この処理では、現在の換気モードが弱換気モードである場合には当該弱換気モードを維持し、現在の換気モードが通常換気モードである場合には弱換気モードへ切り替える。弱換気モードとなることで、取込ダクト47から取り込む外気の量が少なくなり、屋外から屋内への微粒子の流入が抑制されることとなる。
【0046】
受光量が閾値以上となっている場合、すなわち外気の清浄度が高い場合には、ステップS103にて否定判定をしてステップS105に進む。ステップS105では換気モードを通常換気モードとする処理を行う。この処理では、現在の換気モードが通常換気モードである場合には当該通常換気モードを維持し、現在の換気モードが弱換気モードである場合には通常換気モードへ切り替える。本実施形態では、センサユニット50及び空調コントローラ42により「空調制御システム」が構築されている。
【0047】
ここで、微粒子センサ55を具備する空調設備30においては、当該微粒子センサ55の劣化によって空気の清浄度に応じて外気の取り込み量を調整する機能が上手く発揮されなくなる可能性がある。具体的には、投光部56の劣化によってレーザ光の光量が減少したり、受光部57の劣化によってレーザ光の受光量が減少したりすることで、実際に検出領域DEに存在する微粒子以上の微粒子が存在していると誤認し、本来であれば通常換気モードによる換気を行うべき状況下にて弱換気モードとなることで換気量が低下する。可能性がある。特に、微粒子センサ55の劣化の度合い(劣化速度)については個体差や当該微粒子センサ55が使用される環境等に大きく左右され得るため、劣化の影響が早期に顕在化する可能性も否定できない。このような事象は、空調設備30に対する信頼性を低下させる要因となるため好ましくない。本実施形態においてはこのような事情に配慮した工夫がなされていることを特徴の1つとしている。具体的には、微粒子センサ55の劣化の影響を抑えるべく定期的にキャリブレーションが実行される。以下、当該キャリブレーションに係る構成について説明する。
【0048】
図3に示した換気モード自動切替処理においては、既に説明したようにステップS102にてキャリブレーションの準備を開始するタイミングであるか否かを判定する。具体的には、先のキャリブレーションが実行されてから所定の期間(例えば1ヶ月)が経過したか否かを判定する。ステップS102にて肯定判定をした場合には、ステップS106にて準備フラグをセットした後、ステップS107にてセンサユニット50のファン58を停止させる。そして、ステップS108にて換気モードを特殊停止モードに切り替えた後、本換気モード自動切替処理を終了する。
【0049】
ステップS101の説明に戻り、換気モードが特殊停止モードとなっている場合には、当該ステップS101にて肯定判定をしてステップS109に進む。ステップS109では、特殊停止モードとなってから所定の停止時間(本実施形態では6時間)が経過したか否かを判定する。所定の停止時間が経過していない場合には、そのまま本換気モード自動切替処理を終了する。所定の停止時間が経過した場合には、ステップS105にて通常換気モードに切り替えた後、本換気モード自動切替処理を終了する。本実施形態では、ファン58を停止させてから所定の停止時間が経過するまで停止状態を維持する機能が「微粒子量制御手段」に相当する。
【0050】
図4(a)→図4(b)に示すように、センサユニット50のファン58を停止させることにより、計測室MCにおける攪拌が終了し、当該計測室MCにおける空気の流れが時間の経過に伴って徐々に弱くなる。そして、空気の流れが弱くなると、空気中を漂っていた微粒子(計測対象となっている微粒子)は自重によって筐体51の底部51bへと降下し、そのほとんどが底部51bに溜まることとなる。つまり、検出領域DEに存在する微粒子(計測対象となっている微粒子)の量については時間の経過とともに減少し、最終的にはほぼ0となる。図5に示すように、ファン58が停止し且つ特殊停止モードとなった場合には、検出領域DEに存在する微粒子の数が減るにつれて受光量が増加する。上述した所定の停止時間については、検出領域DEに存在する微粒子を底部51bへ沈下させるのに必要な時間よりも長い時間となるように規定されており、検出領域DEに存在する微粒子の数が0となった際に受光量が最大となる。
【0051】
なお、本実施形態においては、キャリブレーションを実行する場合には換気モードが特殊停止モードとなる。上述したようにファン58が停止し且つ取込ダクト47における空気(外気)の流れも停止することで、その空気の流れの影響が計測室MCに及ぶことを回避している。つまり、取込ダクト47内の微粒子が計測室MCに新たに流入することを抑制している。但し、ファン58を停止している場合に、仮に計測室MCに新たに微粒子が流入したとしてもそれら微粒子が検出領域DEに到達できない構成且つ底部51bに溜まっている微粒子が浮上して検出領域DEに到達できない構成となっているのであれば、キャリブレーションの準備中も換気モードを通常換気モードや弱換気モード(望ましくは弱換気モード)とすることも可能である。
【0052】
次に、図6を参照して、空調コントローラ42にて定期処理の一環として実行されるキャリブレーション用処理について説明する。
【0053】
キャリブレーション用処理においては先ず、ステップS201にて準備フラグがセットされているか否かを判定する。準備フラグがセットされている場合にはステップS202に進む。ステップS202では待機時間が経過したか否かを判定する。この待機時間については、上記所定の停止時間よりも僅かに短くなるように設定されおり、所定の停止時間が経過する前にステップS203以降の処理が実行される構成となっている。
【0054】
待機時間が経過した場合にはステップS203に進む。ステップS203では、微粒子センサ55から検出情報(受光量)を取得し、取得した受光量と基準受光量とを比較して補正値を決定する。具体的には、基準受光量から実測した受光量を引くことでその差(図5の「α」参照)を補正値として決定する。本実施形態における基準受光量は微粒子センサ55の初期の受光量、すなわち劣化が生じる前の受光量(例えば初期の実測値)であるが、微粒子センサ55の性能を示すカタログ値等の設計値を基準受光量としてもよい。
【0055】
続くステップS204では、ステップS203にて決定された補正値を用いて上記閾値(通常換気モード及び弱換気モードの自動切替を行うための閾値)を補正する。具体的には、閾値(予め記憶されている設計値である基準閾値)から上記補正値を引くことで以降参照する新たな閾値を設定する。つまり、以降の自動切替では、新たに設定された閾値に基づいて換気モードの切り替えがなされる。微粒子センサ55の劣化が進むことで受光量が減少すると、当該補正によりその減少量に応じて閾値が引き下げられることとなる(図7参照)。これにより、劣化の影響を抑制できる。
【0056】
その後は、ステップS205で準備フラグを消去し、ステップS206にてファン58の動作を再開させた後、本キャリブレーション用処理を終了する。
【0057】
以上詳述した第1の実施形態によれば、以下の優れた効果が期待できる。
【0058】
ファン58を停止させた後は空気の流れ弱くなり計測室MCを漂っている微粒子が自重により筐体51の底部51bへと降下する。それら微粒子が底部51bに溜まる頃合いを見計らって微粒子センサ55から検出情報(受光量)を取得すれば、当該検出情報に反映される微粒子センサ55の劣化の度合いを明らかにすることができる。何故ならば、検出領域DEに存在する微粒子が大きく減少してレーザ光が微粒子によって拡散されにくくなるからである。この検出情報に基づいて補正値を決定し、判定基準となる閾値を当該補正値を用いて補正することにより、微粒性センサの劣化の影響により換気モードの切替機能が上手く作用しなくなることを抑制できる。これは、空調制御システム(空調設備30)に対する信頼性の低下を抑制し、微粒子センサ55を用いた空調設備30の多機能化又は高機能化を好適に実現できる。
【0059】
微粒子センサ55は、投光部56と当該投光部56に検出領域DEを挟んで対向するように配設された受光部57とを有する光学センサであり、投光部56からの光が検出領域DEに存在する微粒子によって拡散されることで受光部57に届く光の量が減少するように構成されている。例えば投光部56の輝度が劣化等によって低下すると、受光部57に届く光の量も減少する。検出領域DEに存在する微粒子の量を大幅に減らした(理想的には0)状況下にて受光部57に届いた光の量(受光量)を取得し、この取得した検出情報に基づいて補正を行うことができるため、劣化の度合いを比較結果に好適に反映可能となる。
【0060】
ファン58は計測室MC内の微粒子を攪拌させる機能と、取込ダクト47を流れる外気とともに微粒子を新たに取り込む機能とを有している。このファン58を停止させることにより、検出領域DEから当該検出領域DE外への微粒子の移動を促すとともに検出領域DEへの微粒子の移動が抑制される。このような構成とすれば、当該検出領域DEに存在する微粒子を速やかに減少させることができる。これにより、上述した補正用の検出情報を取得するまでの待ち時間を減らして応答性を向上させることができる。検出領域DEから当該検出領域DE外への微粒子の移動を促す構成及び検出領域DEへの微粒子の移動を抑制する構成の一方のみを採用した場合と比べて、キャリブレーションの実行条件が成立した時点で検出領域DEに残存する微粒子の量を極力少なくすることが出来るため上記補正機能の確からしさを好適に向上させることが可能となる。
【0061】
ファン58を停止させると計測室MCでの空気の流れ徐々に緩やかとなり、計測室MCに存在する微粒子は自重により筐体51の底部51bへと降下する。上記検出領域DEは底部51bから離れた位置に設定されているため、底部51bに溜まった微粒子によって光が拡散されることを好適に回避できる。また、空気中を漂っている微粒子についてはファン58を停止させたとしても直ちに底部51bへ降下するわけではなく、時間の経過に伴って徐々に降下することとなる。そこで、検出領域DEを天井部51a側に偏倚した位置に設定すれば、上記待機時間が経過した際に検出領域DEを未だ通過中となる微粒子の量を好的に減らすことができる。
【0062】
レーザ光の光軸は横向き(水平)となるように規定されている。このため、撹拌停止に伴って底部51bに向けて降下している微粒子が検出領域DEを通過するのに要する時間を短くすることができる。これは、撹拌停止から上記待機時間が経過したタイミングで検出領域DEに残留する微粒子を極力少なくする上で好ましい。
【0063】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、キャリブレーションの準備中はファン58を停止させることにより計測室MCへの新たな粒子の流入を抑制する構成とした。但し、流入口52については常時開放されている構成においては、取込ダクト47を外気が通過している場合に僅かながら微粒子が計測室MCに流入する可能性が残る。このような事情に配慮して、第1の実施形態ではファン58の停止に併せて換気モードを特殊停止モードとすることで計測室MCへの新たな粒子の流入を抑制する機能を強化した。本実施形態では、キャリブレーションの準備中に新たな粒子が流入することを抑制するための構成が第1の実施形態と相違している。以下、図8を参照して、第1の実施形態との相違点を中心に、本実施形態における特徴的な構成について説明する。
【0064】
本実施形態に示すセンサユニット50Aには、筐体51の流入口52を塞ぐ閉状態と、当該流入口52を開放する開状態とに切替可能なシャッタ61A(「可動体」に相当)が設けられている。シャッタ61A用の駆動部は空調コントローラ42に接続されており、当該駆動部は空調コントローラ42からの駆動信号に基づいて動作する。
【0065】
シャッタ61Aが開状態となっている場合には取込ダクト47から計測室MCへの外気及び微粒子の流入が許容され、シャッタ61Aが閉状態となっている場合には当該シャッタ61Aによって流入口52が塞がれることで取込ダクト47から計測室MCへの外気及び微粒子の流入が不可となる。
【0066】
上述したキャリブレーションの準備を開始する場合には、センサユニット50Aのファン58を停止させるとともに、シャッタ61Aを開状態から閉状態に切り替える。このような構成とすれば、キャリブレーションの準備中も換気モードを特殊停止モードとしなくても新たな粒子の流入を好適に抑制できる。そこで、本実施形態においては、キャリブレーションの準備中も換気モードが通常換気モード又は弱換気モードに維持し、空調設備30による換気機能が無効となる期間を極力短くしている。言い換えれば、換気モードに関係なくキャリブレーションの準備を行う構成であるため、キャリブレーションのタイミング等に係る制約を好適に緩和できる。
【0067】
なお、本実施形態では、シャッタ61Aによって流入口52を開閉する構成としたが、流出口53にも同様のシャッタを設けてもよい。すなわち、キャリブレーションの準備を開始する場合には、流入口52及び流出口53の両方をシャッタによって塞ぐ構成としてもよい。
【0068】
<第3の実施形態>
上記第2の実施形態に示したセンサユニット50Aについてはシャッタ61Aによって流入口52を塞ぐことで取込ダクト47からの空気及び微粒子の流入を抑制する構成とした。本実施形態では、このシャッタ61Aを、空気の通過を許容する一方、微粒子の通過を不可とする可動式のフィルタ61X(「可動体」に相当)で置換している(図8参照)。
【0069】
キャリブレーションの準備を開始する場合には、フィルタ61Xを流入口52を覆う位置へ配置することにより、流入口52からの新たな微粒子の流入が防止される。そして、キャリブレーションの準備中もファン58の動作を継続させる。ファン58の動作を継続させることで、計測室MC内の空気が流出口53から流出するとともに流入口52を通じて取込ダクト47から空気が流入する。つまり、計測室MCの換気が継続される。計測室MC内の微粒子はこの換気によって計測室MCから徐々に排出されることとなる。
【0070】
このように、計測室MC内に存在する微粒子の数自体を減らす構成とすれば、キャリブレーションを実行する際に計測室MC内の微粒子が検出領域DEに移動することを好適に回避できる。これにより、キャリブレーションの精度向上に寄与できる。また、微粒子を計測室MCから強制的に排出する構成とすることは、キャリブレーションの準備時間の短縮を図る上で好ましい。
【0071】
なお、本実施形態では、キャリブレーションの準備中もファン58の動作を継続させる構成としたが、第2の実施形態等と同様に、キャリブレーションの準備中はファン58を停止させる構成とすることも可能である。
【0072】
<第4の実施形態>
本実施形態では、上述したキャリブレーションの精度向上及びキャリブレーションの準備時間の短縮を図る工夫がなされている。以下、図9を参照して、本実施形態における特徴的な構成を第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
本実施形態におけるセンサユニット50Bは、キャリブレーションの準備を行う際に計測室MC内の微粒子を収集する収集手段が設けられている。具体的には、筐体51の底部51bにおいてファン58からの風が当たる位置に、静電気により微粒子を吸着可能な吸着パッド65Bが配設されている。吸着パッド65Bは空調コントローラ42に接続されており、当該空調コントローラ42によって吸着状態と非吸着状態とに切り替えられる。
【0074】
キャリブレーションの準備が開始されると、ファン58が停止し、吸着パッド65Bが非吸着状態から吸着状態に切り替わる。これにより、計測室MCに存在する微粒子が吸着パッド65Bに引き寄せられる。準備中は吸着パッド65Bが吸着状態に維持されるため、当該吸着パッド65Bによって吸着された微粒子については、検出領域DEへの移動が抑制される。そして、ファン58が停止しているため、吸着されている微粒子がファン58によって巻き上げられることもない。
【0075】
キャリブレーションを実行した後は、ファン58の動作が再開され、吸着パッド65Bが吸着状態から非吸着状態に切り替わる。これにより、吸着されていた微粒子は、吸着から解放され、時間の経過とともに流出口53から徐々に排出されることとなる。
【0076】
キャリブレーションの準備中は計測室MCに存在する微粒子を吸着パッド65Bによって吸着することにより、計測室MCを漂う微粒子の数を減らしてキャリブレーションの精度の向上に寄与できる。また、吸着パッド65Bによって特定箇所に微粒子を集める構成とすれば、微粒子センサ55や検出領域DEの位置に係る制約を好適に緩和できる。
【0077】
なお、本実施形態では、吸着パッド65Bを筐体51の底部51bに配置したが、吸着パッド65Bの配置については任意である。例えば筐体51の天井部51aや側壁部に配設することも可能である。但し、底部51bに吸着パッド65Bを配置することは、吸着力をむやみに大きくしなくても吸着中の微粒子の動きを抑制したり、ファン58によって吸着パッド65Bへの微粒子の残留を抑制したりする上で有利である。
【0078】
<第5の実施形態>
上記第1の実施形態等に示したセンサユニット50では、投光部56と受光部57とを対向させるようにして微粒子センサ55を配置した。本実施形態では投光部及び受光部の向きが第1の実施形態等と相違している。以下、図10を参照して、本実施形態におけるセンサユニット50Cを、第1の実施形態に示したセンサユニット50との相違点を中心に説明する。
【0079】
投光部56Cは、レーザ光が斜め上方に射出されるように向きが変更されている。レーザ光の照射範囲が微粒子の検出領域DEとなっている点では第1の実施形態等と同様であるものの、上記第1の実施形態ではレーザ光の照射範囲に受光部57が配置されていたのに対して、本実施形態では当該照射範囲から外れた位置に受光部57Cが配置されている。つまり、投光部56Cからのレーザ光が受光部57Cに直接照射されることがない。
【0080】
投光部56Cから射出されたレーザ光が検出領域DEに位置する微粒子に当たると、レーザ光の一部が拡散される。この拡散された光の一部が受光部57Cに届くことで当該微粒子が検出されることとなる。つまり、本実施形態では、検出領域DEに存在する微粒子の数が多くなることで受光部57Cの受光量が増え、検出領域DEに存在する微粒子の数が少なくなることで受光部57Cの受光量が減る構成となっている。
【0081】
キャリブレーションを実行する際には、第1の実施形態と同様に、受光部57Cの受光量を取得し、その受光量と基準受光量とを比較する。そして、基準受光量から実測した受光量を引いた値(減少量β:図11(a)参照)を補正値とし、当該補正値を閾値から引くことで新たな閾値を設定する。微粒子センサ55の劣化が進むことで受光量が減少すると、当該補正によりその減少量に応じて閾値が引き下げられることとなる(図11(b)参照)。これにより、劣化の影響を抑制できる。
【0082】
なお、筐体51の内面に照射された光が当該内面により吸収される構成とし、検出領域DEに存在する微粒子の数が0の場合に受光量が0となる構成に変更してもよい。この場合、上述した基準受光量を0とすればよい。
【0083】
<第6の実施形態>
上記第1の実施形態等では、キャリブレーションの準備を開始してから予め設定された待機時間が経過した場合にキャリブレーションを実行する構成としたが、本実施形態ではキャリブレーションの実行に係る構成(キャリブレーション用処理)が第1の実施形態等と相違している。以下、図12を参照して、本実施形態におけるキャリブレーション用処理について説明する。
【0084】
本実施形態におけるキャリブレーション用処理においては先ず、キャリブレーションの準備フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS301)。準備フラグがセットされている場合には、受光量を確認するタイミングとなったか否かを判定する(ステップS302)。受光量を確認するタイミングである場合には、微粒子センサ55から検出情報(現在の受光量)を取得する(ステップS303)。
【0085】
その後は、受光量の変化を判定するための判定基準範囲が設定されているか否かを判定する(ステップS304)。判定基準範囲が設定されていない場合には、今回取得した受光量に基づいて判定基準範囲を設定する(ステップS305)。具体的には、今回取得した受光量を中央値として当該中央値に所定の幅(0.1%)を加味したものを判定基準範囲として設定する。その後、本キャリブレーション用処理を終了する。
【0086】
判定基準範囲が設定されている場合には、今回取得した受光量が判定基準範囲内であるかを判定する(ステップS306)。判定基準範囲内である場合、すなわち受光量がほとんど変化していない場合には、チェックカウンタの更新処理(加算処理)を実行する(ステップS307)。チェックカウンタは判定基準範囲となった回数(連続回数)を記憶するためのカウンタである。その後は、チェックカウンタの値が規定値を上回ったか否かを判定する。規定値を上回っていない場合にはそのまま本キャリブレーション用処理を終了する。
【0087】
規定値を上回っている場合には今回の受光量と基準受光量とを比較し(ステップS309)、その比較結果に基づいて決定した補正値を用いて上記閾値を補正する(ステップS310)。その後、準備フラグを消去し(ステップS311)、ファン58の動作を再開(ステップS312)させた後、本キャリブレーション用処理を終了する。ステップS309~S312の処理についてはステップS203~S206の処理と同様である。
【0088】
一方、今回取得した受光量が判定基準範囲外である場合には、当該受光量に基づいて判定基準範囲を再設定し(ステップS313)、チェックカウンタを0クリアした後、本キャリブレーション用処理を終了する。ステップS313の処理はステップS305の処理と同様である。
【0089】
以上詳述したように、本実施形態では、受光量が下げ止まった場合にキャリブレーションを実行することにより、キャリブレーションの準備時間の短縮やキャリブレーションの精度向上に寄与できる。
【0090】
<その他の実施形態>
なお、上述した各実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記各実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。また、上記各実施形態に示した各種構成の全て又は一部を任意に組み合わせることも可能である。この場合、組み合わせの対象となる各構成の技術的意義(発揮される効果)が担保されることが好ましい。
【0091】
・上記各実施形態では、センサユニット50を外気用の取込ダクト47に配設したが、当該センサユニット50の配置については任意である。例えば、空調対象となっている居室等の居住空間や屋外に配置することも可能である。居住空間にセンサユニット50を配置する場合には、居住空間の空気の清浄度を監視し、清浄度が基準値よりも低下している場合に換気を行う又は換気を強める構成とするとよい。なお、居住空間にセンサユニット50を配置する場合には、当該センサユニット50を空調コントローラ42に搭載する構成としてもよい。
【0092】
・上記各実施形態では、微粒子センサ55の検出結果に基づいて換気モードを切り替える構成としたが、これに代えて又は加えて空調コントローラ42のディスプレイに空気清浄度を示す情報(例えば清浄度のレベル)を表示する構成とすることも可能である。
【0093】
また、例えば空調設備がナノサイズの帯電微粒子水等を放出することで空気清浄を行う機能を有している場合には、微粒子センサ55の検出結果に基づいて帯電微粒子水による空気清浄のON/OFFを切り替える構成としてもよい。
【0094】
・上記各実施形態では、計測室MC内にファン58を配置したが、攪拌手段及び換気手段としての機能を発揮させることができるのであれば、当該ファン58の位置は任意である。例えば、流入口52にファン58を配置し、非撹拌状態においては停止したファン58によって計測室MCへの空気及び粒子の流入を妨げる構成とすることも可能である。
【0095】
・上記各実施形態では、ファン58によって計測室MC内に強制対流を発生させる構成としたが、これに代えてヒータ等の過熱手段によって計測室MC内に自然対流を発生させる構成とすることも可能である。
【0096】
・上記各実施形態では、検出領域DEを筐体51の底部51b及び天井部51aのうち天井部51a側に偏倚した位置に設定したが、検出領域DEを底部51b及び天井部51aのうち底部51b側に偏倚した位置に設定することも可能である。但し、キャリブレーションの準備時間を短くする上では、検出領域DEを天井部51aに近い位置に設定することに技術的意義がある。
【0097】
・上記各実施形態では、先のキャリブレーションから予め設定された期間(1ヶ月)が経過した場合にキャリブレーションの準備を開始する構成としたが、キャリブレーションの実行条件については任意である。例えば、ユーザの実行操作に基づいてキャリブレーションの準備が開始される構成としたり、ユーザが空調をOFFにした場合にキャリブレーションの準備が開始される構成としたりすることも可能である。
・上記各実施形態に示したキャリブレーション機能については、全館空調に代えて、ルームエアコン、空気清浄装置等の他の空調設備に適用してもよい。また、当該キャリブレーション機能については、建物用の空調設備に限らず車、列車、飛行機等の乗り物に搭載される空調設備に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0098】
30…空調設備、40…空調装置、42…空調コントローラ、50…センサユニット、51…筐体、52…流入口、53…流出口、55…微粒子センサ、56…投光部、57…受光部、58…ファン、DE…検知領域、MC…計測室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12