(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174627
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】シートパッドおよびシートパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20221116BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20221116BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20221116BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20221116BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20221116BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20221116BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20221116BHJP
B29L 31/58 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
A47C27/15 A
B29C39/10
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C44/36
B29K105:04
B29L31:58
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080548
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 陽
(72)【発明者】
【氏名】品川 正樹
【テーマコード(参考)】
3B096
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
3B096AB11
4F204AA31
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD17
4F204AD24B
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH26
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB12
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD17
4F214AD24B
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH26
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB12
4F214UD13
4F214UD17
4F214UF05
4F214UF27
(57)【要約】
【課題】熱耐久性に優れたシートパッドと、当該シートパッドを容易に得るための、シートパッドの製造方法と、を提供する。
【解決手段】シートパッドは、クッションパッド1を含む。クッションパッド1は、軟質発泡体2と、軟質発泡体2に埋設されたビーズ法発泡体3と、を含んでいる。クッションパッド1の下面は、軟質発泡体2の下面2f2によって形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションパッドを含むシートパッドであって、
前記クッションパッドは、軟質発泡体と、前記軟質発泡体に埋設されたビーズ法発泡体と、を含んでおり、
前記クッションパッドの下面は、前記軟質発泡体の下面によって形成されている、シートパッド。
【請求項2】
前記軟質発泡体は、前記ビーズ法発泡体の上面を被覆している上側軟質発泡体と、前記ビーズ法発泡体の前記下面を被覆している下側軟質発泡体と、を含んでいる、請求項1に記載されたシートパッド。
【請求項3】
前記ビーズ法発泡体は、上下方向に貫通する貫通穴を有しており、
前記上側軟質発泡体と、前記下側軟質発泡体とは、前記ビーズ法発泡体に形成された前記貫通穴を通して連結されている、請求項2に記載されたシートパッド。
【請求項4】
前記シートパッドは、後部座席用シートパッドである、請求項1から3のいずれか1項に記載されたシートパッド。
【請求項5】
前記ビーズ法発泡体は、2つの尻下開口部を有しており、前記貫通穴は、前記2つの尻下開口部の間に配置されている、請求項4に記載されたシートパッド。
【請求項6】
前記軟質発泡体は、軟質発泡ポリウレタンで構成されており、
前記ビーズ法発泡体は、ビーズ法発泡ポリプロピレンまたはビーズ法発泡スチロールで構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載されたシートパッド。
【請求項7】
ガス抜き部が設けられた成形型と、貫通穴が形成されたビーズ法発泡体とを用い、前記貫通穴が開口している前記ビーズ法発泡体の外形面が軟質発泡体によって被覆されている、シートパッドを得るための、シートパッドの製造方法であって、
前記成形型と前記ビーズ法発泡体との間に隙間が形成されるとともに前記ビーズ法発泡体の前記貫通穴が前記ガス抜き部に対してオフセットする位置に配置されるように前記成形型の前記内部に前記ビーズ法発泡体を配置する、ビーズ法発泡体セット工程と、
前記ビーズ法発泡体セット工程の終了後、軟質発泡材料が前記ビーズ法発泡体の前記貫通穴を通して前記隙間に向かうように当該軟質発泡材料を前記成形型の前記内部に供給する、発泡材料供給工程と、を含んでいる、シートパッドの製造方法。
【請求項8】
前記成形型として、前記成形型の前記内部に前記ビーズ法発泡体を配置したときに当該ビーズ法発泡体との間に隙間が形成されるとともに前記ビーズ法発泡体の前記貫通穴が前記ガス抜き部に対してオフセットする位置に配置される成形型を用いる、請求項7に記載された、シートパッドの製造方法。
【請求項9】
前記ビーズ法発泡体として、2つの尻下開口部を有しているとともに前記貫通穴が前記2つの尻下開口部の間に配置されたビーズ法発泡体を用いる、請求項7または8に記載されたシートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドおよびシートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシートパッドには、シートパッド本体を軟質発泡体で形成し、当該軟質発泡体の下面の一部をビーズ法発泡体で被覆することにより、シートパッドの支持安定性を向上させたものがある(例えば、特許文献1参照。)。これに対し、他の従来のシートパッドとしては、ビーズ法発泡体に貫通穴を形成し、当該貫通穴を通して供給された軟質発泡材料によって前記ビーズ法発泡体の下面の一部を軟質発泡体で被覆したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-259535号公報
【特許文献2】特開2018-134360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のシートパッドはいずれも、軟質発泡体の下面とビーズ法発泡体の下面との平面レベルを一致させることによって、シートパッドの下面を軟質発泡体の下面とビーズ法発泡体の下面とによって形成された平滑なものとしている。
【0005】
しかしながら、ビーズ法発泡体は、軟質発泡体に比べて熱に弱い。このため、上記従来のシートパッドはいずれも、熱耐久性に改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、熱耐久性に優れたシートパッドと、当該シートパッドを容易に得るための、シートパッドの製造方法と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシートパッドは、クッションパッドを含むシートパッドであって、前記クッションパッドは、軟質発泡体と、前記軟質発泡体に埋設されたビーズ法発泡体と、を含んでおり、前記クッションパッドの下面は、前記軟質発泡体の下面によって形成されている。本発明に係るシートパッドは、熱耐久性に優れる。
【0008】
本発明に係るシートパッドにおいて、前記軟質発泡体は、前記ビーズ法発泡体の上面を被覆している上側軟質発泡体と、前記ビーズ法発泡体の前記下面を被覆している下側軟質発泡体と、を含んでいることが好ましい。この場合、着座側が軟質発泡体によって被覆されるため、着座時の快適性を向上させつつ熱耐久性に優れる。
【0009】
本発明に係るシートパッドにおいて、前記ビーズ法発泡体は、上下方向に貫通する貫通穴を有しており、前記上側軟質発泡体と、前記下側軟質発泡体とは、前記ビーズ法発泡体に形成された前記貫通穴を通して連結されていることが好ましい。この場合、本発明に係るシートパッドは、熱耐久性に優れるとともに製造の容易なシートパッドとなる。
【0010】
本発明に係るシートパッドにおいて、前記シートパッドは、後部座席用シートパッドであることが好ましい。本発明に係るシートパッドは、後部座席用シートパッドとして用いるのが特に有効である。
【0011】
本発明に係るシートパッドにおいて、前記ビーズ法発泡体は、2つの尻下開口部を有しており、前記貫通穴は、前記2つの尻下開口部の間に配置されていることが好ましい。この場合、本発明に係るシートパッドは、熱耐久性に優れるとともに製造の容易な後部座席用シートパッドとなる。
【0012】
本発明に係るシートパッドにおいて、前記軟質発泡体は、軟質発泡ポリウレタンで構成されており、前記ビーズ法発泡体は、ビーズ法発泡ポリプロピレンまたはビーズ法発泡スチロールで構成されていることが好ましい。この場合、一般に用いられている軟質発泡体およびビーズ法発泡体を用いることによって、コスト性に優れたシートパッドとなる。
【0013】
本発明に係る、シートパッドの製造方法は、ガス抜き部が設けられた成形型と、貫通穴が形成されたビーズ法発泡体とを用い、前記貫通穴が開口している前記ビーズ法発泡体の外形面が軟質発泡体によって被覆されている、シートパッドを得るための、シートパッドの製造方法であって、前記成形型と前記ビーズ法発泡体との間に隙間が形成されるとともに前記ビーズ法発泡体の前記貫通穴が前記ガス抜き部に対してオフセットする位置に配置されるように前記成形型の前記内部に前記ビーズ法発泡体を配置する、ビーズ法発泡体セット工程と、前記ビーズ法発泡体セット工程の終了後、軟質発泡材料が前記ビーズ法発泡体の前記貫通穴を通して前記隙間に向かうように当該軟質発泡材料を前記成形型の前記内部に供給する、発泡材料供給工程と、を含んでいる。本発明に係る、シートパッドの製造方法によれば、熱耐久性に優れたシートパッドを容易に得ることができる。
【0014】
本発明に係る、シートパッドの製造方法は、前記成形型として、前記成形型の前記内部に前記ビーズ法発泡体を配置したときに当該ビーズ法発泡体との間に隙間が形成されるとともに前記ビーズ法発泡体の前記貫通穴が前記ガス抜き部に対してオフセットする位置に配置される成形型を用いることが好ましい。この場合、熱耐久性に優れたシートパッドをより容易に得ることができる。
【0015】
本発明に係る、シートパッドの製造方法は、前記ビーズ法発泡体として、2つの尻下開口部を有しているとともに前記貫通穴が前記2つの尻下開口部の間に配置されたビーズ法発泡体を用いることが好ましい。この場合、熱耐久性に優れた後部座席用シートパッドを容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱耐久性に優れたシートパッドと、当該シートパッドを容易に得るための、シートパッドの製造方法と、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、シートパッドを概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1のシートパッドを概略的に示す底面図である。
【
図3】
図1のシートパッドを概略的に示す側面図である。
【
図4】
図1のシートパッドを概略的に示す背面図である。
【
図5】
図1のシートパッドをX-X断面で示す断面図である。
【
図6】
図1のシートパッドをY-Y断面で示す断面図である。
【
図7】
図1のシートパッドを上側から概略的に示す斜視図である。
【
図8】
図1のシートパッドを下側から概略的に示す斜視図である。
【
図9】
図1のシートパッドに含まれる、ビーズ法発泡体の一例を概略的に示す平面図である。
【
図10】
図9のビーズ法発泡体を概略的に示す底面図である。
【
図11】
図9のビーズ法発泡体をZ-Z断面で示す断面図である。
【
図12】
図9のビーズ法発泡体を上側から概略的に示す斜視図である。
【
図13】
図9のビーズ法発泡体を下側から概略的に示す斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法を概略的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、シートパッドおよびシートパッドの製造方法について説明をする。
【0019】
(シートパッド)
本発明の一実施形態に係る、シートパッド1は、車両用のシート(自動車用のシート)に用いられる、車両用のシートパッドである。また、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」とは、シートに着座した着座者から観たときの方向をいう。また、以下の説明において、「左右方向」は、「幅方向」ともいう。また、本実施形態では、「下面」と「底面」とは同義である。さらに、本実施形態では、「後面」と「背面」ともまた同義である。
【0020】
図1は、シートパッド1を上側から概略的に示す平面図である。
図2は、シートパッド1を下側から概略的に示す底面図である。
図3は、シートパッド1の左側を概略的に示す側面図である。
図4は、シートパッド1の後側を概略的に示す背面図である。
図5は、シートパッド1を
図1のX-X断面で示す断面図である。
【0021】
シートパッド1は、クッションパッド(着座者の尻下に位置するパッド)を含むシートパッドである。
図1~4を参照すれば、本実施形態では、シートパッド1はクッションパッドである。
図5を参照すれば、シートパッド1は、軟質発泡体2と、軟質発泡体2に埋設されたビーズ法発泡体3と、を含んでいる。シートパッド1の下面(1f2)は、軟質発泡体2の下面2f2によって形成されている。ここで、シートパッド1の下面とは、例えば、
図2の平面視を参照すれば、シートパッド1の前後左右方向の任意の位置における最も下側の点を連ねた面である。具体的には、ビーズ法発泡体3の下面3f2の全面は、軟質発泡体2の下面2f2よりも上側に位置している。
【0022】
本実施形態では、軟質発泡体2は、ビーズ法発泡体3の上面3f1を被覆している上側軟質発泡体21と、ビーズ法発泡体3の下面3f2を被覆している下側軟質発泡体22と、を含んでいる。
【0023】
図6は、シートパッド1を
図1のY-Y断面で示す断面図である。
【0024】
図6を参照すれば、本実施形態では、ビーズ法発泡体3は、上下方向に貫通する貫通穴31を有している。上側軟質発泡体21と、下側軟質発泡体22とは、ビーズ法発泡体3に形成された貫通穴31を通して連結されている。
【0025】
本実施形態では、上側軟質発泡体21と、下側軟質発泡体22とは、貫通穴31を貫通する連結部23によって連結されている。本実施形態では、連結部23は、上側軟質発泡体21および下側軟質発泡体22とともに貫通穴31に充填された軟質発泡材料によって形成されている。
【0026】
本実施形態では、シートパッド1は、後部座席用シートパッドである。
【0027】
例えば、
図1を参照すれば、本実施形態では、シートパッド1は、左右2つの座席が一体に形成された後部座席用クッションパッドである。本実施形態では、シートパッド1は、2つのメインパッド部211を有している。メインパッド部211は、着座者の臀部及び大腿部を下側から支持するように構成されている。また、本実施形態では、シートパッド1は、2つのメインパッド部211の左側または右側に位置し、メインパッド部211よりも上側へ盛り上がるとともに、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部212を有している。さらに、本実施形態では、シートパッド1は、2つのメインパッド部211の間に配置されたセンターパット部213を有している。加えて、本実施形態では、シートパッド1は、シートパッド1を車両に取り付けるための取付部214を有している。さらに、本実施形態では、メインパッド部211は、着座者の大腿部を下側から支持するように構成された、腿下部211aと、腿下部211aに対し後側に位置し、着座者の尻部を下側から支持するように構成された尻下部211bと、からなる。
【0028】
本実施形態では、シートパッド1の上部外側部分(上面)は、
図1に示すように、上側軟質発泡体21によって形成されている。また、シートパッド1の下部外側部分(下面)は、
図2に示すように、下側軟質発泡体22によって形成されている。なお、符号A1は、シートパッド1を車両に取り付けるための車両取付用貫通穴である。また、符号A2は、シートベルトを取り付けるためのシートベルト取付用切欠きである。また、
図3を参照すれば、本実施形態では、シートパッド1の側部外側部分は、上側軟質発泡体21と、下側軟質発泡体22とによって形成されている。また、
図4を参照すれば、本実施形態では、シートパッド1の後部外側部分は、上側軟質発泡体21と、下側軟質発泡体22とによって形成されている。
【0029】
図7は、シートパッド1を上側から概略的に示す。また、
図8は、シートパッドを下側から概略的に示す。これらの斜視図に示すように、本実施形態では、シートパッド1の外表面は、上側軟質発泡体21と、下側軟質発泡体22とによって形成されている。本実施形態では、ビーズ法発泡体3は、軟質発泡体2の内側に完全に埋設させることができる。この場合、本実施形態では、シートパッド1の下面1f2には、ビーズ法発泡体3の下面3f2が現れる部分がない。
【0030】
図9は、シートパッド1に含まれる、ビーズ法発泡体3の一例を上側から概略的に示す。また、
図10は、
図9のビーズ法発泡体3を下側から概略的に示す。また、
図11は、
図9のビーズ法発泡体3を
図9のZ-Z断面で示す。また、
図12は、
図9のビーズ法発泡体3を上側から概略的に示す。さらに、
図13は、
図9のビーズ法発泡体3を下側から概略的に示す。
【0031】
ビーズ法発泡体3は、2つの尻下開口部32を有している。2つの尻下開口部32は、左右方向(幅方向)に間隔を置いて配置されている。また、ビーズ法発泡体3に形成された貫通穴31は、2つの尻下開口部32の間に配置されている。
【0032】
本実施形態では、ビーズ法発泡体3は、シートパッド1のコア(シートパッド本体)を構成している。
図12および
図13を参照すれば、ビーズ法発泡体3は、偏平な板材である。また、本実施形態では、ビーズ法発泡体3は、車両取付用貫通穴A1と、シートベルト取付用切欠きA2と、を有している。
【0033】
本実施形態では、尻下開口部32は貫通穴である。尻下開口部32は、ビーズ法発泡体3を上下方向に貫通している。本実施形態では、尻下開口部32の穴径(開口面積)は、貫通穴31の穴径(開口面積)よりも大きい。ただし、尻下開口部32は非貫通の凹部とすることができる。
【0034】
貫通穴31もまた、ビーズ法発泡体3を上下方向に貫通している。本実施形態では、貫通穴31は、
図9及び
図10に示すように、丸孔である。ただし、貫通穴31は、例えば、角孔などの多角形孔、楕円孔などのスリット孔、などの、様々な形状の貫通穴とすることができる。また、貫通穴31の大きさ(例えば直径)は、適宜設定することができる。
【0035】
また、本実施形態では、ビーズ法発泡体3には、複数の貫通穴31が形成されている。本実施形態では、複数の貫通穴31は、前後方向および左右方向にそれぞれ、複数列に配置されている。具体的には、4つの貫通穴31が、前後方向および左右方向にそれぞれ、2列ずつに配置されている。本実施形態では、3つの貫通穴31が2つの尻下開口部32の間に配置されている。また、本実施形態では、1つの貫通穴31は、車両取付用貫通穴A1と、シートベルト取付用切欠きA2と、の間に配置されている。ただし、複数の貫通穴31の配置は、適宜設定することができる。また、複数の貫通穴31の間隔も、適宜設定することができる。さらに、貫通穴31は、少なくとも1つとすることができる。
【0036】
例えば、
図5を参照すれば、シートパッド1の下面は、軟質発泡体2の下面2f2によって形成されている。すなわち、ビーズ法発泡体3は、当該ビーズ法発泡体3の下面3f2が軟質発泡体2の下面2f2よりも上側に位置にするように、軟質発泡体2に埋設されている。言い換えれば、軟質発泡体2は、当該軟質発泡体2の下面2f2がビーズ法発泡体3の下面3f2よりも突出するように当該ビーズ法発泡体3の下面3f2を被覆している。このため、シートパッド1によれば、ビーズ法発泡体3の下面3f2が熱源などに直接的に接触することを防止することができる。したがって、シートパッド1は、熱耐久性に優れる。特に、ビーズ法発泡体3を軟質発泡体2の内側に完全に埋設させた場合、シートパッド1の下面1f2には、ビーズ法発泡体3の下面3f2が現れる部分がない。このため、シートパッド1は、熱耐久性により優れる。ただし、シートパッド1によれば、例えば、
図6の車両取付用貫通穴A1付近で示されているように、軟質発泡体2にビーズ法発泡体3の下面3f2に通じる開口が形成されている場合にも、熱源とビーズ法発泡体3の下面3f2との間には空気層が形成される。この場合、前記空気層は、断熱層として機能する。
【0037】
また、シートパッド1において、軟質発泡体2は、ビーズ法発泡体3の上面3f1を被覆している上側軟質発泡体21と、ビーズ法発泡体3の下面3f2を被覆している下側軟質発泡体22と、を含んでいる。この場合、軟質発泡体2よりも硬いビーズ法発泡体3をシートパッド1のコア(シートパッド本体)として機能させることができる。このため、着座者に対する支持安定性が向上する。その一方、支持安定性が向上する分、着座者は、シートパッド1の硬さを感じることが考えられる。これに対し、シートパッド1の着座側は、軟質発泡体2によって被覆されている。このため、シートパッド1によれば、着座時の快適性を向上させつつ熱耐久性に優れる。
【0038】
また、例えば、
図6を参照すれば、シートパッド1において、ビーズ法発泡体3は、上下方向に貫通する貫通穴31を有しており、上側軟質発泡体21と、下側軟質発泡体22とは、貫通穴31を通して連結されている。この場合、ビーズ法発泡体3をインサート品として成形型の内部に配置し、当該成形型の内部に軟質発泡樹脂を供給することにより、ビーズ法発泡体3の上面3f1および下面3f2の両方に軟質発泡体2を形成することができる。このため、シートパッド1は、熱耐久性に優れるとともに製造の容易なシートパッドとなる。
【0039】
また、本実施形態において、シートパッド1は、後部座席用シートパッドである。一般的に、バッテリ、エンジンなどの高熱を発生する熱源装置は後部座席の下に配置されている。したがって、シートパッド1は、本実施形態のように、後部座席用シートパッドとして用いるのが特に有効である。
【0040】
また、例えば、
図9を参照すれば、シートパッド1において、ビーズ法発泡体3は、2つの尻下開口部32を有しており、貫通穴31は、2つの尻下開口部32の間に配置されている。この場合、シートパッド1は、熱耐久性に優れるとともに製造の容易な後部座席用シートパッドとなる。また、この場合、シートパッド1の尻下部分の硬さが低く抑えられるため、着座時の快適性も確保することができる。
【0041】
ところで、シートパッド1において、軟質発泡体2は、弾力性を有する軟質発泡体であればよい。軟質発泡体2としては、例えば、軟質発泡ポリウレタンが挙げられる。また、シートパッド1において、ビーズ法発泡体3は、軟質発泡体2よりも硬く、弾力性を有する発泡体であればよい。ビーズ法発泡体3としては、例えば、オレフィン系樹脂、具体的には、ビーズ法発泡ポリプロピレン(EPP)、ビーズ法発泡スチロール(EPS)が挙げられる。ここで、「ビーズ法発泡体」とは、いわゆるビーズ法発泡体によって得られた発泡体である。ビーズ法発泡体は、予備発泡させた発泡ビーズを、成形型内で本発泡させることによって得られる。
【0042】
シートパッド1において、軟質発泡体2は、軟質発泡ポリウレタンで構成されており、ビーズ法発泡体3は、ビーズ法発泡ポリプロピレンまたはビーズ法発泡スチロールで構成されていることが好ましい。この場合、一般に用いられている軟質発泡材料およびビーズ法発泡材料を用いることによって、コスト性に優れたシートパッドとなる。特に、ビーズ法発泡体3がビーズ法発泡スチロールで構成されている場合、ビーズ法発泡スチロールは、他のビーズ法発泡体に比べて熱耐久性が低い。このため、ビーズ法発泡体3がビーズ法発泡スチロールで構成されている場合、本発明を適用すれば、熱耐久性の向上に有効である。
【0043】
(シートパッドの製造方法)
次に、本発明の一実施形態に係る、シートパッドの製造方法について説明する。この製造方法は、
図1~
図13を用いて説明したシートパッド1を製造するのに好適に用いることができる。
【0044】
本実施形態に係る、シートパッドの製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)は、
図14に示すように、ガス抜き部11が設けられた成形型10と、貫通穴31が形成されたビーズ法発泡体3とを用い、貫通穴31が開口しているビーズ法発泡体3の外形面(3f1,3f2)が軟質発泡体2によって被覆されている、シートパッドを得るための、シートパッドの製造方法である。本製造方法は、成形型10とビーズ法発泡体3との間に隙間Sが形成されるとともにビーズ法発泡体3の貫通穴31がガス抜き部11に対してオフセットする位置に配置されるように成形型10の内部にビーズ法発泡体3を配置する、ビーズ法発泡体セット工程と、前記ビーズ法発泡体セット工程の終了後、軟質発泡材料がビーズ法発泡体3の貫通穴31を通して隙間Sに向かうように当該軟質発泡材料を成形型10の前記内部に供給する、発泡材料供給工程と、を含んでいる。
【0045】
本製造方法において、「オフセット」とは、
図14に示すように、成形型10のガス抜き部11と、ビーズ法発泡体3の貫通穴31とを重複させないことをいう。これによって、ビーズ法発泡体3の貫通穴31から供給された材料(樹脂材料)は、成形型10のガス抜き部11に対して直接的に流通することがない。ガス抜き部11は、例えば、成形型10に形成された貫通穴とすることができる。
【0046】
本製造方法において、成形型10の内部とは、成形型10の内側に形成されたキャビティCである。成形型10は、例えば、上型と下型とを有している。この場合、キャビティCは、前記上型と前記下型とを合わせることによって形成される。キャビティCは、シートパッド1の外形形状を形作る。また、成形型10の内部には、成形型10とビーズ法発泡体3との間に形成された隙間Sが含まれる。
【0047】
本製造方法のように、貫通穴31が形成されたビーズ法発泡体3をインサート品として成形型10のキャビティC内に配置し、当該成形型10のキャビティCに軟質発泡材料を供給すれば、ビーズ法発泡体3の上面3f1および下面3f2の両方に軟質発泡体2(21,22)を形成することができる。ビーズ法発泡体3の下面3f2を被覆する下側軟質発泡体22は、成形型10とビーズ法発泡体3との間に形成された隙間Sによって形作られる。したがって、下側軟質発泡体22の厚さ2t(
図5参照。)は、隙間Sの間隔Tsを広くすることによって厚くすることができる。またその反対に、下側軟質発泡体22の厚さt2は、隙間Sの間隔Tsを狭くすることによって薄くすることができる。
【0048】
一方、成形型10のキャビティCに軟質発泡材料を供給するとき、当該成形型10のキャビティCに生じたエアーをうまく抜いてやらないと、当該軟質発泡材料が充填されないことによって成形品(シートパッド1)に欠肉を生じることがある。このため、成形型10には、ガス抜き部11を形成することが好ましい。
【0049】
しかしながら、ガス抜き部11が形成された成形型10を用いた場合でも、依然として、成形品に欠肉を生じることがあった。
【0050】
そこで、本発明者らは、鋭意、試験および研究の結果、成形品に欠肉を生じる場合の多くは、成形型10に形成されたガス抜き部11がビーズ法発泡体3に形成された貫通穴31と整列する位置にあることを認識し、前記欠肉が生じる理由は、ビーズ法発泡体3の貫通穴31を通して供給された軟質発泡材料が、発泡しつつ、当該貫通穴31と整列する位置にあるガス抜き部11を直ちにシールしてしまうことにあることを見出した。
【0051】
本製造方法によれば、上述のとおり、ビーズ法発泡体3を成形型10の内部に配置したとき、成形型10のガス抜き部11がビーズ法発泡体の貫通穴31に対してオフセットする位置に配置されている。この場合、軟質発泡材料がビーズ法発泡体3の貫通穴31を通して隙間Sに向かって供給されても、当該軟質発泡材料が直ちにガス抜き部11をシールすることがない。したがって、成形型10の内部、特に、隙間Sに生じたエアーがガス抜き部11を通して効率的に抜かれることになる。このため、本製造方法によれば、成形品に生じて製品として使用し得なくなり得る欠肉を抑制することができる。
【0052】
したがって、本製造方法によれば、熱耐久性に優れたシートパッド1を容易に得ることができる。なお、成形型10のガス抜き部11は、
図9の平面視を参照すれば、ビーズ法発泡体3の貫通穴31と重複しない位置であれば、様々な位置にレイアウトすることができる。また、ガス抜き部11は、少なくとも1つとすることができる。
【0053】
特に、本製造方法において、隙間Sの間隔Tsは、5mm~10mmの範囲であることが好ましい。従来のシートパッドの製造方法では、隙間Sの間隔Tsが5mm~10mmの範囲であるときに欠肉を生じ易い。したがって、隙間Sの間隔Tsが5mm~10mmの範囲である場合、本製造方法を用いれば、欠肉の抑制に有効である。
【0054】
図14を参照すれば、本製造方法は、成形型10として、成形型10の内部にビーズ法発泡体3を配置したときに当該ビーズ法発泡体3との間に隙間Sが形成されるとともにビーズ法発泡体3の貫通穴31に対してオフセットする位置にガス抜き部11が配置される成形型を用いている。この場合、熱耐久性に優れたシートパッド1をより容易に得ることができる。
【0055】
図9~
図10を参照すれば、本製造方法は、ビーズ法発泡体3として、2つの尻下開口部32を有しているとともに貫通穴31が当該2つの尻下開口部32の間に配置されたビーズ法発泡体3を用いている。この場合、熱耐久性に優れた後部座席用シートパッドを容易に得ることができる。また、この場合、シートパッド1の尻下部分の硬さが低く抑えられるため、着座時の快適性も確保された後部座席用シートパッドを得ることができる。
【0056】
上述のとおり、本発明によれば、熱耐久性に優れたシートパッドと、当該シートパッドを容易に得るための、シートパッドの製造方法と、を提供することができる。
【0057】
上述したところは、本発明の一実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、シートパッド1は、クッションパッドとしたが、クッションパッドとバックパッドとを組み合わせたものとすることができる。この場合、本発明に係るシートパッドは、クッションパッド、バックパッド及びクッションパッドの少なくともいずれか1つに適用させることができる。また、本発明に係るシートパッドは、クッションパッド、バックパッド及びクッションパッドのいずれかのみとすることもできる。さらに、本発明に係るシートパッドは、前部座席用シートパッドとすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1:シートパッド, 1f2:シートパッドの下面, 2:軟質発泡体, 2f2:軟質発泡体の下面, 21:上側軟質発泡体, 22:下側軟質発泡体, 3:ビーズ法発泡体, 3f1:ビーズ法発泡体の上面, 3f2:ビーズ法発泡体の下面, 31:貫通穴, 32:尻下開口部, 10:成形型, 11:ガス抜き部, C:キャビティ, S:隙間