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特開2022-174629バイオガスの二酸化炭素改質触媒、その製造方法、および、それを用いた水素製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174629
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】バイオガスの二酸化炭素改質触媒、その製造方法、および、それを用いた水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/889 20060101AFI20221116BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20221116BHJP
   B01J 23/83 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B01J23/889 M
C01B3/38
B01J35/04 321A
B01J37/08
B01J37/16
B01J37/02 101A
B01J23/755 M
B01J23/83 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080550
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】許 亜
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA05
4G140EB03
4G140EB32
4G140EB37
4G140EC01
4G140EC02
4G140EC04
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA17
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04B
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC16A
4G169BC22A
4G169BC31A
4G169BC35A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC52A
4G169BC56A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC64A
4G169BC64B
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC73A
4G169BD05A
4G169CC40
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA21
4G169EA24
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169FB14
4G169FB17
4G169FB34
4G169FB43
4G169FC04
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】 バイオガスのCOを除去することなく水素製造するためのバイオガスCO改質触媒、その製造方法およびそれを用いた水素製造装置を提供すること。
【解決手段】 本発明のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒は、金属箔からなるハニカム構造体と、ハニカム構造体に担持された金属粒子からなる金属活性層とを備え、金属粒子は、少なくともニッケル(Ni)を含む。金属粒子は、Reおよび/またはCeであるさらなる金属元素を含有してもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔からなるハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体に担持された金属粒子からなる金属活性層と
を備え、
前記金属粒子は、少なくともニッケル(Ni)を含む、バイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒。
【請求項2】
前記金属粒子は、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、および、銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択されるさらなる金属元素を含む、請求項1に記載のCO改質触媒。
【請求項3】
前記さらなる金属元素は、Reおよび/またはCeである、請求項2に記載のCO改質触媒。
【請求項4】
前記金属粒子は、NiとReまたはCeとからなり、
前記Niは、10wt%以上80wt%以下の範囲であり、
前記ReまたはCeは、20wt%以上90wt%以下の範囲である、請求項3に記載のCO改質触媒。
【請求項5】
前記Niは、45wt%以上60wt%以下の範囲であり、
前記ReまたはCeは、40wt%以上55wt%以下の範囲である、請求項4に記載のCO改質触媒。
【請求項6】
前記金属粒子は、NiとReとCeとを含み、
前記Niは、10wt%以上75wt%以下の範囲であり、
前記Reは、5wt%以上40wt%以下の範囲であり、
前記Ceは、0.5wt%以上50wt%以下の範囲である、請求項3に記載のCO改質触媒。
【請求項7】
前記Niは、25wt%以上35wt%以下の範囲であり、
前記Reは、25wt%以上35wt%以下の範囲であり、
前記Ceは、25wt%以上35wt%以下の範囲である、請求項6に記載のCO改質触媒。
【請求項8】
前記金属粒子は、1nm以上500nm以下の範囲の粒径を有する、請求項1~7のいずれかに記載のCO改質触媒。
【請求項9】
前記金属粒子は、10nm以上200nm以下の範囲の粒径を有する、請求項8に記載のCO改質触媒。
【請求項10】
前記金属箔は、ニッケルまたはニッケル基合金、鉄基合金、または、ステンレスである、請求項1~9のいずれかに記載のCO改質触媒。
【請求項11】
前記ハニカム構造体は、400セル数/in以上2500セル数/in以下のセル密度を有する、請求項1~10のいずれかに記載のCO改質触媒。
【請求項12】
金属箔からなるハニカム構造体を、ニッケル(Ni)の強酸塩溶液に含侵させ、前記ハニカム構造体の細孔表面にNiの強酸塩粉末層を形成することと、
前記強酸塩粉末層を熱分解することで、前記Niの酸化物粒子層を形成することと、
前記酸化物粒子層を還元することで、Niを含有する金属粒子からなる金属活性層を形成することと
を包含する、請求項1~11のいずれかに記載のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒の製造方法。
【請求項13】
前記Niの強酸塩粉末層を形成することに続いて、さらなる金属元素の強塩酸粉末層を形成することを包含し、前記さらなる金属元素は、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)および銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Niの酸化物粒子層を形成することに続いて、さらなる金属元素の強塩酸粉末層を形成することと、前記さらなる金属元素の強酸塩粉末層を熱分解することで、前記さらなる金属元素の酸化物粒子層を形成するステップとを包含し、
前記さらなる金属元素は、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)および銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記Niの強塩酸粉末層を形成することに先立って、前記ハニカム構造体の細孔表面を酸処理する、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記酸処理は、硝酸、塩酸および硫酸からなる群から選択される強酸を用いる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
バイオガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給された前記バイオガスから二酸化炭素(CO)改質反応を生じる触媒反応部と
を備え、
前記触媒反応部は、請求項1~11のいずれかに記載のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒を備える、水素製造装置。
【請求項18】
前記供給部は、前記バイオガスに加えて水蒸気をさらに供給する、請求項17に記載の水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒、その製造方法、および、それを用いた水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会・カーボンニュートラルの目標を達成するには、現在の化石燃料依存から脱出し、バイオマスなどのあらゆる再生可能なエネルギー資源をベースにした持続可能なエネルギー供給システムの構築が必要不可欠となる。
【0003】
近年、メタン発酵技術を利用したウェット系バイオマスの利活用プロジェクトが数多く実施されているが、生成されたバイオガス(主にメタンと二酸化炭素を含有する。典型的な組成:メタン60%、二酸化炭素40%)の利用のほとんどが、CO放出を伴う熱効率の低い直接燃焼や発電に限られている。
【0004】
最近、バイオガスの水素エネルギー変換技術の研究開発が始まっているが、その内容は、バイオガス中のCOを分離除去しており、メタンのみの利用にとどまっている(例えば、特許文献1を参照)。このため、COを有効利用してバイオガスの水素エネルギーへの変換技術を確立できれば、バイオガスの水素への転換の大幅なコストダウンと、最大のCO削減効果が得られる。
【0005】
一方、メタンから種々の触媒を用いて合成ガスを製造する技術がされている(例えば、特許文献2、非特許文献1を参照)。特許文献2によれば、ニッケル箔ハニカム構造体にニッケル、ニッケル-レニウム合金、ニッケル-ルテニウム合金の金属活性層を備えた触媒を用いた、メタンの水蒸気改質(CH+HO=3H+CO)を報告する。しかしながら、特許文献2の触媒をバイオガスの改質に用いた報告はない。
【0006】
非特許文献1によれば、ステンレス製ハニカム構造体に多孔質アルミナ層と細孔にニッケル粒子とを備えたニッケル基ハニカム触媒を用いた、メタンのCO改質(ドライリフォーミング、CH+CO=2H+2CO)を報告する。
【0007】
メタンのCO改質は、バイオガス中のCOを利用したCO改質と同様の反応式であるが、メタンのCO改質において、炭素析出による触媒劣化、それによる反応管の閉塞が問題となっていた。また、通常メタンのCO改質におけるメタンは天然ガス由来、COは火力発電由来であり、バイオガスのCO改質とは反応ガス由来源が異なっている。さらに、メタンのCO改質反応式におけるメタン/COの化学量論比は1であるが、バイオガスのCO改質では、同様の反応式であっても、バイオガスのメタン/COの化学量論比はおよそ1.5である。このように類似した反応であっても、バイオガスのCO改質において、メタンのCO改質に用いる触媒を必ずしも適用できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-206402号公報
【特許文献2】特開2002-028490号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Choji Fukuharaら,Applied Catalysis A: General,468,2013,18-25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、バイオガスのCOを除去することなく水素製造するためのバイオガスCO改質触媒、その製造方法およびそれを用いた水素製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒は、金属箔からなるハニカム構造体と、前記ハニカム構造体に担持された金属粒子からなる金属活性層とを備え、前記金属粒子は、少なくともニッケル(Ni)を含み、これにより上記課題を解決する。
前記金属粒子は、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、および、銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択されるさらなる金属元素を含んでよい。
前記さらなる金属元素は、Reおよび/またはCeであってもよい。
前記金属粒子は、NiとReまたはCeとからなり、前記Niは、10wt%以上80wt%以下の範囲であり、前記ReまたはCeは、20wt%以上90wt%以下の範囲であってもよい。
前記Niは、45wt%以上60wt%以下の範囲であり、前記ReまたはCeは、40wt%以上55wt%以下の範囲であってもよい。
前記金属粒子は、NiとReとCeとを含み、前記Niは、10wt%以上75wt%以下の範囲であり、前記Reは、5wt%以上40wt%以下の範囲であり、前記Ceは、0.5wt%以上50wt%以下の範囲であってもよい。
前記Niは、25wt%以上35wt%以下の範囲であり、前記Reは、25wt%以上35wt%以下の範囲であり、前記Ceは、25wt%以上35wt%以下の範囲であってもよい。
前記金属粒子は、1nm以上500nm以下の範囲の粒径を有してもよい。
前記金属粒子は、10nm以上200nm以下の範囲の粒径を有してもよい。
前記金属箔は、ニッケルまたはニッケル基合金、鉄基合金、または、ステンレスであってもよい。
前記ハニカム構造体は、400セル数/in以上2500セル数/in以下のセル密度を有してもよい。
本発明のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒の製造方法は、金属箔からなるハニカム構造体を、ニッケル(Ni)の強酸塩溶液に含侵させ、前記ハニカム構造体の細孔表面にNiの強酸塩粉末層を形成することと、前記強酸塩粉末層を熱分解することで、前記Niの酸化物粒子層を形成することと、前記酸化物粒子層を還元することで、Niを含有する金属粒子からなる金属活性層を形成することとを包含、これにより上記課題を解決する。
前記Niの強酸塩粉末層を形成することに続いて、さらなる金属元素の強塩酸粉末層を形成することを包含し、前記さらなる金属元素は、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)および銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択されてもよい。
前記Niの酸化物粒子層を形成することに続いて、さらなる金属元素の強塩酸粉末層を形成することと、前記さらなる金属元素の強酸塩粉末層を熱分解することで、前記さらなる金属元素の酸化物粒子層を形成するステップとを包含し、前記さらなる金属元素は、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)および銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択されてもよい。
前記Niの強塩酸粉末層を形成することに先立って、前記ハニカム構造体の細孔表面を酸処理してもよい。
前記酸処理は、硝酸、塩酸および硫酸からなる群から選択される強酸を用いてもよい。
本発明の水素製造装置は、バイオガスを供給する供給部と、前記供給部から供給された前記バイオガスから二酸化炭素(CO)改質反応を生じる触媒反応部とを備え、前記触媒反応部は、上記バイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒を備え、これにより上記課題を解決する。
前記供給部は、前記バイオガスに加えて水蒸気をさらに供給してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒は、金属箔からなるハニカム構造体と、ハニカム構造体に担持された金属粒子からなる金属活性層とをを備え、金属粒子は、少なくともニッケル(Ni)を含む。これにより、バイオガスのCO改質を可能に、水素を含む合成ガスを製造できる。特に、耐炭素析出性に優れるため、反応管の閉塞の虞がなく、長時間使用可能である。また、500~800℃程度の比較的低温でバイオガスの改質が可能であるため、本発明の触媒を採用すればエネルギー効率が向上した、バイオガスを用いた水素製造装置を提供できる。また、本発明の触媒は天然ガス及び石油などからのメタンのCO改質にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のバイオガスのCO改質触媒を示す模式図
図2】本発明のCO改質触媒の製造工程を示すフローチャート
図3】本発明のCO改質触媒の製造工程を示す別のフローチャート
図4】本発明のCO改質触媒の製造工程を示すさらに別のフローチャート
図5】本発明の水素製造装置を示す模式図
図6】例3および例4の試料のSEM像を示す図
図7】例1~例4の試料を用いたバイオガスのCO改質によるメタン転換率(A)およびCO転換率(B)を示す図
図8】例4の試料を用いたバイオガスのCO改質における反応管内の内圧の変化を示す図
図9】反応後の例4の試料のSEM像を示す図
図10】反応後の例4の試料のTGA曲線を示す図
図11】例1~例4の試料を用いたバイオガスのCO+HO共改質によるメタン転換率(A)およびCO転換率(B)を示す図
図12】例4の試料を用いたバイオガスのCO+HO共改質における反応管内の内圧の変化を示す図
図13】反応後の例4の試料のSEM像を示す図
図14】反応後の例4の試料のTGA曲線を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0015】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明のバイオガスのCO改質触媒、および、その製造方法とについて説明する。
【0016】
図1は、本発明のバイオガスのCO改質触媒を示す模式図である。
【0017】
本発明のバイオガスのCO改質触媒(以降では単にCO改質触媒と呼ぶ)100は、金属箔110からなるハニカム構造体と、それに担持された金属粒子120からなる金属活性層130とを備える。
【0018】
図1に示すように、ハニカム構造体とは、その中心軸方向に沿って形成された多角柱の流路(セル)が集合した構造体であり、六角柱に限らず、三角柱、四角柱など多角柱のセルが集合しているものも含む。本発明のCO改質触媒100は、このようなハニカム構造体を有するので、バイオガスの通過を容易にし、反応を促進できる。また、図1では全体として円柱状のハニカム構造体が示されるが、ハニカム構造体は、円柱に限らず、設置されるべき反応管の形状に応じて多角柱であってもよい。
【0019】
本発明のCO改質触媒100は、金属粒子120として、少なくともニッケル(Ni)を含む。これにより、バイオガスのCO改質を可能にし、水素を含む合成ガスを製造できる。表面積の大きなハニカム構造体110に担持されるので、金属活性層130の表面積をさらに大きくでき、高効率で水素を製造できる。本発明のCO改質触媒100は、例えば、非特許文献1の触媒とはアルミナを使用しない点で異なる。
【0020】
これまで、Niを触媒として、メタンの水蒸気改質およびメタンのCO改質の報告はあるが、バイオガスのCO改質については報告はない。驚くべきことに、本発明のCO改質触媒100によれば、優れた耐炭素析出性により触媒劣化が小さく、反応管を閉塞することがない。このような効果については、実施例で詳述する。以降では各構成要素について詳細に説明する。
【0021】
金属箔110は、好ましくは、ニッケルまたはニッケルを主成分とするニッケル基、鉄を主成分とする鉄基合金、あるいは、ステンレスであり得る。これにより金属粒子130を担持し、金属活性層140を構成できる。金属箔110は、好ましくは、ニッケルまたはニッケル基合金が好ましい。これにより、ハニカム構造体そのものも触媒として機能し得るので、高い触媒活性が得られる。なお、本願明細書において、主成分とする量は、主成分とする金属の含有量が50wt%以上であることをいう。
【0022】
金属箔110の厚さは、例えば、数μm~数百μmであってよく、特に制限はない。加工性の観点から、好ましくは、20μm以上100μm以下の範囲である。
【0023】
ハニカム構造体は、好ましくは、400セル数/in以上2500セル数/in以下のセル密度を有する(in:インチ、1インチ=2.54cm)。セル密度を400セル数/in以上とすることにより、金属粒子120の担持面積を大きくでき、触媒活性能を向上できる。セル密度を2500セル数/in以下とすることにより、バイオガスを通過させた際の圧力損失が大きくなるのを抑制できる。
【0024】
ハニカム構造体は、触媒活性能の観点からは、より好ましくは、1000セル数/in以上2500セル数/in以下、なお好ましくは、2000セル数/in以上2500セル数/in以下のセル密度を有する。
【0025】
なお、本願明細書において、セル密度は、(ハニカム構造体に使用する波箔の長さ/ピッチ距離×2)/ハニカム構造体の断面積のようにして算出される。
【0026】
図1に示すハニカム構造体は、平板状の金属箔と、波状の金属箔とを重ね合わせ、巻回することによって得られるが、ハニカム構造体の製造方法はこれに限らない。
【0027】
金属活性層130は、上述したように、ハニカム構造体に担持されるため、粉体化しにくく、熱伝導性に優れた金属粒子120からなるので、CO改質触媒100の表面積を増大できる。これにより、500~800℃程度の比較的低温でバイオガスの改質が可能となり、粉体状の触媒に比べて格段に耐炭素析出性に優れる。
【0028】
金属粒子120は、1μm以下の微細化された金属粒子であり、好ましくは、1nm以上500nm以下の範囲の粒径を有する。この範囲であれば、安定した触媒活性を提供できる。
【0029】
金属粒子120は、より好ましくは、10nm以上200nm以下の範囲の粒径を有する。この範囲であれば、表面積が増大するので、さらに高い触媒活性を提供できる。
【0030】
金属粒子120は、触媒活性および耐炭素析出性の観点から、なお好ましくは、50nm以上195nm以下の範囲、50nm以上180nm以下の範囲、60nm以上115nm以下の範囲の粒径を有する。
【0031】
なお、本願明細書において、粒径は、電子顕微鏡画像を基にして、平均40~100個の粒子について、Image J(ver. 1.51n;オープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェア)によって測定された平均値である。
【0032】
金属粒子110は、好ましくは、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、および、銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択されるさらなる金属元素を含む。これにより、さらに高い触媒活性および耐炭素析出性が得られる。中でも、金属粒子は、Reおよび/またはCeをさらに含有するとよい。これらの元素であれば、特に、500~800℃の低温でバイオガスの改質を促進でき、高い触媒活性を長時間維持できる。さらに好ましくは、金属粒子は、ReおよびCeを含有するとよい。これらの元素であれば、耐炭素析出性に優れ、500~800℃の低温でバイオガスの改質をさらに促進でき、高い触媒活性をより長時間維持できる。
【0033】
金属粒子110が、2種以上の金属元素を含有する場合、金属粒子は2種以上の金属元素の合金であってもよいし、単金属の混合物であってもよいが、触媒活性の観点から、合金が好ましい。
【0034】
金属粒子110が、NiとReまたはCeとを含有する場合、好ましくは、Niは、10wt%以上80wt%以下の範囲であり、ReまたはCeは、20wt%以上90wt%以下の範囲である。この範囲であれば、高い触媒活性が得られる。この場合、なお好ましくは、Niは、45wt%以上60wt%以下の範囲であり、ReまたはCeは、40wt%以上55wt%以下の範囲である。この範囲であれば、金属粒子110は安定した合金となり、高い触媒活性が得られる。本願明細書において、wt%を質量パーセント(mass%)と表記してもよい。
【0035】
Re原子は、水素原子との結合エネルギーが大きく、Ni原子上で生成した水素が原子状態でRe原子にトラップされ、水素スピルオーバー効果によりNi原子の酸化が抑制されることで、高い触媒活性が維持される。
【0036】
Ce原子は、3価と4価の価数変化により酸素を貯蔵供給能力(酸素ストレージ能)を有するため、特に、Reとともに用いると、Ni-Re合金触媒の近傍の雰囲気変動を抑制し、高い触媒活性が維持される。
【0037】
金属粒子110が、NiとReとCeとを含有する場合、好ましくは、Niは、10wt%以上75wt%以下の範囲であり、Reは、5wt%以上40wt%以下の範囲であり、Ceは、0.5wt%以上50wt%以下の範囲である。この範囲であれば、高い触媒活性が得られる。この場合、なお好ましくは、Niは、25wt%以上35wt%以下の範囲であり、Reは、25wt%以上35wt%以下の範囲であり、Ceは、25wt%以上35wt%以下の範囲である。この範囲であれば、金属粒子110は安定した合金となり、高い触媒活性および高い耐炭素析出性が得られる。
【0038】
なお、金属活性層130は、Niのみを含有する金属粒子、および、Niとさらなる金属元素とを含有する金属粒子の両方を含んでもよい。
【0039】
次に、本発明のCO改質触媒の例示的な製造方法を説明する。
図2は、本発明のCO改質触媒の製造工程を示すフローチャートである。
ステップS210:金属箔からなるハニカム構造体を、ニッケル(Ni)の強酸塩溶液に含侵させ、ハニカム構造体の細孔表面にNiの強酸塩粉末層を形成する。
【0040】
ハニカム構造体は、Niの強酸塩粉末層を形成する前にアセトン、エタノール等中で超音波洗浄されるとよい。
【0041】
Niの強酸塩粉末層は、Niの強酸塩またはその水和物からなるが、例示的には、Niの硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、メタ過ヨウ素酸塩、チオシアン酸塩等あるが、中でも、反応効率の観点から、Niの硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩およびこれらの水和物が好ましい。
【0042】
Niの強酸塩粉末層の形成は、(A)第1の元素の強酸塩水溶液を用いるか、または、(B)ハニカム構造体の細孔表面を酸を用いて酸処理すればよい。
【0043】
(A)まず、Niの強酸塩水溶液を用いてNiの強酸塩粉末層を形成する場合を説明する。Niの強酸塩水溶液(例えば硝酸ニッケル(II)六水和物水溶液)中にハニカム構造体を浸漬させ、ハニカム構造体の空孔および表面にNiの強塩酸水溶液を被覆する。なお、被覆する量は、ハニカム構造体の重量に対して1wt%以上20wt%以下の範囲が好ましい。
【0044】
次いで、Niの強酸塩水溶液で被覆されたハニカム構造体を乾燥し、余剰の溶媒等を除去すれば、Niの強酸塩またはその水和物からなる強酸塩粉末層が担持されたハニカム構造体が得られる。乾燥は室温等で24時間放置してもよいが、二段階で乾燥することにより、溶媒を効率的に除去できる。二段階の乾燥は、40℃~80℃の温度範囲で3時間~10時間、80℃~150℃の温度範囲で3時間~10時間行えばよい。なお、必要に応じて、Niの強酸塩水溶液への浸漬および乾燥を繰り返し、Niの強酸塩粉末層の量を調製してもよい。
【0045】
(B)次に、酸を用いた酸処理によりNiの強酸塩粉末層を形成する場合を説明する。酸処理は、ハニカム構造体がNiまたはNi基合金である場合に適用できる。酸処理には、硝塩、硫酸、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、過臭素酸、メタ過ヨウ素酸、過マンガン酸、チオシアン酸等を採用できるが、中でも、反応効率の観点から、硝酸、硫酸および塩酸からなる群から選択される強酸が好ましい。これらの強酸(5%~20%溶液)中にハニカム構造体を浸漬させ、ハニカム構造体と強酸とを反応させる。
【0046】
例えば、NiまたはNi基合金からなるハニカム構造体を硝酸に浸漬させると、次式の反応が進み、Niの強塩酸水溶液として硝酸ニッケル層が、ハニカム構造体の表面および空孔に形成される。ここで、硝酸ニッケルは水に易溶であるため、余剰の溶媒を伴う。
Ni+2HNO→Ni(NO+H ・・・(1)
【0047】
次いで、Niの強酸塩水溶液で被覆されたハニカム構造体を乾燥し、余剰の溶媒等を除去すれば、Niの強酸塩またはその水和物からなる強酸塩粉末層が担持されたハニカム構造体が得られる。乾燥は、上述の乾燥と同様に行えばよい。
【0048】
なお、上述の酸処理(B)を行ってから処理(A)を行ってもよい。これにより、Niの強酸塩粉末層の形成を促進できる。
【0049】
ステップS220:ステップS210で得られたNiの強塩酸粉末層を熱分解し、Niの酸化物粒子層を形成する。Niの強塩酸粉末層が担持されたハニカム構造体を、空気中、加熱・焼結すればよい。加熱・焼結条件は、強塩酸粉末層が分解されれば特に制限はないが、例示的には、空気中、400℃以上600℃以下の温度範囲で5時間以上12時間以下の時間である。これにより、1nm以上500nm以下の範囲の粒径を有するNiの酸化物粒子からなる酸化物粒子層が得られる。
【0050】
ステップS230:ステップS220で得られたNiの酸化物粒子層を還元し、Niを含有する金属粒子からなる金属活性層を形成する。具体的には、Niの酸化物粒子層が担持されたハニカム構造体を、還元雰囲気中、加熱すればよい。加熱条件は、酸化物粒子層が還元されれば特に制限はないが、例示的には、水素、窒素、希ガス等の還元雰囲気中、400℃以上600℃以下の温度範囲で少なくとも1時間以上である。加熱時間の上限は特に設定しないが、10時間以上行ってもそれ以上変化はないことから、10時間を上限としてもよい。ここでも、ステップS220で得られた粒径が維持されるため、1nm以上500nm以下の範囲の粒径を有するNiを含有する金属粒子からなる金属活性層が得られる。このようにして、図1を参照して説明した、ハニカム構造体と、その表面および細孔に担持された少なくともNiを含有する金属粒子からなる金属活性層とを備えたバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒が得られる。
【0051】
図3は、本発明のCO改質触媒の製造工程を示す別のフローチャートである。
【0052】
ステップS310およびS320は、図2を参照して説明したステップS210およびS220と同じであるため説明を省略する。
【0053】
ステップS330:ステップS320で得られたNiの酸化物粒子層が担持されたハニカム構造体において、Niの酸化物粒子層上にさらなる金属元素の強酸塩粉末層を形成する。さらなる金属元素は、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)および銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択される。
【0054】
さらなる金属元素の強酸塩粉末層は、さらなる金属元素の強酸塩またはその水和物からなるが、例示的には、さらなる金属元素の強酸塩は、さらなる金属元素の硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、過臭素酸塩、メタ過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、チオシアン酸塩、過レニウム酸塩等あるが、中でも、反応効率の観点から、硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩およびこれらの水和物が好ましい。
【0055】
さらなる金属元素の強酸塩粉末層は、さらなる金属元素の強酸塩水溶液を用いて形成される。具体的には、さらなる金属元素の強酸塩水溶液(例えばさらなる金属元素がReであれば過レニウム酸アンモニウム水溶液)中に、Niの酸化物粒子層を担持したハニカム構造体を浸漬させ、さらなる金属元素の酸化物粒子層を被覆する。なお、被覆する量は、ハニカム構造体の重量に対して0.5wt%以上10wt%以下の範囲が好ましい。これにより、後述する還元処理によって、Niとさらなる金属元素との合金化が進み、触媒活性を向上できる。
【0056】
次いで、さらなる金属元素の強酸塩水溶液で被覆されたNiの酸化物粒子層を有するハニカム構造体を乾燥し、余剰の溶媒等を除去すれば、さらなる金属元素の強酸塩またはその水和物からなる強酸塩粉末層が担持されたハニカム構造体が得られる。乾燥は室温等で24時間放置してもよいが、二段階で乾燥することにより、確実に溶媒を除去できる。二段階の乾燥は、40℃~80℃の温度範囲で3時間~10時間、80℃~150℃の温度範囲で3時間~10時間行えばよい。なお、必要に応じて、さらなる金属元素の強酸塩水溶液への浸漬および乾燥を繰り返し、ハニカム構造体の強酸塩粉末層の量を調製してもよい。
【0057】
ステップS340:ステップS330で得られたさらなる金属元素の強塩酸粉末層を熱分解し、さらなる金属元素の酸化物粒子層を形成する。これにより、Niの酸化物粒子層およびさらなる金属元素の酸化物粒子層が担持されたハニカム構造体が得られる。なお、熱分解の条件は、図2のステップS220と同様である。
【0058】
ステップS350:ステップS340で得られたNiの酸化物粒子層およびさらなる金属元素の酸化物粒子層を還元し、Niおよびさらなる金属元素を含有する金属粒子からなる金属活性層を形成する。なお、還元の条件は、図2のステップS230と同様である。
【0059】
このようにして、図1を参照して説明した、ハニカム構造体と、その表面および細孔に担持されたNiおよびさらなる金属元素を含有する金属粒子(さらなる金属元素は、Re、Ce、Mn、Mo、W、Cr、Ta、Hf、Os、Sn、Zn、La、Ca、Sc、Y、Fe、Co、Mg、Al、SiおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される)からなる金属活性層とを備えたバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒が得られる。金属粒子が2種以上の元素からなる場合には、一部またはその全部が合金化されてよい。
【0060】
なお、ステップS330およびS340を先に行い、次いでステップS310およびS320を行い、最後に、ステップS350を行ってもよい。
【0061】
図4は、本発明のCO改質触媒の製造工程を示すさらに別のフローチャートである。
【0062】
図4は、図3のステップS320を省略し、図3のステップS340と同時にする点が異なる以外は同様である。ステップS410は、図2および図3を参照して説明したステップS210およびS310と同じであるため説明を省略する。
【0063】
ステップS420:ステップS410で得られたNiの強酸塩粉末層が担持されたハニカム構造体において、Niの強酸塩粉末層上にさらなる金属元素の強酸塩粉末層を形成する。さらなる金属元素は、レニウム(Re)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ランタン(La)、カルシュウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)および銅(Cu)からなる群から少なくとも1つ選択される。なお、乾燥の条件は、図3のステップS330と同様であるため説明を省略する。
【0064】
ステップS430:ステップS420で得られたNiの強酸塩粉末層およびさらなる金属元素の強塩酸粉末層を熱分解し、Niおよびさらなる金属元素の酸化物粒子層を形成する。具体的な手順は、図2のステップS210および図3のステップS340と同様であるため説明を省略する。図3と異なり、2種以上の金属元素を含有する金属粒子からなる金属活性層を調製する場合であっても、1回の酸化(熱分解)処理でよいため、効率的である。
【0065】
ステップS440:ステップS430で得られた酸化物粒子層を還元する。これにより、Niおよびさらなる金属元素を含有する金属粒子からなる金属活性層が形成される。なお、還元の条件は、図2のステップS230および図3のステップS350と同様であるため説明を省略する。
【0066】
このようにして、図1を参照して説明した、ハニカム構造体と、その表面および細孔に担持されたNiおよびさらなる金属元素を含有する金属粒子(さらなる金属元素は、Re、Ce、Mn、Mo、W、Cr、Ta、Hf、Os、Sn、Zn、La、Ca、Sc、Y、Fe、Co、Mg、Al、SiおよびCuからなる群から少なくとも1つ選択される)からなる金属活性層とを備えたバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒が得られる。金属粒子が2種以上の元素からなる場合には、一部またはその全部が合金化されてよい。
【0067】
なお、ステップS420を先に行い、次いでステップS410を行い、ステップS430、S440の順に行ってもよい。
【0068】
バイオガスの二酸化炭素改質に用いられる触媒としてCO改質触媒100を説明してきたが、本発明のCO改質触媒100を、天然ガス、石油などからのメタンのCO改質の触媒として使用してもよい。
【0069】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した本発明のバイオガスのCO改質触媒を用いた水素製造装置について説明する。
【0070】
図5は、本発明の水素製造装置を示す模式図である。
【0071】
本発明の水素製造装置500は、典型的には、固定床流通式触媒反応装置である。水素製造装置500は、バイオガスを供給する供給部101と、少なくとも実施の形態1で説明したCO改質触媒を備え、バイオガスから二酸化炭素(CO)改質反応を生じる触媒反応部102とを備えるが、以下に説明する構成に限定されない。
【0072】
供給部101は、少なくともバイオガスを触媒反応部102に供給する。供給部101は、バイオガスに加えて窒素等の不活性ガスや水蒸気を供給するようにしてもよい。バイオガスとともに水蒸気を供給することにより、炭素の析出を抑える効果がある。この場合、例えば、蒸発器103と、水収容部104は、ポンプ105と、重量秤106とをさらに備えてもよい。
【0073】
水収容部104は、水蒸気の原料となる水を収容する。水収容部104には重量秤106が備えられており、水の量を計量することができる。これにより、蒸発器103に供給される水の供給量を把握できる。なお、供給部101は、重量秤106を有さなくてもよい。
【0074】
水収容部104は、ポンプ105を介して、蒸発器103に接続される。ポンプ105は、水収容部104から送られてきた水を蒸発器103に圧送する。
【0075】
蒸発器103は、水を水蒸気に変換し、ボンベ(図示せず)等から供給されたバイオガスと、水蒸気とを含む混合気体を触媒反応部102に供給する。ボンベから供給されるバイオガスの成分は、主にメタンと二酸化炭素を含有する。
【0076】
触媒反応部102は、反応管107と、CO改質触媒10と、電気炉109と、石英ウール108とを有する。CO改質触媒10は、実施の形態1で説明したCO改質触媒100と同じであるため、説明を省略する。触媒反応部102は、ガスクロマトグラフ510と、コールドトラップ111と、フローメータ112とを有していてもよい。これらは水素製造装置500の外部構成として設けられていてもよい。
【0077】
反応管107は、内部が空洞の円筒形状を有している。反応管107は、図5に示すように、円筒形状の中心軸方向を上下方向として配置されている。反応管107の上部は、供給部101に接続されている。反応管107は、供給部101より供給されたバイオガス(必要に応じて水蒸気を含む)を内部に流通させる。
【0078】
CO改質触媒10は、反応管107の内部に配置され、水素を生成する反応を促進する。石英ウール108は、反応管107の内部に配置されたCO改質触媒10の上下に配置され、CO改質触媒10を固定する。電気炉109は、電熱ヒータを有し、所定の反応温度に調整する。
【0079】
ガスクロマトグラフ510は、反応管107の下部に接続される。ガスクロマトグラフ510は、反応管107から排出された排出ガスの組成を測定する。コールドトラップ111は、ガスクロマトグラフ510に接続される。コールドトラップ111は、反応管107からガスクロマトグラフ510を介して排出された排出ガス中の水蒸気を除去する。
【0080】
フローメータ112は、コールドトラップ111に接続される。フローメータ112は、反応管107からガスクロマトグラフ510、コールドトラップ111を介して排出された排出ガスの流量を測定する。
【0081】
次に、本発明の水素製造装置500の動作を説明する。
まず、触媒反応部102に水素が導入されることで、CO改質触媒10は還元処理される。この工程は適宜省略されてもよい。反応管107は、電気炉109により所定の反応温度に調整される。
【0082】
次に、キャリアガスとして窒素等の不活性ガスと共に、バイオガス(必要に応じて水蒸気を含む)が反応管107に供給される。ここではわかりやすさのために、バイオガスは、主成分であるメタンと二酸化炭素であるとして説明する。これにより、式(2)に示す二酸化炭素(CO)改質反応により水素が生成される。
CH+CO→2H+2CO ・・・(2)
水素は、CO(一酸化炭素)、残留メタン、残留二酸化炭素等を含む排出ガスとともに排出される。
【0083】
本発明の水素製造装置によれば、多量の高温水蒸気を必要としないので、省エネ化が期待される。また、本発明の熱伝導率に優れたCO改質触媒を用いるので、500℃以上800℃以下の範囲の比較的低温での改質が可能となり、エネルギー効率のさらなる向上が期待できる。
【0084】
次に、具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例0085】
[ハニカム構造体]
純ニッケル圧延箔(Ni、箔加工:日本クロス圧延)を用いて、コルゲート加工により波状加工し、セル密度(単位平方インチ当たりのセル数)が2300であり、直径8mm、高さ10mmのハニカム構造体を製造した。表1にハニカム構造体の性状を示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1において、構造体体積は、0.5024mであり、幾何学的表面積は、1つのハニカム構造体を製造するに必要な箔(波状加工用の箔を含む)の面積をいい、簡単には、平坦状態の箔の長さ×幅×2で算出された。
【0088】
[例1~例4の試料の調製]
例1~例4では、それぞれ、Niを含有する金属粒子、NiおよびReを含有する金属粒子、NiおよびCeを含有する金属粒子、ならびに、Ni、ReおよびCeを含有する金属粒子からなる金属活性層を備えたハニカム構造体からなる触媒を製造した。
【0089】
まず例1の試料を調製した。
ハニカム構造体をアセトンで超音波洗浄し、乾燥させた後、室温下で、硝酸ニッケル(II)六水和物水溶液(濃度50%)に含侵させ、Niの強酸塩粉末層を形成した(図2のステップS210)。硝酸ニッケル(II)六水和物水溶液層中のNiは、それぞれ、ハニカム構造体に対して、5重量%であった。具体的には、ハニカム構造体を硝酸ニッケル(II)六水和物水溶液に含侵させ、60℃で6時間、次いで、120℃で6時間乾燥させ、余剰の溶媒を除去し、Niの強酸塩(硝酸ニッケル(II)六水和物)粉末層を形成した。
【0090】
次に、Niの強酸塩粉末層からNiの酸化物粒子層を形成した(図2のステップS220)。詳細には、硝酸ニッケル(II)六水和物粉末層が形成されたハニカム構造体を電気箱型炉にセットし、空気中、500℃で6~8時間焼結させ、硝酸ニッケル(II)六水和物を酸化ニッケルにした。
【0091】
次に、酸化物粒子層を還元し、Niを含有する金属粒子の金属活性層を形成した(図2のステップS230)。詳細には、酸化ニッケルが形成されたハニカム構造体を電気管状炉にセットし、水素雰囲気中、430℃で1時間還元し、酸化ニッケルをNi金属にした。このようにして例1の試料(Ni5)を調製した。
【0092】
例2の試料を調製した。
例1と同様に調製した酸化ニッケルを担持したハニカム構造体を、過レニウム酸アンモニウム水溶液(濃度5%)に含侵させ、Reの強酸塩粉末層を形成した(図4のステップS430)。過レニウム酸アンモニウム水溶液層中のReは、ハニカム構造体に対して、5重量%であった。具体的には、ハニカム構造体を過レニウム酸アンモニウム水溶液に含侵させ、60℃で6時間、次いで、120℃で6時間乾燥させ、余剰の溶媒を除去し、酸化ニッケル上にReの強酸塩(過レニウム酸アンモニウム)粉末層を形成した。
【0093】
次に、Reの強酸塩粉末層からReの酸化物粒子層を形成した(図4のステップS440)。詳細には、酸化ニッケル上に過レニウム酸アンモニウムが形成されたハニカム構造体を電気箱型炉にセットし、空気中、500℃で6~8時間焼結させ、酸化ニッケル上に酸化レニウムを形成した。
【0094】
次に、酸化物粒子層を還元し、NiおよびReを含有する金属粒子の金属活性層を形成した(図4のステップS450)。詳細には、酸化ニッケルおよび酸化レニウムが形成されたハニカム構造体を電気管状炉にセットし、水素雰囲気中、430℃で1時間還元し、酸化ニッケルおよび酸化レニウムをNiおよびReの金属にした。このようにして例2の試料(Ni5Re5)を調製した。
【0095】
例3の試料を調製した。
例1と同様に調製した酸化ニッケルを担持したハニカム構造体を、硝酸セリウム水溶液(濃度10wt%)に含侵させ、Ceの強酸塩粉末層を形成した(図4のステップS430)。硝酸セリウム水溶液層中のCeは、ハニカム構造体に対して、4.5重量%であった。具体的には、ハニカム構造体を硝酸セリウム水溶液に含侵させ、60℃で6時間、次いで、120℃で6時間乾燥させ、余剰の溶媒を除去し、酸化ニッケル上にCeの強酸塩(硝酸セリウム)粉末層を形成した。
【0096】
次に、Ceの強酸塩粉末層からCeの酸化物粒子層を形成した(図4のステップS440)。詳細には、酸化ニッケル上に硝酸セリウムが形成されたハニカム構造体を電気箱型炉にセットし、空気中、500℃で6~8時間焼結させ、酸化ニッケル上に酸化セリウムを形成した。
【0097】
次に、酸化物粒子層を還元し、NiおよびCeを含有する金属粒子の金属活性層を形成した(図4のステップS450)。詳細には、酸化ニッケルおよび酸化セリウムが形成されたハニカム構造体を電気管状炉にセットし、水素雰囲気中、430℃で1時間還元し、酸化ニッケルおよび酸化セリウムをNiおよびCeの金属にした。このようにして例3の試料(Ni5Ce4)を調製した。
【0098】
例4の試料を調製した。
例2と同様に調製した酸化ニッケルおよび酸化レニウムを担持したハニカム構造体を、硝酸セリウム水溶液(濃度10wt%)に含侵させ、Ceの強酸塩粉末層を形成した(図4のステップS430)。硝酸セリウム水溶液層中のCeは、ハニカム構造体に対して、5重量%であった。具体的には、ハニカム構造体を硝酸セリウム水溶液に含侵させ、60℃で6時間、次いで、120℃で6時間乾燥させ、余剰の溶媒を除去し、酸化ニッケルおよび酸化レニウム上にCeの強酸塩(硝酸セリウム)粉末層を形成した。
【0099】
次に、Ceの強酸塩粉末層からCeの酸化物粒子層を形成した(図4のステップS440)。詳細には、酸化ニッケルおよび酸化レニウム上に硝酸セリウムが形成されたハニカム構造体を電気箱型炉にセットし、空気中、500℃で6~8時間焼結させ、酸化ニッケルおよび酸化レニウム上に酸化セリウムを形成した。
【0100】
次に、酸化物粒子層を還元し、Ni、ReおよびCeを含有する金属粒子の金属活性層を形成した(図4のステップS450)。詳細には、酸化ニッケル、酸化レニウムおよび酸化セリウムが形成されたハニカム構造体を電気管状炉にセットし、水素雰囲気中、430℃で1時間還元し、酸化ニッケル、酸化レニウムおよび酸化セリウムをNi、ReおよびCeの金属にした。このようにして例4の試料(Ni5Re5Ce5)を調製した。
【0101】
このようにして得られた例1~例4の試料について、表面のモルフォロジー、組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)付属の走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子(JEOL)製、FE-SEM JSM-7000F)に測定した。例1~例4の粒子径を、SEM像から40~100個の粒子についてImage J(ver. 1.51n;オープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェア)を用いて算出した。例1~例4の試料について全自動ガス吸着装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、BELSORP36)を用い窒素吸脱着等温線を測定し、BET法比表面積を測定した。結果を図6および表2に示す。
【表2】
【0102】
図6は、例3および例4の試料のSEM像を示す図である。
【0103】
図6によれば、図2および図3の方法を実施することにより、ハニカム構造体の表面に金属粒子からなる金属活性層が形成されたことが確認された。図示しないが、例1および例2の試料も同様の形態を示した。
【0104】
表2の結果を参照すれば、金属活性層中の各金属元素の質量パーセントは、仕込み組成と実質一致した。得られた試料の粒子径は、Niの含有量が低減するにつれて、小さくなった。また、試料のBET法比表面積は、Niの含有量が低減するにつれて、大きくなった。
【0105】
[例1~例4の試料を用いたバイオガスのCO改質]
図5に示す固定床流通式反応装置を用いて、例1~例4の試料のバイオガスのCO改質に対する触媒特性を調べた。バイオガスには、60%メタンと40%COとを含有する模擬ガスを使用した。703K(430℃)で、窒素気流中、1時間の還元処理後、表3に示す条件でCO改質を行った。
【0106】
【表3】
【0107】
700℃から50℃間隔で降温させ、各温度で5時間保持した。出口側のガス組成をクロマトグラフ510(図5)で分析し、ガス総流量をフローメータ112(図5)で測定した。これにより、メタンとCOとの転換率を計算した。また、測定時の反応管107(図5)内の内圧を測定した。炭素析出量を、反応後の試料の示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製、TG-60)を用いて熱重量示差熱分析(TG-DTA)により算出した。昇温速度5℃/分、大気流量50mL/分で、室温から1173K(900℃)まで昇温しながら、重量変化を測定した。また、反応後の試料の様子をSEM像で観察した。これらの結果を図7図10に示す。
【0108】
図7は、例1~例4の試料を用いたバイオガスのCO改質によるメタン転換率(A)およびCO転換率(B)を示す図である。
図8は、例4の試料を用いたバイオガスのCO改質における反応管内の内圧の変化を示す図である。
【0109】
図7および図8には、参考のため、商用Ni/Al粒状触媒(Clariant社製、FCR-4-02)の結果(単にFCR-4と示す)を併せて示す。図7によれば、いずれの試料も、測定した温度範囲において、バイオガスをCO改質することが示された。特に、測定した温度範囲において、例1(Ni5)、例2(Ni5Re5)、例3(Ni5Ce4)、例4(Ni5Re5Ce5)の順に転換率は向上し、例4のそれは、商用Ni/Al粒状触媒のそれと同等の高い触媒活性を示した。このことから、例1~例4の試料は、バイオガスのCO改質触媒として機能することが示され、特に、NiとReとCeとを含有する試料は、高い触媒活性を示し、NiとCeとを含有する試料は次いで高い触媒活性を示した。
【0110】
さらに、図7および図8に示すように、例4(Ni5Re5Ce5)は、700℃で商用Ni/Al粒状触媒と同等の高いメタン転化率およびそれと同レベルのCO転化率を示した。しかしながら、商用Ni/Al粒状触媒は、反応開始後直ぐにメタン転化率とCO転化率とは低下し、反応開始50分後反応管内の圧力も上がり始め、反応開始2時間後反応管内圧は反応装置の設定上限(0.2MPa)になり、実験強制的に中断された。これは、Ni/Al粒状触媒に炭素析出が生じるとともに、触媒粉体化による反応管が閉塞されたためと考える。一方、例4の試料は、反応管内の内圧の上昇を示さなかった。図示しないが、例1~例3の試料も同様に、反応管内の内圧の上昇を示さなかった。このことから、例1~例4の試料は、耐炭素析出性に優れたバイオガスのCO改質触媒であることが示唆される。
【0111】
図9は、反応後の例4の試料のSEM像を示す図である。
【0112】
反応前の図6(B)と反応後の図9とを比較すると、金属活性層の金属粒子の粒径が大きくなっていた。これは、析出した炭素によるものと考える。
【0113】
図10は、反応後の例4の試料のTGA曲線を示す図である。
【0114】
図10には、参考のため、反応後の商用Ni/Al粒状触媒のTGA曲線についても示す。図10によれば、例4の試料の炭素析出による重量変化は21%であり、Ni/Al粒状触媒のそれは20%であり、ほぼ同様であった。しかしながら、例4の試料の反応条件が、反応時間1200分(5時間@700℃+5時間@650℃+5時間@600℃+5時間@550℃)であり、Ni/Al粒状触媒の反応条件が、反応時間120分(2時間@520℃)であることに基づけば、例4の試料における炭素析出速度は、商用Ni/Al粒状触媒に比べて劇的に遅いことが分かる。図示しないが、例1~例3の試料も、例4と同様のTGA曲線を示した。このことから、例1~例4の試料は、耐炭素析出性に優れたバイオガスのCO改質触媒であることが示唆される。
【0115】
以上から、本発明のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒は、金属箔からなるハニカム構造体と、それに担持された少なくともNiを含有する金属粒子からなる金属活性層とを備えることにより、優れた触媒活性を示すとともに、耐炭素析出性および触媒粉体化抑制に優れる。
【0116】
[例1~例4の試料を用いたバイオガスのCO+HO共改質]
図5に示す固定床流通式反応装置を用いて、バイオガスの転換率向上および組成調整を目的として、例1~例4の試料のバイオガスのCO+HO共改質に対する触媒特性を調べた。バイオガスには、60%メタンと40%COとを含有する模擬ガスを使用し、水蒸気を流した。703K(430℃)で、窒素気流中、1時間の還元処理後、表4に示す条件でCO+HO共改質を行った。
【0117】
【表4】
【0118】
バイオガスのCO改質と同様にして、メタンとCOとの転換率、反応管内の内圧、炭素析出量を算出し、反応後の試料の様子をSEM像で観察した。これらの結果を図11図14に示す。
【0119】
図11は、例1~例4の試料を用いたバイオガスのCO+HO共改質によるメタン転換率(A)およびCO転換率(B)を示す図である。
図12は、例4の試料を用いたバイオガスのCO+HO共改質における反応管内の内圧の変化を示す図である。
【0120】
図11および図12には、参考のため、商用Ni/Al粒状触媒の結果を併せて示す。図11によれば、いずれの試料も、測定した温度範囲において、バイオガスをCO+HO共改質することが示された。
【0121】
特に、測定した温度範囲において、例1(Ni5)、例2(Ni5Re5)、例3(Ni5Ce4)、例4(Ni5Re5Ce5)の順に転換率は向上し、例3および例4のそれは、商用Ni/Al粒状触媒のそれと同等に高い触媒活性を示した。このことから、例1~例4の試料は、バイオガスのCO+HO共改質触媒として機能することが示され、特に、NiとReとCeとを含有する試料は、高い触媒活性を示し、NiとCeとを含有する試料は次いで高い触媒活性を示した。
【0122】
また、図7のバイオガスのCO改質と比較すると、水蒸気を用いることにより、例1~例4の試料のメタンの転換率は、向上した。例えば、例4の試料について、700℃、5時間のバイオガスのCO改質によるメタンの転換率は55%であったが、700℃、5時間のバイオガスのCO+HO共改質によるメタンの転換率は75%であった。
【0123】
なお、図11の波動幅は、図7のそれに比べて大きくなっているが、これは、水の供給速度を安定化することにより改善する。
【0124】
さらに、図11および図12に示すように、例3(Ni5Ce4)および例4(Ni5Re5Ce5)は、700℃、650℃で商用Ni/Al粒状触媒と同等の高いメタン転化率およびそれと同レベルのCO転化率を示した。しかしながら、商用Ni/Al粒状触媒は、650℃で反応開始20分後反応管内の圧力も上がり始め、反応開始3時間後反応管内圧は反応装置の設定上限(0.2MPa)になり、実験強制的に中断された。これは、Ni/Al粒状触媒に炭素析出が生じるとともに、触媒粉体化による反応管が閉塞されたためと考える。
【0125】
一方、例4の試料は、反応管内の内圧の上昇を示さなかった。図示しないが、例1~例3の試料も同様に、反応管内の内圧の上昇を示さなかった。このことから、例1~例4の試料は、耐炭素析出性に優れたバイオガスのCO+HO共改質触媒であることが示唆される。
【0126】
図13は、反応後の例4の試料のSEM像を示す図である。
【0127】
反応前の図6(B)と反応後の図13とを比較すると、金属活性層の金属粒子の粒径が大きくなっていた。これは、析出した炭素によるものと考える。
【0128】
図14は、反応後の例4の試料のTGA曲線を示す図である。
【0129】
図14には、参考のため、反応後の商用Ni/Al粒状触媒のTGA曲線についても示す。図14によれば、例4の試料の炭素析出による重量変化は6%であり、Ni/Al粒状触媒のそれは11%であり、例4の試料の方が炭素析出量は少なかった。また、例4の試料の反応条件が、反応時間1200分(5時間@700℃+5時間@650℃+5時間@600℃+5時間@550℃)であり、Ni/Al粒状触媒の反応条件が、反応時間400分(5時間@700℃+3時間@650℃)であることに基づけば、例4の試料における炭素析出速度は、商用Ni/Al粒状触媒に比べて劇的に遅いことが分かる。図示しないが、例1~例3の試料も、例4と同様のTGA曲線を示した。このことから、例1~例4の試料は、バイオガスのCO改質触媒であり、HOとの共改質により、触媒活性ならびに耐炭素析出性がさらに向上するが示された。
【0130】
以上から、本発明のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒は、金属箔からなるハニカム構造体と、それに担持された少なくともNiを含有する金属粒子からなる金属活性層とを備えることにより、優れた触媒活性を示すとともに、耐炭素析出性および触媒粉体化抑制に優れる。本発明のバイオガスのCO改質触媒に、HOとの共改質を行えば、触媒活性および耐炭素析出性をさらに向上させることができる。
【0131】
また、特許文献2のメタンの水蒸気改質では、S/C比は3以上が必要となるが、本発明では、表4に示すように、1または1以下であり、多量の高温水蒸気を発生する必要がなく、大きな省エネルギー効果が期待される(必要な熱エネルギー量は水蒸気反応システムの1/3以下になる)。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のバイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒は、高い触媒活性を示し、かつ、耐炭素析出性に優れるため、バイオガスの二酸化炭素改質への使用に限らず、天然ガスなどのメタンの二酸化炭素改質への応用もできる。車両用燃料電池、携帯電話用燃料電池、携帯PC用燃料電池、家庭用定置型燃料電池、水素ステーション、半導体製造等へ水素を供給する水素製造装置に適用される。
【符号の説明】
【0133】
100 バイオガスの二酸化炭素(CO)改質触媒
110 金属箔
120 金属粒子
130 金属活性層
500 水素製造装置
101 供給部
102 触媒反応部
103 蒸発器
104 水収容部
105 ポンプ
106 重量秤
107 反応管
108 石英ウール
109 電気炉
111 コールドトラップ
112 フローメータ
510 ガスクロマトグラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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