(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174630
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】測位装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/43 20100101AFI20221116BHJP
G01S 19/51 20100101ALI20221116BHJP
【FI】
G01S19/43
G01S19/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080552
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】栃村 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一夫
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB03
5J062CC07
5J062EE04
(57)【要約】
【課題】観測局が離れている場合や、観測データの更新間隔が長くて更新から時間が経過している場合においても、測位精度を向上させることができる測位装置を提供する。
【解決手段】測位装置は、移動体に搭載され、RTK-GNSSにおけるフィックス状態において所定の測位周期毎に移動体の位置を測位する測位装置であって、複数の測位衛星についての観測データを取得し設置位置が既知の観測局から観測データを受信する観測データ受信部と、複数の測位衛星から測位信号を受信する測位信号受信部と、移動体の位置を測位する測位部と、観測データ受信部によって受信された観測データが更新されたかどうか検出する更新検出部と、を含み、測位部は、更新検出部によって観測データの更新が検出されない測位周期では、1測位周期前に測位した移動体の位置を基準位置として用いる相対測位によって移動体の位置を測位する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、RTK-GNSSにおけるフィックス状態において所定の測位周期毎に前記移動体の位置を測位する測位装置であって、
複数の測位衛星についての観測データを取得し設置位置が既知の観測局から前記観測データを受信する観測データ受信部と、
前記複数の測位衛星から測位信号を受信する測位信号受信部と、
前記移動体の位置を測位する測位部と、
前記観測データ受信部によって受信された観測データが更新されたかどうか検出する更新検出部と、
を含み、
前記測位部は、前記更新検出部によって前記観測データの更新が検出されない測位周期では、1測位周期前に測位した前記移動体の位置を基準位置として用いる相対測位によって前記移動体の位置を測位する、測位装置。
【請求項2】
前記測位部は、前記更新検出部によって前記観測データの更新が検出された測位周期では、前記観測データ受信部によって受信された前記観測データと、前記測位信号受信部によって受信された測位信号と用い、前記設置位置を基準位置とする相対測位で前記移動体の位置を測位する、請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記測位部は、前記更新検出部によって前記観測データの更新が検出された測位周期では、前記観測データ受信部によって受信された前記観測データと、前記測位信号受信部によって受信された測位信号とに基づいて前記測位信号に含まれる誤差を相殺し、前記誤差が相殺された測位信号を用い、前記設置位置を基準位置とする相対測位で前記移動体の位置を測位する、請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記測位部は、前記更新検出部によって前記観測データの更新が検出されない測位周期では、1測位周期前に測位した前記移動体の位置を基準位置として用い、前記観測データ受信部によって受信された前記観測データと、前記測位信号受信部によって受信された測位信号とに基づいて前記測位信号に含まれる誤差を相殺し、前記誤差が相殺された測位信号に基づいて前記移動体の位置を測位する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測位装置。
【請求項5】
前記測位部は、
前記更新検出部によって前記観測データの更新が検出された測位周期から所定数以内の測位周期では、前記観測データ受信部によって受信された前記観測データと、前記測位信号受信部によって受信された測位信号と用い、前記設置位置を基準位置とする相対測位で前記移動体の位置を測位し、
前記観測データの更新が検出された測位周期から所定数の測位周期よりも後の測位周期では、1測位周期前に測位した前記移動体の位置を基準位置として用いる相対測位によって前記移動体の位置を測位する、請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項6】
前記測位部は、
前記更新検出部によって前記観測データの更新が検出された測位周期から所定数以内の測位周期では、前記観測データ受信部によって受信された前記観測データと、前記測位信号受信部によって受信された測位信号とに基づいて前記測位信号に含まれる誤差を相殺し、前記誤差が相殺された測位信号を用い、前記設置位置を基準位置とする相対測位で前記移動体の位置を測位し、
前記観測データの更新が検出された測位周期から所定数の測位周期よりも後の測位周期では、1測位周期前に測位した前記移動体の位置を基準位置として用いる相対測位において、前記観測データ受信部によって受信された前記観測データと、前記測位信号受信部によって受信された測位信号とに基づいて前記測位信号に含まれる誤差を相殺し、前記誤差が相殺された測位信号に基づいて前記移動体の位置を測位する、請求項5に記載の測位装置。
【請求項7】
前記測位部は、1周波RTKにより、前記移動体の位置を測位する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の測位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の衛星から送信される送信信号についての搬送波位相を計測する測位ユニットと、前記測位ユニットから出力される前記搬送波位相を用いて、予め特定されている特定位置からの車体の相対的な位置変位を求める相対変位算出部と、前記相対変位算出部の算出結果に基づいて、車体が予め設定されている直線状の目標経路に沿って走行するように、車体の走行状態を制御する自動走行制御部とが備えられている作業車がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の作業車の相対変位算出部は、基準局(観測局)で観測された衛星の情報や基準局の正確な位置を表す位置情報を用いないため、測位精度に限界がある。また、複数の測位衛星についての観測データを取得し、正確な設置位置が既知の観測局からの情報を用いてRTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite System)による測位を行うことが考えられる。このような観測局には、国土地理院によって設置されている電子基準点も含まれる。
【0005】
また、測位装置がRTK-GNSSで測位を行う場合には、フィックス解が得られるフィックス状態と、フィックス解が得られないフロート状態とのどちらかになる。一般に、観測局が離れている場合や、観測データの更新間隔が長くて更新から時間が経過している場合には、フィックス状態が得られずにフロート状態になり、測位精度が低下する。
【0006】
また、フィックス状態が得られていても、観測データの更新間隔が長くて更新から時間が経過している場合には、測位精度が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、観測局が離れている場合や、観測データの更新間隔が長くて更新から時間が経過している場合においても、測位精度を向上させることができる測位装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の測位装置は、移動体に搭載され、RTK-GNSSにおけるフィックス状態において所定の測位周期毎に前記移動体の位置を測位する測位装置であって、複数の測位衛星についての観測データを取得し設置位置が既知の観測局から前記観測データを受信する観測データ受信部と、前記複数の測位衛星から測位信号を受信する測位信号受信部と、前記移動体の位置を測位する測位部と、前記観測データ受信部によって受信された観測データが更新されたかどうか検出する更新検出部と、を含み、前記測位部は、前記更新検出部によって前記観測データの更新が検出されない測位周期では、1測位周期前に測位した前記移動体の位置を基準位置として用いる相対測位によって前記移動体の位置を測位する。
【発明の効果】
【0009】
観測局が離れている場合や、観測データの更新間隔が長くて更新から時間が経過している場合においても、測位精度を向上させることができる測位装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の測位装置100を含む測位システム1を示す図である。
【
図2】測位装置100の構成の一例を示す図である。
【
図3】制御装置130が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図4】位置推定結果の水平誤差の一例を示す図である。
【
図5】実施形態の変形例による位置推定結果の水平誤差の標準偏差の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の測位装置を適用した実施形態について説明する。
【0012】
<実施形態>
図1は、実施形態の測位装置100を含む測位システム1を示す図である。
図1において横軸は時間軸を表す。ここでは、一例として、測位装置100が移動体の一例としてのドローン20に搭載されている形態について説明する。測位システム1は、RTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite System)によって高精度な位置測定を可能にする。RTK-GNSSによる測位は、観測局10と、ドローン20に搭載された測位装置100とで測位衛星5から出力される測位信号を受信し、測位衛星5と測位装置100との間の距離を計測し、複数の測位衛星5についての連立方程式を解くことで測位装置100の三次元座標を算出する。
【0013】
ここでは、GNSSの一例であるGPS(Global Positioning System)を用いる形態について説明するため、測位衛星5から出力される測位信号はGPS信号である。しかしながら、GNSSは、GPSに限られるものではなく、GLONASS、北斗(北斗-2、Compass)、Gallileoまたはその他のGNSSを利用して三次元座標を算出してもよい。
【0014】
RTK-GNSSでは、測位装置100は、観測局10から受信した観測データと、測位衛星5から受信した測位信号とを用い、観測局10の設置位置を基準位置とする相対測位によって、測位装置100の位置を測位する。ここでは、測位装置100の位置はドローン20の位置と同義である。
【0015】
観測局10は、設置位置の正確な位置(緯度、経度、標高を表す座標)が既知であり、複数の測位衛星5からGPS電波を受信(取得)して各測位衛星5までの距離を測定する。観測局10は、設置位置を表す位置データと、各測位衛星5までの距離を表す距離データとを含む観測データを常時出力している。観測データに含まれる距離データは、所定期間毎に更新される。観測局10と複数の測位衛星5との位置関係が変動するからである。このような観測局10には、国土地理院の電子基準点が含まれていてもよい。
【0016】
ドローン20は、移動体の一例であり、測位装置100を搭載している。ドローン20は、一例として、測位装置100によって測位されるドローン20の座標に基づいて、ドローン20の航行制御を行う航行制御装置を搭載している。
【0017】
一般的に、RTK-GNSSによる測位を行う場合には、フィックス解が得られるフィックス状態と、フィックス解が得られないフロート状態とのどちらかになる。一般的にフィックス状態においては、観測局10の観測データに基づいて測位を行うことによって数センチメートル程度の高い測位精度が得られる。しかしながら、フロート状態においては、観測局10との間の距離が長いことや、観測データの更新のタイミングからの経過時間が長いこと等の要因によって、測位精度が数メートル程度にまで劣化するおそれがある。
【0018】
また、フィックス状態が得られていても、観測データの更新間隔が長くて更新から時間が経過している場合には、測位精度が低下するおそれがある。例えば、観測局10が観測データを更新する周期が30秒のように比較的長い場合には、次の更新の直前のような場合には、測位精度が低下するおそれがある。
【0019】
実施形態の測位装置100は、フィックス状態が得られる状況での利用を前提とする。フィックス状態が得られる状況は、例えば、大平原のように遠くまで見通しがきき、測位信号を遮る物が存在しない場所に測位装置100が位置するような状況である。
【0020】
また、ここでは、観測局10が観測データを更新する周期は、一例として30秒であることとする。これは、国土地理院の電子基準点が観測データを更新する周期と等しい。実施形態の測位装置100は、フィックス状態において、観測データの更新タイミングからの時間が経過しても、高い測位精度が得られるようにする。
【0021】
図1に示す時刻tにおいて、観測局10が観測データを更新し、測位装置100が同じ観測データを受信したとする。測位装置100の測位周期が1秒であるとすると、次に観測局10が観測データを更新する更新タイミングである時刻t+1(時刻tの1秒後)においても、測位装置100は、同じ観測データを受信することになる。この状況は、29秒後の時刻t+29まで続くことになる。
【0022】
観測データの更新タイミングからの経過時間が長いと、更新タイミングにおいて測定された測位衛星5及び観測局10の間の実際の距離と、更新タイミングから時間が経過したタイミングにおいて測定された測位衛星5及び観測局10の間の実際の距離との差が大きくなるため、フィックス状態が得られる状況においても、測位精度が低下するおそれがある。そこで、実施形態の測位装置100は、フィックス状態が得られる状況において、観測データの更新タイミングからの時間が経過しても、高い測位精度が得られるようにする。
【0023】
<測位装置100の構成>
図2は、測位装置100の構成の一例を示す図である。測位装置100は、観測データ受信部110、測位信号受信部120、及び制御装置130を含む。観測データ受信部110は、観測局10から携帯電話回線を解して観測データを受信する受信器である。測位信号受信部120は、少なくとも4つ以上の測位衛星5から出力される測位信号を受信するGPS受信器である。
【0024】
測位装置100は、一例として、1周波の測位信号(GPS信号)を受信し、携帯電話回線を介して観測局10から観測データを受信し、受信した測位信号(GPS信号)と、受信した観測データとに基づいて測位装置100の位置を測位する方法である1周波RTKを採用している。
【0025】
測位装置100は、測位周期毎にRTK-GNSSによってドローン20の位置を測位するために、受信した測位信号と、受信した観測データとに基づいて測位信号に含まれる誤差を相殺し、誤差を相殺した測位信号に基づいて観測局10の設置位置に対する測位装置100の相対的な位置を求め、求めた相対的な位置と、観測局10の設置位置とに基づいて、測位装置100の位置を求める。
【0026】
制御装置130は、主制御部131、測位部132、更新検出部133、及びメモリ134を有する。制御装置130は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータ又はマイクロコンピュータによって実現される。主制御部131、測位部132、及び更新検出部133は、制御装置130が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ134は、制御装置130のメモリを機能的に表したものである。
【0027】
主制御部131は、制御装置130の処理を統括する処理部であり、測位部132及び更新検出部133が実行する以外の処理を実行する。主制御部131は、例えば、観測データ受信部110に観測データを受信させる指令を出力するとともに、測位信号受信部120に測位信号を受信させる指令を出力する。
【0028】
測位部132は、更新検出部133によって観測データの更新が検出された測位周期では、観測データ受信部110によって受信された観測データと、測位信号受信部120によって受信された測位信号と用い、観測局10の設置位置を基準位置とする相対測位で測位装置100の位置を測位する。観測データの更新が検出された測位周期は、
図1に示す時刻tにおける測位周期である。
【0029】
より具体的には、測位部132は、更新検出部133によって観測データの更新が検出された測位周期では、観測データ受信部110によって受信された観測データと、測位信号受信部120によって受信された測位信号とに基づいて測位信号に含まれる誤差を相殺し、誤差が相殺された測位信号を用い、観測局10の設置位置を基準位置とする相対測位で測位装置100の位置を測位する。
【0030】
また、測位部132は、更新検出部133によって観測データの更新が検出されない測位周期では、1測位周期前に測位した測位装置100の位置を基準位置として用いる相対測位によって測位装置100の位置を測位する。観測データの更新が検出されない測位周期は、
図1に示す時刻t+1~t+29における測位周期である。また、1測位周期前に測位した測位装置100の位置とは、例えば、時刻t+1の1測位周期前に測位した測位装置100の位置は、時刻tにおいて測位された測位装置100の位置である。
【0031】
より具体的には、測位部132は、更新検出部133によって観測データの更新が検出されない測位周期では、1測位周期前に測位した測位装置100の位置を基準位置として用い、今回の測位周期において観測データ受信部110によって受信された観測データと、今回の測位周期において測位信号受信部120によって受信された測位信号とに基づいて測位信号に含まれる誤差を相殺し、誤差が相殺された測位信号に基づいて測位装置100の位置を測位する。
【0032】
更新検出部133は、観測データ受信部110によって受信された観測データの更新を検出する。観測データは、観測局10の設置位置を表す位置データと、各測位衛星5までの距離を表す距離データとを含んでおり、更新されるのは各測位衛星5までの距離を表す距離データである。このため、更新検出部133は、より具体的には、観測データ受信部110によって受信された観測データに含まれる距離データが、1測位周期前に受信された観測データに含まれる距離データと異なる場合に、観測データが更新されたことを検出する。
【0033】
メモリ134は、主制御部131、測位部132、及び更新検出部133が上述の処理を実行する際に利用するプログラムやデータを格納する他、観測データ受信部110及び測位信号受信部120が受信した測位信号及び観測データ等を一時的に格納する。
【0034】
<測位装置100の制御装置130が実行する処理>
図3は、制御装置130が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【0035】
フローがスタートすると、主制御部131は、観測データ受信部110に観測データを受信させる指令を出力する(ステップS1)。これにより、観測データ受信部110による観測データの受信が行われる。
【0036】
主制御部131は、測位信号受信部120に測位信号を受信させる指令を出力する(ステップS2)。これにより、測位信号受信部120による測位信号の受信が行われる。ステップS1で出力される指令によって受信される観測データに含まれる測位衛星5までの距離と、ステップS2で出力される指令によって受信される測位信号によって得られる測位衛星5までの距離とは、観測データ受信部110及び測位信号受信部120において同一時刻に受信された測位信号に基づいて得られる距離である。
【0037】
更新検出部133は、観測データ受信部110によって受信された観測データの更新を検出する(ステップS3)。
【0038】
測位部132は、更新検出部133によって観測データの更新が検出される(S3:YES)と、更新が検出された測位周期では、観測データ受信部110によって受信された観測データと、測位信号受信部120によって受信された測位信号と用い、観測局10の設置位置を基準位置とする相対測位で測位装置100の位置を測位する(ステップS4)。ステップS4の測位はRTK-GNSSによって行われる処理であり、このように測位される位置は、観測データと測位信号とによって推定される測位装置100の推定位置を表す。
【0039】
一方、ステップS3において、更新検出部133によって観測データの更新が検出されていない(S3:NO)場合は、1測位周期前に測位した測位装置100の位置を基準位置として用いる相対測位によって測位装置100の位置を測位する。(ステップS5)。ステップS5の測位はRTK-GNSSによって行われる処理であり、このように測位される位置は、観測データと測位信号とによって推定される測位装置100の推定位置を表す。
【0040】
ステップS4又はS5の処理が終了すると、主制御部131は、一連の処理を終了するかどうかを判定する(ステップS6)。一連の処理を終了するのは、例えばドローン20の電源がオフにされるときである。主制御部131は、一連の処理を終了しないと判定すると、フローをステップS1にリターンする。また、主制御部131は、ドローン20の電源がオフにされる場合は、一連の処理を終了する(エンド)。
【0041】
<位置推定結果の水平誤差>
図4は、位置推定結果の水平誤差の一例を示す図である。
図4(A)には、測位装置100の位置を固定して、33分間にわたって測位を行い、観測データの各更新タイミングから29秒経過した時刻t+29における測位装置100の位置を推定した結果を示す。測位周期は一例として1秒であり、33分間の間における各更新タイミングから29秒経過した時刻t+29における位置推定結果を集めたものである。
図4(A)に示すように、水平誤差の標準偏差は0.74cmであった。また、すべての推定された位置は、約2cm四方の領域内に収まっていた。
【0042】
図4(B)には、比較用に、測位における基準位置を観測局10の設置位置に固定し、測位装置の位置を固定して、33分間にわたって測位を行い、観測データの各更新タイミングから29秒経過した時刻t+29における測位装置の位置を推定した比較例の結果を示す。測位周期は一例として1秒であり、33分間の間における各更新タイミングから29秒経過した時刻t+29における位置推定結果を集めたものである。
図4(B)に示すように、水平誤差の標準偏差は1.08cmであった。また、
図4(A)に比べると、推定された位置は、
図4(A)と同等の約2cm四方の領域から外に飛び出している推定結果を含んでいた。
【0043】
このように、測位装置100は、観測データが更新されたタイミング(上述の時刻t)の測位周期以外では、測位周期前に測位した測位装置100の位置を基準位置として用いる相対測位によって測位装置100の位置を測位することにより、基準位置を観測局10の設置位置に固定する場合に比べて、位置推定結果の水平誤差を約68.5%に低減することができた。
【0044】
比較用の測位装置では、更新タイミングからある程度時間が経過しても基準位置が観測局10の設置位置に固定されているため、測定誤差が大きくなる。これに対して、測位装置100は、観測データが更新されたタイミング(上述の時刻t)の測位周期以外では、測位周期前に測位した測位装置100の位置を基準位置として用いる相対測位によって測位装置100の位置を測位することによって、位置推定精度が向上したことによって、上述のような差が生じたと考えられる。
【0045】
したがって、観測局10が離れている場合や、観測データの更新間隔が長くて更新から時間が経過している場合においても、測位精度を向上させることができる測位装置100を提供することができる。
【0046】
また、更新タイミングからある程度時間が経過した場合に、測位装置100の現在位置を高精度に推定するために、ジャイロセンサや加速度センサ等の計測値を用いることが考えられるが、測位装置100は、ジャイロセンサや加速度センサ等の計測値を用いることなく、測位精度を向上させることができる。
【0047】
また、ドローン20のような移動体にジャイロセンサや加速度センサ等の計測装置を搭載すると、重量の増加の問題、搭載するスペースを確保する問題、移動体が小型である場合には搭載すること自体が困難になる問題等が生じる。これに対して、測位装置100をドローン20のような移動体に設置する場合には、ジャイロセンサや加速度センサ等の計測装置を搭載する必要がないため、上述の様々な問題が生じることなく、低コストで実現することができる。
【0048】
<変形例>
図5は、実施形態の変形例による位置推定結果の水平誤差の標準偏差の一例を示す図である。
図5において、横軸は位置推定開始からの経過時間(秒)を表し、縦軸は各測位周期における縦方向と横方向の位置推定結果の水平誤差の標準偏差を表す。
【0049】
図5における実線の特性は、測位装置100の位置を固定して、観測データの更新タイミング(0秒)から29秒間にわたって30秒毎に33分間にわたって測位を行い、各測位周期で得られた縦方向と横方向の位置推定結果の水平誤差の標準偏差の時間変化を示す。測位周期は1秒であり、更新タイミングの1秒後から29秒後までは、1測位周期前(すなわち1秒前)に測位した測位装置100の位置を基準位置として用いる相対測位によって測位装置100の位置を測位したものである。0秒から29秒までの2秒毎の水平誤差の標準偏差は、30秒毎に33分間にわたって繰り返し測位を行うことによって1秒毎に得た66個の水平誤差の標準偏差である。
【0050】
また、
図5における破線の特性は、比較用に、測位における基準位置を観測局10の設置位置に固定した測位装置において、観測データの更新タイミング(0秒)から29秒間にわたって30秒毎に33分間にわたって測位を行い、各測位周期で得られた縦方向と横方向の位置推定結果の水平誤差の標準偏差の時間変化を示す。測位装置の位置は固定である。
図5における破線の特性は、観測データの更新タイミング(0秒)から29秒間にわたって同一の距離データを用いるとともに、観測局10の設置位置を基準位置として用いて測位した結果を表す。実線の特性と同様に、0秒から29秒までの2秒毎の水平誤差の標準偏差は、30秒毎に33分間にわたって繰り返し測位を行うことによって1秒毎に得た66個の水平誤差の標準偏差である。
【0051】
図5に示すように、実線の特性の水平誤差の標準偏差は、観測データの更新タイミング(0秒)から5秒経過後までは破線の特性の水平誤差の標準偏差よりも高く、6秒経過後から29秒経過後までは、破線の特性の水平誤差の標準偏差よりも低くなった。6秒経過後から29秒経過後までは、更新タイミング(0秒)からの経過時間が長くなるにつれて、実線の特性の水平誤差の標準偏差と、破線の特性の水平誤差の標準偏差との差は大きくなった。
【0052】
これは、今回の測定では、一例として更新タイミング(0秒)から5秒経過後までは、同一の距離データを用いるとともに、観測局10の設置位置を基準位置として用いて測位しても問題が生じなかったことを表す。
【0053】
このため、このように測位装置100による測位の水平誤差の標準偏差と、比較用の測距装置による測位の水平誤差の標準偏差とを予め測定しておき、更新タイミング(0秒)から逆転するタイミング(
図5では5秒後)までは、比較用の測距装置による測位を行い、6秒後から測位装置100による測位を行うようにしてもよい。
【0054】
すなわち、更新タイミング(0秒)から逆転するタイミングまでの測位周期を所定数とすると、測位部132は、更新検出部133によって観測データの更新が検出された測位周期から所定数以内の測位周期では、観測データ受信部110によって受信された観測データと、測位信号受信部120によって受信された測位信号と用い、設置位置を基準位置とする相対測位で測位装置100の位置を測位し、観測データの更新が検出された測位周期から所定数の測位周期よりも後の測位周期では、1測位周期前に測位した測位装置100の位置を基準位置として用いる相対測位によって測位装置100の位置を測位してもよい。
【0055】
より具体的には、測位部132は、更新検出部133によって観測データの更新が検出された測位周期から所定数以内の測位周期では、観測データ受信部110によって受信された観測データと、測位信号受信部120によって受信された測位信号とに基づいて測位信号に含まれる誤差を相殺し、誤差が相殺された測位信号を用い、設置位置を基準位置とする相対測位で測位装置100の位置を測位してもよい。そして、測位部132は、観測データの更新が検出された測位周期から所定数の測位周期よりも後の測位周期では、1測位周期前に測位した測位装置100の位置を基準位置として用いる相対測位において、観測データ受信部110によって受信された観測データと、測位信号受信部120によって受信された測位信号とに基づいて測位信号に含まれる誤差を相殺し、誤差が相殺された測位信号に基づいて測位装置100の位置を測位してもよい。
【0056】
以上、本発明の例示的な実施形態の測位装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 測位システム
5 測位衛星
10 観測局
20 ドローン
100 測位装置
110 観測データ受信部
120 測位信号受信部
130 制御装置
131 主制御部
132 測位部
133 更新検出部
134 メモリ