(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174638
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20221116BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20221116BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20221116BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20221116BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61H3/00 Z
B25J5/00 A
B25J13/00 Z
B25J9/22 Z
H04N7/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080572
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三枝 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 薪雄
【テーマコード(参考)】
3C707
4C046
5C054
【Fターム(参考)】
3C707AS34
3C707AS35
3C707AS36
3C707CS08
3C707JU02
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3C707KS06
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3C707KS16
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3C707KT03
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3C707WA03
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3C707WA17
3C707WL07
3C707WM07
4C046AA01
4C046AA22
4C046AA42
4C046AA48
4C046BB01
4C046CC01
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4C046DD26
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4C046EE24
4C046EE26
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4C046EE36
5C054CA10
5C054CF08
5C054FC00
5C054FC12
5C054FE11
5C054HA12
(57)【要約】
【課題】煩わしさを軽減しつつ、より高精度に対象者の歩行安定性を判定可能なロボットを実現する。
【解決手段】本発明の一態様に係るロボット(1)は、自律走行するための走行部(14)と、周囲の対象者の歩行状態および歩行環境を検知する検知部(11)と、前記検知部の検知結果に基づいて前記対象者の歩行安定性を判定する判定部(12)と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行するための走行部と、
周囲の対象者の歩行状態および歩行環境を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて前記対象者の歩行安定性を判定する判定部と、
を備えていることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記検知部は、測域センサを備えており、
前記判定部は、前記測域センサの出力を参照して、前記対象者の歩行安定性を判定することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記判定部の判定結果に応じた音声を前記対象者に出力するか、または、前記判定部の判定結果に応じた信号を外部に送信するコミュニケーション部をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記判定部は、前記対象者が何れの人物であるかを判定し、
前記判定部が判定した人物である前記対象者と、前記判定部が判定した歩行安定性と、前記対象者が歩行した位置とを少なくとも示す情報を示す信号を外部に送信するコミュニケーション部をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のロボット。
【請求項5】
前記判定部が前記対象者の歩行安定性を判定する場合、前記走行部は、前記対象者に追従するように走行することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項6】
前記検知部は、周囲の複数の対象者の歩行状態を検知し、
前記判定部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記複数の対象者の歩行安定性を判定することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項7】
前記対象者が把持することが可能な把持部をさらに備え、
前記検知部は、前記把持部に対する荷重を検知する力覚センサを備えており、
前記判定部は、前記力覚センサの検知結果を参照して、前記対象者の歩行安定性を判定することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項8】
周囲の人物が歩行安定性を判定する対象者ではないと前記判定部が判定した場合に当該人物に対して所定の合図を行うコミュニケーション部をさらに備え、
前記走行部は、事前に規定された自律走行を継続することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
対象者の歩行状態を計測するロボットが従来技術として知られている。特許文献1では、対象者の歩行姿勢を評価する歩行姿勢評価装置を備えたモニタリングシステムが開示されている。また、特許文献2では、対象者の歩容を評価する歩容評価システムが開示されている。また、特許文献3では、施設内を巡回し、対象者を監視するロボットが開示されている。また、非特許文献1では、歩行検出の基本技術について開示されている。また、非特許文献2では、身体重心の軌跡の変動に基づいて歩行時の動的安定性を評価する処理が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4934315号(2007年6月14日公開)
【特許文献2】特開2017-23689号公報(2017年2月2日公開)
【特許文献3】特許第5057314号(2010年11月25日公開)
【特許文献4】特許第6645658号(2016年5月12日公開)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】三枝亮、Human-interactive robot for gait evaluation and navigation、国際会議論文IEEE、SMC2017、pp.1693-1694、2017年
【非特許文献2】下田隼人、佐藤春彦、鈴木良和著「身体重心の左右変動に基づく歩行の動的安定性評価」、理学療法科学23巻1号、pp.55-60、2008年4月5日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術は、例えば特許文献1に示すように施設内の監視を目的としての人物の発見、特許文献2に示すように歩行姿勢のモニタリング、或いは特許文献3に示すように歩行リズムの誘導を実現するものであった。
【0006】
一方で、健常な歩行を行う者であっても例えば照明の不良で視界が悪かったり床面が不整な場合は、平衡感覚が鈍ったり歩行パターンが不規則になり歩容が乱れる。つまり歩行状態は、歩行環境の時空間的な条件に強く依存している。しかしながら上述の従来技術においては、対象者の歩行状態と歩行環境とを紐付けた計測、記録、誘導または管理はなされていない。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、対象者の歩行状態と歩行環境とを統合してアセスメントすることができる装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一様態に係るロボットは、自律走行するための走行部と、周囲の対象者の歩行状態および歩行環境を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて前記対象者の歩行安定性を判定する判定部と、を備えている構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、対象者の歩行状態と歩行環境とを統合してアセスメントする装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係るロボットの機能ブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】外部装置に表示される画面の一例を示す図である。
【
図5】実施形態2に係るロボットの機能ブロック図である。
【
図6】実施形態2に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態3に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】ロボットと対象者との位置関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について
図1~
図8を参照して説明すれば以下の通りである。
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本実施形態の一実施形態について、
図1~
図3を参照して説明すれば以下の通りである。本実施形態においては、本開示に係る装置であるロボットが、対象者の歩行安定性に応じて、通報等の処理を行う構成について説明する。
【0013】
〔1.ロボット1の構成〕
図1及び
図2を参照して本実施形態の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るロボット1の機能ブロック図である。また、
図2は、ロボット1の外観図である。
【0014】
ロボット1は、例えば介護施設または病院等の有限な範囲の屋内空間において、デイサービス、運動機能維持、リハビリテーションまたは医療介護等の用途に用いられるロボットであって、制御部10、検知部11、コミュニケーション部13、走行部14、記憶部19、及び把持部16を備えている。
【0015】
制御部10は、ロボット1全体を統括する制御装置であって、後述する判定部12としても機能する。検知部11は、ロボット1の周囲に位置する人物の存在の検知、対象者となる当該人物の歩行軌跡の検知、歩行環境の検知、及び歩行安定性の判定に関するその他の検知を行う。また、歩行環境には、対象者が歩行する場所の明るさ、床面の状態や傾斜、及び時刻、並びに対象者の歩行における杖、歩行器またはリハビリ器具等の補助具の使用状況等が含まれていてもよい。
【0016】
検知部11が人物を検知する構成、及び歩行軌跡等を検知するための構成は特定の構成に限定されないが、以下、検知部11は、測域センサを備え、当該測域センサによって、対象の形状をセンシングすることによって人物を検知し、また、対象者の左右の脚部までの距離を測定し、対象者の歩行軌跡を検知するものとして説明する。
【0017】
測域センサは、光を放ってからその反射光が返ってくるまでの時間(フライングタイム)を測定することによって周囲の物体(対象者の脚部を含む)までの距離を測定し、これらの物体の位置を表す位置情報を得る。そして、側域センサは、周囲の物体の位置情報の中から、対象者の左右の脚部の位置情報を抽出する。測域センサが、ごく短い時間間隔で上述した測定処理を繰り返すことによって、対象者の左右の脚部の位置の時間変化、すなわち、歩行軌跡が得られる。なお、周囲の物体の位置を表す位置情報の中から、対象者の左右の脚部の位置を表す位置情報を抽出する方法については、パターンマッチングなど公知の方法を用いればよい。なお、対象者の歩行軌跡を参照することによって、その対象者の各種歩行状態を特定することができる。例えば、歩行周期、歩幅、歩行経路、歩行姿勢(足を上げる高さや体幹搖動など)は、歩行状態の一例である。
【0018】
なお、検知部11が放つ光は不可視光線でもよいし、可視光線でもよい。また、検知部11が光を放つ方向は、通常、3次元空間をスライスするような所定の平面方向であるが、当該方向は、ロボット1を中心とした全天球方向、半天球方向、若しくはそれらに準ずる方向、又は人物が居ると推定される方向を含む所定の方向であってもよい。
【0019】
例えば検知部11は、ひざ下の高さの水平面内における円弧形状を抽出し、楕円近似を用いて検出したその中心位置の動きから一定距離以内における脚群を検出する。次に、検知部11は、検出した脚群の代表位置への置き換えと、脚群に対する単脚、2脚又は3脚等のラベル付けとを行う。また、例えば検知部11は、ガウシアンフィッティングによって、対象となる脚群の速度プロファイルによる着地推定と歩行特徴の抽出とを行う。
【0020】
なお、検知部11は、所定の方向に放った光の反射光によって物体の形状をセンシングする構成に限定されず、物体の表面温度を計測可能な3D赤外カメラを用いて物体の形状をセンシングする構成であってもよい。
【0021】
また、検知部11は、例えば力覚センサ(例えば圧力センサを含む)等を備え、対象者が把持部16を把持していることの検知を行い、把持部16に対する力の方向および大きさをセンシングする。
【0022】
判定部12は、検知部11の検知結果に基づいて、対象者の歩行安定性の判定等の各種判定を行う。上述したように、検知部11が測域センサを備え、判定部12は、測域センサの出力を参照して、対象者の歩行安定性を判定してもよい。
【0023】
上記の構成によれば、判定部12は、測域センサの検知結果を参照して歩行安定性の判定処理を行うことができる。
【0024】
判定部12が対象者の歩行安定性を判定するための構成は特定の構成に限定されない。例えば、対象者の歩行状態について、記憶部19に事前に格納した正常な範囲と比較してそれぞれ正常か異常かを判定し、その結果に基づいて歩行安定性を判定してもよい。また、記憶部19に、救護が必要な状態、歩行が安定している状態、又は歩行が不安定な状態等を示す複数のパターンが予め格納されており、判定部12が、検知部11の検知結果と各パターンとを照合して、歩行安定性を判定する構成でもよい。
【0025】
例えば、判定部12が、救護が必要な状態に区分されるパターンと、検知部11の検知結果とを比較して、一定の同一性が得られれば、対象者に対する救護が必要であるものと判定してもよい。
【0026】
上述した、救護が必要な状態に区分されるパターンの対象者の状態としては、対象者が床に倒れている状態、或いはうずくまって動かないような状態等が挙げられる。当該パターンにおける共通事項の一例としては、歩行軌跡が全く又はほとんど無く、測域センサによって椅子に座っていることも検知できず、対象者の体が占める範囲が一定の高さ以下に収まっていること等が挙げられる。
また、例えば、判定部12が、歩行が安定している状態に区分されるパターンと、検知部11の検知結果とを比較して、一定の同一性が得られれば、対象となる歩行状態は安定しているものと判定してもよい。
【0027】
また、例えば、判定部12が、歩行が不安定な状態に区分されるパターンと、検知部11の検知結果とを比較して、一定の同一性が得られれば、対象となる歩行状態は不安定であるものと判定してよい。上述した、歩行が不安定な状態に区分されるパターンの歩き方としては、例えば両足を小刻みに前に出しての小刻み歩行、両足を外側に円弧を描くように前に出してのぶんまわし歩行、或いは両足を地面から上げずに前に出してのすり足歩行等が挙げられる。
【0028】
以下、上述したように判定部12は、対象者の状態を上記3種類に区分するものとして説明を行うが、判定部12が区分する対象者の状態は3種類であることに限定されず、例えば更に細分化させて4種類以上である構成でもよい。
【0029】
また、判定部12は、機械学習により、対象者の歩行安定性を判定してもよい。判定部12による歩行安定性の判定のための分類及び学習処理の具体構成は本実施形態を限定するものではなく、例えば、以下のような機械学習的手法の何れかまたはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0030】
・サポートベクターマシン(SVM: Support Vector Machine)
・クラスタリング(Clustering)
・帰納論理プログラミング(ILP: Inductive Logic Programming)
・遺伝的アルゴリズム(GP: Genetic Programming)
・ベイジアンネットワーク(BN: Baysian Network)
・ニューラルネットワーク(NN: Neural Network)
ニューラルネットワークを用いる場合、検知部11の検知結果をニューラルネットワークへのインプット用に予め加工して用いるとよい。このような加工には、データの1次元的配列化、または多次元的配列化に加え、例えば、データアーギュメンテーション(Deta Argumentation)等の手法を用いることができる。
【0031】
また、ニューラルネットワークを用いる場合、畳み込み処理を含む畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)を用いてもよい。より具体的には、ニューラルネットワークに含まれる1又は複数の層(レイヤ)として、畳み込み演算を行う畳み込み層を設け、当該層に入力される入力データに対してフィルタ演算(積和演算)を行う構成としてもよい。またフィルタ演算を行う際には、パディング等の処理を併用したり、適宜設定されたストライド幅を採用したりしてもよい。
【0032】
また、ニューラルネットワークとして、数十~数千層に至る多層型又は超多層型のニューラルネットワークを用いてもよい。なお、制御部10が判定部12を備える構成、換言すると、制御部10が判定部12としても機能する構成でもよい。
【0033】
走行部14は、ロボット1を移動させる機能を有する車輪等の部材である。なお、走行部14は、例えばクローラ等によって実現される構成でもよい。
【0034】
制御部10は、走行部14を制御することによって、ロボット1の自律走行を可能にする。一態様において、制御部10は、ロボット1が、自律的に、予め入力された基本経路を巡回するように走行部14を制御する。
【0035】
また、ロボット1に規定の経路を入力する方法は限定されないが、例えば職員が把持部16に力を加え、ロボット1の移動を誘導して経路を巡回することによって上記入力を行う構成であってもよい。また、職員が経路を巡回してロボット1に自動追従させることによって上記入力を行い、入力された経路をロボット1が適宜自動補正する構成であってもよい。
【0036】
また、一態様において、制御部10は、ロボット1が、自律的に、任意の人物または物体を追従するように走行部14を制御してもよい。また、一態様において、制御部10は、ロボット1が、自律的に、予め入力された目的地に移動するように走行部14を制御してもよい。また、ロボット1が予め定められた対象者の歩行安定性を判定する構成については後述する。
【0037】
コミュニケーション部13は、例えばスピーカー等を備え、判定部12の判定結果に応じた音声を対象者に出力する。また、コミュニケーション部13は、外部の装置との通信処理を行う機構を備え、判定部12の判定結果に応じた信号を外部に送信する。コミュニケーション部13の動作の詳細については後述する。
【0038】
記憶部19は、各種データを保持する記憶装置である。上述したように、記憶部19は、判定部12が判定処理を行う場合に参照される情報を格納する。
【0039】
また、ロボット1は、制御部10の制御に基づき、
図2に示すような自身の表情を表現する画像を頭部のディスプレイ等に表示させてもよい。
【0040】
なお、ロボット1が備える各部材は単数であることに限定されず、複数の当該部材を備える構成でもよい。また、各部材における上述した処理の一部が、他の部材によって実行されてもよい。また、ロボット1が
図1には図示しない外部の装置と通信する機能を有し、各部材における上述した一部の処理が、当該外部の装置によって実行される構成でもよい。
【0041】
〔2.処理の流れ〕
以下、ロボット1が、対象者の歩行安定性を判定する処理の流れについて、
図1及び
図3を参照してステップごとに説明する。
図3は、本実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
(ステップS101)
ロボット1は、走行部14による通常の巡回ルート上を自律走行中または停止中において、検知部11が人物を検知した場合に、当該人物を対象者として接近し、歩行安定性の判定処理を開始する。
【0043】
また、上記判定処理に関連して、ロボット1は、施設内におけるロボット1自身の絶対位置に対して、測域センサを用いて測定した、ロボット1自身に対する対象者の相対位置をベクトル加算することによって、対象者の絶対位置を算出してもよい。また、ロボット1が自身の絶対位置を算出する方法は、例えばSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の既存手法を用いてもよい。
【0044】
(ステップS102)
続いて、検知部11は、測域センサを用いて、対象者の歩行軌跡を測定し、歩行状態を特定する。また、検知部11は、歩行環境の検知を行う。なお、ロボット1は、対象者に追従しながら上述した測定処理を行ってもよい。換言すると、本ステップ及び続くステップS103において、判定部12が対象者の歩行安定性を判定する場合、走行部14は、前記対象者の前方、側方または後方で付き添って追従するように走行してもよい。即ち、制御部10は、対象者が移動した場合、検知部11の検知範囲に対象者が含まれるように走行部14を制御し、ロボット1を移動させてもよい。
【0045】
上記の構成によれば、検知部11は、例えば対象者がL字路の角を曲がった場合にも歩行検知を続行できる。
【0046】
(ステップS103)
続いて、判定部12は、ステップS102における検知部11の検知結果、つまり測域センサの出力等を参照して、対象者の歩行安定性を判定する。詳細には、判定部12は、対象者の歩行状態に基づいて、対象者の状態を、救護が必要な状態、歩行が安定している状態、歩行が不安定な状態の何れかに判定する。
【0047】
また、対象者の歩行状態が同一であっても、判定部12は、歩行環境に応じて互いに異なる判定結果を出力してもよい。これにより、判定部12は、実際には歩行状態が安定していても、歩行環境の判定結果を考慮しなかった場合には対象者の歩行状態が不安定であると判定するケースにおいて、歩行環境の判定結果を考慮することによって、歩行状態が安定していると正しく判定することが可能となる。また、判定部12は、実際には歩行状態が不安定であっても、歩行環境の判定結果を考慮しなかった場合には対象者の歩行状態が安定していると判定するケースにおいて、歩行環境の判定結果を考慮することによって、歩行状態が不安定であると正しく判定することが可能となる。
【0048】
(ステップS104)
ステップS103での判定処理において、判定部12が、対象者に対する救護が必要だと判定した場合、続いてステップS105の処理が実行される。そうでない場合には、続いてステップS106の処理が実行される。
【0049】
(ステップS105)
コミュニケーション部13は、対象者に対する声かけを行い、容態を確認する。そしてコミュニケーション部13は、対象者の容態を示す情報を外部の装置に送信して通報する。ここで、上述した外部の装置とは、ナースステーション等、施設の職員が駐在する場所等に設置されたサーバ等の装置、又は職員が保有する端末装置であって、対象者の健康状態に異常が生じたことを報知又は通知可能な装置である。
【0050】
なお、コミュニケーション部13が対象者に対する声かけを行った結果、当該対象者がすぐに起き上った場合等、対象者の健康状態に異常が無いと判定できる場合には、必ずしも通報は行わなくともよい。ただし、ロボット1は、その後も当該対象者を見守っていること、つまり当該対象者に対して
図3のフローチャートに基づく処理を定期的に行うことが好ましい。
【0051】
(ステップS106)
コミュニケーション部13は、ステップS103における判定部12の判定結果を対象者に通知する。なお、対象者の歩行が安定している場合、コミュニケーション部13は、当該対象者に単にあいさつするだけであってもよい。コミュニケーション部13は、対象者の歩行が不安定な場合には注意喚起を行う。そしてロボット1は、その後も当該対象者を見守っていることが好ましい。
【0052】
また、ステップS103における歩行安定性の判定においてロボット1が対象者の重心動揺を計測し、重心動揺の当該計測結果と記憶部19が格納する統計データと比較して、本ステップS106において対象者の重心動揺の良し悪しを示す判定結果を通知してもよい。また、上記統計データには、例えば歩行の際の重心の揺れの速度、広がり、方向性または周波数等を示す情報が含まれていてもよい。
【0053】
重心動揺は、平衡感覚機能の評価指標として用いられているが、例えば運動機能訓練室に設けられた重心動揺計等の計測装置の上に対象者が乗って計測を行うことが一般的である。上述したロボット1の構成によれば、歩行が不安定な対象者等が、重心動揺計が設けられた場所に移動する必要が無い。
【0054】
また、本ステップにおいては、コミュニケーション部13が、上述した処理に加えて、対象者の歩行安定性を示す情報を、上述した外部の装置等に送信する処理を行ってもよい。以上が、
図3のフローチャートに基づく処理の流れである。
【0055】
このように、本実施形態に係るロボット1は、自律走行するための走行部14と、周囲の対象者の歩行状態および歩行環境を検知する検知部11と、検知部11の検知結果に基づいて前記対象者の歩行安定性を判定する判定部12と、を備えている。
【0056】
上記の構成によれば、煩わしさを軽減しつつ、より高精度に対象者の歩行安定性を判定可能なロボット1を実現できる。すなわち、本実施形態によれば、歩行状態と歩行環境を紐づけて計測、記録、誘導、管理等することで、歩行状態と歩行環境との外観を同時に計測することが可能である。これにより、対象者の歩行状態と歩行環境とを統合してアセスメントすることができる。
【0057】
また、上述したように、本実施形態に係るロボット1は、判定部12の判定結果に応じた音声を前記対象者に出力するか、または、判定部12の判定結果に応じた信号を外部に送信するコミュニケーション部13をさらに備えている。
【0058】
上記の構成によれば、対象者は、容易に歩行安定性の判定結果を把握することができる。また、対象者に対する救護が必要な場合、その旨を外部に連絡することができる。
【0059】
〔3.ロボット1による利点〕
以下、本開示の態様をロボット1として実現することによる、歩行状態及び歩行環境に関する利点について補足する。
【0060】
歩行状態に関する利点として、対象者と共に移動しながら歩行状態を計測、認識及び記録する「とも歩き」や、対象者と会話しながら歩行状態を計測認識及び記録する「話し歩き」を実現できることが挙げられる。
【0061】
また、上記「とも歩き」において、ロボット1が自律走行することにより、歩行状態の計測の必要性に応じてロボット1の計測視野を歩行者の前方、左側方、右側方又は後方等に自由に移動制御することができる。例えば対象者の疾患を考慮して麻痺している身体の側を重点的に計測するように計測視野を選択することが可能となる。また、固定カメラ等を用いた計測においてはオクルージョンの問題が発生するが、ロボット1が移動することによって、より確実な計測が可能となる。
【0062】
また、上記「話し歩き」において、ロボット1が対象者に対して声かけや傾聴を行うことで、歩行のタイミング、速さ及び方向等を誘導することができる。例えば声をかけることによってゆっくりとした歩行の開始や静止、或いは大回りの旋回を促すことが可能となり、対象者の疾患を考慮した歩行速度の制動や、急な方向転換による転倒回避を行うための介入が可能となる。
【0063】
一般に、装具や歩行車による物理介入型の歩行支援装置では、対象者の自然な歩行が阻害されてしまう。しかしながら歩行への示唆が対象者の運動制御能力の範囲内であれば、声かけや傾聴によって対象者の認識を介して運動制御を促すことで自律的な調整によって安全な歩行を誘導できる。また、対象者への非介入時の学習効果も期待できる。
【0064】
歩行環境に関する利点として、対象者と共に移動しながら歩行環境を計測、認識及び記録する「目配り歩き」や、歩行状態を改善するように歩行環境に対して安全度等の情報を関連付ける「先回り歩き」を実現できることが挙げられる。
【0065】
また、上記「目配り歩き」において、ロボット1が歩行状態と歩行環境とを同時に計測することで、歩行パターンの崩れ方の特徴と歩行環境の特徴との関係を機械学習することや発生場所の環境データを再計測することが可能となる。例えばロボット1が、施設内のスロープ、防火シャッターの敷設物、又は手洗い場の水滴等の歩行環境の特徴と歩行パターンの崩れ方との相関関係を推定することが可能となる。
【0066】
また、病院や施設等の現場においては、事故等の際にインシデントレポートを作成することがあるが、事後に対象者の転倒の原因を特定することは容易ではない。しかしながらロボット1が歩行状態と歩行環境とを同時に計測することで、転倒の原因の特定や歩行環境のアセスメントに計測データの相関関係を活用することや、安全な歩行環境を維持する上での環境改善の指針を提供することができる。
【0067】
また、上記「先回り歩き」において、ロボット1が歩行状態を改善するように歩行環境に対して情報を関連付けることで、環境要因に関する歩行の安全度を高めることが可能となる。例えば見通しの悪い場所で一時停止を促すことや、夜間に対象者の足元を照らしてトイレ等へ先導することが可能となる。
【0068】
病院や施設の現場においては、職員が昼夜共に入院者等を見守ることを要する場合があるが、入院者等全員の移動の先導や見守りを行うことは容易ではない。しかしながらロボット1が特定場所に待機することや、歩行者を先導して歩行環境に対する情報の関連付けを行っていれば、回診台や介護ワゴン等の物理的な変動や消灯等による認知的な変動が発生しても歩行環境を保全することが可能となる。
【0069】
〔4.操作画面〕
以下、施設の職員が保有する端末装置等の外部の装置であって、ロボット1に対する指示、及びロボット1から受信した情報の表示等を行う外部装置における画面例について、
図4を参照して説明する。
図4の画面20~23は、上記画面の一例を示す図である。
【0070】
画面20は、「歩行」タブ24が選択された場合に表示される画面であって、ロボット1の移動に関する設定を行うための画面である。画面20において、「追従移動」ボタン28は、ロボット1を対象者に一定時間以上追従させることを設定するボタンである。「手動移動」ボタン29は、職員等が把持部16に力を加えることによってロボット1を移動させることを設定するボタンである。「自動移動」ボタン30は、予め入力された基本経路を巡回するようにロボット1を設定するボタンである。「停止」ボタン31は、ロボット1の動作を停止させるためのボタンである。
【0071】
画面21は、「認識」タブ25が選択された場合に表示される画面であって、ロボット1が一定期間において認識した対象者の一覧を示す画面である。
【0072】
画面22は、「危険」タブ26が選択された場合に表示される画面であって、歩行安定性が、救護が必要な状態であるか又は歩行が不安定な状態であるとロボット1によって判定された対象者の位置を示す画面である。また、画面22に例示する画面において、対象者の位置を示すアイコンは、例えば歩行安定性の判定結果に応じたものであってもよい。また、対象者の移動経路又は停留時間を示すヒートマップが画面に表示される構成であってもよい。
【0073】
また、画面22に含まれる地図の生成は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等を用いてロボット1が自動生成する構成であってもよいし、管理者が入力する構成であってもよい。ただし、置物等の位置の変化によって歩行環境が変動することを想定し、ロボット1が巡回して随時更新した地図を外部の装置に送信する構成が望ましい。また、ロボット1が巡回する場合に、対象者の歩行状態と、当該歩行状態の計測時点における歩行環境及び地図を記録することで、例えば対象者が転倒したときの環境や状況を事後確認することができる。
【0074】
画面23は、「通知」タブ27が選択された場合に表示される画面であって、ロボット1から通報された、対象者の容態及び位置を示す情報の一覧を示す画面である。また、画面23に例示する画面において、上記の各情報は、職員が対象者の安全を確認した場合等に削除可能な構成が好ましい。
【0075】
図4に例示する外部装置によれば、施設の職員がロボット1の移動に関する設定を行うこと、及び1又は複数の対象者の歩行安定性に関する情報を把握することが容易となる。
【0076】
〔実施形態1の変形例1〕
本変形例に係るロボット1は、検知部11が測域センサに替わりカメラを備え、判定部12は、当該カメラの撮像画像を参照して人物の検知および歩行安定性の判定処理を行う構成である。上記構成において、撮像画像内における人物を認識する方法は、従来技術を用いてよい。また、本変形例においても、判定部12は、機械学習により、対象者の歩行安定性を判定してもよい。また、検知部11が備える上記カメラは、被写体の体積や立体形状を検知可能な3次元深度カメラであってもよい。
【0077】
また、上述したステップS103の処理において、検知部11が対象者の頭頂、肩峰、大腿骨大転子、膝裂隙外側等の外観的な身体部位の軌跡を測定し、判定部12が対象者の体幹を基準に各部位の位置情報を正規化することで対象者の歩隔や左右動揺を計測し、歩行安定性の評価指標とする構成であってもよい。
【0078】
また、判定部12は、例えば撮像画像から顔認証を行うことによって対象者を特定し、個別の対象者ごとに歩行安定性の評価方法を変える構成でもよい。例えば、対象者の歩き方が、両足を小刻みに前に出しての小刻み歩行、両足を外側に円弧を描くように前に出してのぶんまわし歩行、或いは両足を地面から上げずに前に出してのすり足歩行等の歩き方を行っていたとしても、当該対象者にとっては安定した歩行状態であることがあり得る。その場合に、対象者によって、どのパターンが安定しているかの評価を変えることで、上述した歩き方を行う対象者や、歩行が不自由な対象者に対しても、より好適な歩行安定性の判定処理を行うことができる。また、個別の対象者ごとに歩行安定性の機械学習を行う構成でもよい。
【0079】
また、検知部11が、測域センサとカメラとの双方を備え、判定部12が、それぞれの検知結果を参照して判定処理を行う構成でもよい。
【0080】
また、検知部11が人物を検知する他の構成としては、例えば検知部11が備える温度カメラによって人体が放射する熱を検知する構成、人物が携帯する携帯電話やビーコン等の機器が発する信号に基づいて人物を検知する構成、又は、検知部11が備えるマイクロフォンによって人物の声掛けや話し声を検知する構成等が挙げられる。
【0081】
また、検知部11が人物を検知した場合、顔認証や機器が発する信号を用いて判定部12が特定した当該人物が、歩行安定性の判定処理を行う対象ではない施設の職員等であると判定部12が判定したとき、ロボット1は当該人物に接近することなく施設内の巡回を継続してもよい。また、巡回を継続する場合に、ロボット1はコミュニケーション部13を介して、当該人物に対して例えば「ハロー」等の声掛けや、電子音の出力、又は頭部のディスプレイに表示する表情でウインク等を行うことによって合図する構成であってもよい。
【0082】
換言すれば、コミュニケーション部13は、周囲の人物が歩行安定性を判定する対象者ではないと判定部12が判定した場合に当該人物に対して所定の合図を行い、走行部14は、事前に規定された自律走行を継続してもよい。
【0083】
〔実施形態1の変形例2〕
ロボット1は、並行して複数の対象者の歩行安定性を判定してもよい。換言すると、判定部12は、検知部11の検知範囲に位置する複数の人物を対象者として選択してもよい。ただし、上述の記載は、判定部12が、検知部11の検知範囲に位置する全ての人物について、歩行安定性を判定しなければならないことを意味しない。
【0084】
なお、特に当該複数の人物間の距離が近い場合には、各人の脚部が混同しないように、測域センサが光を放つことによる測定の時間間隔は短い方がより望ましい。つまり、判定部12が、検知部11の検知範囲に複数の人物が存在すると判定した場合、制御部10は、検知部11による測定の時間間隔が所定の時間短くなるように制御する構成でもよい。
【0085】
このように、本変形例に係るロボット1において、検知部11は、周囲の複数の対象者の歩行状態を検知し、判定部12は、検知部11の検知結果に基づいて前記複数の対象者の歩行安定性を判定する。上記の構成によれば、ロボット1は、付近の人物が一人になるまで待機する必要が無い。
【0086】
〔実施形態1の変形例3〕
実施形態1においては、ロボット1が、巡回ルートを巡回中に検知した人物を、歩行安定性を判定する対象者としたが、制御部10が対象者を決定する構成は上述した構成に限定されない。例えば、所定の対象者が予め定まっており、制御部10が、記憶部19に格納された、当該対象者のおおよその位置を示す情報を参照して、当該対象者を探すように走行部14を制御してもよい。
【0087】
また、ロボット1が、所定の対象者が所持する携帯電話やビーコン等の機器が発する識別信号を検出する機能を有し、制御部10が、当該機器の方向、つまり当該対象者の方向に移動するように走行部14を制御してもよい。また、対象者が携帯電話等を操作することによってロボット1を近傍に呼び出せる構成であってもよい。また、制御部10は、常に所定の対象者に追従するように走行部14を制御し、所定の時刻又は時間ごとに当該対象者の歩行安定性を判定する構成でもよい。
【0088】
〔実施形態1の変形例4〕
ロボット1は、検知部11が検出した人物に対して声掛けを行い、当該人物の応答を検知したことに応じて、歩行軌跡を測定する対象者として当該人物を確定する構成であってもよい。また、上記声掛けは、人物までの距離や動作に応じたものであってもよい。
【0089】
また、ロボット1は、例えば対象者への接近を開始してから対象者から離脱するまでの間における対象者およびロボット1の移動軌跡等を示す歩行イベント情報を、記憶部19または外部の装置において施設の地図を示す情報と関連付けて格納してもよい。
【0090】
また、上述した歩行イベント情報は、対象者の歩行に関する情報であって、対象者の歩行軌跡および平衡感覚機能の測定結果、歩行安定性の判定結果、対象者を識別するID、応対時の画像、音声などのデータ、応対時におけるロボット1が計測可能な歩行者の表情、並びに、対象者の体温、脈拍、血圧、血中酸素濃度および呼吸数等のバイタル情報等を含んでいてもよい。また、上記バイタル情報は、対象者が身に着けたセンサ或いはロボット1が別途備えるセンサを介して制御部10が取得する構成であってもよい。
【0091】
また、ロボット1は、歩行イベント情報を記憶部19又は外部の装置に蓄積し、巡回時に歩行者を検知した際における接近後の見守り時間や声掛けの内容を、当該歩行イベント情報に応じたものとする構成であってもよい。
【0092】
また、制御部10又は外部の装置は、施設の地図と関連付けて記録された情報であって、歩行イベント情報に対応する歩行が発生した場所および時間を示す情報を参照して、ロボット1を利用する施設環境において歩行が不安定になりやすい場所や時間帯の推定を行ってもよい。これにより、施設環境のアセスメントの改善に寄与する。
【0093】
また、制御部10又は外部の装置は、対象者の位置が示された地図を動的に生成し、職員が携帯する端末等に伝送する構成であってもよい。これにより、リアルタイムな地図参照を行い、人物の探索や徘徊者の見守りの状況把握に活用することが可能となる。
【0094】
当該構成のロボット1において、判定部12は、対象者が何れの人物であるかを判定し、コミュニケーション部13は、判定部12が判定した人物である対象者と、判定部12が判定した歩行安定性と、対象者が歩行した位置とを少なくとも示す情報、又は当該情報を含む地図を示す信号を外部に送信する。
【0095】
また、特に歩行イベント情報に対応する歩行が行われている場合に、コミュニケーション部13の動作によって、端末を用いた職員と対象者との間でコミュニケーションをとることが可能な構成であってもよい。また、目的地となる自室等に対象者を誘導するように、端末を介してロボット1に指示を与えることが可能な構成であってもよい。
【0096】
〔実施形態1の変形例5〕
歩行安定性を判定する態様は上述した例に限定されない。例えば判定部12は、検知部11が備える力覚センサであって、把持部16に対する荷重を検知する力覚センサの検知結果を参照して対象者の歩行安定性を判定してもよい。また、直立状態にある対象者が目を閉じて把持部16を把持することによって、上肢を介しての重心動揺をロボット1が間接的に測定する構成であってもよい。当該構成においては、把持部16を把持している状態で片足立ち又は屈伸運動等の運動を対象者に課すことによって、重心動揺に加えて下肢筋力等も間接的に測定してもよい。また、ロボット1は、対象者が把持部16を把持することを要する判定を行う場合に、把持部16を把持することを、コミュニケーション部13を介して対象者に指示してもよい。
【0097】
また、ロボット1は、対象者に把持部16を把持させながら、歩行に同行するように走行部14を駆動させることで、動く手すりとして歩行を誘導してもよい。また把持部16へ作用する力の方向および大きさに応じて、ロボット1の移動速度を制御することによって、上肢から歩行動作に介入することが可能であり、歩行負荷の軽減や安全性の向上を行った上で対象者の歩行練習を行うことができる。ロボット1は、例えば、対象者が把持部16を把持して歩行する場合、歩行者に対して作用する荷重がゼロとなるように歩行に追従し、把持部16への力の加速度、並進力または回転力が所定以上であるときには、ロボット1から作用する荷重を増加するように制御することで、対象者の転倒を予防することが可能となる。
【0098】
なお、上述した各変形例における構成は、以降の実施形態に対しても適用可能である。
【0099】
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態について、
図1、
図5及び
図6を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、以降の実施形態においても同様である。本実施形態においては、ロボットが、歩行安定性の判定結果を記憶装置に保存する構成について説明する。
【0100】
〔1.ロボット1aの構成〕
図5を参照して本実施形態の構成について説明する。
図5は、本実施形態に係るロボット1aの機能ブロック図である。ロボット1aは、
図1に示すロボット1が、コミュニケーション部13を備えない構成である。
【0101】
〔2.処理の流れ〕
以下、ロボット1aが、対象者の歩行安定性に応じて、通報等の処理を行う構成について、
図5及び
図6を参照してステップごとに説明する。
図6は、本実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0102】
(ステップS101~S103)
ステップS101~S103においては、実施形態1と同様の処理を行う。ステップS103の処理が実行されたのち、続いてステップS204の処理が実行される。
【0103】
(ステップS204)
続いて、ステップS204において、判定部12は、ステップS103における判定結果を記憶部19に格納する。なお、ロボット1aが外部の装置と通信する機能を有し、当該判定結果を当該装置に送信する構成でもよい。そして、対象者等は、ロボット1a又は当該装置に対する操作又は要求によって、当該判定結果を取得する。なお、ロボット1a又は当該装置が、判定結果を提示する方法については、例えば、各々が備えるディスプレイに当該判定結果を表示してもよいし、当該判定結果が記載されたレシートのようなものを印字してもよい。以上が
図6のフローチャートに基づく処理の流れである。
【0104】
〔実施形態3〕
本発明の第3の実施形態について、
図7及び
図8を参照して説明する。本実施形態においては、ロボットが対象者に追従する「とも歩き」を行い、歩行安定性を判定する構成について説明する。
【0105】
〔1.ロボット1の構成〕
本実施形態においては、実施形態1同様に
図1に示す構成を用いる。
【0106】
〔2.処理の流れ〕
以下、ロボット1が、とも歩きを行いながら対象者の歩行安定性を判定する処理を行う構成について、
図7及び
図8を参照してステップごとに説明する。
図7は、本実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。また、
図8は、ロボット1と対象者との位置関係の一例を示す図である。
【0107】
(ステップS301)
ステップS301において、制御部10は、走行部14を制御して、予め入力された基本経路をロボット1に巡回させる。
【0108】
(ステップS302)
ステップS302において、検知部11は、ロボット1による基本経路の巡回中に歩行環境の検知を行う。
【0109】
(ステップS303)
ステップS303において、制御部10は、ロボット1による巡回を継続するか否かを判定する。制御部10は、巡回を継続すると判定した場合、続いてステップS304の処理を実行する。例えば所定の時刻となった場合等に制御部10が巡回を継続しないと判定した場合、
図7のフローチャートに基づく処理が終了する。
【0110】
(ステップS304)
ステップS304において、制御部10は、検知部11が対象者を検知したか否かを判定する。制御部10が、検知部11が対象者を検知したと判定した場合、続いてステップS305の処理が実行される。制御部10は、検知部11が対象者を検知していないと判定した場合、ステップS301における基本経路の巡回を継続させる。
【0111】
(ステップS305)
ステップS305において、検知部11は、検知した対象者の位置を含む所定の範囲における歩行環境を検知する。
【0112】
(ステップS306)
ステップS306において、検知部11は、対象者の歩行状態を遠方で計測して特定し、判定部12は、対象者の歩行環境と歩行状態とに基づいて歩行安定性を判定する。また、コミュニケーション部13は、判定部の判定結果に応じて、ステップS105の処理に相当する通報、又はステップS106の処理に相当する通知等を行う。また、後述するステップS313及びS317においても同様である。
【0113】
(ステップS307)
ステップS307において、制御部10は、ロボット1を対象者へ接近させるか否かを判定する。制御部10は、ロボット1を対象者へ接近させると判定した場合、続いてステップS309の処理を実行する。制御部10は、ロボット1を対象者へ接近させないと判定した場合、続いてステップS308の処理を実行する。例えば制御部10は、ステップS306において対象者の歩行安定性が非常に安定しており所定の基準以上であると判定部が判定した場合等にロボット1を対象者へ接近させないと判定してもよい。
【0114】
(ステップS308)
ステップS308において、制御部10は、対象者へ接近することなくステップS305及びS306の処理を継続するか否かを判定する。制御部10が、上記処理を継続すると判定した場合、続いてステップS305からの処理が繰り返される。制御部10は、上記処理を継続しないと判定した場合、基本経路をロボット1に巡回させる、ステップS301からの処理を行う。
【0115】
(ステップS309)
ステップS309において、制御部10は、
図8の「(1)接近」に例示するように、走行部14を制御してロボット1を対象者に接近させる。
【0116】
(ステップS310)
ステップS310において、コミュニケーション部13は、対象者に対する声かけを行う。上記声かけは、対象者の歩行安定性に応じて、単なるあいさつであってもよいし、歩行に関する注意喚起等であってもよい。
【0117】
(ステップS311)
ステップS311において、制御部10は、ロボット1を対象者から離脱させるか否かを判定する。制御部10が、ロボット1を対象者から離脱させると判定した場合、続いてステップS312の処理が実行される。制御部10は、ロボット1を対象者から離脱させないと判定した場合、続いてステップS308の処理を実行する。例えば制御部10は、声かけに対する対象者の応答等に応じて、上記判定を行ってもよい。
【0118】
(ステップS312)
ステップS312において、検知部11は、検知した対象者の位置を含む所定の範囲における歩行環境を検知する。
【0119】
(ステップS313)
ステップS313において、検知部11は、対象者の歩行状態を近傍で計測して特定し、判定部12は、対象者の歩行環境と歩行状態とに基づいて歩行安定性を判定する。
【0120】
(ステップS314)
ステップS314において、制御部10は、ロボット1を対象者に追従させるか否かを判定する。制御部10は、ロボット1を対象者に追従させると判定した場合、続いてステップS316の処理を実行する。制御部10は、ロボット1を対象者に追従させないと判定した場合、続いてステップS315の処理を実行する。例えば制御部10は、対象者がロボット1の近傍に所定時間以上留まったか否かに応じて上記判定を行ってもよい。
【0121】
(ステップS315)
ステップS315において、制御部10は、ロボット1を対象者から離脱させるか否かを判定する。制御部10が、ロボット1を対象者から離脱させると判定した場合、続いて基本経路をロボット1に巡回させる、ステップS301からの処理を行う。制御部10は、ロボット1を対象者から離脱させないと判定した場合、続いてステップS312からの処理が繰り返される。
【0122】
(ステップS316)
ステップS316において、制御部10は、
図8の「(2)とも歩き」に例示するように、走行部14を制御して、ロボット1を対象者に追従させる。また、検知部11は、検知した対象者の位置を含む所定の範囲における歩行環境を検知する。
【0123】
(ステップS317)
ステップS317において、検知部11は、対象者の歩行状態を移動しながら計測して特定し、判定部12は、対象者の歩行環境と歩行状態とに基づいて歩行安定性を判定する。
【0124】
(ステップS318)
ステップS318において、制御部10は、ステップS317の処理を継続するか否かを判定する。制御部10が、ステップS317の処理を継続すると判定した場合、上記処理が継続される。制御部10は、上記処理を継続しないと判定した場合、
図8の「(3)離脱」に例示するようにロボット1を対象者から離脱させ、基本経路をロボット1に巡回させる、ステップS301からの処理を行う。例えば制御部10は、対象者が所定時間以上歩行を停止した場合に上記処理を継続しないと判定してもよい。また、コミュニケーション部13は、ロボット1が対象者から離脱する場合に、対象者に対する声かけを行ってもよい。以上が
図7のフローチャートに基づく処理の流れである。
【0125】
本実施形態の構成によれば、例えば対象者の状態に応じた好適な時間又は精度によって、歩行安定性の判定を行うことができる。
【0126】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ロボット1(1a)の制御ブロック(特に制御部10および判定部12)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0127】
後者の場合、ロボット1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0128】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0129】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るロボット(1、1a)は、自律走行するための走行部(14)と、周囲の対象者の歩行状態を検知する検知部(11)と、前記検知部の検知結果に基づいて前記対象者の歩行安定性および歩行環境を判定する判定部(12)と、を備えている構成である。上記の構成によれば、煩わしさを軽減しつつ、より高精度に対象者の歩行安定性を判定可能なロボットを実現できる。
【0130】
本発明の態様2に係るロボットは、上記の態様1において、前記検知部は、測域センサを備えており、前記判定部は、前記測域センサの出力を参照して、前記対象者の歩行安定性を判定する構成としてもよい。上記の構成によれば、判定部は、測域センサの検知結果を参照して歩行安定性の判定処理を行うことができる。
【0131】
本発明の態様3に係るロボットは、上記の態様1または2において、前記判定部の判定結果に応じた音声を前記対象者に出力するか、または、前記判定部の判定結果に応じた信号を外部に送信するコミュニケーション部(13)をさらに備えている構成としてもよい。上記の構成によれば、対象者は、容易に歩行安定性の判定結果を把握することができる。また、対象者に対する救護が必要な場合、その旨を外部に連絡することができる。
【0132】
本発明の態様4に係るロボットは、上記の態様1または2において、前記判定部は、前記対象者が何れの人物であるかを判定し、前記判定部が判定した人物である前記対象者と、前記判定部が判定した歩行安定性と、前記対象者が歩行した位置とを少なくとも示す情報を示す信号を外部に送信するコミュニケーション部(13)をさらに備えている構成としてもよい。上記の構成によれば、対象者、並びに当該対象者の位置および歩行安定性を示す情報を外部の装置において参照することができる。
【0133】
本発明の態様5に係るロボットは、上記の態様1~4のいずれかにおいて、前記判定部が前記対象者の歩行安定性を判定する場合、前記走行部は、前記対象者に追従するように走行する構成としてもよい。上記の構成によれば、検知部は、対象者がL字路の角を曲がった場合にも歩行検知を続行できる。
【0134】
本発明の態様6に係るロボットは、上記の態様1~5のいずれかにおいて、前記検知部は、周囲の複数の対象者の歩行状態を検知し、前記判定部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記複数の対象者の歩行安定性を判定する構成としてもよい。上記の構成によれば、ロボットは、付近の人物が一人になるまで待機する必要が無い。
【0135】
本発明の態様7に係るロボットは、上記の態様1において、前記対象者が把持することが可能な把持部(16)をさらに備え、前記検知部は、前記把持部に対する荷重を検知する力覚センサを備えており、前記判定部は、前記力覚センサの検知結果を参照して、前記対象者の歩行安定性を判定する構成としてもよい。上記の構成によれば、判定部は、力覚センサの検知結果を参照して歩行安定性の判定処理を行うことができる。
【0136】
本発明の態様8に係るロボットは、上記の態様1において、周囲の人物が歩行安定性を判定する対象者ではないと前記判定部が判定した場合に当該人物に対して所定の合図を行うコミュニケーション部(13)をさらに備え、前記走行部は、事前に規定された自律走行を継続する構成としてもよい。上記の構成によれば、当該人物は、自身が対象者でなくともロボットに認識されていることを容易に把握できる。
【符号の説明】
【0137】
1、1a ロボット
10 制御部
11 検知部
12 判定部
13 コミュニケーション部
14 走行部
16 把持部
19 記憶部