IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プリマハム株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174641
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】食品中のアレルゲンの抽出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20221116BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20221116BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20221116BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G01N33/53 Q
G01N33/531 A
G01N33/543 545A
G01N33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080576
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 重城
(72)【発明者】
【氏名】大黒 そのみ
(57)【要約】
【課題】より安全性が高く、検出感度に優れたELISA法を開発すること。
【解決手段】食品1gと、界面活性剤を1%含む食品中のアレルゲン抽出液19mLとを混合し、沸騰水で10分加熱抽出し、冷却後ろ過した溶液を希釈せずに測定溶液として用いて、サンドイッチELISA法により食品中のアレルゲンを検出する方法における測定結果が、波長450-620nmにおけるアレルゲン50ppbの吸光値が0.5以上を示す界面活性剤を選択するスクリーニング方法により選ばれた界面活性剤(ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムなど)を含む抽出液を用いて、サンドイッチELISA法により食品中のアレルゲンを測定する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ELISA法を利用する食品中のアレルゲンの検出方法のための食品中のアレルゲンの抽出方法であって、食品と以下の界面活性剤の1種又は2種以上を含有する抽出液とを混合し、前記食品中のアレルゲンを抽出することを特徴とする食品中のアレルゲンの抽出方法。
(界面活性剤)
・ラウレス-5カルボン酸ナトリウム
・ラウリルグルコシド
・PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム
・オレイン酸ナトリウム
・N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
・ヤシ脂肪酸カリウム
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
・イソステアリン酸PEG-8グリセリル
・ココイルグリシンナトリウム
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
・ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
【請求項2】
界面活性剤が、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の食品中のアレルゲンの抽出方法。
【請求項3】
食品1gと、以下の界面活性剤を1%含む食品中のアレルゲン抽出液19mLとを混合し、沸騰水で10分加熱抽出し、冷却後ろ過した溶液を希釈せずに測定溶液として用いることを特徴とする、サンドイッチELISA法により食品中のアレルゲンを測定する方法。
(界面活性剤)
・ラウレス-5カルボン酸ナトリウム
・ラウリルグルコシド
・PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム
・N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
・ヤシ脂肪酸カリウム
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
・イソステアリン酸PEG-8グリセリル
・ココイルグリシンナトリウム
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
・ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
【請求項4】
界面活性剤が、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項3記載の食品中のアレルゲンを測定する方法。
【請求項5】
ELISA法により食品中のアレルゲンを測定するためのキットであって、以下の界面活性剤を含む抽出液、及び測定対象のアレルゲンを特異的に認識するモノクローナル抗体とを含むことを特徴とするアレルゲン測定キット。
(界面活性剤)
・ラウレス-5カルボン酸ナトリウム
・ラウリルグルコシド
・PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム
・N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
・ヤシ脂肪酸カリウム
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
・イソステアリン酸PEG-8グリセリル
・ココイルグリシンナトリウム
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
・ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
【請求項6】
界面活性剤が、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項5記載のアレルゲン測定キット。
【請求項7】
食品1gと、界面活性剤を1%含む食品中のアレルゲン抽出液19mLとを混合し、沸騰水で10分加熱抽出し、冷却後ろ過した溶液を希釈せずに測定溶液として用いて、サンドイッチELISA法により食品中のアレルゲンを検出する方法における測定結果が、波長450-620nmにおけるアレルゲン50ppbの吸光値が0.5以上を示す界面活性剤を選択することを特徴とする食品中のアレルゲンの抽出方法に用いる界面活性剤のスクリーニング方法。
【請求項8】
請求項7記載のスクリーニング方法により得られるアレルゲン測定のための以下の界面活性剤。
(界面活性剤)
・ラウレス-5カルボン酸ナトリウム
・ラウリルグルコシド
・PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム
・N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
・ヤシ脂肪酸カリウム
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
・イソステアリン酸PEG-8グリセリル
・ココイルグリシンナトリウム
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
・ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマト法による食品中のアレルゲンの抽出方法に用いる界面活性剤のスクリーニング方法、該スクリーニング方法により得られた界面活性剤を用いる、アレルゲン検出における食品中のアレルゲンの抽出方法、前記スクリーニング方法により得られた界面活性剤を用いる、食品中のアレルゲンの測定方法、及び前記スクリーニング方法により得られた界面活性剤を含む食品中のアレルゲンの測定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体と、前記金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体と、食品の被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いて抽出した変性及び未変性のアレルゲンの測定サンプルを含む展開液を用い、展開支持体に展開させた後、金コロイドの集積の有無により、アレルゲンを検出するイムノクロマト法において、ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも10重量%含まれている展開液を用いることを特徴とするイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法を提案している(特許文献1)。この方法における抽出方法は、沸騰水中10分間の抽出である。
【0003】
また、本発明者らは、変性及び未変性のアレルゲンを共に認識するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体と、変性及び未変性のアレルゲンを共に認識し、前記金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体と、被検試料から抽出液を用いて抽出したアレルゲンの測定サンプルと、ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも10重量%含まれている展開液とを用い、金コロイド標識抗体と測定サンプルと展開液との混合液を展開支持体に展開させた後、前記所定の位置における金コロイドの集積の有無により、アレルゲンを検出するイムノクロマト法において、前記アレルゲンが大豆7Sグロブリン又はごま11Sグロブリンであり、前記抽出液が陰イオン性界面活性剤、チオ硫酸塩、及び非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とするイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法を提案している(特許文献2)。この方法における抽出方法も、沸騰水中10分間の抽出である。
【0004】
ところで、食品表示法(平成25年6月28日公布)によると、特定原材料(表示義務品目:卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かにの7品目)中のアレルゲンの定量検査は、通知法であるELISA法を使用して実施している。この通知法では、特許第5451854号(特許権者;森永製菓株式会社、特許文献3)記載の抽出液(0.5%ドデシル硫酸ナトリウム及び1MNaSO)を用いるELISA法によるアレルゲンの定量分析法とされ、検査結果が出るまで約2日を要する。この方法における抽出方法は、室温で16時間の抽出である。
【0005】
同じく、食品表示法(平成25年6月28日公布)によると、特定原材料に準ずるもの(表示推奨品目:21品目)中のアレルゲンの定量検査は、多くは国内製のELISAキットがないため、海外製のキットを用いて行われているのが実情である。なお、PCR法などの検査法もあるが、定性検査法であり、定量ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5735411号公報
【特許文献2】特許第6510307号公報
【特許文献3】特許第5451854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、特定原材料に準ずるもの(表示推奨品目:21品目)中のアレルゲンの定量検査は、海外製のキットを用いて行われているが、日本の表示制度の感度と合致しない、検査精度が不明であるなどの問題があった。
【0008】
特定原材料(表示義務品目:7品目)中のアレルゲンの定量検査は、通知法であるELISA法を使用して実施されており、この通知法では、特許文献3記載の抽出液(0.5%ドデシル硫酸ナトリウム及び1MNaSO)が用いられているが、この抽出液に含まれるドデシル硫酸ナトリウムは、生化学の実験で幅広く用いられる陰イオン性界面活性剤であり、タンパク質を可溶化させる能力が高いが、測定溶液中のドデシル硫酸ナトリウム濃度が高いと、抗体が変性して反応性が低下するという問題があった。ドデシル硫酸ナトリウムを用いる通知法の検査手順では、食品1gに抽出液19mLを混合し(20倍抽出)、室温で一晩(12時間以上)振とう抽出し、緩衝液で20倍希釈した測定溶液(20倍抽出×20倍希釈=400倍希釈した測定溶液)を用いてアレルゲンの定量検査が行われることになる。さらに、ドデシル硫酸ナトリウムは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質の排出や移動に関する法律である「化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)」に該当する点でも問題がないとはいえない。
本発明の課題は、より安全性が高く、検出感度に優れたELISA法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、化粧品や高級シャンプーに用いられている、安全性が高く、環境負荷の低い界面活性剤に着目し、ELISA法に適用可能か評価した。その結果、新規ELISA法により、界面活性剤濃度が1~10%で測定可能であり、希釈せずに高感度で測定可能な界面活性剤として、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド及びPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA(モノエタノールアミン)硫酸ナトリウム等を選択し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の事項により特定されるとおりのものである。
(1)ELISA法を利用する食品中のアレルゲンの検出方法のための食品中のアレルゲンの抽出方法であって、食品と以下の界面活性剤の1種又は2種以上を含有する抽出液とを混合し、前記食品中のアレルゲンを抽出することを特徴とする食品中のアレルゲンの抽出方法。
(界面活性剤)
・ラウレス-5カルボン酸ナトリウム
・ラウリルグルコシド
・PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム
・オレイン酸ナトリウム
・N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
・ヤシ脂肪酸カリウム
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
・イソステアリン酸PEG-8グリセリル
・ココイルグリシンナトリウム
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
・ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
(2)界面活性剤が、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムであることを特徴とする上記(1)記載の食品中のアレルゲンの抽出方法。
(3)食品1gと、以下の界面活性剤を1%含む食品中のアレルゲン抽出液19mLとを混合し、沸騰水で10分加熱抽出し、冷却後ろ過した溶液を希釈せずに測定溶液として用いることを特徴とする、サンドイッチELISA法により食品中のアレルゲンを測定する方法。
(界面活性剤)
・ラウレス-5カルボン酸ナトリウム
・ラウリルグルコシド
・PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム
・N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
・ヤシ脂肪酸カリウム
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
・イソステアリン酸PEG-8グリセリル
・ココイルグリシンナトリウム
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
・ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
(4)界面活性剤が、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムであることを特徴とする上記(3)記載の食品中のアレルゲンを測定する方法。
(5)ELISA法により食品中のアレルゲンを測定するためのキットであって、以下の界面活性剤を含む抽出液、及び測定対象のアレルゲンを特異的に認識するモノクローナル抗体とを含むことを特徴とするアレルゲン測定キット。
(界面活性剤)
・ラウレス-5カルボン酸ナトリウム
・ラウリルグルコシド
・PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム
・N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
・ヤシ脂肪酸カリウム
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
・イソステアリン酸PEG-8グリセリル
・ココイルグリシンナトリウム
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
・ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
(6)界面活性剤が、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムであることを特徴とする上記(5)記載のアレルゲン測定キット。
(7)食品1gと、界面活性剤を1%含む食品中のアレルゲン抽出液19mLとを混合し、沸騰水で10分加熱抽出し、冷却後ろ過した溶液を希釈せずに測定溶液として用いて、サンドイッチELISA法により食品中のアレルゲンを検出する方法における測定結果が、アレルゲン50ppbの吸光値が0.5以上を示す界面活性剤を選択することを特徴とする食品中のアレルゲンの抽出方法に用いる界面活性剤のスクリーニング方法。
(8)上記(7)記載のスクリーニング方法により得られるアレルゲン測定のための以下の界面活性剤。
(界面活性剤)
・ラウレス-5カルボン酸ナトリウム
・ラウリルグルコシド
・PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム
・N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
・ヤシ脂肪酸カリウム
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン
・イソステアリン酸PEG-8グリセリル
・ココイルグリシンナトリウム
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル
・ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、界面活性剤濃度が1~10%で測定可能であり、希釈せずに高感度で測定可能な界面活性剤を選択することができ、この選択した界面活性剤は食品成分の影響を受けずに定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来法のドデシル硫酸ナトリウムを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図2】本発明のラウレス-5カルボン酸ナトリウムを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図3】本発明のラウリルグルコシドを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図4】本発明のPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図5】本発明のオレイン酸ナトリウムを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図6】本発明のN-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウムを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図7】本発明のヤシ脂肪酸カリウムを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図8】本発明の2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図9】本発明のイソステアリン酸PEG-8グリセリルを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図10】本発明のココイルグリシンナトリウムを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図11】本発明のポリオキシエチレンオレイルエーテルを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図12】本発明のラウラミノプロピオン酸ナトリウムを用いてごまタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図13】従来法のドデシル硫酸ナトリウムを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図14】本発明のラウレス-5カルボン酸ナトリウムを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図15】本発明のラウリルグルコシドを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図16】本発明のPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図17】本発明のオレイン酸ナトリウムを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図18】本発明のN-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウムを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図19】本発明のヤシ脂肪酸カリウムを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図20】本発明の2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図21】本発明のイソステアリン酸PEG-8グリセリルを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図22】本発明のココイルグリシンナトリウムを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図23】本発明のポリオキシエチレンオレイルエーテルを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図24】本発明のラウラミノプロピオン酸ナトリウムを用いてアーモンドタンパク質を抽出したときの結果を示すグラフである。
図25】通知法と本発明の新規ELISA法の概略を図25に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の食品中のアレルゲンの抽出方法に用いる界面活性剤のスクリーニング方法としては、食品1gと、界面活性剤を1%含む食品中のアレルゲン抽出液19mLとを混合し、沸騰水で10分加熱抽出し、冷却後ろ過した溶液を希釈せずに測定溶液として用いて、サンドイッチELISA法により食品中のアレルゲンを検出する方法における測定結果が、アレルゲン50ppbの波長450-620nmにおける吸光値が0.5以上を示す界面活性剤を選択する方法であれば特に制限されず、かかるスクリーニング方法により、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム、N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、イソステアリン酸PEG-8グリセリル、ココイルグリシンナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びラウラミノプロピオン酸ナトリウムをアレルゲン測定のための界面活性剤として選択することができるが、中でもラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、及びPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムを好適に選択することができる。
【0014】
本発明の食品中のアレルゲンの抽出方法としては、ELISA法を利用する食品中のアレルゲンの検出方法のための食品中のアレルゲンの抽出方法であって、食品と界面活性剤(ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、イソステアリン酸PEG-8グリセリル、ココイルグリシンナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びラウラミノプロピオン酸ナトリウムをアレルゲン測定のための界面活性剤として選択することができるが、中でもラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム)の1種又は2種以上を含有する抽出液とを混合し、前記食品中のアレルゲンを抽出する方法であれば特に制限されず、上記界面活性剤の中でも、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、及びPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムを好適に用いることができる。
【0015】
本発明のサンドイッチELISA法により食品中のアレルゲンを測定する方法としては、食品1gと、界面活性剤(ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム、N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、イソステアリン酸PEG-8グリセリル、ココイルグリシンナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びラウラミノプロピオン酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上)を1%含む食品中のアレルゲン抽出液19mLとを混合し、沸騰水で10分加熱抽出し、冷却後ろ過した溶液を希釈せずに測定溶液として用いる測定方法であれば特に制限されず、上記界面活性剤の中でも、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、及びPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムを好適に用いることができる。
【0016】
上記本発明の測定方法では、[表1]に示すように、緩衝液で20倍希釈せずに測定することで、20倍高感度に定量が可能となる。
【0017】
【表1】
【0018】
本発明のアレルゲン測定キットとしては、ELISA法により食品中のアレルゲンを測定するためのキットであって、界面活性剤(ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム、N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、イソステアリン酸PEG-8グリセリル、ココイルグリシンナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びラウラミノプロピオン酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上)を含む抽出液、及び測定対象のアレルゲンを特異的に認識するモノクローナル抗体とを含むキットであれば特に制限されず、上記界面活性剤の中でも、ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド、又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウムを含む抽出液を好適に例示することができる。
【0019】
以下の[表2]に、ドデシル硫酸ナトリウムと本発明に関連する上記界面活性剤の特性等を示す。
【0020】
【表2】
【0021】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例0022】
[実施例1]
(ごまタンパク質溶液の調製)
アレルゲンタンパク質として、ごまタンパク質を用いて検討を行った。ごまタンパク質溶液は、「アレルギー物質を含む食品の検査法について(参考)(平成26年3月26日、消費者庁)」を参照して、ごまをミルサーで粉砕した後、アセトンで脱脂した粉末から調製した。かかるごまタンパク質溶液におけるタンパク質濃度は、2-D QuantKit(GE Helthcare Life Sciences製、80-6483-56)を用いて測定した。
【0023】
[サンドイッチELISAを用いたアレルゲンタンパク質の測定]
検討に用いた界面活性剤の種類を以下の[表3]に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
(抽出溶液の調製)
0.2%TWEEN(登録商標)20(MP Biomedicals製、103168)と、0.1%チオ硫酸ナトリウム(和光純薬製、197-03605)と、0.09%アジ化ナトリウム(和光純薬製、195-11092)とを含有する、ダルベッコ組成リン酸緩衝生理食塩水(日水製薬製、5913(以下、「PBS」ともいう))に、上記12種類の界面活性剤を、それぞれ最終濃度として1.0%、5.0%又は10.0%添加することにより、上記12種類の界面活性剤ごとに3種類(合計36種類)の抽出溶液を調製した。
【0026】
(抗体の固相化)
抗ごまマウスモノクローナル抗体(NITE P-02042)をPBSにて5μg/mLとなるように調整した溶液を、マイクロプレート(Nunc-Immuno Module plate F8 NAL、 468667)の各ウェルに100μLずつ加え、37℃にて1時間30分反応させた。反応後、0.05%TWEEN(登録商標)20含有PBS(以下、「PBST」ともいう)300μLで各ウェルを5回洗浄した。以降、洗浄はすべて同じ手順で実施した。
【0027】
(ブロッキング)
1%ウシ血清アルブミン(シグマアルドリッチ製、A3059)とを含有するPBSを各ウェルに200μLずつ加え、37℃にて1時間反応させた後洗浄した。
【0028】
(サンプルの反応)
ごまタンパク質溶液を上記36種類の抽出溶液それぞれに、ごまタンパク質が62.5ppb、250ppb、1000ppbとなるように添加して、粗測定溶液を調製した後、かかる粗測定溶液を0.5%フィッシュゼラチン(シグマアルドリッチ製、7765)含有PBSTにて20倍希釈して3.125ppb、12.5ppb、50ppbの各濃度にごまタンパク質がなるように調整して各測定溶液とした。各測定溶液を各ウェルに100μLずつ加え、25℃にて1時間反応させた後洗浄した。なお、上記36種類の抽出溶液について、ごまタンパク質を添加しない場合をネガティブコントロールとした。
【0029】
(酵素標識抗体の反応)
西洋ワサビペルオキシダーゼ標識した抗ごまマウスモノクローナル抗体(NITE P-02041)を各ウェルに100μLずつ加え、25℃にて30分間反応させた後洗浄した。
【0030】
(発色と停止)
3、3’、5、5’テトラメチルベンジジン溶液(プロメガ製、G7431)を各ウェルに100μLずつ加え、室温にて遮光して10分間反応させた。その後、1規定塩酸(和光純薬製、080-01066)を各ウェルに100μLずつ加え反応を停止し、マイクロプレートリーダーにて主波長450nm、副波長620nmにおける吸光度を測定した。
【0031】
(結果の判定)
12種類の各界面活性剤における、ごまタンパク質濃度が3.125ppb、12.5ppb、50ppbの場合の吸光度の値を用いてグラフを作成した。界面活性剤の濃度が1.0%、5.0%又は10.0%のいずれかのときに50ppbの吸光度が0.5以上であった場合に測定可能であると判定した。
【0032】
(結果)
結果を図1図12(各図の右側の「×20測定溶液」参照)に示す。これらの結果から、界面活性剤1を除き、界面活性剤2~12は、界面活性剤の濃度が1.0%、5.0%又は10.0%のいずれかのときに50ppbの吸光度が0.5以上となり、良好に測定可能であることが確認された。界面活性剤1(ドデシル硫酸ナトリウム)は1%では測定可能だが、5%では反応が低くなり、10%では測定できなかった。その他の界面活性剤2~12では1%~10%まで測定が可能であった。
【0033】
[実施例2]
(測定溶液中に高濃度の界面活性剤が含まれる条件での測定)
実施例1における1.0%、5.0%又は10.0%の界面活性剤を含む抽出溶液を緩衝液で20倍希釈することなく測定した際の反応性を確認した([表1]参照)。ごまタンパク質溶液を50ppbとなるように抽出溶液に添加して、高濃度界面活性剤-測定溶液とし、実施例1と同様にサンドイッチELISAで測定した。
【0034】
(結果の判定)
界面活性剤の濃度が1.0%の場合に50ppbの吸光度が0.5以上である場合に、当該濃度の界面活性剤は、測定可能であると判定することとした。
【0035】
(結果)
結果を表4及び図1図12(各図の左側の「×1測定溶液」参照)に示す。これらの結果から、界面活性剤1と界面活性剤5とを除き、界面活性剤の濃度が1.0%の場合に50ppbの吸光度が0.5以上であり、良好に測定可能であることがあることが確認された。
【0036】
【表4】
【0037】
[実施例3]
(食品成分が測定に及ぼす影響の評価)
上記実施例2にて良好な測定可能であった界面活性剤のうち、1.0%で高い吸光度が得られた界面活性剤2、界面活性剤3、及び界面活性剤4について、実際の食品検査の状況を勘案し、加工食品であるハムの共存下で測定が可能か検討した。測定に用いる抽出溶液に含まれる界面活性剤濃度は1.0%にて実施した。
【0038】
50mLのチューブにハム1gと抽出溶液19mLを混合し、食品(ハム)含有抽出溶液とした。かかる食品含有抽出溶液に、0.05μg、0.25μg、0.50μg、1.00μg、5.00μg又は10.00μgのごまタンパク質を添加し、沸騰水で10分間加熱した後、室温程度にまで冷却した。遠心分離(室温、3,000rpm、20分間)した後にろ過した溶液を食品(ハム)検体測定溶液とし、実施例1と同様にサンドイッチELISAで測定した。同時に、ごまタンパク質溶液を添加した抽出溶液を測定し、得られた標準曲線からハム検体測定溶液中のごまタンパク質濃度を算出した。回収率は添加ごまタンパク質量を100%とし、測定値より得られたごまタンパク質量を除して算出した。なお、ハム検体測定溶液に含まれるごまタンパク質量が測定範囲を超える場合は、抽出溶液にて範囲内に収まるよう希釈してから測定した。
【0039】
(結果)
結果を表5に示す。表5から明らかなとおり、界面活性剤2(ラウレス-5カルボン酸ナトリウム)、界面活性剤3(ラウリルグルコシド)、及び界面活性剤4(PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム)のいずれにおいても、添加量が0.05ppm~10.00ppmの範囲において、59.0%~175.5%の良好な回収率が得られたことが確認された。
【0040】
【表5】
【0041】
[実施例4]
(アーモンドタンパク質溶液の調製)
アレルゲンタンパク質として、アーモンドタンパク質を用いて検討を行った。アーモンドタンパク質溶液は、「アレルギー物質を含む食品の検査法について(参考)(平成26年3月26日、消費者庁)」を参照して、アーモンドをミルサーで粉砕した後、アセトンで脱脂した粉末から調製した。かかるアーモンドタンパク質溶液におけるタンパク質濃度は、2-D QuantKit(GE Helthcare Life Sciences製、80-6483-56)を用いて測定した。
【0042】
(サンドイッチELISAを用いたアレルゲンタンパク質の測定)
抗アーモンドモノクローナル抗体(NITE P-03345及びNITE P-03346)を用いる以外は、実施例1及び実施例2に準じて実施した。
【0043】
(結果)
結果を図13図24に示す。これらの図13図24の左側の「×1測定溶液」の結果から、界面活性剤1を除き、界面活性剤の濃度が1.0%の場合に50ppbの吸光度が0.5以上であり、良好に測定可能であることがあることが確認された。
【0044】
(まとめ)
通知法と本発明の新規ELISA法の概略を図25に示す。本発明によると、界面活性剤濃度が1~10%で測定可能であり、希釈をせずに高感度で測定可能な界面活性剤として特に好ましい3種類(ラウレス-5カルボン酸ナトリウム、ラウリルグルコシド又はPEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸ナトリウム)を選択すると、選択した界面活性剤は食品成分の影響を受けずに定量可能であることが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25