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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174646
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20221116BHJP
   H02G 3/08 20060101ALI20221116BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20221116BHJP
   H01R 31/06 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H02G3/08 080
H01R13/52 B
H01R31/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080593
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】今福 潤
【テーマコード(参考)】
4E360
5E087
5G361
【Fターム(参考)】
4E360AB13
4E360AB33
4E360AB34
4E360BA08
4E360BB22
4E360BD03
4E360BD05
4E360BD07
4E360CA02
4E360EA11
4E360EA29
4E360EC05
4E360ED03
4E360ED07
4E360ED12
4E360ED29
4E360EE08
4E360EE10
4E360GA08
4E360GA29
4E360GA52
4E360GA53
4E360GB91
4E360GC08
5E087EE07
5E087FF02
5E087LL14
5E087LL17
5E087MM05
5E087PP02
5E087QQ03
5E087RR05
5E087RR12
5E087RR25
5G361AA06
5G361AB09
5G361AB12
5G361AC01
5G361AC11
5G361AD01
(57)【要約】
【課題】軽量化を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】電子機器は、回路基板112を内部に収容するケース体102と、ケース体102の内部に通じる開口を閉じる外蓋104と、ケース体102の内部に嵌合して配置され、開口から回路基板112の収容部分までの間でケース体102の内部を区画する中蓋110と、ケース体102の内面のうち少なくとも中蓋110の嵌合領域をシールする封止材とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を内部に収容するケース体と、
前記ケース体の内部に通じる開口を閉じる外蓋と、
前記ケース体の内部に嵌合して配置され、前記開口から前記電子部品の収容部分までの間で前記ケース体の内部を区画する中蓋と、
前記ケース体の内面のうち少なくとも前記中蓋の嵌合領域をシールする封止材と
を備えた電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記封止材は、
前記ケース体の内面と前記中蓋とで構成される隅角部をさらにシールしていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
前記ケース体は、
前記開口の幅が前記中蓋の幅より大きく、かつ、前記開口から前記嵌合領域に向けて内面の幅が狭まった形状を有することを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電子機器において、
前記ケース体に接合され、前記電子部品に対して前記ケース体の外部から接続される配線を前記外蓋と前記ケース体との間で包囲するブッシュ部材と、
前記中蓋に形成され、前記配線とともに前記ブッシュ部材を前記ケース体の内部の収容部分に導通させる切欠部と、
前記ブッシュ部材に形成され、前記切欠部への導通状態で前記中蓋と係合し、前記ケース体の内部での前記中蓋の位置決めをなす係合部と
をさらに備えた電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
前記封止材は、
前記切欠部と前記係合部との係合領域をさらにシールしていることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース体の内部に電子部品が収容された電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子機器に関する先行技術として、防水機能を有する電源プラグが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この電源プラグは、内部素子を被覆可能な内蓋を電源プラグ本体の内部に設置し、内蓋とプレートとの間にコロイドを充填することで、内部への液体侵入防止機能を有し、IPX7に達する防水等級としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6159444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先行技術の電源プラグは、防水機能に必要な重量を減少することができるとはいうものの、結局のところは、内蓋とプレートとの間の空間内にコロイドを充填させて防水機能を持たせたものであり、依然としてその充填量は空間の体積に相応した大きさである。また、電源プラグが大きくなれば、内部空間の拡大に伴って三次元(立方)的にコロイドの充填量も増大して相応の重量が増加するため、根本的な課題解決には至っていない。
【0005】
そこで本発明は、軽量化を図ることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電子機器を提供する。本発明の電子機器は、ケース体の内部に電子部品が収容されており、ケース体の内部に通じる開口が外蓋で閉じられている。本発明における防水構造は、中蓋及び封止材により実現される。すなわち、中蓋は、ケース体の内部に嵌合して配置されるものであり、これにより、開口から電子部品の収容部分まで間でケース体の内部を区画する。そして、封止材は、ケース体の内面のうち少なくとも中蓋の嵌合領域(嵌合面)をシールするものである。
【0007】
本発明の防水構造において、「中蓋」は、「ケース体の内部を区画する」という意味においては既存の技術に近いように見えるが、実際には大きく意義が異なる。すなわち、「中蓋」は、上記のようにケース体の内部に嵌合することにより、そこに「封止材」がシールすることが可能な「嵌合領域」を形成するものである。「嵌合領域」は、「ケース体内面と中蓋とが嵌め合い関係となる領域」であるから、ケース体内面において二次元(平面)的な領域となる。そして、「封止材」は、そのような二次元(平面)的な「接合領域」だけをシールすることで、「中蓋」で区画されたケース体内部、さらには内部に収容された電子部品を確実に防水する。
【0008】
このため本発明によれば、「封止材」を用いる量が極めて少量(必要最小限)となり、防水構造の軽量化を図ることができる。また、「封止材」は、二次元(平面)的な「嵌合領域」をシールする(例えば、薄膜状のシールとなる)ため、仮に電子部品や電子機器のサイズが大きくなり、それに伴って「ケース体」の体積が三次元(立方)的に大きくなったとしても、「嵌合領域」は二次元(平方)的又は一次元的にしか大きくならず、「封止材」の使用量が不用意に増大することがない。したがって、「空間内に充填する防水構造」に比較して、ケース体の体積の増大に対する重量の増加割合を極めて低く抑えることができ、全体として軽量化を図ることができる。
【0009】
好ましくは、封止材は、ケース体の対面と中蓋とで構成される隅角部をさらにシールしていてもよい。この場合の隅角部は、ケース体の開口側であることが好ましい。これにより、封止材によるシール性能がさらに向上し、より確実で耐久性の高い防水構造を実現することができる。また、この場合でも封止材は、「中蓋からケース体の開口までの空間内」に充填されるわけではないので、軽量化を維持することができる。
【0010】
また、ケース体は、開口の幅が中蓋の幅より大きく、かつ、開口から嵌合領域に向けて内面の幅が狭まった形状(テーパ形状)を有するものが好ましい。この場合、中蓋とケース体との嵌合が締まり嵌めとなり、ケース体内部での不用意な中蓋の位置ずれが防止される。また、製造過程においても、開口からケース体内部に中蓋を挿入していくだけで締まり嵌めの位置で嵌合し、容易に組み付けを完成させることができる。また、中蓋とケース体との嵌合が強固となり、封止材によるシール効果をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電子機器の一実施形態であるACアダプタ100の構成を示す斜視図である。
図2】ACアダプタ100の内部構成を示した分解斜視図である。
図3】ACアダプタ100の内部構成を示した分解斜視図である。
図4】ACアダプタ100の内部構造を示す断面図である。
図5】外蓋104を除いたACアダプタ100の平面図及び縦断面図である。
図6】外蓋104を除いたACアダプタ100の縦断面図である。
図7図6中(B)に一点鎖線で示す囲み部分をさらに拡大した断面図である。
図8】ACアダプタ100の組み立て順序を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、電子機器としてACアダプタを一例に挙げているが、本発明はこれに限られるものではない。
【0014】
〔ACアダプタ〕
図1は、電子機器の一実施形態であるACアダプタ100の構成を示す斜視図である。本実施形態のACアダプタ100は、交流電源(例えばAC+100V)を直流電源(例えばDC+19V)に変換する電源用部品である。また、図1中(A)と図1中(B)では、ACアダプタ100の姿勢を天地反転させて示している。
【0015】
〔ケース体〕
ACアダプタ100は、ケース体102を備えており、このケース体102の内部に図示しない電子部品(回路基板等)が収容されている。ケース体102は、図1に示す立姿勢で縦型角柱形状を基本とし、その外周壁102aの四隅が円弧面形状(R形状)に成形されている。
【0016】
〔外蓋〕
また、ACアダプタ100は、ケース体102の他に外蓋104を備えており、ケース体102と外蓋104とで全体的な縦長形状を構成している。ケース体102は、図1中(A)の立姿勢では上端に開口を有しており、この開口に外蓋104が接合されてケース体102の内部に通じる開口が閉じられている。外蓋104もまた、ケース体102の外形に合致した長円形状をなしている。
【0017】
〔ブッシュ部材〕
ACアダプタ100のケース体102には、ブッシュ部材106が接合されており、ブッシュ部材106は、ACアダプタ100から延びる配線106aを包み込んで保護している。ケース体102及び外蓋104には、ブッシュ部材106の取り出し部102c,104aが形成されており、ケース体102の開口を外蓋104で閉じた状態で、取り出し部102c,104aがノズル状に一体となり、ブッシュ部材106を外側から包囲する。また、配線106aは、ケース体102の内部で電子部品と接続されている。
【0018】
ACアダプタ100は、一対のプラグ108を有しており、これらプラグ108はケース体102の底壁102bから突出して延びている。また、プラグ108は、ケース体102の内部で図示しない回路基板に接続されている。
【0019】
図2及び図3は、ACアダプタ100の内部構成を示した分解斜視図である。これら図2図3では、ACアダプタ100から配線106aが延びる方向を180°反転させて示している。
【0020】
〔電子部品〕
上記のように、ACアダプタ100は、ケース体102の内部に収容された電子部品を備えており、ここでは電子部品の例として、回路基板112が挙げられている。このためケース体102の内部には、ガイドリブ102eが長手方向(縦方向)に延びて形成されており、回路基板112は、製造過程においてガイドリブ102eに案内されつつケース体102の内部に挿入されるものとなっている。また、回路基板112には、図示しない電子回路(AC-DC変換回路)が形成されており、回路基板112がケース体102の内部に挿入されると、図示しない圧着端子(回路基板112に実装)を介してプラグ108と電気的に接続されるものとなっている。
【0021】
ケース体102は、長手方向(縦方向)の一端に開口を有しており、この開口がケース体102の内部に通じている。図2及び図3に示される分解状態では、開口を通じてケース体102の内部が開放されている。ケース体102の開口縁には溝部102fが形成されており、これに相対する外蓋104の周縁部には嵌合リブ104bが形成されている。ケース体102と外蓋104との組み付け時には、溝部102fと嵌合リブ104bとが嵌め合わされ、互いに位置決めされるものとなっている。なお、外蓋104とケース体102とは接着や溶着等により接合される。
【0022】
〔中蓋〕
ACアダプタ100は、中蓋110を備えており、この中蓋110は、ケース体102の内部に嵌合して配置されるものとなっている。中蓋110は、全体としては板状の部材であるが、矩形をなす中央部分110aはその周縁部分110bよりも一段盛り上がった段付き形状に成形されている。また、中蓋110の周縁はケース体102の外形や外蓋104の外形に合致した長円形状をなしており、周縁部分110bの長手方向の一端部には、中央部分110aに向かってコ字形状に切欠部110cが形成されている。
【0023】
ブッシュ部材106は、ケース体102の内部でエルボ状に屈曲されており、その屈曲端部には、外周面に沿ってコ字形状に延びる凹溝状の係合部106bが形成されている。係合部106bは、ちょうど中蓋110の切欠部110cに合致する位置にあり、ブッシュ部材106の組み付け時には、係合部106bの凹溝内に切欠部110cに沿う周縁部分110bが嵌まり込む(差し込まれる)ことで、中蓋110と係合する。
【0024】
中蓋110のケース体102への組み付けは、中蓋110の外周面とケース体102の内壁面との嵌め合わせ(嵌合)により行われる。ケース体102の内壁面102dは、開口から内部(図2図3では下方)に向かって内寸が狭まるテーパ形状をなしており、ケース体102の開口直近の位置では、中蓋110の外周面と内壁面102dとの間には全周にわたって十分なクリアランスがあるが、開口からさらに内部に進んだ位置では、中蓋110の外周面(外周縁)がケース体102の内壁面102dと略全周にわたって嵌合状態となる。この状態で、中蓋110は、ケース体102の開口と回路基板112の収容部分との間でケース体102の内部を区画する。以下、この点についてさらに詳しく説明する。
【0025】
〔中蓋による区画〕
図4は、ACアダプタ100の内部構造を示す断面図(長手方向に沿う縦断面図)である。このうち図4中(A)は、外蓋104を含むACアダプタ100の縦断面を示し、図4中(B)は、外蓋104を除いた縦断面を示している。なお、図4には、上記の圧着端子112aがプラグ108と接合された状態で示されている。
【0026】
上記のように、ケース体102の内部には回路基板112(図4の断面より手前側にあるため示されない)が収容されるが、中蓋110は、ケース体102の内部を回路基板112の収容部分(図4で中蓋110より下方)と開口から中蓋110までの間との二室に区画している。ケース体102の内部では、回路基板112の収容部分が大部分の空間容積を占めており、中蓋110から開口までの空間容積は、収容部分に比較してかなり小さい。
【0027】
中蓋110による区画状態においても、上記のようにブッシュ部材106は切欠部110cを介して回路基板112の収容部分にまで通じているため、ACアダプタ100の外部から延びた配線106aは収容部分にまで引き込まれ、ケース体102内部で回路基板112と接続されている(接続状態は図示せず)。
【0028】
〔嵌合領域〕
図5は、外蓋104を除いたACアダプタ100の平面図及び縦断面図である。また、図6は、外蓋104を除いたACアダプタ100の縦断面図である。このうち、図5中(A)が平面図であり、図5中(B)が平面図中のB-Bに沿う断面図である。図6中(A)は、平面図中のVI-A-VI-A線に沿う縦断面図であり、図6中(B)は、平面図中のVI-B-VI-B線に沿う縦断面図である。
【0029】
図5中(A):上記のように、中蓋110はケース体102の内部に嵌合して配置される。嵌合状態では、切欠部110cを除いて中蓋110の外周面がケース体102の内壁面102dと全周にわたって概ね接触し(僅かに隙間はある)、両者の間には嵌合領域(嵌合面、中蓋110の外周面とケース体102の内壁面102dとが突き合わせとなっている範囲)が形成されている。
【0030】
図5中(B):このとき、ケース体102は、上端の開口した位置では長手方向の開口幅D1が中蓋110の長手方向の外形寸法D2より僅かに大きい。また、ケース体102の内壁面102dは、上記のように開口位置から内部の奥(収容空間)に向かって長手方向の内寸が次第に狭まったテーパ形状となっており、このため内壁面102dは、開口からある程度奥の位置で、長手方向の内寸が中蓋110の長手方向の外形寸法D2と同等になる。
【0031】
図6中(A):また、ケース体102は、上端の開口した位置では短手方向の開口幅E1が中蓋110の短手方向の外形寸法E2より僅かに大きく、ここでもケース体102の内壁面102dは、開口位置から内部の奥(収容空間)に向かって短手方向の内寸が次第に狭まったテーパ形状となっている。このため内壁面102dは、開口からある程度奥の位置で、短手方向の内寸が中蓋110の短手方向の外形寸法E2と同等になる。
【0032】
〔中蓋の位置決め〕
上記のようなケース体102の内壁面102dのテーパ形状により、中蓋110はケース体102の内部にて嵌合(締まり嵌め)により位置決めして配置される。また、ブッシュ部材106はケース体102の取り出し部102cに支持されて位置決めされるが、中蓋110は、ブッシュ部材106の係合部106bと切欠部110cが係合する(差し込まれる)ことで、ブッシュ部材106を介してもケース体102の内部で位置決めされている。
【0033】
〔封止材〕
図5中(B)及び図6中(A),(B)に示されているように、本実施形態では、中蓋110上に封止材120が塗布されており、封止材120が中央部分110aの周縁部分110b上で層をなしている。封止材120は、例えばPP等の樹脂充填材であり、中蓋110上に塗布された状態で、中蓋110とケース体102の内面との間の嵌合領域(嵌合面)をシールする。これにより、ケース体102の内部、特に回路基板112の収容部分を防水する機能が確保されている。以下、この点についてさらに説明する。
【0034】
図7は、図6中(B)に一点鎖線で示す囲み部分をさらに拡大した断面図である。このうち、図7中(A)が中蓋110とケース体102の内壁面102dとの嵌合領域を中心とした断面を示し、図7中(B)が中蓋110の切欠部110cと係合部106bとの係合部分及びブッシュ部材106とケース体102の内壁面102dとの接触領域を中心とした断面を示している。
【0035】
〔隅角部シール層〕
図7中(A):ここではグレーに着色して示されているように、封止材120は中蓋110上に塗布された状態で、周縁部分110b上にある程度の厚みを有したシール層120aとして定着(硬化、固化)している。なお、ここでは周縁部分110b上の全域にシール層120aが形成されているように示されているが、シール層120aは、少なくとも周縁部分110bと内壁面102dとの間の隅角部を全周にわたってシールするように形成されていればよい。
【0036】
〔嵌合領域シール層〕
図7中(A):さらに封止材120は、中蓋110とケース体102の内壁面102dとの間に存在する僅かな隙間内で薄膜状に定着(硬化、固化)しており、これが嵌合領域シール層120bを形成している。これは、封止材120がその硬化前(塗布過程)においては高い流動性(例えば粘性率200mPa・s程度)を有していて、中蓋110とケース体102の内壁面102dとの間に存在する僅かな隙間にも浸透することができるためである。
【0037】
また、樹脂成形部材であるケース体102や中蓋110の仕上がり寸法には、成形時においてある程度の公差が生じるため、実際の嵌合状態においても、内壁面102dと中蓋110の外周面との間に隙間が完全になくなるということは実用上で考えにくい。ここから本発明の発明者は、製造過程において中蓋110上に少量の封止材120を塗布すれば、中蓋110の外周面とケース体102の内壁面102dとの間の嵌合領域(隙間内)に封止材120が流れ込み、薄膜の嵌合領域シール層120bが形成されることで確実に防水シールがなされる点に着目し、本実施形態の防水構造を着想するに至ったものである。
【0038】
図7中(B):上記のような封止材120の薄膜の形成による防水シールは、中蓋110とブッシュ部材106との嵌合領域、そしてブッシュ部材106とケース体102の内壁面102dとの接触領域についても適用することができる。すなわち、製造過程で中蓋110上に少量の封止材120を塗布すれば、中蓋110の切欠部110cとブッシュ部材106の係合部106bとの間にも封止材120が流れ込み、同じく薄膜の嵌合領域シール層120bが形成される。また、ブッシュ部材106の屈曲部内側とケース体102との間にある程度の空間がある位置では、周縁部分110b上と同様のシール層120cが形成されるが、これより下方のブッシュ部材106とケース体102内壁面102dとの接触領域では、これらの隙間に封止材120が流れ込み、やはり薄膜の接触領域シール層120dが形成されている。
【0039】
なお、封止材120は元来、回路基板112の周囲に充填されていたものであり、電子回路に対する浸食性(攻撃性)を何ら有していないため、図示のように嵌合領域や接合領域から回路基板112の収容部分へ流れ落ちしてしまっていても構わない。
【0040】
このように、本実施形態によれば、ケース体102の内部で回路基板112の収容部分が中蓋110により開口までの間で区画されることに加えて、中蓋110とケース体102の内壁面102dとの嵌合領域(嵌合面)が封止材120でシールされることにより、収容部分への確実な防水機能を達成することができる。なお、ケース体102の底壁102bにおけるプラグ108周囲の防水については公知であり、ここでは省略する。
【0041】
〔組み立て順〕
図8は、ACアダプタ100の組み立て順序を示した図である。以上のACアダプタ100の組み立て順序について説明する。
【0042】
図8中(A)(B):中蓋110の切欠部110cにブッシュ部材106の係合部106bを挿入する(あるいは、中蓋110の切欠部110cをブッシュ部材106の係合部106bに挿入する。)。ここでは図示していないが、配線106aと回路基板112とは半田付けされている。
【0043】
図8中(C):ケース体102の内部に回路基板112を収容し、上記のようにプラグ108と圧着端子112aとを接合させた後、中蓋110及びブッシュ部材106をケース体102に組み付ける。このとき、ブッシュ部材106を取り出し部102cに引っ掛けることで、ブッシュ部材106を介して中蓋110がケース体102の内部で位置決めされる。また、上記のように中蓋110がケース体102の内壁面102dと嵌合することでも同様に位置決めされる。
【0044】
このとき、ケース体102の内壁面102dが上記のようにテーパ形状となっているため、中蓋110は嵌合位置から奥方向(図8では下方向)に沈み込まない。また、ブッシュ部材106にも支えられることで、中蓋110の沈み込みがさらに抑えられている。
【0045】
そしてこの状態で、中蓋110上に封止材120を塗布する。このとき、中央部分110aの周囲に沿って封止材120を単に塗布(大まかに充填)していくようにすれば、特段の細かい注意を払う必要がなく、極めて作業性がよい。大まかに封止材120を充填していけば、封止材120が自身の持つ流動性で各所に行きわたり、また、各所の隙間に流れ込んで浸透し、上記のような各種のシール層120a,120b,120c,120d等を形成することができる。
【0046】
図8中(D):そして、ケース体102の開口に外蓋104を被せて接合(接着、溶着)すると、ACアダプタ100の組み立てが完了する。
【0047】
上述した本実施形態によれば、以下のような有用性が得られる。
(1)ケース体102の内部に中蓋110を配置し、その中蓋110上に少量の封止材120を塗布するだけで確実な防水構造を実現することができる。このため、封止材120の使用量を大幅に削減し、製造コスト削減やACアダプタ100の軽量化を図ることができる。
【0048】
(2)ACアダプタ100のサイズが大型化したとしても、同様に中蓋110でケース体102の内部を区画し、その嵌合領域をシールすればよい構造であるため、サイズの大型化に伴う封止材120の使用量の増加率を低く抑えることができる。すなわち、サイズの大型化は、ケース体102内部の空間容積を三次元(立方)的に増大させることになるが、封止材120は空間内に充填されるのではなく、あくまで嵌合領域をシールすればよいものである。そして、嵌合領域は、たとえケース体102等のサイズが大型化しても、二次元(平方)的にしか大きくならないので、嵌合領域シール層120bを形成するための封止材120の使用量を少なく抑えることができ、さらに軽量化を図ることができる。また、ケース体102のサイズ大型化に際して中蓋110の厚みが一定であれば、嵌合領域の幅も一定となるため、嵌合領域の面積は、ケース体102の内周長が伸びた分だけの増大となり、一次元的にしか大きくならないので、さらに封止材120の使用量を抑えることができる。
【0049】
(3)封止材120は、製造過程では中蓋110上に大まかに塗布(充填)するだけでよいので、特に繊細な作業を必要とせず、作業効率を高めることができる。また、封止材120の使用量が少ないため、それだけ作業時間の短縮化を図ることができ、ACアダプタ100の生産効率向上にも寄与する。
【0050】
(4)中蓋110は、ブッシュ部材106と組み合わせた(係合させた)状態でケース体102の内部に挿入されて位置決めされ、また、ケース体102の内壁面102dのテーパ形状でも位置決めされるため、製造過程で中蓋110の位置決めに対する注意を特に払う必要がなく、さらに作業効率を高めることができる。また、ケース体102の内壁面102dに中蓋110を支持するリブのような部位を形成する必要がなく、成形樹脂材料の使用量削減にも繋がる。
【0051】
本発明は上述した一実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。上記のように、電子機器はACアダプタ100に限らず、防水構造を用いる各種の電子機器として本発明を実施することができる。
【0052】
ケース体102は、一実施形態で例示した略角柱形状の外形を有するものではなく、その他の外形を有するものでもよい。また、中蓋110についても、一実施形態で例示した形状以外のものでもよい。
【0053】
電子部品は、回路基板112のようなものに限らず、バッテリや電動ファン、スピーカ等の電子部品が収容されてもよい。
【0054】
ブッシュ部材106は、一実施形態ではケース体102の長手方向の一端側に取り付けられているが長手方向の中央寄り位置に取り付けられてもよい。この場合、外蓋104の外面や中蓋110の中央部分110aを貫通するようにしてブッシュ部材106が配置されてもよい。また、中蓋110を貫通する態様のブッシュ部材106には、掛止爪のような掛止部材が形成されて、中蓋110に貫通された状態でも中蓋110に係合可能とすることができる。
【0055】
その他、図示とともに挙げた各種の形状や大きさ等は好ましい一例に過ぎず、これらを適宜に変更して本発明を実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0056】
100 ACアダプタ
102 ケース体
104 外蓋
106 ブッシュ部材
108 プラグ
110 中蓋
120 封止材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8