(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174653
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】直動案内ユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20221116BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080603
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】山下 直起
【テーマコード(参考)】
3J104
3J701
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104BA33
3J104CA24
3J104DA05
3J104DA18
3J701AA02
3J701AA44
3J701AA64
3J701AA71
3J701BA73
3J701CA08
3J701EA67
3J701FA32
(57)【要約】
【課題】直動案内ユニットの設置方向に関わらず使用が可能で、かつ、給油が容易である給油溝を有する直動案内ユニットを提供すること。
【解決手段】
スライダのエンドキャップの両側面および正面に給油口を有し、給油口から方向転換路まで連通する給油経路を有する直動案内ユニットである。給油経路は、前記給油口の間を接続する第1経路と、前記一対の方向転換路の第1の点と、一対の第2の点とを結ぶの第1部分と、前記一対の第2の点のそれぞれの間を接続する第2部分と、を含む第2経路と、
前記第1経路の第1部分にある第3の点と前記第2経路との間を接続し、かつ、前記第2経路よりも高い位置にある第4の点を通過する第1接続路と、
前記第1経路の前記第2部分と第2経路との間を接続し、正面の給油口と連通する第2接続路と、を含む、直動案内ユニット。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、
前記レールに対して摺動可能であるスライダと、
前記レールおよび前記スライダによって形成される一対の転動路を転走可能である転動体と、を備える直動案内ユニットであって、
前記スライダは、
スライダ本体と、
前記スライダ本体の両端面に固定され、前記転動路と接続する一対の方向転換路が形成されたエンドキャップと、を有し、
前記エンドキャップは、
前記エンドキャップの両側面のそれぞれに形成された一対の第1の給油口と、
前記エンドキャップの正面に形成された第2の給油口と、を含む給油口を有し、
直動案内ユニットには、前記給油口と前記方向転換路とを連通する給油経路が形成されており、
前記エンドキャップの幅方向に延びるX軸と、
前記エンドキャップの厚み方向に延びるY軸と、
前記エンドキャップの高さ方向に、前記エンドキャップの底面側から上面側へと延びるZ軸と、を有し、
前記エンドキャップの幅方向における中央を通るYZ平面と、前記エンドキャップの前記スライダ本体に接する側の端面を含むXZ平面と、前記エンドキャップの底面を含むXY平面と、が交わる点を原点とする座標空間において、
前記給油経路は、
前記一対の第1の給油口と前記2の給油口との間を接続する第1経路と、
前記一対の方向転換路のそれぞれにある一対の第1の点と、前記一対の第1の点よりもZ軸方向に正の位置である一対の第2の点と、を結ぶ一対の第1部分と、前記一対の第2の点の間を接続する第2部分と、を含む第2経路と、
前記一対の第1経路における前記一対の第1部分にある一対の第3の点と、前記第2経路との間を接続し、かつ、前記第2経路よりもZ軸方向に正の位置にある第4の点を通過する第1接続路と、
前記第2の給油口と連通するとともに、前記第1経路の前記第2部分と第2経路との間を接続する第2接続路と、を含み、
前記一対の第3の点は、そのX座標の絶対値が、前記第1経路の前記一対の第1部分のX座標の絶対値の最大値と同じまたは大である、直動案内ユニット。
【請求項2】
前記第1経路は、前記エンドキャップの内部を直線的に貫通する貫通孔であり、
前記第2経路は、前記エンドキャップの前記スライダ本体に接する側の端面上に形成され、前記エンドキャップと前記スライダ本体とが密着固定されることによって管路が形成される経路である、請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記第1経路と、前記第2経路の前記第2部分とは、いずれもX軸方向に延び、かつ、Y軸方向に互いに離間している経路である、請求項1または請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記第1経路は、前記第2経路の前記第2部分よりも、Z軸方向において正の位置に位置している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記第2経路の前記一対の第1部分はZ軸方向に延び、前記第2経路の前記第2部分はX軸方向に延びる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記一対の第1接続路は、
前記第2経路と接続し、Y軸方向に延びる第1接続部分と、
前記エンドキャップの前記スライダ本体に接する側の端面上に形成される第2接続部分と、を含み、
前記第3の点および前記第4の点はいずれも第2接続部分にある請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
前記第2接続部分はS字状の曲線で形成される、請求項6に記載の直動案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内ユニットにおいて、スライダのエンドキャップに給油口が設けられたものが周知である。給油口から注入された潤滑油は、エンドキャップに形成された油溝を通って移動し、エンドキャップ内に設けられた転動体の軌道に到達する。給油口は、エンドキャップの側面およびエンドキャップの正面に設けられることが多い。
【0003】
特許文献1には、エンドキャップの正面中央に第1の給油口、両側面に第2の給油口を有する、直動案内ユニットのスライダが開示されている。特許文献1の直動案内ユニットでは、給油経路に形成されたピン孔にピンを挿入し、ピンを回転させることによって、第1の給油口と第2の給油口との間で給油経路の開通/遮断を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-221008号公報
【特許文献2】特開2007-100951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直動案内ユニットは、使用の態様に応じてさまざまな姿勢で設置される。そこで、直動案内ユニットの設置姿勢に関わらず使用が可能で、かつ、給油が容易である直動案内ユニットを提供することを、本開示にかかる発明の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った直動案内ユニットは、レールと、前記レールに対して摺動可能であるスライダと、前記レールおよび前記スライダによって形成される一対の転動路を転走可能である転動体と、を備える。前記スライダは、スライダ本体と、前記スライダ本体の両端面に固定され、前記転動路と接続する一対の方向転換路が形成されたエンドキャップと、を有する。前記エンドキャップは、前記エンドキャップの両側面のそれぞれに形成された一対の第1の給油口と、前記エンドキャップの正面に形成された第2の給油口と、を含む給油口を有する。直動案内ユニットには、前記給油口と前記方向転換路とを連通する給油経路が形成されている。前記エンドキャップの幅方向に延びるX軸と、前記エンドキャップの厚み方向に延びるY軸と、前記エンドキャップの高さ方向に、前記エンドキャップの底面側から上面側へと延びるZ軸と、を有し、前記エンドキャップの幅方向における中央を通るYZ平面と、前記エンドキャップの前記スライダ本体に接する側の端面を含むXZ平面と、前記エンドキャップの底面を含むXY平面と、が交わる点を原点とする座標空間を規定する。前記座標空間において、前記給油経路は、第1経路と、第2経路と、第1接続路と、第2接続路と、を含む。前記第1経路は、前記一対の第1の給油口と前記2の給油口との間を接続する。前記第2経路は、前記一対の方向転換路のそれぞれにある一対の第1の点と、前記一対の第1の点よりもZ軸方向に正の位置である一対の第2の点と、を結ぶ一対の第1部分と、前記一対の第2の点の間を接続する第2部分と、を含む。前記第1接続路は、前記一対の第1経路における前記一対の第1部分にある一対の第3の点と、前記第2経路との間を接続し、かつ、前記第2経路よりもZ軸方向に正の位置にある第4の点を通過する。前記第2接続路は、前記第2の給油口と連通するとともに、前記第1経路の前記第2部分と第2経路との間を接続する。前記一対の第3の点は、そのX座標の絶対値が、前記第1経路の前記一対の第1部分のX座標の絶対値の最大値と同じまたは大である。
【発明の効果】
【0007】
上記直動案内ユニットによれば、直動案内ユニットの設置姿勢に関わらず使用が可能で、かつ、給油が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1における直動案内ユニットを示す一部断面斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの側面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの正面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの背面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの断面斜視図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの断面斜視図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの断面斜視図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップを横置きで使用する場合のエンドキャップを示す背面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの変形例の背面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの変形例の背面図である。
【
図13】
図13は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの変形例の背面図である。
【
図14】
図14は、実施の形態1における直動案内ユニットのエンドキャップの変形例の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に従った直動案内ユニットは、レールと、前記レールに対して摺動可能であるスライダと、前記レールおよび前記スライダによって形成される一対の転動路を転走可能である転動体と、を備える。前記スライダは、スライダ本体と、前記スライダ本体の両端面に固定され、前記転動路と接続する一対の方向転換路が形成されたエンドキャップと、を有する。前記エンドキャップは、前記エンドキャップの両側面のそれぞれに形成された一対の第1の給油口と、前記エンドキャップの正面に形成された第2の給油口と、を含む給油口を有する。直動案内ユニットには、前記給油口と前記方向転換路とを連通する給油経路が形成されている。前記エンドキャップの幅方向に延びるX軸と、前記エンドキャップの厚み方向に延びるY軸と、前記エンドキャップの高さ方向に、前記エンドキャップの底面側から上面側へと延びるZ軸と、を有し、前記エンドキャップの幅方向における中央を通るYZ平面と、前記エンドキャップの前記スライダ本体に接する側の端面を含むXZ平面と、前記エンドキャップの底面を含むXY平面と、が交わる点を原点とする座標空間を規定する。前記座標空間において、前記給油経路は、第1経路と、第2経路と、第1接続路と、第2接続路と、を含む。前記第1経路は、前記一対の第1の給油口と前記2の給油口との間を接続する。前記第2経路は、前記一対の方向転換路のそれぞれにある一対の第1の点と、前記一対の第1の点よりもZ軸方向に正の位置である一対の第2の点と、を結ぶ一対の第1部分と、前記一対の第2の点の間を接続する第2部分と、を含む。前記第1接続路は、前記一対の第1経路における前記一対の第1部分にある一対の第3の点と、前記第2経路との間を接続し、かつ、前記第2経路よりもZ軸方向に正の位置にある第4の点を通過する。前記第2接続路は、前記第2の給油口と連通するとともに、前記第1経路の前記第2部分と第2経路との間を接続する。前記一対の第3の点は、そのX座標の絶対値が、前記第1経路の前記一対の第1部分のX座標の絶対値の最大値と同じまたは大である。
【0010】
直動案内ユニットは、レールの両側面に一対の軌道路が形成されている。このような直動案内ユニットは、一対の軌道路が互いに水平方向に位置する姿勢(一般的に縦置きという)、一対の軌道路が互いに上下方向に位置する姿勢(一般的に横置きという)等、取り付け相手の機器やスペース等に応じてさまざまな姿勢で設置される。また、直動案内ユニットは必要に応じて外部から潤滑油が供給される。このため、設置姿勢に関わらず、容易に潤滑油を供給可能で、潤滑油が一対の軌道路の両方に確実に供給されることが望まれる。
【0011】
従来、設置姿勢に関わらず潤滑油の供給が可能である直動案内ユニットが提案されている。例えば特許文献1(特開2005-221008号)には、スライダのエンドキャップの両側面および正面中央部に給油口があり、これらの給油口を接続する給油路を有するものが開示されている。特許文献1の給油路には2箇所のピン孔が設けられており、ピン孔に挿入されたピンを回すことによって、給油路の開通/遮断を切り替えることができる。一方で、コストや品質管理の観点からは、直動案内ユニットを構成する部品の点数が少ないことが望ましい。
【0012】
また特許文献2(特開2007-100951号)には、直動案内ユニットのエンドキャップにおいて、給油口から方向転換路までを連通する給油溝が開示されている。特許文献2の直動案内ユニットを横置きで使用する場合には、給油溝の一部を樹脂等で閉塞するとともに、スライダ本体の両端面に配置される2つのエンドキャップを利用して、2つのエンドキャップの一方から上側に位置する方向転換路に、他方から下側に位置する方向転換路に、それぞれ給油できる。しかしながら、1つのエンドキャップから上下の方向転換路の両方に給油ができれば、給油がより容易になり、利便性がさらに向上する。
【0013】
そこで、直動案内ユニットを構成する部品の点数を増やすことなく、かつ、直動案内ユニットの設置姿勢に関わらず、1つのエンドキャップから一対の軌道の両方に給油が可能となる給油経路が検討された。
【0014】
直動案内ユニットの設置姿勢に応じて、エンドキャップに形成される一対の方向転換路の相対位置は変わる。一方、潤滑油は常に重力に従って移動する。発明者はこの事実に着目し、横置きおよび縦置きのいずれの場合であっても、一対の方向転換路の両方に対して鉛直方向の上方あるいは同位置から潤滑油が供給されるように経路を構成することを構想した。そして、本開示に従う直動案内ユニットによれば、縦置き時には従来と同様にエンドキャップ中央の給油経路を通って一対の方向転換路の両方に潤滑油が供給されるとともに、横置き時には鉛直方向の上側に位置する方向転換路への接続部分に潤滑油が供給され、上側の方向転換路と下側の方向転換路の両方に潤滑油が到達することが確認された。本開示の構成によれば、横置き、縦置きいずれの設置姿勢においても、1つのエンドキャップから一対の軌道路の両方に潤滑油を供給できる。
【0015】
本開示の直動案内ユニットを縦置きする場合、給油口から供給された潤滑油は、まず給油口に接続する第1経路に入る。第1経路には、第1接続路と第2接続路とが接続しているが、第1接続路は第1経路よりも鉛直上方に位置にする点を通るため、潤滑油は第1接続路の途中までしか到達しない。一方、第2接続路は第1経路よりも鉛直上方となる位置を通らないため、潤滑油は第2接続路に進入し、第2接続路に接続する第1経路へと移動する。第2接続路は、方向転換路への接続点である第1の点よりも鉛直上方に位置する第1経路の第2部分において、第1経路に接続している。このため、第2接続路に流入した潤滑油は、第1経路の第2部分を経て第1経路の第1部分に流入し、方向転換路に到達する。
【0016】
本開示の直動案内ユニットを横置きする場合には、第1経路と第1接続路との接続部分のうち、上方に位置する接続部分の直下にピン等を挿入して閉塞する。そうすると、エンドキャップの上方に位置する給油口から供給された潤滑油は、供給口に接続する第1経路から第1接続路に流入する。第1接続路は第1経路の第1部分に接続している。また、第1接続路と第1経路の第1部分とが接続する点は、一対の方向転換路の両方に対して同位置もしくは上方となる。このため、上側の方向転換路と下側の方向転換路の両方に対して潤滑油が供給される。
【0017】
上記のとおり、本開示の直動案内ユニットによれば、縦置きと横置きのいずれの設置姿勢においても使用可能であり、1箇所の給油口から潤滑油を供給するだけで、一対の軌道の両方に給油できる。また、1つのピンを用いるだけで、縦置きと横置きの両方に適用できる。
【0018】
前記の直動案内ユニットにおいて、前記第1経路は、前記エンドキャップの内部を直線的に貫通する貫通孔であってよく、前記第2経路は、前記エンドキャップの前記スライダ本体に接する側の端面上に形成され、前記エンドキャップと前記スライダ本体とが密着固定されることによって管路が形成される経路であってよい。かかる構成は、エンドキャップに直線的な孔を形成すること、および、エンドキャップの端面に溝を形成することによって、実現できる。すなわち、実用的かつ合理的な方法によって製造可能であり、品質の安定した直動案内ユニットを確立された方法によって製造できる。
【0019】
前記の直動案内ユニットにおいて、前記第1経路と、前記第2経路の前記第2部分とは、いずれもX軸方向に延び、かつ、Y軸方向に互いに離間しているものとしてよい。かかる構成の直動案内ユニットは、公知の機械加工を用いて実用的かつ合理的な方法によって製造できる。また、給油経路の構成がシンプルで、給油経路を配置するためのスペースが少ない小型の直動案内ユニットにおいても適用が可能である。
【0020】
前記の直動案内ユニットにおいて、前記第1経路は、前記第2経路の前記第2部分よりも、Z軸方向において正の位置に位置しているものとしてもよい。かかる構成によれば、直動案内ユニットを縦置きする場合に、第1経路から第2経路への潤滑油の流入がスムーズになり、少量の潤滑油で確実に潤滑が可能となる。
【0021】
前記の直動案内ユニットにおいて、前記第2経路の前記一対の第1部分はZ軸方向に延び、前記第2経路の前記第2部分はX軸方向に延びるものとできる。かかる構成によれば、シンプルで短い給油経路が実現され、給油経路中に滞留する潤滑油の量が少なくなる。このため、潤滑油の使用量を低減可能であるとともに、給油経路内に潤滑油が滞留することを回避できる。
【0022】
前記の直動案内ユニットにおいて、前記一対の第1接続路は、前記第2経路と接続し、Y軸方向に延びる第1接続部分と、前記エンドキャップの前記スライダ本体に接する側の端面上に形成される第2接続部分と、を含み、前記第3の点および前記第4の点はいずれも第2接続部分にあるものとしてよい。かかる構成によれば、シンプルで短い給油経路が実現される。また、エンドキャップの端面からY軸方向に孔を形成する、また、エンドキャップの端面上に溝を形成するという従来と同様の製造方法を用いて、上述の効果を有する直動案内ユニットを製造できる。
【0023】
前記の直動案内ユニットにおいて、前記第2接続部分はS字状の曲線で形成されるものとしてよい。かかる構成とすることによって、所望の形状の給油経路を実現できるとともに、給油経路における屈曲部分を減らすことができる。このため、給油経路における潤滑油の移動がスムーズになり、給油経路内に潤滑油が滞留することを回避できる。
【0024】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の直動案内ユニットの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。なお、図面中で、点(p1、p2等)を示す引き出し線の先端に付された黒丸は、理解容易のために付されたものであり、実体的な構成を示すものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1である直動案内ユニット1の構造を示す一部断面斜視図である。
図1において、X軸は直動案内ユニット1、レール10、スライダ100の幅方向、Y軸方向は直動案内ユニット1、レール10、スライダ100の長手方向、Z軸は直動案内ユニット1、レール10、スライダ100の高さ方向である。
【0026】
まず、直動案内ユニット1の全体的な構成を説明する。
図1を参照して、直動案内ユニット1は、レール10と、スライダ100と、転動体であるころ200と、を備える。スライダ100はレール10に跨架されており、レール10に対して摺動可能である。スライダ100は、上面である台状部と、台状部の両側端から垂下する袖部とを有する。スライダ100は、スライダ本体であるケーシング110と、ケーシング110の長さ方向(Y軸方向)の両端面に取り付けられたエンドキャップ120と、を備える。エンドキャップ120の、ケーシング110に接する側と逆側の端面には、エンドシール140が取り付けられている。エンドキャップ120の側面に、グリースニップル31が取り付けられている。
【0027】
レール10には、直動案内ユニット1を取り付ける相手部材を固定するための取り付け孔11が複数形成されている。ケーシング110の上面には、ワークや機器等の相手部材を取り付けるためのねじ穴である穴101が複数形成されている。
【0028】
図2は、
図1におけるA-A断面を示す断面図である。
図1、
図2を参照して、レール10の両側面には、一対の軌道面10a、10bが形成されている。一対の軌道面10a、10bは、レール10の長手方向に沿って伸びる上下2列の軌道面10a、10bを含む。ケーシング110において、軌道面10a、10bに対向する位置に、軌道面110a、110bが形成されている。軌道面10aおよび110a、軌道面10bおよび110bによって、負荷領域である2列の軌道路102a、102bが形成される。すなわち直動案内ユニット1は、上下2列の軌道路を有する。スライダ100の移動に従って、ころ200が軌道路内を転走する。ケーシング110の内部には、軌道路102a、102bとそれぞれ連続し、無負荷領域であるリターン路103a、103bが形成される。
【0029】
リターン路103a、103bは、長手方向に沿って2分割されたパイプ111、112が組み合わされて形成されてもよい。パイプ111、112の端部は、エンドキャップ120に形成される突起105,106([
図3])と嵌め合い可能に形成される。パイプ111、112は、潤滑油が含浸され、潤滑油を保持可能である焼結樹脂部材からなるものであってもよい。軌道路102a、102bを転走する転動体200は、レール10からスライダ100を外した場合でも転動体200が脱落しないよう、保持板131および保持バンド132によって保持される。保持板131のレール10に対向する側には、外側に向かって凹む凹形状の溝が、長手方向に延在している。当該凹溝には、保持バンド132が配設される。エンドキャップ120の底部のレール10と対向する位置には、底面シール129が配設されている。
【0030】
本開示に従う直動案内ユニットのエンドキャップについて説明する。
図3は、直動案内ユニット1のエンドキャップ120の斜視図である。
図4はエンドキャップ120の側面s6を示す側面図である。
図5はエンドキャップ120の正面s4を示す正面図である。
図6はエンドキャップ120の背面s1を示す背面図である。
【0031】
ここで、まず、エンドキャップ120の構成を説明するための座標空間Sについて説明する。
図3を参照して、X軸は、エンドキャップ120の幅方向に延びる軸である。X軸の方向は、直動案内ユニット1、レール10、スライダ100の幅方向と同じ方向である(
図1参照)。Y軸は、エンドキャップ120の厚み方向に延びる軸である。Y軸は、直動案内ユニット1、レール10、スライダ100の長さ方向と同じ方向である(
図1参照)。Z軸は、エンドキャップ120の高さ方向に、エンドキャップ120の底面側から上面側へと延びる軸である。すなわち、エンドキャップ120の底面側に対して上面側が、Z軸方向に正の方向である。Z軸は、直動案内ユニット1、レール10、スライダ100の高さ方向と同じ方向である(
図1参照)。座標空間Sの原点は、エンドキャップ120の幅方向における中央x
0を通るYZ平面と、エンドキャップ120のケーシング110側の端面s1を含むXZ平面と、エンドキャップ120の底面s2を含むXY平面と、の交点である。なお、エンドキャップ120の端面s1には、孔、溝および突出部等が形成されているが、「端面s1を含むXZ平面」はこれらの孔、溝および突出部を除く、端面s1の主たる面を含むXZ平面を意味する。また、エンドキャップ120の底面s2には、底面シールを係止するためのフック等が形成されているが、「底面s2を含むXY平面」はこれらの係止部等を除く、底面s2主たる面を含むXY平面を意味する。
【0032】
なお、本明細書において、「X軸方向に」「Y軸方向に」「Z軸方向に」という文言は、数学的に厳密に軸に平行であることを意味するのではなく、設計や製造の過程で生じる不可避的なずれがある場合も当然含む。また、左右方向、上下方向、奥行き方向という文言と同程度の射程範囲を包含し、発明の効果を損なわない限りにおいて、軸方向に対してある程度(例えば15°以下程度)の角度を有する場合も含む。
【0033】
図3を参照して、エンドキャップ120は、背面である端面s1、底面s2,上面s3、正面s4、一対の側面s5,s6を有する。エンドキャップ120は、エンドキャップ120の幅方向の中心に対して左右対称に形成されている。本明細書において「一対」とは、「エンドキャップの幅方向の中心に関して対称に設けられた一対」を意味する。エンドキャップ120には、一対の方向転換路104a、104bが形成されている。方向転換路104a、104bは、軌道路102a、102bおよびリターン路103a、103b([
図2])と接続して、環状の無限循環路を形成する。方向転換路104a、104bの端部には、突起105,106が形成されている。突起105,106は、リターン路103a、103bを構成するパイプ111、112の端部と互いに嵌合する。
【0034】
図3,
図5,
図6を参照して、エンドキャップ120には、貫通穴21a、21bが形成されている。貫通穴21a、21bには、エンドキャップ120とエンドシール140とをケーシング110に対して固定するためのねじが挿入されうる。貫通穴21a、21bにねじが挿入され、このねじがケーシングのねじ穴118に螺合されることによって、エンドキャップ120およびエンドシール140が、ケーシング110に対して固定される。
【0035】
図4を参照して、エンドキャップ120の側面には、第1の給油口である給油口22が形成されている。給油口22の中心である点p8の座標は(X
p8,Y
p8,Z
p8)である。給油口22の内周面は、グリースニップルや栓をねじ固定できるようにねじ山が形成されていてもよい。給油口22に連続して、給油経路Lにおける第1経路である管路220が形成されている。すなわち、エンドキャップ120は、管路220を規定する円筒状の周壁を有する。管路220は、エンドキャップ120の内部に形成された、X軸方向に延びる管路であり、座標空間Sにおける高さ方向の位置はZ
p8である。管路220は、側面s6および側面s5に形成された一対の給油口22を接続している。管路220は、エンドキャップ120の側面s6と側面s5との間を直線的に貫通している。
【0036】
図5を参照して、エンドキャップ120の正面s4には、第2の給油口である給油口25が形成されている。給油口25の内周面は、グリースニップルや栓をねじ固定できるようにねじ山が形成されていてもよい。給油口25に連続して、給油経路Lにおける第2接続路である管路250が形成されている。すなわち、エンドキャップ120は、管路250を規定する円筒状の周壁を有する。管路250は、エンドキャップ120の内部に形成された、Y軸方向に延びる管路である。管路250は、エンドキャップ120の正面s4と背面s1との間を直線的に貫通している。エンドキャップ120の底部には、底面シール129([
図2])と係合しうるフック123が設けられている。
【0037】
図6を参照して、エンドキャップ120の背面s1には、凹部である一対の方向転換路104a、104bが形成されている。図示していないが、方向転換路104a、104bには、保持部材131や保持バンド132と嵌め合いとなる凹凸が形成されていてもよい。エンドキャップ120の背面s1には、給油経路Lを構成する凹溝210(210a、201b),凹溝240bが形成されている。スライダ100が組み立てられた状態では、エンドキャップ120の背面s1は、ケーシング110の端面と密着して固定される。スライダ100が組み立てられた状態では、凹溝210(210a、201b),凹溝240bの開口面はケーシング110の端面によって塞がれて、管路が形成される。凹溝210(210a、201b),凹溝240bの長さ方向に垂直な断面は、矩形であってもよく、U字状、半円形、半楕円形であってもよい。
【0038】
給油経路Lを構成する凹溝210(210a、201b),凹溝240bについて説明する。
エンドキャップ120の背面s1には、給油経路Lにおける第2経路としての凹溝210が形成されている。言い換えると、エンドキャップ120は、給油経路Lにおける第2経路としての凹溝210を規定する周壁を有する。凹溝210は、Z軸方向に延びる一対の第1部分210aと、第1部分210aのそれぞれの上端と連続しX軸方向に延びる第2部分210bと、を含む。第1部分210aは、第1の点である点p1において、方向転換路104a、104bと接続している。実施の形態1では、方向転換路104aと方向転換路104bとが交差する位置の近傍に点p1が設けられている。この位置とすることによって、2列に配置される転動体の両方に効率よく給油できる。点p1は、方向転換路104a、104bにおける任意の位置であってよい。
【0039】
凹溝210の第2部分210bは、一対の第2の点である点p2において、第1部分210aと接続している。言い換えると、第2部分210bは、一対の第2の点p2のそれぞれの間を接続している。点p2は、点p1よりもZ軸方向に正の位置にある。点p1の座標(Xp1,Yp1,Zp1)と点p2の座標(Xp2,Yp2,Zp2)は、Yp1=Yp2、Zp1<Zp2である。また、|Xp1|=|Xp2|であってもよく、|Xp2|は|Xp1|よりも小さくてもよい。すなわち、点p2は、点p1よりも、エンドキャップ120の幅方向の中心の近くに設けられてもよい。
【0040】
また、第2部分210bは、給油経路Lにおける第2接続路である管路250と、点p7において接続している。点p7の座標(Xp7,Yp7,Zp7)は、Xp7=0、Yp2=Yp7であり、Zp7はZp2よりわずかに大きい。すなわち、点p7は点p2よりもエンドキャップの高さ方向において、わずかに高い位置にある。これらの構成によって、エンドキャップ120が縦置きされる時、管路250から供給された潤滑油は、点p7から第2経路の第2部分210bに入る。続いて点p2に達した潤滑油は重力に従って点p1に到達する。このようにして方向転換路104a、104bの両方に潤滑油が供給される。
【0041】
また、エンドキャップ120の背面s1には、給油経路Lにおける一対の第1接続路を構成する一対の凹溝240bが形成されている。凹溝240bは、エンドキャップ120の背面s1を見て、点p5から点p4を経て点p3に至る、S字状に形成された凹溝である。凹溝240bは、第3の点である点p3において凹溝210aと接続している。点p3は、第1部分210bの両端部である点p1、点p2の間に位置する。点p1,p2の座標と点p3の座標(Xp3,Yp3,Zp3)とは、Yp1=Yp2=Yp3、Zp2>Zp3>Zp1を満たす。さらに|Xp3|≧|Xp1|、|Xp3|≧|Xp2|である。すなわち、点p3のX座標における絶対値は、点p1,p2のX座標における絶対値と同じであるか、より大きい。この構成によって、直動案内ユニット1を横置きした場合、一対の点p3のうちで上側に位置するp3に供給される潤滑油は、重力に従ってp1,p2へと移動する。
【0042】
凹溝240bは、第4の点である点p4(X
p4,Y
p4,Z
p4)を通過している。点p4は、管路220(
図4)よりもZ軸方向に正の位置にある。すなわち、Z
p4>Z
p8である。凹溝240bは点p5において管路240a([
図8])と接続している。管路240aは、Y軸方向に延びる管路である。一方、凹溝240bはエンドキャップ120の端面s1上(言い換えるとXZ平面上)に延在する凹溝である。すなわち、管路240aと凹溝240bは互いに垂直方向に延在する。第1接続路240は、管路240aと凹溝240bとから構成される。第1の接続路240は、第1経路である管路220と第2経路である凹溝210aとの間を接続する。
【0043】
図7は、エンドキャップ120の断面斜視図である。
図7を参照して、第1経路である管路220は、一対の第1の給油口である給油口22の間を接続している。また、管路220は、第2の給油口である給油口25から延びる管路250と連通している。管路220はX軸方向に直線的に延びる。管路250はY軸方向に直線的に延びる。
【0044】
図7を参照して、直動案内ユニット1を縦置きする場合、すなわち、
図7に示されるように、エンドキャップ120における一対の方向転換路104a、104bが互いに水平方向に位置するように設置される場合の潤滑油の移動を説明する。なお、ここでは説明のためにエンドキャップ120のみを図示しているが、実際にはエンドキャップ120はケーシング110等と組み合わされており、エンドキャップ120の端面s1に形成された凹溝は、管路となっている。
【0045】
図7を参照して、給油口22あるいは給油口25から挿入された潤滑油は、管路220および管路250に移動する。管路220に入った潤滑油は、管路240aに入り、凹溝240bに到達する。しかしながら、凹溝240bは管路220よりもZ軸方向に正の位置にある点p4(
図6)を通過しているため、重力に従って移動する潤滑油は、点p4に到達できない。一方、管路250に入った潤滑油は、続いて点p7を経て、凹溝210bに移動する。さらに潤滑油は、点p2から凹溝210aに入り、点p1に到達し、方向転換路104a、104bに入る。
【0046】
管路220および凹溝210bはどちらも、X軸方向に直線的に延びる。同時に、管路220と凹溝210bとは、Y軸方向に互いに離間して形成されている。また、管路220は、凹溝210bよりもZ軸方向にわずかに正の位置にある。つまり、管路220のZ座標(Zp8)と凹溝210bのZ座標(Zp2)とは、Zp8>Zp2の関係である。言い換えれば、管路220と凹溝210bとは、互いに並行する経路である。管路220と凹溝210bとをこのように配置することによって、小型のエンドキャップにおいても給油経路Lを配置できる。また、給油口22の間に貫通孔を設けるというシンプルな工程によって給油経路Lを構成できる。
【0047】
図8は、エンドキャップ120の断面斜視図である。
図8を参照して、第1接続路240は、第1接続部分である管路240aと、第2接続部分である凹溝240bと、から構成される。管路240aは、点p6において管路220と接続している。点p6から点p5までの管路である管路240aは、Y軸方向に延びる管路である。凹溝240bは、点p5から点p4を経て点p3に至る凹溝である。凹溝240bは、点p3において凹溝210aと接続している。点p3(X
p3,Y
p3,Z
p3)、点p4(X
p4,Y
p4,Z
p4)、点p5(X
p5,Y
p5,Z
p5)の関係は、|X
p5|>|X
p4|>|X
p3|、Y
p3=Y
p4=Y
p5、Z
p3<Z
p5<Z
p4である。点p5(X
p5,Y
p5,Z
p5)と点p6(X
p6,Y
p6,Z
p6)との関係は、|X
p5|=|X
p6|、Y
p6>Y
p5、Z
p5=Z
p6である。
【0048】
図9は、エンドキャップ120の断面斜視図である。
図9は、管路220に栓300を挿入した状態を示している。栓300は、給油経路Lを一部遮断するための部材である。直動案内ユニット1を横置きで使用する場合に、栓300を使用する。直動案内ユニット1を横置きで使用する場合、管路220における一対の点p6(
図8)のうち上側の点p6の直下に、栓300を挿入する。本開示の直動案内ユニットは、栓300を挿入するというシンプルな対応によって、直動案内ユニットを横置きで使用する場合にも、一対の軌道路の両方に給油を行うことができる。
【0049】
図10は、直動案内ユニットが横置き姿勢で設置される場合のエンドキャップ120を示す。エンドキャップ120は、X軸の正方向が鉛直上方となるように設置されている。点線で示す管路220に、栓300が挿入されている。
図10を参照して、直動案内ユニット1を横置きする場合、すなわち、
図10に示されるように、エンドキャップ120における一対の方向転換路104a、104bが互いに鉛直上下方向に位置するように設置される場合の、潤滑油の移動を説明する。なお、ここでは説明のためにエンドキャップ120のみを図示しているが、実際にはエンドキャップ120はケーシング110等と組み合わされており、エンドキャップ120の端面s1に形成された凹溝は、管路となっている。
【0050】
図10を参照して、鉛直上方に位置する給油口22から挿入された潤滑油は、管路240a([
図8])に入る。管路220は栓300によって閉塞されているため、潤滑油は管路220の栓300よりも下には進入しない。潤滑油は、管路240aから点p5を経て凹溝240bに入り、凹溝240bの点p4、点p3を経て、凹溝210aに入る。凹溝210aに入った潤滑油の一部は、点p1を経て上側の方向転換路104a、104bに入る。また、凹溝210aに入った潤滑油の一部は、点p2を経て凹溝210bに入る。凹溝210bに入った潤滑油は、重力に従って下方(X軸の負方向)に移動し、点p2から点p1を経て、下側の方向転換路104a、104bに入る。なお、潤滑油の一部は点p3から凹溝240bに移動するが、鉛直下方に位置する給油口22をグリースニップルや栓で閉塞して、潤滑油の漏出を防ぐことができる。
【0051】
(変形例)
上述の実施の形態1は1つの実施態様に過ぎず、多くの構成を変更可能である。例えば、実施の形態1では、レールの片側にそれぞれ2列の転動体の循環路が形成されているが、循環路の構成はこれに制限されない。レールの片側に1列の循環路が形成されたタイプの直動案内ユニットであってもよい。また、転動体はころに制限されず、ボールであってもよい。転動体の間隔を保持する保持器を備えるものでもよい。
【0052】
また、実施の形態1においては、凹溝240bはS字状に形成されているが、凹溝240bの具体的な形状はこれに制限されない。凹溝240bの形状は、スライダやエンドキャップの大きさ、供給しようとする潤滑油の量や性状等に応じて変更可能である。凹溝240bの変形例として、例えば、
図11を参照して、点p5(X
p5,Y
p5,Z
p5)に対して外側上方である位置p44(X
p44,Y
p44,Z
p44)(但し、|X
p44|>|X
p5|、Y
p44=Y
p5、Z
p44>Z
p5)に第4の点を設定することもできる。
図11を参照して、凹溝240bは、点p5から外側上方に直線的に延びて点p44に至り、点p44において180°湾曲し、点p44から内側下方に直線的に延びて、点p3に至る。また、
図12を参照して、凹溝240bは、点p5から外側上方に曲線的に延びて点p44を通り、点p3へと至る曲線状に形成されてもよい。また、
図13を参照して、凹溝240bは、点p5から外側上方に曲線的に延びて点p44を通るとともに、点p44と点p3の間は、点p44から下方に(Y軸方向に)直線的に延びる部分と、点p3に向かって横方向に(X軸方向に)直線的に延びる部分とからなる形状に形成されてもよい。
【0053】
また、
図14を参照して、管路250と凹溝210の第2部分210bとの間に、接続部分である第3部分210cを設けることもできる。すなわち第2経路としての凹溝210は、第1部分210aと、第2部分210bと、第3部分210cと、を含む。第1部分210aは、第1の点である点p1と、点p1よりもZ軸方向に正の位置である第2の点である点p21と、を結ぶ。第2部分210bは、一対の点p21の間を接続する。第3部分210cは、Z軸方向に延在し、管路250と第2部分210bとを接続する。第3部分210cは、給油経路Lにおける第2接続路である管路250と、点p7において接続している。点p21の座標(X
p21,Y
p21,Z
p21)と、点p7の座標(X
p7,Y
p7,Z
p7)との関係は、|X
p21|>X
p7=0、Y
p21=Y
p7、Z
p7>Z
p21である。すなわち、点p7は点p21よりもエンドキャップの高さ方向において、高い位置にある。また、点p5(X
p5,Y
p5,Z
p5)に対して外側上方である位置p41(X
p41,Y
p41,Z
p41)(但し、|X
p41|>|X
p5|、Y
p41=Y
p5、Z
p41>Z
p5)に第4の点が設定されている。点p5と点p3の間を接続する凹溝240bは、点p5から上方に(Y軸方向に)直線的に延びて点p41を通り、点p41で180°湾曲して下方に(Y軸方向に)直線的に延び、点p411でさらに湾曲して点p3へと至る。
【0054】
また、
図11~
図14を参照して、凹溝210の第1部分210aは、その途中で経路の太さが変化していてもよい。具体的に、点p1と点p3との間で太さが変化し、点p1の近傍では相対的に細く、点p3の近傍では相対的に太い経路が形成されていてもよい。その他の経路についても同様であり、経路の太さはその全域にわたって同じでもよく、太さの異なる部分を含んでいてもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 直動案内ユニット、10 レール、100 スライダ、11、101、 穴、10a、10b、110a、110b 軌道面、110 ケーシング、102a、102b 軌道路、103a、103b リターン路、104a、104b 方向転換路、105,106 突起、111、112 パイプ、118 ねじ穴、120 エンドキャップ、123 フック、128 栓、129 底面シール、131 保持板、132 保持バンド、140 エンドシール、200 転動体、210、201a、210b、240b、 凹溝、21a、21b 貫通穴、22、25 給油口、220、250、240a 管路、300 栓、
p1,p2,p21,p3,p4,p41,p44,p5,p6、p7,p8 点