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特開2022-174654着色樹脂組成物及びその製造方法、並びに着色成形体
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  • 特開-着色樹脂組成物及びその製造方法、並びに着色成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174654
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】着色樹脂組成物及びその製造方法、並びに着色成形体
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20221116BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20221116BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221116BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20221116BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221116BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C09D17/00
C08L33/14
C08L101/00
C08F20/34
C08K3/013
C08K5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080604
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】392007566
【氏名又は名称】ナトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】九澤 昌祥
【テーマコード(参考)】
4J002
4J037
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AB021
4J002BB011
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB111
4J002BB121
4J002BB161
4J002BC031
4J002BD041
4J002BG021
4J002BG061
4J002BG071
4J002BG101
4J002BN151
4J002CB001
4J002CF011
4J002CF031
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF181
4J002CF191
4J002CG001
4J002CH091
4J002CJ001
4J002CL011
4J002CL031
4J002CM041
4J002CN031
4J002DC006
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DG026
4J002DJ006
4J002EE056
4J002EJ016
4J002EN017
4J002EQ016
4J002EU116
4J002EZ006
4J002FD096
4J002FD207
4J002FD317
4J002GN00
4J002GQ00
4J037CB16
4J037CC16
4J037DD24
4J037FF03
4J100AL03P
4J100AL03R
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100BA31Q
4J100BA31R
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA25
4J100DA28
4J100JA28
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、明度が低く且つ近赤外領域に高い透過性を有する着色成形体が得られる着色樹脂組成物の配合処方を提供することにある。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂及び(B)有彩色着色顔料を含み、更に(C)分散剤を含んでよい着色樹脂組成物であって、前記(C)成分を含まない場合、前記(A)成分がアミノ基含有熱可塑性樹脂(A1)を含み、前記(C)成分を含む場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、前記(C)成分が(C1)塩基性基含有分散剤を含み、前記(B)成分が、少なくとも、特定の着色顔料を特定の組み合わせ1で含む着色樹脂組成物は、明度が低く且つ近赤外領域に高い透過性を有する着色成形体を与えることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)有彩色着色顔料を含み、更に(C)分散剤を含んでよい着色樹脂組成物であって、
前記(C)成分を含まない場合、前記(A)成分がアミノ基含有熱可塑性樹脂(A1)を含み、
前記(C)成分を含む場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、前記(C)成分が(C1)塩基性基含有分散剤を含み、
前記(B)成分が、少なくとも、以下の着色顔料を以下の組み合わせ1~3の少なくともいずれかで含む、着色樹脂組成物:
(B1)有彩色着色顔料1:色相値H1を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H1の成す角度θH1が、0°≦θH1<144°を満たす着色顔料
(B2)有彩色着色顔料2:色相値H2を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H2の成す角度θH2が、144°≦θH2<234°を満たす着色顔料
(B3)有彩色着色顔料3:色相値H3を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H3の成す角度θH3が、234°≦θH3<360°を満たす着色顔料
組み合わせ1:前記(B1)成分と前記(B2)成分との組み合わせ(但し、θH1+144°≦θH2
組み合わせ2:前記(B2)成分と前記(B3)成分との組み合わせ(但し、θH2+144°≦θH3
組み合わせ3:前記(B3)成分と前記(B1)成分との組み合わせ。
【請求項2】
前記(B)成分1gに対するアミン価が0.5mgKOH以上である、請求項1に記載の着色樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A1)成分がアミノ基含有(メタ)アクリル樹脂である、請求項1又は2に記載の着色樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A1)成分の重量平均分子量が5,000~50,000である、請求項1~3のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)成分100質量部に対する前記(A1)成分の含有量が50質量部以下である、請求項1~4のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C1)成分が、非ヒンダードアミンである、請求項1~5のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
【請求項7】
マスターバッチである、請求項1~6のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
【請求項8】
着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである、請求項1~6のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
【請求項9】
以下の第1工程から第3工程を含む、着色樹脂組成物の製造方法:
(第1工程)
(A)熱可塑性樹脂、(B)有彩色着色顔料、及び分散溶媒を含み、更に(C)分散剤を含んでよい顔料分散液組成物(I)を調製する工程であって、
前記顔料分散液組成物(I)が前記(C)成分を含まない場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、
前記顔料分散液組成物(I)が前記(C)成分を含む場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、前記(C)成分が塩基性基含有分散剤(C1)を含み、
前記(B)成分が、少なくとも、以下の着色顔料を以下の組み合わせ1~3の少なくともいずれかで含む、工程:
(B1)有彩色着色顔料1:色相値H1を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H1の成す角度θH1が、0°≦θH1<144°を満たす着色顔料
(B2)有彩色着色顔料2:色相値H2を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H2の成す角度θH2が、144°≦θH2<234°を満たす着色顔料
(B3)有彩色着色顔料3:色相値H3を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H3の成す角度θH3が、234°≦θH3<360°を満たす着色顔料
組み合わせ1:前記(B1)成分と前記(B2)成分との組み合わせ(但し、θH1+144°≦θH2
組み合わせ2:前記(B2)成分と前記(B3)成分との組み合わせ(但し、θH2+144°≦θH3
組み合わせ3:前記(B3)成分と前記(B1)成分との組み合わせ;
(第2工程)
前記顔料分散液組成物(I)と、追加の(A)熱可塑性樹脂とを混合し、樹脂組成物を調製する工程;及び
(第3工程)
前記樹脂組成物をペレット化、フレーク化、又はチップ化する工程。
【請求項10】
(A)熱可塑性樹脂、及び(B)有彩色着色顔料を含み、更に(C)分散剤を含んでよい着色成形体であって、
前記(C)成分を含まない場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、
前記(C)成分を含む場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、前記(C)成分が塩基性基含有分散剤(C1)を含み、
前記(B)成分が、少なくとも、以下の着色顔料を以下の組み合わせ1~3の少なくともいずれかで含む、着色成形体:
(B1)有彩色着色顔料1:色相値H1を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H1の成す角度θH1が、0°≦θH1<144°を満たす着色顔料
(B2)有彩色着色顔料2:色相値H2を有し、相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H2の成す角度θH2が、144°≦θH2<234°を満たす着色顔料
(B3)有彩色着色顔料3:色相値H3を有し、相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H3の成す角度θH3が、234°≦θH3<360°を満たす着色顔料
組み合わせ1:前記(B1)成分と前記(B2)成分との組み合わせ(但し、θH1+144°≦θH2
組み合わせ2:前記(B2)成分と前記(B3)成分との組み合わせ(但し、θH2+144°≦θH3
組み合わせ3:前記(B3)成分と前記(B1)成分との組み合わせ。
【請求項11】
前記着色成形体100g中前記(B)成分を総量で5~500mg含有する、請求項10に記載の着色成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物及びその製造方法、並びに着色成形体に関する。より具体的には、本発明は、明度が低く且つ近赤外領域に高い透過性を有する着色成形体を与えることができる着色樹脂組成物及びその製造方法、並びに、明度が低く、且つ、近赤外領域に高い透過性を有する意匠性に優れた着色成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインスツルメントパネル等の内装用のプラスチック部材は、周囲との統一感等の意匠性の観点から黒色であることが多く、且つ、意匠性をより一層高める観点から漆黒のピアノブラック調が望まれる。一般的に黒色顔料としては、着色力が高く、安価なカーボンブラックが使われていた。しかし、カーボンブラックは可視光領域だけでなく近赤外領域にまで吸収をもつため、熱を吸収し高温になりやすく、プラスチック部材の熱劣化が起こる懸念がある。そこで、高い黒色性と耐蓄熱性とを両立させることが課題となる。
【0003】
たとえば、特許文献1では、遮熱性機能を有する塗膜形成方法、当該方法で形成された積層塗膜、及び当該塗膜により被覆された塗装物品が記載されており、赤外線を吸収しない化合物を含有して、遮熱性機能を有する遮熱性塗料(I)を塗装して加熱硬化又は未硬化の塗膜を形成する工程と、ペリレンブラック顔料、及び/又はアゾメチン系顔料、及び/又はアゾ系染料を含有する黒色ベース塗料(A)を塗装して塗膜を形成する工程と、黒色ベース塗料(A)の加熱硬化又は未硬化の塗膜の上に、黒色の染料を含有するカラークリヤ塗料(B)を塗装して塗膜を形成する工程と、さらにクリヤ塗料(C)を塗装して塗膜を形成する工程と、遮熱性塗料(I)、黒色ベース塗料(A)、カラークリヤ塗料(B)、クリヤ塗料(C)を重ね塗りした積層塗膜を加熱硬化する工程とからなる、遮熱性機能を有する塗膜形成方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、C.I.ピグメントグリーン 62、およびC.I.ピグメントグリーン 63からなる群より選ばれる少なくとも一つと、紫色顔料と、黄色顔料とを含有する黒色顔料組成物であって、膜厚3.0μmの膜を形成した際に、波長700nmに光透過率の最大値が10%以下であり、波長800における光透過率の最小値が70%以上であり、透過率が50%となる波長が730~770nmの範囲にあることを特徴とする黒色顔料組成物により、波長400~700nmの可視光領域の遮光性に優れ、波長800nm以上の近赤外領域に高い透過率を有し、可視光由来のノイズが少なく、近赤外に高い感度を持つ赤外線透過フィルタを得られること、具体的には、酸性基を有するアクリル樹脂及び中性又は酸性の分散剤を樹脂型分散剤として調製した黒色顔料組成物をUV硬化型のアクリル樹脂又は多官能アクリレートに添加して感光性黒色組成物塗膜を作成し、近赤外領域における高い透過率及び可視光の隠蔽性を評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-174469号公報
【特許文献2】特開2019-207303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では黒色顔料として近赤外線を透過するペリレンブラックを用いているところ、ペリレンブラックはカーボンブラックと比較して漆黒度が劣るため、黒色ベース塗料に加えカラークリヤ塗料及びクリヤ塗料を積層することでしか高漆黒を得ることができない。このような技術は樹脂成形体への展開が困難である。
【0007】
特許文献2の技術では赤外線透過フィルムを作成したことの記載しかなく、成形体へ展開したことまでは示されていない。このため、成形体へ展開した場合にも好ましい黒色性を奏するか否かは不明である。
【0008】
本発明は、明度が低く且つ近赤外領域に高い透過性を有する着色成形体を与えることができる着色樹脂組成物及びその製造方法、並びに、明度が低く、且つ、近赤外領域に高い透過性を有する意匠性に優れた着色成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、黒色顔料でない2以上の顔料を暗色となるように組み合わせて配合した着色樹脂組成物中にアミノ基を存在させることで、明度が低く且つ近赤外領域に高い透過性を有する着色成形体が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)熱可塑性樹脂及び(B)有彩色着色顔料を含み、更に(C)分散剤を含んでよい着色樹脂組成物であって、
前記(C)成分を含まない場合、前記(A)成分がアミノ基含有熱可塑性樹脂(A1)を含み、
前記(C)成分を含む場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、前記(C)成分が(C1)塩基性基含有分散剤を含み、
前記(B)成分が、少なくとも、以下の着色顔料を以下の組み合わせ1~3の少なくともいずれかで含む、着色樹脂組成物:
(B1)有彩色着色顔料1:色相値H1を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H1の成す角度θH1が、0°≦θH1<144°を満たす着色顔料
(B2)有彩色着色顔料2:色相値H2を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H2の成す角度θH2が、144°≦θH2<234°を満たす着色顔料
(B3)有彩色着色顔料3:色相値H3を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H3の成す角度θH3が、234°≦θH3<360°を満たす着色顔料
組み合わせ1:前記(B1)成分と前記(B2)成分との組み合わせ(但し、θH1+144°≦θH2
組み合わせ2:前記(B2)成分と前記(B3)成分との組み合わせ(但し、θH2+144°≦θH3
組み合わせ3:前記(B3)成分と前記(B1)成分との組み合わせ。
項2. 前記(B)成分1gに対するアミン価が0.5mgKOH以上である、項1に記載の着色樹脂組成物。
項3. 前記(A1)成分がアミノ基含有(メタ)アクリル樹脂である、項1又は2に記載の着色樹脂組成物。
項4. 前記(A1)成分の重量平均分子量が5,000~50,000である、項1~3のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
項5. 前記(A)成分100質量部に対する前記(A1)成分の含有量が50質量部以下である、項1~4のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
項6. 前記(C1)成分が、非ヒンダードアミンである、項1~5のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
項7. マスターバッチである、項1~6のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
項8. 着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである、項1~6のいずれかに記載の着色樹脂組成物。
項9. 以下の第1工程から第3工程を含む、着色樹脂組成物の製造方法:
(第1工程)
(A)熱可塑性樹脂、(B)有彩色着色顔料、及び分散溶媒を含み、更に(C)分散剤を含んでよい顔料分散液組成物(I)を調製する工程であって、
前記顔料分散液組成物(I)が前記(C)成分を含まない場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、
前記顔料分散液組成物(I)が前記(C)成分を含む場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、前記(C)成分が塩基性基含有分散剤(C1)を含み、
前記(B)成分が、少なくとも、以下の着色顔料を以下の組み合わせ1~3の少なくともいずれかで含む、工程:
(B1)有彩色着色顔料1:色相値H1を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H1の成す角度θH1が、0°≦θH1<144°を満たす着色顔料
(B2)有彩色着色顔料2:色相値H2を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H2の成す角度θH2が、144°≦θH2<234°を満たす着色顔料
(B3)有彩色着色顔料3:色相値H3を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H3の成す角度θH3が、234°≦θH3<360°を満たす着色顔料
組み合わせ1:前記(B1)成分と前記(B2)成分との組み合わせ(但し、θH1+144°≦θH2
組み合わせ2:前記(B2)成分と前記(B3)成分との組み合わせ(但し、θH2+144°≦θH3
組み合わせ3:前記(B3)成分と前記(B1)成分との組み合わせ;
(第2工程)
前記顔料分散液組成物(I)と、追加の(A)熱可塑性樹脂とを混合し、樹脂組成物を調製する工程;及び
(第3工程)
前記樹脂組成物をペレット化、フレーク化、又はチップ化する工程。
項10. (A)熱可塑性樹脂、及び(B)有彩色着色顔料を含み、更に(C)分散剤を含んでよい着色成形体であって、
前記(C)成分を含まない場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、
前記(C)成分を含む場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、前記(C)成分が塩基性基含有分散剤(C1)を含み、
前記(B)成分が、少なくとも、以下の着色顔料を以下の組み合わせ1~3の少なくともいずれかで含む、着色成形体:
(B1)有彩色着色顔料1:色相値H1を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H1の成す角度θH1が、0°≦θH1<144°を満たす着色顔料
(B2)有彩色着色顔料2:色相値H2を有し、相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H2の成す角度θH2が、144°≦θH2<234°を満たす着色顔料
(B3)有彩色着色顔料3:色相値H3を有し、相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H3の成す角度θH3が、234°≦θH3<360°を満たす着色顔料
組み合わせ1:前記(B1)成分と前記(B2)成分との組み合わせ(但し、θH1+144°≦θH2
組み合わせ2:前記(B2)成分と前記(B3)成分との組み合わせ(但し、θH2+144°≦θH3
組み合わせ3:前記(B3)成分と前記(B1)成分との組み合わせ。
項11. 前記着色成形体100g中前記(B)成分を総量で5~500mg含有する、項10に記載の着色成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、明度が低く且つ近赤外領域に高い透過性を有する着色成形体を与えることができる着色樹脂組成物及びその製造方法、並びに、明度が低く、且つ、近赤外領域に高い透過性を有する意匠性に優れた着色成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が基準とする「色相環」を表す。
図2図1の色相環上に、色相値5R、5YR、5Y、5GY、5G、5BG、5B、5PB、5P、5RPの位置を表すとともに、角度θH1~角度θH3と、(B1)成分、(B2)成分及び(B3)成分の色相環上での占める範囲とを表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.着色樹脂組成物
本発明の着色樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂(以下において、「(A)成分」とも記載する。)、及び(B)有彩色着色顔料(以下において、「(B)成分」とも記載する。)を含み、場合により(C)分散剤(以下において、「(C)成分」とも記載する。)を含むとともに;(C)成分を含まない場合には、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂(以下において、「(A1)成分」とも記載する。)を含み;(C)成分を含む場合には、(A)成分が(A1)成分を含み、及び/又は、(C)成分が(C1)塩基性基含有分散剤(以下において、「(C1)成分」とも記載する。)を含み;且つ、前記(B)成分が、少なくとも、特定の着色顔料を特定の組み合わせを含むことを特徴とする。以下、本発明の着色樹脂組成物について詳述する。
【0014】
なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は、その両端の値を含む。例えば、30~200nmとの表記は、30nm以上200nm以下であることを意味する。
【0015】
1-1.(A)熱可塑性樹脂
本発明の着色樹脂組成物は、(A)成分として、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂と、(A2)アミノ基を含有しない熱可塑性樹脂(以下において、「(A2)成分」とも記載する。)とが挙げられる。(A)成分としては、好ましくは透光性、より好ましくは透明性の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0016】
1-1-1.(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂
(A1)成分としては特に限定されず、アミノ基含有モノマーに由来する単位を有するポリマーであればよく、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。成形体での明度低減性及び近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる観点から、アミノ基含有熱可塑性樹脂の好ましい例としては、アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。また、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基含有モノマー(具体的には(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル)に由来する構造単位を含む高分子を意味する。
【0017】
アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマーに由来する構造単位を一部に含んでいてもよい。(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマーとしては、具体的にはエチレン性不飽和モノマーであり、より具体的には、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸モノマー等が挙げられる。但し、明度低減性及び近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる観点から、好ましくは、(A1)成分の全構造単位の50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、一層好ましくは99質量%以上が、(メタ)アクリロイル基含有モノマーに由来する構造単位で占められる。
【0018】
アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂の構成成分となる(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、一般式CH2=CR-COO-R’(Rは水素原子又はメチル基を表し、R'はアミノ基を有してよい一価の有機基又は水素原子を表す)で表される構造のモノマーである。アミノ基含有(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも、上記R'がアミノ基を有する一価の有機基である(a11)アミノ基含有(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下において、「(a11)モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位を含む。また、アミノ基含有(メタ)アクリル系樹脂は、上記の構造単位の他に、上記Rが水素原子又はメチル基でありR'が水素である(a12)(メタ)アクリル酸(以下において、「(a12)モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位、及び/又は、Rが水素原子又はメチル基でありR'が一価の有機基である(a13)(メタ)アクリル酸エステル(以下において、「(a13)モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位をさらに含むことができ、これらの中でも、好ましくは、(a13)モノマーに由来する構造単位をさらに含む。アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(a11)アミノ基含有(メタ)アクリロイル基含有モノマー
(a11)モノマーが有するアミノ基は、(B)成分及び(C)成分と相まって、着色樹脂組成物から得られる成形体の明度の低減に寄与する。
【0020】
アミノ基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしては、(モノ-C1~4アルキル)アミノC2~6アルキル(メタ)アクリレート、及び(ジ-C1~4アルキル)アミノC2~6アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。(モノ-C1~4アルキル)アミノC2~6アルキル(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ブチルアミノエチル、メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(ジ-C1~4アルキル)アミノC2~6アルキル(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、炭素含有基に関し、例えば「C1~4アルキル」との記載は、炭素数1~4のアルキルを表す。
【0021】
(a11)モノマーの市販品としては、共栄社化学株式会社製の、ライトエステルDM(N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ライトエステルDE(N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート)等が挙げられる。
【0022】
(A1)成分の合成において、これらの(a11)モノマーを1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
これらの(a11)モノマーの中でも、成形体での明度低減性をより一層増大させる観点から、好ましくは(ジ-C1~4アルキル)アミノC2~6アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
(A1)成分を構成するモノマー100質量部当たりの(a11)モノマーの使用量としては、例えば、0.05~40質量部、好ましくは0.05~20質量部、より好ましくは0.08~18質量部、さらに好ましくは0.1~16質量部、一層好ましくは0.5~14質量部、より一層好ましくは1~12質量部が挙げられる。
【0025】
(a12)(メタ)アクリル酸
(a12)モノマーである(メタ)アクリル酸は、(A1)成分の合成において、1種単独で用いてもよいし、アクリル酸及びメタクリル酸を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(a13)(メタ)アクリル酸エステル
(a13)モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、式(1)R'(一価の有機基)が、炭素数1~6のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基であるものが挙げられる。
【0027】
上記炭素数1~6のアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びn-ブチル基等の鎖状アルキル基が挙げられ、上記炭素数5~20のシクロアルキル基としては、好ましくは、シクロヘキシル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。上記炭素数6~18のアリール基としては、好ましくはフェニル基等が挙げられる。炭素数7~24のアラルキル基としては、好ましくはフェニルメチル基、フェニルエチル基、炭素数6~14のアリール基が上記の炭素数1~6のアルキル基で置換された基(メチルフェニル基、エチルフェニル基等)等が挙げられる。
【0028】
(A1)成分の合成において、これらの(a13)モノマーを1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
これらの(a13)モノマーの中でも、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、好ましくは、上記式(1)におけるR'が炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは鎖状アルキル基、更に好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基であるものが挙げられる。
【0030】
(A1)成分が(a13)モノマー由来の構造単位を含む場合、(A1)成分を構成するモノマー100質量部に対する(a13)モノマーの使用量としては、成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、例えば80~99.95質量部、好ましくは82~99.92質量部、より好ましくは84~99.9質量部、さらに好ましくは86~99.5質量部、一層好ましくは88~99質量部が挙げられる。
【0031】
(A1)成分の合成
(A1)成分の合成については、上記の(a11)モノマー、及び必要に応じ(a12)モノマー及び/又は(a13)モノマーを用いて公知の重合方法を用いて行うことができる。
【0032】
重合方法としては、通常、ラジカル重合が挙げられる。また、重合方式としては、溶液重合、懸濁重合、及び乳化重合等の公知の重合方式のいずれであってもよい。これらの重合方式の中でも、重合の精密な制御等の観点から、溶液重合を用いることが好ましい。
【0033】
ラジカル重合の重合開始剤としては、公知のものを用いることができる。例えば2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABNE)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクタノエート、ジイソブチルパーオキサイド、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシピバレート、デカノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、およびt-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物系開始剤、過酸化水素と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウム等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
これらの重合開始剤の中でも、好ましくはアゾ系開始剤が挙げられ、より好ましくは2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)が挙げられる。
【0035】
重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、重合するモノマーの総量100質量部当たり、0.01~8質量部、好ましくは0.1~6質量部、より好ましくは1~4質量部、更に好ましくは1.5~2.5質量部が挙げられる。
【0036】
(A1)成分の特性
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)としては特に限定されないが、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、好ましくは5,000~50,000、より好ましくは8,000~45,000、さらに好ましくは10,000~40,000、一層好ましくは12,000~35,000、より一層好ましくは14,000~32,000が挙げられる。
【0037】
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)は、重合反応時間、重合開始剤の使用量等の条件により調節することができる。具体的には、重合反応時間を長くするほど、及び/又は、重合開始剤の使用量を少なくするほど、重量平均分子量(Mw)を大きくすることができる。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算で測定される値である。
【0038】
(A1)成分のガラス転移温度(Tg)としては、例えば30~80℃、好ましくは35~80℃、より好ましくは40~55℃、さらに好ましくは44~50℃が挙げられる。
【0039】
(A1)成分のアミン価としては特に限定されないが、成形体での明度低減性をより一層増大させる観点、又はそれに加えて近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる観点から、好ましくは0.1~120mgKOH/g、より好ましくは0.1~50mgKOH/g、さらに好ましくは0.3~45mgKOH/g、一層好ましくは0.35~40mgKOH/g、2~40mgKOH/g、3~20mgKOH/g、又は3.5~10mgKOH/gが挙げられる。(A1)成分のアミン価は、(A1)成分の合成に用いられるモノマー中のアミノ基を有するモノマーの使用比率により調節することができる。具体的には、(A1)成分の合成に用いられるモノマー中のアミノ基を有するモノマーの使用比率を上げるほど、アミン価を高くすることができる。
【0040】
(A1)成分の含有量
(A)成分100質量部に対する(A1)成分の含有量としては特に限定されない(つまり、0質量部以上100質量部以下である)が、着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、好ましくは50質量部以下(つまり、0質量部以上50質量部以下)、(A)成分が(A1)成分を含む場合にあっては、より好ましくは0質量部超50質量部以下、さらに好ましくは0質量部超40質量部以下、一層好ましくは0質量部超30質量部以下、より一層好ましくは0質量部超20質量部以下、特に好ましくは3~15質量部、最も好ましくは5~12質量部が挙げられる。
【0041】
また、(A)成分が(A1)成分と後述の低分子(A2L)成分とを含む場合、(A1)成分は、成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(A1)成分と低分子(A2L)成分との総量が、好ましくは1~20質量部、より好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは6~20質量部、一層好ましくは8~15質量部、より一層好ましくは9~12質量部となるように配合することができる。この場合、具体的には、(A)成分100質量部に対する(A1)成分の含有量として、同様の観点から、好ましくは0.5~15質量部、好ましくは3~10質量部、より好ましくは5~7質量部が挙げられる。
【0042】
さらに、(A)成分が(A1)成分を含み後述の低分子(A2L)成分を含まない場合、(A)成分100質量部に対する(A1)成分の含有量としては、成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、好ましくは1~20質量部、より好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは6~20質量部、一層好ましくは8~15質量部、より一層好ましくは9~12質量部が挙げられる。
【0043】
1-1-2.(A2)アミノ基を含有しない熱可塑性樹脂
(A2)成分としては特に限定されないが、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂等の水酸基含有樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテンおよびポリ(4-メチル)ペンテン)等のポリオレフィン;6-ナイロン、6,6-ナイロン、非晶性ポリアミド等のポリアミド(PA);アルキド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC);芳香族ポリイミド等のポリイミド;ポリアミドイミド;非晶性ポリアリレート等のポリアリレート;ポリスチレン(PS);ポリ塩化ビニル;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル(PVAC);ポリアクリロニトリル;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS);セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート(CAB)、ニトロセルロース等のセルロース樹脂;ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトン、およびポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂が挙げられる。これらのアミノ基を含有しない熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
水酸基含有樹脂としては特に限定されず、水酸基含有モノマーに由来する単位を有するポリマーであればよく、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、水酸基含有樹脂としては、好ましくは水酸基含有(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0045】
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂が(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマーに由来する構造単位を一部に含んでいてもよい点、及び(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマー及びそれが占める比率については、上記(A1)成分におけるアミノ基含有(メタ)アクリル樹脂と同様である。
【0046】
水酸基含有(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも、上記R'が水酸基を有する一価の有機基である(a14)水酸基含有(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下において、「(a14)モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位を含む。水酸基含有(メタ)アクリル樹脂の構成成分となる(メタ)アクリロイル基含有モノマーについては、(a11)モノマーの代わりに(a14)モノマーが含まれることを除いて、上記(A1)成分におけるアミノ基含有(メタ)アクリル樹脂と同様である。
【0047】
上記の(A2)成分の中でも、成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、好ましくは水酸基含有樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、セルロース樹脂が挙げられ、より好ましくは水酸基含有樹脂、ポリオレフィン、アルキド樹脂、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0048】
(A2)成分の特性
(A2)成分の重量平均分子量(Mw)としては特に限定されず、例えば、10,000~400,000が挙げられ、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、好ましくは20,000~200,000、より好ましくは20,000~100,000が挙げられる。
【0049】
(A2)成分のガラス転移温度(Tg)としては、例えば30~200℃、好ましくは35~150℃、より好ましくは50~120℃が挙げられる。
【0050】
また、(A2)成分は、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて明度低減性をより一層増大させる等の観点から、少なくとも、重量平均分子量(Mw)が例えば10,000~90,000、好ましくは20,000~90,000、より好ましくは20,000~60,000、さらに好ましくは20,000~40,000、一層好ましくは20,000~30,000のアミノ基を含有しない低分子量の熱可塑性樹脂(「低分子(A2L)成分」とも記載する。)を含んでいることが好ましい場合がある。このような場合としては、後述の着色樹脂組成物調製の製造方法での第1工程で(A2)成分を用いる場合が挙げられる。(A2L)成分のガラス転移温度(Tg)としては、例えば30~200℃、好ましくは35~150℃、より好ましくは50~120℃が挙げられる。
【0051】
さらに、(A2)成分は、着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、少なくとも、重量平均分子量(Mw)が例えば90,000超800,000、好ましくは100,000~600,000、より好ましくは150,000~400,000のアミノ基を含有しない高分子量の熱可塑性樹脂(「高分子(A2H)成分」とも記載する。)を含んでいることが好ましい。
【0052】
(A2)成分の含有量
(A)成分100質量部に対する(A2)成分の含有量としては特に限定されない(つまり、0質量部以上100質量部以下である)が、(A)成分が(A2)成分を含む場合にあっては、例えば50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上、一層好ましくは85質量部以上が挙げられる。
【0053】
また、(A)成分が低分子(A2L)成分を含む場合、(A)成分100質量部に対する低分子(A2L)成分の含有量としては、成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、好ましくは1~19質量部、好ましくは3~15質量部、より好ましくは5~12質量部が挙げられる。
【0054】
1-2.(B)着色顔料
本発明の着色樹脂組成物は、(B)成分として、有彩色着色顔料を含む。有彩色着色顔料としては、色相の異なる、以下の(B1)有彩色着色顔料1(以下において「(B1)成分」とも記載する)、(B2)有彩色着色顔料2(以下において「(B2)成分」とも記載する)、及び(B3)有彩色着色顔料3(以下において「(B3)成分」とも記載する)が挙げられる。
【0055】
なお、本発明が基準とする「色相環」とは、色相が連続的に推移する非分割の色相環(図1参照)を指す。この「色相環」は、無段階の色相を含み、その中には、マンセル色相環の基本色相となる、赤(R)、黄赤(YR)、黄(Y)、黄緑(GY)、緑(G)、青緑(BG)、青(B)、青紫(PB)、紫(P)、赤紫(RP)に相当する10色相も含む。また、「色相値」は、上記10の基本色相と、それぞれの基本色相の程度を示す1~10の範囲内の任意の数値とで表される。本発明において、(B1)成分が有する所定の色相値をH1と表し、(B2)成分が有する所定の色相値をH2と表し、(B3)成分が有する所定の色相値をH3と表す。
【0056】
色相値に基づき、(B1)成分、(B2)成分及び(B3)成分は、それぞれ以下のように定義される。
(B1)有彩色着色顔料1:色相値H1を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H1の成す角度θH1が、0°≦θH1<144°を満たす着色顔料
(B2)有彩色着色顔料2:色相値H2を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H2の成す角度θH2が、144°≦θH2<234°を満たす着色顔料
(B3)有彩色着色顔料3:色相値H3を有し、色相環において、色相値10PBの角度を0°とした場合、前記色相値H3の成す角度θH3が、234°≦θH3<360°を満たす着色顔料
【0057】
また、図2に、図1の色相環上に、色相値5R、5YR、5Y、5GY、5G、5BG、5B、5PB、5P、5RPの位置を表すとともに、角度θH1~角度θH3と、(B1)成分、(B2)成分及び(B3)成分の色相環上での占める範囲とを表す。つまり、おおよそ、青色系及び緑色系の顔料が(B1)成分に該当し、黄色系及び橙色系の顔料が(B2)成分に該当し、赤色系及び紫色系の顔料が(B3)成分に該当する。また、特定の色相値と、角度θH1~θH3に基づく色相値とは互いに換算可能である。例えば、色相値2.5PBは、角度θH1が9°である色相値H1と換算されるため、色相値2.5PBの顔料は(B1)成分に該当する。
【0058】
本発明の着色樹脂組成物は、上記の(B1)成分、(B2)成分及び(B3)成分を、以下の組み合わせ1~3の少なくともいずれかの組み合わせで含む。以下の組み合わせを採用することで、黒の顔料を用いることなく、明度の低い色調を得ることができる。
組み合わせ1:前記(B1)成分と前記(B2)成分との組み合わせ(但し、θH1+220°≧θH2、好ましくはθH1+200°≧θH2、より好ましくはθH1+180°≧θH2
組み合わせ2:前記(B2)成分と前記(B3)成分との組み合わせ(但し、θH2+144°≦θH3、好ましくは、θH2+170°≦θH3
組み合わせ3:前記(B3)成分と前記(B1)成分との組み合わせ(θH3の上限としては特に限定されないが、好ましくは、θH1+342°≧θH3、より好ましくはθH1+324°≧θH3、さらに好ましくはθH1+306°≧θH3が挙げられ、θH3の下限としては特に限定されないが、好ましくはθH1+220°≦θH3、より好ましくはθH1+247.5°≦θH3、さらに好ましくはθH1+256.5°≦θH3が挙げられる。)
【0059】
なお、色相値は、次のようにして測定する。ガラス基板の一方面に測定対象となる顔料を用いて作成した膜厚20μmの塗膜を形成し、他方面にJISK5600-4-1に準拠する隠ぺい率測定紙の白部を貼付し、紫外可視分光光度計により380~780nmの領域における拡散反射率測定を行い、UVPC用カラーソフトウェアを用いてJISZ8721に準拠して色相値を求める。
【0060】
上記(B2)成分の彩度C*としては、例えば45以上が挙げられる。明度低減性をより一層増大させる観点から、彩度C*としては、好ましくは50以上、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上、一層好ましくは65以上又は68以上が挙げられる。
【0061】
上記(B3)成分の彩度C*としては、例えば30以上が挙げられる。明度低減性をより一層増大させる観点から、彩度C*としては、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上又は57以上が挙げられる。
【0062】
なお、彩度C*は、次のようにして測定する。ガラス基板の一方面に測定対象となる顔料を用いて作成した膜厚20μmの塗膜を形成し、他方面に白色校正板を密着させるように配置し、分光光度計を使用して、L***表色系(JIS-Z-8729に準拠)における色度a*値b*値を測定し、以下の計算式より彩度C*を算出する。
【0063】
【数1】
【0064】
有彩色着色顔料の具体例としては、有機顔料及び無機顔料が挙げられ、これらのいずれか一方又は両方を組み合わせて用いられる。
【0065】
有機顔料としては特に限定されないが、例えば、アゾ顔料(例えば、モノアゾイエロー、モノアゾレッド、モノアゾバイオレット、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ピラゾロン顔料等)、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、縮合アゾ顔料、キナクリドン顔料(例えば、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等)、ペリレン顔料(例えば、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等)、ペリノン顔料(例えば、ペリノンオレンジ等)、イソインドリノン顔料(例えば、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等)、イソインドリン顔料(例えば、イソインドリンイエロー等)、ジオキサジン顔料(例えば、ジオキサジンバイオレット等)、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料(例えば、キノフタロンイエロー等)、ジケトピロロピロール(DPP)顔料(例えば、ベンズイミダゾロン顔料(例えば、ベンズイミダゾロンオレンジ))、フタロシアニン顔料(例えば、フタロシアニン青、フタロシアニン緑等)が挙げられる。
【0066】
無機顔料としては、チタン、亜鉛、クロム、鉄、コバルト、銅、マンガン、マグネシウム、ビスマス、イットリウム、アルミニウム、バナジウムからなる群より選択される金属の酸化物、水酸化物、硫化物、ケイ酸塩、フェロシアン化塩等の化合物が挙げられる。また、無機顔料は、上記金属の1種を含有する化合物であってもよいし、複数種を含有する複合化合物であってもよい。複合化合物の具体例としては、Fe-Co-Cr系、Cu-Cr系、Fe-Cr系、Fe-Mn系、Cu-Mn系、Cu-Mg系、Cu-Bi系、Mn-Bi系、Y-Mn系、Co-Al系、Fe-Co-Al-Mg系等の塩が挙げられる。
【0067】
(B)成分は、成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、好ましくは少なくとも有機顔料を含み、より好ましくは有機顔料からなる。
【0068】
着色樹脂組成物における(B)成分の含有量としては特に限定されない。(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、着色樹脂組成物がマスターバッチであるか着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップであるかによっても異なりうるが、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量として、例えば0.01~30質量部が挙げられる。
【0069】
例えば、着色樹脂組成物がマスターバッチである場合、成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、好ましくは1~30質量部、より好ましくは2~20質量部、さらに好ましくは2~10質量部、一層に好ましくは3~7質量部、特に好ましくは3.5~5質量部が挙げられる。
【0070】
また、着色樹脂組成物が着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである場合、成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、好ましくは0.01~0.2質量部、より好ましくは0.025~0.14質量部、さらに好ましくは0.04~0.12質量部、一層好ましくは0.06~0.1質量部、より一層好ましくは0.07~0.09質量部が挙げられる。
【0071】
着色樹脂組成物100g中の(B)成分の含有量としても、着色樹脂組成物がマスターバッチであるか着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップであるかによっても異なりうるが、例えば5~30,000mgが挙げられる。
【0072】
例えば、着色樹脂組成物がマスターバッチである場合、マスターバッチ100g中の(B)成分の含有量としては、例えば500~30,000mgが挙げられる。成形体での明度低減性をより一層増大させる観点から、マスターバッチ100g中の(B)成分の含有量としては、好ましくは1,000~30,000mg、より好ましくは2,000~~30,000mg、さらに好ましくは2,500~30,000mg、一層好ましくは3,000~30,000mgが挙げられ、成形体での近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、マスターバッチ100g中の(B)成分の含有量としては、好ましくは500~15,000mg、より好ましくは500~12,000mg、さらに好ましくは500~7,000mg、一層好ましくは500~5,000mgが挙げられる。
【0073】
また、着色樹脂組成物が着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである場合、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップ100g中の(B)成分の含有量としては、例えば5~500mgが挙げられる。成形体での明度低減性より一層増大させる観点から、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップ100g中の(B)成分の含有量としては、好ましくは15~500mg、より好ましくは30~500mg、さらに好ましくは35~500mg、一層好ましくは150~500mg、200~500mg、又は300~500mgが挙げられ、成形体での近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップ100g中の(B)成分の含有量としては、好ましくは5~400mg、より好ましくは5~350mg、さらに好ましくは5~250mg、一層好ましくは5~200mg、より一層好ましくは5~100mg、特に好ましくは5~50mgが挙げられる。
【0074】
1-3.(C)分散剤
本発明の着色樹脂組成物は、(C)成分として、分散剤を含むことができる。
【0075】
分散剤としては特に限定されないが、例えば、(C1)成分である塩基性基含有分散剤及び(C2)塩基性基を含有しない分散剤(以下において、「(C2)成分」とも記載する。)が挙げられる。(C1)成分は、塩基性基以外に酸性基をさらに有していてもよく、酸性基を有していなくてもよい。(C2)成分としては、酸性基を有する分散剤及び塩基性基も酸性基も有しない分散剤が挙げられる。
【0076】
(C1)成分及び(C2)成分において、塩基性基としては、アミノ基、アミド基、ピロリドン基、イミン基、イミノ基、ウレタン基、四級アンモニウム基、アンモニウム基、ピリジノ基、ピリジウム基、イミダゾリノ基、およびイミダゾリウム基等が挙げられ、酸性基としては、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0077】
成形体での明度低減性をより一層増大させる観点から、分散剤としては、好ましくは(C1)成分、具体的には、塩基性基を有し酸性基を有しない分散剤、塩基性基及び酸性基を有する分散剤が挙げられる。
【0078】
(C1)成分としては、アミン価が50mgKOH/g超の分散剤が用いられる。成形体での明度低減性をより一層増大させる等の観点から、(C1)成分としては、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは120mgKOH/g以上のものが挙げられる。(C1)成分のアミン価の上限としては特に限定されないが、例えば1000mgKOH/g以下、900mgKOH/g以下、又は800mgKOH/g以下が挙げられる。
【0079】
(C1)成分の好ましい例としては、塩基性基を有し酸性基を有しない分散剤が挙げられ、具体的には、非ヒンダードアミン(塩基性基を有し酸性基を有しない分散剤であって、ヒンダードアミン以外のもの)及びヒンダードアミンが挙げられる。明度低減性をより一層増大させる観点及び着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点から、好ましくは非ヒンダードアミンが挙げられる。
【0080】
非ヒンダードアミンとは、非立体障害性基に結合したアミノ基を含有する化合物を意味する。非立体障害性基としては、例えば、水素又は脂肪族基が挙げられ、脂肪族基としては、例えば、炭素数1~8(好ましくは1~6、より好ましくは1~4)の直鎖状又は分岐状の炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、好ましくはアルキル基が挙げられる。)等が挙げられる。上記の炭化水素基は、水酸基等で置換されていてもよい。また、非立体障害性基に結合したアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、及び3級アミノ基のいずれであってもよい。非ヒンダードアミンの具体例としては、例えば、トリアルキルアミン(アルキル基は、例えば炭素数1~8、好ましくは1~6、より好ましくは1~4であり、3つのアルキル基は同一又は異なっていてよい;テトラメチルアミン、テトラエチルアミン、テトラブチルアミン等)、アルキロールアミノ基を有する化合物(アルキロールアミノアマイド、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
【0081】
着色樹脂組成物が(C)成分を含有する場合における(C)成分の含有量としては特に限定されないが、(B)成分1質量部に対する(C)成分の含有量として、例えば0.0001質量部以上が挙げられる。着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、及び/又は成形体での明度低減性をより一層増大させる観点から、(B)成分1質量部に対する(C)成分の含有量として、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上0.03質量部以上、又は0.05質量部以上が挙げられる。(B)成分1質量部に対する(C)成分の含有量の上限としては特に限定されないが、着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点から、好ましくは0.7質量部以下、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.07質量部以下が挙げられる。
【0082】
1-5.(B)成分に対するアミン価
本発明の着色樹脂組成物は、(C)成分を含まない場合にあっては(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含むこと、及び(C)成分を含む場合にあっては(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、(C)成分が塩基性基含有分散剤(C1)を含むことによって、成形体での明度を低減する。つまり、着色樹脂組成物中にアミノ基等の塩基性基を存在させることで、成形体での明度を低減する。
【0083】
着色樹脂組成物中に存在するアミノ基等の塩基性基の量としては特に限定されないが、例えば、(B)成分1gに対するアミン価として、0.5mgKOH以上が挙げられる。成形体での明度低減性をより一層増大させる観点、又はそれに加えて着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点から、(B)成分1gに対するアミン価として、好ましくは0.7mgKOH以上、より好ましくは5mgKOH以上、さらに好ましくは8mgKOH以上、10mgKOH以上、20mgKOH以上、30mgKOH以上、40mgKOH以上、50mgKOH以上、60mgKOH以上、又は70mgKOH以上が挙げられる。(B)成分1gに対するアミン価の上限としては特に限定されないが、例えば、300mgKOH以下が挙げられ、成形時の黄変及び/又は成形品の物性低下を抑制する観点等から100mgKOH以下、好ましくは90mgKOH以下が挙げられ、着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点から、より好ましくは70mgKOH以下、さらに好ましくは40mgKOH以下、一層好ましくは20mgKOH以下、より一層好ましくは10mgKOH以下が挙げられる。
【0084】
(B)成分1gに対するアミン価の調節は、(B)成分の含有量、(A1)成分の含有量、(A1)成分自体のアミン価(つまり(A1)成分の合成に用いられるアミノ基含有モノマーの使用量)、(C1)成分の含有量、及び/又は(C1)成分のアミン価を調節することによって行うことができる。
【0085】
1-6.その他の成分
着色樹脂組成物は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、発泡剤、染料、充填剤、金属石鹸、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、脱水剤、艶調整剤等が挙げられる。
【0086】
1-7.用途
着色樹脂組成物は、着色成形体を製造するために用いられ、より具体的には、マスターバッチ、若しくは、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップとして用いることができる。
【0087】
マスターバッチは、(B)成分及び(C)成分が、着色成形体における濃度よりも高い濃度に濃縮された状態で配合されており、着色成形体の製造において、無色の熱可塑性樹脂で希釈して用いる。着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップは、(B)成分及び(C)成分が、着色成形体における濃度と同じ濃度で配合されており、着色成形体の製造において、無色の熱可塑性樹脂で希釈せずに用いる。なお、通常、ペレットとは、3mm以上、好ましくは3~5mm程度の大きさの粒状樹脂であり;フレークとは、薄片状樹脂であり;チップとは、ペレットよりも小さいサイズの粒状樹脂である。
【0088】
2.着色樹脂組成物の製造方法
上記項目1で述べた着色樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)着色顔料、及び場合により配合される(C)分散剤を含む樹脂組成物を調製し、当該樹脂組成物をペレット化、フレーク化、又はチップ化することによって得ることができる。
【0089】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の詳細及びその使用量、他の成分、並びに得られる着色樹脂組成物のアミン価及び用途については、上記項目1で述べた通りである。
【0090】
着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、着色樹脂組成物の製造方法は、以下の第1工程から第3工程を含むことが好ましい。
【0091】
2-1.第1工程
第1工程では、(A)熱可塑性樹脂、(B)有彩色着色顔料、及び分散溶媒を含み、更に(C)分散剤を含んでよい顔料分散液組成物(I)を調製する。つまり、第1工程を行うことで、あらかじめ顔料を分散させる。顔料分散液組成物(I)が(C)成分を含まない場合にあっては、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含む。顔料分散液組成物(I)が前記(C)成分を含む場合にあっては、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、(C)成分が(C1)塩基性基含有分散剤を含む。
【0092】
分散溶媒としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素溶剤;シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族炭化水素溶剤;クロロホルム及びクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤;、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコールなどの第一級アルコール、2-ブタノール等の第二級アルコール、t-ブチルアルコール、等の第三級アルコール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル溶剤等が挙げられる。これらの分散溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
これらの分散溶媒の中でも、好ましくはハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン溶剤及びエステル溶剤が挙げられ、より好ましくはケトン溶剤及びエステル溶剤が挙げられ、より好ましくはエステル溶剤が挙げられ、さらに好ましくは酢酸エチルが挙げられる。
【0094】
第1工程で用いられる(A)成分としては、上記項目1-1で述べた(A)成分のうち、(A1)成分及び/又は(A2)成分を用いることができるが、第1工程での分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での明度低減性をより一層増大させる観点から、低分子量のものであることが好ましく、具体的には、(A1)成分、及び/又は、上記項目1-1-2で述べた低分子(A2L)成分が挙げられる。
【0095】
顔料分散液組成物(I)調製方法としては特に限定されず、(A)成分と場合により配合される(C)成分とを含む分散溶媒中で、(B)成分が分散した状態で調製される方法を任意に選択することができる。
【0096】
(B)成分の分散の方法としては特に限定されないが、例えば、プロペラミキサー、ハイスピードミキサー、ディゾルバー、ホモジナイザー、アルテマイザー、湿式ジェットミル、コロイドミル、マスコロイダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、サンドグラインダー、インラインミル、メディアレス型高速撹拌分散機、超音波分散基等の湿式混合分散機;ニーダー混練、ヘンシル混練、ロール混練、エクストルーダー混練等の混練混合機を用いる方法が挙げられる。
【0097】
第1工程で用いる(A)成分の量は、着色樹脂組成物の調製に用いる(A)成分の一部であり、具体的には、着色樹脂組成物の調製に用いる(A)成分の総量100質量部に対する量として、例えば3~30質量部、好ましくは5~20質量部、より好ましくは7~15質量部、さらに好ましくは9~12質量部が挙げられる。
【0098】
2-2.第2工程
第2工程では、第1工程で調製した顔料分散液組成物(I)と、追加の(A)熱可塑性樹脂とを混合し、樹脂組成物を調製する。
【0099】
第2工程で用いられる追加の(A)成分は、第1工程で用いられる(A)成分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第3工程でのペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での明度低減性及び/又は近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、第2工程で用いられる追加の(A)成分としては、好ましくは高分子(A2H)成分が挙げられる。特に、第1工程で顔料の分散を良好にしておけば、第2工程で用いられる追加の(A)成分としては、近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる観点から、高分子(A2H)成分の中でも、透明性の高い樹脂(具体的には、(メタ)アクリル樹脂(好ましくは(メタ)アクリル酸エステル)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)等)が挙げられる。追加の(A)成分の形態としては特に限定されず、ペレット状、粉末状、冷凍粉砕物状等が挙げられるが、好ましくは冷凍粉砕物の形態が挙げられる。
【0100】
混合方法としては特に制限されず、公知の装置を用いて混合すればよい。例えば、ヘンシェルミキサー等を用いた溶融混錬が挙げられる。なお、第2工程では、樹脂組成物から分散溶媒を除去することができる。
2-3.第3工程
第3工程では、第2工程で調製された樹脂組成物をペレット化、フレーク化、又はチップ化し、着色樹脂組成物を得る。ペレット化、フレーク化、又はチップ化の方法としては、公知の方法を特に制限なく用いることができる。好ましくは、第2工程で調製された樹脂組成物の溶融混錬物を、一軸押出機、二軸押出機等を用いて棒状又は糸状に押し出して切断する方法、シート状に成型して破砕する方法等が挙げられる。
【0101】
3.着色成形体
本発明の着色成形体は、(A)熱可塑性樹脂及び(B)着色顔料子を含み、場合により(C)分散剤を含むとともに;(C)成分を含まない場合、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み;(C)成分を含む場合、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、(C)成分が(C1)塩基性基含有分散剤を含むことを特徴とする。
【0102】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の詳細、並びに他の成分等については、上記項目1で述べた通りである。
【0103】
着色成形体において、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、例えば0.005~0.5質量部が挙げられる。成形体での明度低減性より一層増大させる観点から、(A)成分100質量に対する(B)成分の含有量としては、好ましくは0.015~0.5質量部、より好ましくは0.03~0.5質量部、さらに好ましくは0.035~0.5質量部、一層好ましくは0.15~0.5質量部、0.2~0.5質量部、又は0.3~0.5質量部が挙げられ、成形体での近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、(A)成分100質量に対する(B)成分の含有量としては、好ましくは0.005~0.4質量部、より好ましくは0.005~0.35質量部、さらに好ましくは0.005~0.25質量部、一層好ましくは0.005~0.2質量部、より一層好ましくは0.005~0.1質量部、特に好ましくは0.005~0.05質量部が挙げられる。
【0104】
また、着色成形体100g中の(B)成分の含有量としては、例えば5~500mgが挙げられる。成形体での明度低減性より一層増大させる観点から、着色成形体100g中の(B)成分の含有量としては、好ましくは15~500mg、より好ましくは30~500mg、さらに好ましくは35~500mg、一層好ましくは150~500mg、200~500mg、又は300~500mgが挙げられ、成形体での近赤外領域での透過性向上性をより一層増大させる等の観点から、着色成形体100g中の(B)成分の含有量としては、好ましくは5~400mg、より好ましくは5~350mg、さらに好ましくは5~250mg、一層好ましくは5~200mg、より一層好ましくは5~100mg、特に好ましくは5~50mgが挙げられる。
【0105】
本発明の着色成形体は明度(L*値)が十分に低いため、優れた黒色度を備える。本発明の着色成形体の具体的なL*値としては、例えば35以下、好ましくは30以下、より好ましくは25以下が挙げられる。
【0106】
本発明の着色成形体は、低い明度でありながら近赤外領域に高い透過性を有するため、耐蓄熱性に優れる。本発明の着色成形体の近赤外領域での具体的な透過率としては、850nmの透過率として、例えば40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上が挙げられ;905nmの透過率として、例えば45%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上が挙げられ;1550nmの透過率として、例えば55%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上が挙げられる。
【0107】
着色成形体は、上記項目1で述べた着色樹脂組成物を用いて製造することができる。
【0108】
例えば、着色成形体がマスターバッチである場合、マスターバッチにさらに熱可塑性樹脂を加えて混錬し、所定の形状に成形することで得ることができる。この場合、熱可塑性樹脂としては、上記項目1-1で述べた(A)成分が挙げられ、好ましくは上記項目1-1-2で述べた(A2)成分が挙げられ、さらに好ましくは上記項目1-1-2で述べた高分子(A2H)成分が挙げられる。マスターバッチと混合される熱可塑性樹脂は、マスターバッチに含まれる(A)成分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、マスターバッチと混合される熱可塑性樹脂は、マスターバッチに含まれる(A)成分と同じである。
【0109】
また、着色成形体が着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである場合、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップをそのまま混錬し、所定の形状に成形することで得ることができる。
【0110】
成形法としては特に限定されず、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法等が挙げられる。
【0111】
成形体の用途としては、隠ぺい性と遮熱性とが求められる用途であれば特に限定されず、例えば、家電機器、電子機器、画像表示装置等の筐体、及び自動車内装品等が挙げられる。
【実施例0112】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0113】
[1]材料
以下に示す符号((A),(A1),(A2),(B),(B1),(B2),(B3),(C),(C1),(C2))を付した成分は、上記項目「1.着色樹脂組成物」~「3.着色成形体」で説明した当該符号を付した成分に対応しており、同様に、表3~7に示す符号を付した成分(表中の成分の名称は、適宜省略しているものもある)にも対応している。
【0114】
(A)熱可塑性樹脂
・(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂(アミノ基有)
・・アミノ基含有アクリル樹脂1~5
【表1】
【0115】
・・(a11)ジメチルアミノエチルメタクリレート
ライトエステルDM:共栄社化学株式会社製
・・2,2’ -アゾビス(2-メチルブチロニトリル)
ABN-E:株式会社日本ファインケム製
【0116】
・(A1)アミノ基含有アクリル樹脂1~5の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えたフラスコに酢酸エチルを90質量部仕込み還流温度まで昇温し、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、2,2’-アゾビス(2-メ
チルブチロニトリル)を表1に示す量で含む混合液を2時間かけて滴下し、2時間反応させた。さらに、酢酸ブチルを10質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリ
ル)をさらに0.5質量部滴下し、3時間反応させ、アミノ基含有アクリル樹脂を含む樹脂溶液(固形分50重量%)を得た。
【0117】
・(A2)アミノ基を含有しない熱可塑性樹脂(アミノ基無)
・・(A2L)低分子熱可塑性樹脂
・・・水酸基含有アクリル樹脂(OH含有アクリル樹脂)
ファインディックA-251:DIC株式会社製、MI=8~28g/10min、Tg=56℃、重量平均分子量21,000、常温固体
・・・CAB(セルロースアセテートブチレート)
CAB531-1:イーストマンケミカル社製、Tg=115℃、重量平均分子量85,000、常温固体
・・・アルキド樹脂
アルキディアEZ-3801-60:DIC株式会社製、短油アルキド樹脂、Tg=36℃、重量平均分子量55,000
・・・PC(ポリカーボネート)
ユーピロンH-4000:三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂、Tg=148℃、重量平均分子量33,000
【0118】
・・(A2H)高分子熱可塑性樹脂
・・・PMMA(ポリメチルメタクリレート)
アクリペットVH-001:三菱ケミカル株式会社製、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位95質量%以上含むアクリル樹脂、Tg=90℃、重量平均分子量168,000
・・・PP(ポリプロピレン)
ノバテックMA3:日本ポリプロ株式会社製、アイソタクチックポリプロピレン樹脂、重量平均分子量397,000
・・・ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)
ダイヤラック(R)M U400:テクノUMG株式会社製、透明ABS樹脂、Tg=112℃
【0119】
(B)着色顔料
・有彩色着色顔料
【表2】
【0120】
表2において、θH1,θH2,θH3は、各顔料の図2に示すθH1,θH2,θH3に対応する角度の実際の値である。なお、当該値を範囲で表しているものについては、「9-13.5」と記載している範囲を挙げると、θH1が9以上13.5以下の範囲内であることを意味する。上記角度は、以下の色相値測定方法で測定した色相値から換算した。
【0121】
色相値測定方法
上記で合成した表1の(A1)アミノ基含有アクリル樹脂3を含む樹脂溶液198質量部(固形分99質量部)に、評価対象とすべき有彩色着色顔料を1質量部と酢酸ブチル51質量部とを混合し、縦型ビーズミル(AIMEX製RMB-08、直径2mmのジルコニアビーズを使用)を使用した分散処理に2時間供し、顔料分散液組成物を得た。得られた顔料分散液組成物をガラス基板に6milのドクターブレードで塗装し、80℃に設定された金庫式オーブンで1時間乾燥させ、膜厚20μmの塗膜を調製した。これによって、塗膜付きの評価用ガラス基板を得た。
【0122】
得られた塗膜付きの評価用ガラス基板の、塗膜が設けられていない面に、隠ぺい率測定紙(TP技研株式会社製、JISK5600-4-1に準拠したもの)の白部を貼り付け、光がほぼ透過しない状態で、紫外可視分光光度計(積分球使用、株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700)を用い、380~780nmの領域における拡散反射率測定を行った。UVPC用カラーソフトウェア(株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700対応)を用いて、JIS Z8721に準拠し、マンセルの色相値を求めた。
【0123】
表2において、彩度C*は、以下の測定方法で測定した値である。
彩度測定方法
上記の色相値測定方法で記載した塗膜付きの評価用ガラス基板を用意し、塗膜が設けられていない面に、白色校正板(BCRAタイル)を密着させるように配置し、小型軽量新型分光光度計(サンカラー株式会社製:「Datacolor CHECK3」)を使用して、L***表色系(JIS-Z-8729に準拠)における色度a*値b*値を測定し、以下の計算式より彩度C*を算出した。
【0124】
【数2】
【0125】
・有彩色着色顔料
・・カーボンブラック(Color Black FW200 Beads:オリオンエンジニアドカーボンズ社製、酸化処理カーボンブラック)
【0126】
(C)分散剤
・(C1)塩基性基含有分散剤(アミノ基有)
・・アルキロールアミノアマイド(非ヒンダードアミン)
DISPERBYK-109:ビッグケミー・ジャパン株式会社製、無溶剤型湿潤分散剤(高分子量アルキロールアミノアマイド)、アミン価140mgKOH/g
・・テトラブチルアミン(非ヒンダードアミン)
アミン価768mgKOH/g
・・トリイソパノールアミン(非ヒンダードアミン)
アミン価294gKOH/g
・・ヒンダードアミン
Tinuvin770DF:BASFジャパン株式会社製、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、アミン価233gKOH/g
【0127】
・(C2)塩基性基を含有しない分散剤
・・酸性基含有コポリマー
DISPERBYK-102:ビッグケミー・ジャパン株式会社製、無溶剤型湿潤分散剤、酸価101mgKOH/g(アミン価0mgKOH/g)
【0128】
[2]測定
[2-1]アミン価の測定方法
アミン価を測定すべき試料を固形分換算で約3g採取し、正確に秤量する。その後、テトラヒドロフランを加えて溶解する。次いで、ブロムクレゾールグリーン指示薬を数滴加え、電位差滴定装置(商品名:GT-06、三菱化学社製)を用い、0.1mol/L塩酸滴定溶液で中和滴定を行い、青色から黄色に変わった点を終点として滴定液の量を読み取る。次式によりアミン価Bを算出する。なお、下記式において、空試験とは、アミン価を測定すべき試料ではなく、脱イオン水を用いて測定する試験を意味する。また、実施例9、10における(A)成分のアミン価は、アミン価を測定すべき試料として、熱可塑性樹脂を表記載の比率で混合した混合物を用いた。
【0129】
【数3】
【0130】
[2-2]重量平均分子量の測定方法
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、算出した。用いた装置、条件等は以下の通りである。
・使用機器:HLC8220GPC(株式会社東ソー製)
・使用カラム:TSKgel SuperHZM-M、TSKgel GMHXL-H、TSKgel G2500HXL、TSKgel G5000HXL(株式会社東ソー製)
・カラム温度:40℃
・標準物質:TSKgel 標準ポリスチレンA1000、A2500、A5000、F1、F2、F4、F10(株式会社東ソー製)
・検出器:RI(示差屈折)検出器
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:1ml/min
【0131】
[2-3]ガラス転移温度(Tg)の測定方法
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121-1987にしたがって、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製「EXSTAR6000」)で測定した。具体的には、測定対象となる試料(樹脂溶液等の溶剤を含むものについては、溶剤を揮発させたもの)10mgを、窒素気流下で、-40℃から200℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、DSC曲線を得た。低温側のベースラインの延長線と、遷移部(すなわち曲線部)における最大傾斜を示す接線との交点の温度(いわゆる補外ガラス転移開始温度)を、ガラス転移温度Tgとして読み取った。なお、空の容器を、基準物質として使用した。また、また、実施例23における(A)成分のTgは、Tgを測定すべき試料として、熱可塑性樹脂を表記載の比率で混合した混合物を用いた。結果、実施例23の(A)成分のTgは52であった。
【0132】
[3]マスターバッチの製造
[3-1]実施例1~33、比較例1、2、4
(第1工程)
(A)成分及び分散溶媒の混合液に、(B)成分及び場合により(C)成分を混合し、これを縦型ビーズミル(AIMEX製RMB-08、直径2mmのジルコニアビーズを使用)を使用して2時間分散処理を行い、顔料分散液組成物(I)を得た。それぞれの材料は、表に示す量(質量部)で用いた。
【0133】
(第2工程)
得られた顔料分散液組成物(I)に、冷凍粉砕した追加の(A)成分を表に示す量(質量部)で混合し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製、FM10C)で2時間攪拌混合させて混合物を得た後、振動乾燥機(中央化工機株式会社製、VU-35)を用いて60℃・50Torrの乾燥条件にて溶媒を留去させ、樹脂組成物(23℃で固体)を得た。
【0134】
(第3工程)
得られた樹脂組成物を、直径2mmのストランドダイを備えた二軸押出機(東洋精機社製ラボプラストミル、型式:4C-150)に投入し、シリンダ温度180℃、スクリュー回転数60rpmの条件で溶融混練し、押し出してストランド状とし、水冷した。水冷後の組成物をペレタイザーでカットし、除湿型乾燥機を用いて100℃で3時間乾燥処理を行った。これによって、直径約5mm程度の、ペレット状のマスターバッチ(着色樹脂組成物)を得た。
【0135】
[3-2]実施例38、比較例3
上記[3-1]の第1工程を行わず、全ての材料をヘンシェルミキサ-(三井鉱山株式会社製、FM10C)で2時間攪拌混合させて混合物を得た後、上記[3-1]の第2工程及び第3工程と同様の操作を行い、ペレット状のマスターバッチ(着色樹脂組成物)を得た。
【0136】
[4]着色成形体の製造
マスターバッチ(着色樹脂組成物)と、(A)成分とを表記載の量(質量部)でドライブレンドし、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE18S)に投入し、シリンダ温度200℃、金型温度30℃、冷却時間15秒の条件で射出成形を行って、1.5mm×50mm×50mmの平板状の着色成形体を得た。着色成形体は、後述の[5-3]及び[5-4]の評価に用いた。
【0137】
[5]評価
[5-1]作業性:顔料分散の容易性
実施例1~33、比較例1、2、4について、顔料分散液組成物(I)を調製する(分散処理する)際の分散状態を観察し、以下の基準で評価を行った。結果を表3~7に示す。
◎:問題無く分散処理を行うことができる
〇:粘度がやや高いものの、分散処理は問題無く行うことができる
△:粘度が高いものの、分散処理を行うことは可能
×:粘度が高く、顔料が凝集してしまって分散ができない
【0138】
[5-2]作業性:ペレット化の容易性
マスターバッチへのペレット化(二軸押出機による溶融混練)の際、ダイスからのストランドの吐出状態を観察し、以下の基準で評価を行った。結果を表3~7に示す。
◎:ストランドは安定しており、問題無くペレット化が可能
〇:ダイスからの吐出にやや不安があるものの、問題無くペレット化が可能
△:ダイスからの吐出安定性に欠けるものの、なんとかペレット化は可能
×:吐出が全く安定せず、ペレットにすることができない
【0139】
[5-3]L * 値及び黒色度評価
各実施例及び比較例で得られた平板状の着色成形体の黒色度の程度を評価するため、当該着色成形体に対し、測定する面と反対側の面に白色校正板(BCRAタイル)を密着させるように配置し、小型軽量新型分光光度計(サンカラー株式会社製:「Datacolor CHECK3」)を使用して、L***表色系(JIS-Z-8729に準拠)における(L*値)の測定を行った。なお、使用した白色校正板は使用した分光光度計に付属しているものである。また、測定は正反射処理(SEC方式:正反射光を除去)とした。得られたL*値より、以下の基準で黒色度の評価を行った。評点で3~5である場合に、所望の黒色度が得られたと評価した。結果を表3~7に示す。
5:L*値が0以上25以下
4:L*値が25超30以下
3:L*値が30超35以下
2:L*値が35超40以下
1:L*値が40超
【0140】
[5-4]近赤外線透過率
各実施例及び比較例で得られた成形体について、紫外可視分光光度計(積分球使用、株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700)を用いて300~2000nmの領域における透過率を測定した。より具体的には、前述の領域における850nm、905nm、1550nmでの透過率の値をそれぞれ測定した。結果を表3~7に示す。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
【表7】
【0146】
比較例4に示すように、着色顔料としてカーボンブラックを含む着色樹脂組成物では、所望の低い明度を得ることができたものの、近赤外線の透過率が極めて低く、耐蓄熱性を持たない成形体しか得ることができなかった。また、比較例2に示すように、(B)成分として1色しか含まない着色樹脂組成物では、近赤外線の透過率が高い成形体を得ることができたが、明度が高く(黒色度が低く)意匠性の乏しい成形体しか得ることができなかった。また、比較例1に示すように、(B)成分として所定の組み合わせを含むがアミノ基が存在しない着色樹脂組成物において、低分子(A2L)成分中で分散剤(アミノ基を有さないもの)を用いて分散した場合も、明度が高く(黒色度が低く)意匠性の乏しい成形体しか得ることができなかった。一方で、実施例1~37に示すように、(B)成分として所定の組み合わせを含み、アミノ基を存在させた着色樹脂組成物では、明度が低く且つ近赤外領域に高い透過性を有する着色成形体が得られた。
【0147】
また、比較例3に示すように、(B)成分として所定の組み合わせを含むがアミノ基が存在しない着色樹脂組成物で分散工程を行わない場合、ペレット化自体ができなかったが、実施例38に示すように、(B)成分として所定の組み合わせを含み、アミノ基を存在させた着色樹脂組成物では、分散工程を行わない場合であっても、ペレット化が可能であっただけでなく、明度が低く且つ近赤外領域に高い透過性を有する着色成形体まで得ることができた。
図1
図2