(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174670
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】信号受信方法と信号受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20221116BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
H04B7/08 710
H04B7/08 052A
H04B7/08 372A
H04B7/08 480
H04B1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080629
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000114226
【氏名又は名称】ミハル通信株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】山野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三輪 昌寛
(72)【発明者】
【氏名】田原 雅史
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061CC05
(57)【要約】
【課題】複数の信号を受信するダイバーシティ受信において、信号特有の特性によらず、簡易な構成で遅延を合わせて信号の連続性を維持可能とする。
【解決手段】ダイバーシティ受信した二以上の受信信号の夫々を別々の伝送系統で伝送し、夫々の伝送系統で伝送される受信信号の周波数を中間周波数に変換し、周波数変換後の夫々の信号の振幅を所定振幅に制御し、夫々の信号をデジタル信号に変換し、夫々のデジタル信号をベースバンド信号に変換し、一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号のいずれかを選択して遅延させ、遅延されたベースバンド信号と遅延されないベースバンド信号の位相を参照信号(基準信号)に合わせて位相調整し、位相調整された一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の振幅を合わせ、振幅を合わせたベースバンド信号の位相差を検出し、検出された位相差を元に位相調整し、振幅及び位相を合わせた二以上のベースバンド信号のうち、いずれかの伝送系統で伝送されてくるベースバンド信号を選択して出力するようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる系統を経て到来するに以上の電波又は信号を二以上の受信装置でダイバーシティ受信する信号受信方法において、
ダイバーシティ受信した二以上の受信信号の夫々を別々の伝送系統で伝送し、
夫々の伝送系統で伝送される受信信号の周波数を中間周波数に変換し、
周波数変換後の夫々の信号のレベルを所定のレベルに制御し、
夫々の信号をデジタル信号に変換し、
夫々のデジタル信号をベースバンド信号に変換し、
一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号のいずれかを選択して遅延させ、遅延されたベースバンド信号と遅延されないベースバンド信号の位相を参照信号(基準信号)に合わせて位相調整し、
位相調整された一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の振幅を合わせ、
振幅を合わせたベースバンド信号の位相差を検出し、検出した位相差をもとに位相を合わせ、振幅及び位相を合わせた二以上のベースバンド信号のうち、いずれかの伝送系統で伝送されてくるベースバンド信号を選択して出力する、
ことを特徴とする信号受信方法。
【請求項2】
異なる系統を経て到来する二以上の電波又は信号を二以上の受信装置でダイバーシティ受信する信号受信方法において、
ダイバーシティ受信した二以上の受信信号の夫々を別々の伝送系統で伝送し、
夫々の伝送系統で伝送される受信信号の周波数を中間周波数に変換し、
周波数変換後の夫々の信号のレベルを所定のレベルに制御し、
夫々の信号をデジタル信号に変換し、
夫々のデジタル信号をベースバンド信号に変換し、
一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号のいずれかを選択して遅延させ、遅延されたベースバンド信号と遅延されないベースバンド信号の位相を参照信号(基準信号)に合わせて位相調整し、
位相調整された一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の振幅を合わせ、
振幅を合わせたベースバンド信号の位相差を検出し、検出した位相差をもとに位相を合わせる位相調整装置と、振幅及び位相を合わせた二以上のベースバンド信号の品質を計測し、その計測結果を元に信号品質が最良となるように前記ベースバンド信号を合成して出力する、
ことを特徴とする信号受信方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の信号受信方法において、
信号を遅延させる時間(遅延時間)を可変とし、可変して設定された遅延時間に合わせて信号を遅延させる、
ことを特徴とする信号受信方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の信号受信方法において、
二以上の伝送系統を伝送される信号の一方を遅延させるか、両伝送系統の信号を遅延させて複数の入力信号の遅延を調整する、
ことを特徴とする信号受信方法。
【請求項5】
異なる系統を経て到来するに以上の電波又は信号を二以上の受信装置でダイバーシティ受信する信号受信装置において、
ダイバーシティ受信した二以上の受信信号の夫々を別々に伝送する二以上の伝送系統と、
夫々の伝送系統を伝送される夫々の受信信号の周波数を中間周波数に変換する周波数変換装置と、
周波数変換された夫々の受信信号を所定のレベルに制御する第一の自動利得制御装置と、所定レベルに制御した夫々の受信信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換装置と、
前記デジタル信号をベースバンド信号に変換する直交復調装置と、
直交復調後のベースバンド信号を遅延させて二以上の伝送系統の信号の遅延差を小さくする遅延装置と、
当該遅延装置に入力させる信号と入力させない信号を切り替え選択する切替装置と、
位相調整用の参照信号を発生する参照信号発生装置と、
二以上の伝送系統で伝送されるベースバンド信号の位相を参照信号に合わせる位相調整装置と、
位相調整装置で位相調整された一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の振幅を合わせる第二の自動利得制御装置と、
第二の自動利得制御装置で振幅を合わせた一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の位相差を検出する位相検出装置と、
前記第二の自動利得制御装置で制御された夫々のベースバンド信号のうち、いずれかの伝送系統を伝送されるベースバンド信号を選択して出力する合成/選択装置を備えた、
ことを特徴とする信号受信装置。
【請求項6】
異なる系統を経て到来する二以上の電波又は信号を二以上の受信装置でダイバーシティ受信する信号受信装置において、
ダイバーシティ受信した二以上の受信信号の夫々を別々に伝送する二以上の伝送系統と、
夫々の伝送系統を伝送される夫々の受信信号の周波数を中間周波数に変換する周波数変換装置と、
周波数変換された夫々の受信信号を所定のレベルに制御する第一の自動利得制御装置と、所定レベルに制御した夫々の受信信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換装置と、
前記デジタル信号をベースバンド信号に変換する直交復調装置と、
直交復調後のベースバンド信号を遅延させて二以上の伝送系統の信号の遅延差を小さくする遅延装置と、
当該遅延装置に入力させる信号と入力させない信号を切り替え選択する切替装置と、
位相調整用の参照信号を発生する参照信号発生装置と、
二以上の伝送系統で伝送されるベースバンド信号の位相を参照信号に合わせる位相調整装置と、
位相調整装置で位相調整された一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の振幅を合わせる第二の自動利得制御装置と、
第二の自動利得制御装置で振幅を合わせた一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の位相差を検出する位相検出装置と、
直交復調装置で直交復調されたデジタル信号を復調する復調装置と、
復調装置で復調した信号又は復調途中の信号の品質を計測できる信号品質計測装置と、
前記直交復調装置の後に設けた復調装置と信号品質計測装置を備え、
信号品質計測装置による計測結果を元に、信号品質が最良となるように二以上の信号を合成して出力する合成/選択装置を備えた、
ことを特徴とする信号受信装置。
【請求項7】
請求項6記載の信号受信装置において、
遅延装置が二以上の伝送系統の双方又はいずれか一方に設けられた、
ことを特徴とする信号受信装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の信号受信装置において、
第二の自動利得制御装置と記憶装置の間に、
二以上の伝送系統の信号の差分を検出する差分検出装置と、
差分値検出後のベースバンド信号を平均化する平均化装置と、
平均化装置の値が一定となるまでの時間を待機しながら、遅延装置の記憶値を制御することができ、平均化装置の出力を記憶し、その記憶値を出力する遅延装置制御装置と、
平均化装置で平均化して最小となったときの出力値を記憶値(遅延量)として記憶し、記憶装置に入力されている伝送系統を記憶して保存することができ、保存した記憶値(遅延量)を遅延装置に入力することにより、二以上の信号の遅延差を合わせることができる差分最小記憶値記憶装置と、
記憶装置に入力する記憶値(遅延量)を、差分最小遅延値記憶装置に記憶された遅延値を記憶装置に切替え入力する遅延装置遅延値切替装置とを備えた、
ことを特徴とする信号受信装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の信号受信装置において、
遅延装置を、二以上の伝送系統に共用にした、
ことを特徴とする信号受信装置。
【請求項10】
請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の信号受信装置において、
遅延装置を、いずれか一つの伝送系統又は全ての伝送系統に備えた、
ことを特徴とする信号受信装置。
【請求項11】
請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の信号受信装置において、
合成/選択装置から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換装置と、
デジタルアナログ変換された信号を所望の信号レベルに調整する第三の自動利得制御装置とを備えた、
ことを特徴とする信号受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信局、放送局または人工衛星などから送られてくる複数の無線信号または有線信号を受信するダイバーシティ受信方式の信号受信方法と信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電波は障害物などの反射により、或いは、様々な経路を通ることにより、複数の電波が干渉して電波の強さ等の状態が変化するフェージングという現象が発生する。受信局では、フェージングによって、安定した受信状態が確保されず、映像音声の視聴が困難となる。そのため、例えば、無線放送通信システムやケーブルテレビシステム(CATVシステム)の受信局などにおいては、フェージングによる電波状態を改善するため、二以上の複数アンテナで信号を受信し、それら信号を合成または、一方の信号を選択することで安定した信号を維持するダイバーシティ受信方式を用いている。ダイバーシティ受信方式を行うようにした場合において、複数のアンテナは、距離を離したり、高さや向き(受信方向)を変えたり、偏波を変えたりして、二以上の電波を異なる状態で受信することで、より高い安定性が得られるようになる。
【0003】
CATVシステムにおいては、自局のアンテナで受信した信号と他局から送信された信号をダイバーシティ受信するシステムを構築している。自局と他局の間は、電気信号を光信号に変換して光ファイバーで伝送することが一般的であるが、近年では信号をIP(Internet Protocol)通信で伝送する方法も採用されている。
【0004】
複数の信号を受信するダイバーシティ受信方式では、受信した複数の信号は異なる経路を通過しているため、遅延、位相、振幅等に差が生じている。差が生じた状態でダイバーシティを行うと信号の連続性が損なわれて受像機での画像再生が一時的に中断することがある。連続性を担保するためには複数の信号の遅延、位相、振幅を合わせる必要がある。一方の受信点に対して他方の受信点の距離が遠いようなシステムでは遅延差が大きくなるため、遅延を合わせることは特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-199683号公報
【特許文献2】特開平9-284188号公報
【特許文献3】特開2008-109492号公報
【0006】
図6は従来のダイバーシティ受信方式の構成を示したブロック図である。
図6は複数のアンテナ1000でダイバーシティ受信したOFDM信号の位相を調整し、合成/選択装置1030で合成又は選択を行うようにした受信装置である。このような受信装置として特許文献1~3がある。
【0007】
図6の受信装置で合成する方式(合成方式)場合は、複数のアンテナ1000で受信した複数の信号を受信部1010でアナログ/デジタル変換器に対応した中間周波数に変換し、更にアナログ/デジタル変換器1020でデジタルIF信号に変換する。そして、合成/選択装置1030において信号の位相を揃えてから受信信号のレベルに応じて合成して受信信号の品質を向上させて出力(使用)する方式である。
【0008】
図6の受信装置で選択する方式(選択方式)場合は、合成方式の場合と同様に、複数のアンテナ1000で受信した複数の信号を受信部1010で中間周波数に変換し、更にアナログ/デジタル変換器1020でデジタルIF信号に変換する。その後に、合成/選択装置1030において信号の位相を揃えた後、受信レベルの高い信号を選択し、選択された信号を出力(使用)する方式である。
【0009】
特許文献1~3の受信装置では、受信した複数の信号の遅延を合わせるのにOFDM信号特有のガードインターバル(GI)を利用しているため、GI等の信号に特徴がない異なる変調方式の信号では適用できないという問題がある。さらに、変調方式特有の遅延調整可能範囲を超える遅延量について、信号を最終段階まで復調し、元のデータ内に含まれる同期パターン等を利用する方法や、FFTを利用した方法もあるが、これら方法では受信装置の構成が複雑となり、受信装置の製造コストが増大するという問題がある。
【0010】
また、復調された元のデータ内に含まれる同期パターン等を利用して複数の信号を同期させる方式は、複数の信号のうち一方の信号の同期外れが発生した場合、全ての信号が同時に劣化する問題がある。そのため、ブロックノイズやブラックアウトなどの受像機にショックが出る問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の解決課題は、前記問題点を解消し、ダイバーシティ受信した複数の信号の変調方式や伝送方式に拘わらず、低コストで実現できる構成で、遅延を合わせて、信号の連続性と品質を維持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(信号受信方法)
本発明の信号受信方法は、ダイバーシティ受信方式で受信した二以上の信号の遅延を合わせることができる信号受信方法であり、選択方式の信号受信方法と合成方式の信号受信方法である。
【0013】
(信号受信方法:選択方式)
本発明の信号受信方法のうち、選択方式の信号受信方法は、ダイバーシティ方式で受信した二以上の受信信号の夫々を別々の伝送系統で伝送し、夫々の伝送系統で伝送される受信信号の周波数を中間周波数に変換する。周波数変換後の夫々の受信信号の振幅(レベル)を所定のレベルに制御し、夫々の受信信号をデジタル信号に変換し、夫々のデジタル信号をベースバンド信号に変換する。一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号のいずれかを選択して遅延させ、遅延させたベースバンド信号と遅延させないベースバンド信号の位相を参照信号(基準信号)に合わせて位相調整する。位相調整された一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の振幅(振幅量)を合わせ、振幅を合わせたベースバンド信号の位相差を検出し、検出した位相差をもとにベースバンド信号の位相を合わせ、振幅及び位相を合わせた二以上のベースバンド信号のうち、いずれかの伝送系統を選択して、選択した伝送系統のベースバンド信号を出力する信号受信方法である。
【0014】
(信号受信方法:合成方式)
本発明の信号受信方法のうち、合成方式の信号受信方法は、前記位相差検出までは、選択方式の場合と同様である。異なるのは、位相差検出後に、二以上の伝送系統の夫々で伝送されてくるベースバンド信号の品質を計測し、その計測結果を元に信号品質が最良となるように前記ベースバンド信号を合成して出力することである。
【0015】
本発明の信号受信方法では、前記いずれの信号受信方法であっても、ベースバンド信号を遅延させる時間(遅延値)を切り替え変更可能とし、前記差分値検出後のベースバンド信号を平均化し、平均値が一定となるまでの時間待機しながら前記遅延値を制御し、前記遅延値を平均化後の値が最小となったときの遅延値に切替え変更し、切替え変更後の遅延値分だけ遅延させることもできる。
【0016】
(信号受信装置)
本発明の信号受信装置は、ダイバーシティ方式で受信した二以上の信号の遅延を合わせることができる信号受信装置であり、選択方式の信号受信装置と合成方式の信号受信装置である。
【0017】
(信号受信装置:選択方式)
本発明のうち、選択方式の信号受信装置は、二以上の受信信号の夫々を別々に伝送する二以上の伝送系統を備える。夫々の伝送系統を伝送される受信信号の周波数を中間周波数に変換する周波数変換装置と、周波数変換された夫々の受信信号を所定レベルに制御する第一の自動利得制御装置と、レベル制御した夫々の受信信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換装置と、デジタル信号をベースバンド信号に変換する直交復調装置を備える。更に、直交復調後のベースバンド信号を遅延させて二以上の伝送系統の信号の遅延差を小さくする遅延装置と、当該遅延装置に入力させる信号と入力させない信号を切り替え選択する切替装置と、位相調整用の参照信号を発生する参照信号発生装置と、二以上の伝送系統のベースバンド信号の位相を前記参照信号に合わせる位相調整装置を備える。更に、位相調整装置で位相調整された一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の振幅を合わせる第二の自動利得制御装置と、第二の自動利得制御装置で振幅を合わせた一方のベースバンド信号と他方のベースバンド信号の位相差を検出する位相検出装置と検出した位相差をもとにベースバンド信号の位相を合わせる位相調整装置と、前記第二の自動利得制御装置で振幅を合わせた夫々のベースバンド信号のうち、いずれかの伝送系統を選択して、選択された伝送系統のベースバンド信号を出力する合成/選択装置を備えたものである。
【0018】
(信号受信装置:合成方式)
本発明のうち、合成方式の信号受信装置は、前記位相差検出装置までは選択方式の場合と同様である。異なるのは、二以上の伝送系統の夫々にベースバンド信号の品質を計測する信号品質計測装置を設け、信号品質計測装置からの出力を合成/選択装置に入力させ、信号品質計測装置による計測結果を元に信号品質が最良となるように二以上の信号を合成/選択装置で合成できるようにしたことである。
【0019】
本発明の信号受信装置は、前記差分検出装置の出力側に、差分値検出後のベースバンド信号を平均化する平均化装置と、平均化装置の値が一定となるまで時間待機しながら前記遅延装置の遅延値を制御する遅延装置制御装置と、前記平均化装置で平均化した後の値が最小となったときの前記遅延装置の記憶値とそのときの伝送系統を記憶する差分最小記憶値記憶装置と、前記遅延装置制御装置と差分最小遅延値記憶装置の遅延値を切り替える遅延装置遅延値切替え装置を備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の信号受信方法及び信号受信装置は次のような効果がある。
(1)GI期間のみのような決まった範囲でしか合わせられなかった複数の伝送系統の信号間の遅延を、OFDM復調回路等の複雑な回路を使用せずに調整することができる。
(2)信号変調方式を利用していないため、変調方式によらずに遅延、位相を調整することができ、どのような信号をダイバーシティ受信する場合でも利用できる。
(3)二以上の伝送系統を伝送される信号の遅延量を振幅量の差へ変換して遅延調整装置を調整できるようにしたので遅延調整を低コストかつ短時間で行うことができる。
(4)信号品質を信号受信装置の内部で計測できるようにしたので、信号が劣化して受信画像に影響が出る前に、信号の劣化傾向を勘案して信号処理し、信号の連続性を維持することができ、映像が見えなくなる事故を防ぐことができる。
(5)信号の位相を参照信号に合わせるようにしたので、二以上の伝送系統を伝送される信号が影響し合うことがなく、信号の連続性を維持して、映像が見えなくなる事故を防ぐことができる。
(6)伝送系統を、縦続接続または並列接続することで、三以上の伝送系統にも対応可能であるため、複数の信号をダイバーシティ受信することができる。
(7)遅延値を切り替え変更可能としたので、遅延合わせの精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態1の構成を示したブロック図。
【
図2】本発明の実施形態2の構成を示したブロック図。
【
図3】本発明の実施形態3の構成を示したブロック図。
【
図4】本発明の実施形態4の構成を示したブロック図。
【
図5】
図3の
図1に対する変更点の動作を示すフローチャート。
【
図6】従来のダイバーシティ受信方式の構成を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の信号受信方法と信号受信装置の実施形態を以下に説明する。以下の実施形態はあくまでも本発明の一例である。本発明はこれら実施形態に限られるものではなく、発明の課題を解決できれば他の構成、作用であってもよい。
【0023】
(信号受信方法の実施形態1:
図1の信号受信装置を利用する場合)
本発明の信号受信方法を、
図1の信号受信装置を使用してダイバーシティ受信する場合を一例として以下に説明する。以下の説明は入力端が二つの場合であるが、本発明では、入力端は二以上のいくつであってもよい。
【0024】
図示しないアンテナ又は中継機から、
図1の入力1に信号S1が入力され、入力2に信号S2が入力される。入力信号S1と入力信号S2は同一信号であるが、夫々の入力端に到達するルート(電波の場合は伝搬条件、中継信号の場合は伝送路長の差(ルート差)、比誘電率等の条件)が異なるため遅延、位相、振幅、信号品質などの信号状態に差がある。
【0025】
受信された入力信号S1、S2は、別々の伝送系統L1、L2を伝送され、夫々の伝送系統L1、L2の周波数変換装置11により、アナログデジタル変換装置14のナイキスト・ゾーンに適合した中間周波数に変換される。
【0026】
周波数変換された信号は、アナログデジタル変換装置(ADC)14のダイナミックレンジに適合した信号レベルをリファレンスとして内蔵する第一の自動利得制御装置12によりレベルが自動的に制御されて、リファレンスと同じ信号レベルとなる。このリファレンスはユーザーが設定するものであり、ユーザーは、例えば、アナログデジタル変換装置14のダイナミックレンジより低く、可能な限り雑音の影響を受けないレベルを選択して決定することができる。ここでレベル調整する目的は、アナログデジタル変換装置14のダイナミックレンジに限界があるため、過大、過小入力によるSNの劣化を防ぐためである。したがって、このレベル調整は入力レベルをアナログデジタル変換装置14のダイナミックレンジに収まるようにする調整である。
【0027】
前記のようにレベル制御された信号は、帯域除去濾過装置(例えば、SAWフィルター)13によりナイキスト・ゾーン外の不要な信号が除去されて所望周波数の信号が取り出され、アナログデジタル変換装置14によりデジタル信号に変換される。
【0028】
前記デジタル信号は、直交復調装置15にてIn-Phase信号(I信号)とQuadrature-Phase信号(Q信号:まとめて「IQ信号」と称する。)に分離(復調)され、信号の振幅と位相の情報を得ることができる。
【0029】
入力信号S1と入力信号S2は伝送ルートの違いに基づく遅延差がある。この遅延差をなくすか又は少なくするために、早く到来しているデジタル信号は遅延調整装置(遅延装置)17に入力し、遅延差の時間分だけ遅延した後に出力され、遅く到来しているデジタル信号はそのまま出力されるようにする。当該遅延調整装置(遅延装置)17に入力させる信号と入力させない信号の選択は当該遅延調整装置17で行うことができる。
【0030】
遅延調整装置17は遅延させる時間(以下「遅延値」という。)をサンプリング時間の間隔で記憶することが可能である。例えば10MHzのサンプリング周波数でデジタル信号に変換した場合、サンプリング時間はサンプリング周波数の逆数となるため、100ナノ秒となる。このとき、遅延調整装置17の遅延値を1に設定して記憶させると、100ナノ秒時間が遅れることになる。任意の遅延値を記憶することにより、サンプリング時間と記憶された遅延値の乗算分の時間だけ信号を遅らせることができる。遅延値は、例えば、入力信号S1と入力信号S2のルート差、比誘電率、伝送路の電気長等から算出される遅延時間を設定することができる。
【0031】
直交復調装置15で直交復調された信号のうち、遅延している伝送系統の信号を遅延調整装置17に入力し、遅延していない系統の信号は遅延調整装置17に入力させないことで、両伝送系統の遅延量をサンプリング間隔で同じにすることができる。遅延調整装置17の動作を説明する。遅延調整装置17は、例えば、1000番のアドレスを備え、1つのアドレス当たりのビット保持量を32ビットとすると、例えばアナログデジタル変換装置14において、10MHzでサンプリングされた1つのデジタル信号を直交復調装置15で直交復調されたIQ信号それぞれ16ビットとすると、1つのアドレスの最上位から16ビットをI信号、最下位から16ビットをQ信号とすることで、IQ信号を各アドレスに保持することができる。遅延している伝送系統の信号は、遅延調整装置17に入力されないので、相対的にアドレス0で出力することとなる。遅延していない伝送系統の信号が先に遅延調整装置17に到来したとき、遅延していない系統の信号を遅延調整装置17のアドレス1000をカウントするまで保持し出力しないようにすると、遅延している伝送系統の信号の相対アドレス0と同時に出力されることになる。遅延していない伝送系統の信号は1000サンプル分遅れて出力されるため、100usec時間的に遅れて出力することが可能となる。出力するアドレスを500とした場合は、50usec時間的に遅れて出力することが可能となる構成とすることもできる。
【0032】
前記デジタル信号は、サンプリング時間間隔以下の位相差を合わせるため位相調整装置20に入力される。位相調整装置20は次のように制御される。まず、同じ信号レベルのリファレンスとする第二の自動利得制御装置21により、デジタル化されている入力信号S1と入力信号S2の振幅(振幅量)を合わせるように自動的に利得が制御される。
【0033】
位相検出装置22により、前記デジタル化された入力信号S1と入力信号S2の位相差を検出する。検出された位相差を元に、参照信号発生装置19において位相差の情報を含んだ参照信号がIQ信号として生成される。位相調整装置20にて入力信号S1と入力信号S2を前記参照信号に合わせることで入力信号S1と入力信号S2の位相を合わせることができる。このとき、一方の入力信号S1の位相、振幅などの信号状態の変化に対し、他方の入力信号S2が影響しない時定数を選定することにより、2つの入力信号S1、S2の遅延、位相、振幅を合わせることが可能となる。入力信号S1、S2の位相と振幅を合わせる順番は前記順番とは異なっても(逆であっても)よい。
【0034】
前記のようにして遅延、位相、振幅を合わせた伝送系統L1、L2のデジタル信号は合成/選択装置23を経て出力される。合成/選択装置23はいずれか一方の伝送系統を伝送されてくるデジタル信号を選択して出力する選択切り替え方式とすることも、両伝送系統を伝送されてきたデジタル信号を品質が最良となるように合成して出力する合成方式とすることもできる。
【0035】
図1では、合成/選択装置23から出力されるベースバンド信号をデジタルアナログ変換装置24でアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を第三の自動利得制御装置25で所望レベルに調整できるようにしてある。デジタルアナログ変換装置24と第3の自動利得制御装置25の順番は異なっていても(逆であっても)よい。
【0036】
図1では、周波数変換装置11と帯域除去濾過装置13により特定の信号のみを処理する構成をとっているが、本発明の信号受信方法では、これらを除外し、複数の信号を処理する構成としてもよい。
【0037】
図1では、アナログデジタル変換装置14にてデジタル信号に変換した後に、直交復調装置15にてIQ(In-phase、Quadrature)ベースバンド信号に直交復調できるようにしてあるが、本発明の受信方法では、アナログ信号で直交復調し、2つのアナログデジタル変換装置でI信号とQ信号をデジタル信号に変換する構成とすることもできる。
【0038】
(信号受信方法の実施形態2:
図2の信号受信装置を利用する場合)
本発明の信号受信方法の実施形態として、
図2の信号受信装置を利用してダイバーシティ受信する場合を一例として以下に説明する。
図2の11から16、19から25までの構成及び動作は実施形態1と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0039】
図2において実施形態1(
図1)と異なるのは、記憶装置(遅延装置)17aを一方の伝送系統L1だけに設けたこと、直交復調装置15の後に復調装置101と信号品質計測装置102とを追加したことである。このため、
図2では、直交復調装置15で直交復調されたデジタル信号が復調装置101へ入力され、復調装置101で復調されて信号品質計測装置102で計測してから合成/選択装置23へ入力され、実施形態1の場合と同様に、選択方式又は合成方式でデジタル信号が出力される。この場合、復調された元のデータ(信号)又は復調途中のデータ(信号)に基づいて信号品質の計測を、ダイバーシティ受信、合成又は選択と同時に行って、信号品質の劣化や劣化の傾向を瞬時に計測算出することができる。このため、信号が完全に劣化し映像に影響が出る前に、合成の場合はその比率を、選択の場合は系統の判定選択が可能となる。
【0040】
信号品質計測装置102では、例えば、入力レベル(Input Power)、信号対雑音比(SNR:Signal Noise Ratio)、変調波エラーレシオ(MER:Modulation Error Ratio)、ビットエラーレシオ(BER:Bit Error Ratio)、誤差ベクトル規模(EVM:Error Vector Magnitude)、補間累積分布関数(CCDF:Complementary Cumulative Distribution Function)、遅延プロファイル(Delay Profile)によるマルチパス等、復調過程によって異なる様々な品質の計測を行うことが可能である。
【0041】
(選択方式と合成方式の選択)
本発明おいて、
図1のように選択方式にするか、
図2のように合成方式にするかは、最適な指標をもとにして決定することができる。例えば、入力された信号の入力レベルとSNRを計測して指標とし、入力レベルが高いがSNRが低い場合は、選択方式の構成をとることができる。MERとBERを指標として、BERが高い方で同期をとり、MERが悪い方のレベル比率を落として合成を行う合成方式の構成としてもよい。
【0042】
直交復調された信号ののうち、遅延していない伝送系統の信号を遅延装置17aに入力し、遅延している伝送系統の信号を他方の伝送系統へ入力することで、両伝送系統の遅延量をサンプリング間隔で同じにすることができる。遅延装置17aの動作を説明する。遅延装置17aは、例えば、1000番のアドレスを備え、1つのアドレス当たりのビット保持量を32ビットとすると、例えば、アナログデジタル変換装置14において、10MHzでサンプリングされた1つのデジタル信号を直交復調装置15で直交復調されたIQ信号それぞれ16ビットとすると、1つのアドレスの最上位から16ビットをI信号、最下位から16ビットをQ信号とすることで、IQ信号を各アドレスに保持することができる。遅延している伝送系統の信号は遅延装置17aがないので相対的にアドレス0で出力することとなる。遅延していない系統の信号が先に遅延装置17aに到来したとき、その信号を遅延装置17aのアドレス1000をカウントするまで保持して出力しないようにすると、遅延している系統の信号の相対アドレス0と同時に出力されることになる。遅延していない系統の信号は1000サンプル分遅れて出力されるため、100usec時間的に遅れて出力することが可能となる。遅延装置17aに入力させる信号と、入力させない信号の選択は当該遅延装置17aで行うことができる。
【0043】
例えば、1000サンプル分保持するが、出力するアドレスを500とした場合は、50usec時間的に遅れて出力することが可能となる構成とすることもできる。
【0044】
(信号受信方法の実施形態3:
図3の信号受信装置を利用する場合)
本発明の実施形態3について
図3を用いて説明する。
図3において、11から17a、19から25、101から102までの構成及び動作は実施形態2(
図2)と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0045】
図3において実施形態2(
図2)との差異は、遅延装置17a、17bを夫々の伝送系統L1、L2に設けたこと、合成選択制御装置103を設けたことである。
【0046】
図3において、信号品質計測装置102の出力を合成/選択装置23に入力し、その出力結果によって合成/選択装置23は、合成方式又は選択方式を切り替えることができる。例えば、
図3の合成/選択装置23は、信号品質計測装置102の出力結果からすべての伝送系統の信号が受像機に影響が出る状態に接近していて、信号品質が不安定なとき、合成方式を選択することにより、信号品質の測定結果から、合成比率を算出して、合成後の信号品質が最大となるようにすることができる。例えば、一方の信号の信号品質が良好で、他方の信号の信号品質が、受像機に影響が出るほど劣化する状態がそれぞれの伝送系統において、交互におきるような伝送系統である場合、選択方式を選択することにより、選択後の信号が常に良好な信号になるようにすることができる。
【0047】
図2の実施形態では遅延していない系統を遅延装置17a側に入力していたが、この場合は、どちらの系統が遅延していないかが不明の場合は伝送系統L1、L2の信号の遅延が合わなくなってしまう可能性がある。
図3では両伝送系統L1、L2に遅延装置17a、17bを装備することで、メモリ量は多くなってしまうが、一方に対し他方を遅延させる、又は、両伝送系統の信号を遅延させて複数の入力信号の遅延を調整させることが可能である。例えば、図示しない3系統の信号がある場合、伝送系統L1の信号が一番遅延しているとする。伝送系統L2と伝送系統L3の系統の信号も異なる遅延を持っていた場合、各伝送系統の遅延装置のアドレスを別々に選択することができる。
【0048】
例えば、図示しない3つの伝送系統の信号がある場合、伝送系統L1の信号の遅延に対して伝送系統L2はアドレス250、伝送系統L3はアドレス250よりも少し遅い中間的な遅延が必要になった場合、遅延装置17aと遅延装置17bのサンプリング周波数を遅延装置17aでは10MHz、遅延装置17bは20MHzとすることにより、遅延装置17bのアドレスを501とすれば10MHzのサンプリング周波数に対して半分の遅延に合わせることができる。
【0049】
信号品質の計測を外部の品質計測装置で行うと、合成/選択装置23の合成/選択の切替動作が遅れて、映像へ影響が出てしまう問題があるが、本発明では信号品質計測装置102が信号受信装置の内部にあるため、そのような問題を解消することができる。
【0050】
(信号受信方法の実施形態4:
図4の信号受信装置を利用する場合)
本発明の実施形態4を
図4の信号受信装置を用いて行う場合について説明する。
図4において、11から17a、19から25、101から103までの構成及び動作は実施形態3と同様であるため、これらの説明は省略する。
【0051】
図4において実施形態3(
図3)との差異は、
図3において2つの伝送系統L1、L2の双方に設けた復調装置101と信号品質計測装置102を一方の伝送系統L1にだけ設け、他方の伝送系統L2の直交復調装置15の出力を伝送系統L1の復調装置101に入力するようにしたこと、遅延装置17aを一つだけにして、4つの切替装置18a~18dを設けたこと、差分検出装置201と、平均化装置202と、記憶装置制御装置203と、差分最小記憶値記憶装置204と、記憶装置記憶値切替装置205を追加したことである。
【0052】
図3の信号受信装置では、2つの伝送系統L1、L2に遅延装置17a、17bを設ける必要があるため、伝送系統が増えると遅延装置も増える。伝送系統が多いと遅延装置17a、17bの一つ当たりの記憶量(アドレス数)を小さくしなければならないため、長い遅延が必要な場合、記憶量が足りなくなることがある。
図4では2つの伝送系統L1、L2について1つの遅延装置17aを共有する構成をとることでこの問題を解消した。この共有方式は伝送系統が3以上の場合にも適用できる。その場合は、初めに2つの伝送系統の遅延を共有する1つの遅延装置17aで遅延調整し、その後に、新たな1つの伝送系統に設けた遅延装置で遅延調整できるようにする。
【0053】
図4では伝送系統L1の直交復調装置15の出力は切替装置18aに入力され、伝送系統L2の直交復調装置15の出力は切替装置18bに入力される。例えば、遅延していない伝送系統をL1とした場合、切替装置18aの出力は記憶装置17aとなる。切替装置18bの出力は切替装置18dとなる。記憶装置17aの出力は切替装置18cと切替装置18dに入力される。切替装置18cは切替装置18aと記憶装置17aの両方から入力され、どちらかを選択できる。切替装置18dは記憶装置17aと切替装置18bの両方から入力され、どちらかを選択できる。遅延しているL1が記憶装置17aに入力されているため、切替装置18cは記憶装置17aの入力を選択し、切替装置18dは切替装置18bの入力を選択すると、伝送系統L2はアドレス0で無遅延で出力され、伝送系統L1は設定されたアドレス数に対応する時間分だけ遅延させて出力することができる。
【0054】
図4の差分検出装置201は、2つの伝送系統L1、L2の信号の差分を検出するものである。例えば一方の系統の信号をS1+N1(S1は信号、N1はノイズ)、他方の系統の信号をS2+N2(S2は信号、N2はノイズ)と表したとき、差分検出装置201の出力結果は(S1+N1)-(S2+N2)となる。
【0055】
図4の平均化装置202は、差分検出装置201の出力結果を平均化するものである。差分検出装置201の出力を平均化すると、ランダムに得られた雑音成分N1-N2の平均値は0となることが知られている。
【0056】
図4の記憶装置制御装置203は、平均化装置202の値が一定となるまで時間待機しながら、記憶装置17aに記憶値(遅延値)を出力するものである。
【0057】
図4の差分最小記憶値記憶装置204は、平均化装置202の出力値が最も小さいときの出力値と、そのときの記憶値(遅延値)と記憶装置17aに入力されている伝送系統を記憶するものである。
【0058】
図4の記憶装置記憶値切替装置205は、記憶装置17aに入力する記憶値(遅延値)を記憶装置制御装置203か差分最小記憶値記憶装置204の出力に切り替えるものである。
【0059】
(
図4における遅延合わせ)
図4の構成とした受信装置は、記憶装置制御装置203によって、平均化装置202の出力値が一定となるまでの時間待機しながら記憶値(遅延値)を制御し、平均化装置202の出力値が最小となったときの遅延値とそのとき記憶装置17aに入力されている伝送系統が差分最小記憶値記憶装置204に記憶され、記憶された遅延値を記憶装置記憶値切替装置205により、記憶装置17aに入力する記憶値として切り替えることにより、2つの信号の遅延差を合わせることができるようにしたものである。この動作を
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0060】
(
図5のフローチャートによる
図4の動作説明)
(1)
図4の記憶装置記憶値切替装置205の図示しない制御により、遅延装置17aに入力する遅延値を記憶装置制御装置203の出力により決定されたアドレス数に切り替える。(
図5のS1)。
(2)切替装置18aと切替装置18bにより、一方の信号を遅延装置17aに入力するよう切り替える。(
図5のS2)。
(3)記憶装置制御装置203は遅延値0を出力する。(
図5のS3)。
(4)記憶装置制御装置203は平均化装置202の出力値が十分に安定する時間待機する。(
図5のS4)。
(5)差分最小記憶値記憶装置204は、平均化装置202の出力値と記憶されている遅延値0(初期値)と遅延装置17aに入力されている伝送系統を記憶する。(
図5のS5)。
(6)記憶装置制御装置203は前回の記憶値0から1を加算した記憶値1を出力する。
(7)差分最小記憶値記憶装置204は、平均化装置202の出力値が一定となる時間待機する(
図5のS7)。そのときの出力値が記憶値0のときと比べて小さかった場合、平均化装置202の出力値と記憶値1と遅延装置17aに入力されている伝送系統を記憶する(
図5のS8、S9)。初期値0のときと比べて、平均化装置202の出力値が大きかった場合は、平均化装置202に記憶されている情報を変更しない。(
図5のS8、S10)。
(8)前記(1)~(7)の動作を、遅延値を変更しながら、記憶装置17aの設定された値まで繰り返す。(
図5のS1)。設定された値がアドレスの最大値(限界値)になったら動作を終了する。
【0061】
(9)前記動作により、一方の信号が設定された値に達したら、切替装置18aと切替装置18bにより他方の信号を遅延装置17aに入力し、記憶装置制御装置203の出力を記憶値0に戻して、前記(1)~(7)と同様の動作を行う。(
図5のS12、S13、S14)。
(10)他方の信号の動作が完了した段階で、差分最小記憶値記憶装置204は平均化装置202の出力が最小となる記憶値とそのときの伝送系統を保存している。これらの情報は、例えば不揮発性メモリなどに保存する。
【0062】
(11)記憶装置記憶値切替装置205の制御により、遅延装置17aに入力する記憶値を差分最小記憶値記憶装置204に保存された記憶値に切り替える(
図5のS15)。
(12)切替装置18aと切替装置18bにより、差分最小記憶値記憶装置204に保存された系統に切り替える(
図5のS16)。
【0063】
図4の実施形態によれば、信号の変調方式や信号特有の特性によらず、復調回路等の複雑な回路を必要とせず、信号の振幅、位相調整だけで遅延を合わせることができる。
【0064】
上記動作は、平均化装置202の出力値が最小となる記憶値や、入力信号S1と入力信号S2の誤差が最小となる値を検索することができれば他の手順であってもよい。例えば、一方の信号の振幅の分布と他方の信号の振幅の分布が同じになるように遅延、位相を調整しその値を記憶して調整すればよい。
【0065】
例えば、一方の信号が遅延していることが自明であれば、他方の信号のみ実施すればよい。記憶値のステップ数を変更してもよい、閾値以下の条件を最小値として動作させてもよい。
【0066】
前記いずれの実施形態も、2つの信号の遅延、振幅、位相を低コスト合わせることにより同一の信号となるようにしたので、入力信号S1、S2の合成/選択時に信号の連続性を維持することができ、信号の変調方式によらず、受像機への影響がなく、信号を合成/選択することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の信号受信方法も、信号受信装置も、信号中継方法、信号中継装置として使用することもできる。本発明では複数の伝送系統を縦続接続または並列接続することで、三以上の伝送系統にも対応可能であり、三以上の複数の信号をダイバーシティ受信することができる。縦続接続の場合は、先に、二つの伝送系統L1、L2のどちらかを選択して、選択された伝送系統をL2’とし、その伝送系統L2’と第3の伝送系統L3のいずれかを選択する、というようにツリー構造で選択できる。並列接続の場合は、三以上の伝送系統の品質を測定して一番品質の良い伝送系統を選ぶことができる。実際に汎用されている合成/選択装置23は2入力までであるため、縦続接続が実用的ではある。前記実施形態はあくまでも一例である。本発明では課題を解決できる範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 入力端
2 入力端
11 周波数変換装置
12 第一の自動利得制御装置
13 帯域除去濾過装置
14 アナログデジタル変換装置(ADC)
15 直交復調装置
16 発振器
17 遅延調整装置(遅延装置)
17a 記憶装置(遅延装置)
17b 記憶装置(遅延装置)
18a~18d 切替装置
19 参照信号発生装置
20 位相調整装置
21 第二の自動利得制御装置
22 位相検出装置
23 合成/選択装置
24 デジタルアナログ変換装置
25 第三の自動利得制御装置
101 復調装置
102 信号品質計測装置
103 合成選択制御装置
201 差分検出装置
202 平均化装置
203 記憶装置制御装置
204 差分最小記憶値記憶装置
205 記憶装置記憶値切替装置
S1 入力信号1
S2 入力信号2
L1 伝送系統
L2 伝送系統