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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174671
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】空調機
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/16 20060101AFI20221116BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20221116BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20221116BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20221116BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20221116BHJP
   F24F 1/0071 20190101ALI20221116BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20221116BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20221116BHJP
【FI】
A61L9/16 Z
A61L2/10
A61L9/00 C
A61L9/20
F24F7/06 Z
F24F1/0071
F24F8/22
F24F8/80 200
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080630
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】521202536
【氏名又は名称】クリスタルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】原口 瀧夫
(72)【発明者】
【氏名】原口 英紀
【テーマコード(参考)】
3L051
3L058
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
3L051BC03
3L058BC07
4C058AA19
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK13
4C058KK22
4C058KK32
4C058KK46
4C180AA07
4C180CC03
4C180DD03
4C180DD08
4C180GG03
4C180HH05
4C180HH15
4C180MM08
(57)【要約】
【課題】
広い空間の空気を効率的に滅菌処理することが可能な空調機を提供すること。
【解決手段】
空気の滅菌処理を行う空調機において、空気を所定温度以上に加熱する加熱部と、該加熱部で加熱された空気を導入し、該空気の温度を、該所定温度以上の状態を所定時間以上維持する加熱時間延長部と、該加熱時間延長部を通過した空気を該所定温度より低い温度に変化させる熱交換部とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の滅菌処理を行う空調機において、
空気を所定温度以上に加熱する加熱部と、
該加熱部で加熱された空気を導入し、該空気の温度を、該所定温度以上の状態を所定時間以上維持する加熱時間延長部と、
該加熱時間延長部を通過した空気を該所定温度より低い温度に変化させる熱交換部とを有することを特徴とする空調機。
【請求項2】
請求項1に記載の空調機において、該所定温度は100℃であり、該所定時間は1分であることを特徴とする空調機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空調機において、該加熱時間延長部は、保温性ダクトで構成され、加熱した空気が該所定時間以上を掛けて該ダクト内を移動することを特徴とする空調機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の空調機において、該熱交換部は、該加熱時間延長部を通過した空気が複数の熱交換器を通過するよう構成され、最初の熱交換器は、該加熱時間延長部を通過した空気と冷却用空気との間で熱交換を行うことを特徴とする空調機。
【請求項5】
請求項4に記載の空調機において、該冷却用空気は、外部空気又は該空調機が供給する室内の空気であることを特徴とする空調機。
【請求項6】
請求項5に記載の空調機において、該冷却用空気が該空調機が供給する室内の空気である場合には、前記最初の熱交換器を通過した空気を該加熱部に導入することを特徴とする空調機。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の空調機において、該加熱時間延長部と該熱交換部との間に、空気に紫外線を照射する紫外線照射部を設けることを特徴とする空調機。
【請求項8】
請求項7に記載の空調機において、該紫外線照射部を構成する空間の内壁には光触媒が塗布されていることを特徴とする空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機に関し、特に、空気の滅菌処理を行う空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症のまん延が大きな社会問題となっている。このため、ウイルスや細菌に汚染された空気を浄化する機能を有する空調機へのニーズが高まっている。
【0003】
家庭内などの比較的狭い空間に対しては、エアコンや空気清浄機に滅菌機能を付加した空調機が多く提案され、市販もされている。これらの空調機では、プラズマ(電離気体)により、ウイルス等を帯電して吸着除去したり、プラズマで発生した活性化酸素などによりウイルス等を分解するもの、さらには、紫外線でウイルス等を滅菌するものなどが実用化されている。
【0004】
狭い空間の空気を効率よく滅菌処理する方法としては、プラズマ処理は効果的であるが、ホテルのロビーや劇場、空港ターミナルビルなどの公共施設などのように、広い空間の空気を滅菌処理する際にプラズマ処理を行うと、多くのプラズマ処理装置を並列に配置し、同時に稼働させる必要がある。このため、消費電力が大きくなるだけでなく、各機器のメンテナス作業負担も甚大なものとなる。
【0005】
紫外線照射のみで滅菌する場合は、他の処理と比較して滅菌処理に要する時間が長くなる。しかも、空調機内に処理すべき空気を一旦取り込み、紫外線を所定時間以上に亘り照射する必要があるため、広い空間の空気を滅菌処理するには、十分な処理空間を確保する必要がある。また、処理空間の広さに応じて、光源の数が増加し、各光源の発光強度も強くなる。
【0006】
特許文献1では、60℃以上の常圧水蒸気を空気の殺菌に用いる例が開示されているが、新型コロナウイルスなどに60℃以上の常圧水蒸気を接触させるだけで、十分にウイルスを死滅させることが可能であるかは明らかではない。しかも、水蒸気と空気を接触させる空間から水蒸気の流出を抑制しながら、当該空間に浄化対象の空気を出入りさせるのは技術的に難しい。
【0007】
特許文献2では、加熱処理とプラズマ処理とを組み合わせてウイルスを不活化する空調機が開示されている。加熱処理は、加熱温度も30℃より高い程度であり、後段のプラズマ処理を行うことが前提となっている。このため、前述したプラズマ処理に係る問題が同様に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-218827号公報
【特許文献2】特許第5683247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、広い空間の空気を効率的に滅菌処理することが可能な空調機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の空調機は、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 空気の滅菌処理を行う空調機において、空気を所定温度以上に加熱する加熱部と、該加熱部で加熱された空気を導入し、該空気の温度を、該所定温度以上の状態を所定時間以上維持する加熱時間延長部と、該加熱時間延長部を通過した空気を該所定温度より低い温度に変化させる熱交換部とを有することを特徴とする。
【0011】
(2) 上記(1)に記載の空調機において、該所定温度は100℃であり、該所定時間は1分であることを特徴とする。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の空調機において、該加熱時間延長部は、保温性ダクトで構成され、加熱した空気が該所定時間以上を掛けて該ダクト内を移動することを特徴とする。
【0013】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の空調機において、該熱交換部は、該加熱時間延長部を通過した空気が複数の熱交換器を通過するよう構成され、最初の熱交換器は、該加熱時間延長部を通過した空気と冷却用空気との間で熱交換を行うことを特徴とする。
【0014】
(5) 上記(4)に記載の空調機において、該冷却用空気は、外部空気又は該空調機が供給する室内の空気であることを特徴とする。
【0015】
(6) 上記(5)に記載の空調機において、該冷却用空気が該空調機が供給する室内の空気である場合には、前記最初の熱交換器を通過した空気を該加熱部に導入することを特徴とする。
【0016】
(7) 上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の空調機において、該加熱時間延長部と該熱交換部との間に、空気に紫外線を照射する紫外線照射部を設けることを特徴とする。
【0017】
(8) 上記(7)に記載の空調機において、該紫外線照射部を構成する空間の内壁には光触媒が塗布されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、空気の滅菌処理を行う空調機において、空気を所定温度以上に加熱する加熱部と、該加熱部で加熱された空気を導入し、該空気の温度を、該所定温度以上の状態を所定時間以上維持する加熱時間延長部と、該加熱時間延長部を通過した空気を該所定温度より低い温度に変化させる熱交換部とを有するため、加熱処理を中心として滅菌処理を行うことができる。加熱処理は、必要な装置の構成も簡素化でき、空気の流路もシンプルとなる。このため、広い空間の空気を処理する際にも、加熱装置の能力を変更し、配管容量の規模を調整するだけで、容易に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る空調機の一例を示す処理フロー図である。
図2】本発明に係る空調機の他の例を示す処理フロー図である。
図3】本発明の空調機に使用される加熱部の一例を示すフロー図である。
図4】本発明の空調機に使用される加熱部の他の例を示すフロー図である。
図5】本発明の空調機に使用される加熱時間延長部の一例を示すフロー図である。
図6】本発明の空調機に使用される加熱時間延長部の他の例を示すフロー図である。
図7】本発明の空調機に使用される紫外線照射部と熱交換部の一例を示すフロー図である。
図8】本発明の空調機に使用される紫外線照射部と熱交換部の他の例を示すフロー図である。
図9】本発明の空調機における滅菌処理部分の構成を示す概略図である。
図10図9に示す滅菌処理部分に接続される熱交換器の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について好適例を用いて詳細に説明する。
本発明は、図1又は図9に示すように、空気の滅菌処理を行う空調機において、空気を所定温度以上に加熱する加熱部と、該加熱部で加熱された空気を導入し、該空気の温度を、該所定温度以上の状態を所定時間以上維持する加熱時間延長部と、該加熱時間延長部を通過した空気を該所定温度より低い温度に変化させる熱交換部とを有することを特徴とする。
【0021】
本発明は、ウイルスや細菌が、高温の環境下で死滅することを利用し、特に、100℃以上の状態を1分間以上持続することで、99%以上のウイルス等を滅菌処理するものである。
【0022】
空気の加熱温度は、100℃以上であれば、特に上限は無いが、温度が高いほど消費するエネルギーも膨大なものとなる。しかも、加熱処理して滅菌処理した空気は、室温程度(例えば、20~40℃)に温度を下げて、室内に供給されるため、加熱温度が高いほど、エネルギー損失も大きくなる。このため、加熱温度は、100℃から300℃、より好ましく100℃から150℃の範囲に設定される。
【0023】
加熱温度を維持する時間については、一般的に、加熱温度が高いほど、滅菌処理に必要な時間は短くなる。確実に滅菌処理を行うには、処理する空気全体を所定温度以上の状態で、所定時間以上に保持することが不可欠であることから、処理する空気量が増加するに従い、処理時間(所定時間)は長めに設定することが好ましい。例えば、10秒以上、又は30秒以上、より好ましくは1分以上に設定される。ただし、空気の加熱温度を維持するには、空気を処理するための空間として、処理する空気の流量と処理時間との積によって算出される体積の空間が必要となる。このため、処理時間が倍になると必要な空間も倍になり、処理時間に対応して空調機の設備も巨大化することとなる。よって、処理時間は、2~3分以内を上限とすべきである。
【0024】
本発明の空調機の基本的な構成は、図1に示すように、室内空気を取り込み加熱する加熱部と、加熱した空気を所定時間維持するための加熱時間延長部と、加熱した空気を室温に戻すための熱交換部から構成される。
【0025】
さらに、図2に示すように、より滅菌処理の効果を高めるため、加熱した空気の温度を下げる前に、処理空気に紫外線を照射する紫外線照射部を組み込むことも可能である。加熱した空気に紫外線を照射することで、常温の空気に紫外線を照射する場合と比較し、より高い滅菌効果を実現することができる。
【0026】
次に、本発明の空調機を構成する各部分の概要を説明する。
図3及び4は、加熱部の構成を説明する図であり、基本的には、送風手段と加熱手段から構成される。加熱部に空気を導入する際には、空気中の塵等を除去するためフィルタを通過した空気を導入する。また、フィルタは吸込口と一体的に構成することも可能である。送風手段としてファンやブロワーが利用可能である。加熱手段としては、電気やガスなどの種々のエネルギー源を利用した加熱ヒーターが利用可能である。特に、取扱い易さや設置工事の簡便さから電気式の加熱ヒーターが好ましい。
【0027】
加熱部としては、例えば、ファンと加熱ヒーターを一体化した電熱送風機(西村電機株式会社製、製品型式CU-500E形)が好適に利用可能である。この電熱送風機は、最大風量が20m/minであり、吐出温度も60~300℃を実現している。例えば、20m/minを超える流量で室内空気を取り込み、加熱部で加熱処理を行うには、図4図9に示すように、ファンや加熱ヒーターを並列に配置することで、加熱処理能力を容易に高めることが可能となる。
【0028】
図5図6及び図9を用いて、加熱時間延長部について説明する。
加熱時間延長部では、加熱した空気を所定温度以上の状態で、所定時間維持することを確実に実施することが必要である。このため、加熱空気を広い空間に一時的に閉じ込めることも可能である。しかしなら、空調機を連続的に運転するためには、空気の出入りも連続的に行う必要があり、一カ所の空間に一時的に閉じ込める方法は現実的でない。このため、本発明では、保温性ダクトを利用し、加熱した空気が所定時間以上を掛けて該ダクト内を移動するよう構成している。
【0029】
保温性ダクトとしては、亜鉛鋼板などを用いた金属製のスパイラルダクトを利用すると共に、その周囲にガラス繊維などの断熱性素材を配置したものが利用可能である。また、図6に示すように、複数の加熱ヒーターなどを利用して、複数の系統から加熱空気が送風されてくる場合には、加熱時間延長部を構成する保温性ダクトも各系統に対応して、複数設けることが可能である。
【0030】
例えば、30m/minの流量で流れる空気を、1分間保持するために必要なダクトの容積は、30mである。なお、空気の熱膨張を考慮すると、実際の容積は30mよりも大きくなる。ダクトの内径を大きくすれば、ダクトの長さは短くなる。しかしながら、ダクトの内径が大きいほど、ダクト内を通過する空気の速さは、ダクトの中央部付近と内壁面付近とではより大きく異なるため、ダクト内の空気の通過位置により、空気のダクト内に滞在する時間が異なることとなる。このため、ダクト内の空気の速度分布が出来るだけ一様と(速度差が少なく)なるように、ダクトの内径を設定することが好ましい。これにより、ダクトの長さは必然的に長くなる傾向となり、図9に示すように保温性ダクトは、加熱時間延長部を構成する空間内に、折れ曲がるように配置される。ダクトの折れ曲がった部分では、空気の流れが乱れるため、ダクトの内径を設定する際には、このような曲がり部分の影響も考慮して設定することがより好ましい。
【0031】
図6又は9のように、保温性ダクトを配置する空間は、外部への放熱を可能な限り抑制することが好ましいため、空間の壁面の断熱性を高めた断熱室とすることも可能である。
【0032】
図7乃至9を用いて、紫外線照射部について説明する。上述したように、紫外線照射部は本発明の空調機において必須のものでは無いが、滅菌処理の効果を向上させるためには、この紫外線照射部を空調機に組み込むことが好ましい。
【0033】
紫外線照射部は、加熱した空気に紫外線を照射する必要があるため、図7等に示すように、加熱時間延長部と熱交換部との間に設置することが好ましい。紫外線照射部を設置する場所としては、加熱部と加熱時間延長部との間や加熱時間延長部の途中なども可能ではあるが、紫外線照射部を介在させることで、加熱した空気の温度が低下することも危惧されるため、図7等に示す位置がより好ましい。
【0034】
紫外線照射部は、加熱した空気が通過する空間に紫外線ランプを配置したものである。図7のように、複数の保温性ダクトから排出される空気を一つの空間に集め、紫外線を照射するよう構成することが可能である。また、図8のように、保温性ダクト毎に紫外線照射部を配置することも可能である。紫外線ランプには、一般に市販されている製品を利用することが可能である。また紫外線の照射時間は、特に限定されないが、既に加熱処理で滅菌されているため、例えば、0.1秒~5秒の範囲で設定することが可能である。
【0035】
また、紫外線照射部を構成する空間の内壁に光触媒を含む材料を塗布(コーティング)することで、内壁に付着するウイルス等の分解を補助することも可能となる。当然、光触媒には、紫外線により活性を示す材料が用いられる。
【0036】
図7~10に示すように、本発明の空調機に使用される熱交換部は、温度保持部を通過した空気が複数の熱交換器(熱交換器A及びB)を通過するよう構成することが好ましい。
これは、最初の熱交換器Aは、加熱した空気(100℃以上)の温度を大きく下げるために使用される。その次の熱交換器Bは、空調機から吐出される空気の温度を、室内空調機として利用者が設定した温度に調整するために使用される。
【0037】
最初の熱交換器Aは、空冷や水冷など各種の冷却媒体を利用することが可能であるが、外気や室内空気を冷却用空気として利用する場合は、温度保持部を通過した空気と冷却用空気との間で熱交換を行う方式を採用することが好ましい。図9に示すように、外気(25℃)を冷却用空気として利用する際には、熱交換器Aを通過した後の空気C(例えば、75℃程度)は、図10に示すように、そのまま屋外に排出するよう構成できる。
【0038】
冷却用空気として室内空気を使用する場合は、熱交換器Aは加熱部の前段に配置される予熱手段として利用可能である。これにより、加熱部での消費エネルギーをより少なく設定できるだけでなく、図10のように熱交換して加熱された冷却用空気を屋外に直接排出していた場合と比較し、エネルギーの浪費も抑制することが可能となる。図9では、室内用空気Bは、室内空気Aと同様にフィルタを介して熱交換器Aに導入され、熱交換器Aから排出された冷却用空気Cは、加熱部のファンに導入される。
【0039】
熱交換器Aとしては、例えば、HEATEX社のプレート式熱交換器(クロスタイプ・モデルH)などが好適に利用可能である。参考例として、加熱空気の温度(150℃)と冷却用空気の温度(25℃)を、当該熱交換器に導入することで、加熱空気は約40℃に温度が低下し、冷却用空気は約110℃に加熱されて、各々排出される。
【0040】
熱交換器Bとしては、熱交換器Aで空気の温度が40℃程度に下げられているため、既存のエアコンが利用可能である。熱交換器Bでは、例えば、夏季20℃、冬季40℃の温度の空気として室内に供給される。熱交換器Bは、市販されているインバータ式エアコンや図10に示すように室内機と室外機とが分離されたタイプなど、使用する環境に応じて、適宜選択可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明によれば、広い空間の空気を効率的に滅菌処理することが可能な空調機を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の滅菌処理を行う空調機において、
空気を100℃以上に加熱する加熱部と、
該加熱部で加熱された空気を導入し、該空気の温度を、100℃以上の状態を1分以上維持する加熱時間延長部と、
該加熱時間延長部を通過した空気を100℃より低い温度に変化させる熱交換部とを有し、
該加熱時間延長部は、該加熱部と該熱交換部とは別の空間内に折れ曲がるように配置された保温性ダクトで構成され、該ダクトの容積は30m 以上で構成されることを特徴とする空調機。
【請求項2】
請求項1に記載の空調機において、該保温性ダクトは、金属製スパイラルダクトの周囲に断熱性素材を配置したものであることを特徴とする空調機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空調機において、該空間は断熱室であることを特徴とする空調機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の空調機において、該熱交換部は、該加熱時間延長部を通過した空気が複数の熱交換器を通過するよう構成され、最初の熱交換器は、該加熱時間延長部を通過した空気と冷却用空気との間で熱交換を行うことを特徴とする空調機。
【請求項5】
請求項4に記載の空調機において、該冷却用空気は、外部空気又は該空調機が供給する室内の空気であることを特徴とする空調機。
【請求項6】
請求項5に記載の空調機において、該冷却用空気が該空調機が供給する室内の空気である場合には、前記最初の熱交換器を通過した空気を該加熱部に導入することを特徴とする空調機。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の空調機において、該加熱時間延長部と該熱交換部との間に、空気に紫外線を照射する紫外線照射部を設けることを特徴とする空調機。
【請求項8】
請求項7に記載の空調機において、該紫外線照射部を構成する空間の内壁には光触媒が塗布されていることを特徴とする空調機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の空調機は、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 空気の滅菌処理を行う空調機において、空気を100℃以上に加熱する加熱部と、該加熱部で加熱された空気を導入し、該空気の温度を、100℃以上の状態を1分以上維持する加熱時間延長部と、該加熱時間延長部を通過した空気を100℃より低い温度に変化させる熱交換部とを有し、該加熱時間延長部は、該加熱部と該熱交換部とは別の空間内に折れ曲がるように配置された保温性ダクトで構成され、該ダクトの容積は30m 以上で構成されることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
(2) 上記(1)に記載の空調機において、該保温性ダクトは、金属製スパイラルダクトの周囲に断熱性素材を配置したものであることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の空調機において、該空間は断熱室であることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明により、空気の滅菌処理を行う空調機において、空気を100℃以上に加熱する加熱部と、該加熱部で加熱された空気を導入し、該空気の温度を、100℃以上の状態を1分以上維持する加熱時間延長部と、該加熱時間延長部を通過した空気を100℃より低い温度に変化させる熱交換部とを有し、該加熱時間延長部は、該加熱部と該熱交換部とは別の空間内に折れ曲がるように配置された保温性ダクトで構成され、該ダクトの容積は30m 以上で構成されるため、加熱処理を中心として滅菌処理を行うことができる。加熱処理は、必要な装置の構成も簡素化でき、空気の流路もシンプルとなる。このため、広い空間の空気を処理する際にも、加熱装置の能力を変更し、配管容量の規模を調整するだけで、容易に対応することが可能となる。