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  • 特開-冷媒処理方法 図1
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  • 特開-冷媒処理方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174688
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】冷媒処理方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/035 20060101AFI20221116BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B08B9/035
F25B1/00 396Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080684
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】305062457
【氏名又は名称】プロステップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138221
【弁理士】
【氏名又は名称】影山 剛士
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 茂
(72)【発明者】
【氏名】橘和 尚史
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA13
3B116BB71
3B116BB77
3B116BB82
3B116CC03
(57)【要約】
【課題】1224yd冷媒を用いた、自動車車両等の車両用空調システムや冷凍機器システム等のワーク内の配管を洗浄する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】1224yd冷媒を洗浄溶剤として用いたワーク内配管を洗浄する冷媒処理方法であって、前記洗浄溶剤を内蔵する内蔵容器をヒーターにより加熱する工程と、前記ワークに前記洗浄溶剤を送液する工程と、前記洗浄溶液を前記ワーク内で循環させる工程と、を含む
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1224yd冷媒を洗浄溶剤として用いたワーク内配管を洗浄する冷媒処理方法であって、
前記洗浄溶剤を内蔵する内蔵容器をヒーターにより加熱する工程と、
前記ワークに前記洗浄溶剤を送液する工程と、
前記洗浄溶液を前記ワーク内で循環させる工程と、を含む冷媒処理方法。
【請求項2】
前記加熱する工程は、洗浄溶剤を摂氏55度以上に加熱することを特徴とする、請求項1に記載の冷媒処理方法。
【請求項3】
前記加熱する工程は、前記洗浄溶液の内圧を0.4MPa以上となるよう、前記洗浄溶液を加熱することを特徴とする、請求項1に記載の冷媒処理方法。
【請求項4】
前記洗浄溶剤を、前記内蔵容器に回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の冷媒処理方法。
【請求項5】
前記回収工程の後、さらに、前記ワーク内を真空乾燥させる工程を含む、請求項1に記載の冷媒処理方法。
























【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システム等のワーク内の配管を冷媒溶剤により洗浄し、ワーク内に残留している冷媒溶剤を回収する処理を行う冷媒処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境を考慮した、自動車車両等の車両用空調システムや冷凍機器システム等のワークに使用される冷媒として、オゾン層への影響が少なく且つGWPが低い、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)を用いる作動媒体((HCFO-1224yd(以下、「1224yd冷媒」)を用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に、1224yd冷媒と他の冷媒とで混成された作動媒体を熱サイクルシステムに適用する旨開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-218508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献においては、作動媒体としてHCFC-123を用いるように設計された熱サイクル用システムにそのまま適用可能である旨効果を有するものの、1224ydを用いて空調システムや冷凍機器システム等のワークの配管洗浄方法については開示されていない。
【0006】
そこで、本発明は、1224yd冷媒を用いた、自動車車両等の車両用空調システムや冷凍機器システム等のワーク内の配管を洗浄する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の実施形態は1224yd冷媒を洗浄溶剤として用いたワーク内配管を洗浄する冷媒処理方法であって、前記洗浄溶剤を内蔵する内蔵容器をヒーターにより加熱する工程と、前記ワークに前記洗浄溶剤を送液する工程と、前記洗浄溶液を前記ワーク内で循環させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1224yd冷媒を用いた、自動車車両等の車両用空調システムや冷凍機器システム等のワーク内の配管を洗浄する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態による冷媒処理装置の構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態による、冷媒処理方法の一例を説明するフローチャート図である。
図3】本発明の第1の実施形態による、冷媒洗浄方法の一例を説明するフローチャート図である。
図4】本発明の第1の実施形態による、冷媒回収方法の一例を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による冷凍処理装置は、以下のような構成を備える。
[項目1]
1224yd冷媒を洗浄溶剤として用いたワーク内配管を洗浄する冷媒処理方法であって、
前記洗浄溶剤を内蔵する内蔵容器をヒーターにより加熱する工程と、
前記ワークに前記洗浄溶剤を送液する工程と、
前記洗浄溶液を前記ワーク内で循環させる工程と、を含む冷媒処理方法。
[項目2]
前記加熱する工程は、洗浄溶剤を摂氏55度以上に加熱することを特徴とする、項目1に記載の冷媒処理方法。
[項目3]
前記加熱する工程は、前記洗浄溶液のを0.4MPa以上となるよう、前記洗浄溶液を加熱することを特徴とする、項目1に記載の冷媒処理方法。
[項目4]
前記洗浄溶剤を、前記内蔵容器に回収する工程をさらに含む、項目1に記載の冷媒処理方法。
[項目5]
前記回収工程の後、さらに、前記ワーク内を真空乾燥させる工程を含む、項目1に記載の冷媒処理方法。
【0011】
以下、図面を用いて本発明の第1の実施形態による冷媒処理装置について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による冷媒処理装置を示す全体構成図である。
【0012】
ここで、本実施形態において、自動車車両用等の車両用空調システム及び冷凍機器システムのワーク内の配管に残留した冷凍機油等を洗浄するために用いる冷媒として、1224yd冷媒が挙げられる。1224yd冷媒は、オゾン破壊係数(ODP)がゼロに近く、地球温暖化係数(GWP)が1以下である、環境に考慮がなされた冷媒として注目されている。
【0013】
また、標準沸点が摂氏15度である、低沸点フッ素冷媒であることも特徴であり、例えば、摂氏40度を超える温度まで加熱することが可能であり、1224yd冷媒を溶液として内蔵する内蔵容器からワークに送液するための自圧を確保できるだけでなく、高温な溶剤として、ワーク内の配管に残留する冷凍機油を洗浄する能力を確保できる、という効果がある。さらに、溶剤の回収工程においても、低沸点である特性から、ワークから冷媒処理装置への回収が容易となる、という効果もある。
【0014】
図1に示す冷媒処理システム1は、1224yd冷媒を溶液2として内蔵する内蔵容器3、内蔵容器3内の溶液2を加熱するIHヒーター4、及び内蔵容器から加熱された溶剤を、冷媒処理システム1内の流路を経てワーク内の配管に送液するため、ワーク入口に接続する接続部を開閉するためのバルブV5を備える。
【0015】
また、冷媒処理システム1は、ワーク内の配管を真空引きするための真空ポンプ6、ワーク内の配管の循環洗浄を行うためのコンプレッサー7、ワーク内配管から残留機油を回収するため、ワーク出口に接続する接続部を開閉するバルブV6、ワークから回収された油を、冷媒処理システム1内の流路を経て回収し、油分を分離するオイルセパレーター8、及びオイルセパレーター内の回収機油を加熱するバンドヒーター9等を備える。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態による、冷媒処理方法の一例を説明するフローチャート図である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態における冷媒処理方法において、ワーク内の配管に残留する機油を洗浄する溶剤として、低沸点フッ素溶剤である、1224yd冷媒を用いる。
【0018】
本実施形態における冷媒処理方法は、まず、1224yd冷媒で構成される洗浄溶剤を加熱し、加熱された洗浄溶剤をワーク内の配管に送液し、ワーク内の配管洗浄を行う、配管洗浄工程(S101)を含む。本工程については、図3を用いて詳述する。
【0019】
ここで、内蔵容器3に内蔵される洗浄溶剤2を、IHヒーター4等の電磁誘導加熱手段による加熱を行うことで、溶剤2を高速に、かつ、全体的にむらなくヒーティングすることができ、自圧を確保させることで、コンプレッサー等の圧送機会によらず自圧のみで溶剤2を内蔵容器3本体から(図示しない)ワークに対し送液することができ、溶剤2の高温によりワーク内の配管に残留する油分の洗浄性能を向上させることができる。また、この自圧は溶剤のワーク内への送液に有用であるに限らず、洗浄工程後に配管に残留した溶剤をガスパージするためにも用いることができる。
【0020】
従来の、液送ポンプや窒素ガスにより溶剤を送液するワンパス手法や冷媒による共洗い洗浄においては、廃液処理に破壊等が必要であったが、本装置は、洗浄溶剤を再生することが可能であり、溶剤の再利用を可能とすることができる。
【0021】
続いて、本実施形態における冷媒処理方法は、配管洗浄の後に、ワーク内の溶剤を回収する、溶剤回収工程(S102)を含む。本工程については、図4を用いて詳述する。
【0022】
続いて、本実施形態における冷媒処理方法は、溶剤回収工程後、ワーク内の配管を真空乾燥する、真空乾燥工程(S103)を含む、本工程についても、図4を用いた溶剤回収工程の説明に続いて詳述する。
【0023】
図3は、本発明の第1の実施形態による、冷媒洗浄方法の一例を説明するフローチャート図である。
【0024】
図3に示すように、冷媒洗浄工程において、まず、内蔵容器3に内蔵された洗浄溶剤2を加熱することにより、溶剤2の温度調整を行う(S201)。
【0025】
加熱方法として、例えば、図1に示す、IHヒーター4の電源S1及びS2のスイッチをオンにすることで、IHヒーター4を加熱させる。内蔵容器の温度が摂氏55度以上に昇温されたら、溶剤2の内圧が0.4MPa以上にまで上昇することになる。この0.4MPaの圧力は、4分配管で高さ30メートルまで1224yd冷媒の溶剤を押し上げる圧力に相当する。ここで温度及び圧力は必要に応じて変化することが出来る。
【0026】
同時に、ワーク内の配管の真空引きを行う(S202)。真空引きとして、例えば、図1に示す、真空ポンプ6の電源S3のスイッチをオンにし、冷媒処理システム1内の流路に備えられるバルブV10、V4、V5、V6、V7を開くことで、ワーク内の配管の真空引きが行われる。
【0027】
このように、真空引きにより真空となった配管内の圧力と、溶剤2の自圧との差圧を利用し、溶剤2をワーク内の配管に送液する(S203)。
【0028】
送液方法として、図1に示す用意、流路に備えられるバルブV1、V3を開くことで、内蔵容器3に内蔵された洗浄溶剤2をワークへ送液する。作業者は、ワーク出口接続側に備えられたフィルターサイトグラス5を通じて目視で洗浄溶剤2が確認できたら、バルブV1を閉じる。
【0029】
この時点で、ワーク内の配管は、洗浄溶剤2で充填された状態となっている。そして、コンプレッサー7を起動することで、この洗浄溶剤2を循環させることで、配管洗浄を行う。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施形態による、冷媒回収方法の一例を説明するフローチャート図である。
【0031】
本方法は、配管洗浄後に、ワーク内の配管の洗浄溶剤2を回収し、再度内蔵容器に戻す工程に関するものである。
【0032】
本方法において、まず、配管洗浄中に、IHヒーター4を起動させ、内蔵容器3の温度を上昇させることで内蔵容器3の温度調整を行う(S301)。
【0033】
温度調整において、作業者は、溶剤2を回収する際に温度が摂氏55度以上(圧力0.4MPa以上)となっていることを確認する。
【0034】
温度調整を行ったうえで、溶剤の回収を行う(S302)。ここで、配管洗浄に伴い、図1に示す、流路上のバルブV3、V4、V5、V6、V7は開いた状態となっており、コンプレッサー7は起動された状態となっている。
【0035】
そのうえで作業者は、バルブV3を閉じ、バルブV1を開けすることで、内蔵容器3に溶剤2を回収する流路を作る。そして、作業者は、バルブV2を開き、加温された溶剤2をガスとしてワーク側に圧送する。これにより、ワーク内の配管に残留する溶剤がワーク出口側に押し出されることとなり、さらに、配管に残留した油分等の気化が促進されることとなる。このように、本実施形態の溶剤方法によれば、従来の溶剤を用いた配管洗浄方法とは異なり、高効率での溶剤回収を実現することができる。
【0036】
続いて、溶剤回収後に、ワーク内の真空乾燥を行う処理について詳述すると、例えば、作業者は、溶剤回収工程において、コンプレッサー7の圧力計がマイナス0.8MPaまで到達したことを確認したときに、バルブV1、V2、V7を閉じ、V9を開く。そして、V10を開き、真空ポンプ6を起動し、真空引きを開始する。回収する溶剤の体積によるが、コンプレッサーの圧力計がマイナス0.1MPaに到達し、15分経過したときに、本作業が完了となる。
【0037】
ワークから回収された油分を含む廃液は、オイルセパレーター8により、バンドヒーター9により加熱されることで、蒸留分離され、溶剤2が再度内蔵容器3に回収されることとなる。
【0038】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 冷媒処理装置
2 1224yd冷媒(洗浄溶剤)
3 内蔵容器
4 IHヒーター
5 サイトグラス
6 真空ポンプ
7 コンプレッサー
8 オイルセパレーター
9 バンドヒーター

図1
図2
図3
図4