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▶ 笹倉 誠一の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174703
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/08 20060101AFI20221116BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61G5/08 702
A61G5/10 703
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021103644
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】507282392
【氏名又は名称】笹倉 誠一
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 誠一
(57)【要約】
【課題】 折り畳んだ状態から椅子形態への展開を容易かつ安全に行うことができる車椅子の提供。
【解決手段】 本発明の車椅子1は、左右一対の側フレーム11,12と、この側フレーム11,12の前部に回転自在に取り付けられた前輪13と、前記側フレーム11,12の後部に回転自在に取り付けられた後輪14と、前記側フレームを互いに連結する一対のクロスメンバー18a,18bとを備える。クロスメンバー18a,18bはX状に配されてその交差部分で回動可能に連結されるとともに、端部を側フレーム11,12に回動可能に連結されている。また、クロスメンバー18a,18bの交差部分には、展開アシスト部材2が連結してあり、展開アシスト部材2に踏力等の力を加えることにより、クロスメンバー18a,18bを回動させることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の側フレームと、この側フレーム間に設けられた座部と、前記側フレームの前部にそれぞれ回転自在に取り付けられた前輪と、前記側フレームの後部にそれぞれ回転自在に取り付けられた後輪と、前記側フレームを互いに連結する少なくとも一対のクロスメンバーとを備え、前記一対のクロスメンバーをX状に配してその交差部分を回動可能に連結するとともにクロスメンバーの端部を前記側フレームに回動可能に連結することにより、クロスメンバーの回動によって側フレームを近接あるいは離間させて折り畳みあるいは展開が可能に構成された車椅子であって、
前記クロスメンバーの交差部分に展開アシスト部材を連結したことを特徴とする車椅子。
【請求項2】
展開アシスト部材は、前後方向に延びて設けられ、クロスメンバーよりも前後方向何れかまたは両方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
展開アシスト部材の端部には、足踏み用のペダルが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車椅子。
【請求項4】
左右一対の側フレームと、この側フレーム間に設けられた座部と、前記側フレームの前部にそれぞれ回転自在に取り付けられた前輪と、前記側フレームの後部にそれぞれ回転自在に取り付けられた後輪と、前記側フレームを互いに連結する少なくとも一対のクロスメンバーとを備え、前記一対のクロスメンバーをX状に配してその交差部分を回動可能に連結するとともにクロスメンバーの下端部を前記側フレームに回動可能に連結することで、クロスメンバーの回動によって側フレームを近接あるいは離間させて折り畳みあるいは展開が可能に構成された車椅子であって、
前記クロスメンバーの上端部は前記側フレームにそれぞれ着脱可能に支持されたシートパイプに固定されており、このシートパイプには上方に突出して操作者が把持可能な把手を設けたことを特徴とする車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み式の車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、折り畳み式の車椅子としては、特許文献1および特許文献2に開示された車椅子が知られている。ここでは、本発明の要部に関連する部分の構成および作用のみを特許文献1の用語を用いて紹介する。この従来の車椅子10は、図6および図7に示すように、左右一対の側フレーム11,12を備えている。それぞれの側フレーム11,12は、前後方向に延びるベースパイプ11a,12aと、このベースパイプ11a,12aの上方にあって前後方向に延びるシートサイドパイプ11b,12bと、ベースパイプ11a,12aの後部とシートサイドパイプ11b,12bの後部とを連結する後輪取付部11c,12cとを備えている。それぞれの側フレーム11,12の前部には、前輪13が回転自在に取り付けられると共に、後輪取付部11c,12cには後輪14が回転自在に取り付けられている。また、それぞれの側フレーム11,12は、開閉可能に構成されたクロスリンク状のクロスフレーム15によって連結されている。このクロスフレーム15は、一対のシートパイプ16,17、前クロスメンバー対18、後クロスメンバー対19を備えて成る。前クロスメンバー対18と後クロスメンバー対19は、それぞれ2本のクロスメンバー18a,18b,19a,19bをX状に交差させた状態で各交差部分(クロスメンバー18a,18b,19a,19bの中央部)を回転自在に軸着した構成であり、これら前後クロスメンバー対18,19の上端には前記シートパイプ16,17が前後方向に延びて固定されている。また、これら前後クロスメンバー対18,19の下端部は、前記ベースパイプ11a,12aに回動可能に軸着されている。さらに、前記シートパイプ16,17は、シートサイドパイプ11b,12bにそれぞれ取り付けられた前座受具20と後座受具21に支持されるようになっており、両シートパイプ16,17には車椅子利用者の座部となる座シート22が架け渡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-63131公報
【特許文献2】特許第6313927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車椅子10は、前後クロスメンバー対18,19が回動することで側フレーム11,12を近接させて折り畳んだ形態にすることができる。この折り畳まれた状態において、シートパイプ16,17はクロスメンバー18a,18b,19a,19bの回動を受けて前座受具20と後座受具21から離れて上方に持ち上げられる。このような前後クロスメンバー対18,19の回動動作によるシートパイプ16,17の上方遷移は、特許文献2にも示されている。そして、使用時には前後クロスメンバー対18,19を回動させて椅子の形態に展開する訳であるが、その際は、側フレーム11,12と一体の手押しハンドル23,23を操作して側フレーム11,12を離間させるよう、前後クロスメンバー対18,19を回動させる。しかし、左右両方の後輪14,14が接地した状態では各側フレーム11,12を離間させるのは容易ではなく、かといって、車椅子10を少し傾けて片側の後輪14を浮かせた状態で側フレーム11,12を操作するのも難しい。側フレーム11,12には後輪14,14以外にも多くの構成部品が取り付けられており、しかも手押しハンドル23,23はクロスフレーム15から離れた位置にあるため、片側の後輪14を浮かせても前後クロスメンバー対18,19を回動させるには、相当の腕力を要する。このように、従来の車椅子10は、折り畳んだ状態から椅子の形態への展開が困難であるという問題を有していた。これに対し、シートパイプ16,17に力を加えれば、直接、前後クロスメンバー対18,19に力を加えることができるため、車椅子10の展開が比較的容易になる。しかし、これだと車椅子10が椅子形態に開いた段階でシートパイプ16,17とシートサイドパイプ11b,12bとの間、あるいはシートパイプ16,17と前座受具20・後座受具21との間に手指を挟んでしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、折り畳んだ状態から椅子形態への展開を容易かつ安全に行うことができる車椅子の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明の車椅子は、左右一対の側フレームと、この側フレーム間に設けられた座部と、前記側フレームの前部にそれぞれ回転自在に取り付けられた前輪と、前記側フレームの後部にそれぞれ回転自在に取り付けられた後輪と、前記側フレームを互いに連結する少なくとも一対のクロスメンバーとを備え、前記一対のクロスメンバーをX状に配してその交差部分を回動可能に連結するとともにクロスメンバーの端部を前記側フレームに回動可能に連結することにより、クロスメンバーの回動によって側フレームを近接あるいは離間させて折り畳みあるいは展開が可能に構成された車椅子であって、前記クロスメンバーの交差部分に展開アシスト部材を連結したことを特徴とする。この構成によれば、展開アシスト部材に踏力等の力を加えることにより、クロスメンバー対に力を直接付加することができる。
【0006】
また、前記展開アシスト部材は、前後方向に延びて設けられ、その端部がクロスメンバーよりも前後方向何れかに突出していることが望ましく、さらに、展開アシスト部材の端部には、足踏み用のペダルが設けられていることが望ましい。これにより、車椅子が折り畳まれた状態でも展開アシスト部材に力を加えやすくなる。
【0007】
また、本発明は上記目的を達成するため、左右一対の側フレームと、この側フレーム間に設けられた座部と、前記側フレームの前部にそれぞれ回転自在に取り付けられた前輪と、前記側フレームの後部にそれぞれ回転自在に取り付けられた後輪と、前記側フレームを互いに連結する少なくとも一対のクロスメンバーとを備え、前記一対のクロスメンバーをX状に配してその交差部分を回動可能に連結するとともにクロスメンバーの下端部を前記側フレームに回動可能に連結することで、クロスメンバーの回動によって側フレームを近接あるいは離間させて折り畳みあるいは展開が可能に構成された車椅子であって、前記クロスメンバーの上端部は前記側フレームにそれぞれ着脱可能に支持されたシートパイプに固定されており、このシートパイプには上方に突出して操作者が把持可能な把手を設けたことを特徴とする。この構成によれば、把手に力を加えることによりクロスメンバー対に回動する力を直接付加することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、展開アシスト部材や把手によってクロスメンバー対に直接的に力を付加することが可能になるため、車椅子を折り畳んだ状態から椅子の形態に展開する場合にクロスメンバー対を回動させやすくなり、車椅子の展開を容易に行えるようになる。また、展開アシスト部材や把手を設けたことで車椅子の展開時にシートパイプを握って操作することもなくなり、シートパイプとシートサイドパイプとの間、あるいはシートパイプと前座受具・後座受具との間に手指を挟んでしまう危険もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る車椅子の正面図である。
図2】本発明に係る車椅子の背面図である。
図3図1のA-A線に係る断面図である。
図4】本発明に係る車椅子の折り畳み状態を示す一部切欠正面図である。
図5】本発明に係る車椅子の他の例の説明用断面図である。
図6】従来の車椅子の正面図である。
図7図6のB-B線に係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態を説明する。図1ないし図3において、1は車椅子であり、特許文献1および特許文献2に示されたものと構成はほとんど同じである。異なるのは、クロスフレーム15に展開アシスト部材2を設けた点である。このため、本実施形態においては、この展開アシスト部材2周辺の構造についてのみ説明を行うものとし、その他の構成については、特許文献1および特許文献2の内容を援用するものとする。また、背景技術で述べた車椅子10と同じ構成部品には同じ符号を付す。
【0011】
本車椅子1において、クロスフレーム15の前クロスメンバー対18を構成する2本のクロスメンバー18a,18bは、X状に交差して配置され、その交差部分を回動可能に軸支されている。また、後クロスメンバー対19を構成する2本のクロスメンバー19a,19bについても、前クロスメンバー対18と同様にX状に交差して配置され、その交差部分を回動可能に軸支されている。
【0012】
前記クロスメンバー18a,19aの下端部は、左側の側フレーム12のベースパイプ12aに回動可能に軸着され、またクロスメンバー18b,19bの下端部は、右側の側フレーム11のベースパイプ11aに回動可能に軸着されている。また、クロスメンバー18a,19aの上端には、右側のシートパイプ16が前後に延びて固定されており、クロスメンバー18b,19bの上端には、左側のシートパイプ17が前後に延びて固定されている。このシートパイプ16,17により、前後のクロスメンバー対18,19の上端が左右それぞれで連結される構造となっている。
【0013】
側フレーム11,12のシートサイドパイプ11b,12bには、前記シートパイプ16,17を着脱可能に支持する前座受具20と後座受具21がそれぞれ取り付けられている。これら受具20,21は、その上面にシートパイプ16,17が嵌合可能な断面半円状の溝を前後方向に形成した構成であり、車椅子1が椅子形態を成している時、シートパイプ16,17は対応する受具20,21の半円溝に嵌合して支持される。これにより、前後クロスメンバー対18,19はそれ以上側フレーム11,12を離間させる方向に回動できなくなっている。
【0014】
前記展開アシスト部材2は、クロスメンバー18a,18bの交差部分に回動自在に垂下して連結された支持部材3と、クロスメンバー19a,19bの交差部分に回動自在に垂下して連結された支持部材4と、これら支持部材3,4の下端に固定されることで車椅子1の前後方向に延びて配されたアシストアーム5とを有して成る。前記アシストアーム5は、後クロスメンバー対19よりも後方側に突出して延びており、その後端部には板状のペダル5aが固定されている。
【0015】
車椅子1は、前述のように展開アシスト部材2のペダル5a(アシストアーム5の後端部)が後クロスメンバー対19から後方側に突出した状態にある。ゆえに、図4に示すように折り畳んだ状態にある車椅子1を椅子形態に展開する場合、展開アシスト部材2のペダル5aを足で踏むことが容易である。このように展開アシスト部材2のペダル5aに踏力を掛けると、アシストアーム5ないし支持部材3,4を通じて各クロスメンバー18a,18b,19a,19bの交差部分を下方に引き下げる力が働く。この時、車椅子1は、後輪14,14が接地しているため、当該力が働いても前後クロスメンバー対18,19の各クロスメンバー18a,18b,19a,19b下端部の位置は高さ方向に変動できない。よって、当該力は専らクロスメンバー18a,18b,19a,19bを回動させる力として働き、クロスメンバー18a,18b,19a,19bは上下両端部が離れる方向に回動する。これを受けてシートパイプ16,17は前座受具20と後座受具21に着座して支持され、車椅子1は椅子形態に展開する。
【0016】
なお、車椅子1をより簡単に展開するには、車椅子1を側方に若干傾けて片側の後輪14を浮かせるとよい。従来は、このようにしても車椅子1を展開する力を加えることが難しかったが、本発明ではペダル5aを足で踏むことで、車椅子1を展開するための力を容易に付加することができる。また、車椅子1の展開に展開アシスト部材2を用いることにより、シートパイプ16,17を直に握って操作せずともよくなるため、シートパイプ16,17とシートサイドパイプ11b,12bとの間、あるいはシートパイプ16,17と前座受具20・後座受具21との間に手指を挟んでしまう危険もなくなる。
【0017】
以上の説明においては、展開アシスト部材2のアシストアーム5が後クロスメンバー対19よりも後方側に突出して延びるように構成したが、アシストアーム5は前クロスメンバー対18よりも前方側に突出して延びるように構成してもよい。この場合は、ペダル5aはアシストアーム5の前端部に設け、折り畳んだ車椅子1の展開操作を車椅子1の前側から行う。また、アシストアーム5は、前後クロスメンバー対18,19よりも前後両方向に突出するように延びて設け、それぞれの端部にペダル5aを設けておいてもよい。このように構成すれば、折り畳んだ車椅子1の展開操作を前後何れの側からでも行うことが可能となる。
【0018】
図5に示したのは、本発明の他の実施形態に係る車椅子100である。この車椅子100には、シートパイプ16,17にそれぞれ上方に突出する把手30が取り付けられている。この把手30は、図5に示したコの字形のもの以外にも、自動車のシフトノブのような握り玉状のものであってもよい。要は、折り畳んだ状態の車椅子を展開する際、操作者がシートパイプを握らずに済む構成であればよい。
【0019】
車椅子を展開する時は、前記把手を握って前後クロスメンバー対に直接力を加えることができ、車椅子の展開を容易に行うことが可能である。また、従来のようにシートパイプを直に握って操作せずともよくなるため、シートパイプとシートサイドパイプ、あるいはシートパイプと前座受具または後座受具の間に手指を挟んでしまう危険もなくなる。
【符号の説明】
【0020】
1 車椅子
2 展開アシスト部材
5 アシストアーム
5a ペダル
11 側フレーム(右側)
12 側フレーム(左側)
13 前輪
14 後輪
15 クロスフレーム
16 シートパイプ(右側)
17 シートパイプ(左側)
18 前クロスメンバー対
18a,18b クロスメンバー
19 後クロスメンバー対
19a,19b クロスメンバー
20 前座受具
21 後座受具
22 座シート
23 ハンドル
30 把手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7