(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174710
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 67/03 20060101AFI20221116BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C08L67/03 ZAB
B29C45/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154908
(22)【出願日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】110116876
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】劉 岳欣
【テーマコード(参考)】
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F206AA24D
4F206AA50A
4F206AB07
4F206AB12
4F206AB14
4F206AC01
4F206JA07
4F206JF01
4F206JL02
4J002CF061
4J002CF062
(57)【要約】
【課題】ポリエステル樹脂組成物の結晶化度及び流動性を効果的に制御すると共に、リサイクルポリエステル粒子の使用量を増加し、プロセスのコストを低減する。
【解決手段】射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物の固有粘度(IV)は、0.5~0.85dL/gである射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物であって、ポリエステル樹脂組成物を100重量%として、ポリエステル樹脂組成物は、50~80重量%のバージンポリエステル粒子と、20~50重量%の改質リサイクルポリエステル粒子とを含有し、改質リサイクルポリエステル粒子は、改質リサイクルポリエステル粒子の総重量を100重量%として、65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸を更に含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有粘度(IV)は、0.5~0.85dL/gである射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物であって、
前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の総重量を100重量%として、
50~80重量%のバージンポリエステル粒子と、
20~50重量%の改質リサイクルポリエステル粒子とを含有し、
前記改質リサイクルポリエステル粒子は、前記改質リサイクルポリエステル粒子の総重量を100重量%として、65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸とを含有する、ことを特徴とする射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
結晶化度は、10~20%である、請求項1に記載の射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
引張強度は、54~64.7MPaである、請求項1に記載の射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
耐衝撃強さは、2.8~3.6kg-cm/cmである、請求項1に記載の射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸とを含有する改質リサイクルポリエステル粒子を提供することと、
前記改質リサイクルポリエステル粒子と、バージンポリエステル粒子とを混合することによって、射出成形材料を製造することとを、含む、ことを特徴とする射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の総重量に基づいて、20~50重量%の前記改質リサイクルポリエステル粒子を含む、請求項5に記載の射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の総重量に基づいて、50~80重量%のバージンポリエステル粒子を含む、請求項5に記載の射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記改質リサイクルポリエステル粒子は、メカニカルリサイクルポリエステル粒子及び/又はケミカルリサイクルポリエステル粒子を含む、請求項5に記載の射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物を用いて、溶融射出成形により形成されてなる、ことを特徴とする射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び射出成形品に関し、特に、収納機器、フック、コンテナ、電気部品などの射出成形に用いる、高い流動比を有するPETポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び射出成形品に関し、更に具体的に、射出成形に用いる、PET収納ボックス用改質粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック製品の使用が大幅に増加するにつれて、大量のプラスチック廃棄物が生じてしまう。プラスチック製品は自然に分解できないため、プラスチックのリサイクル(再生)とリサイクル後の処理方法が非常に重要になっている。
【0003】
リサイクルプラスチックにおいて、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate,PET)は重要であり、PETリサイクルプラスチックは、リサイクルプラスチック全体の約52.4%を占めている。このような大量のPETリサイクルプラスチックに対して、関連分野の技術者は、PETリサイクルプラスチックの処理方法に対する研究を進めている。
【0004】
従来技術において、最も一般的なPETリサイクル方法は、物理的(メカニカル)手段によってPETをリサイクルすることである。当該方法においてはまず、洗浄されたPETリサイクルプラスチックを細かく切断し、高温で溶融し、押出機で押し出して、PET再生ポリエステル粒子(r-PETとも呼ばれる)を得る。
【0005】
環境保護の要求において、PET製品に比較的に多いPETリサイクルポリエステル粒子を含むために、高品質のPETリサイクルポリエステルペレットを大量に使用する必要がある。現在、業界では、物理的なリサイクル方法を使用してPETを回収することは多いが、それにより製造されたリサイクルポリエステル粒子は、製造過程においてスリップ剤や静電接着剤などの機能性成分を添加することができない。したがって、新たなPETバージン粒子を使用し、前記機能性成分を添加する必要がある。
【0006】
そうすると、PET製品におけるPETリサイクルポリエステル粒子の使用比率が減少となり、従来の技術における製造過程において、PETリサイクルポリエステル粒子の添加量は、約20%よりやや少なくなり、即ち、従来の技術において、PETリサイクルポリエステル粒子のみで新たなPET製品を製造することができないと言える。PETリサイクルポリエステル粒子の使用比率が低くすぎると、環境規制を満たさなくて環境ラベルを得られない恐れがある。又、PET製品の製造過程において、新たなPETバージン粒子を使用すると、その後、処理すべくリサイクルPETプラスチックとなるので、リサイクルする必要がある問題が最終的に生じてしまう。
【0007】
故に、組成比の改良により、PETリサイクルポリエステル粒子の使用比率を向上させ、PETバージン粒子の使用を低減しながらPET製品の機能を維持することは、この業界にとって解決しようとする重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びその射出成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物を提供することである。射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の固有粘度(IV)は、0.5~0.85dL/gである射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物であって、ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物を100重量%として、50~80重量%のバージンポリエステル粒子と、20~50重量%の改質リサイクルポリエステル粒子とを含有し、改質リサイクルポリエステル粒子は、改質リサイクルポリエステル粒子の総重量を100重量%として、65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸を含有する。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の結晶化度は、10~20%である。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の引張強度は、54~64.7MPaである。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の耐衝撃強さは、2.9~3.6kg-cm/cmである。
【0013】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供することである。射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法は、改質リサイクルポリエステル粒子を提供することと、前記改質リサイクルポリエステル粒子と、バージンポリエステル粒子とを混合することによって、射出成形材料を製造することとを、含む。なかでも、前記改質リサイクルポリエステル粒子は、改質リサイクルポリエステル粒子の総重量を100重量%として、65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸とを含有する。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の総重量に基づいて、20~50重量%の前記改質リサイクルポリエステル粒子を含む。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の総重量に基づいて、50~80重量%のバージンポリエステル粒子を含む。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、前記改質リサイクルポリエステル粒子は、メカニカルリサイクルポリエステル粒子及び/又はケミカルリサイクルポリエステル粒子を含む。
【0017】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、射出成形品を提供することである。前記射出成形品は、本発明に係る前記ポリエステル樹脂組成物を用いて、溶融射出成形により形成されてなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有利な効果として、本発明に係る射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び射出成形品は、「改質リサイクルポリエステル粒子は、65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸を含有する」といった技術特徴により、ポリエステル樹脂組成物の結晶化度及び流動性を効果的に制御すると共に、リサイクルポリエステル粒子の使用量を増加し、プロセスのコストを低減できる。
【0019】
更に説明すると、改質リサイクルポリエステルの組成比を制御することで固有粘度(IV)を0.5~0.85dL/gにすることによって、金型温度を60℃以下に低減させることができる。改質リサイクルポリエステルの製造において、テレフタル酸及びエチレングリコールの結晶化時間を延長して、改質リサイクルポリエステルの物性及び製造にとって有利であり、また、ポリエステル樹脂組成物におけるバージンポリエステル粒子の使用量を低減しても、同様の物性を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0022】
以下、所定の具体的な実施態様によって「射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び射出成形品」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0023】
本明細書に記載された数値の範囲はいずれも、下限値乃至上限値の全ての値を含むと共に、下限値及び上限値を含む。
【0024】
特に説明しない限り、本明細書に記載されたパーセンテージ(%)はいずれも、重量%であると共に、全ての測定方法は、本願の出願日までの従来の測定方法である。
【0025】
「組成物」との用語は、組成物の材料の混合物と、組成物の材料から生成された反応物及び分解生成物とを含む。
【0026】
「含む」、「含有する」、及び「有する」などの用語を使用する場合に、記載されていない組成分、ステップ又はプロセスを排除するわけではなく、即ち、特に説明しない限り、「含む」、「含有する」、及び「有する」などの用語を使った組成物は、任意の形式で他の添加剤、アジュバント又は化合物を含むことが可能である。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0027】
特筆すべきことは、本明細書における「ポリエステル」、「ポリエステル材料」及び「ポリエステル樹脂」などの用語は、任意のポリエステルであってもよく、特に、芳香族ポリエステルであってもよく、特に、テレフタル酸及びエチレングリコール由来のポリエステル、即ち、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate,PET)であってもよい。
【0028】
リサイクル経済及びプラスチックリサイクルは、市場の発展傾向となっているので、製品におけるPETリサイクルポリエステル粒子の添加量を増加しつつ、機械的特性及び加工性を維持すると共に、材料のコストの要求を満たすことは、プラスチックのリサイクルにおいて解決しようとする重要な課題となっている。
【0029】
PETポリエステル樹脂組成物は、容器などの用途に応用することができる。ポリエステル樹脂組成物は通常、射出成形、押出成形などにより、金型を用いて成形されることができる。例えば、射出成形は、ポリエステル樹脂組成物を加熱することなどにより溶融させて、溶融した組成物を金型に注入して、それを冷却・硬化することにより成形体を製造する方法である。
【0030】
本発明は、収納機器、フック、コンテナ、電気部品などの高い流動比を有する射出成形品に用いられ、固有粘度(IV)が0.5~0.85dL/gであり、且つ高い流動比で低い収縮率という特性を有する、PETポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0031】
本発明が採用する一つの技術的手段は、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物を提供することである。射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の固有粘度(IV)が、0.5~0.85dL/gである射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物であって、前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物を100重量%として、50~80重量%のバージンポリエステル粒子と、20~50重量%の改質リサイクルポリエステル粒子とを含有し、改質リサイクルポリエステル粒子は、改質リサイクルポリエステル粒子の総重量を100重量%として、65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸とを含有する。
【0032】
本発明の一つの実施形態において、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の結晶化度は、10~20%である。
【0033】
本発明の一つの実施形態において、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の引張強度は、54~64.7MPaである。
【0034】
本発明の一つの実施形態において、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の耐衝撃強さは、2.9~3.6kg-cm/cmである。
【0035】
[バージンポリエステル粒子]
バージンポリエステル粒子(virgin polyester resin)は、現有の新しいポリエステルマスターバッチであり、好ましくは、バージンポリエステル粒子の固有粘度(IV)は、0.64~0.8dL/gである。前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物を100重量%として、50~80重量%のバージンポリエステル粒子を含み、好ましくは、50~70重量%であり、より好ましくは、50~60重量%であり、更により好ましくは、50重量%である。本発明に係る技術方案によって、バージンポリエステル粒子を低減し、環境保護の要求を満たすことができる。
【0036】
[改質リサイクルポリエステル粒子]
具体的に、リサイクルポリエステル粒子は、メカニカルリサイクルポリエステル粒子及び/又はケミカルリサイクルポリエステル粒子を含んでもよい。
【0037】
まず、再利用可能なリサイクルポリエステル粒子を得るための、ポリエステル樹脂のリサイクル方法として、様々なタイプの廃ポリエステル樹脂材料を収集することを含む。前記廃ポリエステル樹脂材料の種類、色及び用途に基づいて分類を行い、また、前記廃ポリエステル樹脂材料は、荷造りプレスを行った後に、廃棄物処理プラントに搬送される。本実施形態において、前記廃ポリエステル樹脂材料は、リサイクルペットボトル(recycled PET bottles)であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0038】
次に、前記廃ポリエステル樹脂材料に付けた他のオブジェクト(例えばボトルキャップ、ラベル、及び接着剤)を除去する。前記廃ポリエステル樹脂材料に付けた他のオブジェクトが分離された後に、このような廃ポリエステル樹脂材料を切断、粉砕すると共に、浮選により異なる材質であるボトル口、ライナー及びボディを分離する。また、粉砕した廃ポリエステル樹脂材料を乾燥することによって、処理したリサイクルポリエステル材料、例えば、リサイクルペットボトル(r-PET)のボトルフレークを得られて、その後の製造プロセルを行うことができる。
【0039】
また、リサイクルポリエステル材料として、ペットボトル類以外に、フィルムから回収された切れ端、離型剤を含むリサイクルフィルム、及び繊維の切れ端であってもよい。前記リサイクルポリエステル材料は、フィルムの切れ端、回収された離型フィルム及び繊維の切れ端などのリサイクル材料に、破砕と溶融を行った後に製造されたリサイクルポリエステル粒子であり、コストが比較的に低いとなる。
【0040】
説明すべきことは、本発明に係る他の実施形態において、前記リサイクルポリエステル材料として、例えば、処理したリサイクルポリエステル材料の市販品であってもよく、その後の製造プロセスにとって有利となる。
【0041】
次に、本発明に係る1つの実施形態において、リサイクルポリエステルの製造方法は、メカニカルリサイクルによるポリエステル材料(例えば、ペットボトルのボトルフレーク、フィルム、繊維)に対して造粒を行うことにより、複数のメカニカルリサイクルポリエステル粒子を得ることと、ケミカルリサイクルによるポリエステル粒子に対して造粒を行うことにより、複数のケミカルリサイクルポリエステル粒子を得ることと、を含む。
【0042】
メカニカルリサイクルの方法としては、リサイクルポリエステル材料(例えば、ペットボトルのボトルフレーク)を切断し、切断したボトルフレークを溶融して溶融混合物を得て、次に、一軸スクリュー押出機又は二軸スクリュー押出機で造粒を行うことにより、メカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチを製造することができる。混練造粒装置において、ねじ速度スクリュー速度を200~1000rpm、造粒径を2.5mmにするように、混練押出を行う。
【0043】
本発明に係る1つの実施形態において、メカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチ(physically recycled polyester masterbatches)は、レギュラーメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチを含む。「レギュラーメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチ」とは、メカニカルリサイクル(物理的再生法)により製造されたポリエステルマスターバッチであると共に、機能性添加剤を添加しなかったものである。本実施形態において、レギュラーメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチは、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含む。
【0044】
尚、メカニカルリサイクルの過程において、溶融混合物に機能性添加剤、例えば、スリップ剤、顔料又は艶消し剤を添加してもよい。それによって、異なる機能を有する改質メカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチを製造することができる。
【0045】
例えば、スリップ剤としては、二酸化ケイ素、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、シリコーン、アクリル及びそれらの組成物であってもよいが、本発明はこれらに制限されるものではない。又、スリップ剤の粒子サイズは、2μmより小さい。本実施形態において、スリップ剤は、球状であるためより優れた光透過性を有する。尚、溶融混合物にスリップ剤を添加することによって、スリップ剤を含むメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチを製造することができる。本実施形態において、スリップ剤を含むメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチは、リサイクルポリエチレンテレフタレート及びスリップ剤を含む。
【0046】
例えば、顔料は、着色顔料または着色添加剤であってもよいが、本発明はこれらに制限されるものではない。着色添加剤の具体例として、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン、硫酸バリウム又は炭酸カルシウムであってもよいが、本発明はこれらに制限されるものではない。尚、溶融混合物に顔料を添加することによって、顔料を含むメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチを製造することができる。本実施形態において、顔料を含むメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチは、リサイクルポリエチレンテレフタレート及び顔料を含む。
【0047】
例えば、艶消し剤としては、二酸化ケイ素、有機物、シリコーン、アクリル及びそれらの組成物であってもよいが、本発明はこれらに制限されるものではない。又、1つの好ましい実施形態において、艶消し剤は球状であるため光散乱を増強することができる。尚、溶融混合物に艶消し剤を添加することによって、艶消し剤を含むメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチを製造することができる。本実施形態において、艶消し剤を含むメカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチは、リサイクルポリエチレンテレフタレート及び艶消し剤を含む。
【0048】
具体的に、改質メカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチの製造工程は、リサイクルポリエステル材料を溶融することにより、第1の溶融混合物を得ることと、第1の溶融混合物にポリブチレンテレフタレートを添加することにより、第2の溶融混合物を得ることと、第2の溶融混合物を再成形することにより、改質メカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチを得ることとを、含む。改質メカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチの主成分は、リサイクルポリエチレンテレフタレートであると共に、ポリブチレンテレフタレートを更に含有する。前記メカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチは、前記メカニカルリサイクルポリエステルマスターバッチの総重量を100重量%として、0~30の重量%のポリブチレンテレフタレートを含有する。
【0049】
ケミカルリサイクル(化学的再生法)においては、リサイクルポリエステル材料(例えば、ペットボトルのボトルフレーク)を切断し、切断したボトルフレークを解重合液に投入することにより、リサイクルポリエステル材料におけるポリエステル分子鎖を分解させて、リサイクルポリエステル材料の解重合を達成すると共に、分子鎖が低いポリエステル成分、及び1つの二酸単位と2つのグリコール単位との組み合わせによるエステルモノマー(例えば、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET))を得られて、次に、オリゴマー混合物を分離・精製した後に再重合を行うことにより、ケミカルリサイクルポリエステルマスターバッチを製造する。本実施形態において、レギュラーケミカルリサイクルポリエステルマスターバッチは、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含む。
【0050】
より詳しく説明すると、解重合液は、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びそれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、水は、加水分解として用いられるものであり、メタノール、エタノール、エチレングリコール及びジエチレングリコールは、アルコーリシスとして用いられるものである。1つの好ましい実施形態において、解重合液は、エチレングリコールを含む。
【0051】
尚、ケミカルリサイクルの過程において、オリゴマー混合物に前記機能性添加剤、例えば、スリップ剤、顔料又は艶消し剤を添加して、再重合により異なる機能を有する改質ケミカルリサイクルポリエステルマスターバッチを製造することができる。
【0052】
[改質リサイクルポリエステル粒子]
機械的特性及び加工性に対する影響を考量すると、ポリエステル樹脂組成物におけるリサイクルポリエステル粒子の添加量は、効果的に増加することができない。尚、通常、市販のリサイクルポリエステル材料は、その材料の特性を把握・改良しにくいので、改質リサイクルポリエステル粒子の組成を調整することにより、ポリエステル樹脂組成物の結晶化度及び流動性を効果的に制御すると共に、プロセスのコストを低減できる。
【0053】
より具体的に説明すると、改質リサイクルポリエステル粒子は、65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸とを含有する。イソフタル酸を調整することにより、テレフタル酸及びエチレングリコールの結晶時間を延長させることができ、それによって、改質リサイクルポリエステル粒子の製造にとって有利となる。
【0054】
より詳しく説明すると、エチレングリコールとしては、ニーズに応じて、脂肪族ジオールを用いてもよい。例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
【0055】
特定の改質リサイクルポリエステル粒子の配合比により、ポリエステル樹脂組成物の結晶化度は10~20%であり、ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性の固有粘度(IV)は0.5~0.85dL/gであり、高い流動比で低い収縮率を有する製品の成形に用いられる。
【0056】
図1に示すように、本発明は、射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法を更に提供する。射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物の製造方法は、改質リサイクルポリエステル粒子を提供すること(ステップS100)と、前記改質リサイクルポリエステル粒子と、バージンポリエステル粒子とを混合することによって、射出成形材料を製造すること(ステップS200)と、を含む。
【0057】
より詳しく説明すると、ステップS100は、リサイクルポリエステル材料(例えば、ペットボトルフレーク、回収されたフィルム)を切断することと、切断したボトルフレークを溶融して溶融混合物を得ることと、又は処理したリサイクルポリエステル粒子を購入することとを、更に含んでもよい。
【0058】
前記ステップS200において、保存の便利性の観点から、改質リサイクルポリエステル粒子とバージンポリエステル粒子とを混合することで製造された射出成形材料は、ポリエステル粒子になるように成形されてもよい。
【0059】
また、射出成形ステップS300を更に含んでもよい。射出成形ステップS300において、前記射出成形材料を、金型を有する射出成形機に導入し、溶体になるように溶融させて、金型に注入することにより成形品を形成し、次に、前記成形品に冷却処理を行う。改質リサイクルポリエステル粒子とバージンポリエステル粒子とを配合することで固有粘度(IV)を0.5~0.85dL/gにすることにより、金型温度を40℃以下にすることができ、好ましくは、金型温度は25~40℃である。
【0060】
好ましくは、前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の総重量に基づいて、20~50重量%の前記改質リサイクルポリエステル粒子と50~80重量%の前記バージンポリエステル粒子とを、含有する。
【0061】
更に、本発明は、前記ポリエステル樹脂組成物及び前記製造方法により製造された射出成形品を提供する。例えば、射出成形に用いるPET収集バックス用改質プラスチック粒子が挙げられる。
【0062】
しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例0063】
[製造例]
表1には、本発明に係る改質リサイクルポリエステル粒子の製造例を示す。表1に記載された組成を密閉式混合機で均一に混合して、所定温度でスクリュー押出混練造粒機で、粒子状になるように所定の粒子径を有する改質リサイクルポリエステル粒子を製造した。好ましくは、前記所定温度は、250~280℃であり、スクリュー押出混練造粒機の設定について、スクリュー速度を900~1000rpm、造粒径を2.5mmにするように混練押出を行うことによって、回転刃によるホットカットで粒子状且つ粒子径2~3mmである改質リサイクルポリエステル粒子を製造することができる。イソフタル酸を添加することにより、テレフタル酸及びエチレングリコールの結晶時間を延長させることができ、それによって、改質リサイクルポリエステル粒子の製造にとって有利となる。
【0064】
【0065】
[実施例]
表2には、本発明に係るポリエステル樹脂組成物の組成配合比、及び射出成形品に対する物性テストを示す。本実施例において、表2に記載された配合比に基づいて均一に混合して上述した原料の混合物を得た後に、射出成形機を用いて40℃で射出成形を行うことにより、射出成形品を得た。
【0066】
【0067】
製造例1に係る改質リサイクルポリエステル粒子を用いた実験例1及び実験例2は、実験例3に比較すると、より優れた耐衝撃性、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率を有し、収納機器、フック、コンテナ、電気部品などの射出成形に用いる、高い流動比を有するPETポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び射出成形品に適用する。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0068】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る射出成形に用いるポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び射出成形品は、「改質リサイクルポリエステル粒子は、65~72重量%のテレフタル酸と、28~31重量%のエチレングリコールと、0.1~5重量%のイソフタル酸を含有する」といった技術特徴により、ポリエステル樹脂組成物の結晶化度及び流動性を効果的に制御すると共に、リサイクルポリエステル粒子の使用量を増加することができるので、プロセスのコストを低減できる。
【0069】
更に説明すると、改質リサイクルポリエステル粒子とバージンポリエステル粒子とを配合することで固有粘度(IV)を0.5~0.85dL/gにすることによって、金型温度を50℃以下に低減させることができる。改質リサイクルポリエステル粒子の製造において、配合比を調整し、即ち、イソフタル酸を添加することにより、テレフタル酸及びエチレングリコールの結晶時間を延長させることができ、それによって、改質リサイクルポリエステル粒子の製造にとって有利となる。
【0070】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。