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特開2022-174731信号処理システム、および振動構造角速度センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174731
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】信号処理システム、および振動構造角速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5677 20120101AFI20221116BHJP
【FI】
G01C19/5677
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077293
(22)【出願日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】21275057
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508296554
【氏名又は名称】アトランティック・イナーシャル・システムズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Atlantic Inertial Systems Limited
【住所又は居所原語表記】Clittaford Road, Southway, Plymouth, PL6 6DE, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ルーク グリープ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン タウンゼンド
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ダーストン
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB02
2F105BB04
2F105BB08
2F105BB09
2F105BB13
2F105CC04
2F105CD03
2F105CD05
2F105CD11
(57)【要約】
【課題】 改良された信号処理システムを提供する。
【解決手段】 振動構造角速度センサ(101)用の信号処理システム(100)であって、振動構造(102)、振動構造角速度センサを共振周波数で振動させるための一次駆動トランスデューサ(103)、及び共振周波数で振動構造角速度センサ(101)の振動を検出するための一次駆動ピックオフトランスデューサ(105)を有する、振動構造角速度センサ。信号処理システムは、一次駆動トランスデューサ(103)の駆動信号周波数を設定するように構成されたデジタル信号処理システム(109)、共振周波数を示す入力を受信し、共振周波数の第1の倍数での第1の周期信号を生成するよう構成される電圧制御発振器(111)、及び第1の周期信号を受信し、共振周波数の第2の倍数で第2の周期信号を生成するように構成された第1の位相ロックループ(113)を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動構造角速度センサ(101)用の信号処理システム(100)であって、振動構造(102)、前記振動構造角速度センサを共振周波数で振動させるための一次駆動トランスデューサ(103)、及び前記共振周波数で前記振動構造角速度センサ(101)の振動を検出するための一次ピックオフトランスデューサ(105)を有し、
前記一次駆動トランスデューサ(103)の駆動信号周波数を設定するように構成されたデジタル信号処理システム(109)、
前記共振周波数を示す入力を受信し、前記共振周波数の第1の倍数で第1の周期信号を生成するように構成された電圧制御発振器(VCO)(111)、
前記第1の周期信号を受信し、前記共振周波数の第2の倍数で第2の周期信号を生成するように構成された第1の位相ロックループ(113)であって、前記第2の倍数は前記第1の倍数よりも大きい、前記第1の位相ロックループ、
前記第1の周期信号によって設定された第1の速度で前記一次ピックオフトランスデューサ(105)から一次ピックオフ信号をサンプリングし、前記デジタル信号処理システム(109)への一次ピックオフデータ入力を生成するように構成されたアナログデジタル変換器(ADC)(115)であって、前記第2の周期信号が、前記デジタル信号処理システム(109)への前記一次ピックオフデータ入力を生成するときに、前記ADC(115)によってクロック信号として使用される、前記アナログデジタル変換器、及び
前記デジタル信号処理システム(109)から前記第2の周期信号によって設定された第2の速度で前記駆動信号周波数を受信し、前記一次駆動トランスデューサ(103)に適用される駆動信号波形を生成するように構成されたデジタルアナログ変換器(DAC)(118)であって、前記駆動信号波形は、前記第1の周期信号によって設定された前記第1の速度で生成され、前記第2の周期信号は、前記駆動信号波形を生成するときに前記DAC(118)によってクロック信号として使用される、前記デジタルアナログ変換器、
を備える、信号処理システム。
【請求項2】
前記第2の周期信号を受信し、前記共振周波数の第3の倍数で第3の周期信号を生成するように構成された第2の位相ロックループ(117)であって、前記第3の倍数は前記第2の倍数よりも大きい、前記2の位相ロックループ(117)をさらに含み、
前記第3の周期信号は、計算中に前記デジタル信号処理システム(109)によってクロック信号として使用され、前記駆動信号周波数を前記共振周波数と同期して設定する、請求項1に記載の信号処理システム(100)。
【請求項3】
前記デジタル信号処理システム(109)は、第2のデジタルアナログ変換器(DAC)(119)によって二次駆動トランスデューサ(106)に適用される二次駆動信号の二次駆動信号周波数を設定するように構成される、請求項1に記載の信号処理システム。
【請求項4】
前記デジタル信号処理システム(109)への前記一次ピックオフデータ入力が、前記共振周波数を前記第1の周期信号と比較することに基づいて、前記デジタル信号処理システム(109)から前記VCO(111)への前記共振周波数を示す前記入力を与えるために使用される、請求項1に記載の信号処理システム。
【請求項5】
前記一次ピックオフトランスデューサ(105)からの前記共振周波数での前記一次ピックオフ信号、及び前記VCO(111)からの前記第1の周期信号を受信し、前記共振周波数を前記第1の周期信号と比較することに基づいて前記VCO(111)に前記共振周波数を示す前記入力を与えるように構成されたループフィルタ(120)をさらに備える、請求項1に記載の信号処理システム。
【請求項6】
前記第1の位相ロックループ(113)を含むフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)(203)をさらに備え、
前記第2の周期信号が、前記FPGA(203)によってクロック信号として使用される、請求項1に記載の信号処理システム(100)。
【請求項7】
前記FPGA(203)が最大値を有するカウンタ(207)を含み、
前記カウンタ(207)の増分速度が、前記振動構造角速度センサ(101)の前記共振周波数と同期している、請求項6に記載の信号処理システム(100)。
【請求項8】
前記第1の位相ロックループ(113)によって受信される前に、前記第1の周期信号の周波数を乗算するように構成された乗算器(201)をさらに備える、請求項1に記載の信号処理システム(100)。
【請求項9】
前記一次ピックオフトランスデューサ(105)から前記一次ピックオフ信号をサンプリングするときに、前記アナログデジタル変換器(ADC)(115)によって適用される前に、前記第2の周期信号の周波数を低減するように構成された分周器(205)をさらに備える、請求項1に記載の信号処理システム(100)。
【請求項10】
前記一次駆動トランスデューサ(103)へ適用される駆動信号波形を生成するときに、前記デジタルアナログ変換器(DAC)(118)によって適用される前に、前記第2の周期信号の前記周波数を低減するように構成された分周器(205)をさらに備える、請求項1に記載の信号処理システム(100)。
【請求項11】
第1の動作モードで、前記第1の位相ロックループ(113)が外部発振器(114)に接続されて、前記受信された第1の周期信号の前記周波数を検証し、
第2の動作モードで、前記第1の位相ロックループ(113)が前記外部発振器(114)から切断される、請求項1に記載の信号処理システム(100)。
【請求項12】
請求項1に記載の信号処理システム(100)を含む、振動構造角速度センサ(101)。
【請求項13】
MEMSリング共振器構造を含む、請求項12に記載の振動構造角速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、振動構造ジャイロスコープ及び角速度センサのタイミング制御、より具体的には、振動構造ジャイロスコープの信号処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途では、振動構造の角速度センサ(ジャイロスコープとして公知でもある)は、微小電気機械システム(MEMS)技術を使用して構築され、それにおいて、デバイスがシリコンウェーハから製造され、ガラス基板ウェーハに接着できるか、別様には2枚のガラス基板層の間に挟まれる。
【0003】
平面のシリコンリング共振器の形で振動構造を利用するコリオリ型MEMSジャイロスコープは、バイアスと全体的な安定性の点で、最高のパフォーマンスを発揮するデバイスの1つである。MEMSジャイロスコープのパフォーマンスが向上するにつれて、光ファイバーやスピニングマスジャイロスコープなどのより高価で大型のデバイスを置き換えるために、より要求の厳しい用途で一層使用されるようになっている。ただし、MEMSジャイロスコープのパフォーマンスは、MEMS共振器の共振周波数の時間と温度の安定性によって、依然として制限されている。MEMSジャイロスコープの共振周波数の変動は、出力信号の測定中にエラーを引き起こす可能性がある。そのタイミングは、通常、固定周波数の発振器を使用して設定される。MEMS共振周波数は温度によって変化するため、各サイクルで出力信号がサンプリングされるポイントがシフトし、ずれたサンプリングポイントによって引き起こされる位相のエラーのために、測定信号のバイアスシフトが発生する。
【0004】
温度によるMEMS共振周波数の変動によって引き起こされるタイミングエラーを減らす必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、冒頭で述べた種類の信号処理システムを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、振動構造角速度センサ用の信号処理システムであって、振動構造、振動構造角速度センサを共振周波数で振動させるための一次駆動トランスデューサ、及び共振周波数で振動構造角速度センサの振動を検出するための一次ピックオフトランスデューサを有し、
一次駆動トランスデューサ駆動信号周波数を設定するように構成されたデジタル信号処理システム、
共振周波数を示す入力を受信し、共振周波数の第1の倍数で第1の周期信号を生成するように構成された電圧制御発振器(VCO)、
第1の周期信号を受信し、共振周波数の第2の倍数で第2の周期信号を生成するように構成された第1の位相ロックループであって、第2の倍数は第1の倍数よりも大きい、前記第1の位相ロックループ、
第1の周期信号によって設定された第1の速度で一次ピックオフトランスデューサから一次ピックオフ信号をサンプリングし、デジタル信号処理システムへの一次ピックオフデータ入力を生成するように構成されたアナログデジタル変換器(ADC)であって、第2の周期信号が、デジタル信号処理システムへの一次ピックオフデータ入力を生成するときに、ADCによってクロック信号として使用される、アナログデジタル変換器、及び
デジタル信号処理システムから第2の周期信号によって設定された第2の速度で駆動信号周波数を受信し、一次駆動トランスデューサに適用される駆動信号波形を生成するように構成されたデジタルアナログ変換器(DAC)であって、駆動信号波形は、第1の周期信号によって設定された第1の速度で生成され、第2の周期信号は、駆動信号波形を生成するときに前記DACによってクロック信号として使用される、デジタルアナログ変換器、を備える、信号処理システムが提供される。
【0007】
このような信号処理システムでは、電圧制御発振器(VCO)を使用して、ピックオフ及び駆動動作の基本タイミングを確立できる。一次ピックオフトランスデューサで検出された振動構造角速度センサの共振周波数から信号処理システムのクロック信号及びサンプリングレートを直接導出することにより、すべての信号処理を振動構造角速度センサの共振周波数に同期させることができることが理解されよう。このようにして、(例えば温度変化の結果としての)共振周波数の変動は、サンプリング中に自動的に考慮されるため、ずれているサンプリングポイントによって引き起こされる位相のエラーを回避できる。対照的に、以前の実装では、外部発振器を使用して、一次ピックオフ信号をサンプリングするためのベースタイミングを導出していたが、これは、温度によって変化する共振周波数を考慮していない。これにより、位相エラーのためにジャイロスコープ出力に大きなバイアスシフトが発生する可能性がある。
【0008】
第1の周期信号が第2の周期信号よりも低い周波数を持つ利点は、ADCで一次ピックオフ信号を正確にサンプリングし、DACを更新して駆動信号波形を生成する重大な課題について、クロック信号として使用すると、ジッターが少なくなり、ノイズが少なくなることである。DACは、ADCと同様の速度で、つまり第2の周期信号によって設定された第2の速度で更新される。
【0009】
本開示の1つまたは複数の例によれば、信号処理システムは、第2の周期信号を受信し、共振周波数の第3の倍数で第3の周期信号を生成するように構成された第2の位相ロックループであって、第3の倍数は第2の倍数よりも大きい、第2の位相ロックループをさらに含む。少なくともいくつかの例では、第3の周期信号は、計算中にデジタル信号処理システムによってクロック信号として使用され、駆動信号周波数を共振周波数と同期して設定する。これにより、デジタル信号処理システムには、共振周波数のサイクル内でピックオフサンプルから必要な駆動信号を計算できる十分な処理サイクルが確保される。これにより、いずれかの非同期信号/ノイズがピックオフトランスデューサからの信号の精度を損なうのを防ぐことができる。
【0010】
クロックとして使用される第3の周期信号により、デジタル信号処理システムは、ピックオフ信号に基づいて複雑な計算を実行し、第2の速度よりも速い速度で駆動信号周波数を設定できる。第3の周期信号が第2の周期信号よりも高い周波数を有する利点は、デジタル信号処理システムによって使用されるクロック信号が、共振周波数と同期したまま、一次ピックオフデータを分析するときにより高い周波数であるということである。
【0011】
本開示の1つまたは複数の例によれば、デジタル信号処理システムは、第2のデジタルアナログ変換器(DAC)によって二次駆動トランスデューサに適用される二次駆動信号の二次駆動信号周波数を設定するように構成される。このような例では、第2のデジタルアナログ変換器(DAC)は、デジタル信号処理システムから第2の周期信号によって設定された第2の速度で駆動信号周波数を受信し、二次駆動トランスデューサに適用される第2の駆動信号波形を生成するように構成され、第2の駆動信号波形は、第1の周期信号によって設定された第1の速度で生成され、第2の周期信号は、第2の駆動信号波形を生成するときに第2のDACによってクロック信号として使用される。これにより、共振周波数と同期する閉ループ動作が可能になる。
【0012】
本開示の1つまたは複数の例によれば、デジタル信号処理システムへの一次ピックオフデータ入力は、共振周波数と第1の周期信号の比較に基づいて、デジタル信号処理システムから電圧制御発振器への共振周波数を示す入力をもたらすために使用される。この比較に基づいて、VCOによって生成された第1の周期信号の周波数が振動構造角速度センサの共振周波数と同期したままになるように、共振周波数を示す入力を調整することができる。このようにして、第1の周期信号に基づくサンプリング時間とクロック信号は、共振周波数が変化すると更新される。これにより、確実に信号処理システムが振動構造角速度センサの共振周波数に同期したままになる。いくつかの例では、デジタル信号処理システムは、第1の周期信号の代わりに第2及び/または第3の周期信号と共振周波数を比較することに基づいて、デジタル信号処理システムから電圧制御発振器への共振周波数を示す入力をもたらし得る。これらの例は、信号処理システムのデジタル実装に適している。
【0013】
本開示の1つまたは複数の例によれば、信号処理システムは、一次ピックオフトランスデューサからの共振周波数での一次ピックオフ信号と、VCOからの第1の周期信号とを受信し、共振周波数を第1の周期信号と比較することに基づいて、共振周波数を示す入力をVCOに与えるように構成されたループフィルタ(例えば、アナログループフィルタ)を含み得る。ループフィルタは、VCOによって生成された第1の周期信号の周波数が振動構造角速度センサの共振周波数と同期したままであることを保証するために、共振周波数を示す入力を与えることができる。これらの例は、信号処理システムのアナログ実装に適している。
【0014】
本明細書に開示される信号処理システムは、アナログ及びデジタル構成要素の任意の適切な組み合わせを含み得る。いくつかの例では、電圧制御発振器はデジタル制御されている。いくつかの例では、第1の位相ロックループがアナログ回路として実装されることが想定されている。様々な例で、第1の位相ロックループ(PLL)は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして、例えば特定用途向け回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの他の構成可能な回路によって実装される。FPGAは、駆動信号波形を生成するときにDACによってクロック信号として使用される第2の周期信号の生成を支援できる便利な実装として選択できる。
【0015】
本開示の1つまたは複数の例では、信号処理システムは、第1の位相ロックループを含むフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含み、第2の周期信号は、FPGAによってクロック信号として使用される。このような例では、FPGAを使用して、信号処理システムのピックオフ及び駆動動作の基本タイミングを確立できる。FPGAは、FPGAのクロック信号が振動構造角速度センサの共振周波数に同期するように、第1の位相ロックループによって生成された第2の周期信号をクロック信号として使用することができる。
【0016】
信号処理システムがFPGAを含むいくつかの例では、FPGAは最大値を有するカウンタを含み得、カウンタの増分速度は、振動構造角速度センサの共振周波数と同期し得る。FPGAのカウンタの増分レートは、振動構造角速度センサの共振周波数に同期するように設定でき、例えば、温度が変化する結果として発生する共振周波数のいずれかの偏差を補正できる。カウンタは、FPGAのクロックサイクルごとに増分する場合がある。FPGAのカウンタの最大値は、電圧制御発振器によって生成される共振周波数の第1の倍数の値と等しくなるように設定できる。例えば、電圧制御発振器が共振周波数の96倍で第1の周期信号を生成する場合、カウンタの最大値は96に等しくなり得る。このような例では、FPGAのカウンタは、増分の最大値に達した後にロールオーバーして、サンプリングの連鎖が繰り返されるように構成できる。これにより、一次ピックオフデータがアナログデジタル変換器からデジタル信号処理システムに入力され、デジタル信号処理システムからの新しいデータがDACを更新するようにトリガされる場合がある。
【0017】
本開示の1つまたは複数の例では、信号処理システムは、第1の位相ロックループによって受信される前に第1の周期信号の周波数を乗算(例えば2倍)するように構成された乗算器(例えばダブラー)を備える。乗算器は、電圧制御発振器から第1の周期信号を受信することができ、第1の周期信号の周波数の所定の倍数で中間周期信号を生成することができる。第1の位相ロックループは、第1の周期信号の代わりに中間信号を受信することができる。1つまたは複数の例では、乗算器は、排他的論理和(EX-OR)論理ゲートを含むダブラーであり得る。第1の位相ロックループ(PLL)に与えられる前に第1の周期信号の周波数を乗算することにより、より高い最小ロック周波数を有する位相ロックループを信号処理システムに実装することが、有利にも可能になる。例えば、FPGAがPLLをロックするために最小周波数(例えば1.5MHz)を必要とする場合があることがわかっている。これにより、振動構造角速度センサの共振周波数との同期を依然維持しながら、より高いクロックレートを実現できる場合がある。
【0018】
本開示の1つまたは複数の例では、信号処理システムは、一次ピックオフトランスデューサから一次ピックオフ信号をサンプリングするときに、アナログデジタル変換器(ADC)によって適用される前に、第2の周期信号の周波数を低減するように構成された分周器をさらに備える。分周器は、第1の位相ロックループから第2の周期周波数で信号を受信することができ、より低い周波数で信号をADCに出力することができる。これにより、ADCは、第2の周期信号によって設定された速度よりも低いサンプリングの速度を使用できるようになるが、少なくとも共振周波数の基本信号と基本信号の最低周波数の高調波の目的の数(例えば、3)を識別するために、依然として十分なデータをキャプチャできる。分周器は、第2の周期信号の周波数の係数で信号を出力するように構成されているため、ADCによって受信され、ピックオフ信号のサンプリングに使用される信号は、共振周波数に同期したままである。
【0019】
本開示の1つまたは複数の例では、信号処理システムは、一次駆動トランスデューサに適用される駆動信号波形を生成するときに、デジタルアナログ変換器(DAC)によって適用される前に第2の周期信号の周波数を低減するように構成された分周器を備える。分周器は、第1の位相ロックループから第2の周期周波数で信号を受信することができ、より低い周波数で信号をDACに出力することができる。これにより、DACは、第2の周期信号によって設定された速度よりも低い速度で駆動信号波形を生成できる場合がある。分周器は、第2の周期信号の周波数の係数で信号を出力するように構成されているため、DACによって受信され、駆動信号波形の生成に使用される信号は、共振周波数に同期したままである。DACによって受信された信号は、ADC測定の精度が損なわれるのを防ぐためにADCサンプルとインターリーブされるように調整することができる。
【0020】
本開示の1つまたは複数の例では、信号処理システムは、異なるモードで動作させることができる。少なくともいくつかの例では、第1の動作モードでは、第1の位相ロックループが外部発振器に接続されて、受信された第1の周期信号の周波数を検証する。また、第2の動作モードでは、第1の位相ロックループが外部発振器から切断される。第1の動作モードは、第1の位相ロックループが、電圧制御発振器からの第1の周期信号の入力周波数を外部発振器に対して検証すること、すなわち、チェックすることを可能にする初期動作モードであり得る。第2の動作モードは、第1の動作モードの後に使用することができる。第2の動作モードでは、システムが第1の位相ロックループによって生成された第2の周期信号のタイミングを使用するように効果的に切り替わるため、つまり、システムは今や共振周波数に同期しているため、第1のフェーズロックループは外部発振器から切断される。少なくともいくつかの例では、システム内のいずれの不要なノイズをも除去するために外部発振器が無効になっている。
【0021】
本明細書には、上に開示された信号処理システムを開始する方法も開示されている。上記の第1の動作モードを使用する初期セットアッププロセスでは、第1の周期信号の周波数は、外部発振器に対する第1の位相ロックループ(PLL)によって検証される。第1の動作モードは、初期設定または診断の目的で使用できる。第1のPLLがロックされると、システムが今や共振周波数と同期しているため、外部発振器は第2の動作モードで切断される。第2の動作モードは、振動構造角速度センサの使用中の通常の動作モードであり得る。
【0022】
本開示は、本明細書に開示されるような信号処理システムを含む振動構造角速度センサにまで及ぶ。本開示の1つまたは複数の例では、振動構造角速度センサは、MEMSセンサである。本開示の1つまたは複数の例では、振動構造角速度センサは、従順な支持構造によって支持された平面のリングを含むMEMSリング共振器構造を含み、これにより、加えられた力によって変形したときに平面のリングが弾性的に動くことができる。
【0023】
振動構造角速度センサは、任意の適切な数の一次駆動トランスデューサ及び一次ピックオフトランスデューサを含み得ることを理解されたい。したがって、いくつかの例では、一次駆動トランスデューサ及び一次ピックオフトランスデューサは、それぞれ一次駆動トランスデューサの対及び一次ピックオフトランスデューサの対によって、置き換えられ得る。
【0024】
本開示の1つまたは複数の例では、振動構造角速度センサは、角速度が振動構造角速度センサの回転軸の周りに加えられたときにコリオリの力によって誘発される二次振動モードで、振動構造角速度センサの振動を検出するための二次ピックオフトランスデューサを備える。いくつかのそのような例では、信号処理システムは、第1の周期信号により設定される第1の速度での二次的ピックオフトランスデューサから二次的ピックオフ信号をサンプリングし、デジタル信号処理システムへの二次ピックオフデータ入力を生成するように構成される第2のアナログデジタル変換器(ADC)をさらに備えられ、第2の周期信号は、デジタル信号処理システムへの二次ピックオフデータ入力を生成するときに第2のADCによってクロック信号として使用され、デジタル信号処理システムは、二次ピックオフデータ入力に基づいて振動構造角速度センサの角速度を判定するように構成され得る。
【0025】
振動構造角速度センサが二次ピックオフトランスデューサを含むいくつかの例では、信号処理システムは、二次モードで振動構造角速度センサの振動をゼロにするように配置された二次駆動トランスデューサをさらに含む。いくつかのそのような例では、デジタル信号処理システムは、第2の駆動トランスデューサの信号周波数でゼロ化する振幅を設定するよう構成され、信号処理システムは、デジタル信号処理システムから第2の周期信号によって設定された第2の速度でゼロ化の信号を受信し、二次駆動トランスデューサに適用されるゼロ化信号波形を生成するように構成される第2のデジタルアナログ変換器(DAC)をさらに含み得、ゼロ化する信号波形は、第1の周期信号によって設定された第1の速度で生成され、第2の周期信号は、ゼロ化する信号波形を生成するときに第2(DAC)によってクロック信号として使用される。
【0026】
二次ピックオフ及び/または二次駆動トランスデューサを含む例では、振動構造角速度センサは、任意の適切な数の二次駆動トランスデューサ及び二次ピックオフトランスデューサを含み得る。したがって、いくつかの例では、二次駆動トランスデューサ及び二次ピックオフトランスデューサは、それぞれ二次駆動トランスデューサの対及び二次ピックオフトランスデューサの対によって、置き換えられ得る。いくつかの例では、二次駆動トランスデューサの1つは、追加の二次ピックオフトランスデューサとして構成されている。これは、信号対雑音比の改善を、有利にも生じる可能性がある。
【0027】
本明細書に記載の任意の態様または実施形態の特徴は、適切な場合はいつでも、本明細書に記載される他の任意の態様または実施形態に適用することができる。異なる実施形態または実施形態のセットについて言及する場合、これらは必ずしも別個ではないが、重複する可能性があることを理解されたい。
【0028】
ここで、添付の図面を参照しながら、本開示の特定の例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示の第1の例による、閉ループ振動構造角速度センサのための信号処理システムを概略的に示す図である。
図2】フィールドプログラマブルゲートアレイを含む、本開示の第2の例による、閉ループ振動構造角速度センサのための信号処理システムを概略的に示す図である。
図3】本開示の例による信号処理システムの動作の同期タイミング図である。
図4】本開示の第2の例による、開ループ振動構造角速度センサのための信号処理システムを概略的に示す図である。
図5】本開示の第3の例による、閉ループ振動構造角速度センサのための信号処理システムを概略的に示す図である。
図6】本開示の第4の例による、開ループ振動構造角速度センサのための信号処理システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1-閉ループ-デジタル信号処理)
図1は、閉ループ動作を実施する本開示の第1の例による、振動構造角速度センサ101のための信号処理システム100を示している。
【0031】
振動構造角速度センサ101は、一次駆動(PD)トランスデューサ103によってその固有共振周波数で振動するように駆動される振動構造102を備える。図1に示される例では、振動構造102は、コンプライアント支持構造によって支持された平面リングを含むリング共振器構造であり、これにより、加えられた力によって変形されたときに平面リングが弾性的に動くことができる。しかし、信号処理システム100は、ビーム、音叉、シリンダ、半球シェルなどの他の振動構造にも同様に適用可能であることが理解されよう。共振周波数での振動構造102の振動は、一次ピックオフ(PPO)トランスデューサ105によって検出される。検出された信号は、デジタル信号処理システム109を使用して処理され、この処理に基づいて、一次駆動信号は、信号処理システム100によって調整され、以下に説明するように、振動構造102の共振運動を維持する。
【0032】
振動構造角速度センサ101が振動構造102の回転軸の周りを回転すると、コリオリの力は、エネルギーを振動構造102の二次モードの振動に結合し、二次モードの振動の振幅は、適用された角速度に比例する。そのようなコリオリ誘導振動は、二次ピックオフ(SPO)トランスデューサ104を使用して検出され、適用された角速度を表すSPOトランスデューサ104からの信号は、デジタル信号処理システム109によって処理されて、振動構造角速度センサ101が経る角の動きの速さを計算する。図1に示される閉ループシステムでは、二次ピックオフ信号も信号処理システム100によって処理されて二次駆動信号を生成し、二次駆動トランスデューサ106によって振動構造102に適用されて、二次モードの振動構造102の誘導振動をゼロにする。
【0033】
図1に示される信号処理システム100は、電圧制御発振器(VCO)111、第1の位相ロックループ(PLL)113、第2の位相ロックループ117、ならびに第1及び第2のアナログデジタル変換器(ADC)115及び116を含み、一次ピックオフトランスデューサ105及び二次ピックオフトランスデューサ104によってそれぞれ検出された信号をサンプリングし、一次駆動データ及び二次駆動データに変換するために使用される。信号処理システム100はまた、アナログデジタル変換器115及び116からの一次及び二次ピックオフデータを処理し、一次及び二次駆動データを生成するように構成されたデジタル信号処理(DSP)システム109を含む。デジタル信号処理システム109によって生成された一次及び二次駆動データは、第1及び第2のデジタルアナログ変換器(DAC)118及び119に出力される。このデータに基づいて、第1及び第2のデジタルアナログ変換器118及び119は、振動構造102の共振運動を維持するために一次駆動トランスデューサ103に与えられる駆動信号、及び二次駆動トランスデューサ106に与えられ、二次モードでの振動構造102のいずれかの誘導振動をゼロにするゼロ化信号を生成する。
【0034】
動作中、デジタル信号処理システム109は、振動構造102の共振周波数F0で駆動信号を生成する。この駆動信号は、最初は外部発振器114によって与えられるクロック信号を使用して設定することができるが、動作可能になると、駆動信号の基礎となるクロック信号が、以下に説明するように、一次ピックオフトランスデューサ105で測定された共振周波数を使用して生成される。駆動信号は、第1のデジタルアナログ変換器118に与えられ、そこで、一次駆動トランスデューサ103に渡されて振動構造102を励起して共振周波数F0(例えば、12KHz)で振動する駆動波形を生成するために使用される。
【0035】
振動構造102の振動は、一次ピックオフトランスデューサ105で検出され、その結果、第1のアナログデジタル変換器115に入力されるアナログ信号が生成される。アナログデジタル変換器115は、共振周波数よりも大きい速度で一次ピックオフトランスデューサ105からの信号をサンプリングし、少なくとも基本信号及び共振周波数の3つの最低周波数高調波を特定するために十分なデータポイントがキャプチャされるように、この例でサンプリングの速度が選択される。
【0036】
第1のADC115(及び第2のADC116)によって使用されるサンプリングの速度は、以下に説明するように、電圧制御発振器111によって設定される。振動構造102の動きを表すサンプリングされた信号は、一次ピックオフデータの形でADC115からデジタル信号処理システム109に出力される。このデータは、振動構造102の共振を維持するために必要な一次駆動信号を生成するために、デジタル信号処理システム109によって処理される。これは、一次駆動信号と一次ピックオフ信号の間の適切な位相シフトが維持されることを保証することによって達成される。一次駆動信号と一次ピックオフ信号との間の位相シフトは、一次駆動トランスデューサ103及び一次ピックオフトランスデューサ105の方向及び位置に応じて、及び/または一次ピックオフトランスデューサ105の構成に応じて、0、90、180または270度であり得る。一次ピックオフデータはまた、以下で説明するように、信号処理システム100のための複数のクロック信号を生成するために使用される。
【0037】
一次ピックオフデータに基づいて、デジタル信号処理システム109は、共振周波数を示す信号を電圧制御発振器111に与え、これは、共振周波数F0の第1の倍数j(例えば、共振周波数の96倍)で第1の周期信号を生成する。
【0038】
第1の周期信号は、第1のADC115及び第2のADC116に与えられ、信号がそれぞれ一次及び二次ピックオフトランスデューサ105、104からサンプリングされる速度、ならびに一次及び二次ピックオフデータが、デジタル信号処理システム109に出力される速度を設定するのに使われる。第1の周期信号はまた、第1のDAC118及び第2のDAC119に与えられて、一次駆動トランスデューサ103及び二次駆動トランスデューサ106の駆動信号波形が生成される速度を設定する。さらに、第1の周期信号は、以下に説明するように、信号処理システム100のクロック信号を生成するために使用される。
【0039】
第1の周期信号は、VCO111から第1の位相ロックループ113に出力され、これは第1の周期信号の周波数の倍数kで、すなわち周波数j*k*F0(式中、kは例えば16)で、第2の周期信号を生成する。信号処理システム100の初期設定時に、第1の周期信号の周波数は、電圧制御発振器111からの第1の周期信号の周波数を、外部発振器114からの検証信号に対してチェックすることによって検証され得る。第1の周期信号の周波数が確認されると、外部発振器114は、第1の位相ロックループ113から切断され、システムのいずれかの不要なノイズを除去するために無効にされる。次に、信号処理システム111は、第2の周期信号に基づくタイミングの使用に切り替わる。これを達成するために、第2の周期信号は、第1及び第2のADC115、116、ならびに第2の周期信号をクロック信号として使用する第1及び第2のDAC118及び119への入力として与えられる。
【0040】
このように第2の周期信号を使用することにより、ピックオフ信号のサンプリング、及び駆動信号の生成を、振動構造102の共振周波数に同期した速度で実行することが可能になる。このようにして、例えば温度の変化の結果として、振動構造102の共振周波数が変化する場合、ピックオフ信号がサンプリングされるタイミングも変化する。したがって、温度による共振周波数のいずれかの変動をキャンセルすることができ、サンプリングにおける位相エラーを低減し、信号処理システム100のバイアスのパフォーマンスを改善する。
【0041】
第1のPLL113からの信号はまた、第2のPLL117に渡され、それは、第2の周期信号の周波数の倍数l、すなわち周波数j*k*l*F0(式中、lは例えば5)で、第3の同期信号を生成する。第3の周期信号は、デジタル信号処理システム109への入力として与えられ、デジタル信号処理システム109によってクロック信号として使用される。第3の周期信号は、一次ピックオフトランスデューサ105によって測定された共振周波数に基づいて生成されるので、一次駆動信号もまた、共振周波数と同期して生成され得る。この方法でデジタル信号処理システム109のクロック信号を生成することはまた、従来技術の信号処理システムで通常使用されるような外部発振器の必要性を排除する。
【0042】
図2-閉ループ-FPGA、分周器、ダブラーを含むデジタル信号処理)
いくつかの実施形態では、信号処理システムは、最小入力周波数を有し得る位相ロックループなどの特定の商用コンポーネントの要件に対応するために、追加のハードウェアを含み得る。
【0043】
図2は、以下で説明するように、追加のハードウェアコンポーネントを含む信号処理システム200の例を示している。図2に見られるように、信号処理システム200は、図1に示される信号処理システム100のすべての構成要素を含み、乗算器201と、第1の位相ロックループ113及び分周器205を備えるフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)203との追加を伴う。図2図1に関連して前述した項目が含まれている限り、同様の項目には同じ参照符号が付けられ、詳細には説明されない。
【0044】
図1に示される信号処理システム100とは対照的に、図2に示される信号処理システム200では、電圧制御発振器111からの第1の周期信号は、第1の位相ロックループ113に直接与えられない。代わりに、第1の周期信号が最初に乗算器201に与えられる。
【0045】
乗算器201(図2にEX-OR論理ゲートなどのダブラーとして示されている)は、第1の位相ロックループ113によって受信される前に、第1の周期信号の周波数を2倍にするように構成される。これにより、VCO111によって出力される周波数よりも高い最小ロック周波数を有する位相ロックループを信号処理システム200(例えば、示されているようにFPGA)に実装することが可能になる。乗算器201は、倍数、例えば第1の周期信号の2倍の周波数で中間周期信号を生成し、これを第1のPLL113に出力する。図1に関連して説明したように、第1のPLL113は、第1の周期信号の周波数の倍数kで第2の周期信号を生成する。信号処理システム200では、第2の周期信号がFPGA203にクロック信号を与える。第2の周期信号はまた、第2のPLL117に信号を与え、図1に示す信号処理システム100に関連して説明したのと同等の方法で、第1及び第2のADC115及び116ならびに第1及び第2のDAC118及び119によってクロック信号として使用される。
【0046】
第2の周期信号は、FPGA203の分周器205にも与えられる。
【0047】
分周器205は、サンプリング及び信号生成速度を設定するために使用される前に、第2の周期信号の周波数を低減するように構成される。このようにして、分周器205は、信号が一次及び二次ピックオフ変換器105、104からサンプリングされる速度が、第2の周期信号の周波数の係数である任意の(より低い)周波数として設定され得るように、第1のADC115及び第2のADC116によって受信される前に、第2の周期信号の周波数を低減する。理想的には、一次及び二次ピックオフ信号に使用されるサンプリングの速度は、ジッターを回避するように設定される。同様に、第2の周期信号の周波数は、第1のDAC118及び第2のDAC119に与えられ、一次駆動トランスデューサ103及び二次駆動トランスデューサ106の駆動信号波形が生成される速度を設定する前に低下させる。理想的には、駆動信号波形が生成される速度は、ノイズを制限するように設定される。
【0048】
FPGA203は、信号処理システム200にピックオフ及び駆動動作を実行するように指示するために使用される。FPGA203は、VCO111から受信された第1の周期信号に基づいて、振動構造102の共振周波数に同期する速度で増分するように構成されたカウンタ207を備える。カウンタ207は、一次ピックオフデータが第1のADC115によって生成される速度に従って設定された最大値を有する。カウンタがロールオーバーすると(すなわち、最大値を超えたとき)、信号がFPGA203からデジタル信号プロセッサ109に送信され、一次ピックオフデータが第1のADC115から入力される準備ができていること、及び新しい一次駆動データが、第1のDAC118によって必要とされることを示す。このようにして、信号処理システム200のピックオフ及び駆動動作に関連するデータの処理は、共振周波数に同期し続けている。
【0049】
図3-同期タイミング図)
本明細書に開示されるデジタル処理システムが、クロック信号及びサンプリングの速度を振動構造102の共振周波数に同期して設定することを可能にする方法を説明したので、次に、デジタル信号処理システム100の動作のタイミングの例を、図3を参照して説明する。
【0050】
図3は、図1に示されるデジタル処理システム100の動作の同期タイミング図を示す。図3では、周波数j*F0でVCO111によって出力される第1の周期信号の例が、線300で示されている。
【0051】
一次ピックオフ信号から判定された共振周波数を表す信号が曲線301として示される一方で、共振周波数の最初の3つの高調波(2*F0、3*F0、4*F0)に対応する信号が、それぞれ曲線302~304として示されている。これらの信号のそれぞれの周波数の識別を可能にするために第1のADC115によって使用されるサンプリング時間は、それぞれサンプリング時間311~314に示されている。これらのタイミングは、第1の周期信号のタイミングを基準にして設定される(図3では300として示されている)。したがって、第1の周期信号の周波数が変化する場合(例えば、温度の変化により振動構造102の共振周波数が変化する結果として)、ピックオフ信号がサンプリングされる時間も変化する。このようにして、共振周波数の変動がサンプリング中に自動的に考慮され、ずれているサンプリングポイントによって位相のエラーが引き起こされる可能性が減少する。
【0052】
一次駆動トランスデューサ103及び二次駆動トランスデューサ106に適用される駆動信号のタイミングがまた、それぞれ線305及び307として図3に示されている。ピックオフ信号について説明したのと同等の方法で、駆動信号のタイミングはまた、第1の周期信号のタイミングに基づいて設定され、したがって、振動構造102の共振周波数が変化すると、変化する。
【0053】
図4-開ループ-デジタル信号処理)
図1に示される信号処理システム100は、閉ループの動作を実施するが、同等の信号処理システムを開ループシステムに適用することができる。図4は、そのような開ループシステムに適用される信号処理システム300の例を示している。
【0054】
図4に見られるように、信号処理システム300は、二次駆動トランスデューサ103及び第2のデジタルアナログ変換器119を除いて、図1に示される信号処理システム100のすべての構成要素を含む。図4図1に関連して前述した項目が含まれている限り、同様の項目には同じ参照符号が付けられ、詳細には説明されない。
【0055】
図1に示される信号処理システム100に関連して説明されるように、図4の信号処理システム300は、一次駆動(PD)トランスデューサ103によってその自然共振周波数で振動するように駆動される振動構造角速度センサ101と、一次モードで振動構造102の振動を検出するように構成された一次ピックオフ(PPO)トランスデューサ105とを含む。一次駆動信号は、図1に示される信号処理システム100に関連して説明されるように、振動構造102の共振運動を維持するように信号処理システム300によって調整される。コリオリでの誘導の振動が、二次ピックオフ(SPO)トランスデューサ104を使用して検出され、それがデジタル処理システム109に適用された角速度を表す信号を与える。しかし、図1に示される信号処理システム100とは異なり、信号処理システム300には二次駆動トランスデューサは必要とされない。二次モードの振動がゼロになるフォースフィードバックモードで動作する代わりに、前記振動は、二次ピックオフ(SPO)トランスデューサ104によって単純に検出され、デジタル信号処理システム109によって処理されて、振動構造102の回転軸の周りの振動構造角速度センサ101が経る角運動の速度を計算する。図4には示されていないが、二次駆動トランスデューサを含まないことにより、図1及び2に示される閉ループシステムにおける二次駆動トランスデューサ106の位置が、追加の二次ピックオフトランスデューサなどの他の構成要素に利用可能になることが理解されよう。このように追加の二次ピックオフトランスデューサとして図1及び2に示される閉ループシステムの二次駆動トランスデューサ106を使用することにより、二次ピックオフ信号における信号対雑音比の改善を達成することができる。
【0056】
図5-閉ループ-アナログ信号処理)
本開示のシステムのいくつかの例では、電圧制御発振器111は、デジタル信号処理システム109によって制御されないが、代わりに、デジタル処理システム109によって最初に処理されることなく、一次ピックオフトランスデューサ105から直接受信された信号に基づいて制御される。これは、図5に関連して以下で説明されるように、アナログループフィルタ120を使用して達成される。
【0057】
図5は、本開示の第4の例による、振動構造角速度センサ101のための信号処理システム400を示している。図5に示される信号処理システム400は、図1に関連して前述したのと同じ構成要素を含むが、さらに、アナログループフィルタ120を含む。図5に示される例では、電圧制御発振器111の動作周波数は、デジタル信号処理システム109から受信された入力信号に基づいて設定されていない。代わりに、電圧制御発振器111の動作周波数は、アナログループフィルタ120からの信号に基づいて設定される。
【0058】
図1に関連して説明したように、振動構造102は、共振周波数F0(例えば、10KHz)で共振するように駆動され、振動構造102の振動は、一次ピックオフトランスデューサ105で検出される。得られたアナログ信号は、上記と同等の方法で、第1のアナログデジタル変換器115に入力される。しかし、図1に示される例とは対照的に、結果として生じるアナログ信号は、電圧制御発振器111に与えられる出力信号を生成するアナログループフィルタ120にも与えられる。次に、電圧制御発振器111は、アナログループフィルタ120から受信した信号に基づいて、周波数j*F0で第1の周期信号を生成する。電圧制御発振器111によって生成される第1の周期信号は、第1のADC115及び第2のADC116によって使用されるサンプリングレート、すなわち駆動信号波形が第1のDAC118及び第2のDAC119によって生成されるレートを設定するため、及び図1及び4に関連して説明したのと同等の方法で、信号処理システム100のクロック信号を生成するために使用される。
【0059】
しかし、図1、2及び4に示される例とは対照的に、第1の周期信号はまた、アナログループフィルタ120に出力され、そこでその位相は、第1の周期信号が共振周波数と同期したままであることを保証するために、共振周波数で一次ピックオフトランスデューサ105から受信する信号と比較する。
【0060】
例えば温度変化の結果として共振周波数が変化した場合、アナログループフィルタ120は、第1の周期信号と新しい共振周波数での一次ピックオフトランスデューサ105からの信号との間の位相の差を検出し、それに応じて電圧制御発振器111に与えられる出力信号を調整する。この調整により、電圧制御発振器111は、新しい共振周波数j*F0の倍数で第1の周期信号を生成する。このようにして、例えば振動構造角速度センサ101の温度変化に応答して共振周波数が変化した場合でも、第1の周期信号は常に共振周波数に同期している。
【0061】
図6-開ループ-アナログ信号処理)
図5に示される信号処理システム400は閉ループ動作を実施するが、アナログループフィルタ120を含む同等の信号処理システムを開ループシステムに適用することがまた可能である。図6は、そのような開ループシステムに適用される信号処理システム500の例を示している。
【0062】
図6に見られるように、信号処理システム500は、図5に見られる二次駆動トランスデューサ106及び第2のデジタルアナログ変換器119を除いて、図5に示される信号処理システム400のすべての構成要素を含む。図6の図が、図5に関連して前述した項目を含んでいる限りにおいて、同様の項目には同じ参照符号が付けられ、詳細は説明されない。
【0063】
図5に示される信号処理システム400に関連して説明されるように、図6の信号処理システム500は、一次駆動トランスデューサ103によってその自然共振周波数で振動するように駆動される振動構造角速度センサ101と、一次モードで振動構造102の振動を検出するように構成された一次ピックオフトランスデューサ105とを含む。一次駆動信号は、図5に示される信号処理システム400に関連して説明されるように、振動構造102の共振運動を維持するように信号処理システム500によって調整される。コリオリでの誘導の振動が、二次ピックオフ(SPO)トランスデューサ104を使用して検出され、それがデジタル処理システム109に適用された角速度を表す信号を与える。しかし、図5に示される信号処理システム400とは異なり、信号処理システム500には二次駆動トランスデューサは必要とされない。図4に示す開ループシステムに関連して説明したように、二次モードの振動がゼロになるフォースフィードバックモードで動作する代わりに、前記振動は、二次ピックオフ(SPO)トランスデューサ104によって単純に検出され、デジタル信号処理システム109によって処理されて、振動構造102の回転軸の周りの振動構造角速度センサ101が経る角運動の速度を計算する。二次駆動トランスデューサ106を含まないことにより、図5に示される閉ループシステムにおける二次駆動トランスデューサ106の位置が、追加のピックオフトランスデューサなどの他の構成要素に利用可能になることが理解されよう。このような追加の二次ピックオフトランスデューサとして図5に示される閉ループシステムの二次駆動トランスデューサ106を使用することにより、二次ピックオフ信号における信号対雑音比の改善を達成することができる。
【0064】
本開示は、その1つ以上の特定の例を説明することによって示されているが、これらの例に限定されないことが当業者によって認識される。添付の「特許請求の範囲」の範囲内での多くの変形例及び修正が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6