(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174752
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】CREBBP関連癌の治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20221116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221116BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221116BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221116BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20221116BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20221116BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20221116BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20221116BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20221116BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00 ZNA
A61P35/02
A61K31/713
A61K31/7105
C07K16/18
C12N15/113 Z
C12Q1/06
A61K38/02
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022125388
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2019502205の分割
【原出願日】2017-07-25
(31)【優先権主張番号】62/366,249
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513057795
【氏名又は名称】エピザイム インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】グラシアン,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】リビッヒ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】ハービー,ダレン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】癌の治療に使用するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】癌の治療に使用するための医薬組成物であって、当該医薬組成物が:(i)CREBBPアンタゴニスト;及び(ii)1つ又は複数の薬学的に許容される担体を含み、前記癌が、EP300中の少なくとも1つの変異によって特徴付けられることを特徴とする医薬組成物である。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を治療する方法において、対象にCREBBP阻害療法を投与するステップを含み、前記対象は、癌を有するか又は癌を有すると診断されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記癌は、EP300中の少なくとも1つの突然変異によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記対象にCREBBPアンタゴニストを治療有効量で投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記対象からサンプルを取得するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、少なくとも1つの突然変異は、前記対象から取得されたサンプル中のEP300遺伝子産物で検出されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、前記対象から取得されたサンプルにおけるEP300遺伝子産物中の前記少なくとも1つの突然変異を検出するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記癌は、腫瘍を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法において、前記腫瘍は、固形腫瘍であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法において、前記腫瘍は、結腸、肺、食道、膀胱、乳房、子宮内膜、子宮、子宮頸部、腎臓、中枢神経系、肝臓、卵巣、膵臓、皮膚、胃、頭部及び頸部、又は上気道の腫瘍であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記癌は、血液系悪性腫瘍であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法において、前記癌は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記CREBBPアンタゴニストを投与するステップは、CREBBP遺伝子産物のレベル及び/又は活性を低減することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記CREBBP遺伝子産物の前記レベル及び/又は活性は、前記CREBBPアンタゴニストの非存在下の前記レベル及び/又は活性と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%だけ低減されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記CREBBP阻害療法は、核酸薬剤、小分子薬剤、又はポリペプチド薬剤から選択されるCREBBPアンタゴニストの投与を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、核酸薬剤CREBBPアンタゴニストは、CRISPR/Cas、siRNA、shRNA、又はmiRNAを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、ポリペプチド薬剤CREBBPアンタゴニストは、抗体又はその断片を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、適切な参照物に対してEP300遺伝子産物の低減されたレベル及び/又は活性によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記突然変異型EP300の前記レベル及び/又は活性は、適切な参照物のレベル及び/又は活性と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%だけ低減されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記適切な参照物は、野生型EP300のレベル及び/又は活性であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、フレームシフト突然変異、スプライス変異体、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、挿入、欠失、又はそれらの組合せを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、V5L、C1201Y、C1385Y、T329R、D1399N、A1437V、G711でのスプライス変異、K1468fs、K1488fs、K291fs、R1234fs、Y1467fs、P1081S、P802L、G1042*、R1055*、R1645*、Q1874E、Q2023*、Q2306E、Q993*、R397*、R86*、R1950G、S1754*、W1509C若しくはY1414C置換、又はこれらの組合せをもたらす突然変異を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、G30V、K423T、R883G、T891P、P2097A、又はE1014*若しくはQ1661*短縮をもたらす突然変異を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、表4に列記される突然変異又は表4に列記される前記突然変異の組合せを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、DNAコピー数の減少によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、EP300のHATドメインの破壊によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、EP300のHATドメインの喪失によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法において、突然変異型EP300は、ミスセンス突然変異によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、前記ミスセンス突然変異は、EP300のHATドメイン内にあることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法において、前記ミスセンス突然変異は、EP300のHATドメインの上流にあることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法において、前記ミスセンス突然変異は、EP300のHATドメインの下流にあることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法において、EP300の突然変異形態は、短縮型突然変異によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項28に記載の方法において、短縮型突然変異は、前記EP300のHATドメインの上流にあることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項1に記載の方法において、EP300の突然変異形態は、EP300遺伝子産物の同型接合性喪失によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項1に記載の方法において、前記CREBBP阻害療法は、腫瘍体積の減少をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項31に記載の方法において、腫瘍体積の減少は、腫瘍細胞のアポトーシス又は壊死の結果であることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項1に記載の方法において、前記対象は、別の癌療法を受けたことがあるか又は受けていることを特徴とする方法。
【請求項37】
癌を治療する方法において、対象からのサンプル中における突然変異型EP300の存在を検出することにより、前記癌を有すると診断された前記対象にCREBBPアンタゴニストを投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、前記対象にCREBBPアンタゴニストを治療有効量で投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法において、前記癌は、腫瘍を含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記腫瘍は、固形腫瘍であることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、前記腫瘍は、結腸、肺、食道、膀胱、乳房、子宮内膜、子宮、子宮頸部、腎臓、中枢神経系、肝臓、卵巣、膵臓、皮膚、胃、頭部及び頸部、又は上気道の腫瘍であることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項37に記載の方法において、前記癌は、血液系悪性腫瘍であることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法において、前記癌は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫であることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項37に記載の方法において、前記CREBBPアンタゴニストを投与するステップは、CREBBP遺伝子産物のレベル及び/又は活性を低減することを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、前記CREBBP遺伝子産物の前記レベル及び/又は活性は、前記CREBBPアンタゴニストの非存在下の前記レベル及び/又は活性と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%だけ低減されることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項44に記載の方法において、CREBBP阻害療法は、核酸薬剤、小分子薬剤、又はポリペプチド薬剤から選択されるCREBBPアンタゴニストの投与を含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法において、核酸薬剤CREBBPアンタゴニストは、CRISPR/Cas、siRNA、shRNA、又はmiRNAを含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法において、ポリペプチド薬剤CREBBPアンタゴニストは、抗体又はその断片を含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、適切な参照物に対してEP300遺伝子産物の低減されたレベル及び/又は活性によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法において、前記突然変異型EP300の前記レベル及び/又は活性は、適切な参照物のレベル及び/又は活性と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%だけ低減されることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項49に記載の方法において、前記適切な参照物は、野生型EP300のレベル及び/又は活性であることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、フレームシフト突然変異、スプライス変異体、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、挿入、欠失、又はそれらの組合せを含むことを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、V5L、C1201Y、C1385Y、T329R、D1399N、A1437V、G711でのスプライス変異、K1468fs、K1488fs、K291fs、R1234fs、Y1467fs、P1081S、P802L、G1042*、R1055*、R1645*、Q1874E、Q2023*、Q2306E、Q993*、R397*、R86*、R1950G、S1754*、W1509C若しくはY1414C置換、又はこれらの組合せをもたらす突然変異を含むことを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、G30V、K423T、R883G、T891P、P2097A、又はE1014*若しくはQ1661*短縮をもたらす突然変異を含むことを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、表4に列記される突然変異又は表4に列記される前記突然変異の組合せを含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、DNAコピー数の減少によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、EP300のHATドメインの破壊によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、EP300のHATドメインの喪失によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項37に記載の方法において、前記突然変異型EP300は、ミスセンス突然変異によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法において、前記ミスセンス突然変異は、EP300のHATドメイン内にあることを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項59に記載の方法において、前記ミスセンス突然変異は、EP300のHATドメインの上流にあることを特徴とする方法。
【請求項62】
請求59に記載の方法において、前記ミスセンス突然変異は、EP300のHATドメインの下流にあることを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項37に記載の方法において、EP300の突然変異形態は、短縮型突然変異によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項63に記載の方法において、前記短縮型突然変異は、EP300のHATドメインの上流にあることを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項37に記載の方法において、EP300の突然変異形態は、EP300遺伝子産物の同型接合性喪失によって特徴付けられることを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項37に記載の方法において、CREBBP阻害療法は、腫瘍体積の減少をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項66に記載の方法において、腫瘍体積の減少は、腫瘍細胞のアポトーシス又は壊死の結果であることを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項37に記載の方法において、前記対象は、別の癌療法を受けたことがあるか又は受けていることを特徴とする方法。
【請求項69】
CREBBPアンタゴニストを識別する方法において、
少なくともCREBBP、CREBBP基質、及びアセチル供与体を含む系を候補CREBBPアンタゴニストと接触させるステップと、
前記CREBBP基質のアセチル化を検出するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項70】
請求項69に記載の方法において、前記CREBBP基質は、ヒストンであることを特徴とする方法。
【請求項71】
請求項69に記載の方法において、前記候補CREBBPアンタゴニストは、前記CREBBP基質のアセチル化が前記候補CREBBPアンタゴニストの非存在下での前記CREBBP基質のアセチル化より小さい場合、CREBBPアンタゴニストとして識別されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
癌の治療のために改善された治療法を開発する必要性がある。個体の突然変異状態は、ユニークな治療の選択肢の機会を提供し得る。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、癌の治療に有用な特定の治療法を提供する。本開示により提供される方法及び組成物は、多様な固形腫瘍の治療及び/又は血液経悪性腫瘍に適用可能であり得る。
【0003】
本開示のいくつかの態様では、CREBBPは、選択的感受性を示す治療標的であり得る。例えば、本開示は、CREBBP阻害療法に対する感受性、例えばCREBBPアンタゴニストによる治療に対する感受性がEP300の低減したレベル及び/又は活性と関連することを明らかにする。本開示は、特に、一部の実施形態において、CREBBP阻害療法に対する感受性が、EP300における1つ又は複数の機能喪失突然変異及び/又は欠失の存在と関連することを明らかにする。
【0004】
さらに、本開示は、EP300レベル及び/又は活性の低減が様々な異なる腫瘍型において高頻度で観測されることも証明する。例えば、本開示は、様々な異なるタイプの腫瘍における特定のEP300変異体(例えば、EP300変異体における特定の機能喪失突然変異及び/又は欠失)の検出を立証する。
【0005】
本開示の特定の実施形態によれば、CREBBP阻害療法の投与は、特定の癌の治療に有用であり、とりわけEP300変異体を担持する対象の癌を治療するのに有効であり得る。
【0006】
一部の実施形態では、本開示は、CREBBP阻害療法の投与がCREBBP遺伝子又は遺伝子産物のレベル及び/又は活性を低減できることを教示する。一部の実施形態では、CREBBP阻害療法は、CREBBPアンタゴニストの投与を含む。一部の実施形態では、CREBBP阻害療法は、腫瘍体積を減少させる。一部の実施形態では、CREBBP阻害療法は、時間の経過と共に腫瘍成長の速度及び/又は程度を低減する。
【0007】
一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、何れの化学的クラスでもあり得る。例えば、一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、1つ又は複数の小分子、ポリペプチド(例えば、抗体)、及び/又は核酸剤を含み得る。一部の実施形態では、核酸CREBBPアンタゴニストは、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、又はmiRNA)を含み得、一部の実施形態では、核酸CREBBPアンタゴニストは、遺伝子修飾因子(例えば、遺伝子編集又は他の遺伝子療法を媒介する因子、例えばクラスター化され、規則的間隔で配置された短い回文配列反復(CRISPR)/Casシステム、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はジンクフィンガーヌクレアーゼなどの遺伝子編集システムの1つ又は複数の成分)を含み得る。
【0008】
一部の実施形態では、EP300突然変異は、遺伝子突然変異又はエピジェネティックマーク(epigenetic mark)の1つ又は複数として発現し、検出可能であり、及び/又はそれによって特徴付けられる。一部の実施形態では、EP300突然変異は、EP300遺伝子又は遺伝子産物(例えば、適切な参照物に対する転写物又はポリペプチドの低減したレベル及び/又は活性として発現し、検出可能し、及び/又はそれによって特徴付けられる。一部の実施形態では、EP300突然変異は、EP300遺伝子又は遺伝子産物の特定の形態の存在又はレベルとして発現し、検出可能であり、及び/又はそれによって特徴付けられる。一部の実施形態では、EP300突然変異は、フレームシフト突然変異、スプライス変異体、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、挿入、逆位、欠失、又はこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、EP300突然変異は、EP300コード領域の上流、下流、又はその領域内の部位に改変を含み得る。一部の実施形態では、EP300突然変異は、EP300のHATドメインの上流、下流、又はその領域内の部位に改変を含み得る。一部の実施形態では、EP300突然変異は、EP300調節領域(例えば、プロモータ、エンハンサー、スプライス部位、又は終結部位)内の部位に改変を含み得る。
【0009】
上の概要は、本明細書に開示される技術の実施形態、利点、特徴、及び使用のいくつかを非限定的に例示することを意図する。本明細書に開示される技術の他の実施形態、利点、特徴、及び使用は、図面、詳細な説明、実施例、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、CREBBPの喪失又は阻害に対する様々な腫瘍細胞株の感受性を示す。
【
図2A】
図2Aは、様々な腫瘍型におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性を示す。
【
図2B】
図2Bは、様々な腫瘍型におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性を示す。
【
図3A】
図3Aは、EP300突然変異癌細胞におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性を実証する。
【
図3B】
図3Bは、EP300突然変異癌細胞におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性を実証する。
【
図3C】
図3Cは、EP300突然変異癌細胞におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性を実証する。
【
図3D】
図3Dは、EP300突然変異癌細胞におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性を実証する。
【
図4A】
図4Aは、EP300の突然変異が様々な癌で共通していることを実証する。
【
図4B】
図4Bは、EP300の突然変異が様々な癌で共通していることを実証する。
【
図5】
図5は、CREBBP突然変異を含むいくつかの細胞株がEP300喪失に対して感受性であることを実証する。
【
図6】
図6は、代表的な野生型CREBBP/EP300タンパク質、代表的なドメイン局在化、及びタンパク質相互作用の描写である。
【
図7A】
図7Aは、EP300突然変異癌細胞におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性をさらに実証する。
【
図7B】
図7Bは、EP300突然変異癌細胞におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性をさらに実証する。
【
図7C】
図7Cは、EP300突然変異癌細胞におけるCREBBPの喪失又は阻害に対する感受性をさらに実証する。
【
図8】
図8は、EP300突然変異がCREBBPの阻害に対する感受性と相関することをさらに実証する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
投与:本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、典型的に、対象又は系統に対する組成物の投与を指す。当業者であれば、適切な状況下において、対象、例えばヒトへの投与のために使用することができる多様な経路を認識するであろう。例えば、一部の実施形態では、投与は、全身又は局所であり得る。一部の実施形態では、投与は、経腸又は非経口投与であり得る。一部の実施形態では、投与は、注射(例えば、筋肉内、静脈内、又は皮下注射)により行われ得る。一部の実施形態では、注射は、ボーラス注射、滴注、灌流、又は注入を含み得る。一部の実施形態では、投与は、局所的であり得る。当業者であれば、本明細書に記載される具体的な療法での使用に適した投与経路を例えばwww.fda.govに列記されているものから認識し、そうしたものとして以下のものが挙げられる:耳介(耳)、口腔、結膜、皮膚、歯、頸管内、洞内(endosinusial)、気管内、腸内、硬膜外、羊膜外(extra-amniotic)、体外、間質(interstitial)、腹部内、羊膜外(intra-amniotic)、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、髄液包内(intrabursal)、心臓内、軟骨内、胸骨内、海綿体内、空洞内、脳内、大槽内、角膜内、冠動脈内、陰茎海綿体、皮内、椎間板内、導管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、病巣内、腔内、リンパ管内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、洞内(intrasinal)、髄腔内、滑液嚢内(intrasynovial)、腱内、精巣内、髄腔内、胸郭内、管内、腫瘍内、鼓室内、子宮内、血管内、静脈内、急速静脈内投与、点滴静注、脳室内、硝子体内、喉頭、経鼻、経鼻胃、眼、経口、口腔咽頭、非経口、経皮、関節周囲、硬膜外(peridural)、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(例えば、吸入)、眼球後、軟組織、クモ膜下、結膜下、皮下、舌下、粘膜下、局所、経皮(transdermal)、経粘膜、経胎盤、経気管、尿管、尿道、又は膣内。一部の実施形態では、投与は、電気浸透、血液透析、浸透、イオントフォレシス、灌注、及び/又は密封包帯法を含み得る。一部の実施形態では、投与は、断続的(例えば、複数回の投与間に時間間隔をあける)投与及び/又は規則的(例えば、個々の投与間に共通する時間間隔をあける)投与を含み得る。一部の実施形態では、投与は、連続的投与を含み得る。
【0012】
薬剤:本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、例えば、小分子、ポリペプチド、核酸、糖、脂質、金属、又はそれらの組合せ若しくは複合体を含む何れかの化学クラスの化合物、分子、又は実体を指し得る。一部の実施形態では、「薬剤」という用語は、ポリマーを含む化合物、分子、又は実体を指し得る。一部の実施形態では、この用語は、1つ又は複数のポリマー部分を含む化合物又は実体を指し得る。一部の実施形態では、「薬剤」という用語は、特定のポリマー又はポリマー部分を実質的に含まない化合物、分子、又は実体を指し得る。一部の実施形態では、この用語は、何れかのポリマー若しくはポリマー部分が欠如しているか、又はそれを実質に含まない化合物、分子、又は実体を指し得る。
【0013】
対立遺伝子:本明細書で使用される場合、「対立遺伝子」という用語は、特定の多形ゲノム遺伝子座の2つ以上の既存の遺伝子変異体の1つを指す。
【0014】
アミノ酸:本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、例えば、1つ又は複数のペプチド結合の形成を介してポリペプチド鎖に組み込むことができる任意の化合物及び/又は物質を指す。一部の実施形態では、アミノ酸は、一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。一部の実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。一部の実施形態では、アミノ酸は、非天然アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸は、D-アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸は、L-アミノ酸である。本明細書で使用される場合、「標準アミノ酸」という用語は、天然に存在するペプチドに一般的に見出される20のL-アミノ酸の何れかを指す。「非標準アミノ酸」は、それが天然の供給源に見出されるか、又は見出され得るか否かにかかわらず、標準アミノ酸以外のあらゆるアミノ酸を指す。一部の実施形態では、ポリペプチド内のカルボキシ-及び/又はアミノ末端アミノ酸をはじめとするアミノ酸は、前述した一般構造と比較して構造修飾を含み得る。例えば、一部の実施形態では、アミノ酸は、一般構造と比較して、(例えば、アミノ基、カルボン酸基、1つ若しくは複数のプロトン、及び/若しくはヒドロキシル基の)メチル化、アミド化、アセチル化、ぺグ化、グリコシル化、リン酸化、及び/又は置換によって修飾され得る。一部の実施形態では、こうした修飾は、例えば、そうでなければ同一の非修飾アミノ酸を含有するものと比較して、修飾アミノ酸を含有するポリペプチドの安定性又は循環血中半減期を改変し得る。一部の実施形態では、こうした修飾は、そうでなければ同一の非修飾アミノ酸を含有するものと比較して、修飾アミノ酸を含有するポリペプチドの関連活性を有意に改変しない。文脈から明らかになるように、一部の実施形態では、「アミノ酸」という用語は、遊離アミノ酸を指すために用いられる場合もあり;一部の実施形態では、これは、ポリペプチドのアミノ酸残基、例えばポリペプチド内のアミノ酸残基を指すために用いられる場合もある。
【0015】
類似体:本明細書で使用される場合、「類似体」という用語は、参照物質と1つ又は複数の特定の構造特徴、要素、成分、又は部分を共有する物質を指す。典型的に、「類似体」は、参照物質と有意な構造類似性を示し、例えばコア又はコンセンサス構造を共有するが、1つ又は複数の特定の別の点で異なる。一部の実施形態では、類似体は、参照物質から例えば参照物質の化学処理によって作製することができる物質である。一部の実施形態では、類似体は、参照物質を作製する方法と実質的に類似する(例えば、複数のステップが同じである)合成方法の実施によって作製することができる物質である。一部の実施形態では、類似体は、参照物質を作製するために使用される方法と異なる合成方法の実施によって作製することができる物質である。
【0016】
アンタゴニスト:本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト」という用語は、その存在、レベル、程度、種類、又は形態が標的の低下したレベル又は活性に関連する薬剤又は条件を指し得る。アンタゴニストは、例えば、小分子、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、金属、及び/又は関連阻害活性を示す任意の他の実体を含む何れかの化学クラスの薬剤を包含し得る。一部の実施形態では、アンタゴニストは、「直接アンタゴニスト」であり得、その場合、これは、その標的に直接結合し;一部の実施形態では、アンタゴニストは、「間接的アンタゴニスト」であり得、その場合、これは、その標的への直接結合以外の手段により、例えば標的のレベル又は活性を改変するように標的の調節因子と相互作用することにより、その影響を及ぼす)。
【0017】
約:本明細書で使用される場合、1つ又は複数の目的の値に適用される「約」又は「およそ」という用語は、記載される参照値と類似する値を指す。特定の実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、表示される参照値の任意の方向で(より大きいか又はより小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満に入る数値の範囲を指すが、但し、別に記載されているか又は文脈から別の解釈が明らかである場合(例えば、1つ又は複数の目的の値が十分狭い範囲を定めるため、そのようなパーセンテージ分散の適用により、記載された範囲が不要になる場合)を除く。
【0018】
癌:本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、細胞が相対的に異常、非制御、及び/又は自律的成長を示すことにより、細胞増殖の制御の有意な喪失によって特徴付けられる、異常に増大した増殖速度及び/又は異常な成長表現型を呈示する疾患、障害、又は状態を指す。一部の実施形態では、癌は、1つ又は複数の腫瘍によって特徴付けられ得る。当業者であれば、例えば、以下を含む多種の癌を認識するであろう:副腎皮質癌、星細胞腫、基底細胞癌、カルチノイド、噴門癌、胆管癌、脊索腫、慢性骨髄増殖性腫瘍、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管癌、上衣腫、眼内黒色腫、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、組織球増殖症、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、骨髄性白血病、骨髄性白血病)、リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫[非ホジキンリンパ腫]、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、AIDS関連リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、骨髄異形成症候群、乳頭腫症、傍神経節腫、褐色細胞腫、胸膜肺芽腫、網膜芽細胞腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、子宮肉腫、血管肉腫)、ウィルムス腫瘍、及び/又は副腎皮質、肛門、虫垂、胆管、膀胱、骨、脳、乳房、気管支、中枢神経系、頸管、結腸、内膜、食道、眼、卵管、胆嚢、消化管、胚細胞、頭部及び頸部、心臓、腸、腎臓(例えば、ウィルムス腫瘍)、喉頭、肝臓、肺(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、口、鼻腔、口腔、卵巣、膵臓、直腸、皮膚、胃、精巣、喉、甲状腺、陰茎、咽頭、腹膜、脳下垂体、前立腺、直腸、唾液腺、尿管、尿道、子宮、膣、又は外陰部の癌。
【0019】
染色体:本明細書で使用される場合、「染色体」という用語は、例えば、真核細胞の核に見出されるように、任意選択で関連するポリペプチド及び/又は他の実体を一緒に伴うDNA分子を指す。典型的に、染色体は、それが遺伝情報を伝達することを可能にする遺伝子及び機能(例えば、複製起点)を担持する。
【0020】
併用療法:本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、対象が同時に2種以上の治療レジメン(例えば、2種以上の治療薬)に曝露される臨床介入を指す。一部の実施形態では、2種以上の治療レジメンは、同時に投与され得る。一部の実施形態では、2種以上の治療レジメンは、順次投与され得る(例えば、第1のレジメンを投与した後、任意の用量の第2レジメンを投与する)。一部の実施形態では、2種以上の治療レジメンは、重複投与レジメンで投与される。一部の実施形態では、併用療法の投与は、他の薬剤又は療法を受けている対象に対する1つ又は複数の治療薬又は療法の投与を含み得る。一部の実施形態では、併用療法は、必ずしも個々の薬剤を単一組成物として一緒に(又は必ずしも同時に)投与することを必要としない。一部の実施形態では、併用療法の2種以上の治療薬又は療法は、例えば、個別の組成物として、個別の投与経路を介して(例えば、一方の薬剤を経口で、別の薬剤を静脈内で)、及び/又は異なる時点で個別に対象に投与される。一部の実施形態では、2種以上の治療薬は、併用組成物として又は併用化合物として(例えば、単一化学複合体若しくは共有結合実体の一部として)、同じ投与経路を介して及び/又は同時に投与され得る。
【0021】
同等の:本明細書で使用される場合、「同等の」という用語は、互いに同一でないことがあり得るが、相互の比較を可能にする上で十分類似しているため、当業者が、認められた相違点又は類似性に基づいて適正に結論が引き出され得ることを認識する、2種以上の薬剤、実体、状況、条件のセットを指す。一部の実施形態では、同等の条件、状況、個体、又は集団のセットは、複数の実質的に同じ特徴と、1つ又は少数の異なる特徴とによって特徴付けられる。当業者は、任意の所与の状況下において、2種以上のこうした薬剤、実体、状況、条件のセットが同等とみなされるためにどの程度の同一性が要求されるかを本文中で理解するであろう。例えば、当業者は、状況、個体、又は集団のセットが、異なる状況、個体、若しくは集団のセットの下若しくはそれらを用いて得られた結果、又は観察された現象の相違が、変化したこれらの特徴の差異を原因とするか若しくはそれを示すという適正な結論を保証する上で、十分な数及び種類の実質的に同じ特徴によって特徴付けられる場合、これらは、互いに同等であることを理解するであろう。
【0022】
対応する:ポリペプチド、核酸、及び化学化合物に関して本明細書で使用される場合、「対応する」という用語は、適切な参照化合物又は組成物との比較による、ある化合物又は組成物の構造要素、例えばアミノ酸残基、ヌクレオチド残基、又は化学部分の位置/同一性を示す。例えば、一部の実施形態では、あるポリマー中のモノマー残基(例えば、ポリペプチド中のアミノ酸残基又はポリヌクレオチド内の核酸残基)は、適切な参照ポリマー中の残基に「対応するもの」として同定され得る。例えば、当業者は、単純化の目的で、ポリペプチド中の残基を、多くの場合、参照関連ポリペプチドに基づく標準番号付けシステムを用いて呼称し、これにより、例えば190位の残基に「対応する」アミノ酸は、実際に特定のアミノ酸鎖の190番目のアミノ酸である必要はなく、むしろ参照ポリペプチドの190位に存在する残基に対応することを認識するであろう。当業者は、「対応する」アミノ酸を同定する方法を容易に認識するであろう(例えば、Benson et al.Nucl.Acids Res.(1 January 2013)41(D1):D36-D42;Pearson et al.PNAS Vol.85,pp.2444-2448,April 1988を参照されたい)。当業者は、様々な配列アラインメント戦略を認識するであろう。そうしたものとして、例えば、BLAST、CS-BLAST、CUSASW++、DIAMOND、FASTA、GGSEARCH/GLSEARCH、Genoogle、HMMER、HHpred/HHsearch、IDF、Infernal、KLAST、USEARCH、parasail、PSI-BLAST、PSI-Search、ScalaBLAST、Sequilab、SAM、SSEARCH、SWAPHI、SWAPHI-LS、SWIMM、又はSWIPEなどのソフトウェアプログラムが挙げられ、これらは、例えば、本開示に従ってポリペプチド中の「対応する」残基及び/又は核酸を同定するために使用することができる。
【0023】
ドメイン:本明細書で使用される場合、「ドメイン」という用語は、ポリペプチドのセクション又は部分を指す。一部の実施形態では、「ドメイン」は、ポリペプチドの特定の構造及び/又は機能的特徴を伴っており、そのため、ドメインがその親ポリペプチドの残り部分から物理的に分離されたとき、ドメインは、特定の構造及び/又は機能的特徴を実質的又は完全に保持する。一部の実施形態では、ドメインは、その(親)ポリペプチドから分離されて異なる(レシピエント)ポリペプチドに連結されたとき、親ポリペプチドにおいてそれを特徴付ける1つ又は複数の構造及び/又は機能的特徴をレシピエントポリペプチド上に実質的に保持及び/又は付与するポリペプチドの部分を含み得る。一部の実施形態では、ドメインは、ポリペプチドのセクションである。一部の実施形態では、ドメインは、特定の構造要素(例えば、特定のアミノ酸配列若しくは配列モチーフ、αヘリックス特性、βシート特性、コイルドコイル特性、ランダムコイル特性)により、及び/又は特定の機能的特徴(例えば、結合活性、酵素活性、折り畳み活性、シグナル伝達活性)により特徴付けられる。
【0024】
エピジェネティックマーク:本明細書で使用される場合、「エピジェネティックマーク」という用語は、遺伝子コードにより直接支配されていない核酸又はポリペプチドの特徴を指す。例えば、一部の実施形態では、エピジェネティックマークは、核酸又はポリペプチドに対する修飾を表すか、又は修飾によって生じ得る。一部の実施形態では、こうした修飾として、例えば、メチル化、アセチル化、ユビキチン化、リン酸化、リボシル化、アミド化、グリコシル化、又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0025】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」という用語は、核酸配列からのあらゆる遺伝子産物の産生を指す。一部の実施形態では、遺伝子産物は、転写物であり得る。一部の実施形態では、遺伝子産物は、ポリペプチドであり得る。一部の実施形態では、核酸配列の発現は、以下の1つ又は複数を含む:(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(例えば、転写による);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成及び/若しくは3’末端形成による);(3)ポリペプチド若しくはタンパク質へのRNAの翻訳;並びに/又は(4)ポリペプチド若しくはタンパク質の翻訳後修飾。
【0026】
遺伝子:本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、遺伝子産物(例えば、RNA産物及び/又はポリペプチド産物)をコードする、染色体中のDNA配列を指す。一部の実施形態では、遺伝子は、コード配列(例えば、特定の遺伝子産物をコードする配列)を含み;一部の実施形態では、遺伝子は、非コード配列を含む。一部の特定の実施形態では、遺伝子は、コード(例えば、エキソン)配列及び非コード(例えば、イントロン)配列の両方を含み得る。一部の実施形態では、遺伝子は、1つ又は複数の調節エレメント(例えば、プロモータ、エンハンサー、サイレンサー、終結シグナル)を含む可能性があり、これらは、例えば、遺伝子発現の1つ又は複数の側面(例えば、細胞型特異的発現、誘導性発現)を制御又は影響し得る。
【0027】
突然変異体:本明細書で使用される場合、「突然変異体」という用語は、参照生物、細胞、又は生体分子と比較して遺伝的変異を含む生物、細胞、又は生体分子(例えば、核酸若しくはタンパク質)を指す。例えば、突然変異体は、一部の実施形態において、参照核酸分子と比較して突然変異、例えば核酸塩基置換、1つ若しくは複数の核酸塩基の欠失、1つ若しくは複数の核酸塩基の挿入、2個以上の核酸塩基の逆位、又は短縮を含み得る。同様に、突然変異型タンパク質は、参照ポリペプチドと比較してアミノ酸置換、挿入、欠失、逆位、又は短縮を含み得る。さらに、別の突然変異、例えば融合及びインデルは、当業者に周知である。突然変異型核酸又はポリペプチドを含むか又は発現する生物又は細胞もときに本明細書において「突然変異体」と呼ばれることがある。一部の実施形態では、突然変異体は、遺伝子産物の機能喪失に関連する遺伝子変異体を含む。機能喪失は、機能の完全な消失、例えば酵素の酵素活性の消失、又は機能の部分的喪失、例えば酵素の酵素活性の低減であり得る。一部の実施形態では、突然変異体は、機能の獲得、例えば遺伝子産物における特徴又は活性の負の又は望ましくない改変に関連する遺伝子変異体を含む。一部の実施形態では、突然変異体は、参照物と比較して、望ましいレベル又は活性の低減又は喪失によって特徴付けられ;一部の実施形態では、突然変異体は、参照物と比較して、望ましくないレベル又は活性の増大又は獲得によって特徴付けられる。一部の実施形態では、参照生物、細胞、又は生体分子は、野生型生物、細胞、又は生体分子である。
【0028】
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、少なくとも3個のヌクレオチドのポリマーを指す。一部の実施形態では、核酸は、DNAを含む。一部の実施形態では、RNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、一本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、二本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、一本鎖及び二本鎖部分の両方を含む。一部の実施形態では、核酸は、1つ又は複数のリン酸ジエステル結合を含む骨格を含む。一部の実施形態では、核酸は、リン酸ジエステル及び非リン酸ジエステル結合の両方を含む骨格を含む。例えば、一部の実施形態では、核酸は、例えば、「ペプチド核酸」として、1つ若しくは複数のホスホロチオエート結合若しくは5’-N-ホスホロアミダイト結合及び/又は1つ若しくは複数のペプチド結合を含む骨格を含み得る。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の又は全ての天然残基(例えば、アデニン、シトシン、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシミジン、グアニン、チミン、ウラシル)を含む。一部の実施形態では、核酸は、1つ又は複数の又は全ての非天然残基を含む。一部の実施形態では、非天然残基は、ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、挿入塩基、及びこれらの組合せ)を含む。一部の実施形態では、非天然残基は、天然残基の糖と比較して1つ又は複数の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。一部の実施形態では、核酸は、RNA又はポリペプチドなどの機能性遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、1つ又は複数のイントロンを含むヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、天然供給源からの単離、酵素的合成により(例えば、相補性テンプレートに基づく重合、例えばインビボ又はインビトロでの組換え細胞又は系における生殖又は化学合成により調製することができる。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000又はそれを超える残基長である。
【0029】
ペプチド:本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、典型的に、比較的短い、例えば約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、約40アミノ酸未満、約30アミノ酸未満、約25アミノ酸未満、約20アミノ酸未満、約15アミノ酸未満、又は約10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを指す。
【0030】
医薬組成物:本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、ヒト又は動物対象への投与に好適な組成物を指す。一部の実施形態では、医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と一緒に製剤化された活性薬剤を含む。一部の実施形態では、活性薬剤は、治療レジメンにおいて投与に適した単位用量で存在する。一部の実施形態では、治療レジメンは、それを必要とする対象又は集団に投与されると、所望の治療効果を達成する統計学的に有意な確率を示すと判断されたスケジュールに従って投与される1つ又は複数回の用量を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、経口投与、例えば水薬(水性若しくは非水性溶液若しくは懸濁液)、錠剤、例えば口腔、舌下、及び全身吸収のために標的化されるもの、ボーラス、粉末、顆粒、舌への適用のためのペースト;例えば、皮下、筋肉内、静脈内若しくは硬膜外注射(例えば、滅菌溶液若しくは懸濁液、又は徐放性製剤として)による非経口投与;例えば、皮膚、肺、若しくは口腔に適用されるクリーム、軟膏、又は制御放出パッチ若しくはスプレーとしての局所適用;例えば、ペッサリー、クリーム、若しくはフォームとしての膣内又は直腸内;舌下;眼;経皮;又は鼻、肺、及び他の粘膜表面への投与に合わせて設計されたものを含む、固体若しくは液体の形態での投与のために特別に製剤化することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒト対象への投与が意図され、そのような投与に好適である。一部の実施形態では、医薬組成物は、滅菌され、実質的に発熱性物質を含まない。
【0031】
ポリペプチド:本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、本明細書において「タンパク質」という用語と置き換え可能に用いられ、少なくとも3個のアミノ酸残基のポリマーを指す。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ若しくは複数の又は全ての天然アミノ酸を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ若しくは複数の又は全ての非天然アミノ酸を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ若しくは複数の又は全てのDアミノ酸を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ若しくは複数の又は全てのLアミノ酸を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端で1つ若しくは複数のアミノ酸側鎖を修飾するか、又はそれらに付加された1つ若しくは複数のペンダント基又は別の修飾、或いはそれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、アセチル化、アミド化、アミノエチル化、ビオチン化、カルバミル化、カルボニル化、シトルリン化、脱アミド化、脱イミド化、脱離化(eliminylation)、グリコシル化、脂質化、メチル化、ペグ化、リン酸化、SUMO化、又はこれらの組合せなどの1つ又は複数の修飾を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ又は複数の分子内又は分子間ジスルフィド結合に参加し得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、環状であり得、及び/又は環状部分を含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、環状ではなく、及び/又は環状部分を含まない。一部の実施形態では、ポリペプチドは、直鎖状である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ステープルポリペプチドを含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つ又は複数の他のポリペプチドとの非共有又は共有結合による非共有結合複合体形成に参加する(例えば、抗体中など)。一部の実施形態では、ポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、操作されたアミノ酸配列を有し、ここで、その配列は、人為的な作用によって設計及び/又は作製されている。一部の実施形態では、「ポリペプチド」という用語は、参照ポリペプチド、活性、又は構造の名称に付け加えられ;そのような場合、本明細書において、この用語は、関連活性又は構造を共有し、従って同じクラス又はファミリーのポリペプチドのメンバーであると考えることができるポリペプチドを指すために用いられる。こうしたクラスの各々について、本明細書は、アミノ酸配列及び/若しくは機能が公知であるクラスに含まれる例示的なポリペプチドを提供し、且つ/又は当業者は、それらを認識するであろう;一部の実施形態では、こうした例示的なポリペプチドは、ポリペプチドクラス又はファミリーについての参照ポリペプチドである。一部の実施形態では、あるポリペプチドクラス又はファミリーのメンバーは、同クラスの参照ポリペプチドと;一部の実施形態では同クラスに含まれる全てのポリペプチドと)有意な配列相同性又は同一性を示し、共通の配列モチーフ(例えば、特徴的な配列要素)を共有し、及び/又は共通の活性(一部の実施形態では、同等レベルで若しくは指定範囲内で)を共有する。例えば、一部の実施形態では、メンバーポリペプチドは、参照ポリペプチドに対して少なくとも約30~40%、また多くの場合に約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%超若しくはそれを超える配列相同性若しくは同一性の全体割合を示し、且つ/又は多くの場合に90%、或いは95%、96%、97%、98%、若しくは99%を超える非常に高い配列同一性を示す少なくとも1つの領域(例えば、一部の実施形態では、特徴的な配列要素を含み得る保存的領域)を含む。こうした保存的領域は、通常、少なくとも3~4個、多くの場合、最大20個以上のアミノ酸を包含し;一部の実施形態では、保存的領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個以上の連続したアミノ酸の少なくとも1区間を包含する。一部の実施形態では、有用なポリペプチドは、親ポリペプチドの断片を含み得る。一部の実施形態では、有用なポリペプチドは、複数の断片を含み得るが、これらの各々は、目的のポリペプチドに見出されるものと互いに比較して、同じ親ポリペプチドでは異なる空間配置で見出される(例えば、親において直接連結された断片が目的のポリペプチドで空間的に離れて配置されているか、若しくはその逆であり得、及び/又は断片が親と比べて目的のポリペプチドで異なる順序で存在し得る)ことから、目的のポリペプチドは、その親ポリペプチドの誘導体である。
【0032】
参照:本明細書で使用される場合、「参照(物)」という用語は、それに対して比較が実施される標準又は対照を指す。例えば、一部の実施形態では、目的の薬剤、動物、個体、集団、サンプル、配列、又は値を参照又は対照薬剤、動物、個体、集団、サンプル、配列、又は値と比較する。一部の実施形態では、参照又は対照は、目的の試験又は決定と実質的に同時に試験又は決定される。一部の実施形態では、参照又は対照は、任意選択で、有形的表現媒体で表現された過去の参照又は対照である。典型的には、当業者に理解されるように、参照又は対照は、評価対象のものと同等の条件又は状況下で決定又は特性決定される。当業者は、特定の考えられる参照又は対照に対する信頼及び/又は比較を正当化する上で十分な類似性がいつ存在するかを理解するであろう。
【0033】
サンプル:本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、本明細書に記載するように、目的の供給源から得られるか、又はそれに由来する生物学的サンプルを指す。一部の実施形態では、目的の供給源は、微生物、植物、動物又はヒトなどの生物を含む。一部の実施形態では、生物学的サンプルは、生体組織又は体液を含む。一部の実施形態では、生物学的サンプルは、骨髄;血液;血球;腹水;組織若しくは細針生検サンプル;細胞含有体液;フリーフローティング核酸;痰;唾液;尿;脳脊髄液、腹膜液;胸膜液;糞;リンパ液;婦人科関連体液;皮膚スワブ;膣スワブ;口腔スワブ;鼻スワブ;乳管洗浄若しくは気管支肺胞洗浄などの洗浄液(washing)又は洗浄液(lavage);吸引物;擦過物;骨髄標本;組織生検標本;外科標本;他の体液、分泌物、及び/若しくは排泄物;並びに/又はそれらから得られる細胞を含み得る。一部の実施形態では、生物学的サンプルは、個体、例えばヒト又は動物対象から得られる細胞を含む。一部の実施形態では、得られた細胞は、サンプルを取得する個体からの細胞であるか、又はそうした細胞を含む。一部の実施形態では、サンプルは、任意の適切な手段により、目的の供給源から直接得られた「一次サンプル」である。例えば、一部の実施形態では、一次生体サンプルは、生検(例えば、細針吸引若しくは組織生検)、手術、体液(例えば、血液、リンパ液、糞)の採取からなる群から選択される方法によって得られる。一部の実施形態では、本文から明らかになるように、「サンプル」という用語は、一次サンプルを処理することにより(例えば、その1つ若しくは複数の成分を除去し、及び/又は1つ若しくは複数の薬剤を添加することにより)取得される調製物を指す。例えば、半透膜を用いてろ過する。こうした「処理サンプル」は、例えば、サンプルから抽出された、又はmRNAの増幅若しくは逆転写、特定の成分の単離及び/若しくは精製などの技法に一次サンプルを付すことによって得られた核酸若しくはポリペプチドを含み得る。
【0034】
一塩基多型(SNP):本明細書で使用される場合、「一塩基多型」又は「SNP」という用語は、代替塩基が、ある対立遺伝子を別のものから識別することがわかっているゲノムにおける特定の塩基位置を指す。一部の実施形態では、1つ又は少数のSNP及び/又は「コピー数多型」「CNP」が互いから複雑な遺伝子変異体を識別するのに十分であり、従って、分析の目的で、1つ又は1セットのSNP及び/又はCNPが特定の変異体、特徴、細胞型、個体、種、又はそのセットに特徴的であると考えることができる。一部の実施形態では、1つ又は1セットのSNP及び/又はCNPが特定の変異体、特徴、細胞型、個体、種、又はそのセットを定義すると考えることもできる。
【0035】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、生物、例えば哺乳動物(例えば、ヒト、ヒト以外の哺乳動物、ヒト以外の霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、ネコ、イヌ)を指す。一部の実施形態では、ヒト対象は、成人、若年、又は小児の対象である。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害又は状態、例えば本明細書に記載されるように治療することができる疾患、障害又は状態、例えば本明細書に列記する癌又は腫瘍に罹患している。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、又は状態に罹患しやすく;一部の実施形態では、罹患しやすい対象は、疾患、障害、若しくは状態に対する素因を有し、及び/又はそれを発症する高いリスク(参照対象若しくは集団に認められる平均リスクと比較して)を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、又は状態の1つ又は複数の症状を呈示する。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、又は状態の特定の症状(例えば、疾患の臨床症状)又は特徴を呈示しない。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、又は状態の症状又は特徴を一切呈示しない。一部の実施形態では、対象は、患者である。一部の実施形態では、対象は、診断及び/又は療法が投与され、且つ/又は投与された個体である。
【0036】
治療薬:本明細書で使用される場合、「治療薬」という用語は、一般に、対象に投与したとき、所望の効果(例えば、所望の生物学的、臨床的、又は薬理学的効果)を誘発する任意の薬剤を指す。一部の実施形態では、薬剤は、それが適切な集団全体で統計学的に有意な効果を示せば、治療薬であると考えられる。一部の実施形態では、適切な集団は、疾患、障害若しくは状態に罹患した及び/又は罹患しやすい対象の集団である。一部の実施形態では、適切な集団は、モデル生物の集団である。一部の実施形態では、適切な集団は、年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床状態、治療法への曝露歴などの1つ又は複数の基準によって定義され得る。一部の実施形態では、治療薬は、有効量で対象に投与されると、対象の疾患、障害、及び/又は状態の1つ又は複数の症状又は特徴を緩和、改善、軽減、阻害、予防、その発症を遅延させ、その重症度を軽減し、且つ/又はその発生率を低下させる物質である。一部の実施形態では、「治療薬」は、ヒトへの投与のために市販が可能になる前に政府機関によって承認されているか、又は承認が求められる薬剤である。一部の実施形態では、「治療薬」は、ヒトへの投与のために処方箋が必要な薬剤である。一部の実施形態では、治療薬は、本明細書に記載するCREBBPアンタゴニストであり得る。
【0037】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、それが投与される対象又は集団において所望の効果(例えば、所望の生物学的、臨床的、又は薬理学的効果)をもたらす量を指す。一部の実施形態では、この用語は、特定の投与レジメン(例えば、治療薬投与レジメン)に従って対象に投与されると、所望の効果を統計学的に達成する可能性がある量を指す。一部の実施形態では、この用語は、疾患、障害、及び/又は状態に罹患した及び/又は罹患しやすい集団の少なくとも有意なパーセンテージ(例えば、少なくとも約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、又はそれを超える)において効果をもたらすのに十分な量を指す。一部の実施形態では、治療有効量は、疾患、障害、及び/又は状態の1つ又は複数の症状の発生率及び/又は重症度を低減し、且つ/又はその発症を遅延させるものである。当業者は、「治療有効量」という用語が、実際には、特定の個体で治療の成功が達成されることを要求しないことを理解するであろう。そうではなく、治療有効量は、そうした治療を必要とする患者に投与されたとき、対象の有意な数、例えば治療を受けた患者集団の少なくとも約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、又はそれを超える患者において特定の所望の応答をもたらす量であり得る。一部の実施形態では、治療有効量と言うとき、1つ又は複数の特定の組織(例えば、疾患、障害、又は状態に罹患した組織)又は体液(例えば、血液、唾液、血清、汗、涙、尿)中で測定される所望の効果を誘導するのに十分な量を指すこともある。当業者は、一部の実施形態において、特定の薬剤又は治療薬の治療有効量が、単回用量で製剤化及び/又は投与され得ることを理解するであろう。一部の実施形態では、治療有効量は、複数回の用量で、例えば投与レジメンの一環として製剤化及び/又は投与され得る。
【0038】
腫瘍:本明細書で使用される場合、「腫瘍」という用語は、細胞又は組織の異常な成長を指す。一部の実施形態では、腫瘍は、前癌状態(例えば、良性)、悪性、前転移、転移、及び/又は非転移性である細胞を含み得る。一部の実施形態では、腫瘍は、癌に関連するか又は癌の発現である。一部の実施形態では、腫瘍は、分散性腫瘍又は液性腫瘍であり得る。一部の実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍であり得る。変異体:本明細書で、分子、例えば核酸、タンパク質、又は小分子に関して使用される場合、「変異体(変異型)」という用語は、参照分子と有意な構造同一性を示すが、参照実体と比較して1つ又は複数の化学部分の存在又は非存在又はそのレベルが参照分子と構造的に異なる分子を指す。一部の実施形態では、変異体は、その参照分子と機能的にも異なる。一般に、特定の分子が参照分子の「変異体」であると適正にみなされるか否かは、参照分子とのその構造同一性の割合に基づく。当業者に理解されるように、何れの生物学的又は化学的参照分子も特定の特徴的構造要素を有する。変異体は、定義により、1つ又は複数のそうした特徴的構造要素を共有するが、参照分子と少なくとも1つの側面が異なる別個の分子である。ごく数例を挙げれば、ポリペプチドは、線型又は3次元空間で互いに対して指定された位置を有し、且つ/又は特定の構造モチーフ及び/又は生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸から構成される特徴的な配列要素を有する可能性があり;核酸は、線型又は3次元空間で互いに対して指定された位置を有する複数のヌクレオチド残基から構成される特徴的な配列要素を有し得る。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、アミノ酸又はヌクレオチド配列の1つ又は複数の相違及び/又は化学部分(例えば、炭水化物、脂質、リン酸基)の1つ又は複数の相違の結果として、参照ポリペプチド又は核酸と異なる可能性があり、上記の化学部分は、共有結合的にポリペプチド又は核酸の成分である(例えば、ポリペプチド又は核酸骨格に結合されている)。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照ポリペプチド又は核酸と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、又は99%の全体的配列同一性を示す。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照ポリペプチド又は核酸と少なくとも1つの特徴的配列要素を共有しない。一部の実施形態では、参照ポリペプチド又は核酸は、1つ又は複数の生物活性を有する。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照ポリペプチド又は核酸の生物活性の1つ又は複数を共有する。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照ポリペプチド又は核酸の生物活性の1つ又は複数が欠如している。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照ポリペプチド又は核酸と比較して1つ又は複数の生物活性の低下したレベルを示す。一部の実施形態では、目的のポリペプチド又は核酸は、特定の位置の少数の配列改変を除いて、それが参照ポリペプチド又は核酸と同一のアミノ酸又はヌクレオチド配列を有する場合、参照ポリペプチド又は核酸の「変異体」であると考えられる。典型的に、参照物と比較して変異体中の残基の約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、又は約2%未満が置換されているいか、挿入されているか、又は欠失している。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照物と比較して約10、約9、約8、約7、約6、約5、約4、約3、約2、又は約1個の置換残基を含む。多くの場合、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照物と比較して非常に少数(例えば、約5、約4、約3、約2、又は約1個未満)の置換された、挿入された、又は欠失した機能性残基(すなわち特定の生物活性に参加する残基)を含む。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照物と比較して約5、約4、約3、約2、又は約1個以下の付加又は欠失を含み、一部の実施形態では、付加又は欠失を一切含まない。一部の実施形態では、変異型ポリペプチド又は核酸は、参照物と比較して約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6未満、一般的には、約5、約4、約3、又は約2個未満の付加又は欠失を含む。一部の実施形態では、参照ポリペプチド又は核酸は、天然に見出されるものである。一部の実施形態では、参照ポリペプチド又は核酸は、ヒトポリペプチド又は核酸である。
【0039】
野生型:本明細書で使用される場合、「野生型」という用語は、「正常」(突然変異型、疾患、改変状態又は状況と対照をなす)状態又は状況において天然に見出される構造及び/又は活性を有する実体(例えば、ポリペプチド又は核酸)の形態を指す。一部の実施形態では、特定のポリペプチド又は核酸の2つ以上の「野生型」形態は、例えば、特定の遺伝子の「対立遺伝子」又は特定のポリペプチドの正常な変異体として天然に存在し得る。一部の実施形態では、集団(例えば、ヒトの集団)に非常に一般的に観察される特定のポリペプチド又は核酸のその形態(又はそれらの形態)は、「野生型」形態である。
【0040】
本開示のいくつかの態様は、癌の開始及び/又は進行におけるCREBBP及びEP300などのヒストンアセチルトランスフェラーゼの重要性の認識に基づく。本開示のいくつかの態様は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼが癌療法の有用な標的を提示するという認識を包含する。本開示のいくつかの態様は、突然変異型EP300配列を含む癌細胞のCREBBP活性が細胞の生存及び/又は増殖にとって重要であるという認識に基づく。本開示のいくつかの態様は、こうした細胞をCREBBP阻害剤と接触させることにより、例えばこうした細胞をCREBBP阻害剤とインビトロ又はインビボで接触させることにより、例えばそのような細胞を保有する対象又はそのような細胞を含む腫瘍にCREBBP阻害剤を投与することにより、突然変異型EP300配列を含む悪性細胞の生存及び/又は増殖を阻害する方法及び戦略を提供する。
【0041】
本開示のいくつかの態様は、CREBBPが様々な癌における治療標的であり、且つこのような癌がCREBBP阻害剤を用いた治療に対して選択的感受性を呈示することを教示する。例えば、本開示のいくつかの態様は、EP300機能喪失に関連する突然変異型EP300配列を含む特定の癌が、CREBBP阻害剤を用いた治療に対して感受性であること、及びそのような突然変異型癌細胞の成長、増殖、及び/又は生存が、こうした細胞をCREBBP阻害剤とインビトロ及びインビボで接触させることにより、有効に阻害又は消失され得ることを教示する。本開示はまた、CREBBP阻害療法、例えばCREBBPアンタゴニストに対する感受性が様々な適応で観察されることも教示する。本開示のいくつかの態様は、CREBBP阻害療法に対する感受性がEP300の機能喪失突然変異又はDNA欠失に関連するという認識に基づくものである。本開示のいくつかの態様は、EP300が多種の腫瘍全体を通して高頻度で突然変異していること、及びそうした突然変異型腫瘍がCREBBP阻害剤療法によって治療され得るという認識に基づいている。
【0042】
一部の実施形態では、本開示は、CREBBP阻害剤療法の投与により、CREBBP遺伝子又は遺伝子産物のレベル及び/又は活性を低減し得ることを教示する。一部の実施形態では、CREBBP阻害剤療法は、CREBBPアンタゴニスト、例えば本明細書に提供されるCREBBPアンタゴニストの投与を含む。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、何れかの化学クラスのものであり得る。例えば、一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、小分子、ペプチド、抗体、又は核酸を含み得る。一部の実施形態では、核酸CREBBPアンタゴニストは、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)、siRNA、shRNA、miRNA、又は遺伝子修飾剤(例えば、遺伝子編集又は他の遺伝子療法を媒介するもの、例えばCRISPR、TALENS、ジンクフィンガーヌクレアーゼ)を含み得る。一部の実施形態では、CREBBP阻害剤療法は、腫瘍体積を減少させる。一部の実施形態では、CREBBP阻害剤療法は、ある期間にわたって腫瘍増殖の速度及び/又は程度を低減する。
【0043】
一部の実施形態では、本開示は、EP300に少なくとも1つの突然変異を保有すると決定された癌に罹患した対象に対するCREBBP阻害療法の投与を含む方法を提供する。
【0044】
一部の実施形態では、本開示は、対象のEP300突然変異状態に基づいて、CREBBP療法の投与のための候補として対象を識別する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、対象の腫瘍が、腫瘍又は腫瘍に含まれる細胞のEP300突然変異状態に基づいて、CREBBP阻害剤による治療に対して感受性であることを決定する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、対象のEP300遺伝子中の機能喪失突然変異を検出するステップを含む。一部の実施形態では、対象、対象における腫瘍、又はそうした腫瘍に含まれる細胞がEP300遺伝子中の機能喪失突然変異を保有すると決定された場合、対象は、CREBBP療法に対して感受性である。一部の実施形態では、本方法は、例えば、対象がCREBBP阻害療法に対して感受性であると識別されることに基づいて、対象にCREBBP阻害療法を投与するステップをさらに含む。
【0045】
アセチルトランスフェラーゼ
ヒストンアセチル化及び脱アセチル化は、ヌクレオソームのヒストンコアから突出するN末端テール内のリシン残基をアセチル化及び脱アセチル化する方法である。いかなる特定の理論に束縛されることは意図しないが、ヒストンアセチル化は、遺伝子調節の一部であると考えられる。ヒストンアセチルトランスフェラーゼは、HAT、又はリシンアセチルトランスフェラーゼの場合、KATとしても知られ、他の核及び細胞質非ヒストン標的の中でもヌクレオソームのヒストンテールをアセチル化する酵素のファミリーである。
【0046】
KATは、その構造及び配列類似性に基づいてファミリーに分けることができる。KATファミリーとして、例えば、GCN5及びPCAFをはじめとするGcn5関連N-アセチルトランスフェラーゼ(GNAT)ファミリー、CREBBP/EP300ファミリー、並びにTat相互作用タンパク質、60kDa(Tip60)、単球性白血病ジンクフィンガータンパク質/MOZ関連因子タンパク質(MOZ/MORF)を含むMYST(MOZ、Ybf2/Sas3、Sas2、Tip60)ファミリーが挙げられる。異なるKATが、他のタンパク質との相互作用を促進するHATドメイン以外に様々な別のドメインを含有し得るが、そうしたものとして、アセチル化及び他の修飾のためのリーダドメインがある。例えば、参照により本明細書に組み込まれるFarria et al.Oncogene(2015)34,4901-4913を参照されたい。いくつかのKAT、例えばGNAT及びCREBBP/EP300ファミリーに含まれるものは、ブロモドメインを含有する。ブロモドメインは、KATがヒストン基質上のアセチル化リシン残基を認識して、これに結合することを促進する。これらのドメインが一緒になって、KAT基質の特異性及び多様性を可能にする。今日まで研究されたKATは、全て細胞の分化及び胚発生に重要な機能を有する。数個のKATは、発癌にも関連していた。例えば、CREBBP/EP300は、癌の発生及び進行に関与していた。例えば、Farria et al.Oncogene(2015)34,4901-4913;Lee et al.Nat.Rev.Mol.Cell Biol.8(4):284-95;及びAvvakumov et al.Oncogene(2007)26,5395-5407(これらの各々は、全内容を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。
【0047】
CREBBP/EP300
転写コアクチベータCREB結合タンパク質(本明細書では、CREBBP又はCBPと呼ぶ)及びE1A結合タンパク質p300(本明細書では、EP300又はp300と呼ぶ)は、RNAポリメラーゼII媒介転写の重要な調節物質である。研究から、これらのマルチドメインタンパク質がヒストン及び他のタンパク質をアセチル化する能力は、多くの生物学的プロセスにとって重要であることがわかっている。CREBBP及びEP300は、癌の発生及び進行に重要な因子、例えば低酸素誘導因子-1(HIF-1)、βカテニン、c-Myc、c-Myb、CREB、E1、E6、p53、AR及びエストロゲン受容体(ER)を含む、400超の異なる細胞タンパク質と相互作用することが報告されている。例えば、Kalkhoven et al.Biochemical Phamacology 68(2004)pg.1145-1155;及びFarria et al.Oncogene(2015)34,4901-4913を参照されたい。
【0048】
CREBBP及びEP300をコードする遺伝子の遺伝子改変並びにそれらの機能不活性化は、ヒトの疾患と関連付けられている。さらに、その高度の相同性にもかかわらず、CREBBP及びEP300は、完全に重複しているわけではなく、細胞機能にユニークな役割を有する。
【0049】
CREBBP/EP300は、DNA複製及びDNA修復のプロセスに関与している。CREBBP/EP300は、細胞周期の進行の調節、p53転写因子のユビキチン化及び分解、並びに核移入の調節にも関与していた。これらの様々な役割のため、CREBBP又はEP300の遺伝子中での突然変異又は発現レベル、活性若しくは局在化の変化は、疾患状態を引き起こし得る。例えば、Vo et.al.J Biol Chem.2001 Apr 27;276(17):13505-8;及びChan et.al.Journal of Cell Science 2001 114:2363-2373(これらの各々は、全内容を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。CREBP又はEP300のこうした改変に起因し得る疾患としては、限定されないが、発育障害、例えばルビンシュタイン・テイビ症候群(RTS)、進行性神経変性疾患、例えばハンチントン病(HD)、ケネディ病(球脊髄性筋萎縮症;SBMA)、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、アルツハイマー病(AD)及び6つの脊髄小脳変性症(SCA)並びに癌を挙げることができる。例えば、Iyer et al.Oncogene(2004)23,4225-4231;及びValor et al.Curr Pharm Des.2013 Aug;19(28):5051-5064(これらの各々は、全内容を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。
【0050】
個別の機能が、CREBBPタンパク質の個々のドメインに帰属していた。例えば、Liu et al.Nature 451,846-850;Vo et.al.J Biol Chem.2001 Apr 27;276(17):13505-8;Kalkhoven et al.Biochemical Pharmacology 68(2004)pg.1145-1155;及びFarria et al.Oncogene(2015)34,4901-4913(これらの各々は、全内容を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。例えば、キナーゼ誘導性ドメイン相互作用(KIX)、ブロモ-、及びヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ドメインがCREBBPタンパク質中で明らかにされている。表1は、CREBBPタンパク質のポリペプチド配列(GenBankアクセッション番号(Accession Number)AAC51331.2;配列番号1)を表示する。表1は、代表的な野生型CREBBP転写物(GenBankアクセッション番号U85962;配列番号2)を示す。
図6は、代表的な野生型CREBBP/EP300タンパク質及び代表的なドメイン局在化の概略図である。CREBBPタンパク質のKIXドメインは、配列番号1のアミノ酸位置587~667に見出すことができる。CREBBPタンパク質のブロモドメインは、配列番号1のアミノ酸1087~1194に見出すことができる。CREBBPタンパク質のHATドメインは、配列番号1のアミノ酸1323~1700に見出すことができる。表1は、EP300の例示的配列(GenBankアクセッション番号NM_001420;配列番号3;及びGenBankアクセッション番号NP_001429;配列番号4)も表示する。
【0051】
EP300の個別の機能は、EP300タンパク質の特定のドメインによって実施される。例えば、Liu et al.Nature 451,846-850;Vo et.al.J Biol Chem.2001 Apr 27;276(17):13505-8;Kalkhoven et al.Biochemical Pharmacology 68(2004)pg.1145-1155;及びFarria et al.Oncogene(2015)34,4901-4913を参照されたい。表1は、EP300ポリペプチド配列(GenBankアクセッション番号NP_001420;配列番号3)を表示する。表1は、代表的な野生型EP300転写物(GenBankアクセッション番号NM_001429;配列番号4)を表示する。
【0052】
EP300タンパク質のKIXドメインは、配列番号3のアミノ酸位置566~646に見出すことができる。EP300タンパク質のブロモドメインは、配列番号3のアミノ酸位置1051~1158に見出すことができる。EP300タンパク質のHATドメインは、配列番号3のアミノ酸位置1287~1663に見出すことができる。
【0053】
EP300タンパク質の有害な(機能喪失)突然変異として、例えば、置換、挿入、欠失、インデル、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、及び短縮が挙げられる。EP300の例示的な機能喪失突然変異としては、例えば、配列番号3の下記残基:V5、R86、K291、T329、R397、G711、P802、Q993、E1014、P1081、G1042、R1055、C1201、R1234、C1385、D1399、Y1414、A1437、Y1467、K1468、K1488、W1509、R1645、S1650、S1754、Q1874、R1950、Q2023、及びQ2306の1つ又は複数での突然変異が挙げられる。
【0054】
EP300タンパク質の有害な(機能喪失)突然変異として、例えば、置換、挿入、欠失、インデル、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、及び短縮が挙げられる。EP300の例示的な機能喪失突然変異としては、例えば、配列番号3の下記残基:G30、K423、R883、T891、E1014、Q1661、及びP2097の1つ又は複数での突然変異が挙げられる。
【0055】
以下に、直前に挙げた配列番号3内の残基を表示する。
【0056】
一部の実施形態では、EP300タンパク質の有害な(機能喪失)突然変異は、V5L、T329R、P802L、P1081S、C1201Y、C1385Y、D1399N、D1399Y、Y1414C、A1437V、W1509C、S1650Y、Q1874E、R1950G、若しくはQ2306E置換;K291fs、R1234fs、K1468fs、K1488又はY1467fsフレームシャフト突然変異;R86*、R397*、Q993*、G1042*、R1055*、R1645*、S1754*、若しくはQ2023*短縮;又はG711でのスプライス変異を含む。
【0057】
一部の実施形態では、EP300タンパク質の有害な(機能喪失)突然変異は、G30V、K423T、R883G、T891P、P2097A、又はE1014*、若しくはQ1661*短縮を含む。
【0058】
一部の実施形態では、EP300タンパク質の機能喪失突然変異は、例えば、未成熟終止コドンを生成することにより、EP300タンパク質の短縮をもたらす。一部の実施形態では、その結果生じる短縮型EP300タンパク質は、完全なHATドメインを含まない。すなわち、短縮は、HATドメイン内又はそのN末端で起こる。一部の実施形態では、短縮により、EP300のHATドメインの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも約90%の喪失が起こる。一部の実施形態では、短縮により、HATドメインの完全な喪失が起こる。一部の実施形態では、EP300機能喪失突然変異により、EP300タンパク質のミスセンス置換が起こる。一部のこうした実施形態では、ミスセンス置換は、EP300のHATドメイン内で起こる。一部の実施形態では、EP300機能喪失突然変異は、スプライス部位突然変異、例えば新たなスプライス部位の生成又はEP300転写物中の既存のスプライス部位の消失を含む。一部のこうした実施形態では、EP300機能喪失突然変異により、HATドメイン内又はHATドメインのN末端にあるEP300タンパク質の一部をコードする配列のスプライス部位突然変異が起こる。
【0059】
一部の実施形態では、EP300タンパク質、又はコード核酸、例えばEP300タンパク質をコードするゲノムDNA配列における有害な(機能喪失)突然変異は、表4に列記する突然変異を含む。
【0060】
一部の実施形態では、EP300の機能喪失突然変異は、異型接合であり、例えばEP300の1つのみの対立遺伝子が機能喪失突然変異による影響を受けるのに対して、他方の対立遺伝子は、機能喪失突然変異による影響を受けない。しかし、一部の実施形態では、両方のEP300対立遺伝子が機能喪失突然変異による影響を受ける。一部の実施形態では、少なくとも1つの機能喪失突然変異が同型接合性であり、すなわち、突然変異は、両方の対立遺伝子に影響を与える。一部の実施形態では、各々のEP300対立遺伝子が異なる機能喪失突然変異又はEP300機能喪失突然変異の異なる組合せによる影響を受ける。
【0061】
本明細書に表示する核酸及びタンパク質配列、並びに本明細書に記載する突然変異は、例示的であり、本開示の範囲を限定することを意図しない。さらに別の好適な配列及び別の好適なEP300機能喪失突然変異は、本開示及び当技術分野の一般的知識に基づいて当業者に明らかになるか、又は通常の実験を用いるのみで本明細書の教示に基づいて当業者が確認することができる。本開示は、これに関して限定されない。
【0062】
癌及び腫瘍
本開示は、中でも、癌の治療において、例えば対象の腫瘍の治療のために有用な方法及び組成物を提供する。一部の実施形態では、癌又は腫瘍は、例えば、癌又は腫瘍と起源が同じ組織の非癌性又は非腫瘍細胞に認められる、又は予想されるEP300発現及び/又は活性レベルなどの参照レベルと比較してEP300機能喪失、例えばEP300機能喪失突然変異、又はEP300タンパク質の発現及び/若しくは活性レベルの低減を含む。
【0063】
例えば、本明細書に記載されるEP300機能喪失突然変異によって媒介されるEP300機能喪失を呈示し得ることから、CREBBP阻害療法による治療に対して感受性であり、従って本明細書に提供される方法及び組成物を用いて治療することができる癌として、例えば、以下のものが挙げられる:副腎皮質癌、星細胞腫、基底細胞癌、カルチノイド、噴門癌、胆管癌、脊索腫、慢性骨髄増殖性腫瘍、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管癌、上衣腫、眼内黒色腫、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、組織球増殖症、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、骨髄性白血病、及び骨髄性白血病)、リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、AIDS関連リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、骨髄異形成症候群、乳頭腫症、傍神経節腫、褐色細胞腫、胸膜肺芽腫、網膜芽細胞腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、子宮肉腫、血管肉腫)、ウィルムス腫瘍、及び/又は副腎皮質、肛門、虫垂、胆管、膀胱、骨、脳、乳房、気管支、中枢神経系、頸管、結腸、内膜、食道、眼、卵管、胆嚢、消化管、胚細胞、頭部及び頸部、心臓、腸、腎臓(例えば、ウィルムス腫瘍)、喉頭、肝臓、肺(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、口、鼻腔、口腔、卵巣、膵臓、直腸、皮膚、胃、精巣、咽喉、甲状腺、陰茎、咽頭、腹膜、脳下垂体、前立腺、直腸、唾液腺、尿管、尿道、子宮、膣、又は外陰部の癌。
【0064】
一部の実施形態では、本開示は、EP300機能喪失を呈示する対象の癌を治療する方法及び組成物を提供し、ここで、癌は、子宮内膜癌、膀胱尿路上皮癌、子宮頸部扁平上皮癌、子宮頸管腺癌、結腸腺癌、頭部及び頸部扁平上皮癌、胃腺癌、皮膚黒色腫、食道癌、リンパ系腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、結腸腺癌、肺扁平上皮癌、乳頭状腎細胞癌、胆管癌、多形膠芽細胞腫、肝細胞癌、卵巣漿液性嚢胞腺腫、肉腫、胸腺腫、浸潤性乳癌、肺腺癌、膵臓腺癌、淡明細胞型腎細胞癌、子宮癌、急性骨髄性白血病、ブドウ膜黒色腫、中皮腫、前立腺腺癌、副腎皮質癌、精巣胚細胞腫瘍、又は脳低悪性度神経膠腫である。
【0065】
一部の実施形態では、本開示は、対象の腫瘍を治療する方法及び組成物を提供する。一部の実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍である。一部の実施形態では、腫瘍は、液性又は分散性腫瘍である。一部の実施形態では、腫瘍又は腫瘍に含まれる細胞は、EP300機能喪失突然変異を保有する。一部の実施形態では、腫瘍は、限定されないが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、AIDS関連リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ランゲルハンス細胞組織球症、多発性骨髄腫、又は骨髄増殖性腫瘍を含む、血液系悪性腫瘍に関連する。
【0066】
一部の実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍を含む。一部の実施形態では、固形腫瘍として、限定されないが、膀胱、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、食道、子宮内膜、頭部及び頸部、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、皮膚、胃、子宮、又は上気道の腫瘍が挙げられる。一部の実施形態では、本開示の組成物及び方法によって治療することができる腫瘍は、乳房腫瘍である。一部の実施形態では、本開示の組成物及び方法によって治療することができる腫瘍は、肺腫瘍ではない。
【0067】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法及び組成物による治療に好適な腫瘍又は癌として、例えば、以下のものが挙げられる:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌(Adrenal Cortex Cancer)、副腎皮質癌(Adrenocortical Carcinoma)、AIDS関連癌(例えば、カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫)、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、非定型ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、癌腫、心(心臓)腫瘍、中枢神経系腫瘍、子宮頸癌、胆管癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胎児性腫瘍、内膜癌、内膜肉腫、上衣腫、食道、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼の癌、卵管癌、胆嚢癌、胃(Gastric)(胃(Stomach))癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭部及び頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、男性の乳癌、悪性線維性組織球腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、口腔癌(Mouth Cancer)、多発性内分泌腺腫症候群、多発性骨髄腫、形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成性/骨髄増殖性腫瘍、鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、傍神経節腫瘍、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、網膜芽細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、胃(Gastric)(胃(Stomach))癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、精巣癌、咽喉癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿道癌、子宮肉腫、子宮肉腫、膣癌、血管腫瘍、外陰部癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍。
【0068】
本開示のいくつかの態様は、EP300機能喪失を呈示する癌又は腫瘍がCREBBP阻害療法に対して感受性であることを教示する。一部の実施形態では、癌又は腫瘍は、EP300機能喪失突然変異を呈示する。一部の実施形態では、癌又は腫瘍は、本明細書に記載の機能喪失突然変異を呈示する。一部の実施形態では、癌又は腫瘍は、EP300のHATドメインの短縮、又はEP300のHATドメイン内のミスセンス突然変異をもたらすEP300突然変異を呈示する。一部の実施形態では、癌又は腫瘍は、野生型EP300発現の喪失を呈示する。一部の実施形態では、癌又は腫瘍は、EP300の突然変異型対立遺伝子、例えばEP300の機能喪失突然変異を保有する対立遺伝子を含み、EP300タンパク質の野生型発現の喪失を示す。一部のこうした実施形態では、癌又は腫瘍は、野生型EP300対立遺伝子を保有するが、野生型対立遺伝子から野生型EP300を発現しない。一部の実施形態では、野生型EP300対立遺伝子は、例えば、エピジェネティック機構を介してサイレンシングされる。一部の実施形態では、野生型対立遺伝子からのEP300発現は、転写抑制により、又は転写後若しくは翻訳後機構を介して低減又は消失する。一部の実施形態では、癌又は腫瘍の各EP300対立遺伝子は、少なくとも1つのEP300機能喪失突然変異による作用を受ける。
【0069】
本開示のいくつかの態様は、一部の実施形態において、EP300遺伝子中に機能喪失突然変異を保有する癌又は腫瘍がCREBBP阻害療法による治療に対して感受性であることを教示する。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物を用いて、又は本明細書に記載の方法に従って治療する癌又は腫瘍は、EP300突然変異型癌又は腫瘍である。他の実施形態では、癌又は腫瘍は、EP300機能喪失突然変異を保有しない。一部のこうした実施形態では、癌又は腫瘍は、エピジェネティック機構、例えばEP300のサイレンシング、又は転写後及び/若しくは翻訳後サイレンシングにより媒介されるEP300機能喪失を保有する。
【0070】
一部の特定の実施形態では、本開示は、EP300の突然変異を含む腫瘍の治療法を提供する。一部の実施形態では、本開示の方法及び組成物は、1つ又は複数の特定のCREBBP突然変異を保有する腫瘍の治療に使用されない。一部の実施形態では、本開示の方法及び組成物は、CREBBPが欠損した血液系腫瘍の治療に使用されない。
【0071】
感受性の検出
一部の実施形態では、本開示は、CREBBP阻害療法を用いた治療に対して感受性又は感応性の対象、癌、及び/又は腫瘍を定義する。一部の実施形態では、本開示は、そうした感受性の対象、癌、及び/又は腫瘍を識別及び/又は特性決定する技術を提供する。一部の実施形態では、本開示は、CREBBP阻害療法による治療に対する感受性を検出する技術を提供する。
【0072】
一部の実施形態では、提供される技術は、対象からのサンプル中における突然変異型遺伝子又は遺伝子産物、例えば機能喪失突然変異を含む突然変異型EP300遺伝子又は遺伝子産物を検出するステップを含む。一部の実施形態では、サンプルは、血液、血清、組織、又は腫瘍サンプルを含む。例えば、一部の実施形態において、提供される技術は、腫瘍生検サンプルを取得するステップ及び/又は腫瘍生検サンプルを分析するステップを含む。一部の実施形態では、サンプルは、腫瘍細胞又は腫瘍細胞成分(例えば、破砕腫瘍細胞又は破砕腫瘍細胞からの細胞溶解物)を含む。一部の実施形態では、サンプルは、腫瘍由来の核酸、例えば腫瘍DNA又はRNAを含む。一部の実施形態では、サンプルは、腫瘍由来のポリペプチドを含む。
【0073】
一部の実施形態では、本開示は、EP300の低減したレベル及び/若しくは活性、又はEP300遺伝子若しくは遺伝子産物中の機能喪失突然変異の保有によって特徴付けられる腫瘍がCREBBP阻害療法に対して感受性であることを立証する。
【0074】
一部の実施形態では、CREBBP阻害療法に対するこうした感受性は、1つ又は複数の機能喪失突然変異の存在及び/又はEP300の欠失、例えば本明細書に記載される1つ又は複数の機能喪失突然変異に関連する。例えば、一部の実施形態では、CREBBP阻害療法に対する感受性に関連するEP300突然変異としては、例えば、V5L、C1201Y、C1385Y、T329R、D1399N、D1399Y、S1650Y、A1437V、G711でのスプライス変異、K1468fs、K1488fs、K291fs、R1234fs、Y1467fs、P1081S、P802L、R1055*、R1645*、Q1874E、Q2023*、Q2306E、Q993*、R397*、R86*、R1950G、S1754*、W1509C、G1042*、Y1414C、又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0075】
例えば、一部の実施形態では、CREBBP阻害療法に対する感受性に関連するEP300突然変異としては、例えば、G30V、K423T、R883G、T891P、P2097A、E1014*、又はQ1661*を挙げることができる。
【0076】
一部の実施形態では、CREBBP阻害療法に対する感受性に関連するEP300突然変異は、例えば、表4に列記する通り又は図面の何れかに記載の通り、本明細書に提供される任意のEP300突然変異、又はそうした突然変異の組合せを含み得る。さらに別の好適なEP300突然変異は、本開示及び当技術分野の一般的知識に基づいて当業者に明らかであろう。本開示は、これに関して限定されない。
【0077】
一部の実施形態では、CREBBP阻害療法に対する感受性に関連するEP300突然変異は、参照物と比較してDNAコピー数の変化によって特徴付けられ得る。一部の実施形態では、こうしたEP300突然変異は、参照物と比較してmRNA発現レベルの変化によって特徴付けられる。一部の実施形態では、参照は、過去の参照、集団に基づく参照、又は対象別の参照である。一部の実施形態では、参照は、対象の腫瘍以外の組織由来の核酸のサンプルから決定される。
【0078】
一部の実施形態では、本明細書に記載のCREBBP阻害療法に対する感受性に関連するEP300突然変異は、フレームシフト突然変異、スプライス変異体、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、挿入、欠失、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、フレームシフト突然変異(fs)は、DNAのリーディングフレームのシフトをもたらすヌクレオチドの挿入又は欠失によってもたらされる突然変異である。一部の実施形態では、スプライス変異体は、突然変異の非存在下で認められないか、又は頻繁に認められないスプライシングをもたらす突然変異から生じる。一部の実施形態では、ミスセンス突然変異は、突然変異の非存在の場合にコードされるアミノ酸と異なるアミノ酸をコードするコドンをもたらす単一ヌクレオチドの変化である。一部の実施形態では、ナンセンス突然変異は、終止コドンをもたらす突然変異である(本明細書では「*」で例示する)。
【0079】
一部の実施形態では、CREBBP阻害療法に対して感受性の対象又は対象内の癌細胞は、EP300のKIXドメイン、ブロモドメイン、又はHATドメインに突然変異を含むEP300突然変異体を保有する。一部の実施形態では、癌を有するか又は癌と診断された対象は、配列番号3に示されるEP300タンパク質配列中の下記の残基、又はその残基均等物:V5、R86、K291、T329、R397、G711、P802、P1081、Q993、G1042、R1055、C1201、R1234、C1385、D1399、Y1414、A1437、Y1467、K1468、K1488、W1509、R1645、S1650、S1754、Q1874、R1950、Q2023、及びQ2306の1つ又は複数に突然変異を保有する対象、又は対象内の癌細胞に基づいて、本明細書に提供されるCREBBP阻害療法による治療に対して感受性であると判断される。
【0080】
一部の実施形態では、癌を有するか又は癌と診断された対象は、配列番号3に示されるEP300タンパク質配列中の下記の残基、又はその残基均等物:G30、K423、R883、T891、E1014、Q1661、及びP2097の1つ又は複数に突然変異を保有する対象、又は対象内の癌細胞に基づいて、本明細書に提供されるCREBBP阻害療法による治療に対して感受性であると判断される。
【0081】
例えば、一部の実施形態では、対象又は対象内の癌細胞は、配列番号3に示されるEP300タンパク質配列中の下記の突然変異、又はその機能性同等突然変異:V5L、T329R、P802L、P1081S、C1201Y、C1385Y、D1399N、D1399Y、Y1414C、A1437V、W1509C、S1650Y、Q1874E、R1950G、若しくはQ2306E置換:K291fs、R1234fs、K1468fs、K1488fs、若しくはY1467fsフレームシフト突然変異;R86*、R397*、Q993*、G1042*、R1055*、R1645*、S1754*、若しくはQ2023*短縮;又はG711でのスプライス変異の1つ又は複数を保有する。
【0082】
例えば、一部の実施形態では、対象又は対象内の癌細胞は、配列番号3に示されるEP300タンパク質配列中の下記の突然変異、又はその機能的に均等な突然変異:G30V、K423T、R883G、T891P、P2097A、E1014*、又はQ1661*の1つ又は複数を保有する。
【0083】
一部の実施形態では、癌を有するか又は癌と診断された対象は、例えば、本明細書の何れかの箇所、表4、若しくは図面の何れかに記載されるEP300突然変異、又はそうした突然変異の任意の組合せを保有する対象、又は対象内の癌細胞に基づいて、本明細書に提供されるCREBBP阻害療法による治療に対して感受性であると判断される。一部の実施形態では、本開示は、対象又は対象内の癌細胞におけるEP300遺伝子又は遺伝子産物中の機能喪失突然変異の存在、又は低減したEP300活性の存在、又はEP300活性の消失に基づいて、対象又は対象内の癌細胞が、本明細書に提供されるCREBBP阻害療法による治療に対して感受性であるか否かを判断するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、例えば、対象から取得した生体サンプルを分析することにより、対象又は対象内の癌細胞における機能喪失突然変異及び/又は低減若しくは消失したEP300活性を検出するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、対象からサンプルを取得するステップをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、対象又は対象内の癌細胞がCREBBP阻害療法による治療に対して感受性であると判断された場合、対象にCREBBP阻害療法を投与するステップをさらに含む。
【0084】
一部の実施形態では、本開示は、サンプル中における低減したEP300レベル又は活性を検出するための技術を提供する。一部の実施形態では、本開示は、サンプル中における1つ又は複数のEP300突然変異(例えば、特定の機能喪失突然変異又は欠失)の存在を検出するための技術を提供する。
【0085】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるEP300突然変異は、EP300コード領域の上流、下流、又は領域内の部位に改変を含み;一部の実施形態では、本明細書に記載されるEP300突然変異は、EP300のHATドメインの上流、下流、又は領域内の部位に改変を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されるEP300突然変異は、HATドメインの破壊によって特徴付けられる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるEP300突然変異は、HATドメインの破壊又は喪失によって特徴付けられる(例えば、HATドメインは、EP300から完全に存在しないか又は一部が存在しない)。一部の実施形態では、本明細書に記載されるEP300突然変異は、HATドメイン内の突然変異によって特徴付けられる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるEP300突然変異は、HATドメイン上流の突然変異によって特徴付けられる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるEP300突然変異は、HATドメイン下流の突然変異によって特徴付けられる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるEP300突然変異は、EP300調節領域内の部位(例えば、プロモータ、エンハンサー、スプライス部位、終結部位)内の部位に改変を含む。一部の実施形態では、遺伝子又は遺伝子産物からの突然変異形態は、例えば、サンガー(Sanger)ジデオキシシーケンシング、パイロシーケンシング、次世代シーケンシング-アンプリコンキャプチャー、次世代シーケンシング-ハイブリダイゼーションキャプチャー、次世代シーケンシング-全エクソームシーケンシング、次世代シーケンシング-全ゲノムシーケンシング、デジタルドロップレットPCR、ビーズ、乳化、増幅、及び磁気学(例えば、「BEAMing」)、一塩基伸長アッセイ、制限酵素断片長多型(RFLP)、多重ライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)、一本鎖高次構造多型(SSCP)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、マイクロアレイ、対立遺伝子特異的PCR、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、質量分析法により、核酸(例えば、染色体DNA、ゲノムDNA、pre-mRNA、mRNA、cDNA)中で検出される。一部の実施形態では、遺伝子又は遺伝子産物からの突然変異体形態は、例えば、質量分析法、HPLC、ファーウエスタンを含むウエスタンブロッティング、免疫沈降、酵素活性アッセイ又はそれらの組合せにより、ポリペプチド中で検出される。突然変異体を検出するための別の好適な方法は、本開示及び当技術分野の一般的知識に基づいて当業者に明らかになるであろう。本開示は、これに関して限定されない。
【0086】
本開示のいくつかの態様は、EP300の機能喪失によって特徴付けられる癌又は腫瘍に基づき、特定の癌又は腫瘍がCREBBP阻害療法に対して感受性であることを教示する。一部の実施形態では、EP300の機能喪失は、機能成熟の喪失、例えば本明細書に記載の機能成熟の喪失によって引き起こされる。しかし、一部の実施形態では、癌又は腫瘍は、既知の機能成熟の喪失を伴わないEP300機能喪失によって特徴付けられる。例えば、一部のこうした実施形態では、腫瘍若しくは癌、又は腫瘍若しくは癌細胞のサブタイプ若しくは亜集団のEP300タンパク質レベルは、参照レベルと比較して、例えば同じ組織に由来する正常、非悪性細胞と比較して低下する。一部のこうした実施形態では、EP300機能喪失は、EP300遺伝子、又はEP300の発現に関与する転写若しくは翻訳機構の1成分のエピジェネティックサイレンシングの結果であり得る。一部の実施形態では、EP300機能喪失は、高レベルのEP300分解の結果であり得る。EP300機能喪失の基本的な原因にかかわらず、転写物若しくはタンパク質発現レベルの低減若しくは消失、又はEP300の機能の低減若しくは消失は、適切なアッセイにより検出することができ、そうしたアッセイは、当業者に明らかであろう。こうしたアッセイとして、例えば、マイクロアッセイ、Q-PCR、質量分析、HPLC、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、酵素活性アッセイ、蛍光アッセイ、ELISAアッセイ、AlphaLisaアッセイ、又はそれらの組合せが挙げられる。ゲノム、転写、又はタンパク質発現又は機能レベルでのEP300機能喪失を検出するための別の好適な方法は、本開示及び当技術分野の一般的知識に基づいて当業者に明らかになるであろう。本開示は、これに関して限定されない。
【0087】
本開示のいくつかの態様は、EP300機能喪失を呈示する対象、癌、又は腫瘍に基づき、CREBBP阻害療法による治療に対して感受性であるとして、癌又は腫瘍を有する対象を識別する上で有用な方法を提供する。本開示のいくつかの態様は、癌又は腫瘍中のEP300機能喪失を検出するステップを含む診断方法を提供し、ここで、癌又は腫瘍は、例えば、EP300機能喪失突然変異、癌若しくは腫瘍中のEP300発現の低減、及び/又は癌若しくは腫瘍中のEP300活性の低減を検出することにより、EP300の機能喪失が検出された場合、CREBBP阻害療法に対して感受性の癌又は腫瘍として識別される。本開示のいくつかの態様は、癌又は腫瘍中のEP300機能喪失を検出するステップを含む方法を提供し、ここで、癌又は腫瘍は、癌若しくは腫瘍、又は癌細胞若しくは腫瘍細胞、又は癌細胞集団若しくは腫瘍細胞集団中にEP300の機能喪失が検出された場合、CREBBP阻害療法に対して感受性であると識別される。一部の実施形態では、本方法は、癌細胞若しくは腫瘍細胞、又は癌細胞集団若しくは腫瘍細胞集団を含むサンプルを取得するステップと、サンプル中におけるEP300遺伝子産物のレベル(例えば、EP300転写物若しくはEP300タンパク質レベル)、EP300機能喪失突然変異、又はEP300酵素活性のレベルを検出するステップとを含む。一部の実施形態では、EP300発現又は活性レベルを、参照レベル、例えば特性が類似するが、癌若しくは腫瘍細胞又は細胞集団を含有しないことがわかっているサンプル、例えば癌又は腫瘍が由来する組織と同じ組織からの細胞のサンプル又は細胞集団のサンプル中で観測若しくは予想されるレベルと比較する。一部の実施形態では、参照物と比較して、癌若しくは腫瘍、又は癌細胞若しくは腫瘍細胞中にEP300の機能喪失が検出される場合、その癌又は腫瘍は、CREBBP阻害療法に対して感受性として識別される。一部の実施形態では、EP300機能喪失を検出するステップは、EP300の機能喪失突然変異、例えば本明細書に記載の突然変異、又は当業者に周知の他の突然変異を検出するステップを含む。一部の実施形態では、EP300機能喪失突然変異を検出するステップは、突然変異が異型接合性又は同型接合性の何れであるかを検出するステップを含む。一部の実施形態では、突然変異は、異型接合である。一部の実施形態では、EP300機能喪失を検出するステップは、EP300遺伝子産物、例えばEP300転写物又はEP300タンパク質の発現レベルを検出するステップを含む。一部の実施形態では、EP300機能喪失は、例えば、癌又は腫瘍が由来する組織と同じ組織の正常細胞中のEP300の発現レベルと比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%のEP300発現レベルの低減である。一部の実施形態では、EP300機能喪失は、EP300発現の完全な消失、例えば検出可能なレベルを下回る低減である。一部の実施形態では、EP300機能喪失を検出するステップは、癌又は腫瘍を有する対象から得た癌又は腫瘍、例えば癌細胞若しくは腫瘍細胞、又は癌細胞集団若しくは腫瘍細胞集団中のEP300活性のレベルを決定するステップを含む。EP300突然変異、発現レベル、及び活性レベルは、本明細書に記載されるか、又は他に当業者に周知である任意の好適な方法によって測定することができる。好適な方法として、限定されないが、サンガー(Sanger)ジデオキシシーケンシング、パイロシーケンシング、次世代シーケンシング-アンプリコンキャプチャー、次世代シーケンシング-ハイブリダイゼーションキャプチャー、次世代シーケンシング-全エクソームシーケンシング、次世代シーケンシング-全ゲノムシーケンシング、デジタルドロップレットPCR、ビーズ、乳化、増幅、及び磁気学(例えば、「BEAMing」)、一塩基伸長アッセイ、制限酵素断片長多型(RFLP)、多重ライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)、一本鎖高次構造多型(SSCP)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、マイクロアレイ、対立遺伝子特異的PCR、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、質量分析法、HPLC、ファーウエスタンを含むウエスタンブロッティング、免疫沈降、酵素活性アッセイ、例えば蛍光発生活性アッセイ、同位体取り込みアッセイ、蛍光偏光アッセイ、ELISAアッセイ、AplphaLisaアッセイ、又はこうしたアッセイの組合せが挙げられる。EP300機能喪失を検出する別の好適な方法は、本開示及び当技術分野の一般的知識に基づいて当業者に明らかになるであろう。本開示は、これに関して限定されない。
【0088】
一部の実施形態では、CREBBP阻害療法に対する癌又は腫瘍の感受性を決定する方法が提供される。いくつかの態様では、こうした方法は、少なくとも1つのEP300対立遺伝子中にEP300機能喪失突然変異を保有し、野生型EP300発現(例えば、EP300機能喪失突然変異による影響を受けていない対立遺伝子から)の喪失を呈示する癌細胞又は腫瘍細胞がCREBBP阻害療法による治療に対して感受性であるという認識に基づいている。一部の実施形態では、本方法は、(a)癌又は腫瘍中のEP300の機能喪失突然変異を検出するステップと、(b)癌又は腫瘍中において、野生型EP300発現、例えばEP300機能喪失突然変異を保有しないEP300対立遺伝子からの発現の喪失を検出するステップとを含み、ここで、癌又は腫瘍がEP300機能喪失突然変異を保有し、且つ野生型EP300発現の喪失を呈示する場合、癌又は腫瘍は、CREBBP阻害療法に対して感受性として識別される。一部の実施形態では、野生型EP300発現の喪失は、例えば、癌又は腫瘍が由来する組織と同じ組織の正常細胞のEP300の発現レベルと比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%のEP300発現レベルの低減である。一部の実施形態では、EP300の機能喪失は、EP300発現の完全な消失である。EP300機能喪失突然変異を検出する好適な方法、並びに野生型EP300の発現、又はその非存在を検出する好適な方法は、本明細書に記載されているか、又は他に当業者に周知である。本開示は、これに関して限定されない。
【0089】
CREBBPアンタゴニスト
一部の実施形態では、CREBBP阻害療法は、対象へのCREBBPアンタゴニストの投与を含む。例えば、一部の実施形態では、CREBBP阻害療法は、CREBBP遺伝子又は遺伝子産物のレベル及び/又は活性を低減するCREBBPアンタゴニストを含む。
【0090】
一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、ポリペプチド、核酸、糖、脂質、小分子、金属、又はこれらの組合せを含む。例えば、一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、抗体又はその抗原結合部分(例えば、CREBBP遺伝子産物に特異的に結合するもの)を含む。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、例えばCREBBPメッセージ(例えば、一次転写物、スプライス産物)の生成若しくは翻訳を低減するように作用するもの)、及び/又は遺伝子療法薬(例えば、CREBBP遺伝子若しくは遺伝子産物を置換、又は修飾する薬剤)を含む。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、小分子薬剤(例えば、分子量が1,500ダルトン未満の有機化合物)を含む。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、水溶性である。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、錠剤又は注射用組成物に製剤化される。
【0091】
一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、CREBBP遺伝子産物のHATドメインをターゲティングするか、それに結合するか、又はそれを阻害する。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、CREBBP遺伝子産物のブロモドメインをターゲティングするか、それに結合するか、又はそれを阻害する。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストはまた、少なくとも1つの別のタンパク質、例えばEP300の活性もターゲティングするか、それに結合するか、又はそれを阻害する。
【0092】
一部の実施形態では、CREBBP阻害療法は、腫瘍体積の減少を誘導する。一部の実施形態では、腫瘍体積の減少は、アポトーシスの結果である。一部の実施形態では、腫瘍体積の減少は、壊死の結果である。
【0093】
小分子薬剤
一部の実施形態では、本明細書に記載のCREBBPアンタゴニストは、小分子薬剤、例えば分子量が1,500ダルトン未満、1,000ダルトン未満、900ダルトン未満、750ダルトン未満、又は500ダルトン未満の有機薬剤を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のCREBBPアンタゴニストは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼドメインの阻害剤である。
【0094】
一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、表2に示す小分子、又はその薬学的に許容される塩、水和物、鏡像異性体若しくは立体異性体である。
【0095】
一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、表3に示す小分子、又はその薬学的に許容される塩、水和物、鏡像異性体若しくは立体異性体である。
【0096】
別の好適なCREBBPアンタゴニストは、本開示に基づいて、当業者に明らかになるであろう。本開示のいくつかの実施形態での使用に好適な例示的CREBBPアンタゴニストとして、限定しないが、国際公開第2016/044694 Al号パンフレットで公開された国際特許出願PCT/米国特許第2015/050877号明細書;国際公開第2016/044770 Al号パンフレットで公開された国際特許出願PCT/米国特許第2015/051028号明細書;国際公開第2016/044771 Al号パンフレットで公開された国際特許出願PCT/米国特許第2015/051029号明細書;国際公開第2016/044777 Al号パンフレットで公開された国際特許出願PCT/米国特許第2015/051040号明細書;国際公開第2016/055028 Al号パンフレットで公開された国際特許出願PCT/CN2015/091614号明細書;国際公開第2015/054642 A9号パンフレットで公開された国際特許出願PCT/米国特許第2014/060147号明細書;国際公開第2016/086200 Al号パンフレットで公開された国際特許出願PCT/米国特許第2015/062794号明細書に報告されているものが挙げられ;これらの各々の全内容は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0097】
CREBBPアンタゴニストとして作用することができ、且つ本開示の一部の実施形態での使用に好適な別の小分子薬剤は、当業者に明らかであり、そうしたCREBBPアンタゴニストの非限定的例は、Taylor et al.ACS Med Chem Lett.2016 Mar 15;7(5):531-6;Emami et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2004;101:12682-7;Guidez et.al.Mol.Cell Biol.2005,5552,2012,77,9044;Chandregowda et al.Eur.J.Med.Chem.2009,44:2711-19;Secci et al.Bioorg Med Chem.2014 Mar 1;22(5):1680-9;Bowers et al.Chem Biol.2010 May 28;17(5):471-82;Milite et al.J Med Chem.2015 Mar 26;58(6):2779-98 Gajer et al.Oncogenesis.2015 Feb 9;Rooney et al.Angew Chem Int Ed Engl.2014 Jun 10;53(24):6126-30;及びFalk et al.J Biomol Screen December 2011 vol.16 no.10 1196-1205に報告されているものが挙げられ;これらの各々の全内容は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0098】
別の好適なCREBBPアンタゴニストは、当業者に明らかであろう。本開示は、これに関して限定されない。
【0099】
核酸薬剤
アンタゴニスト治療薬が核酸(例えば、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド)を含む様々な治療法が当技術分野で知られており、理解されている。例えば、中でも、アンタゴニスト核酸治療薬は、センス若しくはアンチセンス核酸薬剤、遺伝子治療薬、又は遺伝子編集薬剤を含み得る。
【0100】
一部の実施形態では、センス又はアンチセンス核酸薬剤としてsiRNA、shRNA又はmiRNAが挙げられる。一部の実施形態では、センス又はアンチセンス核酸薬剤は、siRNAを含まない。一部の実施形態では、アンタゴニスト治療用核酸薬剤は、遺伝子治療薬である。一部の実施形態では、遺伝子治療薬は、遺伝子又は遺伝子産物のレベル又は活性を改変する薬剤、例えばDNA又はRNAを含む。一部の実施形態では、遺伝子治療薬は、ベクター系中のセンス又はアンチセンス核酸を含む。一部の実施形態では、ベクター系は、例えば、ベクターを標的細胞中に導入することができるウイルスエンベロープ内に含まれるベクター及び脂質核酸送達系又はウイルスベクターを含み得る。一部の実施形態では、遺伝子編集薬剤は、CRISPR/Cas系(Sternberg et al.Nature.2014 Mar 6;507(7490):62-7;O’Connell et al.Nature.2014 Dec 11;516(7530):263-6;Mali et al.Science.2013 Feb 15;339(6121):823-6)を含む薬剤であり得る。一部の実施形態では、遺伝子編集薬剤は、TALENs(Boch J et al.Annual Review of Phytopathology 48:419-36;Boch J et al.Nature Biotechnology 29(2):135-6;Christian,M et al.Genetics 186(2):757-61)を含む薬剤であり得る。一部の実施形態では、遺伝子編集薬剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Urnov et al.Nature.2005 Jun 2;435(7042):646-51;Miller et al.Nat Biotechnol.2007 Jul;25(7):778-85;Hockemeyer et al.Nat Biotechnol.2009 Sep;27(9):851-7)を含む薬剤であり得る。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系、TALEN系、又はZFN系は、標的細胞、例えば癌細胞中のCREBBPタンパク質をコードするゲノム配列を標的化して標的細胞中のCREBBPタンパク質に機能喪失突然変異を引き起こす。
【0101】
ポリペプチド薬剤
一部の実施形態では、本明細書に記載のCREBBPアンタゴニストは、ポリペプチド薬剤を含む。一部の実施形態では、ポリペプチド薬剤は、CREBBP遺伝子又は遺伝子産物のレベル及び/又は活性を低減し得る組換えポリペプチドであり得る。一部の実施形態では、ポリペプチド薬剤は、CREBBP遺伝子産物に結合し得る。一部の実施形態では、ポリペプチド薬剤は、抗体又はその抗原結合断片(例えば、Fab、若しくはscFV)であり得る。一部の実施形態では、ポリペプチド薬剤は、CREBBPの活性のレベルを高めるポリペプチド又は核酸に結合して、その活性を低減し得る。
【0102】
医薬組成物
CREBBPアンタゴニスト、例えば本明細書に提供されるCREBBPアンタゴニストは、単独で、例えば薬学的に許容される塩の形態で、CREBBPアンタゴニスト又はCREBBPアンタゴニストの塩の溶媒和又は水和形態で、並びにCREBBPアンタゴニストの塩、溶媒和化合物及び/又は水和形態の任意の多形体又は結晶形態をはじめとするCREBBPアンタゴニストの任意の多形体又は結晶形態で、又は例えばCREBBPアンタゴニストが好適な担体又は賦形剤と混合された医薬組成物として、対象、例えばヒト患者に投与することができる。医薬組成物は、典型的に、レシピエント対象において疾患又は状態を治療又は改善する、例えば本明細書に記載する癌を治療又は改善するのに十分な用量を含むか又はそのような用量で投与することができる。従って、医薬組成物は、対象への投与に好適な様式で製剤化される。すなわち、医薬組成物は、病原体を含まず、対象への投与、例えばヒト対象への投与のために適用される規制基準に従って製剤化される。一例として、注射用の製剤は、典型的に、滅菌され、実質的に発熱性物質を含まない。
【0103】
好適なCREBBPアンタゴニストは、例えば、好適に製剤化された医薬組成物中の他の薬剤、例えば1つ又は複数の別の治療薬との混合物として投与することもできる。例えば、本開示の一態様は、治療有効量のCREBBPアンタゴニスト、又はその薬学的に許容される塩、水和物、鏡像異性体若しくは立体異性体と、薬学的に許容される希釈剤若しくは担体とを含む医薬組成物に関する。
【0104】
CREBBPアンタゴニストの製剤化及び投与のための技術は、Remington’s“The Science and Practice of Pharmacy,”21st ed.,Lippincott Williams&Wilkins 2005など、当業者に周知の参照文献に見出すことができ、それらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
本明細書に提供される医薬組成物は、典型的に、好適な投与経路のために製剤化される。好適な投与経路として、例えば、経腸投与、例えば経口、直腸、若しくは腸投与;非経口投与、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、又は髄内、並びに髄腔内、直接脳室内、若しくは眼内注射;点眼及び経皮を含む局所送達;並びに鼻内及び他の経粘膜送達、又は本明細書に提供されているか、又はそうでなければ当業者に明らかな何れかの好適な経路を挙げることができる。
【0106】
本明細書に提供される医薬組成物は、例えば、混合、溶解、顆粒化、ドラジェ製造、粉化、乳化、カプセル化、閉じ込め、若しくは凍結乾燥法、又は当業者に周知の任意の他の好適な方法によって製造することができる。
【0107】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用することができる製剤へのCREBBPアンタゴニストの処理を促進する賦形剤及び補助剤を含む、1つ又は複数の生理学的に許容される担体を用いて製剤化することができる。適正な製剤化は、選択した投与経路に依存する。
【0108】
注射の場合、本発明の薬剤は、水溶液中、好ましくはハンクス液、リンガー液、又は緩衝生理食塩水などの生理学的に適合性のバッファー中で製剤化することができる。経粘膜投与の場合、透過しようとする障壁に適した浸透剤を製剤に使用する。こうした浸透剤は、当技術分野で一般に知られている。
【0109】
経口投与の場合、CREBBPアンタゴニストを当技術分野で公知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより、CREBBPアンタゴニストを容易に製剤化することができる。こうした担体は、提供されるCREBBPアンタゴニストを治療対象の患者による経口摂取のための錠剤、丸薬、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬製剤は、CREBBPアンタゴニストを固体賦形剤と合わせ、任意選択で、得られた混合物を摩砕し、必要に応じて好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理して、錠剤又はドラジェコアを取得することによって得ることができる。好適な賦形剤として、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールをはじめとする糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物が挙げられる。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩といった崩壊剤を添加し得る。
【0110】
ドラジェコアには、好適なコーティングを付与する。この目的のために、濃縮糖溶液を使用することができ、これは、任意選択で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに好適な有機溶媒若しくは溶媒混合物を含有し得る。識別の目的で又はCREBBPアンタゴニスト用量の様々な組合せを特徴付けるために、錠剤又はドラジェコーティングに染料又は顔料を添加し得る。
【0111】
経口使用することができる医薬製剤としては、ゼラチン製のプッシュ-フィット式カプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤から製造された軟質密封カプセルがある。プッシュ-フィット式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、任意選択で安定剤と混合して、活性成分、例えば1つ又は複数の好適なCREBBPアンタゴニストを含有することができる。軟質カプセルの場合、CREBBPアンタゴニストを脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解又は懸濁させ得る。さらに、安定剤を添加し得る。
【0112】
口腔内投与の場合、組成物は、好都合な方法で製剤化された錠剤又はロゼンジの形態を取り得る。
【0113】
吸入による投与の場合、本開示の使用のためのCREBBPアンタゴニストは、好都合には、好適な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスを用いて、加圧パック又はネブライザーからエーロゾルスプレープレゼンテーションの形態で送達される。加圧エーロゾルの場合、計測量を送達するための弁を設けることにより、用量単位を決定することができる。吸入器又は通気器で使用するための例えばゼラチン製のカプセル又はカートリッジは、CREBBPアンタゴニスト及びラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基材の粉末混合物を含有させて製剤化され得る。
【0114】
好適なCREBBPアンタゴニストは、注射、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射用の製剤は、単位剤形、例えばアンプル又は複数回用量容器中に提供され得、一部の実施形態では、添加された防腐剤を含有し得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又は乳剤などの形態であり得、懸濁、安定化及び/又は分散剤などの配合剤を含有し得る。
【0115】
非経口投与のための医薬組成物は、水溶性形態中のCREBBPアンタゴニストの水溶液を含む。さらに、CREBBPアンタゴニストの懸濁液は、適切な注射懸濁液、例えばCREBBPアンタゴニスト、例えば水性又は油性注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注射液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランなど、懸濁液の粘度を高める物質を含有し得る。任意選択で、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、CREBBPアンタゴニストの溶解度を高める好適な安定剤又は薬剤も含有し得る。
【0116】
或いは、活性成分、例えばCREBBPアンタゴニストは、使用前に好適なビヒクル、例えば発熱性物質除去蒸留水を用いて再形成するために粉末形態であり得る。
【0117】
CREBBPアンタゴニストはまた、例えば、ココアバター若しくは他のグリセリドなどの常用の座薬基剤を含有する座薬又は停留浣腸などの直腸用組成物に製剤化することもできる。
【0118】
前述した製剤以外にCREBBPアンタゴニストをデポ製剤として製剤化することもできる。こうした長期に作用する製剤は、移植(例えば、皮下若しくは筋肉内移植又は筋肉内注射による)によって投与することができる。従って、例えば、CREBBPアンタゴニストは、好適なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)又はイオン交換樹脂と一緒に又はやや難溶性の誘導体として(例えば、難溶性塩として)製剤化され得る。
【0119】
或いは、疎水性医薬CREBBPアンタゴニストの他の送達系を使用し得る。リポソーム及び乳剤が疎水性薬剤のための送達ビヒクル又は担体の例である。また、ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒を用い得る。さらに、CREBBPアンタゴニストは、治療薬を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどの徐放システムを用いて送達することもできる。様々な徐放材料が確立されており、当業者に周知である。徐放カプセルは、その化学的性質に応じて数時間、数日、数週間、又は数ヶ月間、例えば最大100日にわたってCREBBPアンタゴニストを放出することができる。
【0120】
医薬組成物は、好適な固相又はゲル相担体又は賦形剤も含み得る。こうした担体又は賦形剤の例として、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0121】
別の好適な医薬組成物並びに好適なCREBBPアンタゴニストを製剤化する方法及び戦略は、本開示に基づいて当業者に明らかになるであろう。本開示は、これに関して限定されない。
【0122】
治療方法
本開示のいくつかの態様は、標的タンパク質のアセチル化、例えばCREBBP活性によりアセチル化されたヒストンを調節するのに十分な量でCREBBP阻害剤を対象に投与することにより、それを必要とする対象においてタンパク質アセチル化、例えばヒストンアセチル化を調節する方法を提供する。一部の実施形態では、対象は、癌又は前癌状態を有するか又は有すると診断された対象である。一部の実施形態では、対象は、EP300遺伝子に機能喪失突然変異を保有するか又は突然変異型EP300遺伝子産物を発現する。
【0123】
本明細書には、CREBBPによりアセチル化されるヒストン又は他のタンパク質のアセチル化状態を調節することにより、その経過に影響を及ぼすことができる、癌又は前癌状態などの状態及び疾患の症状を治療、予防又は軽減する方法が提供され、ここで、前記アセチル化状態は、少なくともその一部がCREBBPの活性により媒介される。ヒストンのアセチル化を調節すれば、今度は、アセチル化により活性化される標的遺伝子及び/又はアセチル化により抑制される標的遺伝子の発現レベルに影響を及ぼすことができる。
【0124】
例えば、本発明のいくつかの態様は、癌又は前癌状態の症状を治療又は軽減する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、癌又は前癌状態を有する対象に例えば医薬組成物の形態のCREBBPアンタゴニストを治療有効量で投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、突然変異型EP300遺伝子を保有するか又は突然変異型EP300遺伝子産物を発現する。一部の実施形態では、突然変異型EP300遺伝子又は突然変異型EP300遺伝子産物の突然変異は、機能喪失突然変異である。一部の実施形態では、対象又は対象における標的細胞、例えば癌細胞は、好適な参照EP300活性、例えば健常な対象若しくは細胞において、又はEP300遺伝子若しくは遺伝子産物に機能喪失突然変異を保有しないか、又は野生型EP300遺伝子若しくは遺伝子産物を発現する対象若しくは細胞中で測定された、若しくは予想されるEP300活性と比較して50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2.5%未満、2%未満、1%未満、1%未満、又は0.1%未満のEP300活性を発現する。
【0125】
一部の実施形態では、対象は、そのKIXドメイン、そのブロモドメイン、又はそのHATドメイン中に突然変異を含むEP300突然変異体を保有する。一部の実施形態では、対象は、配列番号3に示されるEP300タンパク質配列中の下記残基、又はその残基均等物:V5、R86、K291、T329、R397、G711、P802、P1081、Q993、G1042、R1055、C1201、R1234、C1385、D1399、Y1414、A1437、Y1467、K1468、K1488、W1509、R1645、S1650、S1754、Q1874、R1950、Q2023、及びQ2306の1つ又は複数に突然変異を保有する。例えば、一部の実施形態では、対象は、配列番号3に示されるEP300タンパク質配列に下記の突然変異、又は機能的に均等な突然変異:V5L、T329R、P802L、P1081S、C1201Y、C1385Y、D1399N、D1399Y、Y1414C、A1437V、W1509C、S1650Y、Q1874E、R1950G、若しくはQ2306E置換;K291fs、R1234fs、K1468fs、K1488fs又はY1467fsフレームシャフト突然変異;R86*、R397*、Q993*、G1042*、R1055*、R1645*、S1754*、若しくはQ2023*短縮;又はG711でのスプライス変異の1つ又は複数を保有する。一部の実施形態では、対象は、本明細書、例えば本明細書の何れかの箇所、表4、若しくは図面の何れかに提供されるEP300突然変異、又はこうした突然変異の任意の組合せを保有する。
【0126】
一部の実施形態では、CREBBP阻害剤は、CREBBPのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する。一部の実施形態では、CREBBP阻害剤は、CREBBPのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を選択的に阻害する。
【0127】
一部の実施形態では、対象は、ヒストンアセチル化の調節異常、例えばEP300及び/若しくはCREBBPの機能不全に関連することがわかっている疾患又は障害を有すると診断される。一部の実施形態では、対象は、疾患又は障害を有すると診断され、且つEP300機能喪失突然変異を保有することが判明している。一部の実施形態では、対象は、癌を有すると診断されている。
【0128】
ヒストンアセチル化調節異常は、癌及び他の疾患における特定の遺伝子の異常発現に関与することが報告されている。本明細書に記載するCREBBPアンタゴニストは、そのようなヒストンアセチル化関連疾患を治療する、例えば罹患した細胞、組織、又は対象におけるCREBBP媒介性ヒストンアセチル化を阻害するために使用することができる。
【0129】
ヒストンアセチル化のモジュレータは、例えば、異常なヒストンアセチル化をもたらす突然変異を保有する細胞の細胞増殖を調節するか、又は生存若しくは増殖のためにCREBBPヒストンアセチル化に依存する細胞、例えばEP300遺伝子又は遺伝子産物配列に機能喪失を有する細胞の細胞死を誘導するために使用することができる。従って、CREBBPアンタゴニストを用いて治療することができる疾患として、例えば、EP300機能喪失突然変異を保有する低増殖性疾患における良性細胞増殖及び悪性細胞増殖(癌)などの過剰増殖性疾患がある。
【0130】
本明細書に提供されるCREBBPアンタゴニストを用いて治療することができる例示的な癌として、限定されないが、以下のものが挙げられる:EP300突然変異型癌、例えば非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBGL)などのリンパ腫;黒色腫;並びにCML;急性リンパ芽球性白血病;急性骨髄性白血病などの白血病;副腎皮質癌;AIDS関連癌;AIDS関連リンパ腫;肛門癌;星細胞腫、小児小脳腫瘍;星細胞腫、小児大脳腫瘍;基底細胞癌、皮膚癌(非黒色腫)を参照;胆管癌、肝外;膀胱癌;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫;脳腫瘍;脳腫瘍、小脳星細胞腫;脳腫瘍、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫;脳腫瘍、上衣腫;脳腫瘍、髄芽腫;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍;脳腫瘍、視路視床下部神経膠腫;乳癌;気管支腺腫/カルチノイド;バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍;カルチノイド腫瘍、消化管;原発不明の癌腫;中枢神経系リンパ腫、原発性;小脳星細胞腫;子宮頸癌;小児癌;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄性白血病、有毛細胞;慢性骨髄増殖性障害;結腸癌;大腸癌;皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉症及びセザリー症候群を参照;子宮内膜癌;食道癌;ユーイング肉腫ファミリー;肝外胆管癌;眼の癌、眼内黒色腫;眼の癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(Gastric)(胃(Stomach))癌;消化管カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫;神経膠腫、小児脳幹;神経膠腫、小児大脳星細胞腫;神経膠腫、小児視路視床下部;有毛細胞白血病;頭部及び頸部癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(原発性);肝細胞(肝臓)癌、小児(原発性);ホジキンリンパ腫;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部及び視路神経膠腫;眼内黒色腫;膵島細胞癌(膵臓内分泌);カポジ肉腫;腎臓(腎細胞)癌;腎臓癌;喉頭癌;白血病;口唇及び口腔癌;肝臓癌、成人(原発性);肝臓癌、小児(原発性);肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム;骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫;髄芽腫;黒色腫;メルケル細胞癌;中皮腫;中皮腫、成人悪性;原発不明の転移性頸部扁平上皮癌;多発性内分泌腫瘍症候群;多発性骨髄腫;多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍菌状息肉症;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患;骨髄性白血病、成人急性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄増殖性障害、慢性;鼻腔及び副鼻腔癌;鼻咽頭癌;神経芽腫;非ホジキンリンパ腫;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;口腔癌(Oral Cancer);口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇及び;口腔咽頭癌;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣癌;上皮性卵巣癌;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、膵島細胞;副鼻腔及び鼻腔癌;副胸腺癌;陰茎癌;褐色細胞腫;松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍;下垂体腺腫;形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠及び乳癌;前立腺癌;直腸癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;唾液腺癌;肉腫;ユーイング腫瘍ファミリー;肉腫、軟組織;肉腫、子宮;セザリー症候群;皮膚癌;皮膚癌(非黒色腫);小腸癌;軟組織肉腫;扁平上皮癌、皮膚癌(非黒色腫)を参照;原発不明の頸部扁平上皮癌、転移性;胃(Gastric)(胃(Stomach))癌;精巣癌;胸腺腫;胸腺腫及び胸腺癌;甲状腺癌;腎盂及び子宮の移行上皮癌;絨毛性腫瘍、妊娠性;原発不明部位の癌;小児の希少癌;尿道癌;子宮癌、内膜;子宮肉腫;膣癌;視路視床下部神経膠腫;外陰部癌;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;ウィルムス腫瘍;並びに婦人科の癌。CREBBPアンタゴニストを用いて治療することができる例示的な癌には、EP300突然変異型過剰増殖性疾患、例えば骨髄異形成(myelodisplastic)症候群(MDS;旧名:前白血病)が含まれる。
【0131】
CREBBPにより媒介されるヒストンアセチル化が特定の役割を果たし、EP300機能喪失に関連する他の何れの疾患も、本明細書に記載する化合物及び方法を用いて治療可能であるか又は予防可能となり得る。
【0132】
投与
一部の実施形態では、本開示に従う使用のための活性薬剤は、適正な医療実施基準に一致し、且つ関連する薬剤及び対象に適した医薬組成物及び投与レジメンを用いて治療有効量で製剤化、用量決定、及び/又は投与される。原則として、治療組成物は、当技術分野で公知の何れかの適切な方法によって投与することができ、そうした方法として、限定されないが、経口、粘膜、吸入、局所、口腔、鼻内、直腸、又は非経口(例えば、静脈内、注入、腫瘍内、結節内、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、経皮、若しくは対象の組織の物理的突破(physical breaching)を含む他の種類の投与、並びに組織中の裂け目(breach)を通した治療組成物の投与)が挙げられる。
【0133】
一部の実施形態では、特定の活性薬剤の投与レジメンは、例えば、治療法を受ける対象における1つ又は複数の組織又は体液における特定の所望の薬物動態プロフィール又は他の曝露パターンを達成するために断続的又は連続的(例えば、灌流又は他の持続放出系)投与を含み得る。
【0134】
一部の実施形態では、併用投与される異なる薬剤を様々な送達経路を介して且つ/又は様々なスケジュールに従って投与することができる。代わりに又は加えて、一部の実施形態では、1つ又は複数回用量の第1の活性薬剤は、1つ又は複数の別の活性薬剤と実質的に同時に、また一部の実施形態ではそれと共通の経路を介して及び/又は単一組成物の一部として投与される。
【0135】
所与の治療レジメンのために経路及び/又は投与スケジュールを最適化する際に考慮すべき要因として、例えば、治療される具体的な適応、対象の臨床的条件(例えば、総合的健康状態、以前に受けた治療法及び/又はそれに対する応答)、薬剤の送達部位、薬剤の性質(例えば、年齢、抗体又は他のポリペプチドを基材とする化合物)、薬剤の投与方法及び/又は経路、併用療法の存在又は非存在、並びに医師には周知の他の要因を挙げることができる。例えば、癌の治療では、治療対象の適応の関連する特徴は、例えば、癌の種類、病期、位置の1つ又は複数を含み得る。
【0136】
一部の実施形態では、例えば、所望の治療効果又は応答(例えば、CREBBP遺伝子又は遺伝子産物の阻害)を最適化するために、特定の医薬組成物及び/又は使用する投与レジメンの1つ又は複数の特徴を経時的に改変(例えば、任意の個別用量中の活性薬剤の量の増減、投与間隔の増減)し得る。
【0137】
一般に、本発明に従う活性薬剤の投与のタイプ、量及び頻度は、1つ又は複数の関連薬剤が哺乳動物、好ましくはヒトに投与される場合に適用される安全及び効力要件に左右される。一般に、こうした投与の特徴は、治療法なしで観測されるものと比較して特定の及び典型的には検出可能な治療応答をもたらすように選択される。
【0138】
本発明に関して、例示的な所望の治療応答として、限定されないが、腫瘍成長、腫瘍サイズ、転移、腫瘍に関連する1つ又は複数の症状及び副作用の阻害及び/又は低減、並びに癌細胞のアポトーシスの増大、1つ又は複数の細胞マーカ又は循環マーカの治療に関連する減少又は増加が含まれる。こうした基準は、様々な免疫学的、細胞学的方法、及び本明細書に開示される他の方法の何れかによって容易に評価することができる。
【0139】
一部の実施形態では、活性薬剤の有効用量(及び/又は単位用量)は、少なくとも約0.01μg/kg体重、少なくとも約0.05μg/kg体重;少なくとも約0.1μg/kg体重、少なくとも約1μg/kg体重、少なくとも約2.5μg/kg体重、少なくとも約5μg/kg体重、及び約100μg/kg体重以下であり得る。当業者は、一部の実施形態において、こうしたガイドラインが活性薬剤の分子量に合わせて調節され得ることを理解するであろう。投与量はまた、投与経路、治療サイクルに合わせて、又はその結果、用量を増加させるCREBBPアンタゴニスト及び/若しくは別の治療薬の投与に関連して最大耐用量及び用量制限毒性(存在する場合)を決定するために使用することができる用量漸増プロトコルによっても変更され得る。従って、医薬組成物内の各薬剤の相対量も変動する可能性があり、例えば、各組成物は、0.001%~100%(w/w)の対応する薬剤を含み得る。
【0140】
一部の実施形態では、「治療有効量」又は「治療有効用量」は、状態の進行を完全若しくは部分的に阻害するか、又は状態の1つ若しくは複数の症状を少なくとも部分的に軽減する、CREBBPアンタゴニスト、又は2種以上のCREBBPアンタゴニストの組合せ、又はCREBBPアンタゴニストと1つ若しくは複数の別の治療薬との組合せの量である。一部の実施形態では、治療有効量は、予防に有効な量であり得る。一部の実施形態では、治療に有効な量は、患者の大きさ及び/又は性別、治療しようとする状態、状態の重症度及び/又は求められる結果に応じて変動し得る。一部の実施形態では、治療有効量は、患者の少なくとも1つの症状の改善をもたらすCREBBPアンタゴニストの量を指す。一部の実施形態では、所与の患者について、治療有効量は、当業者に周知の方法によって決定することができる。
【0141】
一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストの毒性及び/又は治療効果は、例えば、最大耐用量(MTD)及びED50(50%最大応答の有効用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物を用いた標準的製剤手順によって決定することができる。典型的に、有毒作用と治療効果間の用量比は、治療指数であり;一部の実施形態では、この比は、MTDとED50との間の比として表すことができる。こうした細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用のための用量の範囲を公式化するために使用することができる。
【0142】
一部の実施形態では、疾患又は代替組織における酵素阻害(例えば、ヒストンアセチル化又は標的遺伝子発現)の1つ又は複数の薬物動態マーカに対するCREBBPアンタゴニストの作用をモニターすることにより、用量の目安を得ることができる。例えば、細胞培養又は動物実験を用いて、薬物動態マーカの変化に必要な用量同士の関係を決定することができ、細胞培養若しくは動物実験又は早期臨床試験で治療効果に必要な用量を決定することができる。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストの用量は、毒性をほとんど又は一切伴わないED50を含む循環濃度の範囲内に存在することが好ましい。一部の実施形態では、用量は、例えば、使用される剤形及び/又は使用される投与経路に応じて上記の範囲内で変動し得る。的確な製剤、投与経路及び用量は、患者の状態を考慮して個別の医師が選択することができる。急性発症又は重篤な状態の治療では、急速な応答を得るためにMTDに近似する用量の投与が要求される場合がある。
【0143】
一部の実施形態では、投与量及び/又は間隔は、例えば、治療効果を達成するのに必要な時間にわたり、例えば所望の効果又は最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分な活性部分の血漿レベルをもたらすように個別に調節することができる。一部の実施形態では、特定のCREBBPアンタゴニストのMECは、例えば、インビトロデータ及び/又は動物実験から推定することができる。MECを達成するのに必要な用量は、個々の特徴及び投与経路に応じて変動し得る。一部の実施形態では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)アッセイ又はバイオアッセイを用いて血漿濃度を決定することができる。
【0144】
一部の実施形態では、投与間隔は、MEC値を用いて決定することができる。特定の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、症状の所望の改善が達成されるまでの時間の10~90%、好ましくは30~90%、及び最も好ましくは50~90%にわたり、MECを超える血漿レベルを維持するレジメンを用いて投与すべきである。別の実施形態では、様々な時間量にわたって異なるMEC血漿レベルが維持される。局所投与又は選択的取り込みの場合、薬物の有効な局所濃度は、血漿濃度と関係しないこともある。
【0145】
当業者は、様々な投与レジメンから選択することができ、特定のCREBBPアンタゴニストの有効量が治療対象の対象、対象の体重、疾患の重症度、投与方法及び/又は処方する医師の判断に応じて変動し得ることを理解するであろう。
【0146】
併用療法
一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、癌などの疾患を治療するための別の治療薬と組み合わせて使用することができる。一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニスト、又は本明細書に記載するCREBBP阻害療法薬を含む医薬組成物は、任意選択で、癌治療薬、例えば化学療法薬又は生物学的薬剤などの1つ又は複数の別の治療薬を含有し、及び/又はそれと一緒に投与することができる。別の薬剤は、例えば、CREBBPアンタゴニストによる治療対象の疾患又は状態を治療するのに有用であると当技術分野で認識されている治療薬、例えば抗癌剤、又は治療対象の疾患若しくは状態に関連する症状を改善する薬剤であり得る。別の薬剤はまた、治療組成物に有益な属性を付与する薬剤(例えば、組成物の粘度に作用する薬剤)であり得る。例えば、一部の実施形態では、別の治療薬又は方法(例えば、化学療法薬、手術、放射線、又はそれらの組合せ)を伴う治療を受けたことがあり、受けており、及び/又は受けることになる対象にCREBBP阻害療法薬を投与する。
【0147】
本開示により提供される併用療法のいくつかの実施形態は、例えば、単一医薬製剤としてCREBBPアンタゴニストと別の治療薬の投与を提供する。いくつかの実施形態は、個別の医薬製剤として、CREBBPアンタゴニストの投与と別の治療薬の投与を提供する。
【0148】
本明細書に記載するCREBBP阻害療法薬と組み合わせて使用することができる化学療法薬の例として、以下のものが挙げられる:白金化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ナイトロジェンマスタード、チオテパ、メルファラン、ブスルファン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、ダカルバジン、及びベンダムスチン)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、プリカマイシン、及びダクチノマイシン)、タキサン(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、抗代謝物(例えば、5-フルオロウラシル、シタラビン、ペメトレキセド、チオグアニン、フロキシウリジン、カペシタビン、及びメトトレキサート)、ヌクレオシド類似体(例えば、フルダラビン、クロファラビン、クラドリビン、ペントスタチン、及びネララビン)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、トポテカン及びイリノテカン)、低メチル化剤(例えば、アザシチジン及びデシタビン)、プロテオソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド及びテニポシド)、DNA合成阻害剤(例えば、ヒドロキシ尿素)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及びビンブラスチン)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、及びスニチニブ)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、フォテムスチン、及びロムスチン)、ヘキサメチルメラミン、ミトタン、血管新生阻害薬(例えば、サリドマイド及びレナリドミド)、ステロイド(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、及びプレドニゾロン)、ホルモン剤(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ロイプロリド、ビカルタミド、グラニセトロン、及びフルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール及びアナストロゾール)、三酸化ヒ素、トレチノイン、非選択的シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬、サリチレート、アスピリン、ピロキシカム、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロシン、ジクロフェナク、トルメチン、ケトプロフェン、ナブメトン、及びオキサプロジン)、選択的シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、又はそれらの任意の組合せ。
【0149】
本明細書に記載する組成物及び方法に使用することができる生物学的薬剤の例として、モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、ベバシズマブ、カツマキソマブ、デノスマブ、オブヌツズマブ、オファツズマブ、ラムシルマブ、ペルツズマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ニモツズマブ、ラムブロリズマブ、ピジリズマブ、シルツキシマブ、BMS-936559、RG7446/MPDL3280A、MEDI4736、トレメリムマブ、若しくは当技術分野で公知の他のもの)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、サイトカイン(例えば、インターフェロン及びインターロイキン)、増殖因子(例えば、コロニー刺激因子及びエリスロポエチン)、癌ワクチン、遺伝子療法ベクター、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0150】
一部の実施形態では、CREBBPアンタゴニストは、同じ又は異なる医薬組成物の何れかにおいて、癌の治療のための別の薬剤と組み合わせて、それが必要な対象に投与される。一部の実施形態では、別の薬剤は、抗癌剤である。一部の実施形態では、別の薬剤は、ヒストンアセチル化又はヒストンメチル化などのヒストン修飾に作用する(例えば、それを阻害する)。特定の実施形態では、別の抗癌剤は、化学療法薬(例えば、2CdA、5-FU、6-メルカプトプリン、6-TG、Abraxane(商標)、Accutane(登録商標)、アクチノマイシン-D、Adriamycin(登録商標)、Alimta(登録商標)、オールトランスレチノイン酸(all-trans retinoic acid)、アメトプテリン、Ara-C、アザシチジン、BCNU、Blenoxane(登録商標)、Camptosar(登録商標)、CeeNU(登録商標)、クロファラビン、Clolar(商標)、Cytoxan(登録商標)、ダウノルビシン塩酸塩、DaunoXome(登録商標)、Dacogen(登録商標)、DIC、Doxil(登録商標)、Ellence(登録商標)、Eloxatin(登録商標)、Emcyt(登録商標)、リン酸エトポシド、Fludara(登録商標)、FUDR(登録商標)、Gemzar(登録商標)、Gleevec(登録商標)、ヘキサメチルメラミン、Hycamtin(登録商標)、Hydrea(登録商標)、Idamycin(登録商標)、Ifex(登録商標)、イキサベピロン、Ixempra(登録商標)、L-アスパラギナーゼ、Leukeran(登録商標)、リポソームAra-C、L-PAM、リソドレン(Lysodren)、Matulane(登録商標)、ミトラシン、マイトマイシン(Mitomycin)-C、Myleran(登録商標)、Navelbine(登録商標)、Neutrexin(登録商標)、ニロチニブ、Nipent(登録商標)、ナイトロジェンマスタード、Novantrone(登録商標)、Oncaspar(登録商標)、Panretin(登録商標)、Paraplatin(登録商標)、Platinol(登録商標)、カルムスチンインプラントを用いるプロリフェプロスパン20、Sandostatin(登録商標)、Targretin(登録商標)、Tasigna(登録商標)、Taxotere(登録商標)、Temodar(登録商標)、TESPA、Trisenox(登録商標)、Valstar(登録商標)、Velban(登録商標)、Vidaza(商標)、ビンクリスチン硫酸塩、VM 26、Xeloda(登録商標)及びZanosar(登録商標)など);生物製剤(例えば、アルファインターフェロン、ガルメット・ゲラン菌(Bacillus Calmette-Guerin)、Bexxar(登録商標)、Campath(登録商標)、Ergamisol(登録商標)、エルロチニブ、Herceptin(登録商標)、インターロイキン-2、Iressa(登録商標)、レナリドミド、Mylotarg(登録商標)、Ontak(登録商標)、Pegasys(登録商標)、Revlimid(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Tarceva(商標)、Thalomid(登録商標)、Velcade(登録商標)及びZevalin(商標)など);小分子(例えば、Tykerb(登録商標)など);コルチコステロイド(例えば、リン酸デキサメタゾンナトリウム、DeltaSone(登録商標)及びDelta-Cortef(登録商標)など);ホルモン療法薬(例えば、Arimidex(登録商標)、Aromasin(登録商標)、Casodex(登録商標)、Cytadren(登録商標)、Eligard(登録商標)、Eulexin(登録商標)、Evista(登録商標)、Faslodex(登録商標)、Femara(登録商標)、Halotestin(登録商標)、Megace(登録商標)、Nilandron(登録商標)、Nolvadex(登録商標)、Plenaxis(商標)及びZoladex(登録商標));並びに放射性医薬品(例えば、Iodotope(登録商標)、Metastron(登録商標)、Phosphocol(登録商標)及びサマリウムSM-153など)からなる群から選択される。
【0151】
上記のCREBBPアンタゴニスト療法と組み合わせて用いることができる別の薬剤は、例示を目的とするものであり、限定することは意図しない。本開示に包含される組合せには、限定されないが、本明細書に提供されるか、又はそうでなければ当技術分野で公知の1つ若しくは複数のCREBBPアンタゴニストと、上のリスト、又はそうでなければ本明細書に提供されるものから選択される少なくとも1種の別の薬剤とが含まれる。CREBBPアンタゴニストは、1種又は2種以上の別の薬剤、例えば2、3、4、5、若しくは6種、又はそれを超える別の薬剤と組み合わせて使用することもできる。
【0152】
一部の実施形態では、本明細書に記載する治療方法は、その病状の他の治療が失敗しているか、又は他の手段による治療にそれ程成果がなかった対象、例えば標準治療に対して治療不応性の癌を有する対象に対して実施される。さらに、本明細書に記載する治療方法は、病状の1つ又は複数の別の治療と一緒に、例えば標準治療に加えて又はそれと組み合わせて実施することもできる。例えば、本方法は、本明細書に記載するCREBBP阻害療法薬の投与前、投与と実質的に同時、又は投与後に癌治療レジメン、例えば骨髄非破壊的化学療法、外科手術、ホルモン療法、及び/又は放射線を投与するステップを含み得る。特定の実施形態では、本明細書に記載するCREBBP阻害療法薬が投与される対象は、抗生物質及び/又は1つ若しくは複数の別の医薬剤でさらに治療することもできる。
【0153】
CREBBPアンタゴニストの識別及び/又は特性決定
本開示のいくつかの態様は、CREBBPアンタゴニストを識別及び/又は特性決定する技術を提供する。
【0154】
例えば、一部の実施形態では、候補CREBBPアンタゴニストを、少なくともCREBBPを含む系と接触させ、アッセイを実施して、候補CREBBPアンタゴニストとCREBBPとの結合を検出する。一部の実施形態では、候補がCREBBPに結合すれば、その候補は、CREBBPアンタゴニストとして識別される。一部の実施形態では、候補CREBBPアンタゴニストを少なくともCREBBPを含む系と接触させ、アッセイを実施して、CREBBPレベル及び/又は活性の調節を検出する。一部の実施形態では、候補の存在下でCREBBPレベル及び/又は活性の調節が検出されれば、その候補は、CREBBPアンタゴニストとして識別される。一部の実施形態では、上記の系は、CREBBP基質(例えば、ヒストン又はその断片若しくは複合体)とアセチル供与体とをさらに含む。一部の実施形態では、候補CREBBPアンタゴニストを、CREBBP、CREBBP基質、及びアセチル供与体を含む系と接触させる。一部の実施形態では、アッセイを実施して、CREBBP基質アセチル化のレベルを検出する。一部の実施形態では、同系中のCREBBP基質アセチル化のレベルが候補CREBBPアンタゴニストの存在下よりも候補CREBBPアンタゴニストの非存在下の方が高ければ、その候補は、CREBBPアンタゴニストとして識別される。
【0155】
阻害の検出
一部の実施形態では、CREBBP阻害療法薬がCREBBP遺伝子又は遺伝子産物のレベル及び/又は活性を低減する機能又は能力は、例えば、インビトロ又はインビボで評価される。一部の実施形態では、CREBBP阻害療法薬がCREBBP遺伝子又は遺伝子産物のレベル及び/又は活性を低減する機能又は能力は、適切な参照物と比較して評価される。一部の実施形態では、適切な参照物は、過去の参照物、集団に基づく参照物又は対象別の参照物である。一部の実施形態では、評価は、生体サンプル、例えば対象から得られたサンプルに基づいて行う。一部の実施形態では、CREBBP阻害療法薬の機能又は能力を評価するために用いられるサンプルは、本明細書の他所に記載するように、腫瘍の突然変異状態を決定するために使用される。
【0156】
一部の実施形態では、腫瘍細胞のアポトーシスを測定することによってCREBBP阻害療法薬の機能又は能力を評価する。一部の実施形態では、腫瘍細胞のアポトーシスは、PARPの切断によって測定される。一部の実施形態では、CREBBP阻害療法薬の機能又は能力は、MYC発現の調節によって評価される。一部の実施形態では、CREBBP阻害療法薬の機能又は能力は、ヒストンのアセチル化を測定することによって評価される。
【0157】
本明細書に開示される技術の実施形態、利点、特徴、及び使用のいくつかは、以下の実施例からより詳細に理解されるであろう。これらの実施例は、本開示の利点のいくつかを例示すると共に、特定の実施形態を説明することが意図されるが、本開示の全範囲を例示することは意図されず、従って本開示の範囲を限定するものではない。
【実施例0158】
実施例1:CREBBPの喪失に対して感受性の腫瘍細胞株
この実施例は、種々の組織から得られた腫瘍細胞株がCREBBP活性喪失に対して感受性であることを実証する。エピジェネティック関連遺伝子をターゲティングするsgRNAのカスタムライブラリーを、CRISPRタンパク質を発現する腫瘍細胞株の1集団に導入した。以前にShalem et al.Science.2014 Jan 3;343(6166):84-87及びWang et al.Science.2014 Jan 3;343(6166):80-4に記載されているものと同様の方法でスクリーンを実施した。各遺伝子における機能喪失に対する細胞株の感受性の有意性を、冗長(Redundant)siRNA活性(RSA)スコアを用いて計算し、以前にBirmingham et al.,Nat Methods.2009 Aug;6(8):569-575)により記載されている通り、本明細書ではLogPとして表示する。
図1は、腫瘍細胞株の集団におけるCREBBP機能喪失に対する感受性の分布を示す。
図2Aは、CREBBP喪失に対する感受性が、多数且つ多種の組織型から得られた腫瘍細胞株に認められることを明らかにする。
図2Bは、CREBBP喪失に対して感受性の様々な腫瘍型をさらに詳細に示す。さらに、
図2Bは、個々の組織型でもCREBBP喪失に対する感受性の分布があることを示す。
【0159】
次に、sgRNAスクリーンに使用した腫瘍細胞株をそのEP300突然変異又は発現レベル状態について評価した。EP300突然変異を保有する多数の腫瘍細胞株は、CREBBP喪失に対して最も感受性の高いものに属することが判明した(
図3A及び
図7B)。
図7Cは、CREBBP阻害に対する感受性をさらに確認するための統計学的分析を提供する。多様な腫瘍がEP300突然変異を保有するものとして識別されている(
図4)。興味深いことに、EP300喪失に対して感受性であるとして本発明のスクリーンで識別された上記の細胞株は、CREBBP中に対応する突然変異を保有していない(
図5)。
【0160】
EP300突然変異は、遺伝子又は遺伝子産物の全体を通して多数の位置に見出すことができる。
図3B及び7Aは、EP300突然変異の種類及びHATドメインに対する遺伝子又は遺伝子産物内のそれらの位置のさらなる詳細を提供する。
図8は、EP300突然変異の種類をさらに明らかにする。特に、
図8は、EP300の発現の喪失を引き起こすEP300短縮型突然変異を有する細胞株を示すが、野生型対立遺伝子は依然としてインタクトのままであり得る。これらのデータから、EP300発現の喪失がCREBBP阻害に対する感受性を予測することがさらに確認される。スクリーンを実施した腫瘍細胞株間のEP300のDNAコピーの変化及び発現レベルを
図3C及び3Dに示す。
【0161】
実施例2:EP300突然変異を保有する細胞のCREBBP阻害
この実施例は、EP300突然変異を保有する細胞株におけるCREBBP阻害の作用を立証する。腫瘍生検から得られた利用可能な腫瘍細胞株又は細胞培養物をそのEP300突然変異状態について評価する。次に、EP300遺伝子又は遺伝子産物に1つ又は複数の突然変異を保有することが判明した細胞株又は培養物を例示的なCREBBPアンタゴニストと接触させる。続いて、細胞株又は培養物に対するCREBBPアンタゴニストの作用を評価する。細胞株若しくは培養物の減少及び/又は細胞におけるアポトーシスの誘導は、1つ又は複数のEP300突然変異を保有する腫瘍細胞に対するCREBBP阻害療法の効果を立証するものである。さらに、このプロセスを通して新たなCREBBPアンタゴニストを識別する。
【0162】
実施例3:EP300突然変異によって特徴付けられる腫瘍を用いた異種移植片のCREBBP阻害
この実施例は、EP300突然変異を保有する腫瘍の異種移植片におけるCREBBP阻害の作用を立証する。EP300突然変異を保有する細胞培養物から取得したか又は対象腫瘍から得た腫瘍細胞を適切なマウスモデルに移植する。腫瘍の定着後、異種移植した腫瘍を保有するマウスにCREBBP阻害療法薬を投与する。腫瘍の体積、又は腫瘍成長若しくは状態を特徴付ける他の側面を評価する。腫瘍成長の抑制又は停止は、1つ又は複数のEP300突然変異を保有する腫瘍に対するCREBBP阻害の効果を立証するものである。さらに、このプロセスを通して新たなCREBBP阻害療法薬を識別する。
【0163】
実施例4:EP300突然変異によって特徴付けられる腫瘍を保有するヒト対象のCREBBP阻害療法
この実施例は、特に、ヒト対象、具体的にはEP300突然変異によって特徴付けられる腫瘍を保有する対象に対するCREBBP阻害療法の投与を説明する。この実施例のいくつかの態様は、そうした対象の識別を説明する。サンプルは、対象から取得する。サンプルは、腫瘍、腫瘍の生検、循環腫瘍細胞、又は腫瘍由来の核酸若しくはポリペプチドを含む他のサンプルを含む。核酸又はポリペプチドは、サンプルから単離し、本明細書に記載の方法又は当技術分野で公知の他の方法により、EP300突然変異状態について評価する。その腫瘍がEP300突然変異を保有することが判明した対象にCREBBP阻害療法を単独で又は他の治療薬と組み合わせて投与する。
【0164】
参照文献
本明細書、例えば背景技術、発明の概要、図面、発明を実施するための形態、実施例、及び/又は参照文献のセクションで述べた刊行物、特許、特許出願、特許公開、及びデータベースエントリー(例えば、配列データベースエントリー)の全ては、刊行物、特許、特許出願、特許公開、及びデータベースエントリーの各々が明示的且つ個別に参照により本明細書に組み込まれているのと同様に、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるものとする。矛盾が生じた場合、本明細書に記載される全ての定義を含め、本出願が優先するものとする。
【0165】
均等物及び範囲
当業者は、通常の実験を用いるのみで、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多数の均等物を認識又は確認することができるであろう。本開示の範囲は、上の説明に限定されることを意図するものではなく、以下の特許請求の範囲に記載される。
【0166】
「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「その」などの冠詞は、文脈から反対のことが示されるか、又は別の解釈が明らかである場合を除いて、1つ又は複数を意味し得る。あるグループの2つ以上のメンバー間に「又は」を含む請求項又は説明は、文脈から反対のことが示されるか、又は別の解釈が明らかである場合を除いて、1つ、2つ以上、又は全てのグループメンバーが存在すれば満たされると考えられる。2つ以上のメンバー間に「又は」を含むグループの開示は、そのグループの厳密に1つのメンバーが存在する実施形態、そのグループの2つ以上のメンバーが存在する実施形態、そのグループの全メンバーが存在する実施形態を提供する。簡潔化の目的で、本明細書では、そうした実施形態を個別に説明していないが、これらの実施形態の各々が本明細書に提供され、具体的に特許請求又は放棄され得ることが理解されるであろう。
【0167】
請求項の1つ若しくは複数又は説明の1つ若しくは複数の関連部分からの1つ又は複数の制限、要素、条項、又は記述用語が別の請求項に導入される、あらゆる変更形態、組合せ、及び並べ替えを本発明が包含することが理解されるべきである。例えば、別の請求項に従属請求項を修正して、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見出される制限の1つ又は複数を含むようにすることができる。さらに、請求項が組成物を記載する場合、別のことが示されるか、又は矛盾若しくは不一致が生じることが当業者に明らかとなる場合を除いて、本明細書に開示される製造若しくは使用方法の何れかに従って又は当技術分野で公知の方法に従って、存在する場合、組成物を製造又は使用する方法が包含されることが理解されるべきである。
【0168】
要素がリスト、例えばマーカッシュグループ形態として表示される場合、これらの要素の考えられる全てのサブグループも開示されること、及び全ての要素又は要素のサブグループがその群から除外され得ることが理解されるべきである。また、「含む」という用語は、開放されていることが意図され、従って別の要素又はステップの包含を可能にすることにも留意すべきである。一般に、実施形態、製品、又は方法は、特定の要素、特徴、又はステップを含むものとしてみなされ、そうした要素、特徴、又はステップからなるか又は実質的になる実施形態、製品、又は方法も同様に提供されることが理解されるべきである。簡潔化の目的で、本明細書では、そうした実施形態を個別に説明していないが、これらの実施形態の各々が本明細書に提供され、具体的に特許請求又は放棄され得ることが理解されるであろう。
【0169】
範囲が与えられる場合、両端の値が含まれる。さらに、別のことが示されるか、又は文脈及び/若しくは当業者の理解から別の解釈が明らかである場合を除いて、範囲として表される値は、文脈上明らかに別に解釈すべき場合を除いて、記載される範囲内の任意の具体的値を、例えば一部の実施形態では範囲の下限の単位の1/10まで想定し得ることが理解されるべきである。簡潔化の目的で、各々の範囲内の値を本明細書では個別に記載しないが、これらの値の各々が本明細書に提供され、具体的に特許請求又は放棄され得ることが理解されるであろう。また、別のことが示されるか、又は文脈及び/若しくは当業者の理解から別の解釈が明らかである場合を除いて、範囲として表される値は、与えられた範囲内のあらゆる部分範囲内を想定することができ、ここで、部分範囲の両端は、同範囲内の下限の単位の1/10と同じ正確度まで表されることも理解されるべきである。簡潔化の目的で、部分範囲を本明細書では個別に記載しないが、これらの部分範囲の各々が本明細書に提供され、具体的に特許請求又は放棄され得ることが理解されるであろう。
【0170】
加えて、本発明の任意の特定の実施形態が1つ又は複数の請求項から明示的に除外され得ることを理解すべきである。範囲が与えられる場合、その範囲内の任意の値又は部分範囲は、1つ又は複数の請求項から明示的に除外され得る。本発明の組成物及び/又は方法の任意の実施形態、要素、特徴、適用、又は態様は、1つ又は複数の請求項から除外され得る。簡潔化の目的で、1つ又は複数の要素、特徴、目的、又は態様が除外される実施形態の全てを本明細書に明示的に記載しているわけではない。