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特開2022-174755外科適用例に調整されたレーザパルス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174755
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】外科適用例に調整されたレーザパルス
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/091 20060101AFI20221116BHJP
   H01S 3/131 20060101ALI20221116BHJP
   A61B 18/26 20060101ALI20221116BHJP
   H01S 3/00 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
H01S3/091
H01S3/131
A61B18/26
H01S3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129699
(22)【出願日】2022-08-16
(62)【分割の表示】P 2019517928の分割
【原出願日】2017-10-03
(31)【優先権主張番号】62/403,916
(32)【優先日】2016-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】ファルケンシュタイン ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ディトマール シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブッチュ アンナ
(72)【発明者】
【氏名】クレムザー トーマス
(57)【要約】
【課題】レーザ用媒質を有するシステム及びそれを使用する方法を提供する。
【解決手段】システムは、レーザ用媒質と、レーザ用媒質を光ポンピングするデバイスに複数の時間的に離間した電気パルスを差し向けるように構成されたコントローラを含み、レーザ用媒質は、光ポンピングに応答して準連続レーザパルスを出力するように構成される。複数の時間的に離間した電気パルスは、(a)レーザ用媒質をレーザ用媒質のレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで励起させるように構成された第1の電気パルス、及び(b)第1の電気パルスに続く複数の第2の電気パルスを含む。準連続レーザパルスは、複数の第2の電気パルスに応答して出力される。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
レーザ用媒質と、
時間的に離間した複数の電気パルスを、前記レーザ用媒質を光ポンピングするデバイスに差し向けるように構成されたコントローラと、を有し、
前記レーザ用媒質は、光ポンピングに応答して、準連続レーザパルスを出力するように構成され、
前記時間的に離間した複数の電気パルスは、(a)第1の電気パルスと、(b)前記第1の電気パルスに続く複数の第2の電気パルスを含み、
前記第1の電気パルスは、前記レーザ用媒質のレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで前記レーザ用媒質を励起させるように構成され、
前記準連続レーザパルスは、前記複数の第2の電気パルスに応答して出力され、
る、システム。
【請求項2】
前記レーザ用媒質は、Ho:YAG、Tm:YAG、Tm:Ho:YAG、Er:YAG、Er:YLF、Nd:YAG、Tm-ファイバレーザ、及びCTH:YAGのうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の第2の電気パルスの各電気パルスは、約10~1000μsの電気パルス持続時間を有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の第2電気パルスのうちの隣接した電気パルスの間隔は、約10~300μsである、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記準連続レーザパルスのレーザパルス持続時間は、約250μs~10msである、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記準連続レーザパルスの電力は、約100W~1KWである、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記準連続レーザパルスは、連続波形を有し、又は、複数の時間的に離間した電気パルスを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の電気パルスは、前記レーザ発光閾値の約80%よりも高く且つ前記レーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで、前記レーザ用媒質を励起させるように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
レーザ用媒質を有するシステムを使用する方法であって、
時間的に離間した複数の電気パルスを、レーザ用媒質を光ポンピングするデバイスに差し向ける段階を含み、
前記時間的に離間した複数の電気パルスは、(a)第1の電気パルスと、(b)前記第1の電気パルスに続く複数の第2の電気パルスを含み、前記第1の電気パルスは、前記レーザ用媒質のレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで、前記レーザ用媒質を励起させるように構成され、
更に、前記時間的に離間した複数の第2電気パルスに応答して、前記レーザ用媒質から準連続レーザパルスを出力する段階を含む、方法。
【請求項10】
前記時間的に離間した複数の第2の電気パルスの各電気パルスは、約10~1000μsの電気パルス持続時間を有し、前記時間的に離間した複数の第2電気パルスのうちの隣接した電気パルスの間隔は、約10~300μsである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記準連続レーザパルスのレーザパルス持続時間は、約250μs~10msであり、前記準連続レーザパルスの電力は、約100W~1KWである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電気パルスは、前記レーザ発光閾値の約80%よりも高く且つ前記レーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで、前記レーザ用媒質を励起させるように構成される、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザ用媒質は、Ho:YAG、Tm:YAG、Tm:Ho:YAG、Er:YAG、Er:YLF、Nd:YAG、Tm-ファイバレーザ、及びCTH:YAGのうちの1つを含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の電気パルスは、単一のプレパルスであり、前記準連続レーザパルスは、(a)連続波形を有する単一のレーザパルス、及び、(b)複数の時間的に離間したレーザパルスのうちの一方である、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の第2の電気パルスは、第1のパルスセットの及び第2のパルスセットを含み、前記第1のパルスセットの持続時間、パルス間隔、及び大きさのうちの少なくとも1つは、それに対応する前記第2のパルスセットの持続時間、パルス間隔、及び大きさと異なる、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2016年10月4日出願の米国仮特許出願第62/403、916号の優先権の利益を主張し、その全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明による開示の様々な態様は、一般的にレーザシステムと医療適用例にレーザシステムを使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
医療適用例では、レーザエネルギは、多くの手順に使用される。そのような手順の非限定的な例は、様々な身体組織の切開、切除、切離、蒸発、融除、破砕、凝固、止血、変性などを含む。いくつかの医療手順では、例えば約2100ナノメートル(nm)(又は2.1マイクロメートル(μm))の波長を有するレーザをこの波長のエネルギが実質的に全ての組織の構成要素である水によって高度に吸収されるので使用することができる。
【0004】
レーザ砕石術では、レーザエネルギを使用して被験者(患者など)の尿路内の結石を粉砕する。一部の適用例では、レーザ砕石術は、異なるタイプの結石に対して比較的高い破砕効率を提供するホルミウムYAG(Ho:YAG)レーザを使用して実施することができる。Sandhu他著「体内砕石術のためのホルミウム:YAGレーザ」、Medical Journal Armed Forces India、第63巻、第1号、2007年を参照されたい。Ho:YAGレーザは、2100nmで光を放出する固体パルスレーザである。様々な市販モデルは僅かに異なるが、市販のHo:YAGレーザは、200から1700マイクロ秒(μs)に及ぶパルス持続時間、0.2から8.0ジュール/パルスのパルスエネルギ、3から100Hz(単一キャビティ共振器は典型的に3~30Hz)の周波数、及び15から140ワットの間(単一キャビティ共振器は15~50W)の平均電力を有する。結石破砕効果は、典型的には適用されたレーザのエネルギに依存する。従来的に、レーザエネルギは、効率(破砕効率など)を高めるために増大される。高いエネルギは、迅速な破砕に至る場合があるが、それらは、回収バスケットのような医療デバイスを使用して身体から抽出しなければならない場合がある大きい結石断片をもたらすと考えられる。高エネルギレーザを使用する砕石術は、結石破片の望ましくない後方突進効果を引き起こす場合もある。本発明による開示のシステム及び方法は、既知のレーザシステムでのこれら又は他の欠陥の一部を是正することができる。しかし、本発明による開示の範囲は、任意の特定の問題を解決する機能によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sandhu他著「体内砕石術のためのホルミウム:YAGレーザ」、Medical Journal Armed Forces India、第63巻、第1号、2007年
【発明の概要】
【0006】
本発明による開示の例は、特に、医療レーザシステム及びそれらの使用方法に関する。本明細書に開示する例の各々は、他の開示する例のいずれかに関連して説明する特徴の1又は2以上を含む場合がある。
【0007】
一実施形態では、レーザシステムを開示する。レーザシステムは、レーザ用媒質と、時間的に離間した複数の電気パルスを、レーザ用媒質を光ポンピングするデバイスに差し向けるように構成されたコントローラと、を有し、レーザ用媒質は、光ポンピングに応答して、準連続レーザパルスを出力するように構成される。時間的に離間した複数の電気パルスは、(a)第1の電気パルスと、(b)第1の電気パルスに続く複数の第2の電気パルスを含み、第1のパルスは、レーザ用媒質のレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで、レーザ用媒質を励起させるように構成される、準連続レーザパルスは、複数の第2の電気パルスに応答して出力される。
【0008】
これに加えて又はこれに代えて、システムの実施形態は、以下の特徴:レーザ用媒質は、Ho:YAG、Tm:YAG、Tm:Ho:YAG、Er:YAG、Er:YLF、Nd:YAG、Tm-ファイバレーザ、及びCTH:YAGのうちの1つを含むこと、複数の第2電気パルスの各電気パルスは、約10~1000μsの電気パルス持続時間を有すること、複数の第2電気パルスの隣接した電気パルスの間隔は、約10~300μsの間であること、準連続レーザパルスのレーザパルス持続時間は、約250μs~10msであること、準連続レーザパルスの電力は、約100W~1KWであること、準連続レーザパルスは、連続波形を有すること、準連続レーザパルスは、約1kHzよりも高いか又はそれに等しい周波数を有する複数の時間的に離間したレーザパルスを含むこと、第1の電気パルスは、レーザ発光閾値の約80%よりも高くかつレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで、レーザ用媒質を励起させるように構成されること、の1又は2以上を含んでいてもよい。
【0009】
別の実施形態では、レーザ用媒質を有するレーザシステムを使用する方法を開示する。本方法は、時間的に離間した複数の電気パルスを、レーザ用媒質を光ポンピングするデバイスに差し向ける段階を含む。時間的に離間した複数の電気パルスは、(a)第1の電気パルスと、(b)第1の電気パルスに続く複数の第2の電気パルスを含み、第1の電気パルスは、レーザ用媒質のレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで、レーザ用媒質を励起させるように構成される。本方法は更に、複数の第2電気パルスに応答して、レーザ用媒質から準連続レーザパルスを出力する段階を含む。
【0010】
これに加えて又はこれに代えて、本方法の実施形態は、複数の第2電気パルスの各電気パルスは、約10~1000μsの電気パルス持続時間を有すること、複数の第2電気パルスの隣接した電気パルスの間隔は、約10~300μsであること、準連続レーザパルスのレーザパルス持続時間は、約250μs~10msであること、準連続レーザパルスの電力は、約100W~1KWであること、準連続レーザパルスは、(a)連続波形を有する単一レーザパルス、及び(b)約1kHzよりも高いか又はそれに等しい周波数を有する複数の時間的に離間したレーザパルスのうちの一方であること、第1の電気パルスは、レーザ発光閾値の約80%よりも高くかつレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまで、レーザ用媒質を励起させるように構成されること、レーザ用媒質は、Ho:YAG、Tm:YAG、Tm:Ho:YAG、Er:YAG、Er:YLF、Nd:YAG、Tm-ファイバレーザ、及びCTH:YAGのうちの1つを含むことのうちの1又は2以上を含んでいてもよい。
【0011】
別の実施形態では、レーザ用媒質を有するレーザシステムを使用する方法を開示する。本方法は、レーザ用媒質を光ポンピングするデバイスに時間的に離間した複数の電気パルスを差し向ける段階を含むことができる。時間的に離間した複数の電気パルスは、(a)レーザ用媒質のレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまでレーザ用媒質を励起させるように構成された第1の電気パルス、及び(b)第1の電気パルスに続く複数の第2の電気パルスを含むことができる。複数の第2の電気パルスのうちの第1のパルスは、レーザ発光閾値よりも高くレーザ用媒質のエネルギレベルを増大させることができる。本方法はまた、複数の第2電気パルスに応答してレーザ用媒質から準連続レーザパルスを出力する段階を含むことができる。準連続レーザパルスは、(a)連続波形を有する単一レーザパルス、又は(b)約1kHzよりも高いか又はそれに等しい周波数を有する複数の時間的に離間したレーザパルスのうちの一方とすることができる。
【0012】
これに加えて又はこれに代えて、システムの実施形態は、以下の特徴:複数の第2電気パルスの各電気パルスは、約10~1000μsの間の電気パルス持続時間を有することができること、複数の第2電気パルスの隣接した電気パルス間の間隔は、約10~300μsの間とすることができること、準連続レーザパルスは、連続波形を有する単一レーザパルスとすることができ、かつ約250μsから10msの間のレーザパルス持続時間と約100Wから1KWの間の電力とを有することができること、第1の電気パルスは、レーザ発光閾値の約80%よりも高いかつレーザ発光閾値よりも低いエネルギレベルまでレーザ用媒質を励起させるように構成することができること、レーザ用媒質は、Ho:YAG、Tm:YAG、Tm:Ho:YAG、Er:YAG、Er:YLF、Nd:YAG、Tm-ファイバレーザ、及びCTH:YAGのうちの1つを含むことができることのうちの1又は2以上を含むことができる。
【0013】
上記概略的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも、単なる例示であり且つ説明であり、特許請求の範囲の特徴の限定ではない。本明細書に使用される用語「実質的」、「近似的」、及び「約」は、説明する値に対する±10パーセントの変動を指し、用語「例示の」は、「理想的」ではなく「例」の意味で本明細書に使用する。
【0014】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、本発明による開示の例示の実施形態を示している。これらの図は、その説明と共に本発明による開示の原理を説明するのに寄与する。これらの図の一部は、当業者によって認識されるであろう構成要素/要素を示している。そのような既知の構成要素及び要素の詳細説明が本発明による開示の理解に必要でない場合、それらは本明細書に提示されない。同様に、例示する実施形態の一部であるとして当業者に既知であるが、本発明による開示を説明するのに必要ではない一部の構成要素/要素は、明瞭化のために図には示されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】例示のレーザシステムの概略図である。
図2A図1のレーザシステムによって生成された例示の離散レーザパルスを示す図である。
図2B図1のレーザシステムによって生成された例示の離散レーザパルスを示す図である。
図3】例示のレーザシステムにおける蛍光寿命と光ポンピングエネルギの関係を示す図である。
図4A図1のレーザシステムによって生成された例示の準連続レーザパルスを示す図である。
図4B図1のレーザシステムによって生成された別の例示の準連続レーザパルスを示す図である。
図5図1のレーザシステムによって生成された別の例示の準連続レーザパルスを示す図である。
図6図1のレーザシステムによって生成された調整レーザパルスを示す図である。
図7】例示の医療手順で図1のレーザシステムを使用する例示の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による開示の実施形態は、任意の医療適用例に使用されるレーザシステムに関する。すなわち、本発明による開示のレーザシステムは、任意の方法(フラッシュランプ、アークランプ、ダイオードなど)で光ポンピングされる任意のタイプのレーザ媒質(例えば、Ho:YAG、Tm:YAG(ツリウムドープのYAG)、CTH:YAG(クロム、ツリウム、ホルミウムドープのYAG)、Tm:Ho:YAG(ツリウム及びホルミウムドープのYAG)、Er:YAG(エルビウムドープのYAG)、Nd:YAG(ネオジムドープのYAG)、Er:YLF(エルビウムドープのイットリウムリチウムフルオライド)、Tm-ファイバレーザなど)を有することができ、任意の医療適用例に使用することができる。しかし、便宜上、本発明による開示の特徴を強調するために、砕石術手順に使用される光ポンプ式レーザのみを以下に説明する。ここで、添付図面に示す本発明に開示する例示の実施形態を参照する。可能な限り、同一又は類似の部分を指すために図面全体を通して同じ参照番号を使用する。
【0017】
図1は、本発明により開示される例示のレーザシステム100の概略図である。レーザシステム100は、レーザ放射のパルスを発生させて直接的に又は従来のレーザ送出システム(例えば、可撓性光ファイバ12)を通して被験者の体内のターゲット部位10(例えば、被験者の尿路内の結石)に送出するのに適している。レーザシステム100は、レーザパルス60の形態でレーザビームを発生させ、光ファイバ12を通してターゲット部位10に送出するように構成された発振器20を含む。発振器20は、ホスト材料(例えば、YAGなど)内に様々な濃度でドープされた1又は2以上のレーザ用イオン(例えば、Ho、Cr、Th、Erなど)を含む固体レーザ用媒質22を含む。いくつかの実施形態では、固体レーザ用媒質22は、比較的長い発光及び蛍光寿命を有することができる。当業者に既知のように、蛍光寿命は、励起状態のレーザ用媒質22の電子が、光子を放出することによって基底状態に戻る前に費やす時間スケールである。
【0018】
発振器20は、レーザ用媒質22を光により励起させてレーザビームを発生するための光ポンプ24を含むことができる。光ポンプ24は、レーザ用媒質22を光により励起させるのに使用される任意の既知のタイプのデバイス(例えば、フラッシュランプ、アークランプ、電気的にポンピングされるLED、レーザダイオード、ダイオードポンプ式レーザ、固体結晶又はファイバレーザなど)を含むことができる。光ポンプ24は、その光ポンプ24を作動させるための構成要素を含む電源30によって給電される場合がある。これらの構成要素は、特に、エネルギの蓄積及び放出のためのコンデンサ、パルス整形のための誘導子、及び光ポンプ24をイオン化するためのトリガ回路を含むことができる。
【0019】
電源30は、コンデンサから電気パルスを送出して光ポンプ24を作動させるように構成することができる。ポンプチャンバ26は、レーザ用媒質22と光ポンプ24の両方を収容し、光放射が光ポンプ24からレーザ用媒質22に伝わることを可能にする。ポンプチャンバ26はまた、レーザ用媒質22と光ポンプ24の両方の効率的な冷却を可能にすることができる。レーザ発振器20は、ハウジングを含むことができ、それにポンプチャンバ26、全反射光学系28、及び部分反射光学系32が取付けられる。全反射光学系28と部分反射光学系32は両方とも、様々な物理的形状の1又は2以上の光学構成要素(レンズ、ミラーなど)を含むことができ、様々な波長の放射線の反射及び/又は透過のために被覆することができる。いくつかの実施形態では、これらの光学系28、32は、固体レーザ用媒質22を進むレーザビームの経路上の中心にこれらの構成要素を配置することを可能にする調節可能マウントに位置決めすることができる。
【0020】
冷却システム40は、レーザシステム100の発熱構成要素を冷却するための冷媒を供給することができる。液体又は気体の冷媒を閉ループでポンプチャンバ26を通して再循環させ、発振器20の発熱構成要素を冷却することができる。いくつかの実施形態では、冷却システム40は、空気によって冷却される場合がある。いくつかの実施形態では、レーザシステム100の他の構成要素(例えば、電源30)も、冷却システム40の冷媒によって冷却することができる。同じく、いくつかの実施形態では、冷却システム40を使用して発振器20の構成要素を加熱することができることも考えられている。
【0021】
レーザシステム100の作動は、コントローラ50によって制御することができる。本発明の技術分野で既知のように、コントローラ50は、中央演算処理装置(CPU)と、ユーザ入力及び/又はレーザシステム100のパフォーマンスをモニタするセンサ/検出器からのフィードバックに基づいてレーザシステム100(例えば、電源30、冷却システム40、発振器20など)の制御を容易にする他の構成要素とを含むことができる。例えば、ユーザ入力に基づいて、コントローラ50は、光ポンプ24を作動させるのに望ましい特性(振幅、周波数、パルス持続時間など)の電気パルスを発生させるように電源30を制御することができる。同じく、発振器20の測定温度に基づいて、コントローラ50は、冷却システム40の作動を制御することができる。レーザシステムのコントローラ50の機能は本発明の技術分野で既知であるので、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0022】
レーザシステム100の作動中、コントローラ50は、望ましい特性(振幅、持続時間、大きさなど)を有する電流/電圧波形又は電気パルスを光ポンプ24に差し向けるように電源30を制御する。その結果として光ポンプ24によって発生させた光エネルギは、レーザ用媒質22に結合される。最適な結合に関して、光ポンプ24は、レーザ用媒質22の周りに配置され、かつそれに緊密に接触して位置決めすることができる。いくつかの実施形態では、レーザ用媒質22への光エネルギの結合は、ポンプチャンバ26の内面からの反射によって改善することができる。光ポンプ24からの光エネルギは、レーザ用媒質22内の電子のエネルギレベルを上昇させて反転分布を達成する。レーザ用媒質22の電子のより多くがその基底状態(すなわち、通常の又は低いエネルギ状態)よりもその励起状態(すなわち、より高いエネルギ状態)にある時に反転分布が発生する。反転分布が達成された状態で、1又は2以上の波長の光放射がレーザ用媒質22を複数回通過し、全反射光学系28と部分反射光学系32の両方から反射される。電子の励起レベルが閾値(レーザ物理学ではレーザ発光閾値又はレーザ閾値と呼ばれる)に達すると、レーザパルス60を発生させて発振器20の軸線34に沿って放出する。
【0023】
放出したレーザパルス60の一部を光検出器36によってサンプリングして、レーザシステム100のモニタ及び制御を容易にすることができる。例えば、コントローラ50は、光検出器36からの信号(放出されたレーザビームを表す)を使用して発振器20、電源30、冷却システム40、及びレーザシステム100の他の構成要素の作動をモニタ及び制御することができる。次いで、放出したレーザパルス60を1又は2以上の光結合要素38を通して誘導し、光ファイバ12の近位端内への入射のための次の射出パルスを調節することができる。次いで、レーザパルス60を光ファイバ12の中を通してその遠位端まで伝達させ、遠位端は、ターゲット部位10のところの結石(図示せず)と接触する(又は近接する)ように配置される。ターゲット部位10において、衝撃用レーザパルス60は結石を粉々に砕くことができる。
【0024】
図1のレーザシステム100はまた、当業者に既知であるために図1には示さず本明細書に説明しない追加の構成要素(例えば、コントローラ、ミラー、集束要素、ビーム遮断デバイス、Qスイッチ要素又はモードロック要素など)も含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、レーザシステム100は、更に、光ファイバ12の中を通してその近位端まで伝達して戻された結石からの反射放射(又は結石材料により再散乱され、再放出され、波長が変えられた放射線など)を使用して制御することができる。更に、いくつかの実施形態では、放出されたレーザパルス60をターゲット部位10に集束させる時に助けになるように、可視の照準ビーム(例えば、低電力半導体ダイオードレーザ、ヘリウムネオン(HeNe)レーザなど)を設けることができる。
【0025】
放出されるレーザパルス60の特性(エネルギ、パルス幅、電力、周波数など)は、光ポンプ24によって発生される光パルスの特性に依存する場合がある。これらの光パルスの特性は、電源30から光ポンプ24に差し向けられる電気パルスに依存する場合がある。図2A及び図2Bは、標準作動モードでの光ポンプ24への電気パルスと発振器20から得られるレーザパルス60間の例示の関係を示す簡略図である。これらの図では、上側部分は光ポンプ24に差し向けられる電気パルスを示し、下側部分は得られるレーザパルス60を示している。図2Aは、比較的短い電気パルスが光ポンプ24に差し向けられる場合を示し、図2Bは、比較的長い電気パルスが光ポンプ24に差し向けられる場合を示している。
【0026】
図2A及び図2Bの電気パルスは矩形パルスとして示されているが、これは簡略化に過ぎない。実際は、これらのパルスは構成要素内の損失のためにより丸みを帯びる可能性がある。そのような典型的な電気パルスとは対照的に、対応するレーザパルス60(図2A及び図2B)は、サメのヒレのような特徴的な形状を有する。すなわち、これらのレーザパルス60は、高い初期ピークに続いて急激に低下する。図2A及び図2Bでの曲線の面積は、レーザパルス60のエネルギを示している。図2A及び図2Bのいずれからも見て分るように、電気パルスの開始とそれがもたらすレーザパルス60の間には有限の時間遅延(tdelay)が存在する。この時間遅延は、レーザ用媒質22がレーザ発光閾値に達するのにかかる時間に関連する。簡単には、期間tdelay内の電気パルスのエネルギは、レーザ用媒質22内の電子の励起レベルをレーザ発光閾値まで上昇させるのに使用される。この閾値に達するか又はこれを超えると、レーザパルス60が発生する。時間遅延は、電気パルス及びレーザパルス60のエネルギの関数とすることができる。
【0027】
更に、図2A及び図2Bのいずれでも見て分るように、放出されるレーザパルス60は、それを発生させる電気パルスよりも短い(時間スケールで)。例えば、図2Aでは、電気パルスは約500μsの持続時間を有し、この電気パルスから発生するレーザパルス60は僅か約370μsであり、図2Bでは、電気パルスは約1300μsの持続時間を有するが、得られるレーザパルス60は約900μsの持続時間を有するに過ぎない。この持続時間の差は、発振器20で発生するエネルギ損失の結果であると共に、光ポンピング及び熱効果による蛍光寿命の減少に起因する。更に、図2A及び図2Bを比較することによって分るように、レーザパルス曲線の急速に減衰する形状のために、より長い電気パルスから発生するエネルギの増加(レーザパルス曲線の下の面積)は重要ではない。
【0028】
従来、レーザパルスのエネルギを増大させるために、電気パルス(又はポンピングエネルギ)のパワー(又は大きさ)を増大させる。電気パルスのパワー(及びそれによる光ポンピングエネルギ)を増大させると、対応するレーザパルスの初期ピークの大きさが増加する。しかし、より高い大きさの初期ピークは短時間にわたって存在するに過ぎないので、パルス60の総エネルギ量は実質的に増加しない可能性がある。更に、レーザ用媒質の蛍光寿命は光ポンピングエネルギに強く依存する可能性があることは既知である。図3は、CTH:YAGレーザ用媒質の蛍光寿命を光ポンピングエネルギ密度の関数として示している。図3から分るように、レーザ用媒質22が低いエネルギレベルでポンピングされる場合、レーザ用媒質22の蛍光寿命は、それが高いエネルギレベルでポンピングされる場合よりも実質的に長い。例えば、光ポンピングエネルギ密度が約30J/cm3から約300J/cm3に増加すると、レーザ用媒質の蛍光寿命は約6ミリ秒(ms)から約2msに減少する。従来のレーザシステムは、砕石術適用例に約100~300J/cm3の光ポンピングエネルギを使用する。
【0029】
更に、高電力電気パルスから発生するより高い大きさの初期ピークにより、レーザパルス60のエネルギは、少なくとも瞬間的に望ましい値を超える可能性がある。レーザエネルギのこの瞬間的な増加は、レーザシステム100の光学構成要素を損傷させ、後方突進及び大きい結石破片(例えば、回収バスケットのような追加の医療デバイスを使用して除去しなければならない場合がある)のような望ましくない影響をもたらす可能性がある。
【0030】
いくつかの結石破砕適用例(例えば、結石の小さい破片が少しずつ削られて吸引によって除去される「結石ダスティング」)については、パルスの初期ピーク領域で鋭いエネルギスパイクを発生することなくレーザパルス60のエネルギを増大させることが望ましい場合がある。従来の知識に反して、本発明による開示のいくつかの実施形態では、レーザパルスのエネルギは、レーザパルスの持続時間を長くしてレーザパルスを発生させるポンピングエネルギ(すなわち、電気パルスのパワー)を下げることによって増加する。例えば、いくつかの実施形態では、コントローラ50は、(放出されるレーザパルス60のパワーを低減するために)約50J/cm3よりも低いように電気パルスのエネルギを制御し、初期ピークの大きさを付随して増大することなく、放出されるレーザパルス60の持続時間(及び従ってエネルギ量)を増大させる。
【0031】
図4Aは、本発明による開示の一実施形態における電気パルスと得られるレーザパルスとの関係を示す簡略図である。この実施形態では、時間的に離間した複数の電気パルス(A、B、C、Dの符号を付す)が電源30から光ポンプ24に差し向けられ、これらの時間的に離間した電気パルスから発生するレーザパルスが準連続波形(準連続レーザパルス60’)になるようにする。図4Aを参照すると、いくつかの実施形態では、光ポンプ24への初期電気パルスは、レーザ用媒質22のエネルギレベルをレーザ発光閾値に近いがそのすぐ下の値まで(例えば、レーザ発光閾値の約80~99%まで)上昇させるように構成されたプレパルス(A)とすることができる。プレパルスAによって引き起こされる励起はレーザ発光閾値に達しないので、プレパルスAはレーザパルス60の放出をもたらさない。しかし、時間t1のプレパルスAの終わりには、レーザ用媒質22の電子は、少量のエネルギを更に印加するとレーザパルス60の形態の放射線を放出するように準備することができる。次に連続する3つの電気パルス(B,C,D)が短い間隔で光ポンプ24に与えられ、発振器20から準連続レーザパルス60’を開始させる。一般的に、複数のパルスA、B、C、Dは、電気パルスがその直前のパルスの蛍光寿命内にあるように(すなわち、パルスBがパルスAの蛍光寿命内にあるように、パルスCがパルスBの蛍光寿命内にあるようになど)離間させることができる。
【0032】
一般的に、準連続レーザパルス60’の形状は、レーザシステム100の特性(例えば、電気パルスのパワー、間隔、持続時間、レーザ用媒質の材料など)に依存する。いくつかの実施形態では、図4Aに示すように、離間した電気パルスA、B、C、Dから発生する準連続的なレーザパルス60’は、延長された持続時間Eμsを有する連続的な波形とすることができる。本明細書に使用する場合、連続波形を有するレーザパルスとは、パルスの持続時間中に任意の最大値から任意の非ゼロの最小値まで大きさが変化することができるレーザパルスである。すなわち、連続波形は、その両端部のみで大きさがゼロになる。図4Aの実施形態では、準連続レーザパルス60’は、個々の電気パルスB、C、及びDによって発生される個々のレーザパルス60を統合する(又は組合せる)ことによって生成される。いくつかの実施形態では、1組の離間した電気パルスの各電気パルスは、準連続レーザパルス60’を発生させるように統合されない場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、電気パルスB及びCによって発生したレーザパルスだけを統合することによって準連続レーザパルス60’を発生させることができる。個々の電気パルス(例えば、B及びC)によって発生したレーザパルスのパルス持続時間が250μsである場合、準連続レーザパルス60’の持続時間は、250μsを超えて500μs未満とすることができる(例えば、2つの電気パルスからのレーザパルスを組合せることによって発生された場合)。
【0033】
図4Aに示すように、プレパルスAの後で、既に準備されたレーザ用媒質22に少量のエネルギを更に印加すると、時間t2において準連続レーザパルス60’の開始が見られる。電気パルスの持続時間(a,b,c,d)及びそれらの間の間隔(a-b,b-c,c-d)は、レーザシステム100の特性及び電気パルスのパワーに依存する場合がある。一般的に、プレパルスAの持続時間aは、レーザ用媒質22がプレパルスAの終わりにレーザ発光閾値の約80~99%(しかし、100%未満)の励起レベルに到達するようにするのがよい。そして、パルスAとパルスBの間の間隔a-b、及びBとCは、準備されたレーザ用媒質22からのエネルギ散逸が最小になるようにするのがよい。本発明の技術分野で既知のように、反転分布が存在しなくなると、各レーザパルス(例えば、電気パルスBから発生するレーザパルス60)の終わりにはかなりの量のエネルギがレーザ用媒質22に蓄積されたままになる。電気パルスBとCの間の間隔b-cが大きすぎる(しかし、依然として蛍光寿命内である)場合、この蓄積エネルギは、電気パルスCによるポンピングの前、閾値以下の放射減衰及び無放射減衰において浪費される。しかし、パルスCが電気パルスBの直後に始まれば、蓄積されたエネルギの大部分は次のレーザパルス60の発生に利用され、それによって反転分布を達成するのに必要とされるポンピングエネルギを低減させることができる。
【0034】
本発明による開示の異なる実施形態では、持続時間a、b、c、d及び電気パルスA、B、C、D間の間隔a-b、b-c、c-dは、約10~1000μsの間で変えることができ、得られる準連続レーザパルス60’は、約250μs~10ミリ秒(ms)とすることができる。いくつかの実施形態では、持続時間a、b、c、dのうちの1又は2以上は、約10~200μs(又は10~300μs)とすることができ、間隔a-b、b-c、c-dのうちの1又は2以上は、約10~100μs(又は10~200μs)とすることができる。図4の実施形態では、プレパルスAの持続時間aは、約30~300μsとすることができ、パルスAとBの間の間隔a-bは、約10~100μsとすることができ、パルスB、C、及びDの持続時間は、約10~500μsとすることができ、パルスB、C、及びDの間の間隔b-c及びc-dは、約10~100μsとすることができ、得られる準連続レーザパルス60’の得られる持続時間Eは、約600~1500μsとすることができる。いくつかの実施形態では、得られる準連続レーザパルス60’の電力は、約100W~1KWとすることができる。
【0035】
滑らかな連続波形を有する準連続レーザパルス60’である図4Aに示す形状は、例示に過ぎないことに注意しなければならない。図4Bは、時間的に離間した複数の電気パルスから発生する連続波形を有する別の例示の準連続レーザパルス60’を示している。図4Bに示すように、準連続レーザパルス60’の大きさは、Eμsの持続時間内で約5任意単位(au)(ジュールなど)の平均最大値から約1.25auの最小平均値(すなわち、最大値の25%)まで変化してもよい。しかし、波形はその両端部だけでゼロの大きさを有し、その持続時間内の至る所で非ゼロの大きさを有する。両端部間の連続波形の大きさは常に非ゼロであるが、図4Bに示す最大値及び最小値は例示に過ぎないことに注意すべきである。一般的に、最小値は、最大値の任意の百分率(10%など)である。
【0036】
図4A及び図4Bでは、各電気パルスから発生するレーザパルス60は、互いに融合して連続波形の形態の準連続レーザパルス60’を発生させる。しかし、連続波形の電力レーザパルスを発生させることは限定ではない。いくつかの実施形態、例えば、CTH:YAGと比べてより高速なエネルギ伝達過程を有するレーザ用媒質22(例えば、Er:YAG、Nd:YAG、Er:YLFなど)が使用される場合、連続する入力電気パルスから発生するレーザパルス60を、時間的に離間させてもよい。例えば、図4Aを参照すると、電気パルスB、C、及びDの間の間隔b-c及びc-dが約100μs未満又はそれに等しい場合、発振器20は連続波形の形態で準連続レーザパルス60’を出力することができる。しかし、電気パルスB、C、及びDが100μsを超えて離間した場合、発振器20は、時間的に離間した別々のレーザパルス60を含む(すなわち、全体として連続波形を形成しない)準連続レーザパルス60’を出力する場合がある。しかし、これらの離間したレーザパルス60の周波数(及びそれによる反復速度)は(常温で)約1kHzを超えるので、得られる離間したレーザパルス60は、実質的に連続するレーザパルスに類似し、かつ事実上そうである場合がある。従って、本発明による開示では、準連続レーザパルスという用語は、(a)連続波形(例えば、図4A及び図4Bに示すものに類似)を有するレーザパルスを形成するために統合された複数のレーザパルス60、及び(b)互いに時間的に離間して約1kHzを超える周波数を有する複数のレーザパルス60の両方を併せて指すのに使用される。
【0037】
図5は、時間的に離間した複数の電気パルスから発生する連続波形形態の別の例示の準連続レーザパルス60’を示す簡略図である。図5の実施形態では(図4A及び図4Bの実施形態におけるように)、最初のプレパルスAは、レーザ用媒質22をそのレーザ発光閾値のすぐ下まで励起させる。すなわち、プレパルスAの終わりに、レーザパルス60は発振器20からまだ発生していないが、少量の追加エネルギの印加により、レーザパルスを放出させることになる。プレパルスAに続いて、光ポンプ24は、時間的に離間した電気パルスB、C、D等を比較的長いシーケンス(例えば、約50パルス)で使用するようにポンピングされ、かかる電気パルスの各々は、約50J/cm3未満のエネルギ密度と約50μsの持続時間しか有さず、隣接したパルスから約50μsしか離間していない。光ポンプ24を駆動するのに使用される時間的に離間した電気パルスのこのシーケンスは、本明細書ではデジタル化電気パルス又はデジタルポンピングと呼ぶ場合がある。そのような光ポンピングの結果として、比較的長い持続時間(例えば、約4300μs)を有する準連続レーザパルス60’(連続波形を形成するために統合された連続するレーザパルス60を含む)が発振器20から発生する。このレーザパルス持続時間は例示に過ぎないことに注意しなければならない。異なる特性(数、持続時間、間隔など)を有するデジタル化電気パルスを使用して、電力レーザパルス持続時間を約250μs~10msの間の任意の値に変えることが可能であると考えられている。
【0038】
一般的に、電気パルスの大きさは、任意の大きさを有するレーザパルス60を発生させるように構成される。しかし、上述したように、ポンピングエネルギとその得られるレーザ電力とを低減することにはいくつかの利点がある(蛍光寿命の増加、後方突進の低減など)。従って、図5に示すように、いくつかの実施形態では、電気パルスのエネルギ密度を50J/cm3未満に保ち、例えば、図2Aのレーザパルス60と比べてより小さい大きさ(例えば、約0.5~0.25auで変化する)とより長い持続時間(例えば、約4.3ミリ秒(ms))とを有する準連続レーザパルス60’を発生させることができる。(図5の)準連続レーザパルス60’の大きさは(図2Aの)レーザパルス60よりも低いが、その実質的により長い持続時間により、レーザパルス60の総エネルギ量よりも大きいか又はそれに等しい準連続レーザパルス60の総エネルギ量を発生させる。
【0039】
例えば、500mJのエネルギを有するレーザビームを生成するために、従来のCTH:YAGレーザでは、レーザ媒質を1パルス当たり約100~500J/cm3のエネルギで光ポンピングして、約2.5~1.0kWのピーク電力と約200~500μsの持続時間とを有するレーザパルスを生成する。対照的に、同じエネルギ(すなわち、500mJ)を有するレーザビームを生成するために、本発明による開示の例示のレーザシステムは、レーザ媒質を約2~50J/cm3のエネルギで上述したように複数回(例えば、30~100回)ポンピングして、約4.5msの持続時間を有する準連続レーザパルス60’を生成し、約70~150Wのピーク電力(例えば、100~130W)を有するレーザパルスを生成することができる。このより小さい大きさ及びより長い持続時間のレーザパルス60’は、後方突進のような望ましくない影響を最小にすることによってレーザシステム100の効率を高めることができる。より小さい大きさ及びより長い持続時間を有する準連続レーザパルス60’は、結石ダスト除去等の医療適用例に使用することができ、結石ダスト除去では、結石を複数の大きい寸法のピースに破壊することなしに、結石のダスト寸法にされた粒子が除去されることが望ましい。
【0040】
結石融除適用例に関連して(本発明による開示の例示のレーザシステム100によって生成された)準連続レーザパルス60’のパフォーマンスを(従来のレーザシステムによって発生された)従来のレーザパルス60と比較するために、水中での2つのパルスのキャビテーション動力学を高速度カメラで調べた。両方のレーザシステムは、それぞれのレーザシステムによって生成されたレーザパルスのエネルギが実質的に同じ(約1000~1300mJ)になるように設定された。両方のレーザパルスは同じエネルギを有するが、準連続レーザパルス60’は約4100μsの持続時間(連続する離間した電気パルスから発生する)を有し、従来のレーザパルス60は約310μsの持続時間を有する。これらの調査で有意な差が観察された。従来のレーザパルス60によって発生されたキャビテーション気泡は、急速にサイズが成長してほぼパルスの終わりにその最大サイズを達成したが、準連続レーザパルス60’の気泡は、よりゆっくりと成長して従来パルスの気泡のサイズの約40%に達しただけであった。その結果、準連続レーザパルスの気泡の崩壊は、従来パルスの気泡の崩壊の場合ほどには強い音響衝撃波を放出しなかった。従って、(各レーザパルスが印加される)結石に対する後方突進効果は、従来のレーザパルス60と比べて準連続レーザパルス60’の場合は大幅に低減されると予想される。
【0041】
更に、準連続レーザパルス60’のキャビテーション動力学の観察された独特の特徴は、気泡形成、崩壊、及び反動の沈静に関連付けられた初期乱流の後に形成される長寿命(約2.6ms)の恒久的キャビテーションチャネルであった。このチャネルでは、水(水蒸気)の密度とそれに対応するレーザパルスエネルギの吸収とが大幅に減少する。その結果、層ごとの結石材料の制御された融除(又は「結成ダスティング」効果)が著しく改善することが期待される。
【0042】
図4A及び図5は、単一の電気パルスから構成されたプレパルスAを示すが、これは限定ではない。いくつかの実施形態では、プレパルスAはまた、複数のより短い持続時間のプレパルス(例えば、電気パルスB、Cなどと同様)を含んでもよく、かかるプレパルスの各々は、レーザ用媒質22の励起レベルをレーザ発光閾値のすぐ下の値までステップ式に増大させる。更に、電気パルスA、B、C、Dの大きさは、図4A及び図5では同じであるように示されているが、これも例示に過ぎない。一般的に、これらの入力電気パルスは、同じ大きさを有していてもよいし、異なる大きさを有していてもよい。上述したように、プレパルスAのパワーは、レーザ用媒質22のエネルギを、レーザ用媒質22のレーザ発光閾値のすぐ下の値まで増大させるように適応させることができる。いくつかの実施形態では、直後の電気パルス(すなわち、B)の大きさは、プレパルスAよりも小さくてもよい(例えば、レーザ放射を開始するためにレーザ用媒質22のエネルギをレーザ発光閾値のすぐ上まで増大させるようになっている)。
【0043】
図5の実施形態では、電気パルスの持続時間(B、C、Dなど)とそれらの間隔はいずれも一定である。そのような電気パルスプロファイルは、図5に示すように均一な反復パターンを含むプロファイルを有する準連続レーザパルス60’を生成することができる。しかし、電気パルスの一定の持続時間及び間隔は要件ではない。いくつかの実施形態では、電気パルスの持続時間、電気パルス間の間隔、及び電気パルスの大きさのうちの1又は全てを修正して、得られるレーザパルス60’の輪郭を望む通りに調整することができる。すなわち、レーザ用媒質22の光ポンピングのパターンは、得られるレーザビームのパルス幅及び形状を調節する(増加、減少など)ように構成することができる。
【0044】
図6は、予め選択されたパターンの電気パルスからもたらされる例示の調整レーザパルス60’プロファイルを示す簡略図である。前の実施形態と同様、プレパルスAは、レーザ用媒質22の励起レベルをレーザ発光閾値のすぐ下の値まで(すなわち、レーザ発光閾値の約80~99%まで)上昇させることができる。プレパルスAの後、時間的に離間した複数の電気パルスが続き、レーザ用媒質22の励起レベルをレーザ発光閾値よりも少し高く上昇させてレーザパルス60の放出を開始することができる。異なる領域での電気パルス間の間隔、及び電気パルスの持続時間は、任意の望ましい形状を有するレーザパルス60’の輪郭を生成するように選択することができる。例えば、光ポンプ24に差し向けられる見かけ上デジタルの電気パルスのシーケンスは、そのシーケンスの一領域でのパルス間の間隔(及び/又はパルスの持続時間)が別領域でのものと異なるようにすることができ、2つの領域に対応して得られる波形の形状に違いを発生させる。従って、レーザ用媒質22をポンピングするのに使用される電気パルスのパターンを調節することにより、電力レーザパルスは、任意所望の形状及び輪郭を有するように制御される。
【0045】
いくつかの実施形態では、レーザシステム100の制御システム(例えば、コントローラ50)は、ユーザの望むレーザパルスプロファイルに基づいて電気パルスの適切なパターンを決定し、これらの電気パルスを光ポンプ24に差し向けることができる。レーザシステム100の発振器20は、次に、ユーザの望むパルスプロファイルと類似したプロファイルを有する準連続レーザパルス60’を出力することができる。例えば、ユーザは、(キーパッド、スクリーン、又は他の入力デバイスを使用して)望ましいレーザパルスプロファイル(事前の知識、経験などに基づいて、医療手順に特に適するとユーザが知っている)を制御システムに入力することができる。更に、レーザシステム100の既知の特性に基づいて、制御システムは、ユーザの望むパワーを発生させる電気パルスのパターンを決定することができる。これに代えて又はこれに加えて、いくつかの実施形態では、ユーザは、望ましいレーザパルスプロファイルを生成するように電気パルスのパターンを決定することができる。一般的に、電気パルスのいずれの特性(負荷サイクル、周波数、パルス持続時間、パワーなど)も、任意の調整されたレーザパルスプロファイルを生成するために異なる領域で変化させることができる。
【0046】
図7は、レーザ砕石術手順において図1のレーザシステム100を使用する例示の方法を示す流れ図である。医療手順のための被験者が準備され、適切なカテーテル(内視鏡、尿管鏡など)を、その中を延びる光ファイバ12と一緒に、開口部から被験者の体内に挿入する(段階110)。次に、カテーテルを体内で操作して、光ファイバ12の遠位端を結石の近くに位置決めする(段階120)。次に、ユーザは、電気パルスの特性(持続時間、大きさ、間隔、パターンなど)をコントローラ50に入力し、望ましいプロファイル、持続時間、及び大きさを有する準連続レーザパルス60’を発生させる(段階130)。これらの特性は、レーザシステム100の以前の経験及び知識に基づいてユーザが選択することができる。次に、発生させた準連続レーザパルス60’を使用して、結石から小ピースを分離する(段階140)。
【0047】
本発明による開示の原理を特定適用例に対する例示の実施例を参照して本明細書に説明したが、本発明による開示はこれに限定されないことを理解しなければならない。本明細書に提供する教示へのアクセスを有する当業者は、追加の修正、応用、実施形態、及び均等物への置換が全て本明細書に説明する特徴の範囲に入ることを認識するであろう。従って、特許請求する特徴は、以上の説明によって制限されるように考えないものとする。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7