(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174777
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】歯車加工用転造工具およびそれを用いた歯車の転造加工方法
(51)【国際特許分類】
B21H 5/04 20060101AFI20221117BHJP
B21H 5/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B21H5/04
B21H5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080732
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】笠井 康
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嗣紀
(57)【要約】
【課題】転造加工時にワークの歯面に余肉の発生を抑制し、種々の歯幅に対応できる内歯車用途の転造工具およびそれを用いた歯車の転造加工方法を提供する。
【解決手段】回転軸O10を中心に複数の歯11を円環状に配置した歯車加工用転造工具10であり、回転軸O10に平行な断面において、歯11の歯先面12を回転軸O10と平行に形成された平行部12Bおよび回転軸O10に対して所定の角度で傾斜しているテーパ部12A,12Cから構成する。この場合、平行部12Bとテーパ部12A,12Cを歯11の歯幅方向にわたり連続的に形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に複数の歯が円環状に配置されており、前記回転軸と平行な断面において前記歯の歯先面は、前記回転軸と平行に形成された平行部と、前記歯の歯幅方向にわたって前記平行部と連続的に形成されているテーパ部と、を有している歯車加工用転造工具であって、前記テーパ部は、前記平行部の両端側から互いに逆向きの勾配を有した状態で形成されている第1テーパ部および第2テーパ部から構成されており、前記第1テーパ部と前記回転軸の成す角度は、前記第2テーパ部と前記回転軸の成す角度よりも小さく、かつ前記第2テーパ部の頂面の角部には前記回転軸に垂直な方向の断面視において丸め加工が施されていることを特徴とする歯車加工用転造工具。
【請求項2】
前記丸め加工の大きさは、曲率半径として20μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の歯車加工用転造工具。
【請求項3】
請求項1に記載の歯車加工用転造工具および被加工材を共に回転させながら前記被加工材の内周面に歯車を転造加工する方法であって、前記歯車加工用転造工具の回転軸と前記被加工材の回転軸が共に平行な状態で、前記歯車加工用転造工具または前記被加工材の少なくとも一方を前記被加工材の回転軸に沿って移動させながら前記被加工材の内周面に歯車の転造加工を行なうことを特徴とする歯車の転造加工方法。
【請求項4】
請求項1に記載の歯車加工用転造工具および被加工材を共に回転させながら前記被加工材の内周面に歯車を転造加工する方法であって、前記歯車加工用転造工具の回転軸が前記被加工材の回転軸に対して所定の傾きを有した状態で、前記歯車加工用転造工具または前記被加工材の少なくとも一方を前記被加工材の回転軸に沿って移動させながら前記被加工材の内周面に歯車の転造加工を行なうことを特徴とする歯車の転造加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車加工用の転造工具およびそれを用いた歯車の転造加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで歯車の製作は主に切削加工により行なわれてきたが、切削加工は切りくずが発生するため、近年では環境負荷を低減する観点から代替手段による歯車の加工が検討されてきた。
【0003】
また、切削加工による歯車の加工は、止まり穴の内歯車加工において切りくずの逃げ場がなく、噛み込んだ切りくずがワーク(被加工材)を損傷させて、ひいては工具の損傷を引き起こすという問題もあった。
【0004】
そこで、切削加工の代替手段として転造加工による歯車の製作が提案されるようになった。例えば、特許文献1や特許文献2では転造加工による内歯車に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許644318号公報
【特許文献2】特許3947204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、歯車の製作過程において特許文献1に開示されているような転造加工時に転造工具の歯底が被加工材の歯底や歯先に接触しながら転造加工を行なうと転造工具が破損しやすいという問題があった。
【0007】
特に、従来の転造加工は転造工具を被加工材の内周面の方向へ近接させる方向(被加工材の径方向:ラジアル方向)に移動させる、いわゆる転造工具をラジアル送りにより転造加工するものである。そのため、転造加工時には転造工具および被加工材共に大きな負荷が発生するため、専用の転造加工機を用いて転造加工する必要があった。
【0008】
また、転造加工において転造工具が被加工材から離れる時に転造工具と被加工材の接触面は徐々に小さくなる。この時、被加工物の幅全体で受けていた転造加工時の荷重をより狭い範囲で受けることになるため、転造工具から受ける荷重(応力)が一点に集中し、被加工物への食い込みが深くなる。その結果、被加工物の歯面に段差が発生する。被加工物の歯面に発生する段差の模式図を
図17に示す。
【0009】
そこで、本発明は転造加工時に被加工材の歯面に発生する段差,傷,バリ等の不具合を抑制する転造工具を提供することを課題とする。合わせて、当該転造工具を用いた歯車の転造加工方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するために、本発明の転造工具は、複数の歯が回転軸を中心に円環状に配置されて、回転軸に平行な断面において複数の歯の歯先面は回転軸と平行に形成された平行部および回転軸に対して所定の角度で傾斜しているテーパ部から形成されている。この平行部とテーパ部は複数の歯の歯幅方向にわたって連続的に形成されている構造とした。
【0011】
歯の歯幅方向にわたって形成されるテーパ部は、平行部の両端側から歯幅方向に向けて連続的に形成している第1テーパ部および第2テーパ部に分けて形成する。この場合、第1テーパ部と回転軸との成す角度を、第2テーパ部と回転軸との成す角度よりも小さくする。例えば、第1テーパ部と回転軸の成す角度θ(θ1およびθ2)は、1°以上20°以下の範囲としても良い。
【0012】
また、本願の発明者は、転造工具による歯車の転造加工では、転造工具が被加工物から離れる際に転造荷重の変動が発生し、その転造荷重の変動によって転造工具または被加工物の軸のたわみや加工装置の同期ずれに起因して被加工物の歯面に段差や傷、バリ等の不具合が発生していることを確認した。そこで、本発明の転造工具を形成する第2テーパ部の頂面の角部には回転軸に垂直な方向の断面視において丸み加工(R面取り加工)を施すこととする。この場合、丸み加工(R面取り加工)の大きさは20μm以上の曲率半径とすることが好ましい。
【0013】
なお、本発明の転造工具の材質については、高速度工具鋼、高合金鋼、超硬合金など種々の材料から選択することができる。その表面硬さは、少なくともロックウェルAスケールで80HRA以上93HRA以下の範囲であることが望ましい。
【0014】
また、この転造工具を用いた歯車の転造加工方法の発明については、歯車加工用転造工具および被加工材を共に回転させながら被加工材の内周面に歯車を転造加工する際に、歯車加工用転造工具の回転軸と被加工材の回転軸が共に平行な状態で、歯車加工用転造工具または被加工材の少なくとも一方を被加工材の回転軸に沿って移動させながら被加工材に対して転造加工を行なう転造加工方法とする。
【0015】
または、歯車加工用転造工具の回転軸は被加工材の回転軸に対して所定の傾きを有した状態で歯車加工用転造工具または被加工材の少なくとも一方を被加工材の回転軸に沿って移動させながら被加工材に対して転造加工を行なう転造加工方法でも構わない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の歯車加工用転造工具は、複数の歯の歯面形状が回転軸と平行に形成された平行部および回転軸に対して所定の角度をもったテーパ部が連続して形成されることで転造加工時に発生する転造荷重が低下するので、転造工具および転造加工時に使用する機器への負荷が小さくなり、歯車の加工精度が向上する。また、本発明の歯車加工用転造工具は第2テーパ部の歯先に丸みを付ける(ラウンド加工を施す)ことで転造加工による歯車の生産能率を低下させないで転造工具費用の上昇をなるべく抑えたまま、当該転造加工法を採用できる領域を広げることもできる。特に、隣接する歯同士に余肉を発生することなく、モジュールが小さい(m≦1)内歯車を製作することができる。
【0017】
また、単一の歯車加工用転造工具で様々の歯幅の寸法に対応した転造加工が可能となる。さらに、転造加工時に発生する被加工材への転造荷重が分散することで低下し、通常の複合加工機(工作機)による転造加工が可能となるので、歯車加工の工程集約も可能となる。
【0018】
さらに、歯車加工用転造工具の回転軸が被加工材の回転軸に対して所定の傾きを有した状態で転造加工することにより、歯車加工用転造工具と被加工材に歯車加工用転造工具と異なるねじれ角の歯車を形成させることができる。このことによれば、例えば10°以下の弱いねじれ角の歯車をねじれの無い歯車加工用転造工具で加工することができるため、歯車加工用転造工具の製造コストを低く抑えることが可能である。また、ねじれ角の異なる歯車を同一の歯車加工用転造工具で製作することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態である転造工具10の平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態である転造工具10の底面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態である転造工具20の平面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態である転造工具20の底面図である。
【
図10】
図8のY-Y切断線における断面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態である転造加工方法を示す模式図である。
【
図14】本発明の第2実施形態である転造加工方法を示す模式図である。
【
図15】実施例の本発明品による転造加工結果である。
【
図16】実施例の比較品による転造加工結果である。
【
図17】従来の転造加工による歯面の段差部分の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。本発明の歯車加工用転造工具10(第1実施形態)の平面図を
図1、底面図を
図2、
図1に示すX-X切断線における断面図を
図3、
図3に示す歯車加工用転造工具10の歯11の部分拡大図を
図4、
図4に示す平行部12BのA-A線断面図を
図5、第2テーパ部12CのB-B線断面図を
図6にそれぞれ示す。
【0021】
歯車加工用転造工具10は、
図1および
図2に示す様に回転軸O10を中心に複数の歯11,11が円環状に配置されている(
図1に示す歯車加工用転造工具10の歯数は114)。
図3に示す様に、この回転軸O10に平行な断面において歯11の歯先面12は、回転軸O10と平行に形成された平行部12Bと、回転軸O10に対して所定の角度で傾斜しているテーパ部12A,12Cから形成されている。
【0022】
また、歯先面12における平行部12Bとテーパ部12A,12Cが歯12の歯幅方向にわたって連続的に形成されている。つまり、
図3に示す様に歯11の歯先面12は、平行部12Bと平行部12の両端側(
図3中の上下方向)にテーパ部12A(第1テーパ部)とテーパ部12C(第2テーパ部)が互いに逆向きの勾配を有した状態で別個に形成されている。
【0023】
なお、
図4に示すように歯11の第1テーパ部12Aと回転軸O10(図中では回転軸O10と平行な直線L10を表示)の成す角度θ1は、1°以上20°以下の範囲であることが望ましい。また、同図に示す歯11の第2テーパ部12Cと回転軸O10(直線L10)の成す角度θ11は、前述の角度θ1よりも大きくすることが望ましい。
【0024】
第1実施形態の歯車加工用転造工具10を用いた転造加工による被加工材W10の加工形態を
図7に示す。
図1などに示す歯車加工用転造工具10による転造加工は、歯車加工用転造工具10の歯11が被加工材W10に対して歯溝の幅方向(
図4の左右方向)は変化せずに、歯溝の深さ方向(
図7の上下方向)に向けて段階的に転造加工が進む。
【0025】
次に、本発明の歯車加工用転造工具20(第2実施形態)の平面図を
図8、底面図を
図9、
図8に示すY-Y切断線における断面図を
図10、
図10に示す歯車加工用転造工具20の歯21の部分拡大図を
図11にそれぞれ示す。歯車加工用転造工具20は、第1実施形態の歯車加工用転造工具10と同様に
図8および
図9に示す様に回転軸O20を中心に複数の歯21,21が円環状に配置されている(
図8に示す歯車加工用転造工具20の歯数は114)。
【0026】
回転軸O20に平行な断面において、歯21の歯先面22は
図10に示す様に回転軸O20と平行に形成された平行部22Bと、回転軸O20に対して所定の角度で傾斜しているテーパ部22A,22Cが別個に形成されている。歯車加工用転造工具20(第2実施形態)は、歯21の形態が歯幅方向に向けて傾斜した歯面を有している点で第1実施形態の歯車加工用転造工具10とは異なっている。
【0027】
また、歯先面22における平行部22Bとテーパ部22A,22Cが歯22の歯幅方向にわたって連続的に形成されている。つまり、
図10に示す様に歯21の歯先面22は、平行部22Bと平行部22の両端側(
図10中の上下方向)にテーパ部22A(第1テーパ部)とテーパ部22C(第2テーパ部)が互いに逆向きの勾配を有した状態で別個に形成されている。
【0028】
なお、
図11に示すように歯21の第1テーパ部22Aと回転軸O20(図中では回転軸O20と平行な直線L20を表示)の成す角度θ2は、1°以上20°以下の範囲であることが望ましい。また、同図に示す歯21の第2テーパ部22Cと回転軸O20(直線L20)の成す角度θ22は、前述の角度θ2よりも大きくすることが望ましい。
【0029】
第2実施形態の歯車加工用転造工具20を用いた転造加工による被加工材W20の加工形態を
図12に示す。
図8などに示す歯車加工用転造工具20を用いた転造加工は、
図12に示す様に歯車加工用転造工具20の歯21が被加工材W20に対して歯溝の幅方向(
図12の左右方向)および歯溝の深さ方向(
図12の上下方向)の両方向に向けて段階的に転造加工が進む。
【0030】
次に、本発明の転造工具を用いて内歯車を転造加工する場合の加工形態について図面を用いて説明する。転造工具の回転軸と被加工材の回転軸が同軸の状態による転造加工形態(第1実施形態)の模式図を
図13、転造工具の回転軸と被加工材の回転軸が交差した状態による転造加工形態(第2実施形態)の模式図を
図14に示す。
【0031】
本発明の転造加工方法の第1実施形態としては、転造工具30が回転軸O30を中心にして回転しながら被加工材W30の内周側に内歯車を加工する場合に、被加工材W30もその回転軸O31を中心に転造工具30と同期しながら回転した状態で、転造工具30を被加工材W30の下方側から上方側に向けて(図面の上下方向)被加工材W30の回転軸O31に沿って移動させることで転造加工を行なう。その場合、転造工具30の回転軸O30と被加工材W30の回転軸O31は、
図13に示す様に平行な状態である。ここで、回転の同期とは転造工具と被加工材との回転数の比がそれらの歯数の比の逆数であり、転造工具と被加工材が接触する点において歯車がかみ合っている状態を示す。
【0032】
次に、本発明の転造加工方法の第2実施形態としては、転造工具40が回転軸O40を中心にして回転しながら被加工材W40の内周側に内歯車を加工する場合に、被加工材W40もその回転軸O41を中心に転造工具30と同期しながら回転した状態で、転造工具40を被加工材W40の下方側から上方側に向けて(図面の上下方向)被加工材W40の回転軸O41に沿って移動させることで転造加工を行なう。その場合、転造工具40の回転軸O40と被加工材W40の回転軸O41は、
図14に示す様に平行な状態ではなく、所定の角度を有したねじれの状態である。
【0033】
なお、前述した本発明の転造加工方法の第1および第2実施形態に用いる転造工具30,40は、
図1等に示す第1実施形態の歯車加工用転造工具10や
図8等に示す第2実施形態の歯車加工用転造工具20のいずれの形態の転造工具を用いても構わない。
【0034】
また、
図13および
図14に示した本発明の転造加工方法における第1および第2実施形態では、転造工具30,40を被加工材W30,W40の回転軸O31,O41に沿って移動する転造加工の形態を示しているが、転造工具30,40を移動させないで(固定した状態で)被加工材W30,W40を被加工材W30,W40の回転軸O31,O41に沿って移動させる転造加工の形態でも良い。
【0035】
もしくは、転造工具30,40および被加工材W30,W40の双方を被加工材W30,W40の回転軸O31,O41に沿って移動させる転造加工の形態でも良い。すなわち、転造工具と被加工材の相対的な位置関係が変化する加工形態であれば、いずれの転造加工の形態であっても構わない。
【0036】
次に、本発明の歯車加工用転造工具および従来の転造工具をそれぞれ用いて、被加工材の内周面に歯車の転造加工を行い(歯車の転造加工試験)、当該歯車の歯面形状を測定した。その試験結果等について図面を用いて説明する。なお、本発明の歯車加工用転造工具による歯車の転造加工事例を実施例、従来の転造工具による転造加工事例を比較例とする。
【0037】
(実施例)
まず、本発明の歯車加工用転造工具を用いた歯車の転造加工試験を行った。本試験に使用した歯車加工用転造工具の諸元,被加工材(歯車)の諸元および転造加工時の加工条件を以下に示す。
【0038】
本試験では、被加工材の内周面に本発明の歯車加工用転造工具(
図1ないし
図6に示す工具形態とする)を用いて転造加工により歯車を製作する試験であり、その際に歯車加工用転造工具を被加工材の軸方向(アキシャル方向)のみに移動させる(
図13に示す移動形態とする)ことで転造加工を行った。本試験において、本発明の歯車加工用転造工具を用いた被加工材(歯車)の歯面形状を測定したので、その測定結果(グラフ)を
図15に示す。
【0039】
・歯車の材質:クロムモリブデン鋼(SCM420)
・転造加工速度:20m/分
・転造工具の移動方向:歯車の軸方向(アキシャル方向)
・転造工具の送り速度:0.023mm/rev
・転造加工形態:1パス加工
【0040】
(比較例)
次に、前述の実施例と同じ諸元の歯車を従来の転造工具を用いた歯車の転造加工試験を行った。本試験に使用した歯車の諸元および転造加工時の加工条件は前述の実施例と同一条件とした。本試験で使用した転造工具と実施例で使用した歯車加工用転造工具の相違は、歯車加工用転造工具の歯の断面形状の相違による。すなわち、従来の転造工具の歯は、歯の第2テーパ部における頂面の角部に回転軸に垂直な方向の断面視において丸め加工が施されていない形状とする。
【0041】
本試験も実施例の場合と同様に、被加工材の内周面に従来の転造工具を用いて転造加工により歯車を製作する試験であり、その際に転造工具を被加工材の径方向(ラジアル方向)のみに移動させることで転造加工を行った。前述の実施例の場合と同様に本試験後の当該歯車の歯面形状の測定結果(グラフ)を
図16に示す。
【0042】
以上の実施例および比較例の各試験結果から、本発明の歯車加工用転造工具を用いて歯車の転造加工を行うと、従来の転造工具を用いた転造加工に比べて、歯車の歯面形状に段差は確認されなかった。
【符号の説明】
【0043】
10~40,100 歯車加工用転造工具
200 転造工具
11,21 歯
12,22 歯先面
12A,22A 第1テーパ部
12B,22B 平行部
12C,22C 第2テーパ部
L10,L20 歯車加工用転造工具の回転軸と平行な仮想軸
O10~O40 (歯車加工用転造工具の)回転軸
O31,O41 (被加工材の)回転軸
W10~W40 被加工材
W100,W200 被加工材
θ1,θ2 第1テーパ部と歯車加工用転造工具の回転軸の成す角度
θ11,θ12 第2テーパ部と歯車加工用転造工具の回転軸の成す角度