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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174792
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/20 20060101AFI20221117BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
F16B39/20 Z
F16B35/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080753
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野町 博康
(72)【発明者】
【氏名】大谷 啓一
(57)【要約】
【課題】ワイヤーロックを施工する場合にワイヤーが頭部から外れることを防止または抑制できるボルトを提供する。
【解決手段】ボルト10aは、ネジ山が設けられているネジ部11と、ネジ部11の軸線C方向の一方の端部側に設けられている頭部12aと、を有し、頭部12aには、ネジ部11の軸線C方向に略直角な方向に延伸し側面121に開口部151が位置している貫通孔と、開口部151よりもネジ部11が設けられている側とは反対側に位置しており頭部12aの径方向外側に延出するフランジ部16aとが設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の一端側にネジ部が設けられ前記軸線方向の他端側に頭部が設けられているボルトであって、
前記頭部には、
前記軸線方向に略直角な方向に貫通し前記頭部の側面に開口する開口部を有する貫通孔と、
前記頭部の前記側面のうち前記貫通孔の前記開口部よりも前記他端側に設けられており前記軸線方向に対して略直角な方向に延出する鍔部と、
が設けられている、
ボルト。
【請求項2】
請求項1に記載のボルトであって、
前記鍔部は、前記頭部の前記側面の全周にわたって設けられている、
ボルト。
【請求項3】
請求項1に記載のボルトであって、
複数の前記鍔部が、前記頭部の前記側面の一部に設けられている、
ボルト。
【請求項4】
請求項3に記載のボルトであって、
複数の前記鍔部は、前記軸線方向視において前記貫通孔を挟んで互いに反対側に設けられている、
ボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーロックに好適なボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトの緩み止めにワイヤーロックが用いられている。ワイヤーロックは、近接するボルトの頭部どうし、またはボルトの頭部とボルト以外の構造物(以下、「他の構造物」と記すことがある)とをワイヤー(金属線)で連結することにより、振動などによってボルトが緩むこと(緩む方向にボルトが回転すること)を防止する方法であり、緩んだボルトが脱落することを防止する方法である。ワイヤーロックに使用されるボルトの頭部には、半径方向に延伸する貫通孔が設けられている。そして、ワイヤーロックの施工の際には、ワイヤーをこの貫通孔に挿通するとともにボルトの頭部に巻き付けることによって、近接するボルトの頭部どうし、またはボルトの頭部と他の構造物とをワイヤーによって連結する。
【0003】
ワイヤーロックが施工されたボルトの頭部からワイヤーが外れると、ボルトが緩むことを防止できなくなる。このため、ワイヤーがボルトの頭部から外れないようにしなければならない。しかしながら、ワイヤーがボルトの頭部から外れないようにワイヤーを頭部の側面に巻き付ける作業は手間と熟練を要する。なお、ボルトの頭部に2本の貫通孔を設け、ワイヤーを折り返すようにしてこれら2本の孔に挿通させる構成が用いられることがある。このような構成によれば、ワイヤーを1本の貫通孔に挿通させるとともに頭部に巻き付ける構成に比較して、ワイヤーがボルトから外れにくくできる。しかしながら、このような構成では、1本のワイヤーを2本の貫通孔に挿通させる必要があるため、施工の際に手間を要する。なお、特許文献1には、ワイヤーロックに使用できるボルトとして、頭部の側面の全周にわたって形成される凹溝と、頭部を半径方向に貫通するワイヤー孔とが設けられているボルトが開示されている。このようなボルトによれば、ワイヤーを凹溝に嵌め込むことにより、ワイヤーがボルトの頭部から外れることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-19616号公報
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、特許文献1に開示されるボルトの頭部の側面にワイヤーを巻き付ける際に、ワイヤーを凹溝に嵌め込まなければならない。このため、作業に手間を要する。また、特許文献1に開示されるような凹溝を成形するためには、ボルトの頭部に対して、例えば旋盤などを使用した機械加工が必要になる。このため、凹溝を有さないボルトに比較して製造工数が増加するから、ボルトの製造コストが上昇し、その結果製品価格が上昇する。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ワイヤーロックを施す場合にワイヤーが頭部から外れることが防止または抑制されるボルトを提供することである。さらに本発明の他の目的は、ワイヤーロックに使用されるボルトの製造コストの削減を図ることである。
【0007】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係るボルトは、
軸線方向の一端側にネジ部が設けられ前記軸線方向の他端側に柱状の頭部が設けられているボルトであって、前記頭部には、前記軸線方向に略直角な方向に貫通し前記頭部の側面に開口する開口部を有する貫通孔と、前記頭部の前記側面のうち前記貫通孔の前記開口部よりも前記他端側に設けられており前記軸線方向に対して略直角な方向に延出する鍔部と、が設けられている。
【0008】
本発明に係るボルトにワイヤーロックを施工する場合、ボルトの頭部に沿わせたワイヤーを鍔部に引っ掛けることにより、ワイヤーが当該ボルトの頭部から外れることを防止できる。そして、本発明によれば、互いに交差する複数の貫通孔が頭部に設けられているボルトを使用する場合と比較して、貫通孔にワイヤーを挿通する手間を削減できるから、ワイヤーロックの施工が容易になる。また、本発明によれば、頭部の側面の全周にわたって凹溝が設けられるボルトと異なり、凹溝にワイヤーを嵌め込まなくてもよい。このため、ワイヤーロックの施工が容易になる。さらに、ボルトの材料である棒材を一端側からプレス加工することにより鍔部を成形できるから、プレス加工により頭部を成形する工程に鍔部を成形する工程を含ませることができる。したがって、従来のボルトに比較して製造工数が増えることを防止または抑制できる。
【0009】
前記鍔部は、前記頭部の前記側面の全周にわたって設けられている、
という構成が適用できる。
【0010】
このような構成によれば、ボルトの頭部の側面に沿わせたワイヤーがボルトの頭部から外れることを防止する効果を高めることができる。
【0011】
複数の前記鍔部が、前記頭部の前記側面の一部に設けられている、
という構成が適用できる。
【0012】
このような構成によれば、頭部の側面の全周にわたって鍔部が設けられる構成に比較して、ボルトの軽量化を図ることができる。
【0013】
複数の前記鍔部は、前記軸線方向視において前記貫通孔を挟んで互いに反対側に設けられている、
という構成が適用できる。
【0014】
2本のボルトにワイヤーロックを施工する場合、ボルトを対象物に締結した後、ワイヤーをボルトの頭部の側面のうちの他方のボルトから遠い側の部分に沿わせる。また、1本のボルトに対して他の構造物を使用してワイヤーロックを施工する場合、ボルトを対象物に締結した後、ワイヤーをボルトの頭部の側面のうちの他の構造物から遠い側の部分に沿わせる。このため、前記ネジ部の軸線方向視において、前記貫通孔の中心線を挟んで互いに反対側に位置する複数の前記フランジ部が設けられる構成であると、ボルトの頭部の側面のうちの他方のボルトから遠い側の部分、または他の構造物から遠い側の部分に少なくとも1つのフランジ部が存在するようにできる。したがって、対象物に締結された状態におけるボルトの頭部の向き(位相)にかかわらず、フランジ部によってワイヤーがボルトの頭部から外れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第一実施形態に係るボルトの構成を示す斜視図である。
図2図2は、第一実施形態に係るボルトの構成を示す斜視図である。
図3図3は、第一実施形態に係るボルトの使用例を示す図である。
図4図4は、第一実施形態に係るボルトの使用例の他の例を示す図である。
図5図5は、第一実施形態の変形例に係るボルトの構成を示す斜視図である。
図6図6は、第一実施形態の変形例に係るボルトの構成を示す図である。
図7図7は、第一実施形態の変形例に係るボルトの使用例を示す図である。
図8図8は、第二実施形態に係るボルトの構成を示す斜視図である。
図9図9は、第二実施形態に係るボルトの構成を示す斜視図である。
図10図10は、第二実施形態の変形例に係るボルトの構成を示す斜視図である。
図11図11は、第二実施形態の変形例に係るボルトの構成を示す図である。
図12図12は、第一実施形態の変形例に係るボルトの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態について説明する。本発明の各実施形態体に係るボルトは、軸線方向の一端側に設けられているネジ部と、軸線方向の前記一端側とは反対側である他端側に設けられている頭部とを有する。説明の便宜上、ボルトの軸線方向のうちのネジ部が設けられている側を「先端側」と記し、頭部が設けられている側を「基端側」と称する。各図においては、先端側を矢印Pで示し、基端側を矢印Tで示し、ボルトの軸線(中心線)を一点鎖線Cで示す。以下、一点鎖線Cで示す方向を、ボルトの軸線C方向と言う場合もある。軸線C方向が本発明の軸線方向に相当する。
【0017】
<第一実施形態>
(ボルトの構成)
図1および図2は、第一実施形態に係るボルト10aの構成を示す斜視図である。図1および図2に示すように、第一実施形態に係るボルト10aは六角孔付きボルト(「キャップボルト」と称されることもある)である。ボルト10aは、ネジ部11と頭部12aとを有している。ネジ部11は、ネジ山(雄ネジ)が設けられる棒状部分であり、ボルト10aの軸線C方向の一端側に設けられる。なお、ネジ部11の構成は特に限定されるものではない。
【0018】
頭部12aは、ボルト10aの軸線C方向の他端側に設けられ、断面略円形の円柱状の構成を有している。頭部12aは、側面121及び基端側の端面13を有し、端面13には六角レンチを差し込むための工具孔14が設けられている。さらに、頭部12aは、ワイヤーロック用のワイヤーW(金属線)を挿通可能なワイヤー孔15およびワイヤーロックのワイヤーWが外れることを防止するための鍔部16aを有している。ワイヤー孔15が本発明の貫通孔に相当する。
【0019】
ワイヤー孔15は、頭部12aをその半径方向に略平行な方向、すなわち軸線C方向に略直角な方向に貫通する貫通孔である。なお、図2に示すように、頭部12aには工具孔14が設けられている。このため、頭部12aには、側面121(外周面)と工具孔14の内周面とを連通する2本のワイヤー孔15が、互いに同軸かつ直列に並ぶように設けられる。そして、2本のワイヤー孔15の互いに遠い側の開口部151(ワイヤー孔15の端部)は、頭部12aの側面121に位置している。なお、ワイヤー孔15の中心線Aは軸線C方向視において頭部12aの中心を通過しており、ワイヤー孔15の側面121の2か所の開口部151は、軸線C方向視において頭部12aの中心に関して点対称の位置に位置している。
【0020】
また、頭部12aの側面121には局所的な平面部122が設けられていてもよく、その場合、ワイヤー孔15の開口部151はこの平面部122に位置している。平面部122は、ワイヤー孔15の中心線Aに対して略直角な平面である。なお、平面部122の寸法および形状については、ワイヤー孔15の開口部151が形成し得る程度の大きさであれば特に限定されない(なお、平面が無い状態でも許容される)。
【0021】
また、ワイヤー孔15の内径は、ワイヤーロックに使用されるワイヤーWを挿通可能な径であればよく、具体的な径は特に限定されるものではない。例えば、ワイヤーロックにφ1.2mmのワイヤーWが用いられる場合には、ワイヤー孔15の内径はφ1.4mmでよい。また、2本のワイヤーWを通す場合には、2本のワイヤーWを挿通可能な内径とする。
【0022】
鍔部16aは、頭部12aの側面121から径方向(軸線方向に略直角な方向)外方に延出した部分である。鍔部16aは、頭部12aの側面121のうちワイヤー孔15の開口部151よりも基端側に設けられている。例えば、図1および図2に示すように、鍔部16aは頭部12aの基端側の端部に設けられており、ワイヤー孔15の開口部151は、頭部12aの基端側の端面13および鍔部16aよりも先端側に位置している。換言すると、鍔部16aは、軸線C方向に関してワイヤー孔15の開口部151と頭部12aの基端側の端面13との間に設けられている。
【0023】
鍔部16aは、頭部12aの側面121の全周にわたって側面121から径方向外方に延出するように、放射状に設けられる。このため、鍔部16aは、軸線C方向視において円形の形状を有する。換言すると、頭部12aは、ネジ部11の外径よりも大きい第一の外径を有する第一の円柱状部20(または円板状部)と、第一の外径よりも大きい第二の外径を有する第二の円柱状部21(または円板状部)とを有する。第二の円柱状部21は第一の円柱状部20の基端側に、第一の円柱状部20と同軸または略同軸に設けられている。そして、第一の円柱状部20の側面121にワイヤー孔15の開口部151が位置しており、第二の円柱状部21のうち第一の円柱状部20よりも大径の部分が鍔部16aである。このように、頭部12aは、先端側よりも基端側の方が外径が大きい異径の段付円柱状の構造を有している。なお、頭部12aのワイヤー孔15の開口部151が設けられている部分よりも先端側には、ワイヤー孔15の開口部151が位置する部分(すなわち、第一の円柱状部20)の外径よりも大きい外径を有する部分は設けられていない。
【0024】
なお、鍔部16aの径方向への延出寸法は、ワイヤーWを引っ掛けることができる寸法であればよい。例えば、フランジ部16aの延出寸法には、ワイヤーロックに使用するワイヤーWの直径の半分以上の寸法が適用できる。
【0025】
(使用方法)
次に、第一実施形態に係るボルト10aを使用したワイヤーロックの施工方法について、図3を参照して説明する。図3は、第一実施形態に係るボルト10aの使用例を示す図である。ここでは、図3に示すように、近接する2本のボルト10aどうしをワイヤーWによって連結する例を示す。なお、説明の便宜上、2本のボルト10aを区別するため、図3中の上側に位置するボルト10aを第一のボルト10aと記し、下側に位置するボルト10aを第二のボルト10aと示す。
【0026】
まず、対象物に2本のボルト10aを締結する。次いで、ワイヤーロックの対象である2本のうちの一方のボルト10aである第一のボルト10aの頭部12aに設けられているワイヤー孔15にワイヤーWを挿通する。そして、ワイヤーWにおける「第一のボルト10aが緩む(抜ける)方向(反時計回転方向)に回転したと仮定した場合に第二のボルト10aに接近する方向に移動するワイヤー孔15の開口部151から突出している部分」を、他方の開口部151に向かって締り方向(時計回り方向)に曲げ返す。なお、前述のように、ワイヤー孔15の2か所の開口部151は、軸線C方向視において頭部12aの中心に関して点対称の位置に存在する。このため、第一のボルト10aが軸線Cを中心として回転すると、一方の開口部151は第二のボルト10aに接近する方向に移動し、他方の開口部151は第二のボルト10aから離れる方向に移動する。図3においては、第一のボルト10aが緩む方向に回転(反時計回転)した場合、2か所の開口部151のうちの左側に位置する開口部151は下側(すなわち、第二のボルト10aに近づく側)に移動する。したがって、図3に示す例では、ワイヤーWにおける「左側に位置する開口部151から突出している部分」を、右側の開口部151の側に向かって締り方向(時計回り方向)に曲げ返す。
【0027】
そして、ワイヤーWにおける曲げ返した部分を、頭部12aの側面121の鍔部16aよりも先端側の部分のうちの「2つの開口部151どうしの間の部分(軸線C方向視において半円状の部分)であって、第二のボルト10aから遠い側(図3においては上側)の部分」に沿わせる。そして、ワイヤーWにおける「側面121に沿わせた部分よりも端部寄りの部分」と「他方の開口部151(第一のボルト10aが緩む方向(反時計回転方向)に回転したと仮定した場合に第二のボルト10aから離れる方向に移動するワイヤー孔15の開口部151)から突出している部分」とを互いに捩じり合わせる。
【0028】
これらの部分が捩じり合わせられると、ワイヤーWにおける「ワイヤー孔15に挿通されている部分」と「頭部12aの側面121に沿っている部分」とによって、閉じた略半円形状の部分が形成される。具体的には、ワイヤーWにおける「ワイヤー孔15に挿通されている部分」が閉じた略半円形状の「弦」の部分を成形し、「頭部12aの側面121に沿っている部分」が「(中心角が略180度の)略円弧」の部分を成形する。そして、捩じる回数を増やしていくと、この閉じた略半円形状の部分の大きさが小さくなっていく。このため、ワイヤーWにおける「頭部12aの側面121に沿っている部分」と当該頭部12aの側面121との間に隙間が存在している場合、この隙間が小さくなるか、またはこの隙間がなくなる。その結果、ワイヤーWにおける頭部12aの側面121に沿っている部分が鍔部16aを乗り越えてボルト10aの頭部12aから外れることが防止または抑制される。
【0029】
なお、ワイヤーWにおける「頭部12aの側面121に沿っている部分」が軸線C方向の先端側にずれている(換言すると、ワイヤー孔15の中心線A方向視において、ワイヤーWにおける「頭部12aの側面121に沿っている部分」が軸線C方向の先端側に傾いている)ことがある。このような場合、捩じり合わせる回数を増加させることによって、略半円形状の部分がより締め付けられ、それによりこのずれ(傾き)が小さくなり、ワイヤーWにおける頭部12aの側面に沿っている部分が、ボルト10aの頭部12aの側面121に沿って(すなわち、ボルト10aの頭部12aの側面121から離れることなく)鍔部16aに接近していく。そして、ワイヤーWにおける「頭部12aの側面121に沿っている部分」の軸線C方向のずれがなくなる(ワイヤーWにおける「頭部12aの側面121に沿っている部分」の軸線C方向の先端側への傾きがなくなる)。この状態になると、この略半円形状の部分が鍔部16aの先端側の部分に接触して位置決めされるとともに、鍔部16aを乗り越えてボルト10aの頭部12aから外れることができなくなる。
【0030】
すなわち、ワイヤーWにおける「頭部12aの側面121に沿っている部分」と頭部12aの側面121との間に隙間が存在すると(換言するとワイヤーWが緩んでいると)、ワイヤーWが鍔部16aを乗り越えて頭部12aから外れることがある。また、ワイヤーWにおける「頭部12aの側面121に沿っている部分」が、軸線C方向について開口部151よりも先端側にずれていると(ワイヤー孔15の中心線A方向視においてボルト10aの軸線C方向の先端側に傾いていると)、ワイヤーWが緩んでいることになり、ワイヤーWの位置が安定せず、ワイヤーWが鍔部16aを乗り越えて頭部12aから外れるおそれがある。これに対して本実施形態によれば、前記のとおり、ワイヤーWを捩じり合わせることにより、ワイヤーWと頭部12aの側面121との隙間が小さくなるかまたは無くなり、さらにワイヤーWが鍔部16aに接触して位置決めされるから、ワイヤーWがフランジ部16aを乗り越えて頭部12aから外れることが防止または抑制される。
【0031】
さらに、第一実施形態に係るボルト10aによれば、従来のボルトに比較してワイヤーロックの施工作業の内容が簡単である。すなわち、従来のようなボルトの頭部に互いに交差する複数のワイヤー孔が設けられる構成では、ワイヤーWをこれら交差する複数のワイヤー孔のそれぞれに挿通しなければならない。これに対して、本実施形態では、ワイヤーWを2本の同軸なワイヤー孔15に挿通すればよいから、作業工数が少なくなる。
【0032】
また、頭部の側面の全周にわたって凹溝が設けられ、この凹溝にワイヤーWを嵌め込む構成では、ワイヤーWを曲げ返してボルトの頭部に沿わせる作業において、ワイヤーWにおけるボルトの頭部に沿う部分の全てをこの凹溝に嵌め込まなければならない。これに対して、本実施形態によれば、ワイヤーWを凹溝に嵌め込む必要が無い。さらに、ワイヤーWを頭部12aの側面121に沿わせる作業の際には、ワイヤーWが軸線C方向の先端側にずれていてもよく、その後にワイヤーWを捩じり合わせることによってワイヤーWを鍔部16aに沿った定位置に位置決めすることができる。したがって、従来構成に比較して作業に要する手間の削減を図ることができる。
【0033】
次いで、ワイヤーWにおける「捩じり合わされた部分よりも端部寄りの部分(閉じた略半円形状が成形された側とは反対側の端部寄りの部分)」を、第二のボルト10aの頭部12aのワイヤー孔15の2か所の開口部151のうち、第二のボルト10aが緩む方向(反時計回転方向)に回転したと仮定した場合に第一のボルト10aから離れる方向に移動する開口部151から挿入し、その反対側の開口部151から突出させる。なお、ワイヤーWにおける「捩じり合わされた部分および当該部分よりも端部寄りの部分」は、見かけ上、2本のワイヤーWが存在する。ここでは、見かけ上の2本のうちの1本のワイヤーW(すなわち、ワイヤーWの一方の端部)を、第二のボルト10aの頭部12aのワイヤー孔15に挿通する。さらに、見かけ上の2本のうちのもう1本のワイヤーWを、第二のボルト10aの頭部12aの側面121のうち、2つの開口部151どうしの間の部分(軸線C方向視において半円状の部分)であって第一のボルト10aから遠い側に位置する部分に沿わせる。
【0034】
そして、ワイヤーWにおける「第二のボルト10aの頭部12aのワイヤー孔15の開口部151から突出させた部分」と「頭部12aの側面121を沿わせた部分よりも先端側の部分」とを互いに捩じり合わせる。これにより、2本のボルト10aの頭部12aどうしが、ワイヤーWによって連結される。そして、これらの部分が捩じり合わせられると、前記同様に、ワイヤーWにおける「ワイヤー孔15に挿通されている部分」と「頭部12aの側面121に沿っている部分」とにより、閉じた略半円形状の部分が形成される。そして、捩じる回数を増やしていくと、この閉じた略半円形状の部分の大きさが小さくなっていく。このため、この第二のボルト10aに対しても、前記同様の効果を奏することができる。
【0035】
以上で、ワイヤーロックの施工が完了する。このようなワイヤーロックによれば、2本のボルト10aの頭部12aどうしを連結しているワイヤーWの張力が、2本のボルト10aに対して互いに締まる方向(時計回転方向)に作用する。よって、2本のボルト10aが緩む方向に回転することが、ワイヤーWにより防止される。したがって、ボルト10aの緩みが防止または抑制される。このように、2つのボルト10aの緩みを防止するという、従来のワイヤーロックと同様の効果を奏する。
【0036】
なお、ここでは、2本のボルト10aに対してワイヤーロックを施工する方法を示したが、1本のボルト10aと他の構造物とをワイヤーWによって連結する態様のワイヤーロックにも適用できる。この場合、ワイヤーWにおける「ボルト10aが緩む方向に回転したと仮定した場合に他の構造物に接近する方向に移動するワイヤー孔15の開口部151から突出している部分」を、他方の開口部151に向かって曲げ返すとともに、頭部12aの側面121に沿わせる。この際、頭部12aの側面121のうちの他の構造物から遠い側の部分に沿わせる。そして、ワイヤーWにおける曲げ返された部分と他方の開口部151から突出している部分と、を互いに捩じり合わせる。そして、捩じり合わされた部分を他の構造物に巻き付けるなどして当該他の構造物に固定する。
【0037】
なお、ワイヤーロックの施工方法は前記方法に限定されない。図4は、第一実施形態に係るボルト10aの使用例の他の例を示す図である。図4に示す他の例では、まず、ワイヤーWの中間部分を一方のボルト10a(第一のボルト10a)の頭部12aの側面121に巻き付ける。この際、ワイヤーWを鍔部16aよりも先端側(ネジ部11の側)に位置させる。そして、ワイヤーWの両端部を第一のボルト10aの頭部12aのワイヤー孔15の一方の開口部151から挿入し、他方の開口部151から突出させる。これにより、第一のボルト10aの頭部12aの全周にワイヤーWが巻き付けられた状態となる。また、ワイヤー孔15には、見かけ上2本のワイヤーWが挿通された状態になる。
【0038】
そして、ワイヤーWの他方の開口部151から突出させた部分どうしを捩じり合せる。さらに、ワイヤーWの捩じり合された部分よりも端部側の部分を、他方のボルト10a(第二のボルト10a)の頭部12aのワイヤー孔15の一方の開口部151から挿入し、他方の開口部151から突出させる。そして、他方の開口部151から突出させたワイヤーWの両端部のそれぞれを、第二のボルト10aの頭部12aの側面121に巻き付ける。この際、ワイヤーWを鍔部16aよりも先端側(ネジ部11の側)に位置させる。そして、ワイヤーWの端部どうしを捩じり合せる。これにより、第二のボルト10aの頭部12aの側面121の全周にワイヤーWが巻き付けられた状態となる。また、ワイヤー孔15には、見かけ上2本のワイヤーWが挿通された状態になる。
【0039】
図4に示す他の例のように、ワイヤー孔15に見かけ上2本のワイヤーWが挿通されてもよい。また、ボルト10aの頭部12aの側面121の全周にわたってワイヤーWが巻き付けられてもよい。
【0040】
(製造方法)
次に、ボルト10aの製造方法について説明する。ボルト10aは、金属棒を開始材料とし、ヘッダー成形工程と孔あけ工程と転造工程とを経ることにより製造される。ヘッダー成形工程は頭部12aを成形する工程である。ヘッダー成形工程には、(1)金属棒の端部にポンチとダイスによって圧縮荷重をかけることにより(すなわち、プレス加工により)、当該端部の半径方向寸法を大きくして頭部12aを成形する工程(工程1)、(2)金属棒の端部(成形途中の頭部12aの端面13)にポンチを押し付けることにより(プレス加工により)工具孔14を成形するとともに、頭部12aの半径方向寸法をさらに大きくする工程(工程2)、(3)金属棒の端部(成形途中の頭部12aの端面13)にポンチを押し付けることにより(プレス加工により)工具孔14を所定の寸法および形状に整形するとともに、頭部12aの外形を所定の寸法および形状に整形する工程(工程3)、が含まれる。孔あけ工程はワイヤー孔15を成形する工程である。転造工程は、転造によってネジ部11にネジ山を成形する工程である。
【0041】
そして、本実施形態では、(工程1)と(工程2)の一方または両方の工程(すなわちプレス加工)により鍔部16aを成形し、(工程3)において鍔部16aを所定の寸法および形状に整形する。また、(工程3)の工程において、頭部12aの側面121の一部に平面部122を成形する。そして、孔あけ工程において、ボール盤などを用いて頭部12aにワイヤー孔15を成形する。この際、頭部12aの側面121の平面部122に孔を開けることにより、ドリルの刃先の位置ずれを防止または抑制できる。すなわち、平面部122にドリルを当てることができるから、曲面(円周面)にドリルを当てる構成に比較して、ドリルの刃先の位置ずれを生じにくくできる。そして、転造工程においてネジ部11にネジ山を成形する。なお、孔あけ工程と転造工程の順序は限定されるものではない。なお、平面部122を成形する方法に代えて、ドリルの刃先の位置ずれを防止るための凹部を成形してもよい。
【0042】
このような製造方法によれば、従来のボルトと比較して、工程を増加させることなく鍔部16aを成形できる。すなわち、従来のような、頭部12aに全周にわたって凹溝が設けられる構成では、前述の(工程1)および(工程2)(すなわちプレス加工)とは別に、凹溝を成形する工程(例えば、旋盤により凹溝を切削する工程)が必要になる。これに対して、本実施形態では、開始材料の端部の半径方向寸法を大きくする加工(プレス加工)のみにより鍔部16aを成形することができる。このため、鍔部16aを成形する工程を、プレス加工により頭部12aを成形する工程に含ませることができる。したがって、既存のボルトにワイヤーWが嵌まり込む凹溝を成形する方法に比較して、製造コストの上昇を防止または抑制できる。また、頭部12aに互いに交差する方向の複数のワイヤー孔15が設けられるボルトに比較して、孔あけ工程の工数を削減できる(但し、孔の数を限定するものではない)。
【0043】
<第一実施形態の変形例>
次に、第一実施形態の変形例について説明する。第一実施形態に係るボルト10aが頭部12aの側面121の全周にわたって設けられる鍔部16aを有するのに対し、第一の実施形態の変形例に係るボルト10bは、頭部12bの側面に部分的に設けられる複数の鍔部16bを有する。なお、以下の説明では、前記実施形態と共通の構成には前記実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0044】
図5は、第一実施形態の変形例に係るボルト10bの構成を示す斜視図である。図6は、第一実施形態の変形例に係るボルト10bの頭部12bの構成を示す断面図である。図5および図6に示すように、第一実施形態の変形例に係るボルト10bの頭部12bには、複数の鍔部16bが円周方向に沿って部分的に設けられている。具体的には、図6に示すように、軸線C方向視において、ワイヤー孔15の中心線Aを挟んで互いに反対側に、1か所ずつ合計2か所の鍔部16bが設けられている。さらに、2か所の鍔部16bは、それぞれ、頭部12bの側面121の円周方向に関して2か所の開口部151から等距離の位置に設けられている(すなわち、2か所の開口部151どうしの中心)に設けられている。換言すれば、2箇所の鍔部16bは、軸線C方向視において、側面121のうち中心線Aから最も離れた領域であって中心線Aに対して線対称の領域に設けられる。なお、2か所の鍔部16bの円周方向寸法は特に限定されるものではない。
【0045】
図7は、第一実施形態の変形例に係るボルト10bにワイヤーロックが施工された状態を示す図である。施工方法は前記第一実施形態と同じである。すなわち、ワイヤーWを第一のボルト10b(図7において上側に位置しているボルト10b)の頭部12bに設けられているワイヤー孔15の一方の開口部151から挿通して他方の開口部151から突出させ、突出させた部分を前記一方の開口部151の側に曲げ返すとともに頭部12bの側面121に沿わせる。この際、ワイヤーWを、第一のボルト10bの頭部12bの側面121のうち、第二のボルト10b(または他の構造物)から遠い側の部分に沿わせる。なお、第一実施形態の変形例に係るボルト10bは、軸線C方向視においてワイヤー孔15の中心線Aを挟んで互いに反対側に1つずつの鍔部16bを有するため、第二のボルト10bから遠い側の側面121にも鍔部16bが存在する。このためこの鍔部16bによって、ワイヤーWが頭部12bから外れることを防止または抑制できる。このように、第一実施形態の変形例に係るボルト10bによれば、前記第一実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第一実施形態の変形例に係るボルト10bによれば、全周にわたって鍔部が設けられる構成に比較して、鍔部16bを小さくできるから、ボルト10bの軽量化を図ることができる。なお、第一の実施形態と同様に、ボルト10bの頭部12bの側面の全周にわたってワイヤーWが巻き付けられる方法も適用できる。
【0046】
なお、第一実施形態の変形例に係るボルト10bの製造方法には、前記第一実施形態に係るボルト10aの製造方法と同じ方法が適用できる。したがって、前記第一実施形態と同様に、従来のボルトと比較して、工程を増加させることなく鍔部16bを成形できる。
【0047】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態に係るボルト10cについて説明する。図8および図9は、第二実施形態に係るボルト10cの構成を示す斜視図である。図8および図9に示すように、第二実施形態に係るボルト10cは六角ボルトである。このため、ボルト10cの頭部12cの側面121は6か所の平面部123により構成される。
【0048】
頭部12cには、ワイヤーロック用のワイヤーWを挿通可能なワイヤー孔15と、ワイヤーWが外れることを防止するための複数の鍔部16cとが設けられている。
【0049】
ワイヤー孔15は、頭部12cをその半径方向(軸線C方向に略直角な方向)に貫通する貫通孔である。ワイヤー孔15は、頭部12cの側面121のうちの互いに平行な(互いに反対側を向く)2つの平面部123を連通するように設けられている。このため、ワイヤー孔15の開口部151は、互いに平行な2つの平面部123のそれぞれに位置している。なお、ワイヤー孔15は、軸線C方向視において頭部12cの中心を通過するように設けられる。そして、ワイヤー孔15の開口部151は、側面121の6つの平面部123のうちの2つの平面部123のそれぞれの中心(周方向の中心)に現れている。
【0050】
鍔部16cは、半径方向(軸線Cに略直角な方向)外方に延出する部分であり、ワイヤー孔15の開口部151よりも基端側に設けられている。また、鍔部16cは、頭部12cの各角部124に設けられている。換言すると、頭部12cの各角部124の先端側寄りの一部がR面取りされている。そして、R面取りされずに残された部分により鍔部16cが形成される。なお、鍔部16cの延出寸法は、ワイヤーWを引っ掛けることができる寸法であればよい。例えば、鍔部16cの延出寸法は、ワイヤーロックに使用するワイヤーWの直径の半分以上の寸法が適用できる。
【0051】
このように、第二実施形態に係るボルト10cの頭部12cは、各角部124がR面取りされた多角柱(具体的には六角柱)状の第一の多角柱状部23と、各角部124がR面取りされていない多角柱(具体的には六角柱)状の第二の多角柱状部24とを有している。第二の多角柱状部24は、第一の多角柱状部23の基端側に、第一の多角柱状部23と同軸に設けられている。そして、軸線C方向視において、第一の多角柱状部23の外形線(輪郭線)は、第二の多角柱状部24の外形線よりも外側に突出している部分を有していない。
【0052】
第二実施形態に係るボルト10cを使用したワイヤーロックの施工方法は、第一実施形態に係るボルト10aを使用したワイヤーロックの施工方法と同じである。したがって、施工方法の説明は省略する。
【0053】
第二実施形態に係るボルト10cの製造方法は、頭部12cに工具孔が設けられないため工具孔14を成形しなくてもよい点、および別途平面部122を成形しなくてもよい点を除いては、第一実施形態に係るボルト10aの製造方法と同じ製造方法が適用できる。すなわち、前述のとおり、開始材料の基端側の端部の半径方向寸法を大きくすることによりフランジ部16cを成形できるから、ヘッダー成形工程(プレス加工により頭部を成形する工程)にフランジ部16cを成形する工程を含ませることができる。
【0054】
<第二実施形態の変形例>
次に、第二実施形態の変形例について説明する。前記第二実施形態に係るボルト10cにおいては、頭部12cの全ての角部124に鍔部16cが設けられるのに対し、第二実施形態の変形例に係るボルト10dにおいては、頭部12dの6か所のうちの2か所の角部124に鍔部16dが設けられる。
【0055】
図10は、第二実施形態の変形例に係るボルト10dの構成を示す斜視図である。図11は、第二実施形態の変形例に係るボルト10dの頭部12dの構成を示す断面図である。図10図11に示すように、第二実施形態の変形例に係るボルト10dの頭部12dには、軸線C方向視においてワイヤー孔15の中心線Aを挟んで互いに反対側に1か所ずつの鍔部16dが設けられている。より具体的には、頭部12dの側面121に含まれる6つの平面部123のうち、ワイヤー孔15の開口部151が設けられない平面部123どうしにより形成される角部124に鍔部16dが設けられる。換言すると、ワイヤー孔15の開口部151が存在する2か所の平面部123から等距離に位置する2か所の角部124に鍔部16dが設けられる。なお、各鍔部16cの構成は、第二実施形態に係るボルト10cの鍔部16cの構成と同じである。
【0056】
第二実施形態の変形例に係るボルト10dの使用方法は、前記第一実施形態の変形例に係るボルト10bの使用方法と同じである。したがって、説明は省略する。そして、第二実施形態の変形例に係るボルト10dは、軸線C方向視においてワイヤー孔15の中心線Aを挟んで互いに反対側に1か所ずつの鍔部16dを有するため、ボルト10dの頭部12dの側面121のうち、ワイヤーWによって連結される相手方のボルト10dまたは他の構造物から遠い側に位置する部分にも鍔部16dが存在する。このためこの鍔部16dによって、ワイヤーWが頭部12dから外れることを防止または抑制できる。したがって、第二実施形態の変形例に係るボルト10dによれば、前記第一実施形態の変形例に係るボルト10bと同様の効果を奏することができる。
【0057】
なお、第二実施形態の変形例に係るボルト10dの製造方法は、前記第二実施形態に係るボルト10bの製造方法と同じ製造方法が適用できる。したがって説明は省略する。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施形態では、ボルトの頭部に1つのワイヤー孔15が設けられる構成と、互いに同軸かつ直列に並ぶ複数のワイヤー孔15が設けられる構成を示したが、このような構成に限定されない。図12に示すように、ボルト10eの頭部12eに、互いに異なる方向に延伸する複数のワイヤー孔15(ボルト10eの軸線C方向視において、中心線の方向が互いに異なる複数のワイヤー孔15が)が設けられる構成であってもよい。なお、ワイヤー孔15の数は特に限定されるものではなく、図12に示すように互いに異なる2方向に延伸するワイヤー孔15が設けられてもよく、互いに異なる3方向以上に延伸するワイヤー孔15が設けられてもよい。なお、前記実施形態と同様に、これらのワイヤー孔15の開口部151は、フランジ部16eよりもネジ部11の側に設けられる。なお、図12においては、第一実施形態の変形例を示すが、第二実施形態についても同様の変形例が適用できる。
【0060】
また、前記実施形態では、ボルトとして六角穴付きボルトと六角ボルトを示したが、ボルトの種類はこれらに限定されない。本発明は、ワイヤーロックに使用可能なボルトであれば、種類を問わずに適用できる。
【符号の説明】
【0061】
10a,10b、10c,10d…ボルト、11…ボルトのネジ部、12a,12b,12c,12d…ボルトの頭部、121…頭部の側面、122…頭部の平面部、15…ワイヤー孔(貫通孔)、151…開口部、16a,16b,16c…フランジ部、W…ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12