(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174814
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20221117BHJP
H02P 3/04 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B25J19/00 C
H02P3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080793
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 厚志
(72)【発明者】
【氏名】酒井 竜児
(72)【発明者】
【氏名】川田 進也
【テーマコード(参考)】
3C707
5H530
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS05
3C707HS27
3C707HT40
3C707JS05
3C707KS37
3C707LV21
3C707MS14
3C707MT03
5H530AA02
5H530BB33
5H530CC24
5H530CD34
5H530CD36
5H530CE02
5H530CF01
5H530EF03
(57)【要約】
【課題】回路構成が複雑にならず、モータの駆動を開始および停止するとき、ロボットの駆動部が自由落下することを防止できるロボット制御装置を提供する。
【解決手段】ロボット制御装置100は、モータ102と、モータ駆動回路104と、ブレーキ106と、ブレーキ制御回路108と、ハイサイド電源114と、電圧検知回路118とを備え、ブレーキ制御回路108は、モータ102の駆動を開始するとき、ハイサイド電源114の電圧がモータ駆動回路104の動作電圧Vwより高い第1の閾値Vaまで上昇したときにブレーキ106をOFFとし、モータ102の駆動を停止するとき、ハイサイド電源114の電圧がモータ駆動回路104の動作電圧より高い第2の閾値Vbまで下降したときにブレーキ106をONする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを駆動するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動回路と、
前記モータに接続されたブレーキと、
前記ブレーキを駆動制御するブレーキ制御回路と、
前記モータ駆動回路に供給される制御電源であるハイサイド電源と、
前記ハイサイド電源の電圧を検知して、該検知した電圧の変化を前記ブレーキ制御回路に出力する電圧検知回路と、
を備え、
前記ブレーキ制御回路は、
前記モータの駆動を開始するときは、前記ハイサイド電源の電圧が、前記モータ駆動回路の動作電圧より高い第1の閾値まで上昇したときに前記ブレーキをOFFとし、
前記モータの駆動を停止するときは、前記ハイサイド電源の電圧が、前記モータ駆動回路の動作電圧より高い第2の閾値まで下降したときに前記ブレーキをONすることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記電圧検知回路は、前記ハイサイド電源の電圧の上昇または下降を遅延させる遅延回路を備えることを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記電圧検知回路は、
前記ハイサイド電源の電圧の上昇を検知して、該検知した電圧の変化を前記ブレーキ制御回路に出力する上昇検知回路と、
前記電圧の上昇を遅延させる上昇遅延回路と、
前記電圧の下降を検知して、該検知した電圧の変化を前記ブレーキ制御回路に出力する下降検知回路と、
前記電圧の下降を遅延させる下降遅延回路と、
を備え、
前記上昇遅延回路と前記下降遅延回路は、個別に遅延時間を設定可能であることを特徴とする請求項1に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを駆動するモータのブレーキを制御するブレーキ制御回路を備えたロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一例としてロボットのアームなどの適宜の駆動部は、モータによって駆動されていて、モータの停止時にはブレーキがONとなり、自由落下しないように制御されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、モータを駆動するPWMドライバと、ブレーキを制御するブレーキ回路と、モータを停止するタイミングを遅延させる遅延判断回路とを備えたロボットのブレーキ制御方式が記載されている。
【0004】
このブレーキ制御方式では、遅延判断回路が、非常停止時にブレーキ回路の制御によるブレーキが効いてから、モータの動力切断を行うようPWMドライバに対して制御することにより、非常停止時にロボットの落下を防止している。
【0005】
特許文献2には、ロボットの各軸駆動モータのブレーキ解除方法が記載されている。このブレーキ解除方法では、ロボット本体に設けられた駆動モータの電磁ブレーキを解放する規定電圧を加える専用電源と、電磁ブレーキの電気回路を開閉するスイッチとを用いて、駆動モータの電磁ブレーキ用端子に直接通電してその電磁ブレーキを解放し、ロボット本体の姿勢を手動で変えられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-328966号公報
【特許文献2】特開平6-304886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロボットのアームの自由落下は、モータの駆動を停止するときだけでなく、モータの駆動を開始するときにも生じる。しかし特許文献1では、モータの駆動を停止するときにタイミングを遅延させているだけに過ぎない。また特許文献1では、ブレーキが動作するまでモータの停止を遅延させる遅延判断回路が必要になり、回路構成も複雑になってしまう。
【0008】
特許文献2では、駆動モータの電磁ブレーキ用端子に、専用電源とスイッチとを含む専用の解除装置を別途用意しなければならない。さらに特許文献2は、単にブレーキを解除するだけで、駆動モータとブレーキとのタイミングを調整するものではない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、回路構成が複雑にならず、モータの駆動を開始および停止するとき、ロボットの駆動部が自由落下することを防止できるロボット制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるロボット制御装置の代表的な構成は、ロボットを駆動するモータと、モータを駆動するモータ駆動回路と、モータに接続されたブレーキと、ブレーキを駆動制御するブレーキ制御回路と、モータ駆動回路に供給される制御電源であるハイサイド電源と、ハイサイド電源の電圧を検知して、検知した電圧の変化をブレーキ制御回路に出力する電圧検知回路と、を備え、ブレーキ制御回路は、モータの駆動を開始するときは、ハイサイド電源の電圧が、モータ駆動回路の動作電圧より高い第1の閾値まで上昇したときにブレーキをOFFとし、モータの駆動を停止するときは、ハイサイド電源の電圧が、モータ駆動回路の動作電圧より高い第2の閾値まで下降したときにブレーキをONすることを特徴とする。
【0011】
本発明は、モータ駆動回路の動作電圧は立ち上がり/立ち下がりに所定の時間を要することに着目している。上記構成では、ハイサイド電源の電圧の立ち上がり/立ち下がり時の電圧監視を行うことにより、モータ駆動回路の動作電圧と閾値とを比較してブレーキ制御を行う。
【0012】
まず、モータの駆動を開始するときは、ハイサイド電源の電圧がモータ駆動回路の動作電圧より高い第1の閾値まで上昇したとき、すなわちモータが駆動力を生じるまでブレーキOFFを遅延させる。つまり、モータが駆動力を生じるまではブレーキがONになっているため、モータの駆動を開始するとき、ロボットのアームなどが自由落下することを防止できる。
【0013】
つぎに、モータの駆動を停止するときは、ハイサイド電源の電圧がモータ駆動回路の動作電圧より高い第2の閾値まで下降したとき、すなわちモータが駆動力を生じているうちにブレーキをONにする。つまり、モータが駆動力を失う前にブレーキをONにするため、モータの駆動を停止するとき、ロボットのアームなどが自由落下することを防止できる。
【0014】
さらに上記構成では、ハイサイド電源の電圧監視を行って、モータ駆動回路の動作電圧と閾値とを比較すればよいため、応答性もよく、さらに追加回路も少なくて済むため、回路構成が複雑にならない。
【0015】
上記の電圧検知回路は、ハイサイド電源の電圧の上昇または下降を遅延させる遅延回路を備えるとよい。
【0016】
これにより、ハイサイド電源の電圧の立ち上がり/立ち下がりに要する時間を調整できる。このため、モータの駆動を開始するときにブレーキOFFを遅延させる時間、または、モータの駆動を停止するときにブレーキONを遅延させる時間を調整することができる。
【0017】
上記の電圧検知回路は、ハイサイド電源の電圧の上昇を検知して、検知した電圧の変化をブレーキ制御回路に出力する上昇検知回路と、電圧の上昇を遅延させる上昇遅延回路と、電圧の下降を検知して、検知した電圧の変化をブレーキ制御回路に出力する下降検知回路と、電圧の下降を遅延させる下降遅延回路と、を備え、上昇遅延回路と下降遅延回路は、個別に遅延時間を設定可能であるとよい。
【0018】
これにより、上昇検知回路と上昇遅延回路により、モータの駆動を開始するときにブレーキOFFを遅延させる時間を調整することができる。また、下降検知回路と下降遅延回路により、モータの駆動を停止するときにブレーキONを遅延させる時間を調整することができる。これによりモータの駆動力のON/OFF(のタイミング)とブレーキの制動力のON/OFF(のタイミング)の順序を確実に制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回路構成が複雑にならず、モータの駆動を開始および停止するとき、ロボットの駆動部が自由落下することを防止できるロボット制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態におけるロボット制御装置の機能の一部を示すブロック図である。
【
図2】
図1のロボット制御装置の各部の出力を例示するタイミングチャートである。
【
図3】
図1のロボット制御装置の変形例を例示するブロック図である。
【
図4】
図3のロボット制御装置の各部の出力を例示するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態におけるロボット制御装置100の機能の一部を示すブロック図である。ロボット制御装置100は、モータ102と、モータ102を駆動するモータ駆動回路104と、モータ102に接続されたブレーキ106と、ブレーキ106を制御するブレーキ制御回路108とを備える。
【0023】
モータ102は、ロボットのアーム(不図示)などの適宜の駆動部を駆動する。モータ駆動回路104は、PWM(パルス幅変調)ドライバであって、電源回路110に接続されている。電源回路110は、三相交流電源であるモータ駆動電源112を直流電源に変換して、モータ駆動回路104およびブレーキ制御回路108に直流電源を供給する。
【0024】
ロボット制御装置100はさらに、制御電源であるハイサイド電源114と、ロボット制御回路116と、電圧検知回路118とを備える。ハイサイド電源114は、ロボット制御回路116からの動力投入指令がハイサイドスイッチ120に入力されて、ハイサイドスイッチ120がON/OFFされることにより、モータ駆動回路104に供給または供給が遮断される。
【0025】
電圧検知回路118は、ハイサイド電源114の電圧を検知して、検知した電圧の変化をブレーキ制御回路108およびロボット制御回路116に出力する。ロボット制御回路116は、例えば電源検知回路118から出力された電圧の変化に基づいて上記の動力投入指令を生成する。
【0026】
ここでロボットのアームは、モータ102によって駆動されているため、モータ102の駆動を停止するときだけでなく開始するときにも、ブレーキ106を駆動制御することによって自由落下を防止する必要がある。そこでロボット制御装置100では、モータ駆動回路104の動作電圧Vw(
図2参照)は立ち下がり/立ち下がりに所定の時間を要することに着目してブレーキ106の制御を行う構成を採用した。
【0027】
すなわちロボット制御装置100では、詳細は後述するが、ハイサイド電源114の電圧の立ち上がり/立ち下がり時の電圧監視を電圧検知回路118で行い、さらにブレーキ制御回路108によってモータ駆動回路104の動作電圧Vwと閾値Va、Vb(
図2参照)とを比較してブレーキ制御を行う。
【0028】
以下、
図2を参照してロボット制御装置100の動作について説明する。
図2は、
図1のロボット制御装置100の各部の出力(信号)を例示するタイミングチャートである。ロボット制御装置100において、まず、モータ102を駆動する場合、モータ駆動電源112は常時ONになっている。
【0029】
そしてロボット制御回路116は、タイミングT1で動力投入指令としてモータ駆動ON信号をHighにしてハイサイドスイッチ120に入力し、ハイサイドスイッチ120をONにする。ハイサイドスイッチ120がONになると、ハイサイド電源114は、タイミングT1でモータ駆動回路104に供給される。
【0030】
またタイミングT1において、
図2に示すようにモータ駆動力がLowであり、モータ102には駆動力が生じていない。このため、ブレーキ制御回路108は、ブレーキ制御信号をHighとして、ブレーキをONにしている。
【0031】
ハイサイド電源114の電圧は、タイミングT1で立ち上がり始めるが、キャパシタの影響で立ち上がりに所定時間を要し、ここではタイミングT2でモータ駆動回路104の動作電圧Vwまで立ち上がる。このため、モータ102は、タイミングT2でモータ駆動回路104により駆動され、モータ駆動力がHighとなり駆動力が生じる。
【0032】
つぎにタイミングT3で、ハイサイド電源114の電圧がモータ駆動回路104の動作電圧Vwより高い第1の閾値Vaまで上昇すると、電圧検知回路118は、ブレーキOFF検知信号をLowからHighにして、ブレーキ制御回路108に出力する。ブレーキ制御回路108は、ブレーキOFF検知信号がHighであるため、ブレーキ制御信号をLowとしてブレーキ106をOFFにする。
【0033】
このようにロボット制御装置100では、モータ102の駆動を開始するときは、ハイサイド電源114の電圧がモータ駆動回路104の動作電圧Vwより高い第1の閾値Vaまで上昇したとき、すなわちモータ102が駆動力を生じるまでブレーキOFFを遅延させる。ここでブレーキOFFを遅延させるとは、
図2のタイミングT2でモータ102が駆動力を生じてから、タイミングT3でブレーキOFF検知信号がHighになるまでの区間Aにおいて、ブレーキONを維持することをいう。
【0034】
つまりロボット制御装置100では、モータ102が駆動力を生じるまではブレーキ106がONになっているため、モータ102の駆動を開始するとき、ロボットのアームなどが自由落下することを防止できる。またタイミングT4以降では、ハイサイド電源114の電圧が完全に立ち上がり、モータ102は、ブレーキOFFの状態でモータ駆動回路104によって駆動される。
【0035】
つぎにロボット制御装置100において、モータ102の駆動を停止する場合の動作を説明する。ロボット制御回路116は、タイミングT5で動力投入指令としてモータ駆動ON信号をLowにしてハイサイドスイッチ120に入力し、ハイサイドスイッチ120をOFFにする。ハイサイドスイッチ120がOFFになると、ハイサイド電源114は、タイミングT5でモータ駆動回路104への供給が遮断される。
【0036】
またタイミングT5において、
図2に示すようにモータ駆動力がHighであり、モータ102には駆動力が生じている。ブレーキ制御回路108は、タイミングT3からブレーキ制御信号をLowのまま維持していて、タイミングT5においてもブレーキをOFFにしている。
【0037】
ハイサイド電源114の電圧は、タイミングT5で立ち下がり始めるが、キャパシタの影響で立ち下がりに所定時間を要し、ここではタイミングT6でモータ駆動回路104の動作電圧Vwよりも高い第2の閾値Vbまで立ち下がる。なお第2の閾値Vbは、図中では第1の閾値Vaと同じ値としたが、これに限定されず、異なる値になるよう適宜設定してもよい。
【0038】
このようにタイミングT6で、ハイサイド電源114の電圧がモータ駆動回路104の動作電圧Vwより高い第2の閾値Vbまで下降すると、電圧検知回路118は、ブレーキOFF検知信号をHighからLowにして、ブレーキ制御回路108に出力する。ブレーキ制御回路108は、ブレーキOFF検知信号がLowであるため、ブレーキ制御信号をHighとしてブレーキ106をONにする。
【0039】
このようにロボット制御装置100では、モータ102の駆動を停止するときは、ハイサイド電源114の電圧がモータ駆動回路104の動作電圧Vwより高い第2の閾値Vbまで上昇したとき、すなわちモータ102が駆動力を生じているうちにブレーキONを遅延させる。ここでブレーキONを遅延させるとは、
図2のタイミングT5でモータ駆動ON信号をLowにしてから、タイミングT6でブレーキOFF検知信号がLowになるまでの区間Bにおいて、ブレーキOFFを維持した後、ブレーキONにすることをいう。
【0040】
つまりロボット制御装置100では、モータ102が駆動力を失う前にブレーキ106をONにするため、モータ102の駆動を停止するとき、ロボットのアームなどが自由落下することを防止できる。
【0041】
その後、タイミングT7において、ハイサイド電源114の電圧がモータ駆動回路104の動作電圧Vwまで下降すると、モータ駆動回路104は動作を停止する。このため、モータ駆動力がLowとなり、モータ102は駆動力を失う。なおタイミングT8において、ハイサイド電源114の電圧が完全に立ち下がる。
【0042】
したがってロボット制御装置100によれば、モータの駆動を開始および停止するとき、ロボットの駆動部が自由落下することを防止できる。さらにロボット制御装置100では、ハイサイド電源114の電圧監視を行って、モータ駆動回路104の動作電圧Vwと各閾値Va、Vbとを比較すればよいため、応答性もよく、さらに追加回路も少なくて済むため、回路構成が複雑にならない。
【0043】
図3は、
図1のロボット制御装置100の変形例を例示するブロック図である。図中では、変形例のロボット制御装置100Aの一部のみを示している。ロボット制御装置100Aは、上記のブレーキ制御回路108と電圧検知回路118に代えて、ブレーキOFF遅延回路122と、ブレーキON遅延回路124と、NORゲート126とを備える点で、上記ロボット制御装置100と異なる。
【0044】
ブレーキOFF遅延回路122は、上昇検知回路128と、上昇遅延回路130とを有する。上昇検知回路128は、具体的には対象電圧がリファレンス電圧より高かった場合にHighを出力する電圧検知回路である。上昇検知回路128は、ハイサイド電源114の電圧の上昇を検知して、検知した電圧の変化をブレーキON遅延回路124とNORゲート126とに出力する。上昇遅延回路130は、ハイサイド電源114の電圧の上昇を遅延させるLPF(ブレーキOFFLPF)であって、ダイオード132と、抵抗134と、キャパシタ136とを有する。
【0045】
ブレーキON遅延回路124は、下降検知回路138と、下降遅延回路140とを有する。下降検知回路138は、具体的には、上昇検知回路128と同様に、対象電圧がリファレンス電圧より高かった場合にHighを出力する電圧検知回路である。下降検知回路138は、ハイサイド電源114の電圧の下降を検知して、検知した電圧の変化をNORゲート126に出力する。下降遅延回路140は、ハイサイド電源114の電圧の下降を遅延させるLPF(ブレーキONLPF)であって、ダイオード142と、抵抗144と、キャパシタ146とを有する。
【0046】
さらにロボット制御装置100Aにおいて、上昇遅延回路130および下降遅延回路140は、個別に遅延時間を設定可能になっている(後述)。
【0047】
以下、
図4を参照してロボット制御装置100Aの動作について説明する。
図4は、
図3のロボット制御装置100Aの各部の出力(信号)を例示するタイミングチャートである。
【0048】
ロボット制御装置100Aにおいて、まず、モータ102(
図1参照)を駆動する場合、ロボット制御回路116は、タイミングS1で動力投入指令としてモータ駆動ON信号をHighにしてハイサイドスイッチ120に入力し、ハイサイドスイッチ120をONにする。ハイサイドスイッチ120がONになると、ハイサイド電源114は、タイミングS1でモータ駆動回路104に供給される。
【0049】
またタイミングS1において、
図4に示すようにモータ駆動力がLowであり、モータ102には駆動力が生じていない。さらに上昇検知回路128の出力であるブレーキOFF検知信号および下降検知回路138の出力であるブレーキON検知信号はいずれもLowである。このため、NORゲート126は、ブレーキ制御信号をHighとして、ブレーキをONにしている。
【0050】
ハイサイド電源114の電圧は、タイミングS1で立ち上がり始めるが、キャパシタの影響で立ち上がりに所定時間を要し、ここではタイミングS2でモータ駆動回路104の動作電圧Vwまで立ち上がる。このため、モータ102は、タイミングS2でモータ駆動回路104により駆動され、モータ駆動力がHighとなり駆動力が生じる。
【0051】
またハイサイド電源114からの電流は、上昇遅延回路130のダイオード132を通過せず、抵抗134に流れる。このため、上昇遅延回路130では、抵抗134およびキャパシタ136からなるRC回路により、ハイサイド電源114の電圧の立ち上がりをなだらかにすることができる。
【0052】
ハイサイド電源114の電圧は、
図4のブレーキOFFLPFに示すようにタイミングS1からS3の間になだらかに立ち上がって、モータ駆動回路104の動作電圧Vwより高い第1の閾値Vaまで上昇する。そして上昇検知回路128は、タイミングS3でブレーキOFF検知信号をLowからHighにして、NORゲート126に出力する。
【0053】
一方、下降遅延回路140では、ハイサイド電源114からの電流が抵抗144に流れず、ダイオード142を通過する。このため、下降遅延回路140では、抵抗144およびキャパシタ146からなるRC回路が機能せず、
図4のブレーキONLPFに示すようにタイミングS2でハイサイド電源114の電圧が急峻に立ち上がる。
【0054】
さらにタイミングS3において、下降検知回路138は、ブレーキON検知信号をLowからHighにして、NORゲート126に出力する。これによりNORゲート126は、タイミングS3においてブレーキ制御信号をLowとして、ブレーキをOFFにしている。
【0055】
このようにロボット制御装置100Aでは、上昇検知回路128と上昇遅延回路130により、モータ102の駆動を開始するときにブレーキOFFを遅延させる時間を調整することができる。ここでブレーキOFFを遅延させるとは、
図4のタイミングS2でモータ102が駆動力を生じてから、タイミングS3でブレーキ制御信号がLowになるまでの区間Cにおいて、ブレーキONを維持することをいう。なおブレーキOFFを遅延させる時間は、上昇遅延回路130の例えばキャパシタ136の容量を調整することで可能となる。
【0056】
つまりロボット制御装置100Aでは、モータ102が駆動力を生じるまではブレーキ106がONになっているため、モータ102の駆動を開始するとき、ロボットのアームなどが自由落下することを防止できる。なおタイミングS4以降において、ハイサイド電源114の電圧が完全に立ち上がり、モータ102は、ブレーキOFFの状態でモータ駆動回路104によって駆動される。
【0057】
さらにロボット制御装置100Aでは、ハイサイド電源114の電圧の立ち上がりをなだらかにしているので、第1の閾値Vaを検知してからブレーキ106を動作させる応答時間を確保することができ、ブレーキ106の動作が間に合わなくなるような状況を回避して安全性を高めることができる。
【0058】
つぎにロボット制御装置100Aにおいて、モータ102の駆動を停止する場合の動作を説明する。ロボット制御回路116は、タイミングS5で動力投入指令としてモータ駆動ON信号をLowにしてハイサイドスイッチ120に入力し、ハイサイドスイッチ120をOFFにする。ハイサイドスイッチ120がOFFになると、ハイサイド電源114は、タイミングS5でモータ駆動回路104への供給が遮断される。
【0059】
またタイミングS5において、
図4に示すようにモータ駆動力がHighであり、モータ102には駆動力が生じている。NORゲート126は、タイミングS3からブレーキ制御信号をLowのまま維持していて、タイミングS5においてもブレーキをOFFにしている。
【0060】
まず上昇遅延回路130では、タイミングS5でハイサイド電源114の電圧が立ち下がると、キャパシタ136に溜まっていた電荷がダイオード132を通る。また上昇検知回路128は、タイミングS5でブレーキOFF検知信号をHighからLowにして、NORゲート126に出力する。
【0061】
つぎに下降遅延回路140では、キャパシタ146に溜まっていた電荷がダイオード142に戻らず、電荷を徐々に解放しながら下降検知回路138に流れる。このため、下降遅延回路140では、
図4のブレーキONLPFに示すようにタイミングS6以降、ハイサイド電源114の電圧がなだらかに立ち下がる。
【0062】
そして
図4のブレーキONLPFに示すようにハイサイド電源114の電圧は、タイミングS5からS6の間になだらかに立ち下がって、モータ駆動回路104の動作電圧Vwより高い第2の閾値Vbまで下降する。そして下降検知回路138は、タイミングS6でブレーキON検知信号をHighからLowにして、NORゲート126に出力する。
【0063】
これによりNORゲート126は、タイミングS6においてブレーキOFF検知信号およびブレーキON検知信号がいずれもLowであるため、ブレーキ制御信号をHighとして、ブレーキをONにしている。
【0064】
このようにロボット制御装置100Aでは、下降検知回路138と下降遅延回路140とにより、モータ102の駆動を停止するときにブレーキONを遅延させる時間を調整することができる。ここでブレーキONを遅延させるとは、
図4のタイミングS5でモータ駆動ON信号をLowにしてから、タイミングS6でブレーキ制御信号がHighになるまでの区間Dにおいて、ブレーキOFFを維持した後、ブレーキONにすることをいう。なおブレーキONを遅延させる時間は、下降遅延回路140の例えばキャパシタ146の容量を調整することで可能となる。
【0065】
つまりロボット制御装置100Aでは、モータ102が駆動力を失う前にブレーキ106をONにするため、モータ102の駆動を停止するとき、ロボットのアームなどが自由落下することを防止できる。その後、タイミングT8において、ハイサイド電源114の電圧がモータ駆動回路104の動作電圧Vwまで下降すると、モータ駆動回路104は動作を停止する。このため、モータ駆動力がLowとなり、モータ102は駆動力を失う。なおタイミングS8において、ハイサイド電源114の電圧が完全に立ち下がる。
【0066】
またロボット制御装置100Aでは、ハイサイド電源114の電圧の立ち下がりをなだらかにしているので、第2の閾値Vbを検知してからブレーキ106を動作させる応答時間を確保することができ、ブレーキ106の動作が間に合わなくなるような状況を回避して安全性を高めることができる。
【0067】
さらにロボット制御装置100Aによれば、モータ102の駆動を開始するときにブレーキOFFを遅延させる時間を調整できるだけでなく、モータ102の駆動を停止するときにブレーキONを遅延させる時間を調整することもできるため、モータ102の駆動力のON/OFF(のタイミング)とブレーキ106の制動力のON/OFF(のタイミング)の順序を確実に制御することができる。
【0068】
なおロボット制御装置100Aでは、上昇遅延回路130および下降遅延回路140を用いて遅延時間を個別に設定できるように2系統の回路構成を採用したが、これに限定されない。一例として、ロボット制御装置100の電圧検知回路118に対して、ハイサイド電源114の電圧の上昇または下降を遅延させる適宜の遅延回路を設けるようにしてもよい。
【0069】
このようにすれば、ハイサイド電源114の電圧の立ち上がりまたは立ち下がりに要する時間を調整できる。このため、モータ102の駆動を開始するときにブレーキOFFを遅延させる時間、または、モータ102の駆動を停止するときにブレーキONを遅延させる時間を調整することができる。
【0070】
さらに上記の第1の閾値Va、第2閾値Vbは、分圧抵抗とバッファあるいはコンパレータを用いることで適宜設定可能である。また第1の閾値Va、第2閾値Vbの調整をLPFに可変抵抗などを用いて行うことにより、ブレーキの性能劣化に対応可能となる。なおブレーキOFF遅延やブレーキON遅延の時間を調整するとき、可変抵抗などを適用しこれを物理的に調整してもよい。ただし可変抵抗などを物理的に調整するのが手間であれば、電圧検知の結果をCPUのタイマのトリガに入力し、タイマ出力をロジックに組み合わせることで、時間調整を容易に行うこともできる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ロボットを駆動するモータのブレーキを制御するブレーキ制御回路を備えたロボット制御装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100、100A…ロボット制御装置、102…モータ、104…モータ駆動回路、106…ブレーキ、108…ブレーキ制御回路、110…電源回路、112…モータ駆動電源、114…ハイサイド電源、116…ロボット制御回路、118…電圧検知回路、120…ハイサイドスイッチ、122…ブレーキOFF遅延回路、124…ブレーキON遅延回路、126…NORゲート、128…上昇検知回路、130…上昇遅延回路、132、142…ダイオード、134、144…抵抗、136、146…キャパシタ、138…下降検知回路、140…下降遅延回路