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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174816
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】天井断熱構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20221117BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20221117BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20221117BHJP
   E04G 9/10 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E04B1/76 400F
E04B1/80 100P
E04B9/00 B
E04G9/10 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080795
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】513002441
【氏名又は名称】株式会社サドル
(71)【出願人】
【識別番号】516043317
【氏名又は名称】株式会社青和
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】奥山 誠司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 友良
【テーマコード(参考)】
2E001
2E150
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001EA02
2E001FA14
2E001GA12
2E001GA42
2E001GA55
2E001HB01
2E001HD01
2E001HD09
2E001LA01
2E001LA04
2E150BA12
2E150HB01
2E150JA02
(57)【要約】
【課題】より簡易で安全な施工方法で、断熱パネルと天井スラブとを強固に一体化し得る天井断熱構造とその施工方法を提供する。
【解決手段】型枠11上に、側面に溝部2cが形成された複数枚の断熱パネル2を、溝部2c同士を対向させて、一方の溝部2cから他方の溝部2cにわたる断熱ブロック3を嵌合して配置し、次いで、断熱パネル2上に金物5を配置し、該金物5と断熱ブロック3とをビス4で連結した後、断熱パネル2上にコンクリートを打設して天井スラブ1を構築すると同時に、金物5を天井スラブ1内に埋没させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の天井スラブと、前記天井スラブの下面側に前記天井スラブに接して配置された断熱パネルと、を備えた天井断熱構造であって、
前記断熱パネルの前記天井スラブ側に金物が固定されており、
前記金物が前記天井スラブ内に埋没していることを特徴とする天井断熱構造。
【請求項2】
前記金物は、断面が略L字型又は上方が開口した略コ字型であることを特徴とする請求項1に記載の天井断熱構造。
【請求項3】
前記金物は、前記天井スラブへの食い込み部を有することを特徴とする請求項2に記載の天井断熱構造。
【請求項4】
前記食い込み部が、上端部が垂直方向から水平方向に向けて折り曲げられた部位、或いは、上端部が下方に向けて折り返された部位であることを特徴とする請求項3に記載の天井断熱構造。
【請求項5】
前記食い込み部が、側面を略くの字型やジグザグ型、波型、湾曲型となるように変形させた部位であることを特徴とする請求項3又は4に記載の天井断熱構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の天井断熱構造の施工方法であって、
型枠を設置する工程と、
前記型枠上に断熱パネルを載置する工程と、
前記断熱パネル上に金物を配置して固定する工程と、
前記断熱パネル上にコンクリートを打設して天井スラブを構築する工程と、
前記型枠を除去する工程と、
を有することを特徴とする天井断熱構造の施工方法。
【請求項7】
前記断熱パネルは水平方向に複数枚配置され、
前記断熱パネルは、少なくとも一つの側面に水平方向に延びる溝部を有し、
前記溝部を有する側面同士が接する2枚の前記断熱パネルの境界において、前記溝部には、前記境界を跨いで断熱ブロックが嵌合され、
前記境界上に金物が配置され、
前記金物と前記断熱ブロックとが固定具で連結されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の天井断熱構造。
【請求項8】
前記金物は、水平方向に長尺であり、長手方向が前記境界を跨いで配置されていることを特徴とする請求項7に記載の天井断熱構造。
【請求項9】
前記金物は、水平方向に長尺であり、長手方向が前記境界に平行に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の天井断熱構造。
【請求項10】
前記金物と前記断熱パネルとの間に、ノロ防止テープが配置されていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の天井断熱構造。
【請求項11】
前記断熱パネルは、天井スラブ側に表面材を有することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の天井断熱構造。
【請求項12】
前記金物が、前記断熱ブロックに対応しない位置にも配置されて、前記表面材と固定具で連結されていることを特徴とする請求項11に記載の天井断熱構造。
【請求項13】
請求項7乃至10のいずれか一項に記載の天井断熱構造の施工方法であって、
型枠を設置する工程と、
少なくとも一つの側面に水平方向に延びる溝部が形成された複数枚の断熱パネルを、前記溝部同士を対向させて、一方の前記溝部から他方の前記溝部にわたって断熱ブロックを嵌合して、前記型枠上に配置する工程と、
前記断熱パネル上の、前記断熱ブロックに対応する位置に金物を配置し、前記金物と前記断熱ブロックとを固定具で連結する工程と、
前記断熱パネル上にコンクリートを打設して天井スラブを構築する工程と、
前記型枠を除去する工程と、
を有することを特徴とする天井断熱構造の施工方法。
【請求項14】
前記断熱パネルを前記型枠上に配置した後、前記断熱パネル上に前記金物を配置する前に、隣接する2枚の前記断熱パネルの境界をノロ防止テープで塞ぐ工程を有することを特徴とする請求項13に記載の天井断熱構造の施工方法。
【請求項15】
前記断熱パネルが天井スラブ側に表面材を有し、前記金物を前記断熱ブロックに対応しない位置にも配置し、前記金物と前記断熱ブロックとを固定具で連結する工程において、前記断熱ブロックに対応しない位置に配置された前記金物を、前記表面材に固定することを特徴とする請求項13又は14に記載の天井断熱構造の施工方法。
【請求項16】
前記断熱パネルは前記天井スラブ側に表面材を備え、
前記表面材上に金物が配置されて前記断熱パネルに固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の天井断熱構造。
【請求項17】
請求項16に記載の天井断熱構造の施工方法であって、
型枠を設置する工程と、
少なくとも一方の表面に表面材を備えた断熱パネルを、前記表面材を上面にして前記型枠上に配置する工程と、
前記断熱パネルの前記表面材上に金物を配置して前記断熱パネルに固定する工程と、
前記断熱パネル上にコンクリートを打設して天井スラブを構築する工程と、
前記型枠を除去する工程と、
を有することを特徴とする天井断熱構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井スラブの下面に断熱パネルを備えた天井断熱構造に関し、特に、型枠上に断熱パネルを載置した上にコンクリートを打設することで、天井スラブを構築すると同時に、天井スラブと断熱パネルとを一体化した天井断熱構造、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天井スラブの下面に断熱パネルを配置した天井断熱構造の施工方法として、型枠上に断熱パネルを載置した上にコンクリートを打設して、天井スラブを構築すると同時に天井スラブと断熱パネルとを一体化させる方法が知られている。特許文献1には、断熱パネルに予め該断熱パネルを貫通する複数本の取付けピンを取り付け、その先端を断熱パネルの上面から露出させておくことで、係る先端を硬化したコンクリートで掴持し、断熱パネルを天井スラブに固定する施工方法が開示されている。そして特許文献1には、断熱パネルから突出した取付けピンの先端に作業者がつまずいたり踏み抜いたりしてしまう事故を防止するために、天井スラブ側の断熱パネル表面に凹部や溝を形成し、取付けピンの先端を係る凹部や溝内におさめた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-56485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された施工方法では、断熱パネルの表面に凹部や溝を形成することで、取付けピンの先端による事故を防止する構成が開示されているが、天井スラブの面積が広い場合には、多数枚の断熱パネルの表面に凹部や溝を形成する作業は煩雑である。また、取付けピンの先端を天井スラブに埋め込むだけでは不十分で、天井スラブ構築用の型枠を外した後に、断熱パネルが脱落する場合があった。
【0005】
本発明の課題は、より簡易で安全な施工方法で、断熱パネルと天井スラブとを強固に一体化し得る天井断熱構造とその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、コンクリート製の天井スラブと、前記天井スラブの下面側に前記天井スラブに接して配置された断熱パネルと、を備えた天井断熱構造であって、
前記断熱パネルの前記天井スラブ側に金物が取り付けられており、
前記金物が前記天井スラブ内に埋没していることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2は、上記本発明の天井断熱構造の施工方法であって、
型枠を設置する工程と、
前記型枠上に断熱パネルを載置する工程と、
前記断熱パネル上に金物を配置し、前記断熱パネルに取り付ける工程と、
前記断熱パネル上にコンクリートを打設して天井スラブを構築する工程と、
前記型枠を除去する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、型枠上に断熱パネルを載置した後に、該断熱パネルの表面に、天井スラブと断熱パネルとの一体化を強化するための金物が取り付けられるため、断熱パネル上での作業の安全性が高く、断熱パネルに凹部や溝を形成する必要がないため、施工工程全体が簡易になる。また、金物は断熱パネルの表面に取り付けられるため、形状を自由に選択することができ、断熱パネルを強固に天井スラブに固定することができる。よって、本発明によれば、簡易な施工方法によって、天井スラブと断熱パネルとがより強固に一体化され、信頼性の高い天井断熱構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の天井断熱構造の第1の実施形態の構成を模式的に示す斜視図である。
図2図1の部分平面図である。
図3図2のA-A’部位に相当する断面模式図である。
図4図2のB-B’部位に相当する断面模式図である。
図5図1の天井断熱構造の施工工程の一部を示す断面模式図である。
図6】本発明で用いられる金物の断面形状を示す模式図である。
図7図1の天井断熱構造の応用例の構成を模式的に示す斜視図である。
図8】本発明の天井断熱構造の第1の実施形態において、金物の取付け方向をかえた構成を模式的に示す斜視図である。
図9図8の部分平面図である。
図10図9のC-C’部位に相当する断面模式図である。
図11図9のD-D’部位に相当する断面模式図である。
図12図8の天井断熱構造の応用例の構成を模式的に示す斜視図である。
図13】本発明の天井断熱構造の第2の実施形態の構成を模式的に示す斜視図である。
図14図13の部分平面図である。
図15図14のE-E’部位に相当する断面模式図である。
図16図14のF-F’部位に相当する断面模式図である。
図17図13の天井断熱構造の施工工程の一部を示す厚さ方向の断面図である。
図18図13の天井断熱構造の応用例の構成を模式的に示す斜視図である。
図19図13の天井断熱構造の応用例の構成を模式的に示す斜視図である。
図20図7の構成と図18の構成とを組み合わせた構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の天井断熱構造は、天井スラブと断熱パネルとを備えた構成において、断熱パネルの天井スラブ側に金物を固定して天井スラブに埋没させることで、天井スラブと断熱パネルとを強固に一体化したことに特徴を有する。本発明の天井断熱構造は、以下の工程によって簡易に施工することができる。
(1)型枠を設置する工程
(2)前記型枠上に断熱パネルを載置する工程
(3)前記断熱パネル上に金物を配置して固定する工程
(4)前記断熱パネル上にコンクリートを打設して天井スラブを構築する工程
(5)前記型枠を除去する工程
本発明においては、天井スラブは、断熱パネル上に直接コンクリートを流し込んで硬化させるため、金物は天井スラブ内に隙間なく埋め込まれ、これにより、天井スラブは、金物を介して断熱パネルと強固に一体化される。また、金物の取付けは型枠の上に断熱パネルを載置した後に行うため、断熱パネルを型枠上に載置する際には断熱パネルが取り扱い易く、作業者が金物につまずいたり踏み抜いたりしてしまう事故を防止するために断熱パネルに凹部や溝を形成する必要がない。
【0011】
本発明の天井断熱構造に好ましく用いられる金物としては、水平方向に長尺で、断面(短手方向、幅方向)が略L字型や上方が開口した略コ字型の金物が好ましく用いられ、市販されているアングルや野縁が好ましく用いられる。また、金物は、天井スラブとの一体化を強化する上で、天井スラブへの食い込み部を有することが望ましい。係る食い込み部は、コンクリート打設時に、コンクリートが金物の一部の下方側に回り込み、硬化後に互いに咬み合って金物が天井スラブから抜けにくくなる部位である。よって、コンクリート打設時に、コンクリートが金物の一部の下方側に回り込むことができる形状であれば、食い込み部の形状は特に限定されないが、例えば、上端部が垂直方向から水平方向に折り曲げられた部位、或いは、上端部が下方に折り返された部位が挙げられる。
【0012】
図6に、本発明で用いられる好ましい金物の断面(短手方向、幅方向)形状を示す。図6中、(a)~(e)は略L字型、(f)~(j)は略コ字型の例である。また、図6(b)、(c)、(g)、(h)は、上端部が水平方向にまで折り曲げられた形状、図6(d)、(e)、(i)、(j)は、上端部が下方に折り返された形状である。図6(b)~(e)、(g)~(j)のような形状を有することで、断熱パネル上にコンクリートを打設した際に、コンクリートが金物の上端の折り曲げられた部位の下方、或いは折り返された内部に入り込み、硬化後に天井スラブと金物とが強固に咬み合い、天井スラブから金物が抜け落ちにくくなる。好ましくは、図6(b)、(d)、(g)、(i)のように、折り曲げた部位や折り返された部位が、L字型又はコ字型の底面に重なる形状であり、より好ましくは、図6(d)、(i)のように折り返された形状、望ましくは、図6(i)に示す形状である。
【0013】
また、上記食い込み部としては、上記略L字型、略コ字型の側面を、断面が略くの字型やジグザグ型、波型、湾曲型となるように変形させた形状としても良く、さらには、これらの形状と、上記上端部を折り曲げたり折り返したりした形状とを組みわせても良い。
【0014】
次に、本発明の天井断熱構造の、金物の取付け形態について詳しく説明する。本発明の天井断熱構造においては、金物の好ましい取付け形態として、第1の実施形態と第2の実施形態が挙げられる。第1の実施形態では、隣り合う2枚の断熱パネルの境界に断熱ブロックが嵌合され、断熱パネル上に配置した金物と断熱ブロックとを連結し、第2の実施形態では、断熱パネルが天井スラブ側に表面材を備え、該表面材上に配置した金物と該表面材とを連結する。
【0015】
以下、上記第1、第2の実施形態のそれぞれとその施工方法について、図面を参照しながら説明する。尚、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。また、本明細書に添付の図面においては、本発明にかかる主要な構成部材のみを示し、他の構成部材については便宜上図示を省略する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1図4は、本発明の天井断熱構造の第1の実施形態の構成を模式的に示す図であり、図1は本実施形態の天井スラブを除いた状態での斜視図であり、図2図1の部分平面図であり、図1中の金物5の一つを上方から見た図である。図3図4は本実施形態の厚さ方向(垂直方向)の断面図であり、図3図2中のA-A’部位に相当する断面模式図であり、図4図2中のB-B’部位に相当する断面模式図である。
【0017】
本発明の天井断熱構造は、図3図4に示す通り、コンクリート製の天井スラブ1と、該天井スラブ1の下面側に該天井スラブ1に接して配置された断熱パネル2とを備えており、本実施形態においては、断熱パネル2は水平方向に複数枚が配列されている。
【0018】
本実施形態に用いられる断熱パネル2は、少なくとも一つの側面に溝部2cを有しており、隣接する2枚の断熱パネル2,2の境界において、係る溝部2cを有する側面同士が接するように配置すると同時に、一方の溝部2cから他方の溝部2cにわたって、上記境界を跨いで断熱ブロック3が嵌合されている。金物5は、断熱ブロック3が嵌合された2枚の断熱パネル2,2の境界上に配置され、ビス4によって断熱ブロック3に連結されている。これにより、金物5と断熱パネル2とが断熱ブロック3を介して一体化され、金物5は天井スラブ1内に埋没している。本実施形態においては、金物5として、図6(j)に示した形状の金物が用いられている。
【0019】
また、本実施形態においては、金物5と断熱パネル2との間にノロ防止テープ6が配置され、2枚の断熱パネル2,2の境界はノロ防止テープ6で覆われている。また、2枚の断熱パネル2,2の境界の下端は、断熱パネル2,2の角部を切り欠いて、その間隙に目地材7が埋め込まれ、シールされている。
【0020】
次に、本実施形態の天井断熱構造の施工方法について説明する。図5は係る施工の一工程を示す断面模式図であり、図3と同じ部位の厚さ方向の断面模式図である。本実施形態の施工方法は、少なくとも以下の工程を有している。
(1)型枠11を設置する工程
(2)断熱パネル2を、溝部2cがある側面同士を対向させて、該溝部2c,2cに断熱ブロック3を嵌合し、型枠11上に配置する工程
(3)断熱パネル2上の、断熱ブロック3に対応する位置に金物5を配置し、該金物5と断熱ブロック3とをビス4で連結する工程(図5
(4)断熱パネル2上にコンクリートを打設して天井スラブ1を構築する工程
(5)型枠11を除去する工程
【0021】
本実施形態のように、2枚の断熱パネル2,2の境界をノロ防止テープで塞ぐ場合には、上記工程(2)と(3)との間に、2枚の断熱パネル2,2の境界をノロ防止テープで塞ぐ工程を加える。また、本実施形態のように、2枚の断熱パネル2,2の境界の下端側を目地材7で埋め込む場合には、上記工程(5)の後に、2枚の断熱パネル2,2の境界の下端の空隙12に目地材7を埋め込む工程を加える。
【0022】
本発明においては、2枚の断熱パネル2,2の境界を跨いで配置された断熱ブロック3にビス4によって金物5が連結されているため、金物5が断熱ブロック3を介して2枚の断熱パネル2,2に固定される。また、金物5の取付けは型枠11上に断熱パネル2を載置した後に行われるため、断熱パネル2の載置作業の際に、作業者が金物5につまずいたり踏んでしまったりするおそれがない。
【0023】
また、本実施形態においては、コンクリートを打設する際に、2枚の断熱パネル2,2の境界にコンクリートが浸入した場合でも、断熱ブロック3によってそれ以上の浸入が阻止される。特に、本実施形態においては、2枚の断熱パネル2,2の境界をノロ防止テープ6が覆っていることから、係る境界にコンクリートが浸入するのが防止され、さらに、係る境界の下端に配置された目地材7によっても境界に侵入したコンクリートが断熱パネル2の下面側に露出するのが防止される。
【0024】
本実施形態においては、天井スラブ1は、断熱パネル2上に直接コンクリートを流し込んで硬化させるため、金物5は天井スラブ1内に隙間なく埋め込まれ、これにより、天井スラブ1は、金物5、ビス4、断熱ブロック3を介して断熱パネル2,2と強固に一体化される。
【0025】
本実施形態において、金物5としては、市販されているアングルや野縁が好ましく用いられ、短手方向(図4の紙面左右方向)の長さ(幅)が30mm~70mm程度のものを用いればよく、長手方向については特に制限はない。図1のように短く切断して用いる場合には、長手方向(図2の紙面左右方向)の長さは例えば150mm~200mm程度である。また、金物5は、図7に示すように、複数枚の断熱パネル2にわたって連続する形態で用いても構わない。図7の場合、金物5は、複数枚の断熱パネル2を一体化する作用も発現する。
【0026】
また、本実施形態においては、金物5と断熱ブロック3とをビス4で連結しているが、金物5と断熱ブロック3とを連結する固定具としてはビス4以外のもの、例えば釘などを用いても構わないが、断熱パネル2が自重で天井スラブ1から脱落するのを防止する上で、ビスのように表面に凹凸を有する部材や、先端に返しを有する部材の方が断熱ブロック3から抜けにくいので好ましい。
【0027】
断熱ブロック3は、断熱性の高い材料、特に樹脂材料が好ましく、厚さが5mm~10mm程度、幅(図3の紙面左右方向)が40mm~70mm程度で用いられる。また樹脂材料としては、ビス4を取り付ける上で硬質の樹脂材料が好ましく、ポリエチレンやポリスチレン、ポリプロピレンなどが好ましく用いられる。
【0028】
断熱パネル2としては、断熱材2aの下面側の表面に表面材2bを有するものが好ましく用いられ、断熱材2aとしては厚さ(図3図4の紙面上下方向)が80mm~120mm程度のイソシアヌレートフォームや押出法ポリスチレンフォーム(例えば、スタイロフォーム(登録商標))が好ましく用いられる。また、表面材2bは、内装材であり、カラー鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、アルミニウム板、SUS板などが好ましく用いられる。また、断熱パネル2の天井スラブ1側に表面材を有するものを用いても良く、この場合の表面材としては、下面側の表面材2bと同様の材料が好ましく用いられ、断熱パネル2が両面に同じ表面材を有する場合には、型枠11上に載置する際に、いずれを下面に向けても良いため、作業が容易になる。尚、本発明においては、金物5と断熱ブロック3とがビス4等によって連結されるが、係る構成において、ビス4の長さは先端が断熱ブロック3から若干突出する程度が好ましく、ビス4の先端が断熱パネル2の下面にまで到達する必要がないため、断熱パネル2が両面に表面材を備えた場合でも、ビス4が係る表面材同士をつなぐ熱橋となるおそれはない。
【0029】
本実施形態において、断熱パネル2の溝部2c及び断熱ブロック3は、少なくとも金物5を取り付ける位置に対応させて設けておけば良いが、断熱ブロック3によって隣り合う断熱パネル2との境界に浸入したコンクリートが断熱パネル2の下面側に浸出するのを防止しうること、断熱ブロック3によって隣り合う断熱パネル2同士を接合できること、断熱ブロック3が長いほど金物5と断熱ブロック3との位置合わせが容易になること等の観点から、係る溝部2c及びこれに嵌合させる断熱ブロック3は、断熱パネル2の側面の全長にわたって設けることが好ましく、隣り合う2枚の断熱パネル2,2の境界の側面には全て設けることが好ましい。よって、断熱パネル2が複数行、複数列にわたって配置される場合には、少なくとも行、列の一方に平行な一対の側面に設けることが好ましく、4側面全てに設けることがより好ましい。
【0030】
また、断熱ブロック3は、複数枚の断熱パネル2にわたって連続させても良い。溝部2cを4側面全てに設け、且つ、断熱パネル2の厚さ方向における溝部2cの位置が全て同じ場合、二つの側面で構成される角部において溝部2c、2c同士が交差するため、断熱ブロック3は一方の溝部2cについては複数枚の断熱パネル2にわたって連続しても良いが、他方の溝部2cについては、交差部において、一方の溝部2cに嵌合される断熱ブロック3に対応する部分を除いて嵌合させればよい。また、溝部2cを4側面全てに設ける場合であっても、互いに直交する方向に形成される溝部2cの一方と他方とを、厚さ方向の異なる位置に形成することで、それぞれに嵌合される断熱ブロック3が互いに干渉しないため、断熱ブロック3の長さを自由に選択することができる。
【0031】
断熱ブロック3が断熱パネル2の側面の全長にわたって嵌合されている場合には、金物5と断熱ブロック3との位置合わせが容易で、金物5の取り付け位置を自由に選択することができ、作業がより容易になる。
【0032】
また、本実施形態においては、断熱パネル2は複数行、複数列にわたって配置され、金物5は行方向或いは列方向の一方に平行な境界にのみ取り付けられているが、両方の境界にそれぞれ取り付けられていても良い。
【0033】
また、図7に示した、複数枚の断熱パネル2にわたって連続する金物5と、図1に示した、短い金物5とを組み合わせて用いても構わない。
【0034】
図1図4の実施形態においては、1個の金物5を断熱ブロック3に対して1本のビス4で連結しているが、金物5の取付け方向を変えることで、1個の金物5を断熱ブロック3に対して2本以上のビス4で連結することができる。係る実施形態について、図1図4の実施形態と共通する構成については説明を省略し、異なる構成について、図8図12を用いて説明する。よって、図1図4の実施形態において適用される好ましい構成は、本実施形態においても適用されるものとする。
【0035】
図8図12は、図1図4の実施形態の金物5の配置方向を変えた実施形態の構成を模式的に示す図であり、図8は本実施形態の天井スラブ1を除いた状態での斜視図であり、図9図8の部分平面図であり、図8中の金物5の一つを上方から見た図である。図10図11は本実施形態の厚さ方向(垂直方向)の断面図であり、図10図9中のC-C’部位に相当する本実施形態の断面模式図であり、図11は、図9中のD-D’部位に相当する本実施形態の断面模式図である。
【0036】
図1図4の実施形態においては、金物5は長手方向が互いに隣り合う2枚の断熱パネル2,2の境界を跨ぐように配置されていたが、本実施形態においては、金物5は短手方向(幅方向)が互いに隣り合う2枚の断熱パネル2,2の境界を跨ぎ、長手方向が係る境界に平行に配置される。よって、金物5が短い場合でも、金物5の長手方向にそって複数本のビス4で断熱ブロック3に連結することができる。特に、断熱ブロック3が断熱パネル2の側面の全長にわたって嵌合されている場合には、金物5と断熱ブロック3との位置合わせが容易で、金物5の取り付け位置を自由に選択することができ、作業がより容易になる。
【0037】
また、本実施形態においても、図12に示すように、複数枚の断熱パネル2にわたって連続する金物5を用いることも可能であり、このような金物5と、図8に示した短い金物5とを組み合わせて用いてもよい。また、本実施形態においても、断熱パネル2は複数行、複数列にわたって配置され、金物5は行方向或いは列方向の一方に平行な境界にのみ取り付けられているが、両方の境界に取り付けられていても良い。
【0038】
さらに、本発明においては、図1図4図7の実施形態と図8図12の実施形態とを組みわせて実施してもかまわない。
【0039】
〔第2の実施形態〕
図13図16は、本発明の天井断熱構造の第2の実施形態の構成を模式的に示す図であり、図13は本実施形態の天井スラブを除いた状態での斜視図であり、図14図13の部分平面図であり、図13中の金物5の一つを上方から見た図である。図15図16は本実施形態の厚さ方向(垂直方向)の断面図であり、図15図14中のE-E’部位に相当する断面模式図であり、図16は、図14中のF-F’部位に相当する断面模式図である。
【0040】
本発明の第2の実施形態は、図15図16に示す通り、コンクリート製の天井スラブ1と、該天井スラブ1の下面側に該天井スラブ1に接して配置された断熱パネル2とを備えており、断熱パネル2が上面側、即ち天井スラブ1側に表面材2dを備えている。尚、本実施形態においては、断熱パネル2が下面側に内装材としての表面材2bを備えていてもよい。
【0041】
本実施形態においては、断熱パネル2の表面材2d上に金物5が配置され、ビス4によって該金物5が表面材2dに連結され、これにより、金物5と断熱パネル2とが一体化され、金物5は天井スラブ1内に埋没している。
【0042】
次に、本実施形態の施工方法について説明する。図17は係る施工方法の一工程を示す断面模式図であり、図15と同じ部位の厚さ方向の断面模式図である。本実施形態の施工方法は、少なくとも以下の工程を有している。
(1)型枠11を設置する工程
(2)断熱パネル2を型枠11上に配置する工程
(3)断熱パネル2の表面材2d上に金物5を配置し、該金物5を断熱パネル2にビス4で固定する工程(図17
(4)断熱パネル2上にコンクリートを打設して天井スラブ1を構築する工程
(5)型枠11を除去する工程
【0043】
本実施形態において、金物5の取付けは型枠11上に断熱パネル2を載置した後に行われるため、断熱パネル2の載置作業の際に、作業者が金物5につまずいたり踏んでしまったりするおそれがない。
【0044】
本実施形態においては、天井スラブ1は、断熱パネル2上に直接コンクリートを流し込んで硬化させるため、金物5は天井スラブ1内に隙間なく埋め込まれ、また、断熱パネル2が上面に表面材2dを有しており、金物5は係る表面材2dを介して断熱パネル2に固定されるため、金物5は断熱パネル2に強固に固定され、これにより、断熱パネル2と天井スラブ1とが強固に一体化される。
【0045】
本実施形態において、金物5については、第1の実施形態と同様であり、図13に示すように短く切断して用いても、図18に示すように、複数枚の断熱パネル2にわたって連続する形態で用いても構わない。図18の場合、金物5は、複数枚の断熱パネル2を一体化する作用も発現する。
【0046】
また、ビス4についても、第1の実施形態と同様であり、特に、本実施形態においては、金物5を連結する対象が厚さの薄い表面材2dであることから、ビス4が好ましく用いられる。
【0047】
断熱パネル2としては、少なくとも、断熱材2aの上面側の表面に表面材2dを有するものが用いられ、好ましくは、下面側にも内装材としての表面材2bを有するものが用いられる。断熱材2a、表面材2b、2dとしては、第1の天井断熱構造と同様である。ビス4は表面材2dを貫通する程度でよく、ビス4の先端が断熱パネル2の下面にまで到達する必要がないため、断熱パネル2が両面に表面材2b、2dを備えた場合でも、ビス4が係る表面材2b、2d同士をつなぐ熱橋となるおそれはない。
【0048】
第1の実施形態においては、隣接する2枚の断熱パネル2,2の境界に配置された断熱ブロック3に金物5を連結するため、水平方向に断熱パネル2が複数枚配置されている必要があったが、本実施形態においては、金物は断熱パネル2の表面材2dに連結されるため、断熱パネル2が1枚のみ配置された領域であっても施工が可能である。
【0049】
また、本実施形態においては、断熱パネル2が水平方向に複数枚配列されており、図13に示すように、第1の実施形態と同様に、隣接する2枚の断熱パネル2,2を断熱ブロック3で連結する構成がとられている。本実施形態においては、必ずしも係る構成は必要ではないが、係る構成により、隣接する2枚の断熱パネル2,2が断熱ブロック3を介して接合され、また、コンクリートを打設する際に、2枚の断熱パネル2,2の境界にコンクリートが浸入した場合でも、断熱ブロック3によってそれ以上の浸入を阻止することができるため、係る構成を備えることが好ましい。
【0050】
さらに、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、天井スラブ1側において、2枚の断熱パネル2,2の境界をノロ防止テープ6で覆うことで、係る境界にコンクリートが浸入するのを防止すること、また、2枚の断熱パネル2,2の境界の下端において、断熱パネル2,2の角部を切り欠いて、その間隙に目地材7を埋め込むことで、係る境界に浸入したコンクリートを断熱パネル2の下面側に露出するのを防止することが好ましい。
【0051】
本実施形態のように、2枚の断熱パネル2,2の境界をノロ防止テープで塞ぐ場合には、上記工程(2)と(3)との間に、2枚の断熱パネル2,2の境界をノロ防止テープで塞ぐ工程を加える。また、本実施形態のように、2枚の断熱パネル2,2の境界の下端側を目地材7で埋め込む場合には、上記工程(5)の後に、2枚の断熱パネル2,2の境界の下端の空隙に目地材7を埋め込む工程を加える。
【0052】
図13には、金物5の長手方向が同じ方向を向いて配置されている形態を示したが、本発明においては、係る形態に限定されるものではなく、図19に示すように、金物5の長手方向が互いに異なる方向を向くように配置しても構わない。また、図13の形態では、1個の金物5を、1本のビス4で断熱パネル2に固定しているが、2本以上のビス4で固定しても構わない。さらに、図18に示した、複数枚の断熱パネル2にわたって連続する金物5と、図13に示した、短い金物5とを組み合わせて用いても構わない。
【0053】
本発明においては、第1の実施形態と、第2の実施形態とを組み合わせて用いても良い。即ち、図1図7図8の構成と、図13図18図19の構成とを適宜選択して組み合わせても良い。例えば、図20に示すように、図18の構成において、断熱ブロック3が配置された境界上においても、金物5と断熱ブロック3とを連結する構成としても良い。
【符号の説明】
【0054】
1:天井スラブ、2:断熱パネル、2a:断熱材、2b,2d:表面材、2c:溝部、3:断熱ブロック、4:ビス、5:金物、6:ノロ防止テープ、7:目地材、11:型枠、12:空隙
図1
図2
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