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特開2022-174818熱電変換システム、熱電変換モジュールのリフレッシュ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174818
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】熱電変換システム、熱電変換モジュールのリフレッシュ方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20221117BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20221117BHJP
   F03G 7/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H01L35/30
F03G7/00 C
F03G7/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080797
(22)【出願日】2021-05-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田窪 千咲紀
(72)【発明者】
【氏名】早川 純
(57)【要約】
【課題】 出力効率の高い熱電変換システムを提供する。
【解決手段】 熱電変換モジュールは、温熱源と冷熱源とに接して温度差エネルギを電力に変換する熱電変換素子の単数又は複数で構成され、制御機構は、少なくとも温熱源と冷熱源の何れかを構成する液体流に生じた気泡による出力低下に対応し、温熱源及び冷熱源それぞれの温度及び流量を計測する熱源計測部と、熱電変換モジュールの出力値を計測する出力計測部と、制御情報を記憶する記憶部と、発動毎に所定の損失電力を生じながら気泡を除去するリフレッシュ機構と、記憶部に記憶された制御情報を用いた所定の計算結果に基づいてリフレッシュ機構を発動させるタイミングを決定する計算判定部と、を備え、制御情報として、少なくとも、温度及び流量に対する初期出力値と、運転継続に伴って計測される出力電力と、損失電力と、出力低下に係る情報と、を有した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換モジュールと、制御機構と、を備えた熱電変換システムであって、
前記熱電変換モジュールは、温熱源と冷熱源との間の温度差を電力に変換する熱電変換素子の単数又は複数で構成され、
前記制御機構は、
少なくとも前記温熱源と前記冷熱源の何れかを構成する液体流に生じる気泡による出力低下に対応するものであり、
前記温熱源及び前記冷熱源それぞれの温度及び流量を計測する熱源計測部と、
前記熱電変換モジュールの出力電力を計測する出力計測部と、
発動する毎に所定の損失電力を生じながら前記気泡を除去するリフレッシュ機構と、
記憶部に記憶された制御情報を用いた所定の計算結果に基づいて前記リフレッシュ機構を前記発動させるタイミングを決定する計算判定部と、
前記制御情報として、少なくとも、前記温度及び前記流量に対する前記気泡の無い状態の初期出力値と、運転継続に伴って計測される前記出力電力と、前記損失電力と、前記出力低下に係る情報と、を記憶する前記記憶部と、
を備えた、
熱電変換システム。
【請求項2】
前記計算判定部は、
前記記憶部に記憶された前記制御情報を用いて、出力低下予測曲線を形成可能に数値計算し、
前記出力低下予測曲線から、
時間当たりに、前記出力低下に伴う損失電力と、前記リフレッシュ機構を前記発動することに伴う前記損失電力と、の合計値が最小となるリフレッシュ機構発動時間を算出する、
請求項1に記載の熱電変換システム。
【請求項3】
前記リフレッシュ機構は、前記熱電変換モジュールの伝熱面近傍の流路において、流速を増加させるように前記流路を狭窄化させた、
請求項1に記載の熱電変換システム。
【請求項4】
前記リフレッシュ機構は、熱電変換モジュールの面内出力分布に基づいて、流路内の流れに不均衡を生成するような流路狭窄化の制御を行う、
請求項1に記載の熱電変換システム。
【請求項5】
温熱源の前記リフレッシュ機構は、冷熱源の冷熱により気泡を再溶解させるようにした、
請求項1に記載の熱電変換システム。
【請求項6】
前記制御機構は、前記計算判定部が決定した前記タイミングで前記リフレッシュ機構を前記発動させても前記出力低下が回復しない場合、泡以外の原因による故障が発生したものと判定する判定部を有する、
請求項1に記載の熱電変換システム。
【請求項7】
制御機構による熱電変換モジュールのリフレッシュ方法であって、
温度差エネルギを電力に変換する熱電変換素子の単数又は複数で構成された前記熱電変換モジュールを温熱源と冷熱源とに接し、
前記制御機構は、
前記温熱源及び前記冷熱源それぞれの温度及び流量を計測し、
前記熱電変換モジュールの出力値を計測し、
少なくとも前記温熱源と前記冷熱源の何れかを構成する液体流に生じた気泡による出力低下の有無を判定し、
前記出力低下が有れば、計算されたタイミングでリフレッシュ機構が発動する毎に所定の損失電力を生じながらも前記気泡を除去させ、
制御情報として生成された、少なくとも、気泡の無い状態の前記温度及び前記流量に対する初期出力値と、運転継続に伴って計測される出力電力と、前記損失電力と、前記出力低下に係る情報と、を記憶し、
記憶された前記制御情報を用いて所定の計算した結果に基づいて前記タイミングを決定する、
熱電変換モジュールのリフレッシュ方法。
【請求項8】
前記記憶された前記制御情報を用いて、出力低下予測曲線を形成可能に数値計算し、
前記出力低下予測曲線から、
時間当たりに、前記出力低下に伴う損失電力と、前記リフレッシュ機構を前記発動することに伴う前記損失電力と、の合計値が最小となるリフレッシュ機構発動時間を算出する、
請求項7に記載の熱電変換モジュールのリフレッシュ方法。
【請求項9】
前記リフレッシュ機構は、前記熱電変換モジュールの伝熱面近傍の流路において、流速を増加させるように前記流路を狭窄化させた、
請求項7に記載の熱電変換モジュールのリフレッシュ方法。
【請求項10】
前記リフレッシュ機構は、熱電変換モジュールの面内出力分布に基づいて、流路内の流れに不均衡を生成するような流路狭窄化の制御を行う、
請求項7に記載の熱電変換モジュールのリフレッシュ方法。
【請求項11】
温熱源の前記リフレッシュ機構は、冷熱源の冷熱により気泡を再溶解させるようにした、
請求項7に記載の熱電変換モジュールのリフレッシュ方法。
【請求項12】
計算判定部が決定した前記タイミングで前記リフレッシュ機構を前記発動させても前記出力低下が回復しない場合は、泡以外の原因による故障が発生したものと判定する、
請求項7に記載の熱電変換モジュールのリフレッシュ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換システム及びそれを構成する熱電変換モジュールのリフレッシュ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換発電は、環境発電の一つであり、IoT用センサ端末用の電源や廃熱利用等への活用方法が検討されている。熱電変換発電に利用されている熱電変換モジュールは、熱電変換素子の複数が電極とともに組み立てられることによって実現されている。この熱電変換モジュールは、温熱源と冷熱源との間の熱経路の温度差に基づいて、環境に蓄えられた熱エネルギの一部を電気エネルギに変換するものである。
【0003】
熱電変換システムを構成する熱経路には、発電に寄与する熱電変換素子と、それ以外の発電に寄与しない部分が存在している。熱電変換の研究分野では、熱電変換素子の材料や熱電変換モジュールの研究成果は多い。しかし、熱源を含む熱経路まで考慮した熱電変換システムの最適化については、改善余地が残されている。
【0004】
温熱源や冷熱源には温水等の液体が使われることも多い。液体には溶存気体や蒸気圧に応じた水蒸気が含まれているため、温度が上昇することで気泡が発生する。この気泡は徐々に流路の壁面に付着して熱絶縁作用をもたらす。この熱絶縁作用により、熱電変換モジュールを通過する熱流が減少することにより、熱電変換出力が低下するという課題がある。
【0005】
これに対し、特許文献1において、流路に傾きを与えることにより、液体に含まれる気泡等の空気を浮力利用で自動的に上部に逃がす構造が開示されている。また、流路の途中に気泡を逃がす孔を形成する構造のほか、除泡装置や消泡装置を常時起動させることで、泡を除去する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-247753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、液体流に含まれる気泡の一部は、浮力により上部方向へ流れ去るが、流されずに流路の壁面に付着して淀む気泡もある。特に小さな気泡は、浮力も小さく自動的に上部に流れ去らずに壁面に付着して残るものが多い。このような流路に淀む気泡を除去するために、除泡装置や消泡装置を常時起動していると、そのための稼働電力が出力に対する損失として増大する問題もある。
【0008】
これに対し、熱電変換モジュールを有する熱電変換システムにおいて、熱源の液体流に含まれる気泡を取り除くタイミングを最適化することにより、出力効率を最大にすることが望まれている。本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出力効率の高い熱電変換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る課題を解決する手段のうち代表的なものを例示すれば、熱電変換モジュールと、制御機構と、を備えた熱電変換システムであって、熱電変換モジュールは、温熱源と冷熱源とに接して温度差エネルギを電力に変換する熱電変換素子の単数又は複数で構成され、制御機構は、少なくとも温熱源と冷熱源の何れかを構成する液体流に生じた気泡による出力低下に対応するものであり、温熱源及び冷熱源それぞれの温度及び流量を計測する熱源計測部と、熱電変換モジュールの出力値を計測する出力計測部と、制御情報を記憶する記憶部と、発動する毎に所定の損失電力を生じながら気泡を除去するリフレッシュ機構と、記憶部に記憶された制御情報を用いた所定の計算結果に基づいてリフレッシュ機構を発動させるタイミングを決定する計算判定部と、を備え、制御情報として、少なくとも、温度及び流量に対する初期出力値と、運転継続に伴って計測される出力値と、損失電力値と、出力低下に係る情報と、を有した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、出力効率の高い熱電変換システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る熱電変換システム(以下、「本システム」ともいう)の概略構成を示す模式図である。
図2図1の本システムにおいて、熱電変換モジュールに入力する熱の流れを示す断面説明図である。
図3図1の本システムにおける出力電力(以下、「現在出力電力」、又は単に「出力値」ともいう)の時間変動を説明するグラフである。
図4図2の熱電変換モジュールにおける温度差と流量に対する出力値を例示するグラフである。
図5図1の本システムのリフレッシュ動作を示すフローチャートである。
図6図1の本システムにおける2種類の損失電力を説明するグラフである。
図7図1の本システムにおけるリフレッシュのタイミングと出力低下との関係を示すグラフである。
図8図1の本システムにおける合計損失電力とリフレッシュ間隔の関係を示すグラフである。
図9】実施例2に係る熱電変換システム(これも「本システム」という)のリフレッシュ動作を示すフローチャートである。
図10】実施例2の本システムにおいて、流路狭窄による流速調節を示す断面説明図である。
図11図10の本システムにおける熱電変換モジュールと温熱源及び冷熱源流路を示す斜視説明図である。
図12図11の熱電変換モジュールにおける出力の面内分布と流路選択機構を示す平面説明図である。
図13図11の熱電変換モジュールにおいて、温水流路に冷却水を流す断面構造を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例1は、図1図5を用いて説明する。実施例2は、図6図9を用いて説明する。実施例3は、図10を用いて説明する。実施例4は、図11図12を用いて説明する。実施例5は、図13を用いて説明する。これらの実施例1~5は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。
【0013】
本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲等は、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲等を表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲等に限定されない。
【実施例0014】
図1は、本システムの概略構成を示す模式図である。図1に示すように、本システムは、熱電変換モジュール13と、それをコンピュータ制御する制御機構21と、により主要構成される。熱電変換モジュール13は、温熱源11と冷熱源12とに接し、温度差で発電する熱電変換素子を備える。
【0015】
制御機構21は、コンピュータのほか、少なくとも、各種センサ、各種のアクチュエータ等を備え、さらに入出力部、通信部、あるいは表示部等も、あれば便利である。熱電変換モジュール13は、温熱源11と冷熱源12の間に設置され、温熱源11から熱電変換モジュール13を経由して冷熱源12へ流れる熱エネルギの一部を電気エネルギに変換して出力電力が得られる。この熱電変換モジュール13は、熱電変換材料からなる複数の熱電変換素子を電極で接続して組み立てられている。
【0016】
制御機構21は、熱源計測部18と、出力計測部17と、記憶部19と、計算判定部20と、リフレッシュ機構22と、を備える。熱源計測部18は、温熱源11及び冷熱源12の温度と流量を計測する。出力計測部17は、熱電変換モジュール13の出力値を計測する。これらのセンサ出力は、コンピュータ制御に供する制御情報として、記憶部19に記憶される。
【0017】
記憶部19は、温度と流量に対する初期出力値と、計測した出力値と、を記憶する。計算判定部20と、制御機構21の各部が取得したデータ及び、それらに基づいて生成した数値からリフレッシュのタイミングを決定する。リフレッシュ機構22は、計算結果に応じたタイミングで気泡16を除去する電動式の各種のアクチュエータを備える。なお、コンピュータを形成する記憶部19は、CPUにより読み出して実行されるプログラムのほか、読み書き更新自在の制御情報も記憶できる。
【0018】
図2は、図1の本システムにおいて、熱電変換モジュールに入力する熱の流れを示す断面説明図である。図2(a)のように、熱電変換モジュール13が温熱源11及び冷熱源12に接しているそれぞれの伝熱面14の全面が熱源に接していると熱流15が最大に流れる。一方、温熱源11や冷熱源12に温水等の液体流が使われた場合、液体には溶存気体や蒸気圧に応じた水蒸気が含まれているため、流れや振動や温度上昇等のきっかけで気泡16が発生することが多い。
【0019】
この気泡16は徐々に流路の壁面に付着するが、伝熱面に付着することで熱電変換モジュール13への熱流15が減少し、熱電変換出力が低下してしまう。図2(b)は、温熱源11に温水を利用した場合で、温水に含まれる気泡16が熱流15の伝熱面に付着するため熱流15が減少する場合を示す。図2(c)は、冷熱源12に水を利用した場合で、熱流15によって受けた熱エネルギによって発生した気泡16が伝熱面に付着して、熱流15が減少する場合を示す。
【0020】
本システムに類似する従来装置では、流路の途中に気泡を自然に逃すための空気孔を形成しても、気泡は十分に取り除くことは困難であり、液体に残った気泡が壁面に付着することを防ぐことはできなかった。本システムは、伝熱面14にこのような気泡16が付着した場合、リフレッシュ機構22を発動し、気泡16を取り除く(リフレッシュ)ことで、元通りに回復した熱流15を最大限に流すことができる。
【0021】
リフレッシュ機構22として、超音波や真空を利用する脱泡/脱気装置のような除泡装置が適用可能である。ただし、どのようなリフレッシュ機構22であっても、それを常時駆動させると電力消費が増大する。また、間欠動作をする場合でも、除泡のための消費電力(損失電力)に対する出力低下を抑制できた効果の観点で、必要最小限に発動させるようなタイミング、すなわち最適な周期で間欠的に除泡発動することが望ましい。
【0022】
熱源計測部18では、温熱源11または冷熱源12、あるいはその両方が液体流の場合に、その液体、例えば、温水や冷水の温度と流量を測定する。その測定値は後述する記憶部19に記憶されて、かつ、計算判定部20で比較判定する値になる。
【0023】
出力計測部17は、熱電変換モジュール13で発電された出力電力を計測するセンサである。出力電力は本システムから取り出して外部で発電利用されるので、その経路の途中で出力値が監視されるほか、その出力値は制御情報としてコンピュータ制御に供される。
【0024】
記憶部19は、コンピュータプログラムのほか、上述したような、熱源計測部18で測定した熱源の温度及び流量と、出力計測部17で測定した出力電力と、後述する温度及び流量に対する初期出力値と、制御のために予め設定された閾値と、を書き込み更新自在に記憶する。
【0025】
計算判定部20は、熱電計測部18と出力計測部17から得られた計測値から数値計算し、図3に示して後述するような出力低下予測曲線を描くほか、その出力低下予測曲線と、記憶部19で記憶したデータと、を比較してリフレッシュのタイミングを判定する機能である。このような機能を有する本システムにおいて、熱電変換モジュール13をリフレッシュする方法を本方法という。
【0026】
なお、出力低下予測曲線は、本システムの管理者等が画像で常時モニターチェックする必要はなく、タイミングを判定するための出力低下予測曲線を描けるような数値を算出して、閾値等との対応関係を確立できれば足りる。さらに、計算判定部20によるタイミングの判定方法については後述する。
【0027】
本システムの設定、例えば、熱電変換モジュール13や、それと熱源との接触機構等が変わらない限り、熱源の条件が一定、すなわち、熱源を形成する液体流の流量や温度が一定の場合、本システムの出力電力も一定である。すなわち、熱電変換モジュール13を介して温熱源11から冷熱源12へ伝わる熱量が一定であれば、熱電変換モジュール13の出力電力も一定である。つまり、本システムの出力電力は、熱源の温度、温度差及び流量で決まる。
【0028】
図3は、図1の本システムにおける出力電力の時間変動を説明するグラフである。図3に示すように、液体流路の壁面に、気泡16がない時間0の初期状態から徐々に気泡16が付着することで、熱電変換発電の出力電力23は初期出力値24から時間とともに低下していく。なお、図3では出力低下を直線で記載しているが、気泡16や壁面の状態により曲線の場合もある。
【0029】
図3において、出力低下が進行し、ある閾値25に達した時間t1で気泡16を除去するリフレッシュを行うと、気泡16が除去されて出力電力は初期出力値まで戻すことができる。このように、出力電力の低下がある程度進んだ時に、リフレッシュすることで電力低下に伴う損失電力Pbub_30を少なくすることができる。
【0030】
図4は、図2の熱電変換モジュール13における温度差と流量に対する出力値を例示するグラフである。記憶部19では温熱源11と冷熱源12の温度差と流量に対する初期出力値及び閾値を記憶している。図4において、その記憶内容をグラフの上から順に、温度差1~温度差3を例示する。
【0031】
温度差1では、流量に対する初期出力26-1及び閾値26-2となる。温度差2では、流量に対する初期出力27-1及び閾値27-2となる。温度差3では、流量に対する初期出力28-1及び閾値28-2となる。なお、それぞれの閾値を初期出力値のx%等に指定しても良い。
【0032】
一方、熱源計測部18では、指定した時間毎に各熱源の温度と流量を計測する。また、出力計測部17では熱電変換された出力電力を計測している。これらのデータは、記憶部19に記憶される。その記憶データから読み取ったデータを比較照合すると、本システムの初期出力が推定できる。
【0033】
すなわち、本システムにおいて、リフレッシュ直後等で、気泡16が付着する直前に計測した温度差及び流量のデータと、図4に相当するデータと、を記憶部19から読み取って比較照合すると、あるべき初期出力が得られる。このことを図4で説明する。すなわち、計測した温度差が温度差1であり、流量がrであったとき、グラフ上には<黒丸>印の点になり、その時の初期出力はPrで、対応する閾値は<黒三角>印の点のPtが得られる。
【0034】
図4で推定した初期出力Prと、閾値Ptと、を図3に反映させると、図3おける初期出力値24が図4のPrであり、図3の閾値25は図3のPtである。図4では温度差を3つしか記載していないが、実際はこれより多く記憶している。計算判定部20は、記憶部19で継続的に記憶を更新する出力低下のグラフから、リフレッシュのタイミングを判断して、リフレッシュ機構22に実行命令する。
【0035】
計算判定部20には、常時あるいは間欠的に熱源計測部18と出力計測部17から計測値が計算判定部20に入ってくる。この値と記憶部19の閾値と比較してリフレッシュのタイミングを判定する。具体的には、計算判定部20はコンピュータに形成され、時間毎に継続して計測値が図3の出力電力曲線に相当するデータを作成し、そのデータ値を閾値判定したタイミングで、リフレッシュ機構22に該当するアクチュエータに駆動命令する。
【0036】
これにより、出力低下が進みすぎないタイミングでリフレッシュして初期出力値に戻すことができるので、大きな出力低下を防ぐことができるようになる。逆に、あまり出力低下が起きていないにも関わらず、過剰にリフレッシュする無駄も避けられ、リフレッシュに要する電力を必要最小限に削減できる。さらに、このタイミングでリフレッシュしても出力が戻らなかった場合は、出力低下は気泡16ではない別の要因があると判断することができる。
【0037】
実施例1のリフレッシュ機構22は、流路の壁面に付着した気泡16を除去する。その一例として、適宜に発動して流速を変化させる機構がある。通常状態では、ポンプの消費電力を抑えるために流量を抑え、リフレッシュが必要な時だけポンプを動かして流量を増やすことにより、流速を速めて流路の壁面に付着した気泡16を流して除去する。流路内に設置したスクリュー、又はそれと同等機能部を動かすことで、流速を速めて気泡16除去する類例もある。
【0038】
さらに、リフレッシュ機構22の別の例として振動を与える方式がある。超音波振動子で小さい振動を与えても良い。また、それ以外の振動源により打撃のような大きな振動を与えても良い。これらの場合は、気泡16を除去したい場所に効率よく振動が伝わる位置に、リフレッシュ機構22を設置する。さらにリフレッシュ機構22の別の例として、流路の内面に接触するように設置したブラシ等の部材を移動させる消泡手段でも良い。
【0039】
次に、リフレッシュ動作の具体的な手順を説明する。図5は、図1の本システムのリフレッシュ動作を示すフローチャートである。最初に本システムに温熱源11や冷熱源12に温水や冷却水を流すことで、熱電変換モジュール13からの発電が始まる。
【0040】
制御機構21は、記憶部19に記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、熱源計測部18と、出力計測部17と、計算判定部20と、を形成する。制御機構21は、少なくとも温熱源11と冷熱源12の何れかを構成する液体流に生じた気泡16による出力低下Pbub_30に対応する。
【0041】
その出力低下Pbub_30を抑制するため、リフレッシュ機構22を発動させて気泡16を除去させる。ただし、リフレッシュ機構22が発動する毎に所定の損失電力Pref_32値を生じるので、その損失電力値は、出力低下Pbub_30に対する抑制量よりも、少なくなるように制限されなければ、発電効率の観点から逆効果となる。
【0042】
図5に示すように、その熱源計測部18は、温熱源11及び冷熱源12それぞれの温度及び流量を計測する(S10)。また、出力計測部17は、熱電変換モジュール13の出力値を計測する(S10)。つまり、熱源計測部18では、それぞれ温水や冷却水の流量と温度を測定する。また、出力計測部17は、熱電変換モジュール13で発電された現在出力値を監視する(S10)。
【0043】
次に、計算判定部20でそれらの値と記憶部19にある同じ流量と温度の差における泡の無い状態の初期出力値と比較する(S20)。気泡の無い状態の初期出力値より減少していなければ(S20でNo)、S10へ戻って再度測定することを繰り返す。一方、初期出力値より減少していれば(S20でYes)、現在出力値を継続的に記憶し(S30)、図3に示す出力低下曲線のデータが得られるように準備しておく。
【0044】
さらに、計算判定部20では、図3の出力低下予測曲線を計算し(S30)、リフレッシュ機構22を発動するための閾値からリフレッシュするタイミングを算出する(S40)。次に、計算判定部20では、今がリフレッシュするタイミングかどうか判定し(S50)、まだ閾値になりそうでない場合(S50でNo)は、S10へ戻って再度測定することを繰り返す。
【0045】
一方、待たずにリフレッシュすべきと、計算判定部20が判定した場合(S50でYes)には、リフレッシュ機構22がリフレッシュを行い(S60)、気泡16を除去する。このような手順で設定された、適切な周期によるリフレッシュ動作を、間欠的に実行することによって、リフレッシュ機構22を常時発動することによる無駄な電力損失を抑制できる。
【0046】
また、変形例として、少なくともS20とS50との何れかに示した判定を省略しても良い。その変形例であっても、予め定められた最適なタイミングの一定周期で、リフレッシュ機構22を必要最小限の発動させることにより、常時発動の無駄な電力損失を抑制できる。
【0047】
なお、熱電変換モジュール13が真空封止されておらず、熱電変換モジュール13の出力が温度や湿度等の外気雰囲気に影響を受け易い場合は、外気雰囲気変動も含めた熱電変換モジュール13の出力電力も記憶部19に記憶し、タイミングの算出に適用すると、より高精度に出力効率を向上させられる。
【0048】
<効果>
実施例1の本システムは、熱源計測部18、出力計測部17、記憶部19、計算判定部20、及びリフレッシュ機構22を有する制御機構21と、熱源の流路に配設された熱電変換モジュール13と、を備えて構成される。これを、本方法の手順によりリフレッシュタイミングを計算して実行する。
【0049】
このような本システムや本方法によれば、出力低下が閾値に到達した場合にのみ、リフレッシュ機構22を発動して初期出力値に戻すことができるため、気泡16付着による出力低下を最小限に押さえることができる。その結果、出力効率を高められる。
【実施例0050】
図6図9を用いて実施例2を説明する。実施例1に記載したように、時間経過により伝熱面に気泡16付着がない場合は、温熱源11と冷熱源12の流量と温度が変化しなければ熱電変換モジュール13の発電の出力値は初期出力値のまま減少しないが、気泡16が付着すると出力29は時間とともに減少していく。
【0051】
図6は、図1の本システムにおける2種類の損失電力を説明するグラフである。図6(a)に示すように、気泡16付着がない時間0から時間t1までの間に発生した気泡16付着による損失電力Pbub_30も制御機構21に把握される。また、時間とともに低下する出力値から、機械学習等で予測できる出力低下を出力低下予測曲線31とする。
【0052】
一方、リフレッシュ機構22を発動させるためにも電力が必要である。これを図6(b)のように発動期間をt2とし、使用する電力、すなわちリフレッシュ機構22の発動による損失電力Pref_32が規定される。実施例2の本方法では、この2種類の損失電力Pbub+Prefの合計値を最小に抑制するように制御する。
【0053】
図7は、図1の本システムにおけるリフレッシュのタイミングと出力低下Pbub_30との関係を示すグラフである。計測している出力値29は時間とともに低下するが、t1、t2、・・・等のタイミングでリフレッシュすることにより、初期出力値24に戻る。
【0054】
図7(a)は気泡16付着による電力損失が大きくなる前に速めのタイミングでリフレッシュするため、Pbub_30の合計も大きくない。このとき、リフレッシュの回数は多い。リフレッシュ間隔を図7の(b)や(c)のように長くし、リフレッシュの回数を減らすに従い、Pbub_30合計は増大する。
【0055】
Pbub_30は出力低下予測曲線31とリフレッシュの間隔から計算できる。一方、リフレッシュするために使用する損失電力Pref_32はリフレッシュ回数が増えると増大する。
【0056】
図7(c)のように、リフレッシュの周期が長過ぎると、熱電変換モジュール13の気泡16淀みが解消されない時間が長引くので、気泡16付着による出力低下Pbub_30が増大して出力低下する(S20)。逆に図7(a)のように、リフレッシュの周期が短過ぎると、図6(b)に示すリフレッシュ機構発動による損失電力Pref_32を浪費して結果的に出力が低下する。
【0057】
したがって、制御機構21は、損失電力Pref_32値と出力低下Pbub_30の合計を最小に制御する。換言すると、制御機構21は、最小限の損失電力Pref_32値で、出力低下Pbub_30の抑制量を最大限にするように発動の周期を設定する必要がある。本方法は、このような計算により、効率良いリフレッシュの周期を模索して実行する。
【0058】
そのため、制御機構21は、計算判定部20に制御情報を用いて所定の計算させた結果に基づいて、リフレッシュ機構を発動させるタイミングを決定する。その計算には記憶部19に記憶された制御情報を用いる。その制御情報には、少なくとも、温度及び流量に対する初期出力値と、運転継続に伴って計測される出力値と、損失電力Pref_32値と、出力低下Pbub_30に係る情報と、を用いることが好ましい。
【0059】
計算判定部20は、図8に示す合計損失電力Pref_32(Pbub+Pref)の最低値が得られるように演算処理し、リフレッシュ発動の時間間隔(周期t)を決定する(S40)。リフレッシュ機構22は、計算判定部20の計算結果に基づく周期で気泡16除去の動作を繰り返す(S50,S60)。
【0060】
本方法によれば、温熱源11あるいは冷熱源12が液体流を利用した熱電変換モジュール13において、流路に付着した気泡16に対し、泡を取り除くタイミングを最適化することで、最大の出力効率が得られる。
【0061】
図8は、図1の本システムにおける合計損失電力とリフレッシュ間隔の関係を示すグラフである。図8に示すように、損失Pbub+Prefの合計を最小値とするような、リフレッシュの時間間隔が見出せる。図8ではt’の時間間隔でリフレッシュを行うと損失が最小になる例である。
【0062】
なお、図8を始めとする各グラフは、制御機構21のコンピュータで算出されたデータをプロットしたものとみなせる。ただし、これらは説明の便宜上の表示に過ぎず、本システムの実際の動作には不要である。
【0063】
このような計算と判定を、何度もリフレッシュをして時間が経過した後に行うのではなく、初期の出力低下から予測した出力低下予測曲線を使って行うのが、実施例2の方法である。温度や流量が変動しても、その都度予測曲線を修正することにより、それに対応する損失電力Pref_32の最小値を再計算し、その都度もっともよいタイミングでリフレッシュすることができる。
【0064】
次に、実施例2に係る本システムのリフレッシュ動作を図9のフローチャートで説明する。図9に示すように、最初に記憶部19には温度と流量に対する初期出力値とリフレッシュ機構発動に必要な損失電力Pref_32を記憶しておく(S9)。
【0065】
次に本システムに温熱源11や冷熱源12に温水や冷却水を流すことで、熱電変換モジュール13からの発電が始まるので、熱源計測部18では、それぞれ温水や冷却水の流量と温度を測定し、出力計測部17では、そのときの熱電変換モジュール13からの発電の出力値を監視する(S10)。
【0066】
次に、計算判定部20は、現在測定値と記憶部19にある同じ流量と温度の差における初期出力値と比較する(S20)。気泡の無い状態の初期出力値より減少していなければ(S20でNo)、後に再度測定することを繰り返す。一方、初期出力値より減少していれば(S20でYes)、初期出力値と現在出力値から出力低下予測曲線を算出し、それを記憶する(S30)。
【0067】
次に、計算判定部20で、出力低下予測曲線を用いた時間当たりの出力低下Pbub_30とリフレッシュ機構発動のPref_32の合計値が最小となるリフレッシュ機構発動タイミングを算出する(S41)。
【0068】
その後、計算判定部20では、今がリフレッシュするタイミングかどうか判定し(S50)、未到達の場合(S50でNo)は、また後に再度測定することを繰り返す。一方、今リフレッシュすべきと判定した場合(S50でYes)には、リフレッシュ機構22でリフレッシュを行い(S60)、気泡16を除去する。
【0069】
<効果>
実施例2の本システムや本方法では、図6に示すように、リフレッシュのタイミングだけでなく、出力低下予測曲線とリフレッシュ機構22の稼働による損失電力Pref_32を考慮して過剰リフレッシュを避けるように制御する。したがって、本システムや本方法によれば、最適なタイミングで、必要最小限にリフレッシュのタイミングを指示するため、損失電力Pref_32を小さく抑えることができる。
【0070】
さらに、本システムや本方法によれば、リフレッシュの都度に、つぎのリフレッシュタイミングを再計算するため、流量や温度は変動しても対応することが可能である。その結果、出力効率を高められる。
【実施例0071】
図10を用いて実施例3を説明する。図10は、実施例2の本システムにおいて、流路狭窄による流速調節を示す断面説明図である。流路の入り口に流路を狭くして伝熱面に流れを集中させる調節器を設置し、伝熱面周辺の流速を速めることで、効率よく伝熱面に付着した気泡16を除去するリフレッシュ機構22の構成である。
【0072】
実施例1でも説明したように、図10(a)のように伝熱面14に付着した気泡16が熱電変換モジュール13への熱流15を妨げ、熱電変換出力が低下してしまう。このため、主に伝熱面の気泡16を除去することができればよい。
【0073】
図10(b)は、温水33の入り口に流れ調節器34を設置したものである。実施例3の本システムには、入っている液体の流量が変わらなければ、流路を狭めて流速を速めるという作用効果を適用する。類似現象としては、配管よりも内径を狭めた噴出ノズルにより、噴出速度を高めて噴射できる現象であり、さらに換言すれば、ホースの先端を狭く摘まむことで、水を勢い良く噴射させる現象と同様である。
【0074】
このように、速くなった流れを伝熱面に集中して流すことにより伝熱面に流速が速い部分35ができ、伝熱面の気泡16が除去できる。通常は熱源の熱容量を大きくするため、ある程度の流路の高さを持たせているが、流路を狭窄化することで伝熱面の流速を速めることができる調節器を適用すれば、伝熱面の気泡16を集中的に除去するようにリフレッシュできる。
【0075】
<効果>
実施例3の本システムや本方法によれば、熱源となる流体の流量を大きく変化させることなく、限られた流量であっても、熱電変換出力に係る流路の伝熱面に付着した気泡16を集中的に除去することができる。その結果、出力効率を高められる。
【実施例0076】
実施例4を図11及び図12を用いて説明する。図11は、図10の本システムにおける熱電変換モジュール13と温熱源11及び冷熱源流路を示す斜視説明図である。図11に示すように、熱電変換モジュール13は複数の熱電変換素子36を電気的に接続して使われる。
【0077】
このとき、選択した個別の熱電変換素子36に、出力モニタ用として端子37を接続することにより、その部分で発電している出力を監視することができる。この端子37を面内に複数設置することで、面内の出力分布を計測することができる。
【0078】
図12は、図11の熱電変換モジュール13における出力の面内分布と流路選択機構を示す平面説明図である。図12(a)は、ほぼ同色で均一の出力が得られており、気泡16付着がない初期出力値の状態である。図12(b)は、出力が低下している部分37が観測された場合を示す。
【0079】
このように、熱電変換モジュール13は、流路に流れる流体の流速の不均一性により、気泡16が付着しやすい部分が発生することも多い。気泡16付着のエリアは出力分布から判定できる。このような場合、熱電変換モジュール13において、気泡16付着した部分だけの流速を速めることで、効率よく気泡16除去が可能になる。
【0080】
図12(c)のように、実施例4の本システムは、シャッターのような流路選択機構38を設置することで、流れる位置と流速を目的の場所に調整できる。本システムは、気泡16が付着した場所に流れを集中させて気泡除去することにより、初期出力値に戻すことができる。これにより、本システムは、熱源となる流体の温度や流速が変化しても、それに応じて流路選択機構でその都度流れを変えることができる。
【0081】
<効果>
実施例4の本システムや本方法によれば、面内分布から気泡16付着の場所を特定でき、熱源となる流体の流量を大きく変化させることなく、限られた流量であっても、その場所の流速を速めることで、伝熱面14に付着した気泡16を集中的に除去することができる。その結果、出力効率を高められる。
【実施例0082】
実施例5を図13で説明する。図13は、図11の熱電変換モジュールにおいて、温水流路に冷却水を流す断面構造を示す断面説明図である。図13に示す本システムは、液体の温度を下げることで、蒸気圧に応じて気体は液体に溶ける現象を利用して気泡16を除去するリフレッシュ機構22の方式に関するものである。
【0083】
本システムは、温水の流れをバルブ38で一時的に停止し、冷熱源12の冷水を取り込むバルブ39を開けることで、温度の低い冷水が温熱源11流路に流れ込み温度が低下して気泡16が再溶解し、流路の側面に付着していた気泡16を減少させる。
【0084】
実施例5の本システムは、冷水を取り込む流路は、熱電変換モジュール13から離れた位置に形成されていても良く、流路狭窄化構造や流路選択機構を形成できないような小さい流路であっても容易に実現できる。
【0085】
<効果>
実施例5の本システムや本方法によれば、流路狭窄化構造や流路選択機構を形成できないような小さい流路であっても、流れを変えるだけで付着した気泡16を除去することができる。その結果、出力効率を高められる。
【0086】
[補足]
実施例において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit,GPU:Graphics
Processing Uni)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。
【0087】
同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application
Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0088】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0089】
以下、本発明の実施形態に係る熱電変換システム(本システム)は、つぎのように総括できる。
[1]本システムは、熱源の熱エネルギを電気エネルギに変換するシステムである。熱源には、温熱源11と冷熱源12の区別があり、それらの一方、あるいは両方の熱源が液体流である。
【0090】
本システムは、熱電変換モジュール13と、それをコンピュータ制御する制御機構21と、より主要構成される。熱電変換モジュール13は、温熱源11と冷熱源12とに接し、温度差で発電する熱電変換素子を備える。
【0091】
制御機構21は、熱源計測部18と、出力計測部17と、記憶部19と、計算判定部20と、リフレッシュ機構22と、を備える。熱源計測部18は、温熱源11及び冷熱源12の温度と流量を計測する(図5のS10)。出力計測部17は、熱電変換モジュール13の出力値を計測する(S10)。
【0092】
記憶部19は、温度と流量に対する気泡の無い状態の初期出力値と計測した出力値を記憶する(図9のS9)。この記憶部19は、制御情報として、少なくとも、温度及び流量に対する初期出力値と、運転継続に伴って計測される出力値と、損失電力値と、出力低下に係る情報と、を有する。制御機構21の各部が取得したデータ及び、それらに基づいて生成した数値から、計算判定部20がリフレッシュのタイミングを決定する(S50)。リフレッシュ機構22は、計算結果に応じたタイミングで気泡16を除去する(S60)。
【0093】
このような本システムによれば、リフレッシュ機構22は、各種センサで取得したデータを計算判定部20で計算した結果に応じたタイミングで、リフレッシュ機構22に気泡16を除去させる(S60)。その結果、気泡16付着による出力低下を最小限に押さえることができるので、出力効率を高められる。
【0094】
[2]上記[1]のリフレッシュ機構22において、気泡16除去するタイミングは、記憶部19に記憶されている、つぎの情報を用いて演算処理することにより決定される。すなわち、記憶部19には、温度と流量に対する気泡の無い状態の初期出力値と、リフレッシュ機構発動に使う損失電力Pref_32値(図6(b))と、リフレッシュしないことによる出力低下予測曲線(図3図6(a))を作成し得る出力低下特性情報と、を記憶する(S30)。
【0095】
一方、計算判定部20では、記憶部19から読み出した出力低下特性情報から、出力低下予測曲線を描けるように数値計算し、これも再び記憶部19に記憶しておく(S30)。さらに、計算判定部20では、記憶部19から読み出した出力低下予測曲線を用いた時間当たりの出力低下Pbub_30(図3図6(a))も再び記憶部19に記憶しておく(S20)。
【0096】
さらに、計算判定部20では、記憶部19から読み出したリフレッシュ機構22を発動するときに使う損失電力Pref_32(図6(b))と、時間当たりの出力低下Pbub_30と、の合計値が最小となるリフレッシュ機構22の発動時間(図8)を算出する(S40)。このようにして、本システムにおいて、そのリフレッシュ機構22に気泡除去させる必要最小限の最適なタイミングが決定される(S50)。その結果、本システムによれば、熱電変換の効率を向上させられる。
【0097】
[3]上記[1]のリフレッシュ機構22は、熱電変換モジュール13の伝熱面14近傍の流路において、流路を狭窄化することにより、流速を増加させた噴流の勢いで消泡すると良い。例えば、図12の(c)に示すように、速度の小さい流体中に、より高速の流体がノズル又はそれに相当するバルブ38の小穴から噴出されて形成される噴流ジェットは、伝熱面14近傍の流路に淀む気泡16を消散させる作用効果がある。
【0098】
[4]上記[1]のリフレッシュ機構22は、例えば、図12の(b)に示すように、熱電変換モジュール13の面内出力分布に基づいて、図12の(c)に示すように、流路内の流れに不均衡を生成するような流路狭窄化の制御を行うと良い。これによれば、熱源となる流体の流量を大きく変化させることなく、限られた流量であっても、熱電変換出力に係る流路の伝熱面に付着した気泡16を集中的に除去することができる。その結果、出力効率を高められる。
【0099】
[5]上記[1]において、温熱源11のリフレッシュ機構22は、図13に示すように、冷熱源12のバルブ39を開けて冷水を取り込むことで、その冷熱源12の冷熱により気泡16を再溶解させても良い。
【0100】
このように冷水を取り込む流路は、熱電変換モジュール13から離れた位置に形成されていても良い。その場合は、流路狭窄化構造や流路選択機構を形成できないような小さい流路であっても、冷熱源12の冷熱による気泡16の再溶解を容易に実現できる。
【0101】
[6]上記[1]の本システムにおいて、制御機構21は、計算判定部20が決定したタイミングでリフレッシュ機構22を発動させても出力低下が回復しない場合、泡以外の原因による故障が発生したものと判定する判定部を有すると良い。このような本システムによれば、コンピュータや通信手段の併用と相まって、遠隔無人による長期間運転継続等の過酷な環境条件でも、故障の記録を保存できるほか、警報を発報するようにして、メンテナンス性を高めて現実適応を良好にすることができる。
【符号の説明】
【0102】
11 温熱源、12 温熱源、13 熱電変換モジュール、14 伝熱面、15 熱流、16 気泡、17 出力計測部、18 熱源計測部、19 記憶部 計算判定部、21 制御機構、22 リフレッシュ機構、23 出力電力曲線、24 初期出力値、25 閾値、26-1 温度差1の初期出力値、26-2 温度差1の閾値、27-1 温度差2の初期出力値、27-2 温度差2の閾値、28-1 温度差3の初期出力値、28-2 温度差4の閾値、29 出力値、30 気泡付着による出力低下Pbub、31 出力低下予測曲線、32 リフレッシュ機構発動による損失電力Pref_32Pref、33 温水、34 調節器、35 流速が速い部分、36 熱電変換素子、37 出力低下エリア、38 第1バルブ、39 第2バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13