(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174878
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】型枠部材、構造部材及び型枠造形装置
(51)【国際特許分類】
B28B 7/34 20060101AFI20221117BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20221117BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B28B7/34 D
B28B1/30
E04G21/02 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080889
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 楓子
(72)【発明者】
【氏名】井戸硲 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 智仁
【テーマコード(参考)】
2E172
4G052
4G053
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DB03
2E172DE04
2E172DE06
4G052DA01
4G052DA08
4G052DB12
4G052DC06
4G053AA14
4G053AA17
4G053CA15
(57)【要約】
【課題】火災時に型枠部材内の内部構造部の中に生じた水蒸気を型枠部材の外部に放出することができる型枠部材、構造部材及び型枠造形装置を提供する。
【解決手段】型枠部材10は、モルタル12Aを積層して形成された型枠部12と、モルタル12Aの積層間に形成された密着不良部14と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性材料を積層して形成された型枠部と、
前記硬化性材料の積層間に形成された密着不良部と、
を備える型枠部材。
【請求項2】
前記密着不良部は、前記硬化性材料の積層間に硬化促進剤を塗布して形成される請求項1に記載の型枠部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の型枠部材と、
前記型枠部材の内部に充填されたコンクリート部と、
を備える構造部材。
【請求項4】
硬化性材料を吐出するノズル部と、
前記ノズル部を上下横方向へ移動させ、前記硬化性材料を積層させて型枠部材を形成する移動形成部と、
前記硬化性材料が積層された層間の密着を不良化させる塗布剤を塗布する塗布部と、
を備える型枠造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠部材、構造部材及び型枠造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、構造物の外形を構成する外形成体と、外形成体の内部にモルタルを注入して形成される内構造体と、を備えた構造物が開示されている。外形成体は、3Dプリンターのノズルからモルタルを吐出させながら経路に沿って移動させて形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構造物では、内構造体が外形成体によって囲まれているため、構造物の火災時に内構造体内の水分、すなわち水蒸気が外形成体から外部に放出されにくい。このため、内構造体の水蒸気圧が上昇し、内構造体の破裂などが懸念される。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、火災時に型枠部材内の内部構造部の中に生じた水蒸気を型枠部材の外部に放出することができる型枠部材、構造部材及び型枠造形装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に記載の型枠部材は、硬化性材料を積層して形成された型枠部と、前記硬化性材料の積層間に形成された密着不良部と、を備えている。
【0007】
第1態様に記載の型枠部材によれば、硬化性材料を積層して形成された型枠部を備えており、硬化性材料が積層された積層間には、密着不良部が形成されている。
この型枠部材に内部にコンクリートを打設して、型枠部とコンクリートが一体となった構造部材を形成することができる。また、火災時にコンクリートの内部に水蒸気を生じても、型枠部の密着不良部の空隙から水蒸気が逃げるので、コンクリートの破裂が抑制される。
【0008】
第2態様に記載の型枠部材は、第1態様に記載の型枠部材において、前記密着不良部は、前記硬化性材料の積層間に硬化促進剤を塗布して形成される。
【0009】
第2態様に記載の型枠部材によれば、先に積層した硬化性材料の層の表面に硬化促進剤を塗布することで、次の硬化性材料が積層されるまで、先に積層した硬化性材料の層の表面が硬化する。このため、積層された層間に密着不良を生じ密着不良部が形成される。
【0010】
第3態様に記載の構造部材は、第1態様又は第2態様に記載の型枠部材と、前記型枠部材の内部に充填されたコンクリート部と、を備えている。
【0011】
第3態様に記載の構造部材によれば、型枠部材の内部に打設されたコンクリート部を備え、型枠部とコンクリートが一体となっている。
火災時にコンクリート部の内部に水蒸気を生じても、型枠部の密着不良部の空隙から水蒸気が逃げるので、コンクリート部の破裂が抑制される。
【0012】
第4態様に記載の型枠造形装置は、硬化性材料を吐出するノズル部と、前記ノズル部を上下横方向へ移動させ、前記硬化性材料を積層させて型枠部材を形成する移動形成部と、前記硬化性材料が積層された層間の密着を不良化させる塗布剤を塗布する塗布部と、を備えている。
【0013】
第4態様に記載の型枠造形装置によれば、ノズル部から硬化性材料を吐出しながら、移動形成部によりノズル部を上下横方向へ移動させることで、硬化性材料を積層させて型枠部材を形成する。
また、塗布部により、硬化性材料が積層された層間の密着を不良化させる塗布剤が塗布される。これにより、既存の3Dプリンターで、密着不良部を備えた型枠部材を製造できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、火災時に型枠部材内の内部構造部の中に生じた水蒸気を型枠部材の外部に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の型枠部材を備えた柱を示す立面図である。
【
図2】第1実施形態の型枠部材を備えた柱を示す立断面図である。
【
図4】第1実施形態の型枠部材の一部を拡大した状態で示す側面図である。
【
図5】第1実施形態の型枠部材を形成する型枠造形装置を示す正面図である。
【
図6】型枠造形装置のノズル部及び塗布部を示す拡大構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。なお、各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向に沿う方向である。各図面において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0017】
<柱>
図1~
図3にしたがって、第1実施形態の型枠部材10を備えた柱30について説明する。柱30は、構造部材の一例である。本実施形態では、柱30は、鉄筋コンクリート(RC)柱である。
図1~
図3に示されるように、柱30は、鉛直方向に沿って配置された筒状の型枠部材10と、型枠部材10の内部に配筋された鉄筋32と、型枠部材10の内部に充填されたコンクリート部34と、を備えている。
【0018】
鉄筋32は、鉛直方向に沿って配置された複数の主筋36と、複数の主筋36の外側を囲むと共に鉛直方向に間隔をおいて配置された複数の帯筋38と、を備えている。鉄筋32は、コンクリート部34の内部に埋め込まれている。
【0019】
コンクリート部34は、型枠部材10の内部に鉄筋32を配筋した状態で、型枠部材10の内部にコンクリートを打設して硬化させたものである。型枠部材10は、コンクリート部34の周りを囲む捨型枠とされている。
【0020】
<型枠部材>
図1及び
図2に示されるように、型枠部材10は、モルタル12Aを積層して形成された型枠部12と、モルタル12Aが積層間に形成された密着不良部14と、を備えている(
図4参照)。
【0021】
(型枠部)
型枠部12は、モルタル12Aを鉛直方向の下側から上側に向かって積層することによって形成されている。本実施形態では、型枠部12は、筒状に形成されている。モルタル12Aは、硬化性材料の一例である。モルタル12Aとしては、普通強度モルタル又は繊維補強モルタルなどが用いられる。例えば、モルタル12Aは、普通強度モルタルとされている。モルタル12Aは、高い耐火性能を有している。型枠部12は、後述する型枠造形装置100のノズル部102からペースト状のモルタル12Aを吐出することによって、長尺状のモルタル12Aを鉛直方向に積層している。
【0022】
(密着不良部)
図1、
図2及び
図4にされるように、密着不良部14は、モルタル12Aの積層間に形成されることで、モルタル12Aの上層と下層の密着を不良化させる(すなわち、密着不良を生じさせる)機能を有する。本実施形態では、密着不良部14は、モルタル12Aの積層間に硬化促進剤を塗布して形成されている。硬化促進剤としては、例えば、亜硝酸塩、ロダン酸塩、又は硫酸塩などが用いられる。
【0023】
先に積層したモルタル12Aの表面に硬化促進剤が塗布されることで、硬化促進剤が塗布されたモルタル12Aの硬化が促進される。このため、次のモルタル12Aが積層されるまでに、硬化促進剤が塗布されたモルタル12Aの表面(例えば、モルタル12Aの上部側の少なくとも一部)が硬化する。そして、先に積層したモルタル12A及び硬化促進剤の上側に、次のモルタル12Aが積層されると、次のモルタル12Aが下層のモルタル12Aと密着しにくくなる。これにより、モルタル12Aの積層間に、上層と下層の密着を不良化させる密着不良部14が形成されることになる。
【0024】
本実施形態では、後述する型枠造形装置100の塗布部108から液状の硬化促進剤を吐出又は噴射することによって、先に積層したモルタル12Aの表面に硬化促進剤が塗布される。その後、先に積層したモルタル12A及び硬化促進剤の上側に、型枠造形装置100のノズル部102からペースト状のモルタル12Aを吐出することによって、上層のモルタル12Aが積層される。その際、硬化促進剤により、下層のモルタル12Aの上部側の少なくとも一部が硬化していることで、モルタル12Aの積層間に密着不良部14が形成される。
【0025】
<型枠造形装置>
次に、
図5及び
図6にしたがって、型枠部材10を形成するための型枠造形装置100について説明する。
【0026】
図5及び
図6に示されるように、型枠造形装置100は、ペースト状のモルタル12Aを吐出するノズル部102と、ノズル部102を支持する支持部104を上下横方向へ移動させる移動形成部106と、モルタル12Aが積層された層間の密着を不良化させる硬化促進剤を塗布する塗布部108と、を備えている。硬化促進剤は、塗布剤の一例である。型枠造形装置100には、例えば、3Dプリンターの技術の一部が活用されている。ここで、3Dプリンターとは、3次元的なデジタル・モデルをもとにして、物体をつくりだすことができる装置のことである。本実施形態では、型枠造形装置100は、形状を示すデジタルデータに基づき、ノズル部102からモルタル12Aを吐出及び積層して型枠部材10を形成することが可能である。
【0027】
ノズル部102は、支持部104から下方側に延びたブロック状の突出部112の先端に設けられている。図示を省略するが、突出部112の内部には、ポンプ及び移送管等によりペースト状のモルタル12Aが供給されるようになっている。突出部112に供給されたペースト状のモルタル12Aは、ノズル部102から吐出される。
【0028】
移動形成部106は、複数のアーム114と、隣り合うアーム114の間に配置されると共に隣り合うアーム114を相対的に回転させる複数の回転部116と、を備えている。移動形成部106の全体構成は図示を省略するが、アーム114及び回転部116が複数設けられていることで、移動形成部106の先端に取り付けられた支持部104を上下横方向に移動させる。移動形成部106は、支持部104をX方向、Y方向及びZ方向の任意の位置に移動させることが可能である。型枠造形装置100では、設計時の型枠部材10の形状を示すデジタルデータに基づき、移動形成部106により、支持部104に取り付けられた突出部112のノズル部102を上下横方向へ移動させる。これにより、長尺状のモルタル12Aの層を形成し、モルタル12Aを積層させることで、筒状の型枠部12を形成する。
【0029】
塗布部108は、支持部104から下方側に延びたブロック状の突出部118の先端に設けられている。突出部118は、支持部104の下部における突出部112と異なる位置に設けられている。塗布部108は、支持部104の移動方向(矢印A方向)におけるノズル部102の上流側(すなわち、ノズル部102の移動方向後方側)に配置されている。図示を省略するが、突出部118の内部には、ポンプ及び移送管等により液状の硬化促進剤が供給されるようになっている。突出部118に供給された液状の硬化促進剤は、塗布部108から吐出又は噴射されることで、モルタル12Aの表面(本実施形態では、上面)に塗布される。
【0030】
塗布部108は、支持部104の移動方向(矢印A方向)におけるノズル部102の上流側(すなわち、ノズル部102の移動方向後方側)に配置されているため、ノズル部102からペースト状のモルタル12Aが吐出された直後に、そのモルタル12Aの上面に塗布部108から硬化促進剤が塗布される。モルタル12Aの上面に塗布された硬化促進剤により、モルタル12Aの硬化が促進される。型枠造形装置100では、移動形成部106によるノズル部102及び塗布部108の移動速度は、先に積層されたモルタル12Aの上面に硬化促進剤が塗布された後、次のモルタル12Aが吐出されるまでに、先に積層されたモルタル12Aの上部側の少なくとも一部が硬化する時間が確保されるように調整することが好ましい。そして、硬化促進剤により、先に積層されたモルタル12Aの上部側の少なくとも一部が硬化した後、次のモルタル12Aが吐出されることで、モルタル12Aの積層間に密着不良部14が形成される。
【0031】
<柱の施工工程>
次に、柱30の施工工程について説明する。
【0032】
図5及び
図6に示されるように、まず、型枠造形装置100でノズル部102からペースト状のモルタル12Aを吐出する。これと共に、型枠造形装置100で塗布部108から液状の硬化促進剤を吐出又は噴射することで、モルタル12Aの上面に硬化促進剤を塗布する。そして、ノズル部102を移動形成部106により上下横方向に移動させることにより、モルタル12Aを積層させて筒状の型枠部12を形成する。
【0033】
より具体的には、ノズル部102及び塗布部108が矢印A方向に移動することで、ノズル部102からペースト状のモルタル12Aを吐出した直後に、塗布部108から硬化促進剤が吐出又は噴射され、モルタル12Aの上面に硬化促進剤が塗布される。これにより、硬化促進剤が塗布されたモルタル12Aの上部側の少なくとも一部が硬化し、その後にモルタル12A及び硬化促進剤の上側に次のモルタル12Aが吐出される。このため、硬化促進剤により、モルタル12Aの積層間に、上層と下層の密着を不良化させる密着不良部14が形成される。このような工程により、型枠部材10が形成される。
【0034】
型枠部材10の硬化後に、型枠部材10の内部に鉄筋32を配筋する。型枠部材10は、側面から鉄筋32までの最小距離であるかぶりも兼ねる。
【0035】
次いで、鉄筋32を配筋した型枠部材10の内部にコンクリート(例えば、超高強度コンクリート)を打設してコンクリート部34とすることで、柱30を形成する。コンクリート部34は、帯筋38により拘束される。
【0036】
柱30を備えた建物の火災時には、型枠部材10が耐火被覆となる。また、型枠部材10では、積層されたモルタル12Aの層の界面の強度は、密着不良部14によりモルタル12Aの層間が一体化するのが抑制されているため、一般的なコンクリートの引張強度よりも小さい。このため、密着不良部14により、型枠部材10の内部のコンクリート部34内の水分(すなわち、水蒸気)の蒸気圧を低減させることが可能である。
【0037】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
図1及び
図2等に示されるように、型枠部材10は、モルタル12Aを積層して形成された型枠部12を備えており、モルタル12Aが積層された積層間には、密着不良部14が形成されている。型枠部材10の内部にコンクリートを打設してコンクリート部34とすることで、型枠部12とコンクリート部34が一体となった柱30を形成することができる。また、火災時にコンクリート部34の内部に水蒸気を生じても、型枠部12の密着不良部14の空隙から水蒸気を型枠部材10の外部に放出することができる。このため、コンクリート部34の破裂を抑制することができる。
【0039】
また、型枠部材10では、密着不良部14は、モルタル12Aの積層間に硬化促進剤を塗布して形成されている。すなわち、型枠部材10では、先に積層したモルタル12Aの層の表面に硬化促進剤を塗布することで、次のモルタル12Aが積層されるまで、先に積層したモルタル12Aの層の表面が硬化する。このため、積層されたモルタル12Aの層間に密着不良を生じ密着不良部14が形成される。
【0040】
また、
図1及び
図2に示されるように、柱30は、型枠部材10の内部に打設されたコンクリート部34を備え、型枠部12とコンクリート部34が一体となっている。このような柱30では、火災時にコンクリート部34の内部に水蒸気を生じても、型枠部12の密着不良部14の空隙から水蒸気が逃げるので、コンクリート部34の破裂が抑制される。
【0041】
例えば、超高強度コンクリートの普及により、超高強度コンクリートを用いた細径の鉄筋コンクリート(RC)柱が開発されているが、超高強度コンクリート単体では、火災時にコンクリートが破裂してコンクリートと鉄筋とが剥離する場合がある。このため、火災時にコンクリートの破裂よりコンクリートと鉄筋とが剥離するのを抑制するため、超高強度コンクリートに有機材料からなる繊維を混入することがある。この構成では、火災時に繊維が溶解することで空隙ができ、水蒸気圧の上昇を抑制することでコンクリートが破裂してコンクリートと鉄筋とが剥離するのを抑制している。しかし、この構成では、超高強度コンクリートに繊維を均一に分散させることが難しい。また、超高強度コンクリートに繊維を混入するため、超高強度コンクリートが練りにくくなり、施工性が低下する。さらに、超高強度コンクリートに繊維を混入するため、繊維分のコストが上昇する。
【0042】
これに対して、本実施形態の柱30では、コンクリートに繊維を混入することなく、火災時にコンクリート部34の中の水蒸気を型枠部材10の外部に放出することができる。このため、コンクリートに繊維を分散させる場合と比較して、分散性や施工性の低下、及びコストの上昇を抑制することができる。
【0043】
また、
図5及び
図6に示されるように、型枠造形装置100は、モルタル12Aを吐出するノズル部102と、ノズル部102を上下横方向へ移動させ、モルタル12Aを積層させて型枠部材10を形成する移動形成部106と、を備えている。さらに、型枠造形装置100は、モルタル12Aが積層された層間の密着を不良化させる硬化促進剤を塗布する塗布部108を備えている。
【0044】
型枠造形装置100では、ノズル部102からモルタル12Aを吐出しながら、移動形成部106によりノズル部102を上下横方向へ移動させることで、モルタル12Aを積層させて型枠部材10を形成する。また、塗布部108により、モルタル12Aが積層された層間の密着を不良化させる硬化促進剤が塗布される。これにより、既存の3Dプリンターで、密着不良部14を備えた型枠部材10を製造できる。
【0045】
なお、本実施形態の型枠部材10では、硬化性材料の一例として、モルタル12Aが用いられているが、モルタル12A以外の硬化性材料を用いてもよい。モルタル12A以外の硬化性材料としては、例えば、石膏、又はジオポリマーなどの高い耐火性能を有する材料が用いられる。ここで、ジオポリマーとは、アルミナシリカ粉末とアルカリ溶液の縮重合反応で生じる固化体の総称である。
【0046】
また、本実施形態の型枠部材10では、筒状のモルタル12Aの周方向のほぼ全域に密着不良部14が形成されているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、密着不良部は、硬化性材料の周方向の少なくとも1箇所に形成されている構成でもよい。
【0047】
また、本実施形態の型枠部材10では、積層されたモルタル12Aのすべての層間に密着不良部14が形成されているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、積層された硬化性材料の複数の層間のうちの一部の層間に、密着不良部が形成されている構成でもよい。
【0048】
また、本実施形態の型枠部材10では、密着不良部14は、硬化性材料の積層間に硬化促進剤を塗布して形成されているが、本発明は、これに限定されるものではない。硬化性材料が積層された層間の密着を不良化させる塗布剤を塗布する構成であれば、硬化促進剤以外の他の塗布剤に変更可能である。例えば、硬化性材料の積層された層間に、布状部材又は管状部材などの水蒸気が挿通可能な部材を混入した塗布剤を塗布することで、密着不良部を形成する構成でもよい。
【0049】
また、本実施形態では、型枠部材10を備えた柱30について説明したが、本発明は、柱30に限定されるものではない。本発明は、例えば、型枠部材10を備えた梁など、他の構造部材にも適用することができる。また、型枠部材10は、筒状以外の形成でもよい。
【0050】
また、本実施形態では、型枠造形装置100の各部材の構成は、
図5及び
図6に示す構成に限定されるものではなく、変更可能である。例えば、ノズル部102の形状、塗布部108の形状、支持部104の形状、及び移動形成部106の構成部品の形状などは変更可能である。
【0051】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0052】
10 型枠部材
12 型枠部
12A モルタル
14 密着不良部
30 柱(構造部材)
34 コンクリート部
100 型枠造形装置
102 ノズル部
106 移動形成部
108 塗布部