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特開2022-174879積層構造物及び積層構造物の造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174879
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】積層構造物及び積層構造物の造形装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20221117BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20221117BHJP
   B29C 64/10 20170101ALI20221117BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221117BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221117BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E04G21/02
B29C64/209
B29C64/10
B33Y10/00
B33Y30/00
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080890
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】井戸硲 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 楓子
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 智仁
(72)【発明者】
【氏名】中島 奈央子
【テーマコード(参考)】
2E172
4F213
4G052
【Fターム(参考)】
2E172AA06
2E172DA00
2E172DB01
2E172DC08
4F213AD24
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL62
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】硬化性材料を吐出する方向に対して異なる方向から補強材を積層部分に挿入することなく、積層された硬化性材料の層の界面に生じる層ずれを抑制する積層構造物及び積層構造物の造形装置を提供する。
【解決手段】積層構造物10は、モルタル12Aを積層して形成された積層部12と、積層部12の層間に連続して設けられ、凹凸部が形成された凹凸部材14と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性材料を積層して形成された積層部と、
前記積層部の層間に連続して設けられ、凹凸部が形成された凹凸部材と、
を備える積層構造物。
【請求項2】
前記凹凸部材は、球材が数珠状に連結されることで構成されている請求項1に記載の積層構造物。
【請求項3】
硬化性材料を吐出するノズル部と、
前記ノズル部を上下横移動させ、前記硬化性材料を積層させる移動積層部と、
積層された前記硬化性材料の層間に、凹凸部が形成された凹凸部材を連続して送り出す送出部と、
を備える積層構造物の造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造物及び積層構造物の造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、積層構造物であるフーチングを構築する際に、水硬性混合物であるプリント原料を構築すべき殻壁の輪郭に沿って積層するとともに、各層相互の接合強度を向上させる補強体を各層の界面を横切るように層内に埋入して殻壁部を形成する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-199940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の積層構造物では、水硬性混合物であるプリント原料を吐出する方向に対して異なる方向から補強材を積層部分に挿入しなければならないため、作業が煩雑となる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、硬化性材料を吐出する方向に対して異なる方向から補強材を積層部分に挿入することなく、積層された硬化性材料の層の界面に生じる層ずれを抑制する積層構造物及び積層構造物の造形装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に記載の積層構造物は、硬化性材料を積層して形成された積層部と、前記積層部の層間に連続して設けられ、凹凸部が形成された凹凸部材と、を備えている。
【0007】
第1態様に記載の積層構造物によれば、硬化性材料が積層された積層部の層間には、連続して凹凸部材が配置されている。凹凸部材の凹凸部が積層部の層(すなわち、積層部の下層と上層)の界面に食い込む。これにより、積層部の層の界面に沿って外力が加わったときに、層の界面にずれ変形が生じることが抑制される。
また、凹凸部材は、界面に連続して設けられているので、従来のように、アンカーを所定のピッチで界面に差し込む構成と比較して界面のずれ変形を小さくできる。
さらに、積層構造物を、例えば3Dプリンターで造形する場合、硬化性材料を吐出する方向に沿って、凹凸部材を送り出すことができるため、層の界面に上方からアンカーを差し込む方法と比較して造形作業が楽になる。
【0008】
第2態様に記載の積層構造物は、第1態様に記載の積層構造物において、前記凹凸部材は、球材が数珠状に連結されることで構成されている。
【0009】
第2態様に記載の積層構造物によれば、凹凸部材は、球材を数珠状に連結して構成されているので、曲がりやすい。このため、平面視にて積層部の形状が湾曲していても、凹凸部材を湾曲形状に沿って曲げることができる。
【0010】
第3態様に記載の積層構造物の造形装置は、硬化性材料を吐出するノズル部と、前記ノズル部を上下横移動させ、前記硬化性材料を積層させる移動積層部と、積層された前記硬化性材料の層間に、凹凸部が形成された凹凸部材を連続して送り出す送出部と、を備えている。
【0011】
第3態様に記載の積層構造物の造形装置によれば、ノズル部から硬化性材料を吐出させ、移動積層部によって、ノズル部を上下横移動させることで、硬化性材料を積層して積層部を形成する。また、ノズル部から硬化性材料を吐出させる際に、送出部によって、積層された硬化性材料の層間に、凹凸部が形成された凹凸部材を連続して送り出す。凹凸部材の凹凸部は、積層された硬化性材料の積層部の層(すなわち、積層部の下層と上層)の界面に食い込む。このため、積層部の層の界面に沿って外力が加わったときに、積層部の層の界面にずれ変形が生じることが抑制される。
また、凹凸部材は、積層された硬化性材料の層間に連続して送り出すので、従来のように、アンカーを所定のピッチで界面に差し込む構成と比較して界面のずれ変形を小さくできる。
さらに、積層構造物の造形装置では、硬化性材料を吐出する方向に沿って、凹凸部材を送り出すことができるため、積層部の層の界面に上方からアンカーを差し込む方法と比較して造形作業が楽になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凹凸部材を連続して積層部の界面に設けることで、積層部の層の界面に生じる層ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の積層構造物、及び積層構造物の造形装置を示す正面図である。
図2図1中の2-2線に沿った積層構造物の断面図である。
図3】(A)は、第1実施形態の積層構造物に用いられる凹凸部材を示す正面図であり、(B)は、凹凸部材の長手方向と交差する方向に凹状部に沿って切断した状態を示す断面図である。
図4】積層構造物の造形装置におけるモルタルを吐出するノズル部、及び凹凸部材を送り出す送出部を示す正面図である。
図5】積層構造物の造形装置におけるモルタルを吐出するノズル部、及び凹凸部材を送り出す送出部の内部構造を示す構成図である。
図6】(A)は、図5中の6A-6A線に沿った断面図であり、(B)は、図5中の6B-6B線に沿った断面図である。
図7】積層構造物の造形装置の内部において、凹凸部材を送り出す送出装置を示す構成図である。
図8】(A)は、第2実施形態の積層構造物に用いられる凹凸部材を示す正面図であり、(B)は、凹凸部材の長手方向と交差する方向に切断した状態を示す断面図である。
図9】(A)は、第3実施形態の積層構造物に用いられる凹凸部材を示す正面図であり、(B)は、凹凸部材の長手方向と交差する方向に切断した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。なお、各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向に沿う方向である。各図面において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1図7にしたがって、第1実施形態の積層構造物10及び積層構造物10の造形装置100について説明する。
【0016】
<積層構造部>
図1及び図2に示されるように、積層構造物10は、モルタル12Aを積層して形成された積層部12と、積層部12の層間に連続して設けられた凹凸部材14と、を備えている。
【0017】
(積層部)
図1及び図2に示されるように、積層部12は、モルタル12Aを鉛直方向の下側から上側に向かって積層することによって形成されている。モルタル12Aは、硬化性材料の一例である。モルタル12Aとしては、普通強度モルタル又は繊維補強モルタルなどが用いられる。例えば、モルタル12Aは、普通強度モルタルとされている。積層部12は、後述する造形装置100のノズル部104からペースト状のモルタル12Aを吐出することによって、長尺状のモルタル12Aの層を鉛直方向に積層した構成である。
【0018】
(凹凸部材)
図1及び図2に示されるように、凹凸部材14は、モルタル12Aを積層して形成された積層部12の層間に、モルタル12Aの長手方向に沿って連続して延びている。図3(A)、(B)に示されるように、凹凸部材14は、細長い円柱状の棒状部22を備えており、棒状部22の外面に円形状の外周面22Aが形成されている。棒状部22の外周面22Aには、半径方向内側に窪んだ複数の凹状部24が形成されている。凹凸部材14には、棒状部22の外周面22Aと複数の凹状部24とによって凹凸部が形成されている。すなわち、棒状部22の外周面22Aと複数の凹状部24は、凹凸部の一例である。
【0019】
一例として、凹状部24は、半球状に窪んだ形状である。図3(A)に示すように、複数の凹状部24は、棒状部22の外周面22Aの軸方向と交差する方向に間隔をおいて配置されている。一例として、複数の凹状部24は、棒状部22の外周面22Aにおいて、棒状部22の軸方向と直交する方向に対して軸方向の一方側(例えば、X方向の一方側)に斜めにずれて配置されている。本実施形態では、複数の凹状部24は、棒状部22の外周面22Aに螺旋状に間隔をおいて配置されている。凹状部24は、棒状部22の外周面22Aの周方向において4つ形成されている。一例として、凹状部24は、棒状部22の外周面22Aの周方向における90°の位置に形成されている。図3(B)では、凹凸部材14の形状を分かりやすくするために、棒状部22を凹状部24に沿って切断して棒状部22の外周面22Aに4つの凹状部24を図示しているが、実際には、4つの凹状部24は、棒状部22の外周面22Aの軸方向と直交する方向に対して軸方向の一方側にずれた位置に形成されている。
【0020】
凹凸部材14は、モルタル12Aが積層された積層部12の層間に配置されると共に、棒状部22の外周面22Aに複数の凹状部24が形成されていることで、凹凸部材14の表面が積層部12の層(すなわち、積層部12の上層と下層)の界面に食い込んでいる。言い換えると、モルタル12Aの一部が凹凸部材14の複数の凹状部24に入り込んだ状態で、モルタル12Aが硬化することで、凹凸部材14と下層のモルタル12Aと上層のモルタル12Aとが一体化されている。これにより、モルタル12Aが積層された積層部12の層の界面が凹凸部材14によって補強される。このため、積層部12の層の界面に沿って外力が加わったときに、凹凸部材14によって、積層部12の層の界面にずれ変形が生じることを抑制することが可能となる。
【0021】
凹凸部材14は、後述する造形装置100の送出部108から送り出すことで、凹凸部材14の下部がペースト状の下層のモルタル12Aの上部に埋まるように配置される。その後、下層のモルタル12A及び凹凸部材14の上側に、造形装置100のノズル部104からペースト状のモルタル12Aを吐出することによって、凹凸部材14の上部が上層のモルタル12Aに埋まるようになっている。
【0022】
(積層構造部の用途)
積層構造物10は、任意の形状に形成することができ、例えば、壁や柱などを構築することができる。また、積層構造物10は、例えば、筒状に形成されることで、型枠部材として使用することもできる。図示を省略するが、例えば、筒状の積層構造物10の内部に鉄筋を配筋し、筒状の積層構造物10の内部にコンクリートを打設することで、鉄筋コンクリート(RC)柱などが形成される。
【0023】
<積層構造物の造形装置>
次に、図1、及び図4図7にしたがって、積層構造物10を形成するための造形装置100について説明する。
【0024】
図1及び図4に示されるように、造形装置100は、ペースト状のモルタル12Aを吐出するノズル部104が設けられたエクストルーダ102と、エクストルーダ102のノズル部104を上下横方向へ移動させる移動形成部106と、を備えている。また、造形装置100は、エクストルーダ102におけるノズル部104と隣接する位置に配置されると共に凹凸部材14を送り出す送出部108を備えている。造形装置100は、積層構造物の造形装置の一例である。また、移動形成部106は、移動積層部の一例である。造形装置100には、例えば、3Dプリンターの技術の一部が活用されている。ここで、3Dプリンターとは、3次元的なデジタル・モデルをもとにして、物体をつくりだすことができる装置のことである。本実施形態では、造形装置100は、形状を示すデジタルデータに基づき、ノズル部104からモルタル12Aを吐出及び積層して積層構造物10を形成することが可能である。
【0025】
エクストルーダ102は、水平方向に対して交差する方向に所定の角度で支持されている。エクストルーダ102の下側の先端部102Aの端面は、水平方向に対して鋭角となるように斜め方向に配置されており、先端部102Aの下側にノズル部104が設けられ、先端部102Aの上側に送出部108が設けられている。エクストルーダ102の下側の先端部102Aは、エクストルーダ102の上端部102Bに対して、移動形成部106による移動方向(矢印A方向)の上流側(すなわち、移動方向に対して反対側)を向いている。これにより、エクストルーダ102の先端部102Aのノズル部104から移動形成部106による移動方向(矢印A方向)の上流側に向かってペースト状のモルタル12Aが吐出される。これと共に、エクストルーダ102の先端部102Aの送出部108から移動形成部106による移動方向(矢印A方向)の上流側(すなわち、移動方向に対して反対側)に向かって凹凸部材14が送り出される。
【0026】
図示を省略するが、エクストルーダ102の内部には、ポンプ及び移送管等によりペースト状のモルタル12Aが供給されるようになっている。エクストルーダ102の内部に供給されたペースト状のモルタル12Aは、ノズル部104から吐出される。
【0027】
移動形成部106は、複数のアーム114と、エクストルーダ102とアーム114との間及び隣り合うアーム114の間に配置される複数の回転部116と、を備えている。エクストルーダ102とアーム114との間に配置された回転部116は、エクストルーダ102とアーム114とを相対的に回転させる構成とされている。隣り合うアーム114の間に配置された回転部116は、隣り合うアーム114を相対的に回転させる構成されている。移動形成部106の全体構成は図示を省略するが、アーム114及び回転部116は複数設けられていることで、移動形成部106の先端に取り付けられたエクストルーダ102の先端部102Aを上下横方向に移動させる。移動形成部106は、エクストルーダ102の先端部102AをX方向、Y方向及びZ方向の任意の位置に移動させることが可能である。造形装置100では、積層構造物10の形状を示すデジタルデータに基づき、移動形成部106により、エクストルーダ102の先端部102Aのノズル部104を上下横方向へ移動させる。これにより、長尺状のモルタル12Aを積層させて積層部12を形成することが可能である。
【0028】
送出部108は、上記のように、エクストルーダ102の先端部102Aの上側に配置されており、送出部108から凹凸部材14を連続して送り出す構成とされている。図7に示されるように、エクストルーダ102の内部には、凹凸部材14を送り出す送出装置120が設けられている。送出装置120は、凹凸部材14を挟んで搬送する1対のロール121、122を備えている。1対のロール121、122は、図示しないモータにより、ロール121、122の対向部で同方向に回転する構成とされている。これにより、ロール121、122に挟まれた凹凸部材14が矢印B方向に搬送され、送出部108から送り出されるようになっている。
【0029】
図5及び図6(A)に示されるように、エクストルーダ102の上部側では、モルタル12Aは、図示しないポンプにより、エクストルーダ102の内部に形成された円形の供給路124に供給される。供給路124の壁面側には、凹凸部材14が搬送される凹状の仕切部126が設けられている。仕切部126は、凹凸部材14とモルタル12Aとを区画している。
【0030】
図5及び図6(B)に示されるように、エクストルーダ102の下部側では、仕切部126に代えて、円形の供給路124の周方向の一部を覆う壁面128Aを備えた壁部128が配置されている。壁部128の壁面128Aには、凹凸部材14の周方向の約半分が挿入される凹状部128Bが形成されている。これにより、凹凸部材14の周方向の一方の約半分がペースト状のモルタル12Aに接触し、凹凸部材14の周方向の他方の約半分が壁部128の凹状部128Bに接触する。
【0031】
図6(B)に示す状態で、ペースト状のモルタル12Aがエクストルーダ102の先端部102Aのノズル部104から吐出され、凹凸部材14がエクストルーダ102の先端部102Aの送出部108から送り出される。これにより、造形装置100では、凹凸部材14の下部側がペースト状のモルタル12Aの上部に埋め込まれた状態となる(図4参照)。
【0032】
造形装置100では、この状態で、移動形成部106がエクストルーダ102を矢印A方向に移動させることで、長尺状のモルタル12Aの層が形成される(図4参照)。そして、先に積層されたモルタル12A及び凹凸部材14の上側に次のモルタル12Aが積層されると共に、次のモルタル12Aの上部に凹凸部材14が配置される。このとき、先に積層されたモルタル12A及び凹凸部材14の上側に次のモルタル12Aが積層されることで、凹凸部材14の上部側が次のモルタル12Aに埋め込まれる。これにより、長尺状のモルタル12Aが積層されて積層部12が形成されると共に、積層部12の層間に凹凸部材14が配置される。
【0033】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0034】
図1及び図2等に示されるように、積層構造物10では、モルタル12Aが積層された積層部12の層間に凹凸部材14が連続して設けられている。凹凸部材14の凹凸部(すなわち、外周面22Aと複数の凹状部24)は、積層部12の層の界面、すなわち、下層のモルタル12Aと上層のモルタル12Aの界面に食い込む。これにより、積層部12の層の界面に沿って外力が加わったときに、積層部12の層の界面にずれ変形が生じることが抑制される。
【0035】
また、凹凸部材14は、積層部12の層の界面に連続して設けられているので、従来のようにアンカーを所定のピッチで界面に差し込む構成と比較して、積層部12の層の界面のずれ変形を小さくできる。
【0036】
さらに、積層構造物10を、例えば3Dプリンターの技術の一部を活用した造形装置100で造形する場合、モルタル12Aを吐出する方向に沿って、凹凸部材14を送り出すことができるため、モルタルの層の界面に上方からアンカーを差し込む方法と比較して、造形作業が楽になる。
【0037】
また、図1及び図4等に示されるように、造形装置100は、モルタル12Aを吐出するノズル部104を備えたエクストルーダ102と、エクストルーダ102のノズル部104を上下横移動させ、モルタル12Aを積層させる移動形成部106と、を備えている。エクストルーダ102には、積層されたモルタル12Aの層間に、凹凸部材14を連続して送り出す送出部108が設けられている。
【0038】
造形装置100では、ノズル部104からモルタル12Aを吐出させ、移動形成部106によって、ノズル部104を上下横移動させることで、モルタル12Aを積層させて積層部12を形成する。また、ノズル部104からモルタル12Aを吐出させる際に、送出部108によって、積層されたモルタル12Aの層間に、凹凸部材14を連続して送り出す。凹凸部材14には、凹凸部(すなわち、外周面22Aと複数の凹状部24)が形成されており、積層されたモルタル12Aの層の界面に凹凸部(すなわち、外周面22Aと複数の凹状部24)が食い込む。これにより、モルタル12Aを積層した積層部12の層の界面に沿って外力が加わったときに、積層部12の層の界面にずれ変形が生じることが抑制される。
【0039】
また、造形装置100では、積層されたモルタル12Aの層間に凹凸部材14を連続して送り出すので、従来のようにアンカーを所定のピッチで界面に差し込む構成と比較して、積層部12の層の界面のずれ変形を小さくできる。
【0040】
さらに、造形装置100では、モルタル12Aを吐出する方向に沿って、凹凸部材14を送り出すことができるため、従来のように積層部の層の界面に上方からアンカーを差し込む方法と比較して、造形作業が楽になる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る積層構造物について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0042】
図8には、第2実施形態の積層構造物に用いられる凹凸部材52が示されている。図8(A)、(B)に示されるように、凹凸部材52は、複数の球材54が数珠状に連結されることで構成されている。より具体的には、球材54には、中心部を貫通する貫通部にワイヤー56が挿通される構成とされている。複数の球材54の貫通部にワイヤー56が挿通されていることで、複数の球材54が数珠状に連結されている。球材54は、略球状とされている。ワイヤー56は、例えば、金属製又は樹脂製である。ワイヤー56は、軸方向と交差する方向に変形可能とされており、これにより、凹凸部材52を長手方向と交差する方向に曲げることが可能である。凹凸部材52は、複数の球材54が数珠状に連結されているので、球材54の中心を通る直径部分と、隣り合う球材54が連結された窪み部分とにより凹凸部が形成されている。すなわち、連結された複数の球材54は、凹凸部の一例である。
【0043】
第2実施形態の積層構造物は、第1実施形態の積層構造物10において、凹凸部材14を凹凸部材52に変更したものであり、凹凸部材52以外の構成は、図1等に示す第1実施形態の積層構造物10と同様である。
【0044】
第2実施形態の積層構造物は、第1実施形態の積層構造物10と同様の構成による作用及び効果に加えて、以下のような作用及び効果を有している。
【0045】
第2実施形態の積層構造物では、凹凸部材52は、球材54を数珠状に連結して構成されているので、曲がりやすい。このため、平面視にて積層部12(図1参照)の形状が湾曲していても、凹凸部材52を湾曲形状に沿って曲げることができる。
【0046】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態に係る積層構造物について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0047】
図9には、第3実施形態の積層構造物に用いられる凹凸部材62が示されている。図9(A)、(B)に示されるように、凹凸部材62は、複数の楔状部64が連結されることで構成されている。より具体的には、楔状部64は、略V字状に屈曲した形状とされている。複数の楔状部64は、屈曲部64Aの向きが同方向に揃えられた状態で配置されている。楔状部64には、長手方向と交差する方向に屈曲部64Aを貫通する貫通部が形成されており、貫通部にワイヤー66が挿通されている。複数の楔状部64の貫通部にワイヤー66が挿通されていることで、複数の楔状部64が連結されている。ワイヤー56は、例えば、金属製又は樹脂製である。ワイヤー56は、軸方向と交差する方向に変形可能とされており、これにより、凹凸部材62を長手方向と交差する方向に曲げることが可能である。凹凸部材62は、複数の楔状部64が連結されているので、楔状部64におけるワイヤー66と直交する両側部分と、隣り合う楔状部64が連結された窪み部分とにより凹凸部が形成されている。すなわち、連結された複数の楔状部64は、凹凸部の一例である。
【0048】
第3実施形態の積層構造物は、第1実施形態の積層構造物10において、凹凸部材14を凹凸部材62に変更したものであり、凹凸部材62以外の構成は、図1等に示す第1実施形態の積層構造物10と同様である。
【0049】
第3実施形態の積層構造物は、第1実施形態の積層構造物10と同様の構成による作用及び効果に加えて、以下のような作用及び効果を有している。
【0050】
第3実施形態の積層構造物では、凹凸部材62は、複数の楔状部64を連結して構成されているので、曲がりやすい。このため、平面視にて積層部12(図1参照)の形状が湾曲していても、凹凸部材62を湾曲形状に沿って曲げることができる。
【0051】
なお、第1~第3実施形態の積層構造物10では、硬化性材料の一例として、モルタル12Aが用いられているが、モルタル12A以外の硬化性材料を用いてもよい。モルタル12A以外の硬化性材料としては、例えば、石膏、又はジオポリマーなどが用いられる。ここで、ジオポリマーとは、アルミナシリカ粉末とアルカリ溶液の縮重合反応で生じる固化体の総称である。
【0052】
また、第1~第3実施形態の積層構造物では、モルタル12Aの長手方向のほぼ全域に凹凸部材14、52、62が配置されているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、凹凸部材は、硬化性材料の長手方向の少なくとも一部に配置されている構成でもよい。
【0053】
また、第1~第3実施形態の積層構造物では、凹凸部材14、52、62が用いられているが、凹凸部材は、凹凸部を有する形状であれば、変更可能である。
【0054】
また、第1~第3実施形態では、造形装置100の各部材の構成は、図4図7に示す構成に限定されるものではなく、変更可能である。例えば、ノズル部104の構成、送出部108の構成、及び移動形成部106の構成部品の形状などは変更可能である。
【0055】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0056】
10 積層構造物
12A モルタル
14 凹凸部材
22A 外周面(凹凸部)
24 凹状部(凹凸部)
52 凹凸部材
54 球材(凹凸部)
62 凹凸部材
64 楔状部(凹凸部)
100 造形装置
104 ノズル部
106 移動形成部(移動積層部)
108 送出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9