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特開2022-174885二次電池管理装置、二次電池管理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174885
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】二次電池管理装置、二次電池管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20221117BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20221117BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20221117BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20221117BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20221117BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221117BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221117BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20221117BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20221117BHJP
   B60L 53/68 20190101ALI20221117BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20221117BHJP
   H01M 10/44 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
H02J7/02 B
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/389
H02J7/00 P
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H01M10/48 301
B60L3/00 S
B60L53/68
B60L58/12
H01M10/44 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080900
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 修子
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亮平
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA51
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB13
5G503CB16
5G503FA06
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS06
5H030AS08
5H030BB03
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC09
5H125BE01
5H125CA18
5H125CC04
5H125DD04
5H125EE23
5H125EE27
5H125EE29
5H125EE41
5H125EE57
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】配達・配送用電気自動車の電池充電時間を短時間としてかつ電池劣化を抑制して電池搭載量を適正にする。
【解決手段】二次電池管理装置100Aは、二次電池によって駆動される移動体の移動日時または移動時外気温と、移動経路と、に対応して所要電力量を記憶する電力量データベース142に基づいて、移動体が指定された移動予定経路Rtを移動するために要すると予測される予測電力量W2を算出する電力量算出部112と、二次電池の劣化状態を記録し、または、二次電池の使用状態と劣化状態との相関関係を示すデータとともに二次電池の過去の使用状態を記録した電池劣化データベース144を参照し、走行条件に応じて、予測電力量W2を確保できる二次電池の使用SOC領域または使用電圧領域を算出し、算出した使用SOC領域または使用電圧領域に基づいて、走行開始時条件SOCs,Vsを決定する走行開始状態決定部114と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池によって駆動される移動体の移動日時または移動時外気温と、移動経路と、に対応して所要電力量を記憶する電力量データベースに基づいて、前記移動体が指定された移動予定経路を移動するために要すると予測される予測電力量を算出する電力量算出部と、
前記二次電池の劣化状態を記録し、または、前記二次電池の使用状態と前記劣化状態との相関関係を示すデータとともに前記二次電池の使用条件と電池劣化の関係を記録した電池劣化データベースを参照し、前記二次電池の状態に応じて、前記予測電力量を確保できる前記二次電池の使用SOC領域または使用電圧領域を算出し、算出した前記使用SOC領域または前記使用電圧領域に基づいて、充電完了状態における前記二次電池の電圧またはSOCである走行開始条件を決定する走行開始状態決定部と、を備える
ことを特徴とする二次電池管理装置。
【請求項2】
前記電力量データベースは、前記移動日時または前記移動時外気温と、前記移動経路と、に加えて、前記移動体の重量に対応して前記所要電力量を記憶するものであり、
前記電力量算出部は、前記移動体の重量と、前記移動予定経路とに基づいて前記予測電力量を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項3】
前記二次電池は、通電状態と休止状態とを交互に繰り返しつつ充電されることが可能なものであり、
前記電池劣化データベースに基づいて、電池劣化と通電比率の情報を使用し、充電完了までの通電時間と通電後の休止時間の比率を決定するデューティ比決定部により充電後の休止時間を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の二次電池管理装置。
【請求項4】
前記走行開始状態決定部は、前記使用条件と、前記走行開始条件との関係をマップ形式のデータとして記憶し、前記マップ形式のデータを参照して前記走行開始条件を決定する
ことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の二次電池管理装置。
【請求項5】
前記電力量データベースは、前記移動日時または前記移動時外気温と、前記移動経路と、前記移動体の重量と、に加えて、前記移動体の運転者を特定する運転者識別情報に対応して前記所要電力量を記憶するものであり、
前記走行開始状態決定部は、教師あり学習によって学習処理を行った人工知能によって前記走行開始条件を決定するものであり、
前記移動体の移動状況に応じて前記電力量データベースと、前記電池劣化データベースと、をリアルタイムで更新するデータベース更新部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の二次電池管理装置。
【請求項6】
前記走行開始状態決定部は、前記二次電池の想定温度を受信する機能と、受信した前記想定温度が高くなるほど、前記二次電池が所定時間以上滞在するSOCである滞在SOCが低くなるように、前記走行開始条件を決定する機能と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池管理装置。
【請求項7】
前記走行開始状態決定部から供給された前記走行開始条件と、前記デューティ比決定部が決定した前記比率と、に基づいて、前記二次電池を充電する充電装置を制御する充電制御部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の二次電池管理装置。
【請求項8】
前記移動体の運行スケジュールを立案する運行スケジュール立案部と通信し、前記移動体の充電スケジュールを立案する充電スケジュール立案部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の二次電池管理装置。
【請求項9】
二次電池によって駆動される移動体の移動日時または移動時外気温と、移動経路と、に対応して所要電力量を記憶する電力量データベースに基づいて、前記移動体が指定された移動予定経路を移動するために要すると予測される予測電力量を算出する電力量算出過程と、
前記二次電池の劣化状態を記録し、または、前記二次電池の使用状態と前記劣化状態との相関関係を示すデータとともに前記二次電池の過去の使用状態を記録した電池劣化データベースを参照し、前記劣化状態に応じて、前記予測電力量を確保できる前記二次電池の使用SOC領域または使用電圧領域を算出し、算出した前記使用SOC領域または前記使用電圧領域に基づいて、充電完了状態における前記二次電池の電圧またはSOCである走行開始条件を決定する充電条件決定過程と、を有する
ことを特徴とする二次電池管理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
二次電池によって駆動される移動体の移動日時または移動時外気温と、移動経路と、に対応して所要電力量を記憶する電力量データベースに基づいて、前記移動体が指定された移動予定経路を移動するために要すると予測される予測電力量を算出する電力量算出手段、
前記二次電池の劣化状態を記録し、または、前記二次電池の使用状態と前記劣化状態との相関関係を示すデータとともに前記二次電池の過去の使用状態を記録した電池劣化データベースを参照し、前記劣化状態に応じて、前記予測電力量を確保できる前記二次電池の使用SOC領域または使用電圧領域を算出し、算出した前記使用SOC領域または前記使用電圧領域に基づいて、充電完了状態における前記二次電池の電圧またはSOCである走行開始条件を決定する充電条件決定手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池管理装置、二次電池管理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題が大きくクローズアップされてきており、地球温暖化を防止するために、あらゆる場面で炭酸ガスの排出削減が求められている。このような背景から、炭酸ガスの大きな排出源の一つであるガソリンエンジンを使用した自動車については、ハイブリッド電気自動車や電気自動車等への代替が進められている。電気自動車やハイブリッド電気自動車の動力用電源となる車載の電池は、その性能が走行性能に影響するため、近年では高性能で軽量のリチウムイオン電池が使用されており、走行用バッテリの価格は高く、電気自動車の価格も同じクラスのガソリン車よりも高額である。ユーザー側からは長期に運用できることが望まれており、メーカー側からは最適な電池量でコストを抑制したいという要求がある。
一般に二次電池は充放電に伴い容量が減少する。特に、正極材料がLiCoO2,LiMnxNiyCo(1-x-y)O2(x+y>1)などの含リチウムイオン遷移金属酸化物で、負極が黒鉛や非晶質炭素材料の組合せのリチウム二次電池においては満充電状態で劣化が進行しやすいことが知られている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、下記特許文献1の要約には、「電気自動車の電池の電池残量を検出する電池残量検出部15bと、次回の電気自動車を利用するトリップの出発時刻及び当該トリップにおける必要消費電力を次回トリップ情報として検出する次回トリップ情報検出部15eと、前記電池残量と前記次回トリップ情報とに基づき、次回トリップ出発時刻までに前記必要消費電力を充電する充電速度及び充電量を決定して充電する充電制御部15cとを備えている。」と記載されている。
【0004】
特許文献1記載の電気自動車の充電制御装置には、搭載している電池を毎回満充電まで充電する場合に劣化が進行することを予防する観点で、共同利用する複数の電気自動車を次回トリップまでの間に充電する際に、電池劣化に与える影響度合いである電池劣化コストを加味して充電制御を行っている。電池の残量と検出した次回トリップ出発時刻および必要消費電力とに基づき、次回トリップ出発時刻までに必要消費電力を充電する充電速度および充電量を決定して充電することにより、充電速度および充電量を最適化した複数車両の充電制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-90360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ネット通販市場が拡大し、配送、配達などの物流量が増加しており、配送効率の向上が求められているとともに背景技術に示したように炭酸ガスの排出削減も求められている。このような背景から、配達や配送用の車両についても電気自動車やプラグインハイブリッド車など大型の二次電池を動力とする車両が増加していくと考えられる。配達や配送向けの電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車の動力用電源には大型で大容量二次電池が必要となる。電気自動車の場合、大型車になると必要なエネルギー量も増し、電池重量が増加するため、積載量と電池コストのトレードオフの問題が発生する。車体の重量やバッテリの性能が走行に影響し、物流コスト低減と環境対応のため、車載の電池は、最適な電池量で効率的にオペレーションすることが重要となる。
【0007】
しかし、リチウムイオン電池等の二次電池は、充放電を繰り返す度に劣化が進行し、容量が減少するとともに内部抵抗が上昇する。これにより、二次電池の出力の変動が生じる。二次電池における劣化進行の程度は、現在までに二次電池が使用された環境や方法など、二次電池の使用履歴によって異なる。
【0008】
上述のように、特許文献1の内容を適用した技術においては、電気自動車の充電時間を高速化できる。しかし、考慮されていることは、主として急速充電による劣化影響である。このため、電気自動車がこれから配送走行する際の電池の使い方については考慮しないため、電池の劣化が加速される可能性を避けることができない。
【0009】
例えば、配達、配送トラックに関しては、日中の稼働停車・駐車時は、直射日光や、路面の照り返しを必ずしも避けることができる環境にあるとは言い難く、特に夏期は高温になるため、SOC(state of charge;充電率または充電状態)が高い状態で保持されるほど劣化が加速されることになる。二次電池の特性は温度に大きく影響され、特に、容量、抵抗などの特性が変化する。図1を参照して、その内容を説明する。
【0010】
図1は、二次電池(例えばリチウムイオン電池)の各種特性例を示す図である。
まず、グラフG2は、二次電池の温度に対する、内部抵抗の抵抗値比率DCRを示すグラフである。グラフG2において横軸は二次電池の温度であり、縦軸は、抵抗値比率DCRである。ここで、抵抗値比率DCRとは、25℃における抵抗値を「1」として、各温度における比率を表すものである。低温になるほど抵抗が高く出力が小さくなる。
【0011】
また、グラフG4は、二次電池のSOCと温度に対する容量維持率を示すグラフである。グラフG4において、横軸は二次電池のSOCであり、縦軸は二次電池を所定期間保存したときの容量維持率である。また、特性G4-25、G4-50、G4-65、G4-80は、それぞれ電池温度が25℃、50℃、65℃および80℃における特性である。グラフG4に示すように、SOCが高く電池温度が高くなるほど容量維持率が低下する。
【0012】
また、グラフG6は、二次電池を様々な温度で6ヵ月保存した場合における、内部抵抗の抵抗上昇率を示す図である。図示のように、温度が高くなるほど、抵抗上昇率が高くなり、劣化が大きくなる。また、グラフG8は、二次電池を様々なSOCにおいて、25℃で190日間保存した場合の抵抗上昇率を示す図である。図示のように、SOCが高くなるほど、抵抗上昇率が高くなり、劣化が大きくなる。ここに示した例は一例であり、電池材料の種類、仕様によりその劣化特性は異なり、使い方によって劣化が変動する。
【0013】
前述したように特許文献1において、考慮に入っているのは急速充電による劣化影響である。電気自動車が充電後に走行する際の電池の使い方については考慮していないため、走行時の状態によって電池の劣化が加速される可能性を避けることができない。そこで、配送・配達用で電池を動力源に使用する車両において、二次電池モジュールの劣化度反映し、短時間で充電を効率よくかつ電池を効果的に活用する配送・配達システムと連携した最適充電ナビゲーションシステムを提供できれば好ましい。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、走行時の状態を反映して二次電池の劣化速度を抑制しかつ安定な走行を可能にする二次電池管理装置、二次電池管理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明の二次電池管理装置は、二次電池によって駆動される移動体の移動日時または移動時外気温と、移動経路と、に対応して所要電力量を記憶する電力量データベースに基づいて、前記移動体が指定された移動予定経路を移動するために要すると予測される予測電力量を算出する電力量算出部と、前記二次電池の劣化状態を記録し、または、前記二次電池の使用状態と前記劣化状態との相関関係を示すデータとともに前記二次電池の使用条件と電池劣化の関係を記録した電池劣化データベースを参照し、前記二次電池の状態に応じて、前記予測電力量を確保できる前記二次電池の使用SOC領域または使用電圧領域を算出し、算出した前記使用SOC領域または前記使用電圧領域に基づいて、充電完了状態における前記二次電池の電圧またはSOCである走行開始条件を決定する走行開始状態決定部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
具体的には、二次電池によって駆動される移動体の移動日時または移動時外気温と、移動経路と、に対応して所要電力量を記憶する電力量データベースに基づいて、前記移動体が指定された移動予定経路を移動するために要すると予測される予測電力量を算出する電力量算出部と、前記二次電池の劣化状態を記録し、または、前記二次電池の使用状態と前記劣化状態との相関関係を示すデータとともに前記二次電池の過去の使用状態を記録した電池劣化データベースを参照し、前記劣化状態に応じて、前記予測電力量を確保できる前記二次電池の使用SOC領域または使用電圧領域を算出し、算出した前記使用SOC領域または前記使用電圧領域に基づいて、走行開始時の二次電池の推奨電圧または推奨SOCを決定し、充電完了状態における前記二次電池の電圧またはSOCである走行開始条件を決定する走行開始状態決定部と、を備えることを特徴とする。
後述する好適な実施形態においては、配送・配達用で電池を動力源に使用する車両において、二次電池モジュールの劣化度を反映し効率よく充電し、かつ、電池を有効活用する。さらに、好適な実施形態では、配送・配達システムと連携した最適充電ナビゲーションシステムを提供する。そのため、好適な実施形態による二次電池管理装置においては、予め蓄積された配達、配送時の走行ルート走行履歴と、当該車両における二次電池の現在の劣化状態と、環境温度と、配送予定ルートと、荷重と、に基づいて必要と考えられる予測電力量を算出する。
【0016】
そして、好適な実施形態においては、予測電力量と、配送予定ルートと、配送予定ルートでの停車時間と、電池温度または気温と、に基づいて、少なくとも2つ以上の異なるSOC領域の中から、実際に適用する使用SOC領域を選択し、走行開始時または充電完了時のSOCである走行開始充電率SOCsを決定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、走行に必要な電力を適切に決定し車両稼働時の充電による待ち時間を短くし、二次電池の充電状態を適切に決定でき、電池が劣化しにくい条件で使用することで必要電池量の最適化や車両のコストパフォーマンスを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】二次電池の各種特性例を示す図である。
図2】好適な第1実施形態による二次電池管理システムのブロック図である。
図3】好適な第2実施形態による二次電池管理システムのブロック図である。
図4】二次電池のSOCと電圧の関係を示すSOC領域選択の説明図である。
図5】好適な第3実施形態における時系列データの構造を示す図である。
図6】好適な第4実施形態による二次電池管理システムのブロック図である。
図7】第4実施形態の二次電池管理装置によって実行される走行開始充電率算出プログラムのフローチャートである。
図8】好適な第5実施形態による充電ナビゲーションシステムのブロック図である。
図9】第5実施形態における車両BMSの二次電池モジュール劣化度検出法を示すブロック図である。
図10】第5実施形態の電力量データベースに含まれる電力量補正データの模式図である。
図11】好適な第6実施形態の電力量データベースに含まれる走行実績データの模式図である。
図12】好適な第7実施形態による二次電池劣化度検出システムのブロック図である。
図13】第7実施形態のサーバー機で実行される劣化検出ルーチンのフローチャートである。
図14】二次電池の各種特性を示す図である。
図15】好適な第8実施形態による、車両内電池管理システムのブロック図である。
図16】好適な第9実施形態による、二次電池管理システムのブロック図である。
図17】車両が検出する二次電池の電池電圧、充放電電流およびSOCの経時的変化の一例を示す図である。
図18】好適な第10実施形態による、二次電池管理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
二次電池の保管等においては、二次電池が滞在するSOCをなるべく低く抑えることが好ましい。
そこで、後述する好適な実施形態においては、配送・配達用で電池を動力源に使用する車両において、二次電池モジュールの劣化度反映し、短時間で効率よく充電し、かつ、電池を有効活用する。さらに、好適な実施形態では、配送・配達システムと連携した最適充電ナビゲーションシステムを提供する。そのため、好適な実施形態による二次電池管理装置においては、予め蓄積された配達、配送時の走行ルート走行履歴と、当該車両における二次電池の現在の劣化状態と、環境温度と、配送予定ルートと、荷重と、に基づいて必要と考えられる予測電力量を算出する。
【0020】
そして、好適な実施形態においては、予測電力量と、配送予定ルートと、配送予定ルートでの停車時間と、電池温度または気温と、に基づいて、少なくとも2つ以上の異なるSOC領域の中から、実際に適用する使用SOC領域を選択し、走行開始時または充電完了時のSOCである走行開始充電率SOCsを決定する。
このように、好適な実施形態によれば、劣化が最も少ない領域で走行量(予測電力量)を確保し、かつ短時間充電が可能で、予測電力量を適切に管理でき、電池を効率的に使用でき、電池の搭載量を必要最小限にでき、そのコストパフォーマンスを向上させることができる。
【0021】
[第1実施形態]
図2は、好適な第1実施形態による二次電池管理システムS1のブロック図である。
二次電池管理システムS1は、二次電池管理装置100A(コンピュータ)と、電力量データベース142と、電池劣化データベース144と、を備えている。
二次電池管理装置100Aは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、SSDまたはHDDには、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、各種データ等が格納されている。OSおよびアプリケーションプログラムは、RAMに展開され、CPUによって実行される。図2において、二次電池管理装置100Aの内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能を、ブロックとして示している。
【0022】
すなわち、二次電池管理装置100Aは、電力量算出部112(電力量算出手段、電力量算出過程)と、走行開始状態決定部114(充電条件決定手段、充電条件決定過程)と、を備えている。二次電池管理装置100Aは、車両に動力源として搭載される二次電池(図示せず)を管理する。ここで、二次電池管理装置100Aは、車両に搭載されたコンピュータであってもよく、車両とは別体のコンピュータであってもよい。
【0023】
車両は、様々な移動経路に沿って荷物等の配送を行う。電力量データベース142は、車両の使用履歴を示す履歴情報と、標準的な所要電力量と、を対応付けて記憶する。ここで、履歴情報は、少なくとも移動日時または移動時の外気温と、移動経路を示すルート情報と、を含んでいる。電力量算出部112は、例えばユーザによって移動予定経路を特定する予定ルート情報Rt(移動予定経路)が入力されると、電力量データベース142に基づいて、その移動予定経路を走行するために車両が要すると予測される予測電力量W1,W2を算出する。ここで、予測電力量W1は、予定ルート情報Rtに基づいて算出した予測電力量であり、予測電力量W2は二次電池の劣化状態等に基づいて予測電力量W1を補正した結果である。
【0024】
電池劣化データベース144は、電池の使用条件とバッテリの容量、抵抗の変化を推定できる相関データを含んで構成される。但し、現状の劣化状態に代えて、過去の使用状態(例えば環境温度の推移、出力した電力量等)と、劣化影響データとを記憶してもよい。ここで、劣化影響データは、二次電池の使用条件と劣化状態との相関関係を記述したデータである。走行開始状態決定部114は、電池劣化データベース144に基づいて、予測電力量W2を確保できる二次電池の使用電圧領域または使用SOC領域を算出する。
【0025】
ここで、使用電圧領域とは、車両が予定ルート情報Rtで示される移動予定経路を走行する場合における、二次電池の放電開始時の電圧から放電終了時の電圧に至るまでの領域である。また、使用SOC領域は、放電開始時のSOCから放電終了時のSOCに至るまでの領域である。走行開始状態決定部114は、電池の劣化が加速されないように、使用する電圧領域を決定することが好ましい。
【0026】
走行開始状態決定部114は、電池劣化データベース144を参照し、稼働に適切な使用電圧領域を算出する。そして、その使用電圧領域に基づいて、充電完了条件として、充電完了状態における二次電池の電圧である走行開始電圧Vs(走行開始条件)、または、充電完了状態における二次電池のSOCである走行開始充電率SOCs(走行開始条件)を決定し、出力する。
【0027】
ここで、実際の走行開始電圧Vsは、上述した使用電圧領域の上限値、もしくはその上限値に対して若干の余裕を加算した電圧であってもよい。同様に、走行開始充電率SOCsは、使用電圧領域の上限値に対応するSOCであってもよく、その上限値に対して若干の余裕を加算した電圧に対応するSOCであってもよい。以下、Vsおよび/またはSOCsを総称して、「走行開始条件(SOCs,Vs)」と称することがある。
【0028】
車両のECUは、走行開始状態決定部114が出力した走行開始条件(SOCs,Vs)を認識すると、当該走行開始条件(SOCs,Vs)を充電装置(図示せず)に設定する。これにより、充電装置は、二次電池に対する充電を開始する。そして、二次電池のSOCまたは出力電圧が走行開始条件(SOCs,Vs)に達すると、充電装置は充電動作を終了する。
但し、二次電池11のSOCまたは電池電圧が走行開始条件(SOCs,Vs)以上である場合、車両は充電操作をスキップして走行を開始することが可能である。
【0029】
[第2実施形態]
図3は、好適な第2実施形態による二次電池管理システムS2のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
二次電池管理システムS2は、充電装置200と、二次電池管理装置100B(コンピュータ)と、電力量データベース142と、電池劣化データベース144と、を備えている。
【0030】
二次電池管理装置100Bのハードウエア構成は、第1実施形態の二次電池管理装置100Aと同様である。そして、二次電池管理装置100Bは、二次電池管理装置100Aと同様に、電力量算出部112と、走行開始状態決定部114と、を備えている。さらに、二次電池管理装置100Bは、データベース更新部118と、解析部120と、を備えている。
【0031】
また、本実施形態は複数の車両10(移動体)を管理するものである。但し、図3には1台の車両10のみを図示する。各車両10には、動力源としての二次電池11と、データ処理部12が設けられている。データ処理部12は、所定のサンプリング周期で、車両10の位置情報、二次電池11の状態(電圧、電流等)を計測し、その結果を時系列データD10として一定量蓄積し出力する。そして、データ処理部12は、時系列データD10を、無線または有線で、二次電池管理装置100Bの解析部120に送信する。送信タイミングはリアルタイムでもよいが、通信の負荷や、蓄積できるデータ量に応じで、好適なタイミングで送信する。例えば、1回の走行における、駐車時、走行停止後や、スタータ起動時のタイミングで送信する。
【0032】
また、解析部120は、複数の車両10から受信した時系列データD10を解析し、その内容に基づいて、電力量データベース142および電池劣化データベース144に蓄積するデータを生成する。データベース更新部118は、解析部120が生成したデータに基づいて、電力量データベース142と、電池劣化データベース144と、を更新する。
【0033】
本実施形態における電力量データベース142も、第1実施形態のものと同様に、履歴情報と、標準的な所要電力量と、を対応付けて記憶する。また、本実施形態における履歴情報は、移動日時と、移動時外気温と、配送ルート等のルート情報と、車両10の位置情報と、使用時間と、車両10の車量と、車両10の荷重と、車両10を特定する車両IDと、運転者を特定する運転者IDと、を含んでいる。
【0034】
車両10の所要電力量は、車両10の車重や荷重によって、同一のルートであっても変わり、電費も変動する。従って、車重や荷重と所要電力量との関係を蓄積して利用することで、予測電力量W1,W2をより正確に見積もることができる。また、車両10の車重および荷重は、トラックスケールと連動して記憶することが好ましい。さらに、車重および荷重は、車種データと、搭載荷物の各重量和およびドライバーの体重等から、計算による合算で求めた値でもよい。電力量算出部112は、この電力量データベース142を参照することで、これから車両10が走行するための予測電力量W1を算出する。
【0035】
さらに、電力量算出部112は、車載BMSまたは充電器で検出された劣化度SOHに基づいて、二次電池11の劣化状態を取得し、現在の二次電池11の劣化状態と、想定温度Tassと、に基づいて予測電力量W1を補正し、補正結果を予測電力量W2として出力する。ここで、想定温度Tassとは、例えば二次電池11に装着した温度センサ(図示せず)から取得した温度であってもよく、天気予報等で予報された、配送時間帯における気温であってもよい。
【0036】
また、走行開始状態決定部114は、電池劣化データベース144に対して、教師あり学習によって学習処理を行った人工知能によって、使用条件から充電完了条件、すなわち走行開始条件(SOCs,Vs)を決定することが好ましい。
【0037】
ここで、走行開始状態決定部114は、二次電池11の劣化条件と、最適な走行開始条件(SOCs,Vs)との関係をマップ(テーブル)形式のデータとして記憶し、このマップ形式のデータを参照して走行開始条件(SOCs,Vs)を決定してもよい。また、二次電池11の使用条件と、最適な走行開始条件(SOCs,Vs)との関係をマップ形式で記憶してもよい。さらに、電池の使用条件と、電力量と、最適な走行開始条件(SOCs,Vs)との関係をマップ形式で記憶してもよい。
【0038】
充電制御部124は、上述した走行開始条件(SOCs,Vs)と、デューティ比Dtrと、に基づいて充電要求(出力・時間その他の情報)を決定し、決定した充電要求により充電装置200を制御する。走行開始状態決定部114の機能は第1実施形態のものと同様であるが、本実施形態の走行開始状態決定部114は、対象とする二次電池11の環境温度の想定値である想定温度Tassを受信する。
【0039】
そして、走行開始状態決定部114は、想定温度Tassが高くなるほど、同一の予測電力量W2に対する走行開始条件(SOCs,Vs)が低くなるように、SOCsまたはVsを設定する。ここで、走行開始状態決定部114は、二次電池11の劣化条件と、走行開始条件(SOCs,Vs)との関係を、二次元のマップ(テーブル)として記憶してもよい。また、走行開始状態決定部114は、二次電池11の使用条件と、最適な走行開始電圧Vsとの関係をマップで実装してもよい。さらに、走行開始状態決定部114は、二次電池11の使用条件と、予測電力量W2と、最適な走行開始電圧Vsとの関係をマップ化して実装してもよい。
【0040】
ここで、走行開始状態決定部114の動作についてさらに詳細を説明する。図4を参照して、二次電池11の現在のSOCを参照して、使用SOC領域を決定する動作の一例を説明する。
図4は、二次電池11のSOCと電圧の関係を示す図である。
図4の横軸はSOCであり、左端が100%であり、右端が0%である。二次電池11の開回路電圧OCVおよび所定電流を流した際の閉回路電圧CCVは、図示のように、SOCが低下するほど低下する。ハッチングを付した領域EA1,EA2は、上述した予測電力量W2を確保できる電圧領域(またはSOC領域)の例であり、これらは使用電圧領域または使用SOC領域の候補になる。
【0041】
なお、図示のもの以外にも、使用電圧領域または使用SOC領域の候補になり得る様々な電圧領域またはSOC領域を考えることができる。低電圧側の領域EA1のSOCは、下限値SOC1L~上限値SOC1Hの範囲であり、両者の差分(SOC1H-SOC1L)をSOC幅ΔSOC1と呼ぶ。同様に、高圧側の領域EA2のSOCは、下限値SOC2L~上限値SOC2Hの範囲であり、両者の差分(SOC2H-SOC2L)をSOC幅ΔSOC2と呼ぶ。
【0042】
図4に示す上限値SOC1H,SOC2Hは、上述した走行開始充電率SOCsの候補値になる。ところで、先に図1のグラフG6,G8に示したように、リチウムイオン電池の劣化速度は、保管温度が高くなるほど速くなり、保管時のSOCが高いほど速くなる傾向がある。そこで、走行開始状態決定部114は、これらの劣化特性を踏まえて、運行時の気温を勘案し、なるべく二次電池11が劣化しにくい使用SOC領域を設定し、その使用SOC領域の上限値(例えばSOC1H,SOC2H)を走行開始充電率SOCsとして出力する。または、これに代えて、走行開始状態決定部114は、使用SOC領域の上限値に対応する開回路電圧OCVを、走行開始電圧Vsとして出力してもよい。
【0043】
これにより、必要な予測電力量W2を確保し、かつ、劣化を抑制しつつ二次電池11を運用することができる。さらに、二次電池11を常に満充電にする場合と比較して充電時間も短くでき、効率的に車両10を運用することが可能になる。例えば、夏期は気温も高く輻射熱や廃熱により二次電池11が高温になりやすく、二次電池11の劣化が進行しやすくなる。そこで、夏期においては、使用SOC領域を低SOC側(例えば図4の領域EA1)に設定し、充電時間を短縮すること好ましい。この場合は、走行開始充電率SOCsとして、上限値SOC1Hが選択される。
【0044】
逆に、気温が低い冬期においては、図1のグラフG2に示したように、抵抗値比率DCRが大きくなるため、開回路電圧OCVに対して放電時の閉回路電圧CCVが低くなりやすい。これにより、実際のSOCと比較して実際利用できる電池容量が小さくなる(一般に温度特性、レート特性の依存性が高い)。一方、グラフG6に示したように、20℃以下の低い温度では劣化の進行速度は遅くなる。従って、冬期においては、電力量の確保を優先し、使用SOC領域を高SOC側(例えば図4の領域EA2)に設定することが好ましい。この場合は、走行開始充電率SOCsとして、上限値SOC2Hを選択する。
【0045】
二次電池、特にリチウムイオン電池の劣化状態は、使用したSOCの範囲、使用温度、通電電流、稼働電圧範囲等により劣化の進行速度が異なる。このため、走行開始状態決定部114は、これらの関係を式または、マップでデータベース化したものから、最適な使用SOC領域を選択する。
【0046】
[第3実施形態]
次に、好適な第3実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図5は、第3実施形態における時系列データD10の構造を示す図である。第3実施形態の構成は第2実施形態のもの(図3)と同様であるが、各車両10のデータ処理部12が出力する時系列データD10は、図5に示すように構成されている。
【0047】
図5における各行は、時系列データD10のレコードであり、データベース更新部118(図3参照)は、例えば、車両10の走行時に所定のサンプリング周期毎に一つのレコードを作成する。また、各レコードには、日付D11、時刻D12、車両経度D13、車両緯度D14、電池温度D15、電池電圧D16、電池電流D17および電力量D18が含まれている。
【0048】
日付D11および時刻D12とは、サンプリングタイミングの日付および時刻である。また、車両経度D13および車両緯度D14は、サンプリングタイミングにおける車両10の経度および緯度である。電池温度D15、電池電圧D16、電池電流D17は、サンプリングタイミングにおける二次電池11の温度、出力電圧および出力電流である。また、電力量D18は、二次電池11が最後に充電された後、該サンプリングタイミングまでに二次電池11から出力された電力量である。
【0049】
各車両10のデータ処理部12は、サンプリングタイミング毎に、リアルタイムで時系列データD10を解析部120に無線で送信する。これにより、解析部120は、電力量データベース142および電池劣化データベース144に蓄積するデータをリアルタイムで生成する。そして、データベース更新部118は、解析部120が生成したデータに基づいて、電力量データベース142と、電池劣化データベース144と、をリアルタイムに更新する。
【0050】
但し、各車両10のデータ処理部12は、必ずしも時系列データD10をリアルタイムで解析部120に送信する必要はない。例えば、データ処理部12は、二次電池11の充電完了後に時系列データD10の蓄積を開始し、その後に当該車両10が充電のために再び充電装置200に接続された際に、蓄積した時系列データD10を解析部120に供給してもよい。この場合、データベース更新部118は、車両10が充電装置200に接続されている期間中に電力量データベース142および電池劣化データベース144を更新することになる。
【0051】
また、解析部120は、時系列データD10に基づいて、時間とSOCの関係をSOCの階級幅毎に時間を蓄積する。そして、時系列データにおいて所定時間以上、SOCが略一定である所定範囲に滞在している時間を検出する。ここで検出した時間はSOCが変動しない、すなわち電池の使用量が少ない、例えば「駐停車期間」である。車両10は、駐停車期間においても、補機等に電力を供給するため、SOCは若干変動するが、ほぼ一定であると考えることができる。この駐停車時間におけるSOCを休止区間滞在SOCと呼ぶ。解析部120は、滞在時間とともに、この時の休止区間滞在SOCも抽出する。例えば、図5の時刻t14~t20の区間Tr10においては、車両経度D13および車両緯度D14は一定値(L13およびLo13)になっている。そこで、解析部120は、当該期間Tr10を駐停車区間として同定する。
【0052】
走行開始状態決定部114は、二次電池11の想定温度Tassを受信する機能と、受信した想定温度Tassが許容される劣化挙動の閾値の温度よりも高い場合に、二次電池11の休止区間滞在SOCが低くなるように、走行開始条件(SOCs,Vs)を決定する機能と、を備えると一層好ましい。
【0053】
また、解析部120は、車両10の走行期間と、滞在期間とを分析したパターンに基づいて、走行時における標準電力量と温度の関係を算出する。さらに、解析部120は、配送ルート等のルート情報を複数の部分経路に分割し、各々の部分経路における電池電流D17の平均値、SOCの変動幅(ΔSOC)、中心SOC(部分経路におけるSOCの中央値)等の関係を解析する。
【0054】
そして、解析部120は、その解析結果を、「詳細経路走行データベース」として、データベース更新部118を介して電力量データベース142に記憶させる。そして、走行開始状態決定部114は、この詳細経路走行データベースと、電池電圧D16との関係に基づいて、分割した部分経路における二次電池11の劣化状態を予測する。これにより、走行開始状態決定部114は、劣化状態の予測値において、劣化が抑制されるような使用SOC領域を決定することができる。
【0055】
また、解析部120は、電力量データベース142に必要なデータも抽出し、抽出したデータに基づいて、データベース更新部118を介して電力量データベース142を更新する。
また、ルート情報は、ナビゲーションシステム(図示せず)によって推奨された、時間優先、距離最短ルートと連動させると好ましい。さらに、該ナビゲーションシステムは、一方通行など交通規制を反映して、効率的な配達順を時間帯毎に考慮した一筆書きルートを提案できるものが好ましく、ルート情報は、この一筆書きルートと連動させると好ましい。これにより、配送時の典型的な予測電力量Wrecを算出することができる。
【0056】
ルート配送の履歴が蓄積されてゆくことにより、電力量データベース142が充実し、これによって典型的なルートにおける予測電力量W2の算出精度がより向上する。
この履歴蓄積時に、解析部120は、容量に関する劣化度SOHQ(劣化状態)や、抵抗に関する劣化度SOHR(劣化状態)を算出し、これら算出結果を電池劣化データベース144に記録する。但し、劣化度SOHQ,SOHRは、車両内部のBMSや二次電池管理装置100Aで算出するのみならず、充電装置200によって算出してもよい。例えば、充電装置200が二次電池11に対して充電する際の二次電池11の電圧、電流、温度等に基づいて劣化度SOHQ,SOHRを検出してもよい。
【0057】
電池劣化データベース144は、二次電池11の使用条件と、二次電池11の内部抵抗と、容量の変化を推定できる相関データと、を記憶している。また、上述したように、二次電池11の使用条件は、少なくとも温度、電流、使用電圧範囲、使用SOC領域、使用電気量および休止比率のうち複数を含んでいる。ここで、劣化計算単位は時系列、1日単位、サイクル単位、回数単位の何れを採用してもよい。
【0058】
さらに、車両10における二次電池11のSOC・温度の滞在時間の分析ログを利用すると、二次電池11の稼働領域について、劣化係数に重み係数γを乗算して劣化度を算出でき、簡易な方式で劣化を考慮できる。本実施形態における劣化推定は、上述の方式のみならず、二次電池11のSOCの使用範囲と温度と劣化との相関データを使用するものが適用できる。
【0059】
また、走行開始状態決定部114は、二次電池11の走行開始充電率SOCsを、予測電力量W2と、現在のSOCと、に基づいて、次のように決定するとよい。まず、現在の二次電池11の劣化を反映した放電曲線において、出力下限値のSOC(例えば10%)から、SOCの高い側に向かって予測電力量W2が確保できる上限のSOC値を算出する。このSOCをSOCreqと呼ぶ。
【0060】
次に、走行開始状態決定部114は、現状のSOCであるSOCpreから予測電力量W2を出力した場合の下限のSOCを計算し、計算したSOCが前出の出力下限値のSOCよりも高い場合には、現状のSOCであるSOCpreを走行開始充電率SOCsにするとよい。一方、現状のSOCから計算したSOCが出力下限値のSOC以下になる場合は、SOCreqを走行開始充電率SOCsにするとよい。
【0061】
[第4実施形態]
図6は、好適な第4実施形態による二次電池管理システムS4のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
二次電池管理システムS4は、充電装置200と、二次電池管理装置100D(コンピュータ)と、電力量データベース142と、電池劣化データベース144と、運行スケジュール立案部146と、を備えている。
【0062】
ここで、運行スケジュール立案部146は、複数の車両10が配達すべき荷物の重量、寸法、配達先の位置等に応じて、各々の車両10の運行スケジュールを立案するものである。また、二次電池管理装置100Dは、第2実施形態の二次電池管理装置100B(図3参照)と同様の構成を備え、さらに充電スケジュール立案部122を備えている。充電スケジュール立案部122は、運行スケジュール立案部146が出力した運行スケジュールに基づいて、各々の車両10の充電スケジュール、すなわち充電開始時刻や充電終了時刻等を立案する。
【0063】
本実施形態における二次電池管理装置100Dは、デューティ比決定部116を有していてもよい。デューティ比決定部116は、充電完了までの中で通電状態が占める割合であるデューティ比Dtrを決定するものである。ここで、通電状態とは、二次電池11に電流を供給する状態である。また、二次電池11に電流を供給しない、または閾値電流より小さな電流を供給する状態を休止状態とする。
【0064】
そして、デューティ比決定部116は、電池劣化データベース144に基づいて二次電池11の劣化状態を判定し、二次電池11の劣化が進行するほどデューティ比Dtrを下げる機能を有している。充電制御部124は、上述した走行開始条件(SOCs,Vs)と、デューティ比Dtrと、に基づいて充電装置200の完了時間を制御する。充電後の休止時間を電池の劣化度に合わせてコントロールすることで、より電池の劣化を抑制することが可能になる。なお、二次電池管理装置100Dはデューティ比決定部116がない構成も可能である。
【0065】
本実施形態は、特に商用のラスト1マイルの配達システムにおいて、車両10として電気自動車を採用する場合に適用して好適な実施形態である。運行スケジュール立案部146は、配達エリアにおける、時間帯別の全戸配達最適標準ルートRS(t)を設定する。ここで、tは配達開始時刻または配達時間帯である。
【0066】
充電装置200が、営業所のみに配置されている場合、電力量算出部112は、配送または物流システムと連携し、運行スケジュール立案部146は、時間帯毎の配達荷物を仕分け、配送エリアのルート毎に必要な予測電力量W1を電力量データベース142に基づいて算出する。ここで、予測電力量W1も配達開始時刻tの関数であるため、以下「予測電力量W1(t)」と呼ぶことがある。
【0067】
さらに、電力量算出部112は、車両10における荷重、二次電池11の現在の劣化度、気温、想定温度Tass、天候等の条件に基づいて、予測電力量W1(t)を補正して、予測電力量W2(t)を決定する。走行開始状態決定部114は、決定された予測電力量W2(t)と、想定温度Tassと、に基づいて、使用SOC領域(例えば図4の領域EA1,EA2)を決定し、走行開始条件(SOCs,Vs)を決定する。
【0068】
その際、走行開始状態決定部114は、電池劣化データベース144を参照し、予測電力量W2が確保でき、かつ、使用時の最低SOCがSOC下限値(例えば10%)を下回らないように上限のSOC値を決定する。そして、走行開始状態決定部114は、その計算結果に基づいて、走行開始条件(SOCs,Vs)を出力する。その際、現在の二次電池11の電圧が走行開始電圧Vsよりも高い場合は充電を行うことなく、配達を開始する。一方、現在の二次電池11の電圧が走行開始電圧Vsよりも低い場合は、充電装置200によって二次電池11に対する充電を行うとよい。こうすることで全体の充電時間を節約し短縮することができる。
【0069】
多量の荷物を配達するために要する電力量は、フル充電した1台の車両10で配達する場合と、複数台の車両10が時間帯を分割しつつ配達する場合と、で異なる。一般的には、荷物が多量である場合には、複数の車両10で時間帯を分割しつつ配達した場合のほうが、車両10の充電時間を短くすることができ、かつ、二次電池11の劣化も抑制できる。そこで、運行スケジュール立案部146は、到着時間指定がない荷物を、配達ルートで分散するよう機械学習を利用したデータ選択システムを使用する。
【0070】
そして、充電スケジュール立案部122は、各車両が営業所に(充電装置200の近傍に)駐車している時間帯に二次電池11を充電するように、充電スケジュールをコントロールしている。これにより、二次電池管理システムS4においては、顧客満足度を低下させず、かつ効率的に荷物を配送することができる。さらに、二次電池管理システムS4によれば、電動車両である車両10の電池劣化も抑制でき、電池の搭載量の余分を少なくすることが可能になる。
【0071】
図7は、第4実施形態の二次電池管理装置100Dによって実行される走行開始充電率算出プログラムのフローチャートである。
図7のステップS11において、電力量算出部112は、移動予定経路の予定ルート情報Rtと、車両10の車重と、車両10の荷重と、配達時の想定温度Tassと、を受信する。そして、電力量算出部112は、受信した情報に基づいて電力量データベース142にアクセスし、予測電力量W1を取得する。なお、上述したように、電力量データベース142は、移動日時、移動時外気温等を有する履歴情報と、標準的な所要電力量と、を対応付けて記憶している。
【0072】
次に、ステップS12において、電力量算出部112は、想定温度Tassを取得し、これと同時に二次電池11の現在の劣化情報(劣化度SOHQ,SOHR等)を取得する。そして、取得した情報と電池劣化データベース144とに基づいて、必要に応じて予測電力量W1を補正することにより、予測電力量W2を算出する。
【0073】
予測電力量W2は、例えば、補正式「W2=α×W1+βd」に基づいて求めることができる。ここで、αは補正係数、βdは補機電力マージン等である。また、これに代えて、例えば補正式「W2=α×W1×βdd」に基づいて、予測電力量W1に対して、倍数で補正して予測電力量W2を算出してもよい。ここで、βddは倍数による補機電力マージン等である。さらに、予測電力量W1に対して固定値を増減して予測電力量W2を算出してもよい。
【0074】
次に、ステップS13において、走行開始状態決定部114は、二次電池11の現状のSOCにおいて予測電力量W2を出力可能であるか否かを判定する。すなわち、現在のSOCを最大SOCとしたときに、SOC下限値(例えば10%)に至るまでのSOC領域で予測電力量W2が取得できるか否かを判定する。そして、予測電力量W2が出力可能な場合は「Yes」と判定され、処理はステップS18に進む。ステップS18においては、現在のSOCを走行開始充電率SOCsとして出力する。一方、二次電池11の現在のSOCでは予測電力量W2を出力できない場合、ステップS13において「No」と判定され、処理はステップS14に進む。
【0075】
ステップS14において、走行開始状態決定部114は、SOC下限値を最小値として予測電力量W2を取得できるSOC領域、すなわちSOC領域EA01(図示せず)を算出する。次に、処理がステップS15に進むと、走行開始状態決定部114は、劣化が少ない領域であるSOC50%を中心にして、予測電力量W2を取得できるSOC領域、すなわちSOC領域EA02(図示せず)を算出する。
【0076】
次に、処理がステップS16に進むと、走行開始状態決定部114は、SOC上限値(例えば100%)を最大値として予測電力量W2を取得できるSOC領域、すなわちSOC領域EA03(図示せず)を算出する。次に、処理がステップS17に進むと、走行開始状態決定部114は、電池劣化データベース144を参照し、SOC領域EA01,EA02,EA03のうち、二次電池11の劣化が最小であると予測されるものを、使用SOC領域として選択する。次に、処理がステップS19に進むと、走行開始状態決定部114は、使用SOC領域の最大値を走行開始充電率SOCsとして出力する。
【0077】
上述した例では、3つのSOC領域EA01,EA02,EA03を算出し、その中から使用SOC領域を決定することにより走行開始条件(SOCs,Vs)を決定したが、走行開始条件(SOCs,Vs)の決定方法はこれに限定されるわけではない。例えば、走行開始充電率SOCsの候補となる複数のSOCを予め決定しておき、それぞれについて、予測電力量W2を確保できるSOC領域を計算し、計算した各々のSOC領域について電池劣化データベース144を参照することにより、使用SOC領域を決定してもよい。なお、計算した複数のSOC領域のうち、劣化度が等しいものがあれば、走行可能区間が最も長くなる高SOC側のSOC領域を選択することが好ましい。
【0078】
[第5実施形態]
図8は、好適な第5実施形態による充電ナビゲーションシステムS5のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
充電ナビゲーションシステムS5は、二次電池管理装置100E(コンピュータ)と、車両10と、を備えている。また、充電ナビゲーションシステムS5は、天気予報システム131と、配達ナビケーションシステム132と、トラックスケールシステム133と、に接続されている。
【0079】
ここで、天気予報システム131は、現状の気温、天候および将来の気温、天候等の天気予報を配信するものである。また、配達ナビケーションシステム132は、運送すべき複数の荷物の搬送先、重量、寸法等に基づいて、各車両10に積載する荷物および搬送ルートを決定するものである。また、トラックスケールシステム133は、各車両10の車両IDと、車重、荷重とを記憶、管理するものである。
【0080】
車両10は、動力源としての二次電池11と、データ処理部12と、車両BMS(Battery Management System)16と、運行履歴記録部18と、を備えている。車両BMS16は、二次電池11の状態を検知するものである。運行履歴記録部18は、車両10の運行履歴を記録するものである。運行履歴記録部18は、車両BMS16の内部に配置されていてもよい。
【0081】
図9は、第5実施形態における車両BMS16の電池劣化検出部のブロック図である。車両BMS16は、SOH演算部16aを備えている。SOH演算部16aは、二次電池11の電圧、電流および温度に基づいて、劣化度SOHを演算する。なお、劣化度SOHは、上述した劣化度SOHQ,SOHR等を総称したものである。
【0082】
図8に戻り、二次電池管理装置100Eのハードウエア構成は、第1実施形態の二次電池管理装置100Aと同様である。二次電池管理装置100Eは、電池稼働領域判定選択部103と、配達予定車両条件入力部104と、予測電力量計算部105(電力量算出部)と、電力量データベース142と、を備えている。また、電池稼働領域判定選択部103は、予測電力量補正部106(電力量算出部)と、走行開始状態決定部114と、データ解析部109と、電池劣化データベース144と、を備えている。
【0083】
二次電池管理装置100E内の配達予定車両条件入力部104は、車両BMS16から、データ処理部12を介して、電池の劣化度SOHQ,SOHRと、セル温度Tcellと、現在の車両のSOCと、を取得する。また、配達予定車両条件入力部104は、天気予報システム131から気温等の環境温度Taと、天気の情報とを取得し、物流会社等が利用している配達ナビケーションシステム132から配送・配達の予定経路の予定ルート情報Rtを取得する。さらに、配達予定車両条件入力部104は、物流会社が有するトラックスケールシステム133から車両IDと、車重と、荷重とを連動して取得する。
【0084】
予測電力量計算部105は、電力量データベース142を参照するために、必要な参照条件を抽出し、予測電力量W1を計算する。電池稼働領域判定選択部103は、予測電力量W1に対して、今回の走行条件と参照条件との差分がある場合、予測電力量補正部106において予測電力量W1を補正し、予測電力量W2を求める。上述したように、予測電力量W2は、例えば、「W2=α×W1+βd」、「W2=α×W1×βdd」に基づいて、算出してもよく、予測電力量W1に対して固定値を増減して予測電力量W2を算出してもよい。以下、図10を参照し、予測電力量W1を倍数で補正して予測電力量W2を求める例について説明する。
【0085】
図10は、第5実施形態の電力量データベース142に含まれる電力量補正データD30の模式図である。図10における各行は、電力量補正データD30のレコードであり、各レコードには、ルートD31、電力量D32、冬期係数D33、夏期係数D34、および積み荷50%,80%に対する荷重係数D35,D36が含まれている。電力量D32は、20℃の劣化していない二次電池11を適用し、荷重が100%である場合の、各ルートD31を走行する電力量である。
【0086】
冬期係数D33は冬期に電力量D32に乗算すべき係数であり、夏期係数D34は夏期に電力量D32に乗算すべき係数である。また、荷重係数D35およびD36は、それぞれ荷重が50%および80%であるときに電力量D32に乗算すべき係数である。車両10がルートAとルートBとを通る場合、予測電力量W1は、両者の電力量D32の和、すなわち「W1=Wa1+Wa2」として求めることができる。走行予定条件が、夏期で、積み荷の量が50%であり、かつ、劣化していない二次電池11を適用する場合は、予測電力量W1に対して、各々の夏期係数D34および荷重係数D35を適用し、「W2=Wa1×α1×β1+Wa2×α1×β2」として予測電力量W2を求めることができる。
【0087】
また、図8において、予測電力量補正部106は、電池劣化データベース144も参照し、予測電力量W2を決定する。走行開始状態決定部114は、第1~第4実施形態のものと同様に、二次電池11の劣化情報と、電池温度と、現在のSOCを使用して、電池の使用SOC領域を算出する。すなわち、走行開始状態決定部114は、予測電力量W2が確保でき、充電時間が短く、かつ、使用時に二次電池11の劣化が小さくなるように、使用SOC領域を算出する。
【0088】
そして、走行開始状態決定部114は、使用SOC領域の最大値を走行開始充電率SOCsとして、車両10と、充電装置200(図3参照)とに通知する。充電装置200は、現在SOC値が走行開始充電率SOCsを上回る場合は充電せず、現在SOCが走行開始充電率SOCsに満たない場合は走行開始充電率SOCsまで充電する。
【0089】
車両10の運行履歴記録部18は、走行日時、走行時刻、位置情報、電池電圧、電池電流、電池温度、使用電力等を時系列に取得して蓄積し、蓄積結果を、無線または有線の通信により、データ処理部12を介して二次電池管理装置100Eに通信する。そして、電池稼働領域判定選択部103は通信されたデータを蓄積する。データ解析部109は、電力量データベース142用のデータを作成し、電力量データベース142に追加する。また、データ解析部109は、劣化度SOHQ,SOHR、運転条件等、電池劣化データベース144に蓄積する項目を分析抽出し、その結果を電池劣化データベース144に追加する。
【0090】
これにより、車両10の走行毎に、各種データがさらに蓄積され、より適切に予測電力量W2を選択できるようになる。以上のように、必要な予測電力量W2に応じた電力量のみを二次電池11に充電して走行でき、かつ、劣化抑制領域を使用することで、二次電池11の劣化を抑制しながら、効率的な配達、配送が可能となる。また、効率的な電池利用が可能となり、従来の搭載電池量よりもマージンを小さくでき、適正な電池量の車両とすることができ、コストパフォーマンスの向上を図ることができる。
【0091】
[第6実施形態]
次に、好適な第6実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、第6実施形態の構成は、第5実施形態のもの(図8参照)と同様であるため、図示を省略する。
【0092】
一般的に、電池は大電流での充放電が連続で継続すると、劣化が加速される傾向がある。これを抑制するために、本実施形態においては、二次電池11の劣化と、電池の休止時間比率の関係を予め取得している。そして、電池劣化データベース144には、二次電池11が通電しない休止時間Tr(図示せず)と、二次電池11が通電する通電時間Tc(図示せず)についての情報が蓄積される。この蓄積情報を利用して、休止時間Trが長い場所は、ルートの後半で低SOC側になるようにルートを組むと好ましい。これにより、二次電池11が高SOCで保持されることによる劣化を抑制できる。
【0093】
また、一般的に二次電池11を急速充電すると、電流が大きいために発熱量が増加し内部温度が上昇するなど劣化が進みやすくなる。そのため急速充電後、配送前に二次電池11を使用しない休止時間をある程度設けることが好ましい。二次電池11の通電比率Rdutyは、「Rduty=tc/(tc+tr)」によって求めることができる。この通電比率Rdutyが劣化を促進する閾値Rdth以下になるように、電流値と劣化を促進する通電比率の閾値Rdthとのマップを作成しておくとよい。そして、このマップを参照して、走行開始充電率SOCsの設定後に、推奨配達開始時刻をディスプレイ(図示せず)に表示し、充電後の休止時間終了後に配達開始となるようにスケジューリングするとよい。また、充電機への充電指令の充電終了までの充電時間が充電完了電圧に達してから休止時間を経た後の総時間とし、充電完了時間に休止時間を含むようにすると、充電完了と同時に配達を開始することができる。本実施形態を適用することで、さらに電池の劣化を抑制し、効率的に配達、配送することが可能になる。
【0094】
上述したように、走行開始状態決定部114は、二次電池11の劣化条件と、最適な走行開始条件(SOCs,Vs)との関係をマップ(テーブル)形式のデータとして記憶し、このマップ形式のデータを参照して走行開始条件(SOCs,Vs)を決定してもよい。また、二次電池11の使用条件と、最適な走行開始条件(SOCs,Vs)との関係をマップ形式で記憶してもよい。さらに、電池の使用条件と、電力量と、最適な走行開始条件(SOCs,Vs)との関係をマップ形式で記憶してもよい。このように、各種パラメータの関係をマップ化して実装することにより、実装時のデータ量を削減し、演算量を低減することが可能になり、システムストレージに余裕を持たせて高速に演算することが可能になる。すなわち、走行開始充電率SOCsをより早く算出でき、安価な装置でのシステム構築が可能になる。
【0095】
さらに、電池稼働領域判定選択部103は、電力量データベース142を、リアルタイムに更新してもよい。すなわち、車両10からの通信により、時系列の緯度、経度、二次電池11のSOC、電池電圧、電池電流、電力量、電池温度、環境温度を運転者IDまたは車両IDとともに記録するとよい。そして、車両10の積み荷重量と、配達完了記録とを参照して、電力量データベース142において重量変化と必要電力量との関係を記述した重量変化対応データベースを構築するとよい。作成した重量変化対応データベースから、学習用のデータを抽出し、抽出データを教師あり学習を用いて、予測電力量W2を出力することができる。または、重量変化対応データベースから、指定項目のユークリッド距離またはマハラノビス距離が小さい条件を選択することで、予測電力量W2を出力することができる。
【0096】
図11は、本実施形態の電力量データベース142に含まれる走行実績データD40の模式図である。図11における各行は、走行実績データD40のレコードであり、各レコードは、レコード番号D42と、ルート条件パラメータ部D44と、劣化情報部D46と、必要電力量部D48と、を含んでいる。
【0097】
レコード番号D42は、当該レコードを特定する数値であり、「1」~「N」の範囲で一意に定められる数値である。また、ルート条件パラメータ部D44は、m個の特徴パラメータk1~kmを有している。ここで、特徴パラメータk1~kmは、当該レコードにおける走行日時、車両ID、運転者ID、気温、配送ルート、荷重、車重、位置情報(エリア)を含み、さらに電池温度、天候、配送時間帯情報を含んでいてもよい。劣化情報部D46は、当該レコードの取得時における劣化度SOHQ,SOHRを含んでいる。また、必要電力量部D48は、各レコードに係る走行において車両10が消費した消費電力量Wc1~Wcnである。これら消費電力量Wc1~Wcnが相関解析や学習処理を行う際の目的変数になる。
【0098】
本実施形態において、二次電池管理装置100Eは、この走行実績データD40に基づいて、予定走行ルートでの予測電力量W2を算出する。まず、配達予定車両条件入力部104は、配達予定の予定ルート情報Rt、気温、天気、車両ID,運転者ID、荷重、車重、車両10の位置情報、二次電池11の電池劣化度を受信する。予測電力量計算部105は、配達予定車両条件入力部104に入力された項目について、走行実績データD40の平均値で各値を除して、規格化し項目毎に入力条件との差分を計算する。さらにその差分を項目毎の重み係数をかけて足し合わせ、その平方根を計算する。具体的には、下式(1)で示す演算を実行する。
【0099】
【数1】
【0100】
式(1)において、z1は入力された項目の値を規格化した値であり、zは走行実績データD40の当該項目の値を規格化した値である。また、dは最小二乗誤差である。予測電力量計算部105は、この最小二乗誤差dが最も0に近い、すなわちユークリッド距離が近い条件の走行実績情報を検索し、検索した走行実績情報における電力を予測電力量W1として算出する。また、予測電力量計算部105は、最小二乗誤差dが所定の閾値未満の場合に、予測電力量W1を出力してもよい。
【0101】
予測電力量補正部106は、得られた予測電力量W1と、選択された走行実績情報と、に対して、最も距離が離れている情報を選択する。そして、予測電力量補正部106は、差分に関係する項目について、図10に示した電力量補正データD30から係数を選択し、予測電力量W1を補正することによって予測電力量W2を算出する。また、走行開始状態決定部114は、電池使用時のパラメータから推定される劣化度が小さくなるSOC領域を選択し、走行開始充電率SOCsを決定する。
【0102】
さらに、走行開始充電率SOCsと現在SOC値の差が、通常の充電電流で充電時間として許容される閾値Ctime_th(図示せず)で充電できる電力量よりも大きい場合、電池稼働領域判定選択部103は、充電装置200(図3参照)に対して、急速充電を指令し、これによって充電時間を短縮する。これにより、二次電池管理装置100Eは、ルート走行に支障が出ないように充電スケジュールを制定できるため、効率よく荷物を配達・配送することが可能になる。
【0103】
[第7実施形態]
図12は、好適な第7実施形態による二次電池劣化度検出システムS7のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
二次電池劣化度検出システムS7は、充電装置200と、サーバー機210と、を備えている。また、本実施形態において対象とする車両10は、第5実施形態(図8参照)のものと同様に、二次電池11と、車両BMS16と、を備えている。この二次電池11が、劣化検出の対象になる。
【0104】
充電装置200は、充電する際に充電ケーブル内の通信プロトコルから得られる充電状態(SOC)、出力電流I、出力電圧V等の情報を、サーバー機210に対して、無線または有線の通信によって送信できるように構成されている。
サーバー機210は、二次電池11の劣化診断装置であり、そのハードウエア構成は、第1実施形態の二次電池管理装置100A(図2参照)のものと同様である。
【0105】
図12において、サーバー機210の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能を、ブロックとして示している。すなわち、サーバー機210は、抵抗・容量演算部212と、劣化検出部214と、を備えている。抵抗・容量演算部212、劣化検出部214は、互いに連携し、情報を共有可能になっている。なお、サーバー機210は充電装置200の外部にあってもよいし、充電装置200にサーバー機210の一部または全部を内蔵してもよい。
【0106】
車両10を充電装置200に接続すると、走行開始充電率SOCsまで二次電池11が充電される。この際、充電装置200は、車両10から二次電池11のSOC、出力電流I、出力電圧V等の情報を取得する。充電装置200は、取得された充電情報を抵抗・容量演算部212に送信する。抵抗・容量演算部212は、取得した情報から二次電池の現在の容量および抵抗の値を演算し、劣化検出部214では初期値と比較して劣化度SOHQ,SOHRを算出する。
【0107】
劣化検出部214は、端末220に劣化度の情報を送信することができる。また、1台のサーバー機210に複数の車両10の情報を蓄積することができる。これにより、実測の劣化データベースの充実させることができる。そして、データベースから同車種の劣化情報を参照し、電池の劣化傾向をさらに正確に予測することが可能になる。
【0108】
図13は、サーバー機210で実行される劣化検出ルーチンのフローチャートである。
まず、ステップS31において、抵抗・容量演算部212は、充電装置200から、電圧、電流および充電時間を取得する。ここで、「充電時間」とは、充電開始以降の経過時間である。次に、ステップS32において、抵抗・容量演算部212は、予め学習によって取得した充電カーブに基づいて、充電時間に対する電池温度を推定する。
【0109】
次に、処理がステップS33に進むと、抵抗・容量演算部212は、取得した電圧値と充電時間と電流値と充電率SOCとに基づいて、図14のグラフG11,G12(詳細は後述する)に示すような、SOCと電圧との関係を取得する。次に、処理がステップS34に進むと、抵抗・容量演算部212は、抵抗・容量演算部212が記憶しているデータベースに基づいて、この二次電池11のSOCと開回路電圧OCVとの関係を検索する。
【0110】
次に、処理がステップS35に進むと、抵抗・容量演算部212は、図14のグラフG12に示すように、同一のSOCにおける充電電圧Vと、開回路電圧OCVとの差分を充電電流Iで除算することにより、暫定抵抗値R0を算出する。ここで、暫定抵抗値R0は、二次電池11の内部抵抗である抵抗値Rの暫定値である。
【0111】
ここで、抵抗・容量演算部212は、SOCと電池温度と抵抗値Rとの相関関係のデータベースを記憶している。次に、処理がステップS36に進むと、抵抗・容量演算部212は、この相関関係のデータベースと、ステップS32において推定した電池温度に基づく温度係数と、に基づいて暫定抵抗値R0を補正し、暫定抵抗値R1を算出する。
【0112】
次に、処理がステップS37に進むと、抵抗・容量演算部212は、充電電流Iと充電時間とに基づいて、暫定容量値Q0を算出する。ここで、暫定容量値Q0は、二次電池11の現在の容量値Qの暫定値である。また、抵抗・容量演算部212は、暫定容量値Q0と、暫定抵抗値R1と、に対して補正を行い、容量値Qと抵抗値Rとを算出する。具体的には、カタログ表示仕様における測定温度等、基準の温度、電流および時刻条件での取得値に換算して容量値Qと抵抗値Rとを取得する。
【0113】
次に、処理がステップS38に進むと、劣化検出部214は、取得した容量値Qおよび抵抗値Rと、未使用時の二次電池11における容量値Qおよび抵抗値Rとの比を求め、これによって劣化度SOHQ,SOHRを算出する。すなわち、サーバー機210は、これら劣化度SOHQ,SOHRを二次電池11の劣化情報として出力する。
【0114】
ここで、二次電池11の劣化情報についてさらに説明する。
二次電池11の劣化状態は、電池の内部抵抗(以下単に「抵抗」ともいう)を用いて演算したSOHRおよび/または電池の満充電容量を用いて演算したSOHQである。SOHRは、電池の内部抵抗に基づいて求めた劣化度あり、電池の劣化に伴い上昇する電池の内部抵抗の上昇率を表し、次式(2)で定義される。

SOHR=100×R1(SOC,T)/R0(SOC,T) …(2)
【0115】
式(2)において、R1(SOC,T)は、現在(劣化後)の二次電池11の内部抵抗[Ω]を表す。R0(SOC,T)は、新品時の二次電池11の内部抵抗[Ω]を表す。
容量を用いて演算するSOHQは、現在容量を初期容量で除したものである。上記式(1)のSOHRは、百分率で表しているが、初期に対する現在の比率であれば必ずしも百分率に限られない。
ここで、図14のグラフG11,G12を用いて、劣化による劣化度診断の算出方法の例を示す。
【0116】
図14は、二次電池11の電圧特性を示す図である。
まず、図14のグラフG11は、充電時の電圧・充電時間特性の一例を示す。グラフG11において横軸は充電開始後の経過時間であり、縦軸は二次電池11の電圧である。図中の特性G110は開回路電圧OCVまたは低レートでの充電電圧でほぼOCVとみなすことができる電圧曲線である。特性G112は急速充電時の電圧変化である。急速充電開始時の開回路電圧(OCV)をOCViniとする。経過時間tendまでの充電時間で、電気量Qchが充電される。何れの特性においても、充電時間の経過に伴って開回路電圧OCVは上昇する。但し、急速充電の特性G112によれば、比較的短い経過時間tendが経過するまでに、二次電池11には、満充電に相当する電気量Qchが供給される。
【0117】
また、図14のグラフG12は、二次電池11のSOCと電圧との関係を示す。グラフG12において特性G120はSOCと開回路電圧OCVとの関係を示し、特性G122はSOCと充電電圧Vcとの関係を示す。G122は、グラフG11の電圧曲線G112をSOCに対応して示したものである。G112の充電開始時の開回路電圧OCViniを、SOCとOCVの関係からSOCに換算し、相当するSOC値をSOCiniを求める。SOCiniから充電したグラフG11の電気量QchをSOCに換算して、SOCendが求められる。ここで、充電電圧Vcとは、所定の充電電流を二次電池11に供給している際に二次電池11に現れる電圧である。図示のように、同一のSOC値に対して、充電電圧Vcは開回路電圧OCVよりも高くなる。両者の差を電圧差分ΔV(socx)と呼ぶ。電圧差分ΔV(socx)は、主として二次電池11の内部抵抗における電圧降下である。二次電池11のSOCをSOCiniからSOCendまで充電したとき、充電される電気量Qchは、グラフG11に示した電気量Qchに等しい。
【0118】
抵抗・容量演算部212(図13参照)は、車両10に関する情報に基づいて、車両10に適用されている二次電池11の仕様を、抵抗・容量演算部212の内部のデータベースから取得することができる。その仕様の中に、特性G120に相当するOCV曲線が含まれている。そこで、抵抗・容量演算部212は、充電開始時の開回路電圧OCVと、特性G120とに基づいて、充電開始時のSOCであるSOCiniを取得する。
【0119】
また、抵抗・容量演算部212は、同一のSOCにおいて、充電電圧Vcと開回路電圧OCVとを計測し、両者に基づいて電圧差分ΔV(socx)を算出する。さらに、抵抗・容量演算部212は、この電圧差分ΔV(socx)を充電電流Iで除算し、二次電池11の内部抵抗の抵抗値Rを取得する。特に、二次電池11に通電した直後は、SOCが変動する前であり、反応抵抗の影響が少ないため、その際に抵抗値Rを取得することが好ましい。二次電池11がリチウムイオン電池である場合、上述のように算出される抵抗値Rは、SOCに対して依存性があることが知られている。
【0120】
従って、抵抗値RとSOCとの関係は、関数またはテーブルとして表すことができる。
例えば、二次電池11に対して、あるSOCa(図示せず)から他のSOCb(図示せず)まで充電した場合は、それぞれの抵抗値Rを引き当てて、補正演算を行うとよい。二次電池11に対する充放電終了時の電圧および電流をそれぞれVlast、Ilastとし、充放電終了時から所定時間後に検出される電池の開回路電圧をOCVとすると、抵抗曲線における抵抗値Rは、次式(3)で求められる。

R=(|OCV-Vlast|)/Ilast …(3)
【0121】
また、充電電流Iが一定である場合には、電池の閉回路電圧をCCVとすると、抵抗値Rは、次式(4)によっても求めることができる。

R=(OCV-CCV)/I …(4)
【0122】
また、抵抗値Rは、他の方法によっても求めることができる。例えば、あるSOCにおける電流値xと、閉回路電圧CCVと、に基づいて、線形近似式「CCV=Hx+J」を求めることができる。抵抗値Rは、この近似式における係数Hに基づいて求めることができる。ここで、定数Jが開回路電圧OCVに等しい場合は、係数Hは、抵抗値Rに等しいと考えることができる。
【0123】
また、容量値Qは、充電開始時のSOCであるSOCiniと、充電終了時のSOCであるSOCendとの差、すなわちSOCの変動幅と、電気量Qchと、に基づいて、次の式(5)で求めることができる。

Q=Qch/(SOCend-SOCini)×100 …(5)
【0124】
[第8実施形態]
図15は、好適な第8実施形態による、車両の電池システムの例である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
車両電池システムS8は、車両10の内部に実装され、測定値検出部22と、電池制御部24と、負荷制御部26と、上位制御部28と、を備えている。
【0125】
また、二次電池11は、各々が正極および負極を有する複数の単電池11a,11b等を、直列に接続して構成されている。二次電池11は、不図示の負荷装置と接続されており、負荷装置に対して電力を供給する。測定値検出部22は、二次電池11の状態に関する様々な情報、例えば、二次電池11の総電流、総電圧、環境温度、最高温度、平均温度、最低温度や、単電池11a,11bのそれぞれの温度、電圧等のデータを検出する。測定値検出部22で検出されたデータは、電池制御部24に入力される。なお、測定値検出部22は、単電池11a,11bのそれぞれの種類または型式等、換言すれば、単電池11a,11bの個別の特徴についても検出することが好ましい。
【0126】
電池制御部24は、測定値検出部22から入力されたデータに基づいて、現在の二次電池11の充電状態(SOC等)を計算するとともに、異常状態の検知、入出力可能な電力の計算、温度コントロール指令の生成等の処理を実行する。電池制御部24から出力される各信号は、負荷制御部26および上位制御部28に供給される。上位制御部28は、供給された信号に基づいて、負荷制御部26に対して、制御指令を出力する。この制御指令は、例えば、負荷装置が消費できる最大電力や最大電力量等を指定するものである。負荷制御部26は、これら上位制御部28から入力された制御指令と、電池制御部24から入力された情報とに基づいて、負荷装置の制御を実行する。
【0127】
[第9実施形態]
図16は、好適な第9実施形態による、二次電池管理システムS9のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
二次電池管理システムS9は、検出部30と、電池稼働領域判定選択部40と、を供えている。
【0128】
電池稼働領域判定選択部40のハードウエア構成は、第1実施形態の二次電池管理装置100A(図2参照)のものと同様である。図16において、電池稼働領域判定選択部40の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能を、ブロックとして示している。
すなわち、電池稼働領域判定選択部40は、データ蓄積部41と、データ選択部42と、劣化算出部43と、運転パラメータ算出部45と、劣化予測部46と、走行開始状態決定部114と、を備えている。
【0129】
検出部30は、二次電池11(図15参照)の電圧、電流、温度等のデータを、日時等の時間情報とともに検出し、検出結果を電池稼働領域判定選択部40に出力する。この際、充電装置200(図12参照)に通知されて演算されたSOCの情報も、電池稼働領域判定選択部40に入力する。走行開始状態決定部114の機能は、第5実施形態(図8参照)のものと同様である。データ選択部42は、検出部30または車両10(図3参照)内の測定値検出部22(図15参照)によって取得されたデータ(電池温度・走行履歴に関係するデータを含む)および検出部30から出力されたデータのうち、予め設定した条件に合致するものを選択し、データ蓄積部41に出力する。
【0130】
なお、電池温度および走行履歴は、図15に示した測定値検出部22での測定値を、図示せぬOBD(On-board diagnostics)端子または任意の端末を経由して取得するとよい。データ蓄積部41は、SOC-OCVデータ蓄積部41aと、SOC-Rデータ蓄積部41bと、運転パラメータデータ蓄積部41cと、データベース44と、を備えている。
【0131】
データ選択部42は、一定期間または一定回数毎に、条件に合致したSOCに対する二次電池11(図15参照)の開回路電圧を取得し、SOC-OCVデータ蓄積部41aに蓄積する。同様に、データ選択部42は、当該SOCに対する二次電池11の抵抗値のデータを取得し、SOC-Rデータ蓄積部41bに蓄積する。さらに、データ選択部42は、運転パラメータデータ蓄積部41cに対して、測定値検出部22(図15参照)から出力されたデータに基づいて、二次電池11の使用時間に応じた使用履歴データとして短時間例えば、数分間の電流、通電時間、SOC変動等のデータを取得して蓄積する。
【0132】
データベース44には、劣化推定に使用する各種データが備えられる。これらは、例えば、劣化を推定する予測式、パラメータの初期値、パラメータの変化量等である。劣化算出部43は、データベース44、SOC-OCVデータ蓄積部41a、SOC-Rデータ蓄積部41bのデータを使用して、二次電池11の内部状態である容量や抵抗値を演算し、二次電池11の劣化状態を算出する。ここで、SOC-OCVデータ蓄積部41aおよびSOC-Rデータ蓄積部41bは、二次電池11の初期データも予め蓄積している。
【0133】
劣化算出部43は、二次電池11の現在の劣化状態を推定し、その結果を上位制御部28(図15参照)および劣化予測部46に出力する。劣化予測部46は、運転パラメータ算出部45で算出したパラメータを用いて、時系列の劣化予測を行い、その結果を劣化予測データとして出力する。走行開始状態決定部114は、使用SOC領域を決定し、走行開始条件(SOCs,Vs)を出力する。
【0134】
ここで、運転パラメータ算出部45の動作について詳細に説明する。
運転パラメータ算出部45は、データ選択部42で選択したデータから、データ蓄積部41内の運転パラメータデータ蓄積部41cに蓄積された使用履歴データに基づいて、二次電池11の運転条件に関する様々な運転パラメータを算出する。二次電池11の運転パラメータは、例えば、電力量、休止時間比率、移動距離、稼働時の稼働中心SOC、稼働電圧範囲、稼働上限電圧、稼働下限電圧、平均電流、最大・最小電流、電池温度、環境温度、発熱ファクタ、実効電流、稼働平均電気量、充電容量、放電容量、SOC変動幅、単位時間当たりの通電極性比率、単位時間当たりの休止時間比率などである。
【0135】
なお、運転パラメータは、これらに限定されない。運転パラメータ算出部45は、様々な運転条件から導き出せるパラメータを二次電池11の運転パラメータとして使用することができる。また、データ選択部42は、測定値検出部22で検出した所定範囲のデータを、データ蓄積部41に蓄積するデータであって二次電池11の使用に関するパラメータを算出するためのデータとして選択する。
【0136】
電気自動車などの車両は、走行時の加減速に電池の入出力が伴う。減速時に電池に回生電流を受け入れ走行時、停車時に放電する。図17は、車両が検出する二次電池11の電池電圧V、充放電電流IおよびSOCの経時的変化の一例を示す図である。
グラフG21は二次電池11の電池電圧V、グラフG22は充放電電流I、グラフG23はSOCの変化を示す。充放電電流Iは、正値が充電電流であり、負値が放電電流である。以下、図17を参照して、データ選択部42が実行するデータ選択の一例を説明する。
【0137】
車両システムにおいては、センサの誤差、補機や、制御回路への通電により電池を走行用の電力として利用する場合に、休止時間があった場合でも完全に通電電流値の検出値が0に一致しない場合がある。電池の休止時間とみなせるある一定電流幅内の区間を休止時間とみなし、この一定電流幅の電流を電流値「0」と以下記載する。図17の時刻t0~t01の期間、二次電池11に放電電流が流れ、時刻t01において充放電電流Iは「0」になっている。そして、時刻tc1において、二次電池11には再び放電電流が流れ始めている。このように、時刻t0~tchの期間では、二次電池11は断続的に放電されている。また、時刻tch~t05の期間には、二次電池11は充電されて電圧が上昇している。
【0138】
そして、時刻t05~tcまで、充放電電流Iが0になっている(但し、計測器の誤差を除く)期間が続いている。当該期間は、所定の休止閾値期間Trthよりも長くなっている。このように、通電終了からの経過時間が休止閾値期間Trthを超えると、データ選択部42は、再び通電が始まる直前のタイミング(図示の例では時刻tcの直前)の電池電圧V(同、Vtp1)を開回路電圧OCVとして記録する。さらに、データ選択部42は、そのタイミングにおけるSOC(同、SOCtp1)も記録する。
【0139】
同様に、時刻t06~tcpまで、充放電電流Iが0になっており、当該期間は、休止閾値期間Trthよりも長くなっている。そこで、データ選択部42は、再び通電が始まる直前のタイミングの電池電圧V(同、Vtp2)を開回路電圧OCVとして記録し、同タイミングにおけるSOC(同、SOCtp2)も記録する。このように、SOCと開回路電圧OCVとの関係を蓄積してゆくと、SOC-OCV特性を近似的に求めることができる。
【0140】
また、データ選択部42は、充放電電流Iの絶対値|I|が、急峻に(所定時間内に)0から所定の電流閾値Ij以上に変化するタイミングを検出する。図17の例では、時刻tcnが当該タイミングに相当する。データ選択部42は、検出したタイミング(時刻tcn)における電池電圧Vcnと、と充電状態SOCcnと、充放電電流Icnと、を記録する。さらに、データ選択部42は、二次電池11が閉回路状態になる直前の時刻tcn-1(図示せず)における電池電圧Vcn-1(図示せず)および充電状態SOCcn-1(図示せず)を記録する。
【0141】
そして、データ選択部42は、電池電圧Vcn,Vcn-1と、充電状態SOCcn,SOCcn-1と、充放電電流Icnと、に基づいて、一次近似により二次電池11の抵抗値Rを算出する。また、データ選択部42は、充放電電流Iの絶対値|I|が0に変化する通電終了時刻を検出する。図示の例では、時刻t01,t02,t03,t04,t05等がこれに該当する。これらを、以下、通電終了時刻t0xと総称する。
【0142】
また、データ選択部42は、通電終了時刻t0xの後、二次電池11の通電が開始される時刻を特定する。図示の例では、時刻tc1,tc2,tc3等がこれに該当する。これらを、以下、通電開始時刻tcxと総称する。データ選択部42は、これら通電終了時刻t0xと、通電開始時刻tcxとにおける電池電圧VおよびSOCを、二次電池11の充放電前後における電圧およびSOCとしてそれぞれ記録する。
【0143】
例えば、データ選択部42は、時刻t01,t02,t03におけるSOCを、充電状態SOCa,SOCb,SOCcとして記録し、同時刻における電池電圧V01,V02(図示せず),V03(図示せず)を開回路電圧として記録する。また、データ選択部42は、例えば時刻tc1,tc2,tc3における充電状態SOC、充放電電流I、電池電圧Vc1,Vc2(図示せず),Vc3(図示せず)を記録する。
【0144】
また、データ選択部42は、ある通電終了時刻t0xからその直後の通電開始時刻tcxまでの時間(例えば時刻t01~時刻tc1)を休止時間Tr(図示せず)として記録し、ある通電開始時刻tcxからその直後の通電終了時刻t0xまでの時間(例えば時刻tc1~時刻t02)を通電時間Tc(図示せず)として記録する。そして、データ選択部42は、各通電時間Tcにおける充放電電流Iの積算値を演算により求め、これによって容量値Q(図示せず)の時系列データを記録する。
【0145】
また、データ選択部42は、各通電時間Tcにおける電池電圧Vおよび充放電電流Iに基づいて、入出力電力を計算し、入出力電力を積算することによって入出力電力量を計算し記録する。さらに、データ選択部42は、ある期間内における休止時間Trの合計値ΣTrと、通電時間Tcの合計値ΣTcとを求め、ΣTc/(ΣTc+ΣTr)を通電比率として抽出する。
【0146】
また、データ選択部42は、ある期間において電流極性毎に充放電電流Iを積算し、その結果を各々の通電時間で除算することにより、平均充電電流および平均放電電流を算出し、電池温度とともに記録する。さらに、データ選択部42は、上述のように蓄積された充放電電流Iに基づいて、通電時に変化した電気量および通電時間も併せて記録する。
【0147】
図16において、運転パラメータ算出部45は、多岐にわたる運転パラメータを分析することができる。これらのパラメータは、特に図示しないが、例えば、開始電圧Vini、終了電圧Vlast、最大電圧Vmax、最低電圧Vmin、セル温度Tcell、環境温度Ta、充電容量Qc、放電容量Qd、単位時間当たりの電気量変動ΔQ、最大電流Imax、最小電流Imin、平均電流Iave、実効電流Ie、稼働中心電圧Vcenter、各電圧領域の滞在時間比率Ratet、単位時間当たりの通電極性比率tp、通電時間比率ts、休止時間比率tr、上下限SOC(SOCmax、SOCmin)、上下限電圧(Vmax、Vmin)、SOC変動幅ΔSOC、通電時間ttotalなどである。なお、通電極性比率tpは、一定の通電時間内に充電と放電の極性が何回変わったかを示す指標である。
【0148】
図17に示すように、二次電池11においては、充放電電流Iの変動に対してSOCも変動する。このときのSOCの最大値を最大SOCとし、SOCの最小値を最小SOCとし、両者の差からSOC変動幅ΔSOCが求められる。データ選択部42は、例えば充電が継続している部分の電気量ΔQcと、放電が継続している部分の電気量ΔQdとを電流波形から抽出する。そして、データ選択部42は、単位時間内でこれらの値を積算して平均値で除算することにより、単位時間当たりの電気量変動ΔQを算出する。
【0149】
また、データ選択部42は、その他にも、発熱の指標として定義する発熱ファクタ積算値I2tや、電池温度の変化量ΔTなどを使用して、運転パラメータの分析を行うことができる。なお、運転パラメータの分析に用いるデータの数は、任意に決定することができる。
【0150】
また、運転パラメータ算出部45は、データ蓄積部41に蓄積されたデータの蓄積期間に対応して、数時間から数十日分の運転パラメータを分析し、これらパラメータを運転状態に相当するパターンに近似する。さらに、算出した二次電池11の劣化状態と、その時の運転パラメータとを時系列に履歴セットとして蓄積し、運転方法が変化したときの条件と容量および抵抗の変化を記録してもよい。これにより、同一の二次電池11の異常を容易に発見できる効果がある。
【0151】
また、車両10の図示せぬOBD端子を介して二次電池11の使用時の温度データが出力されない場合も考えられる。このような場合、端末220(図12参照)に車両走行時および車両停止時の気温や電池温度を記録し、二次電池11の温度履歴として利用するとよい。
このように、本実施形態によれば、車両10の重量や、二次電池11の劣化状態に関する情報を適切に検出し、二次電池11の容量や抵抗等を取得でき、精度の高い劣化予測情報を利用することで、適切な走行開始条件(SOCs,Vs)を指定することが可能になる。
【0152】
[第10実施形態]
図18は、好適な第10実施形態による二次電池管理システムS10のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
二次電池管理システムS10は、充電装置200と、二次電池管理装置100F(コンピュータ)と、電力量データベース142と、電池劣化データベース144と、を備えている。
【0153】
二次電池管理装置100Fのハードウエア構成は、第4実施形態の二次電池管理装置100D(図6参照)と同様である。そして、二次電池管理装置100Fは、二次電池管理装置100Dと同様に、電力量算出部112と、走行開始状態決定部114と、デューティ比決定部116と、データベース更新部118と、解析部120と、充電制御部124と、を備えている。これらの機能も第4実施形態のものと同様である。
本実施形態によれば、二次電池管理装置100F内の充電制御部124がデューティ比Dtrに基づいて充電装置200を制御するため、個々の車両10における構成を簡略化することができる。
【0154】
[実施形態の効果]
以上のように好適な実施形態による二次電池管理装置100A,100B,100D,100E,100Fは、二次電池11によって駆動される移動体(10)の移動日時または移動時外気温と、移動経路と、に対応して所要電力量を記憶する電力量データベース142に基づいて、移動体(10)が指定された移動予定経路(Rt)を移動するために要すると予測される予測電力量W2を算出する電力量算出部(105,106,112)と、二次電池11の劣化状態(SOHQ,SOHR)を記録し、または、二次電池11の使用状態と劣化状態(SOHQ,SOHR)との相関関係を示すデータとともに二次電池11の過去の使用状態を記録した電池劣化データベース144を参照し、劣化状態(SOHQ,SOHR)に応じて、予測電力量W2を確保できる二次電池11の使用SOC領域または使用電圧領域を算出し、算出した使用SOC領域または使用電圧領域に基づいて、充電完了状態における二次電池11の電圧またはSOCである走行開始条件(SOCs,Vs)を決定する走行開始状態決定部114と、を備える。これにより、二次電池11の劣化状態(SOHQ,SOHR)に基づいて、二次電池11の充電状態を適切に決定できる。
【0155】
また、電力量データベース142は、移動日時または移動時外気温と、移動経路と、に加えて、移動体(10)の重量に対応して所要電力量を記憶するものであり、電力量算出部(105,106,112)は、移動体(10)の重量と、移動予定経路(Rt)とに基づいて予測電力量W2を算出すると一層好ましい。これにより、様々な重量を有する移動体(10)の様々な移動予定経路(Rt)に対応して、二次電池11充電状態を一層適切に決定できる。
【0156】
また、二次電池11は、通電状態と休止状態とを交互に繰り返しつつ充電されることが可能なものであり、電池劣化データベース144に基づいて、二次電池11の劣化が進行するほど通電状態のデューティ比を下げるようにデューティ比を決定するデューティ比決定部116をさらに備えると一層好ましい。これにより、二次電池11の劣化状態に応じて、デューティ比決定部116が適切なデューティ比を決定することができる。
【0157】
また、走行開始状態決定部114は、劣化状態(SOHQ,SOHR)と、走行開始条件(SOCs,Vs)との関係をマップ形式のデータとして記憶し、マップ形式のデータを参照して走行開始条件(SOCs,Vs)を決定すると一層好ましい。これにより、実装時のデータ量を削減し、演算量を低減することが可能になり、システムストレージに余裕を持たせて高速に演算することが可能になる。
【0158】
また、電力量データベース142は、移動日時または移動時外気温と、移動経路と、移動体の重量と、に加えて、移動体の運転者を特定する運転者識別情報に対応して所要電力量を記憶するものであり、走行開始状態決定部114は、教師あり学習によって学習処理を行った人工知能によって走行開始条件を決定するものであり、移動体の移動状況に応じて電力量データベース142と、電池劣化データベース144と、をリアルタイムで更新するデータベース更新部118をさらに備えると一層好ましい。これにより、移動体(10)の実際の運用状態に応じて、電力量データベース142および電池劣化データベース144をリアルタイムに更新できる。
【0159】
また、走行開始状態決定部114は、二次電池11の想定温度Tassを受信する機能と、受信した想定温度Tassが高くなるほど、二次電池11が所定時間以上滞在するSOCである滞在SOCが低くなるように、走行開始条件(SOCs,Vs)を決定する機能と、を備えると一層好ましい。これにより、想定温度Tassに対応した適切な走行開始条件(SOCs,Vs)を決定することができる。
【0160】
また、二次電池管理装置100B,100Dのように、走行開始状態決定部114から供給された走行開始条件(SOCs,Vs)と、デューティ比決定部116が決定したデューティ比Dtrと、に基づいて、二次電池11を充電する充電装置200を制御する充電制御部124をさらに備えると一層好ましい。これにより、適切なデューティ比Dtrで二次電池11を充電することができる。
【0161】
また、二次電池管理装置100Dのように、移動体(10)の運行スケジュールを立案する運行スケジュール立案部146と通信し、移動体の充電スケジュールを立案する充電スケジュール立案部122をさらに備えると一層好ましい。これにより、移動体(10)の運行スケジュールに適合した充電スケジュールを立案することができる。
【0162】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0163】
(1)上述した車両10は、配送、配達トラックのみならず、ルートが確定している電気自動車バス、路面電池車両等にも適用でき、劣化を抑制しながら電池量の最適化や使用期間とコストのバランスを取り二次電池を有効に活用することが可能になる。さらに、本発明における移動体は、車両10に限られるものではなく、二次電池を動力源とする走行ロボット、飛行ロボット、飛翔体、船舶等も含まれる。
【0164】
(2)上記実施形態における二次電池管理装置100A,100B,100D,100Eのハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、図7図13に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0165】
(3)図7図13に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0166】
(4)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0167】
10 車両(移動体)
11 二次電池
100A,100B,100D,100E 二次電池管理装置(コンピュータ)
105 予測電力量計算部(電力量算出部)
106 予測電力量補正部(電力量算出部)
112 電力量算出部(電力量算出手段、電力量算出過程)
114 走行開始状態決定部(充電条件決定手段、充電条件決定過程)
116 デューティ比決定部
118 データベース更新部
122 充電スケジュール立案部
124 充電制御部
142 電力量データベース
144 電池劣化データベース
146 運行スケジュール立案部
200 充電装置
Rt 予定ルート情報(移動予定経路)
Vs 走行開始電圧(走行開始条件)
Dtr デューティ比
SOCs 走行開始充電率(走行開始条件)
Tass 想定温度
W2 予測電力量
SOHQ,SOHR 劣化度(劣化状態)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18