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特開2022-174901グラビア塗布装置および塗布物の製造方法
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  • 特開-グラビア塗布装置および塗布物の製造方法 図1
  • 特開-グラビア塗布装置および塗布物の製造方法 図2
  • 特開-グラビア塗布装置および塗布物の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174901
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】グラビア塗布装置および塗布物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20221117BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20221117BHJP
   B41F 31/07 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B05C1/08
B05D1/28
B41F31/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080938
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅井 陸
【テーマコード(参考)】
2C250
4D075
4F040
【Fターム(参考)】
2C250DB29
4D075AC25
4D075AC28
4D075AC29
4D075AC34
4D075AC72
4D075AC88
4D075BB05Z
4D075BB24Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB36
4D075EA05
4D075EA33
4D075EA35
4F040AA22
4F040AB04
4F040AC01
4F040BA26
4F040CB06
4F040CB11
4F040CB16
4F040CB22
4F040CB27
4F040CB33
4F040CB40
(57)【要約】
【課題】安価かつ低コストであるドブ漬け方式のグラビア塗布装置において、簡易な構成によりグラビアロールに気泡が付着することを防止し得るグラビア塗布装置および塗布物の製造方法を提供すること。
【解決手段】塗布液を基材に転写させるグラビアロールと、前記塗布液を貯留し、且つ前記グラビア口ールの一部を前記塗布液に浸漬状態とする塗布液パンと、前記グラビアロール表面上の過剰な塗布液を掻き取るためのドクターブレードと、前記グラビアロール下方に、前記グラビア口ールの回転方向と逆向きに斜向し、間隔を設けてなる気泡防止プレートとを備えることを特徴とするグラビア塗布装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を基材に転写させるグラビアロールと、前記塗布液を貯留し、且つ前記グラビア口ールの一部を前記塗布液に浸漬状態とする塗布液パンと、前記グラビアロール表面上の過剰な塗布液を掻き取るためのドクターブレードと、前記グラビアロール下方に前記グラビア口ールの回転方向と逆向きに斜向し、間隔を設けてなる気泡防止プレートとを備えることを特徴とするグラビア塗布装置。
【請求項2】
前記気泡防止プレートを前記グラビアロールの直下に設けてなる請求項1に記載のグラビア塗布装置。
【請求項3】
前記気泡防止プレートを前記グラビアロール下方に、前記グラビア口ールの回転方向に斜向し、前記グラビアロールの長さ方向に対し、間隔を空けて複数個設けてなるグラビア塗布装置である。
【請求項4】
前記気泡防止プレートを前記グラビアロール下方に、前記グラビアロールの回転方向に斜向し、前記グラビアロールの長さ方向に対し、千鳥配置で複数個設けてなる請求項3に記載のグラビア塗布装置である。
【請求項5】
塗膜を有する塗布物の製造方法であって、請求項1~4に記載のグラビア塗布装置を用い、連続走行するウェブ状シート面に塗布液を塗布し、塗膜を形成する、塗布物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア塗布装置および塗布物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、連続走行している帯状の基材に塗布する方法として、特にロールを用いるアプリケーターとしては、ロールコーター、グラビアコーターなどが用いられている。たとえばグラビアコーターでは、インキパンからロール表面に形成されたセルに塗布液(接着剤またはインキ)が充填され、ロール表面の余分な塗布液はドクターブレードにより掻き取られ、セル内の塗布液を基材に転写させる方法である。塗布液の付着方法は、ドブ漬け方式、チャンバー方式、ドブ漬け方式でもファニッシャーロールを用いる方式などがある。
【0003】
例えば、安価で低コストであるドブ漬け方式のグラビア塗布装置においては、版胴の外周面に上記のセルを多数形成し、円筒の軸を中心に回転させながら塗布液を貯留させた塗布液パンに漬け、塗布液をセルに充填して余分な塗布液をドクターブレードで掻き取った後、被塗布媒体に圧接して塗布液を転移させ塗工を行う。このとき、グラビアロールの回転による空気の巻き込み、塗布液パン中での塗布液の流動、ドクターブレードでの掻き取りムラなど様々な要因で、セル11(図1参照)中の塗布液3に気泡が発生する。特に塗工速度が高速化するに従い起こり易くなり、塗布液3が被塗布媒体に転移されると流動して塗布膜を形成する際、その気泡を抱き込んで被塗布媒体にそのまま転移してピンホール、塗布抜け、スジなどの塗工欠陥となることがあった。このような気泡の抱き込みにより塗布液が塗布されない面が露出することによる外観不良やラミネート強度不足が問題となっている。
【0004】
このような塗工欠陥に対処する方法としては、直接グラビア版に塗布液を塗布するのではなく、上記のファニッシャーロールを介して塗布液を転移させる技術がある(図2参照)。しかし、この方法は機械コストがかかり、簡便ではない。
【0005】
また、特許文献1では、インキを保持するマニホールドを超音波振動させることが提案されている。特許文献1に開示された手法も、既存設備の大幅改修を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-190857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、安価かつ低コストであるドブ漬け方式のグラビア塗布装置において、簡易な構成によりグラビアロールに気泡が付着することを防止し得るグラビア塗布装置および塗布物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、塗布液を基材に転写させるグラビアロールと、前記塗布液を貯留し、且つ前記グラビア口ールの一部を前記塗布液に浸漬状態とする塗布液パンと、前記グラビアロール表面上の過剰な塗布液を掻き取るためのドクターブレードと、前記グラビアロール下方に、前記グラビア口ールの回転方向と逆向きに斜向し、間隔を設けてなる気泡防止プレートとを備えることを特徴とするグラビア塗布装置である。
【0009】
次に、請求項2に記載の発明は、前記気泡防止プレートを前記グラビアロールの直下に設けてなる請求項1に記載のグラビア塗布装置である。
【0010】
気泡防止プレートを、グラビア口ールの真下に、グラビア口ールの回転方向と逆向きに斜向させ、且つグラビア口ールの底面と気泡防止プレートの先端部に狭い間隔を形成するように設置することにより、グラビア口ール面に付着する、塗布液中の気泡や回転するグラビア口ールが塗布液に入るときに生じる気泡が除去される。
【0011】
次に、請求項3に記載の発明は、前記気泡防止プレートを前記グラビアロール下方に、前記グラビア口ールの回転方向に斜向し、前記グラビアロールの長さ方向に対し、間隔を空けて複数個設けてなるグラビア塗布装置である。
【0012】
次に、請求項4に記載の発明は、前記気泡防止プレートを前記グラビアロール下方に、前記グラビアロールの回転方向に斜向し、前記グラビアロールの長さ方向に対し、千鳥配置で複数個設けてなる請求項3に記載のグラビア塗布装置である。
【0013】
次に、請求項5に記載の発明は、塗膜を有する塗布物の製造方法であって、請求項1~4に記載のグラビア塗布装置を用い、連続走行するウェブ状シート面に塗布液を塗布し、塗膜を形成する、塗布物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価かつ低コストであるドブ漬け方式のグラビア塗布装置において、簡易な構成によりグラビアロールに気泡が付着することを防止し得るグラビア塗布装置および塗布物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のグラビア塗布装置の一実施の形態を示す概略側面図である。
図2】ファニッシャーロールを用いた従来のグラビア塗布装置の概略側面図である。
図3】本発明の気泡防止プレートを設置したグラビア塗布装置の概略側面図およびセル部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明のグラビア塗布装置の一実施の形態を示す概略側面図である。図1を参照して本発明の具体例を説明する。
【0017】
グラビア塗布装置10は、グラビアロール1と、塗布液パン2と、塗布液3と、ドクターブレード4と、気泡防止プレート5と、を備えている。グラビア塗布装置10は、塗布液パン2内に溜められた塗布液3にグラビアロール1を浸すことによりグラビアロール1表面に塗布液3が付着する。さらに塗布液3が付着したグラビアロール1が所定方向に回転し、ドクターブレード4にて余分な塗布液3をグラビアロール1から掻き取る。さらに塗布液パン2に設置された塗布液排出配管7から排出された塗布液3は貯蔵タンク9に戻され、送液ポンプ8により塗布液供給配管6から再び塗布液パン2へ供給される。なお、ここで言う塗布液3とは、顔料や染料等の色材を含んだ液体(インキ)や、樹脂組成物(接着剤)等、塗工対象となる液体のことを意味している。
【0018】
塗布液パン2は、塗布液3を収容する容器であり、図1に示すように、塗布液パン2は、グラビアロール1の下方に配置されている。グラビアロール1の少なくとも一部分は、塗布液パン2内に位置するようになり、グラビアロール1の版面15の一部分が、塗布液パン2に保持された塗布液3内に浸かるようになる。すなわち、グラビアロール1の底面
が塗布液パン2に保持された塗布液3内に浸漬された状態にて、グラビアロール1が回転することにより、グラビアロール1の版面15に塗布液3が供給されていく。
【0019】
ドクターブレード4は、グラビアロール1の回転軸に沿って延びる板状の部材である。ドクターブレード4は、その刃先がグラビアロール1の版面15に当接するように支持される。ドクターブレード4は、グラビアロール1の版面15に供給された余分な塗布液3を掻き取り、グラビアロール1から除去する。
【0020】
以上の構成からなるグラビア塗布装置10では、塗布液パン2に収容された塗布液3が、回転するグラビアロール1の版面15に供給される。ドクターブレード4の刃先が、グラビアロール1の版面15に当接し、版面15上に供給された余分な塗布液3を掻き取る。グラビアロール1と圧胴25との間に、ウェブ状のシート13が供給され、版面15上の塗布液3がシート13に供給される。このようにして、ウェブ状シート13面への塗工が連続的に行われる。
【0021】
ウェブ状シート13の基材としては本発明では特に限定するものではないが、二軸延伸オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、金属を蒸着した無延伸オレフィン樹脂及びこれらの複層の基材が使える。厚みは、5~200μm程度が好適である。
【0022】
塗布液3の塗布液供給配管6や塗布液排出配管7は従来公知のものが使用可能であり、特に限定しないが、塗布液パン2底面と接続したものが塗布液3の液面に影響を与えることが少ないので好適である。
【0023】
本発明における気泡防止プレート5を、グラビア口ール1の真下に、グラビア口ール1の回転方向と逆向きに斜向させ、且つグラビア口ール1の底面と気泡防止プレート5の先端部に狭い間隔を形成するように設置する。気泡防止プレート5は、突起状の板或いは凸状物体などで、形状は限定されない。例えば「仕切り板」のようなものが望ましい。
【0024】
また、気泡防止プレート5を、グラビア口ール1の真下に、グラビア口ール1の回転方向と逆向きに斜向させる形態以外にも、気泡防止プレート5をグラビアロール1の回転方向に斜向し、グラビアロールの長さ方向に間隔を空けて、複数個設けてもよい。その複数個の配列の仕方は、グラビアロールの長さ方向に対し、千鳥配置で設けてもよい。千鳥配置は3列以上あってもよい。
【0025】
図3に、本発明の気泡防止プレートを設置したグラビア塗布装置の概略側面図およびセル部分の拡大図を示す。図3の拡大図でわかるように、気泡防止プレート5により、グラビア口ール1面に付着する、塗布液3中の気泡や回転するグラビア口ール1が塗布液3に入るときに生じる気泡は、気泡防止プレート5先端部とグラビア口ール1の底面との間に形成される狭い隙間により、局部的に塗布液3の流れが速くなることによって流速エネルギーが高くなり、グラビア口ール1のセルに付着した気泡が掻き出され除去される。これによりグラビア口ール1面の塗布液3の濃度ムラが防止され、ウェブ状シート面への塗膜が均一となる。本発明の効果が得られる隙間としては0.5~5mm程度が好適である。
【実施例0026】
<実施例1>
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP:厚さ20μm)に接着剤を塗布する際、図1のような機構で接着剤を塗工した。図1の機構は、グラビアロール下方にグラビア口ールの回転方向と逆向きに斜向した気泡防止プレートが1枚設置されている。塗工後オーブンで塗工表面を乾燥させた後、AL蒸着した無延伸ポリプロピレンフィルム(VMCPP:厚さ30μm)と張り合わせることで二層フィルムを得た。
構成:OPP/接着剤/VMCPP
接着剤:TM321A/TM321B=2/1(東洋インキ社製)、塗布量2.0g/m2
【0027】
<比較例1>
気泡防止プレートが設置されていないグラビア塗布装置を用いたこと以外は実施例1と同様にして二層フィルムを得た。
【0028】
上記実施例1及び比較例1で得られた二層フィルムについて塗布ムラの目視による評価を実施した。上記二層フィルムを色見台の上に置き、下方の光源から光を透過させることで評価し、直線的なスジ状の塗布ムラなどが確認できない場合には〇、薄いが確認できる場合には△、はっきり確認できる場合には×とした。表1にその結果を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1より、実施例1では塗布ムラが発生していないことを確認した。比較例1では実施例1と比べて僅かであるが直線的なスジが発生していた。以上の結果より、気泡防止プレートを用いることで気泡による塗布ムラ、言い換えれば膜厚ムラを抑制できることを確認した。
【符号の説明】
【0031】
1・・・グラビアロール
2・・・塗布液パン
3・・・塗布液
4・・・ドクターブレード
5・・・気泡防止プレート
6・・・塗布液供給配管
7・・・塗布液排出配管
8・・・ポンプ
9・・・貯蔵タンク
10・・・グラビア塗布装置
11・・・セル
13・・・ウェブ状シート
15・・・版面
20・・・塗布液パン底面
25・・・圧胴
30・・・ファニッシャーロール
図1
図2
図3