(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174906
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの製造装置、及び、樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/25 20190101AFI20221117BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20221117BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20221117BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20221117BHJP
【FI】
B29C48/25
B29C48/08
B29C48/305
B29C48/88
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080945
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田熊 幸治
(72)【発明者】
【氏名】池永 啓昭
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 健一
(72)【発明者】
【氏名】大前 通宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】植野 俊明
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AG01
4F207AJ08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK64
4F207KK88
4F207KL84
4F207KL99
(57)【要約】
【課題】成形ユニット内における全体的な気流の発生を抑制することで樹脂フィルムの厚さむらの発生を抑制することができるフィルム製造装置を提供する。
【解決手段】樹脂フィルムの製造装置1は、樹脂をフィルム状に成形する成形ユニット20を備え、成形ユニット20は、溶融樹脂101をフィルム状に押し出す吐出口31を有するダイ30と、ダイ30の下方に配置され、吐出口31から吐出された溶融樹脂101を冷却して固化するキャストロール42と、キャストロール42よりも下流側に配置され、キャストロール42により冷却された樹脂フィルム102に接触する冷却ロール43,44及び剥離ロール45と、キャストロール42よりも上流側に配置されたカバー50及び防風板60と、剥離ロール45の下方に配置された防風板70と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂をフィルム状に成形する成形ユニットを備えた樹脂フィルムの製造装置であって、
前記成形ユニットは、
溶融樹脂をフィルム状に押し出すダイと、
前記ダイの下方に配置され、前記ダイの吐出口から吐出された前記溶融樹脂を冷却して固化するキャストロールと、
前記キャストロールよりも下流側に配置され、前記キャストロールにより冷却された樹脂フィルムに接触する下流側ロールと、
前記キャストロールよりも上流側に配置された上流側防風板と、
前記キャストロール又は前記下流側ロールの下方に配置された下流側防風板と、を備えた樹脂フィルムの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記成形ユニットは、前記キャストロールに対向するように配置され、前記吐出口から吐出された前記溶融樹脂を前記キャストロールと共に挟圧するタッチロールをさらに備えており、
前記上流側防風板は、
前記タッチロールよりも上流側に配置された第1の上流側防風板と、
前記タッチロールの下方に配置された第2の上流側防風板と、を含む樹脂フィルムの製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記第2の上流側防風板は、前記成形ユニットのベース部に傾倒可能に支持されている樹脂フィルムの製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記第2の上流側防風板は、前記タッチロールの中心軸の下方、又は、前記タッチロールの中心軸の下方よりも上流側に配置され、
前記第2の上流側防風板は、上流側に向かって傾倒可能であり、
前記タッチロールの回転方向は、前記タッチロールの下部が下流側から上流側に向かって回る方向である樹脂フィルムの製造装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記第2の上流側防風板は、
上流側本体部と、
前記上流側本体部よりも前記タッチロールの近傍に配置された上流側先端部と、を含み、
前記上流側先端部を構成する材料は、前記上流側本体部を構成する材料と相違しており、
前記上流側先端部は、樹脂材料から構成されている樹脂フィルムの製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記第2の上流側防風板は、前記上流側本体部に対する前記上流側先端部の相対位置を調整することが可能な位置調整機構を有している樹脂フィルムの製造装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記第2の上流側防風板は、前記タッチロールの小径部に対応した凸部を有している樹脂フィルムの製造装置。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記第2の上流側防風板は、前記タッチロール及び前記キャストロールの下方を視認可能な上流側窓部を有している樹脂フィルムの製造装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記下流側ロールは、
前記キャストロールよりも下流側に配置され、前記樹脂フィルムを冷却する冷却ロールと、
前記冷却ロールから前記樹脂フィルムを剥離する剥離ロールと、を含み、
前記下流側防風板は、前記冷却ロール又は前記剥離ロールの下方に配置されている樹脂フィルムの製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記下流側防風板は、前記成形ユニットのベース部に傾倒可能に支持されている樹脂フィルムの製造装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記下流側防風板は、
下流側本体部と、
前記下流側本体部よりも前記下流側ロールの近傍に配置された下流側先端部と、を含み、
前記下流側先端部を構成する材料は、前記下流側本体部を構成する材料と相違しており、
前記下流側先端部は、樹脂材料から構成されている樹脂フィルムの製造装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造装置であって、
前記下流側防風板は、前記下流側ロールの下方を視認可能な下流側窓部を有している樹脂フィルムの製造装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の製造装置を用いることにより、前記成形ユニット内における全体的な気流の発生を制御して樹脂フィルムを製造する樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムを製造する樹脂フィルムの製造装置、及び、その製造装置を用いて樹脂フィルムを製造する樹脂フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムを製造する方法として、溶融押出成形法の一種であるTダイキャスト法が知られている。このTダイキャスト法では、ダイと冷却ロールとの間の領域(以下「エアギャップ」と称する。)における溶融膜の揺れにより、樹脂フィルムに厚みむらが生じる場合がある。こうした厚みむらが樹脂フィルム生じると、当該樹脂フィルムの厚さの均一性が劣ることとなるため、特に樹脂フィルムを光学用途に用いる場合には、光学特性等の品質に大きな影響を及ぼしてしまう場合がある。
【0003】
こうした溶融膜の揺れを抑制するために、特許文献1の樹脂フィルムの製造装置では、ニップロールの上方に制御板を設けることで、ニップロールを冷却するためにエアブローから噴出されたエアが、当該ニップロールの表面に沿ってエアギャップに回り込むことを防止している。
【0004】
また、特許文献2の樹脂フィルムの製造装置では、ダイの吐出口から冷却ロールとの表面の間に樹脂フィルムの幅方向の両端を覆う一対の遮蔽板を設けることで、ダイの放熱によって生じた上昇気流が溶融膜に当たることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-007803号公報
【特許文献2】特開2009-154518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、樹脂フィルムを製造している際は、当該製造装置の成形ユニットを構成するダイ及びロールが高温になっていると共に、製造中の樹脂フィルム自体も高温となっている。そのため、この成形ユニットの内部には、こうした高温物から発せられた熱によって大局的な気流が発生しており、この気流によってエアギャップにおいて溶融膜に揺れが生じてしまう場合がある。これに対し、上記の特許文献1,2ではいずれも成形ユニット内における局所的な気流にしか着目しておらず、上述のような成形ユニット内に生じる全体的な気流については検討されていない。
【0007】
そこで、本発明は、成形ユニット内における全体的な気流の発生を抑制することで樹脂フィルムの厚さむらの発生を抑制することができる樹脂フィルムの製造装置、及び、樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、成形ユニットの外部からロールの下方への空気の流入を抑制することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、樹脂をフィルム状に成形する成形ユニットを備えた樹脂フィルムの製造装置であって、前記成形ユニットは、溶融樹脂をフィルム状に押し出すダイと、前記ダイの下方に配置され、前記ダイの吐出口から吐出された前記溶融樹脂を冷却して固化するキャストロールと、前記キャストロールよりも下流側に配置され、前記キャストロールにより冷却された樹脂フィルムに接触する下流側ロールと、前記キャストロールよりも上流側に配置された上流側防風板と、前記キャストロール又は前記下流側ロールの下方に配置された下流側防風板と、を備えた樹脂フィルムの製造装置が提供される。
【0010】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記成形ユニットは、前記キャストロールに対向するように配置され、前記吐出口から吐出された前記溶融樹脂を前記キャストロールと共に挟圧するタッチロールをさらに備えており、前記上流側防風板は、前記タッチロールよりも上流側に配置された第1の上流側防風板と、前記タッチロールの下方に配置された第2の上流側防風板と、を含んでいてもよい。
【0011】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、記第2の上流側防風板は、前記成形ユニットのベース部に傾倒可能に支持されていてもよい。
【0012】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記第2の上流側防風板は、前記タッチロールの中心軸の下方、又は、前記タッチロールの中心軸の下方よりも上流側に配置され、前記第2の上流側防風板は、上流側に向かって傾倒可能であり、前記タッチロールの回転方向は、前記タッチロールの下部が下流側から上流側に向かって回る方向であってもよい。
【0013】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記第2の上流側防風板は、上流側本体部と、前記上流側本体部よりも前記タッチロールの近傍に配置された上流側先端部と、を含み、前記上流側先端部を構成する材料は、前記上流側本体部を構成する材料と相違しており、前記上流側先端部は、樹脂材料から構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記第2の上流側防風板は、前記上流側本体部に対する前記上流側先端部の相対位置を調整することが可能な位置調整機構を有していてもよい。
【0015】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記第2の上流側防風板は、前記タッチロールの小径部に対応した凸部を有していてもよい。
【0016】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記第2の上流側防風板は、前記タッチロール及び前記キャストロールの下方を視認可能な上流側窓部を有していてもよい。
【0017】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記下流側ロールは、前記キャストロールよりも下流側に配置され、前記樹脂フィルムを冷却する冷却ロールと、前記冷却ロールから前記樹脂フィルムを剥離する剥離ロールと、を含み、前記下流側防風板は、前記冷却ロール又は前記剥離ロールの下方に配置されていてもよい。
【0018】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記下流側防風板は、前記成形ユニットのベース部に傾倒可能に支持されていてもよい。
【0019】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記下流側防風板は、下流側本体部と、前記下流側本体部よりも前記下流側ロールの近傍に配置された下流側先端部と、を含み、前記下流側先端部を構成する材料は、前記下流側本体部を構成する材料と相違しており、前記下流側先端部は、樹脂材料から構成されていてもよい。
【0020】
また、本発明の樹脂フィルムの製造装置において、前記下流側防風板は、前記下流側ロールの下方を視認可能な下流側窓部を有していてもよい。
【0021】
また、本発明によれば、上記のいずれかの製造装置を用いることにより、前記成形ユニット内における全体的な気流の発生を制御して樹脂フィルムを製造する樹脂フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上流側及び下流側防風板により成形ユニットの外部からロールの下方への空気の流入を抑制することで、当該成形ユニット内における全体的な気流の発生を抑制することができるので、樹脂フィルムの厚さむらの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態におけるフィルム製造装置の一例を示す全体構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態における成形ユニットの一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態における成形ユニットを示す正面図であり、カバーを開いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態におけるフィルム製造装置1の一例を示す全体構成図、
図2は本実施形態における成形ユニット20の一例を示す概略断面図、
図3は本実施形態における成形ユニット20を示す正面図であり、カバー50を開いた状態を示す図である。
【0025】
本実施形態におけるフィルム製造装置1は、樹脂フィルム102を製造するための装置である。このフィルム製造装置1により製造された樹脂フィルム102の用途としては、特に限定されないが、光学用途を例示することができる。また、この樹脂フィルム102を構成する樹脂の具体例としては、熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂等を例示することができる。これらの中でも、光学フィルム用の透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン樹脂(COC)等を用いることが好ましい。
【0026】
このフィルム製造装置1は、
図1に示すように、押出機10と、成形ユニット20と、巻取機80と、を備えている。
【0027】
押出機10は、ホッパ11を介してシリンダ内に投入された樹脂100をスクリューで送りながら加熱することで当該樹脂100を溶融する。この溶融樹脂101は、当該押出機10と連結された成形ユニット20のダイ30に連続的に供給される。押出機10として、単軸押出機、二軸押出機のいずれも用いてもよい。
【0028】
成形ユニット20は、押出機10から供給された溶融樹脂101をフィルム状に成形するユニットである。この成形ユニット20は、
図2に示すように、ダイ30と、タッチロール41と、キャストロール42と、冷却ロール43,44と、剥離ロール45と、を備えている。なお、冷却ロールの本数は、上記に特に限定されず、樹脂フィルムを構成する樹脂の種類等に応じて任意に設定することができ、冷却ロールを省略してもよい。
【0029】
ダイ30は、溶融押出成形用の所謂Tダイである。このダイ30は、押出機10から連続的に供給された溶融樹脂101を吐出する吐出口31を有している。溶融樹脂101はこの吐出口31からフィルム状に押し出される。
【0030】
成形ユニット20が有する5つのロール41~45は、当該成形ユニット20のベース部21に立設された側壁22(
図3参照)に回転可能に支持されており、特に図示しない動力伝達機構により回転駆動することが可能なように構成されている。これらの5つのロール41~45は、成形ユニット20の上流側から下流側に向かってこの順で並べられている。なお、本実施形態において、「上流側」及び「下流側」は、樹脂フィルムの搬送方向に対応したローラの並び方向を意味しており、
図2において、「上流側」は紙面左方向(成形ユニット20の前方側)に相当し、「下流側」は紙面右方向(成形ユニット20の後方側)に相当する。
【0031】
タッチロール41は、金属表面を有するロールであり、当該金属表面の内側に冷媒を流通させる冷却機構を備えている。これに対し、キャストロール42は、タッチロール41よりも剛性の高い金属製のロールであり、内部に冷媒を流通させる冷却機構を備えている。このタッチロール41とキャストロール42は、ダイ30の吐出口31の下方に相互に対向するように配置されており、ダイ30の吐出口31から吐出された溶融樹脂101を挟圧すると共に冷却して固化する。
【0032】
なお、成形ユニット20が、上述の特許文献2に記載されているような送風ノズル又は吸引ノズルを備えていてもよい。この送風ノズル又は吸引ノズルは、エアギャップAG(ダイ30の吐出口31からキャストロール42との間の領域)に位置する溶融樹脂101の近傍に、当該溶融樹脂101に対して平行な方向或いは直交する方向に流れるエア流を形成する。
【0033】
冷却ロール43,44は、キャストロール42と同様に、冷却機能を備えた金属製のロールである。タッチロール41とキャストロール42により成形された樹脂フィルム102は、この冷却ロール43,44に搬送される。樹脂フィルム102は、キャストロール42及び2つの冷却ロール43,44を通過することで多段的に冷却される。
【0034】
剥離ロール45は、金属製或いは樹脂製のロールである。この剥離ロール45は、最下流の冷却ロール44から樹脂フィルム102を剥離する。
図1に示すように、剥離ロール45により剥離された樹脂フィルム102は、成形ユニット20から搬出され、巻取機80によりロール状に巻き取られる。なお、巻取機80に代えて、剥離ロール45により剥離された樹脂フィルム102が延伸処理装置に搬出されてもよい。
【0035】
さらに、本実施形態の成形ユニット20は、
図2に示すように、カバー50と、防風板60,70と、を備えている。本実施形態におけるカバー50が本発明における「第1の上流側防風板」の一例に相当し、本実施形態における防風板60が本発明における「第2の上流側防風板」の一例に相当し、本実施形態における防風板70が本発明における「下流側防風板」の一例に相当する。
【0036】
カバー50は、タッチロール41よりも上流側に配置されている。このカバー50は、成形ユニット20のベース部21からタッチロール41の上方までの領域を覆うように、成形ユニット20の前方部分に設けられている。また、このカバー50は、ベース部21にヒンジ51を介して支持されており、成形ユニット20の前方部分を開閉することが可能となっている。
【0037】
また、このカバー50は、成形ユニット20の内部を視認可能な窓部52を有している。この窓部52は、カバー50に形成された開口に透明な樹脂部材を嵌め込むことで構成されている。
【0038】
上流側の防風板60は、タッチロール41の下方に配置された板状の部材である。この防風板60は、成形ユニット20のベース部21とタッチロール41との間の空間を仕切っている。この防風板60は、本体部61と、当該本体部61よりもタッチロール41の近傍に配置された先端部62と、を有している。なお、先端部62の端部とタッチロール41の表面との間には隙間が確保されており、当該先端部62の端部はタッチロール41の表面に接触していない。
【0039】
本体部61は、金属材料から構成されている。これに対し、先端部62は、ナイロン、耐熱性ゴム等の樹脂材料から構成されている。先端部62を樹脂材料で構成することで、防風板60がタッチロール41に万一接触してしまった場合であっても、タッチロール41や防風板60の損傷を抑制することができる。
【0040】
防風板60の本体部61は、タッチロール41及びキャストロール42の下方を視認可能な窓部65を有している。この窓部65は、防風板60に形成された開口に透明な樹脂部材を嵌め込むことで構成されている。
【0041】
図3に示すように、防風板60の先端部62は、第1の先端部621と、第2の先端部622と、第3の先端部623と、を含んでいる。第1の先端部621は、防風板60の中央に配置されている。第2の先端部622は、第1の先端部621の外側に配置されている。第3の先端部623は、第2の先端部622のさらに外側に配置されており、先端部62の両端を構成している。ここで、タッチロール41は、樹脂フィルム102に接触する部分を含む本体部411と、本体部411の両端に位置して当該本体部411を支持する小径部412と、を有している。第3の先端部623は、このタッチロール41の小径部412に対応するように配置されている。
【0042】
第1の先端部621は、ボルト等の固定部材により本体部61に固定されている。なお、後述する位置調整機構を用いて、この第1の先端部621を本体部61に対して相対移動可能としてもよい。
【0043】
これに対し、この第2の先端部622は、位置調整機構63を介して本体部61に取り付けられている。この位置調整機構63は、第2の先端部622に上下方向に沿って形成された長孔631と、当該長孔631に対向するように本体部61に形成された丸孔(不図示)と、この長孔631及び丸孔に挿通されたボルト等の締結部材632と、から構成されている。この位置調整機構63により、第2の先端部622を本体部61に対して相対的に上下方向に移動させることができ、防風板60とタッチロール41との間の隙間の大きさを調整することが可能となっている。
【0044】
同様に、第3の先端部623も、位置調整機構64を介して本体部61に取り付けられている。この位置調整機構64は、上述の位置調整機構63と同様の構成を有している。この位置調整機構64により、第3の先端部623を本体部61に対して相対的に上下方向に移動させることができ、防風板60とタッチロール41との間の隙間の大きさを調整することが可能となっている。
【0045】
また、この第3の先端部623は、他の先端部621,622よりも上方に突出しており、防風板60の凸部を形成している。この凸部がタッチロール41の小径部412に入り込んでおり、防風板60による成形ユニット20のベース部21とタッチロール41の間の密閉性が高められている。
【0046】
また、本実施形態では、この防風板60は、
図2に示すように、成形ユニット20のベース部21にヒンジ66を介して支持されており、傾倒することが可能となっている。このように防風板60を可倒式とすることで、成形ユニット20内のメンテナンスが容易となっている。
【0047】
この防風板60は、ヒンジ66によって上流側に向かって傾倒することが可能となっている。これに対し、タッチロール41の回転方向は、当該タッチロール41の下部が下流側から上流側に向かって回る方向となっており、
図2において時計回りとなっている。すなわち、防風板60とタッチロール41とが相互に対向する部分では、防風板60の傾倒方向がタッチロール41の回転方向と一致している。このため、樹脂フィルム102がタッチロール41に巻き付き、当該樹脂フィルム102が防風板60に接触してしまった場合であっても、防風板60がヒンジ66によって倒れることで、タッチロール41や防風板60の損傷を抑制することができる。
【0048】
また、
図3に示すように、成形ユニット20の側壁22にはブラケット23が設けられている。このブラケット23は、成形ユニット20の内側に向かって突出するように側壁22に固定されている。また、このブラケット23は、防風板60の両端に対向するように配置されている。このブラケット23の先端には磁石24が取り付けられている。この磁石24によって金属製の防風板60が保持されており、タッチロール41に巻き付いた樹脂フィルム102が防風板60に接触してしまった場合であっても、防風板60が容易に倒れることが可能となっている。
【0049】
なお、防風板60の設置位置は、タッチロール41の下方であれば特に限定されないが、上流側への防風板60の傾倒を可能とするために、タッチロール41の中心軸CL
0(
図2参照)の下方よりも上流側であることが好ましい。また、防風板60とタッチロール41との接触回避の観点から、防風板60の設置位置がタッチロール41の中心軸CL
0の直下であることがより好ましい。
【0050】
下流側の防風板70は、剥離ロール45の下方に配置された板状の部材である。この防風板70は、
図2に示すように、成形ユニット20のベース部21と剥離ロール45との間の空間を仕切っている。この防風板60も、上流側の防風板60と同様に、本体部71と、当該本体部71よりも剥離ロール45の近傍に配置された先端部72と、を有している。なお、先端部72の端部と剥離ロール45の表面との間には隙間が確保されており、当該先端部72の端部は剥離ロール45の表面に接触していない。
【0051】
本体部71は、金属材料から構成されている。これに対し、先端部72は、ナイロン、耐熱性ゴム等の樹脂材料から構成されている。先端部72を樹脂材料で構成することで、防風板70が剥離ロール45に万一接触してしまった場合であっても、剥離ロール45や防風板70の損傷を抑制することができる。
【0052】
この防風板70の本体部71は、冷却ロール43,44及び剥離ロール45の下方を視認可能な窓部73を有している。この窓部73は、防風板70に形成された開口に透明な樹脂部材を嵌め込むことで構成されている。
【0053】
また、本実施形態では、この防風板70は、成形ユニット20のベース部21にヒンジ74を介して支持されており、傾倒することが可能な可倒式となっている。この下流側の防風板70は、成形ユニット20内のメンテナンス性の観点から、ヒンジ74によって下流側に向かって傾倒することが可能となっている。特に図示しないが、上流側の防風板60と同様に、成形ユニット20の側壁22にブラケットが設けられており、このブラケットの先端に取り付けられた磁石によって防風板70が保持されている。
【0054】
なお、上流側の防風板60と同様に、剥離ロール45の形状に対応した凸部をこの防風板70に形成してもよい。また、位置調整機構により先端部72を本体部71に対して上下方向に相対移動可能としてもよい。
【0055】
また、防風板70の設置位置は、剥離ロール45の下方であれば特に限定されないが、下流側への防風板70の傾倒を可能とするために、剥離ロール45の中心軸CL
1(
図2参照)の下方よりも下流側であることが好ましい。また、防風板70と剥離ロール45との接触回避の観点から、防風板70の設置位置が剥離ロール45の中心軸CL
1の直下であることがより好ましい。
【0056】
また、本実施形態では、下流側の防風板70が剥離ロール45の下方に配置されているが、下流側の防風板70の設置位置は、タッチロール41よりも下流側のロールの下方であれば、特に限定されない。具体的には、下流側の防風板70を、キャストロール42、冷却ロール43、又は、冷却ロール44のいずれかの下方に設けてもよい。なお、外部からの成形ユニット20内への空気の流入を防止する観点からは、下流側の防風板70が剥離ロール45の下方に配置されていることが好ましい。
【0057】
ここで、上述のように、樹脂フィルムの製造中には、樹脂フィルム、ダイ、及び、ロールが高温となっている。このため、従来構造を有するフィルム製造装置では、これらの高温物から発せられた熱によって生じる上昇気流によって、ロールの下方の空気がロール間の間隙や空間を介してロールの上方に吸い上げられると共に、成形ユニットの外部からロールの下方に空気が吸い込まれるという、大きな気流が成形ユニット内に生じている。
【0058】
なお、ロール間の間隙の具体例としては、タッチロールとキャストロールにおいて樹脂フィルムよりも外側に形成された当該ロール同士の間の間隙を挙げることができる。また、ロール間の空間の具体例としては、タッチロールの小径部とキャストロールの小径部との間に形成された空間、キャストロールと冷却ロールとの間に形成された空間、冷却ロール同士の間に形成された空間、及び、冷却ロールと剥離ロールとの間に形成された空間を挙げることができる。
【0059】
これに対し、本実施形態では、成形ユニット20の前方部分にカバー50を設けると共に、タッチロール41の下方に防風板60を設けることで、成形ユニット20の前方から成形ユニット20内に外気が流入することを抑制している。同様に、剥離ロール45の下方に防風板70を設けることで、成形ユニット20の後方から成形ユニット20内に外気が流入することを抑制している。
【0060】
このように、カバー50及び防風板60,70によって外部から成形ユニット20のロール41~45の下方への外気の侵入を抑制することで、ロール41~45の下方に存在する空気の流動を遮断することができ、高温物に起因した上昇気流による吸い上げを抑制することができる。従って、成形ユニット20内における大局的な気流の発生を抑制することができ、エアギャップにおける溶融膜に揺れの発生を抑制することができるので、樹脂フィルムの厚さむらの発生を抑制することができる。
【0061】
また、フィルム製造装置1では、成形ユニット20内の状況確認やロールの手入れ等のために、カバー50を開放した状態で、フィルム製造装置1を稼働させる場合がある。このため、本実施形態では、カバー50及び防風板60の両方をキャストロール42よりも上流側に配置して、二重の防風構造を採用している。これにより、カバー50を開放した状態でフィルム製造装置1を稼働させる場合であっても、防風板60によって成形ユニット20の前方からロール41~45の下方への外気の侵入を抑制することができると共に、当該防風板60を安全カバーとして機能させることもできる。
【0062】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0063】
上述の実施形態では、単層の樹脂フィルム102を製造するフィルム製造装置1に本発明を適用した例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、多層の樹脂フィルムを製造するフィルム製造装置に本発明を適用してもよい。或いは、第1の樹脂からなる中央部と、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂からなる両端部と、を備えた複合フィルムを製造するフィルム製造装置に本発明を適用してもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、成形ユニット20がカバー50と防風板60の両方を備えているが、特にこれに限定されない。成形ユニット20がカバー50のみを備え防風板60を備えていなくてもよい。或いは、成形ユニット20が防風板60のみを備えカバー50を備えていなくてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、タッチロールを用いたタッチロール方式のフィルム製造装置に本発明を適用した例について説明したが、特にこれに限定されず、タッチロールを用いない所謂キャスティングロール方式に本発明を適用してもよい。この場合には、成形ユニットは、防風板として、カバー50と下流側の防風板70を備え、上流側の防風板60を備えていない。
【符号の説明】
【0066】
1…フィルム製造装置
10…押出機
11…ホッパ
20…成形ユニット
21…ベース部
22…側壁
23…ブラケット
24…磁石
30…ダイ
31…吐出口
41…タッチロール
411…本体部
412…小径部
42…キャストロール
43,44…冷却ロール
45…剥離ロール
50…カバー
51…ヒンジ
52…窓部
60…防風板
61…本体部
62…先端部
621~623…第1~第3の先端部
63…位置調整機構
631…長孔
632…締結部材
64…位置調整機構
65…窓部
66…ヒンジ
70…防風板
71…本体部
72…先端部
73…窓部
74…ヒンジ
80…巻取機
100…樹脂
101…溶融樹脂
102…樹脂フィルム