(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174909
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20221117BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221117BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20221117BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20221117BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221117BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20221117BHJP
C08G 69/26 20060101ALN20221117BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K3/013
C08K7/14
C08K7/06
C08K3/04
C08K3/01
C08G69/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080950
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁
(72)【発明者】
【氏名】金子 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮部 高徳
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚史
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB04
4J001EB06
4J001EB07
4J001EB08
4J001EB09
4J001EB10
4J001EB35
4J001EB36
4J001EB37
4J001EB46
4J001EC47
4J001EC48
4J001FB03
4J001FC06
4J001FD01
4J001GA12
4J001GB02
4J001GB03
4J001JA02
4J001JA04
4J001JA08
4J001JA15
4J001JB01
4J001JB17
4J001JB22
4J001JB23
4J001JC01
4J002CL031
4J002DA016
4J002DA027
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE186
4J002DE236
4J002DG027
4J002DG047
4J002DH047
4J002DJ006
4J002DJ036
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD207
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物であって、半結晶化時間が短く、かつ、シャルピー衝撃強さの低下を効果的に抑制でき、さらに、半結晶化時間の温度依存性が小さい樹脂組成物、および、樹脂組成物から形成された成形品の提供。
【解決手段】 ポリアミド樹脂と、強化材と、無機結晶化核剤とを含む樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含み、無機結晶化核剤の比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が8.0m2/g超であり、無機結晶化核剤の含有量が、樹脂組成物の2.0質量%以上である、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂と、強化材と、無機結晶化核剤とを含む樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含み、
前記無機結晶化核剤の比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が8.0m2/g超であり、
前記無機結晶化核剤の含有量が、樹脂組成物の2.0質量%以上である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記強化材が、ガラス繊維および/または炭素繊維を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機結晶化核剤の含有量が樹脂組成物の5.0質量%以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記キシリレンジアミンは、10~70モル%のパラキシリレンジアミンと、90~30モル%のメタキシリレンジアミンを含む(ただし、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることは無い)、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機結晶化核剤の含有量が樹脂組成物の10.0質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物の脱偏光強度法に従って測定した、測定温度110℃における半結晶化時間と測定温度150℃における半結晶化時間との差が20.0秒以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、耐衝撃性、耐摩擦・摩耗性などの機械的強度に優れ、耐熱性、耐油性などにも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、自動車部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、機械部品、建材・住設関連部品などの分野で幅広く使用されている。
ポリアミド樹脂には、例えばポリアミド6、ポリアミド66など多くの種類が知られているが、メタキシリレンアジパミド(以下、「MXD6」ともいう。)に代表される、キシリレンジアミンとアジピン酸やセバシン酸等の直鎖脂肪族ジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66などとは異なって、主鎖に芳香環を有し、高剛性、かつ、低吸水率で、耐油性に優れ、また、成形においては、成形収縮率が小さく、引けやソリが小さいことから精密成形にも適しており、極めて優れたポリアミド樹脂として位置付けられる。これらのことから、MXD6等のキシリレンジアミンと直鎖脂肪族ジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂は、電子・電気機器部品、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の様々な分野での成形材料、特に射出成形用材料として、近年ますます広く利用されてきている。
しかしながら、キシリレンジアミンと直鎖脂肪族ジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂の結晶化速度は、ポリアミド6やポリアミド66と比較して遅い。そのため、このようなポリアミド樹脂単独では、射出成形の際に金型内で結晶化しにくい傾向にある。
一方、ポリアミド樹脂の結晶化速度を高める方法としては、例えば、特許文献1~3に記載のものが知られている。このような方法により、半結晶化時間が短くなり、半結晶化速度が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/155982号
【特許文献2】特開2017-14387号公報
【特許文献3】国際公開第2012/046629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献3にも記載のとおり、キシリレンジアミンと直鎖脂肪族ジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂の半結晶化時間を短くする方法として、タルク等の無機結晶化核剤を配合することは知られている。しかしながら、無機結晶化核剤を配合すると、シャルピー衝撃強さが低くなる傾向にある。さらに、本発明者が検討したところ、測定温度によって、半結晶化時間が異なってしまうことが分かった。温度によって、半結晶化時間の差が大きいと、例えば、射出成形する場合、金型の場所(内側と外側)で金型温度ムラが発生したり、連続成形する際に、金型温度自身の温度ムラが発生してしまう。また、金型温度間で半結晶化時間に差があると、成形品ごとに結晶化の進行度合いにばらつきが発生してしまい、物性が安定性しない原因となりうる。
本発明はかかる課題を目的とするものであって、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物であって、半結晶化時間が短く、かつ、シャルピー衝撃強さの低下を効果的に抑制でき、さらに、半結晶化時間の温度依存性が小さい樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成された成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に、比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が8.0m2/g超の無機結晶化核剤を所定量以上配合することにより、上記課題は解決された。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂と、強化材と、無機結晶化核剤とを含む樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含み、前記無機結晶化核剤の比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が8.0m2/g超であり、前記無機結晶化核剤の含有量が、樹脂組成物の2.0質量%以上である、樹脂組成物。
<2>前記強化材が、ガラス繊維および/または炭素繊維を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記無機結晶化核剤の含有量が樹脂組成物の5.0質量%以上である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記キシリレンジアミンは、10~70モル%のパラキシリレンジアミンと、90~30モル%のメタキシリレンジアミンを含む(ただし、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることは無い)、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記無機結晶化核剤の含有量が樹脂組成物の10.0質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物の脱偏光強度法に従って測定した、測定温度110℃における半結晶化時間と測定温度150℃における半結晶化時間との差が20.0秒以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7><1>~6のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の効果】
【0006】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物であって、半結晶化時間が短く、かつ、無機結晶化核剤を配合しているにもかかわらず、シャルピー衝撃強さの低下を効果的に抑制でき、さらに、半結晶化時間の温度依存性が小さい樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から形成された成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂と、強化材と、無機結晶化核剤とを含む樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含み、前記無機結晶化核剤の比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が8.0m2/g超であり、前記無機結晶化核剤の含有量が、樹脂組成物の2.0質量%以上であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、半結晶化時間が長いキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物について、半結晶化時間を短くでき、かつ、シャルピー衝撃強さの低下を効果的に抑制できる。すなわち、無機結晶化核剤の含有量を従来よりも多くすることにより、半結晶化時間を短くしていると推測される。また、無機結晶化核剤として、比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が大きいものを用いることにより、その添加量を多くしても、シャルピー衝撃強さが低下するのを効果的に抑制できていると推測される。そして、無機結晶化核剤として、比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が大きいものを、従来よりも多く配合することにより、半結晶化時間の温度依存性を小さくできたと推測される。そのため、樹脂組成物の成形時に温度ムラが生じてしまっても、成形品中の結晶化度を一定に保つことが可能になり、成形品の物性が相対的に安定する傾向にある。また、金型温度間で結晶化速度(半結晶化時間)の差が小さい樹脂組成物であるため、金型温度にバラツキが生じても、結晶化の進行度合いのバラツキを小さくするいとができ、成形品の物性の安定に寄与する。
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、結晶化度も高くすることができる。
以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0009】
<ポリアミド樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む。本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いることにより、高剛性、低吸水率、耐油性、小さい成形収縮率、低引け、低ソリといった、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が本来的に有している性能を活用した成形品とすることができる。
【0010】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
【0011】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が、キシリレンジアミン(好ましくはパラキシリレンジアミンおよび/またはメタキシリレンジアミン)に由来する。
本実施形態において、ジアミン由来の構成単位は、10~70モル%のパラキシリレンジアミンと、90~30モル%のメタキシリレンジアミンを含む(ただし、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることは無い)ことが好ましく、10~60モル%のパラキシリレンジアミンと、90~40モル%のメタキシリレンジアミンを含むことがより好ましく、40~60モル%のパラキシリレンジアミンと、60~40モル%のメタキシリレンジアミンを含むことがより好ましい。このような範囲とすることにより、半結晶化時間をより短くすることができ、また、半結晶化時間の温度依存性もより小さくすることができる。また、成形性の観点からは、25~35モル%のパラキシリレンジアミンと、75~65モル%のメタキシリレンジアミンを含むことが好ましい。
【0012】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0013】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の、好ましくは75モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸および/またはセバシン酸、より好ましくはセバシン酸)に由来する。
【0014】
炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数4~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、炭素数6~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましく、炭素数8~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸であることがさらに好ましい。
炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、アジピン酸および/またはセバシン酸であることがさらに好ましく、セバシン酸であることが一層好ましい。炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0015】
上記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0016】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい第一の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がアジピン酸に由来し、キシリレンジアミン由来の構成単位の60モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がメタキシリレンジアミンに由来する構成単位であるポリアミド樹脂である。
【0017】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい第二の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がセバシン酸に由来し、キシリレンジアミン由来の構成単位の40~90モル%がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であり、60~10モル%がパラキシリレンジアミンに由来する構成単位であるポリアミド樹脂である。
本実施形態の樹脂組成物は、第二の実施形態のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含むことが好ましい。
【0018】
なお、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として含むが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましく、さらには、98モル%以上、99モル%以上、100モル%であってもよい。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。他のポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であってもよく、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12等が例示され、ポリアミド66が好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6I、ポリアミド9I、ポリアミド6T/6I、ポリアミド9T/9Iが例示される。
本実施形態の樹脂組成物におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂全体を100質量部としたとき、10質量部以下であることが好ましく、さらには、8質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下、3質量部以下、1質量部以下であってもよい。前記他のポリアミド樹脂の含有量の下限値は0質量部であってもよい。特に、本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド66を含まない構成とすることもできる。また、本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド6を含まない構成とすることもできる。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(好ましくはキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂)を樹脂組成物の25質量%以上の割合で含むことが好ましく、30質量%以上の割合で含むことがより好ましく、35質量%以上の割合で含むことがさらに好ましく、40質量%以上であることが一層好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。また、ポリアミド樹脂の含有量の上限値としては、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0021】
<強化材>
本実施形態の樹脂組成物は、強化材を含む。強化材を含むことにより、得られる成形品の機械的強度を向上させることができる。尚、本実施形態における強化材であって無機結晶化核剤に相当するものは、本発明においては、無機結晶化核剤とする。
本実施形態の樹脂組成物で用いる含有され得る強化材としては、樹脂に配合することにより得られる樹脂組成物の機械的性質を向上させる効果を有するものであり、常用のプラスチック用強化材を用いることができる。強化材は、有機物であっても、無機物であってもよいが、無機物が好ましい。強化材は、好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の強化材を用いることができる。また、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状または無定形の強化材;ガラスフレーク、グラファイト等の鱗片状の強化材を用いることもできる。
本実施形態においては、上記の中でも、機械的強度、剛性および耐熱性の点から、繊維状の強化材を含むことが好ましく、ガラス繊維および/または炭素繊維を含むことがより好ましく、ガラス繊維を含むことがさらに好ましい。繊維状の強化フィラーとしては、丸型断面形状または異型断面形状のいずれをも用いることができる。
強化材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。特に、表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
【0022】
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラス、Rガラス、Mガラス、Dガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維とは、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状、多角形状で繊維状外観を呈するものをいう。
【0023】
本実施形態の樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や単繊維を複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、長さ1~10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10~500μmに粉砕した「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
【0024】
また、本実施形態で用いるガラス繊維は、断面が円形であっても、非円形であってもよい。断面が非円形であるガラス繊維を用いることにより、得られる成形品の反りをより効果的に抑制することができる。また、本実施形態では、断面が円形であるガラス繊維を用いても、反りを効果的に抑制することができる。
【0025】
本実施形態の樹脂組成物における強化材の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、40質量部以上であることがさらに好ましい。上限値については、ポリアミド樹脂100質量部に対し、120質量部以下であることが好ましく、110質量部以下がより好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であることが一層好ましく、60質量部以下であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における強化材の含有量は、また、樹脂組成物の20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。上限値については、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が一層好ましく、40質量%以下であってもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、強化材を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。なお、本実施形態における強化材の含有量には、集束剤および表面処理剤の量を含める趣旨である。
【0026】
<無機結晶化核剤>
本実施形態の樹脂組成物は、比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が8.0m2/g超である無機結晶化核剤を樹脂組成物の2.0質量%以上の割合で含む。本実施形態におけるBET法は、不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法によって測定される方法である。このような構成とすることにより、半結晶化時間が長いキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物について、半結晶化時間を短くでき、かつ、シャルピー衝撃強さの低下を効果的に抑制できると推測される。さらに、比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が8.0m2/g超である無機結晶化核剤を用いることにより、成形品の結晶化度も高くすることができると推測される。すなわち、単に、樹脂組成物の結晶化速度を早くするだけではなく、得られる成形品の結晶化度も高くなる傾向にあると推測される。この点は、後述する実施例のΔ軟化温度が高いによって確認される。
【0027】
本実施形態で用いる無機結晶化核剤の比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積は8.0m2/g超であり、9.0m2/g以上であることが好ましく、10.0m2/g以上であることがより好ましく、15.0m2/g以上であることがさらに好ましく、20.0m2/g以上であることが一層好ましく、25.0m2/g以上であることがより一層好ましく、30.0m2/g以上であることがさらに一層好ましく、35.0m2/g以上であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることにより、半結晶化時間の温度依存性をより小さくできる。また、前記無機結晶化核剤の比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積の上限値は特に定めるものでは無いが、例えば、100.0m2/g以下が実際的であり、60.0m2/g以下でも十分に要求性能を満たすものである。
【0028】
無機結晶化核剤の材質は、溶融加工時に未溶融であり、冷却過程において結晶の核となり得るものであれば、特に限定されないが、グラファイト、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、燐酸ソーダ、マイカおよびカオリンが例示され、タルクおよび炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、タルクがさらに好ましい。
【0029】
無機結晶化核剤は、粒状であることが好ましく、粒径分布(D50)が0.8~6.0μmの粒状であることが好ましい。ここでの粒径分布(D50)とは、積算値が50%である粒度の直径を意味する。
【0030】
無機結晶化核剤(好ましくはタルク)の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、1.3質量部以上であることが好ましく、2.5質量部以上であることがより好ましく、3.0質量部以上であることがさらに好ましく、4.0質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の半結晶化時間をより短くすることができると共に、半結晶化時間の温度依存性を小さくすることができる。また、無機結晶化核剤の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、7.5質量部以下であることが好ましく、7.0質量部以下であることがより好ましく、6.0質量部以下であることがさらに好ましく、5.5質量部以下であることが一層好ましく、4.5質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、シャルピー衝撃強さの低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0031】
無機結晶化核剤(好ましくはタルク)の含有量は、樹脂組成物中、2.0質量%以上であり、2.0質量%超であることが好ましく、3.5質量%以上であることがより好ましく、4.0質量%以上であることがさらに好ましく、5.0質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の半結晶化時間をより短くすることができると共に、半結晶化時間の温度依存性を小さくすることができる。また、無機結晶化核剤の含有量は、樹脂組成物中、10.0質量%以下であることが好ましく、9.0質量%以下であることがより好ましく、8.0質量%以下であることがさらに好ましく、7.0質量%以下であることが一層好ましく、6.0質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、シャルピー衝撃強さの低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、無機結晶化核剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、光安定剤、酸化防止剤、離型剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、耐候性改良剤、耐光性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの成分の含有量は、本実施形態の樹脂組成物の5質量%以下の範囲であることが好ましい。
これらの詳細は、特許第4894982号の段落0130~0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、ポリアミド樹脂、強化材、および、無機結晶化核剤、ならびに、必要に応じて配合される他の添加剤の含有量が調整される。本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、強化材、および、無機結晶化核剤の合計が樹脂組成物の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることが好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0033】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、半結晶化時間の温度依存性が小さい方が好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物の脱偏光強度法に従って測定した、測定温度110℃における半結晶化時間と測定温度150℃における半結晶化時間との差が20.0秒以下であることが好ましく、16.0秒以下であることがより好ましく、13.0秒以下であることがさらに好ましく、11.0秒以下であることが一層好ましく、9.0秒以下であることがより一層好ましく、8.0秒以下であることがさらに一層好ましく、5.5秒以下であることが特に一層好ましい。下限値は、0秒が理想であるが、0.5秒以上が実際的である。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物は、測定温度110℃における半結晶化時間が短いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物の脱偏光強度法に従って測定した測定温度110℃における半結晶化時間が、25.0秒以下であることが好ましく、20.0秒以下であることがより好ましく、16.0秒以下であることがさらに好ましく、13.0秒以下であることが一層好ましく、12.0秒以下であることがより一層好ましい。下限値は低ければ低い方がよいが、1.0秒以上であることが実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、測定温度150℃における半結晶化時間が短いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物の脱偏光強度法に従って測定した測定温度110℃における半結晶化時間が、35.0秒以下であることが好ましく、32.0秒以下であることがより好ましく、28.0秒以下であることがさらに好ましく、25.0秒以下であることが一層好ましく、18.0秒以下であることがより一層好ましい。下限値は低ければ低い方がよいが、1.0秒以上、さらには2.0秒以上であることが実際的である。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、当該樹脂組成物の軟化温度と、前記樹脂組成物から結晶化核剤を除き、結晶化核剤と等質量のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を配合したときの樹脂組成物(以下、「結晶化核剤未添加樹脂組成物」という)の軟化温度の差が大きい方が好ましい。前記軟化温度の差が大きいほど、得られる成形品の結晶化度が高いと言える。
具体的には、測定温度110℃における、本実施形態の樹脂組成物の軟化温度と、結晶化核味未添加樹脂組成物の軟化温度の差が、4.0℃以上であることが好ましい。前記軟化温度の上限値の差は、15.0℃以下であることが実際的である。
また、測定温度150℃における、本実施形態の樹脂組成物の軟化温度と、結晶化核剤未添加樹脂組成物の軟化温度の差が、5.0℃以上であることが好ましい。前記軟化温度の上限値の差は、5.0℃以下であることが実際的である。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物は耐衝撃性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を厚み4mmのISO試験片に成形し、ISO-179に従ったノッチ有シャルピー衝撃強さが6.0kJ/m2以上であることが好ましく、7.0kJ/m2以上であることがより好ましい。上記ノッチ有シャルピー衝撃強さの上限は、特に定めるものではないが、15.0kJ/m2以下が実際的であり、12.0kJ/m2以下であっても十分に要求性能を満たす。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物は、結晶化核剤未添加樹脂組成物に対する耐衝撃性の保持率が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物から形成されたISO引張り試験片(4mm厚)のISO-179に従ったノッチ有シャルピー衝撃強さをA、結晶化核剤未添加樹脂組成物から形成されたISO引張り試験片(4mm厚)のISO-179に従ったノッチ有シャルピー衝撃強さをBとしたとき、ノッチ有シャルピー衝撃強さの保持率が、(A/B)×100(単位:%)が、例えば、84%以上であり、87%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、89%以上であることがさらに好ましい。上限値は、100%が理想であるが、99%以下であっても要求性能を満たす。
上記各種物性値は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0038】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によって製造できる。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法の一実施形態として、ポリアミド樹脂に、強化材および無機結晶化核剤、ならびに、必要に応じて配合される他の成分を配合して混練することが好ましい。このような樹脂組成物の一例として、ペレットが挙げられる。
具体的には、ポリアミド樹脂、強化材および無機結晶化核剤、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。また、強化材は、混練時に破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。さらに、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
【0039】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。
本実施形態の成形品の製造方法は、特に定めるものではない。
例えば、本実施形態の成形品は、各成分を溶融混練した後、直接に各種成形法で成形してもよいし、各成分を溶融混練してペレット化した後、再度、溶融して、各種成形法で成形してもよい。
【0040】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物は、特に、射出成形法など金型を用いる成形法に好適に用いられる。
【0041】
本実施形態の成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の成形品の利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。
【実施例0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0044】
1.原料
<ポリアミド樹脂>
<<MP10の合成例(M/Pモル比=80/20)>>
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を撹拌しながら、メタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学社製)とパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学社製)のモル比が8:2の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応を継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。
【0045】
<<MP10の合成例(M/Pモル比=70/30)>>
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を撹拌しながら、メタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学社製)とパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学社製)のモル比が7:3の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応を継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。
【0046】
<<MP10の合成例(M/Pモル比=50/50)>>
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を撹拌しながら、メタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学社製)とパラキシリレンジアミン(PXDA)(三菱ガス化学社製)のモル比が5:5の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を260℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応を継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。
【0047】
<<MXD10の合成例>>
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を撹拌しながら、メタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学社製)を、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応を継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。
【0048】
<強化材>
GF:日本電気硝子(株)製、T-275H、ガラス繊維、チョップドストランド
【0049】
<結晶化核剤種>
FG-15:タルク、日本タルク社製
SG2000:タルク、日本タルク社製
PAOG-2:タルク、日本タルク社製
ミクロンホワイト#5000A:タルク、林化成社製
ミクロンホワイト#5000S:タルク、林化成社製
アデカスタブ NA-11:ADEKA社製、有機結晶化核剤
SWE:タルク、日本タルク社製
【0050】
2.実施例1~実施例7、参考例1~参考例4、比較例1~比較例7
<コンパウンド>
後述する表1~表3に示す組成となるように(各表の各成分は質量部表記である)、ガラス繊維以外の成分をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(芝浦機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-W-1-MP)を用いて投入した。また、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-V-1B-MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。押出機の温度設定は、280℃とした。
【0051】
<吸水率および吸水時の寸法変化>
上記で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で、縦100mm、横100mm、厚み2mmの試験片を射出成形した。
上記試験片のイオン交換水に浸漬させて、23℃条件下で1ヵ月静置した。試験前後の試験片の重量から吸水率を算出した。また、試験前後の試験片の縦と横の長さを測り、吸水時の寸法変化を評価した。
吸水率=試験後の試験片重量/試験前の試験片重量×100(単位:%)
寸法変化率=(試験後の試験片の長さ-試験前の試験片の長さ)/試験前の試験片の長さ×100(単位:%)
試験片の縦方向の寸法変化率と横方向の寸法変化率の平均値を測定値とした。
【0052】
<荷重たわみ温度(HDTUL)>
上記で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO-75-1、2に準拠して、上記ISO引張り試験片(厚さ4mm)を用いて、曲げ応力1.80MPa条件下で荷重たわみ温度を測定した。単位は、℃で示した。
【0053】
<シャルピー衝撃強さ(ノッチ有)>
上記ISO引張り試験片(4mm厚)をJIS K7144に従ってノッチ有試験片に加工した。ノッチ有試験片について、ISO-179に従って、ノッチ有シャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。結果を表1~表3に示す。
また、同じ処方で、タルク未添加の処方(結晶化核剤未添加樹脂組成物)と比較して時のノッチ有シャルピー衝撃強さの保持率を算出した。タルク未添加の分は、ポリアミド樹脂の量で調整した。
タルク未添加と比較して時のノッチ有シャルピー衝撃強さの保持率
=(タルク添加処方のノッチ有シャルピー衝撃強さ/タルク未添加処方のノッチ有シャルピー衝撃強さ)×100(単位:%)
例えば、実施例2は、参考例1と対比される。
【0054】
<結晶化核剤未添加の場合と比較した軟化温度の差>
上記で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度110℃または150℃の条件で、ぞれぞれ、縦100mm×横60mmのプレートであって、厚み3mm(縦40mm長)、厚み2mm(縦30mm長)、厚み1mm(縦30mm長)の3段プレートを射出成形した。
得られた試験片の1mm厚みの領域の中央部分について、Nano-TA測定に従って、金型温度110℃と150℃のときについて、それぞれ、軟化温度(単位:℃)を測定した。
結晶化核剤未添加樹脂組成物(参考例1~4)と比較した、軟化温度の差(単位:℃)を表に示した。例えば、実施例1の場合、参考例1と対比される。
分析装置:アナシスインスツルメント製 VESTA
<<条件>>
開始温度:40℃
終了温度:350℃
昇温速度:100℃/秒
冷却速度:1000℃/秒
データ速度:50ポイント/秒
プローブ(Probe):N200
エンゲージメントフォース(Engage Force):1.0kV
測定モード:deflectionモード(ポイント分析)
樹脂に針(プローブ)を当てて昇温することで樹脂が柔らかくなって針が樹脂に入り込む温度を測定する方法であり、軟化温度が高いほど結晶化度が高い樹脂であることを示す。
【0055】
<半結晶化時間および測定温度による半結晶化時間の差(脱偏光強度法)>
上記で得られたペレットを用いて100μm厚みのフィルムを作製し、そのフィルムをカバーガラスで挟み、ホットプレートで、250℃で3分間加熱後に測定した。半結晶化時間は110℃および150℃における半結晶化時間を測定した。半結晶化時間が短いほど、結晶化速度が速いと言える。
半結晶化測定装置は、コタキ製作所、MK-701を用いた。
また、110℃で測定した半結晶化時間と150℃で測定した半結晶化時間の差を算出した。前記差が小さいほど、結晶化速度の温度依存性が小さいと言える。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、半結晶化時間が短く、かつ、無機結晶化核剤未添加の場合と比較してシャルピー衝撃強さの低下を効果的に抑制でき、さらに、半結晶化時間の温度依存性が小さい樹脂組成物であった(実施例1~7)。
これに対し、無機結晶化核剤を一定量以上配合し、かつ、その比表面積測定法(BET法)に従って測定した面積が8.0m2/g以下である場合(比較例1、4、7)、シャルピー衝撃強さの保持率が低かった。また、有機結晶化核剤を用いた場合(比較例2)、測定温度110℃における半結晶化時間が長く、また、半結晶化時間の温度依存性も大きかった。無機結晶化核剤の含有量が少ない場合(比較例3)、測定温度110℃における半結晶化時間が長く、また、半結晶化時間の温度依存性も大きかった。