(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174912
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】トンネル函体の横断方向断面の設計方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
E21D9/06 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080953
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】倉永 亮平
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 直俊
(72)【発明者】
【氏名】黒川 翔
(72)【発明者】
【氏名】亀田 佳明
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA02
2D054AA03
2D054AA04
2D054AA05
2D054AB05
2D054AC18
(57)【要約】
【課題】少なくとも曲線区間を有するトンネル函体群を構成するトンネル函体の横断方向の設計において、精度の高い断面力の算定を実現できる、トンネル函体の横断方向断面の設計方法を提供する。
【解決手段】少なくとも曲線区間を有するトンネル函体群20を構成する、トンネル函体の横断方向断面の設計方法であり、曲線区間におけるジャッキ推力の法線方向成分である、第一法線方向荷重、もしくは、曲線区間におけるジャッキ推力の反力として地盤から法線方向に受ける地盤反力である、第二法線方向荷重のいずれか一方を算定する、A工程と、トンネル函体21の横断方向梁モデルM2を作成するB工程と、横断方向梁モデルM2に対して第一法線方向荷重もしくは第二法線方向荷重を載荷することにより、ジャッキ推力に起因する第一断面力を算定するC工程とを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進装置もしくは掘進機の有する推進ジャッキによるジャッキ推力を受けながら、複数のトンネル函体により形成されて少なくとも曲線区間を有する、トンネル函体群の縦断方向に直交する、トンネル函体の横断方向断面の設計方法であって、
前記曲線区間における前記ジャッキ推力の法線方向成分である、第一法線方向荷重、もしくは、前記曲線区間における前記ジャッキ推力の反力として地盤から法線方向に受ける地盤反力である、第二法線方向荷重、の少なくとも一方を算定する、A工程と、
前記トンネル函体の横断方向断面の梁モデルを作成し、該横断方向断面の梁モデルに対して地盤バネを取り付けて横断方向梁モデルとする、B工程と、
前記横断方向梁モデルに対して、前記第一法線方向荷重もしくは前記第二法線方向荷重を載荷することにより、前記ジャッキ推力に起因する第一断面力を算定する、C工程と、を有することを特徴とする、トンネル函体の横断方向断面の設計方法。
【請求項2】
前記第一法線方向荷重の算定方法は、
前記掘進機のカッタヘッドに作用する先端抵抗力と、前記トンネル函体群の周面が受ける周面抵抗力とを加えることにより必要ジャッキ推力を算定し、前記曲線区間が鉛直面内にある場合は、前記トンネル函体群と前記掘進機の自重抵抗力をさらに加えることにより必要ジャッキ推力を算定し、
前記必要ジャッキ推力に基づいて、前記トンネル函体群を構成する各トンネル函体に作用する前記ジャッキ推力を算定し、
前記ジャッキ推力と、前記トンネル函体の縦断方向の折れ角とにより、前記第一法線方向荷重を算定することを特徴とする、請求項1に記載のトンネル函体の横断方向断面の設計方法。
【請求項3】
前記第二法線方向荷重の算定方法は、
コンピュータにおいて、前記トンネル函体群を、等価剛性を有する曲線含有梁モデル、もしくは、隣接する前記トンネル函体の梁モデルを回転バネにて連結してなる曲線含有梁モデルを作成し、該曲線含有梁モデルに対して地盤バネを取り付けて縦断方向梁モデルとし、
前記縦断方向梁モデルに対して前記ジャッキ推力を載荷し、該縦断方向梁モデルに生じる地盤反力である前記第二法線方向荷重を算定することを特徴とする、請求項1に記載のトンネル函体の横断方向断面の設計方法。
【請求項4】
前記C工程では、
前記A工程にて算定された前記第一法線方向荷重もしくは前記第二法線方向荷重を、前記横断方向断面であるリング継手面に設けられているリング継手の数で除すことにより、リング継手当たりの集中荷重を求めて各リング継手位置に載荷する、
もしくは、前記A工程にて算定された前記第一法線方向荷重もしくは前記第二法線方向荷重を、前記横断方向断面であるリング継手面の周長で除すことにより分布荷重を算定し、該リング継手面に該分布荷重を載荷する、ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトンネル函体の横断方向断面の設計方法。
【請求項5】
前記C工程において前記第二法線方向荷重を使用する場合、該C工程では、算定された複数の地盤反力のうち、最大地盤反力を抽出して使用することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトンネル函体の横断方向断面の設計方法。
【請求項6】
前記横断方向断面の梁モデルに対して土圧もしくは土水圧を載荷することにより、該土圧もしくは土水圧に起因する第二断面力を算定する、D工程と、
前記C工程と前記D工程で算定された前記第一断面力と前記第二断面力を重ね合わせて重ね合わせ断面力を算定し、該重ね合わせ断面力に基づいて前記横断方向断面の断面力照査を行う、E工程と、をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトンネル函体の横断方向断面の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル函体の横断方向断面の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法やシールド工法では、複数の推進函体同士をリング継手(一方の推進函体の端部に他方の推進函体の端部を差し込む形態や、ボルト接合等される形態)を介して接続することにより、あるいは、複数のシールド函体同士をリング継手(ボルト接合等される形態)を介して接続することにより、地中に推進函体群やシールド函体群等のトンネル函体群を施工する。以下、本明細書では、推進函体とシールド函体をまとめてトンネル函体と称し、推進函体群とシールド函体群をまとめてトンネル函体群と称する。
トンネル函体群の縦断線形には、直線線形の他、円形や複数の曲率を有する曲線線形、直線と曲線が混在した線形等、様々な縦断線形が存在するが、縦断線形の中に少なくとも曲線区間(曲線線形)を備えたトンネル函体群においては、隣接するトンネル函体からジャッキ推力が作用し、このジャッキ推力に起因して当該トンネル函体には地盤反力が作用する。
上記する曲線区間を備えたトンネル函体群に関し、従来のトンネル函体の横断方向断面の設計においては、ジャッキ推力のうち、曲線区間の円弧の法線方向分力と釣り合う等分布荷重を地盤反力として、トンネル函体の横断方向の梁モデルを構成する底盤を模擬した梁に一様に載荷することにより、ジャッキ推力に起因する地盤反力が作用した際の断面力を算定する方法が適用されている。しかしながら、このように一様な等分布荷重を地盤反力として梁モデルに作用する方法では、トンネル函体のリング継手面において実際にジャッキ推力が作用する位置に当該ジャッキ推力が載荷されていないことから、精度の高い断面力が算定されているとは言い難い。
【0003】
ここで、特許文献1には、シールド工法や推進工法において軟弱地盤中にトンネルを構築する際に、トンネルの急曲線箇所に反力壁を設置するか否かを判断する、反力壁設置の要否判断方法が提案されている。具体的には、急曲線箇所を模擬した構造解析により算定されたトンネル覆工の地盤反力と原地盤の強度との比較により、反力壁の設置の要否を判断する方法であり、地盤反力が原地盤強度よりも大きいと判断された際に、地盤反力を低減させるために、トンネルの軸方向剛性を高めて反力壁の設置を不要にする要否判断方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の反力壁設置の要否判断方法によれば、実状に対応した反力壁設置の要否判断方法を提供できるとしている。しかしながら、上記するように、少なくとも曲線区間を有するトンネル函体群を構成するトンネル函体の横断方向の設計において、トンネル函体のリング継手面において実際にジャッキ推力が作用する位置に当該ジャッキ推力が載荷されていないことに依拠して、精度の高い断面力が算定されないといった課題を解消するものではない。
【0006】
本発明は、少なくとも曲線区間を有するトンネル函体群を構成するトンネル函体の横断方向の設計において、精度の高い断面力の算定を実現できる、トンネル函体の横断方向断面の設計方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明によるトンネル函体の横断方向断面の設計方法の一態様は、
推進装置もしくは掘進機の有する推進ジャッキによるジャッキ推力を受けながら、複数のトンネル函体により形成されて少なくとも曲線区間を有する、トンネル函体群の縦断方向に直交する、トンネル函体の横断方向断面の設計方法であって、
前記曲線区間における前記ジャッキ推力の法線方向成分である、第一法線方向荷重、もしくは、前記曲線区間における前記ジャッキ推力の反力として地盤から法線方向に受ける地盤反力である、第二法線方向荷重、の少なくとも一方を算定する、A工程と、
前記トンネル函体の横断方向断面の梁モデルを作成し、該横断方向断面の梁モデルに対して地盤バネを取り付けて横断方向梁モデルとする、B工程と、
前記横断方向梁モデルに対して、前記第一法線方向荷重もしくは前記第二法線方向荷重を載荷することにより、前記ジャッキ推力に起因する第一断面力を算定する、C工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、曲線区間におけるジャッキ推力の法線方向成分である、第一法線方向荷重、もしくは、曲線区間におけるジャッキ推力の反力として地盤から法線方向に受ける地盤反力である、第二法線方向荷重、の少なくとも一方を算定し、横断方向梁モデルに対して第一法線方向荷重もしくは第二法線方向荷重を載荷することによって、ジャッキ推力に起因する第一断面力を算定することにより、トンネル函体のリング継手面に作用するジャッキ推力に起因する法線方向荷重を適切に反映することができ、精度の高い断面力の算定が可能になる。本明細書では、横断方向梁モデルに載荷する第一法線方向荷重と第二法線方向荷重をまとめて、法線方向荷重と称する。
ここで、C工程において横断方向梁モデルに対する法線方向荷重の載荷方法は、リング継手位置に対して集中荷重として載荷する方法や、横断方向梁モデルの全周に対して分布荷重として載荷する方法等が挙げられる。
【0009】
また、本発明によるトンネル函体の横断方向断面の設計方法の他の態様において、
前記第一法線方向荷重の算定方法は、
前記掘進機のカッタヘッドに作用する先端抵抗力と、前記トンネル函体群の周面が受ける周面抵抗力とを加えることにより必要ジャッキ推力を算定し、前記曲線区間が鉛直面内にある場合は、前記トンネル函体群と前記掘進機の自重抵抗力をさらに加えることにより必要ジャッキ推力を算定し、
前記必要ジャッキ推力に基づいて、前記トンネル函体群を構成する各トンネル函体に作用する前記ジャッキ推力を算定し、
前記ジャッキ推力と、前記トンネル函体の縦断方向の折れ角とにより、前記第一法線方向荷重を算定することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、トンネル函体群を推進させるのに必要な必要ジャッキ推力(総ジャッキ推力)の算定に続いて、トンネル函体群を構成する各トンネル函体に作用するジャッキ推力を算定し、ジャッキ推力とトンネル函体の縦断方向の折れ角とに基づいて第一法線方向荷重を算定することにより、トンネル函体に作用する法線方向荷重を効率的に算定することができる。
ここで、第一法線方向荷重の算定方法として、先端抵抗力と周面抵抗力とを加える方法は、例えば、「下水道推進工法の指針と解説-2010年版-日本下水道協会」等の指針に記載される推力算定式に基づくものであり、鉛直面内における曲線区間の場合において、トンネル函体群と掘進機の自重抵抗力をさらに加える内容は、この指針に記載の推力算定式を修正したものである。先端抵抗力と周面抵抗力と、必要に応じて自重抵抗力とを加算して求められる必要ジャッキ推力に対して、例えば所定の安全率を乗じて必要ジャッキ推力を割り増し、割り増し後の必要ジャッキ推力に基づいて各トンネル函体に作用するジャッキ推力を算定してもよい。
【0011】
また、本発明によるトンネル函体の横断方向断面の設計方法の他の態様において、
前記第二法線方向荷重の算定方法は、
コンピュータにおいて、前記トンネル函体群を、等価剛性を有する曲線含有梁モデル、もしくは、隣接する前記トンネル函体の梁モデルを回転バネにて連結してなる曲線含有梁モデルを作成し、該曲線含有梁モデルに対して地盤バネを取り付けて縦断方向梁モデルとし、
前記縦断方向梁モデルに対して前記ジャッキ推力を載荷し、該縦断方向梁モデルに生じる地盤反力である前記第二法線方向荷重を算定することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、曲線含有梁モデルと地盤バネとにより形成される縦断方向梁モデルに対してジャッキ推力を載荷して、地盤反力である第二法線方向荷重を算定することにより、トンネル函体に作用する法線方向荷重を高い精度で算定することができる。
ここで、トンネル函体群は、曲線区間が単円形の縦断線形を有する場合において、施工段階ごとに、例えばトンネル函体1リング(1R)が10基推進された10R段階での縦断方向梁モデル、20R推進された20R段階での縦断方向梁モデル、全周推進された円形の縦断方向梁モデル等、様々な施工段階での縦断方向梁モデルが作成され、都度、トンネル函体の縦断方向の断面力が算定される。ここで、トンネル函体群を構成する各トンネル函体は、場所ごとに算定される断面力が相違することになるが、設計段階では、最も厳しい断面力に基づいてトンネル函体の仕様が決定される。
また、ジャッキ推力は、推進工法における元押し装置の元押しジャッキによるジャッキ推力や、元押しジャッキに加えて中押し装置の中押しジャッキによるジャッキ推力、推進工法とシールド工法の双方における掘進機の備える推進ジャッキによるジャッキ推力等が挙げられる。例えば、推進ジャッキを備えた掘進機を利用する推進工法においては、縦断方向梁モデルにおける一端(発進立坑位置)に元押しジャッキによるジャッキ推力が載荷され、縦断方向梁モデルの他端(掘進機位置)に掘進機の備える推進ジャッキによるジャッキ推力が載荷され、トンネル函体群の中に中押し装置が介在する場合はその位置に中押しジャッキによるジャッキ推力が載荷される。
さらに、地盤バネは、トンネル函体ごとに取り付けられる形態や、10Rごとに取り付けられる形態等、地盤バネの取り付け形態も様々である。さらに、場所ごと(土層ごと)に、地盤性状が地盤バネに適切に反映されるのが望ましく、土層ごとのN値や地盤の内部摩擦角、付着力(粘性)等が評価されて地盤バネが設定されるのがよい。
【0013】
また、本発明によるトンネル函体の横断方向断面の設計方法の他の態様において、
前記C工程では、
前記A工程にて算定された前記第一法線方向荷重もしくは前記第二法線方向荷重を、前記横断方向断面であるリング継手面に設けられているリング継手の数で除すことにより、リング継手当たりの集中荷重を求めて各リング継手位置に載荷する、
もしくは、前記A工程にて算定された前記第一法線方向荷重もしくは前記第二法線方向荷重を、前記横断方向断面であるリング継手面の周長で除すことにより分布荷重を算定し、該リング継手面に該分布荷重を載荷する、ことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、リング継手面におけるリング継手の配設態様に応じて、法線方向荷重に基づく集中荷重もしくは分布荷重のうちの好適な荷重を横断方向梁モデルに載荷することにより、トンネル函体のリング継手面におけるジャッキ推力の作用位置を適切に反映することができ、精度の高い断面力の算定が可能になる。
例えば、リング継手面において、複数のリング継手位置が比較的不均等な場合には、リング継手当たりの集中荷重を横断方向梁モデルにおける各リング継手位置に載荷するのがよい。各リング継手位置に対して、リング継手当たりの法線方向荷重(集中荷重)を載荷することにより、各リング継手位置からジャッキ推力が作用する実現象を可及的忠実に再現することができ、より一層精度の高い断面力の算定が可能になる。
一方、リング継手面において、複数のリング継手位置が比較的均等な場合には、分布荷重を横断方向梁モデルの全周(全域)に載荷するのがよい。
【0015】
また、本発明によるトンネル函体の横断方向断面の設計方法の他の態様において、
前記C工程において前記第二法線方向荷重を使用する場合、該C工程では、算定された複数の地盤反力のうち、最大地盤反力を抽出して使用することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、C工程において第二法線方向荷重を使用する場合に関し、算定された複数の地盤反力のうち、最大地盤反力を抽出して横断方向梁モデルに載荷することにより、最も安全側の設計に基づいてトンネル函体の横断方向断面を設計することができる。
【0017】
また、本発明によるトンネル函体の横断方向断面の設計方法の他の態様は、
前記横断方向断面の梁モデルに対して土圧もしくは土水圧を載荷することにより、該土圧もしくは土水圧に起因する第二断面力を算定する、D工程と、
前記C工程と前記D工程で算定された前記第一断面力と前記第二断面力を重ね合わせて重ね合わせ断面力を算定し、該重ね合わせ断面力に基づいて前記横断方向断面の断面力照査を行う、E工程と、をさらに有することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、横断方向梁モデルに対してジャッキ推力に起因する法線方向荷重が作用した際の第一断面力を算定し、横断方向断面の梁モデル(横断方向梁モデルから地盤バネを取り外した梁モデル)に対して土圧もしくは土水圧が作用した際の第二断面力を算定し、双方の断面力を重ね合わせた重ね合わせ断面力に基づいて横断方向断面の断面力照査を行うことにより、より一層精度の高い断面力の算定が可能になる。尚、C工程とD工程を同時に実施すること、言い換えれば、横断方向梁モデルに対して、ジャッキ推力に起因する法線方向荷重と、土圧もしくは土水圧とを同時に載荷して断面力を算定してもよく、この算定方法も本態様に含まれるものとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のトンネル函体の横断方向断面の設計方法によれば、少なくとも曲線区間を有するトンネル函体群を構成するトンネル函体の横断方向の設計において、精度の高い断面力の算定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係るトンネル函体の横断方向断面の設計方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】推進工法により、鉛直面内において単円の縦断線形を有するトンネル函体群を推進させている状態を示す模式図である。
【
図3】曲線区間において、掘進機が余掘り部を造成し、余掘り部に滑材を充填しながら、トンネル函体群を推進させている状態を示す模式図である。
【
図4】第一法線方向荷重の算定方法を説明する模式図である。
【
図5】第二法線方向荷重の算定方法を説明する模式図であって、縦断方向梁モデルの一例を説明する図である。
【
図6】推進の過程において一つのトンネル函体に作用する外力を説明する模式図である。
【
図7】トンネル函体の横断方向断面の一例を示す正面図である。
【
図8】横断方向梁モデルの一例を示すとともに、リング継手面の各リング継手位置において、ジャッキ推力による法線方向荷重を載荷している状態を説明する模式図である。
【
図9】横断方向断面の梁モデルの一例を示すとともに、土水圧を載荷している状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係るトンネル函体の横断方向断面の設計方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0022】
[実施形態に係るトンネル函体の横断方向断面の設計方法]
図1乃至
図9を参照して、実施形態に係るトンネル函体の横断方向断面の設計方法の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係るトンネル函体の横断方向断面の設計方法の一例を示すフローチャートである。また、
図2は、推進工法により、鉛直面内において単円の縦断線形を有するトンネル函体群を推進させている状態を示す模式図であり、
図3は、曲線区間において、掘進機が余掘り部を造成し、余掘り部に滑材を充填しながら、トンネル函体群を推進させている状態を示す模式図である。また、
図4は、第一法線方向荷重の算定方法を説明する模式図であり、
図5は、第二法線方向荷重の算定方法を説明する模式図であって、縦断方向梁モデルの一例を説明する図である。また、
図6は、推進の過程において一つのトンネル函体に作用する外力を説明する模式図であり、
図7は、トンネル函体の横断方向断面の一例を示す正面図である。さらに、
図8は、横断方向梁モデルの一例を示すとともに、リング継手面の各リング継手位置において、ジャッキ推力による法線方向荷重を載荷している状態を説明する模式図であり、
図9は、横断方向断面の梁モデルの一例を示すとともに、土水圧を載荷している状態を説明する模式図である。
【0023】
図示例のトンネル函体の横断方向断面の設計方法では、設計対象のトンネル函体群の縦断線形が鉛直面内における単円であって、全区間が曲線区間であるが、設計対象のトンネル函体を構成するトンネル函体群の縦断線形は、図示例以外にも、鉛直面内もしくは水平面内において複数の曲率を有する縦断線形や、曲線区間と直線区間が混在する縦断線形等、様々な縦断線形のトンネル函体群が設計対象となり得る。
【0024】
図1に示すように、実施形態に係るトンネル函体の横断方向の設計方法は、A工程乃至E工程を有する。
【0025】
A工程は、主として、入力条件の設定を行う工程と、第一法線方向荷重、もしくは第二法線方向荷重を算定する工程とを備えている。第一法線方向荷重とは、曲線区間におけるジャッキ推力の法線方向成分のことであり、第二法線方向荷重とは、曲線区間におけるジャッキ推力の反力として地盤から法線方向に受ける地盤反力のことである。いずれの法線方向荷重も、トンネル函体に作用するジャッキ推力の法線方向成分に起因する荷重であることから、法線方向荷重としている。
【0026】
以下で詳説するように、第一法線方向荷重の算定方法は、公知の指針に記載の推力算定式を使用したり、この推力算定式を修正した修正推力算定式を使用し、さらに、曲線区間における各トンネル函体の縦断方向の折れ角に基づいて、第一法線方向荷重を算定する。一方、第二法線方向荷重の算定方法は、縦断方向梁モデル(解析モデル)をコンピュータ内で作成し、梁モデルに対してジャッキ推力を載荷する解析を実行することにより、第二法線方向荷重(地盤反力)を算定する。
【0027】
一方、B工程は、横断方向梁モデル(解析モデル)を作成する工程を備えている。C工程は、作成された横断方向梁モデルを用いて、第一法線方向荷重もしくは第二法線方向荷重に基づく第一断面力を算定する横断方向第一解析を実施する工程を備えており、D工程は、横断方向梁モデルから地盤バネを取り外した梁モデルを用いて、土水圧に基づく第二断面力を算定する横断方向第二解析を実施する工程を備えている。
【0028】
最後に、E工程は、第一断面力と第二断面力を重ね合わせた断面力に基づいて応力度照査を実施する工程を備えている。
【0029】
A工程における入力条件の設定においては、トンネル函体の仕様を設定し、トンネル函体群の縦断線形(単円の場合はその径、複数の曲率を有する場合は各曲率とその線形等)を設定し、トンネル函体群が通過する土層をモデル化する。土層のモデル化においては、地盤調査結果に基づいて、土層ごとに、その性状(砂質層、粘土層、礫質層等)、N値や地盤の単位体積重量、内部摩擦角、付着力等の物性を設定する。
【0030】
図2に示す例は、鉛直面内において、半径rの単円の縦断線形を有するトンネル函体群20(円周トンネル)を推進工法にて施工する例である。
図2に示すように、地中Gにおいて施工済みの本線トンネルHT(例えば本線シールドトンネル)と、その側方にあるランプトンネルRT(例えばランプシールドトンネル)とを地中で接続して拡幅するに当たり、ランプトンネルRTを利用してその下方に鉛直に延設する立坑Tを施工する。尚、この立坑は、鉛直方向でなく、斜め下方に延設する形態であってもよい。
【0031】
所定深度まで造成された立坑Tの下方に発進架台Rを設置し、発進架台Rに元押しジャッキを備えた元押し装置30を設置する。ランプトンネルRTから掘進機10とトンネル函体21を随時吊り下ろし、掘進機10を地中に掘進させ、その後方に複数のトンネル函体21を順次配設し、元押しジャッキ30によるジャッキ推力により、掘進機10と複数のトンネル函体21によって形成されるトンネル函体群20を推進させる。
【0032】
図示例の掘進機10は、前胴11と後胴12を備え、双方の間に不図示の推進ジャッキ(掘進機自身の推進の他にも、掘進機の方向制御を行うジャッキ)を備えている。掘進機10の正面視形状は、例えば横長の矩形であり、その前面には、例えば複数のカッタヘッド13が配設されている。各カッタヘッド13には、その側方からコピーカッタが出入り自在に内蔵されており、余掘り部の造成の際には、各カッタヘッド13からコピーカッタが外側へ張り出し、カッタヘッド13の回転に応じて回転するコピーカッタにより、余掘り部の造成が行われる。この際、コピーカッタの張り出し長の調整により、余掘り部の大きさを所望に調整できる。
【0033】
上記するように、正面視矩形の掘進機10の後方に連接するトンネル函体21は、
図7に示すように、掘進機10と同様の正面視形状を有した鋼殻により構成されている。
【0034】
図2に戻り、掘進機10のカッタヘッド13には、前方から切羽圧Sが作用する。また、図示例のように鉛直面内での推進であることから、掘進機10には自重の軸方向分力W1が作用し、各トンネル函体21には自重の軸方向分力W2が作用する。
【0035】
推進されるトンネル函体群20には、周囲の地盤Gとの間の周面抵抗力F1が作用し、さらには、曲線施工に伴う地盤反力Qに起因した摩擦抵抗力F2が作用する。ここで、立坑Tにおける元押しジャッキ30から作用するジャッキ推力P1により、前方の掘進機10とトンネル函体群20が推進されることから、トンネル函体群20の前方にいくにつれて、作用するジャッキ推力P2,P3,P4は徐々に小さくなる。曲線施工に伴う地盤反力Qは、このジャッキ推力Pに起因する反力であることから、
図2に示すように、元押しジャッキ30の近傍で最大の地盤反力となり、掘進機10に向かって徐々に小さくなる傾向を有している。
【0036】
このように、図示例の鉛直面内における曲線線形に沿う推進工法では、掘進機10に作用する切羽圧S,掘進機10に作用する自重の軸方向分力W1、各トンネル函体21に作用する自重の軸方向分力W2、周囲の地盤Gとの間の周面抵抗力F1、及び曲線施工に伴う地盤反力Qに起因した摩擦抵抗力F2の合計値以上のジャッキ推力Pにより、掘進機10とトンネル函体群20の推進が実現される。尚、例えば水平面内における施工では、掘進機10に作用する自重の軸方向分力W1と、各トンネル函体21に作用する自重の軸方向分力W2は、元押しジャッキ30のジャッキ推力の算定に際して不要になる。
【0037】
仮に、元押しジャッキ30のジャッキ推力が不足する場合においては、トンネル函体群20の間に、単数もしくは複数の中押しジャッキが配設されて不足分のジャッキ推力が補填されることになる。
【0038】
元押しジャッキ30のジャッキ推力や、元押しジャッキ30と必要に応じて設けられる中押しジャッキのジャッキ推力の設定に当たり、必要ジャッキ推力は、トンネル函体群20の推進の過程で随時変化することから、トンネル函体群20が10基(10R)までの段階、20Rまでの段階、掘進機10が立坑Tに到達する最終段階等、各段階に応じた必要ジャッキ推力が設定される。
【0039】
図3に示すように、カッタヘッド13(ここでは、説明を容易にするために、一つのカッタヘッド13のみを有する形態として図示している)の側方からコピーカッタ14が張り出し、カッタヘッド13が回転しながら掘進機10が計画縦断線形L1に沿って掘進方向に掘進する過程で、掘進機10と後続のトンネル函体群20の側方には、所定幅t1の余掘り部25が造成され、掘進機10から余掘り部25に対して滑材28が充填される。正面視矩形の掘進機10の周囲には、幅t1の矩形枠状の余掘り部25が造成されることになる。余掘り部25の幅t1は、図示例では、単円の半径r等に応じて設定する。
【0040】
図3は、計画縦断線形L1に沿って掘進機10が掘進し、トンネル函体群20が推進されている状態を示しており、単円の径方向の内側には余掘り部25の内側ラインL2があり、径方向外側には余掘り部25の外側ラインL3がある。すなわち、
図3は、掘進機10が蛇行していない状態を示している。また、幅t1が、入力条件における設計余掘り量となる。
【0041】
ここで、A工程における第一法線方向荷重の算定方法について説明する。「下水道推進工法の指針と解説-2010年版-日本下水道協会」(以下、下水道指針とする)に記載される推力算定式に基づけば、必要ジャッキ推力は以下の式(X)により表すことができる。
【0042】
【0043】
また、図示例のように鉛直面内における推進施工においては、掘進機10とトンネル函体群20の自重抵抗力を考慮する必要があることから、この場合の必要ジャッキ推力は、上式(X)を修正した以下の式(Y)により表すことができる。
【0044】
【0045】
さらに、図示例のように曲線区間を備えた推進施工において、必要ジャッキ推力は以下の式(Z)により表すことができる。尚、式(Z)は下水道指針に記載された、水平面内における曲線区間を備えた推進施工時の必要ジャッキ推力算定式であることから、より詳細には、上式(Y)の自重抵抗力を加算(考慮)する必要があるが、ここでは下水道指針に記載の式を紹介する。
【0046】
【0047】
図4に示すように、必要ジャッキ推力から各トンネル函体に作用するジャッキ推力を算定し(例えば、F1)、このジャッキ推力の法線方向分力T1をF1×sinαにて算定することにより、トンネル函体に作用する第一法線方向荷重を求めることができる。
【0048】
次に、A工程における第二法線方向荷重の算定方法について説明する。
図5に示すように、コンピュータにおいて、トンネル函体群20を、等価剛性を有する曲線含有梁モデルBM1にモデル化する。このモデル化に際しては、図示を省略するが、隣接するトンネル函体21の梁モデルを回転バネにて連結してなる曲線含有梁モデルを作成してもよい。
【0049】
曲線含有梁モデルBM1に対して、地盤バネJM1を取り付けることにより、縦断方向梁モデルM1を作成する。地盤バネJM1は、曲線含有梁モデルBM1における各トンネル函体位置にそれぞれ取り付けてもよいし、例えば10Rごとに取り付けてもよい。
【0050】
地盤バネJM1は、半径rの円周トンネルの法線方向の法線方向地盤バネJMaと、接線方向の接線方向地盤バネJMbとを有し、双方の地盤バネを例えばコネクタ要素で模擬する。また、図示を省略するが、元押しジャッキからのジャッキ推力Pが載荷される曲線含有梁モデルBM1の一端BM1'(もしくはその近傍)と、立坑に到達した曲線含有梁モデルBM1の他端BM1"(もしくはその近傍)にはそれぞれ、拘束バネを取り付ける。
【0051】
コンピュータ内において、施工段階ごとに、曲線含有梁モデルBM1を作成し、曲線含有梁モデルBM1の複数位置に、法線方向地盤バネJMaと接線方向地盤バネJMbを有する地盤バネJM1を取り付けることにより、縦断方向梁モデルM1(解析モデル)を作成する。
【0052】
図5に示すように、縦断方向梁モデルM1に対して、元押しジャッキ30等の推進ジャッキによるジャッキ推力を設定して載荷する縦断方向解析を実施することにより、トンネル函体群20を構成する各トンネル函体21の縦断方向の断面力と、トンネル函体群20の縦断方向における地盤反力Qを算定する。この断面力には、曲げモーメントやせん断力、軸力(縦断方向の圧縮力や引張力)が含まれる。全区間が曲線区間である図示例のモデルにおいては、
図5に示すように、算定された地盤反力Qは縦断方向に徐々に変化する。
【0053】
例えば元押しジャッキ30のジャッキ推力は、初期の段階では、
図2を参照して説明したように、掘進機10とトンネル函体群20を推進可能なジャッキ推力を過程して縦断方向解析を実行し、縦断方向の断面力に含まれる軸力のうち、先頭に位置する掘進機10の位置の軸力が切羽圧S相当以上の圧縮力であれば、設定しているジャッキ推力が大きいと判断し、切羽圧S相当の圧縮力となるまで、ジャッキ推力を変化させながら縦断方向解析を繰り返し、必要ジャッキ推力を設定する。
【0054】
一方、縦断方向解析の結果、掘進機10の位置の軸力が切羽圧S相当の圧縮力より小さいようであれば、設定しているジャッキ推力が不足していると判断し、ジャッキ推力を増加させて縦断方向解析を実施し、軸力が切羽圧S相当の圧縮力となる段階まで、上記する縦断方向解析の繰り返しによって必要ジャッキ推力を設定する。
【0055】
縦断方向解析により、トンネル函体群に作用する地盤反力Qを算定し、算定された地盤反力Qの中で、最大の地盤反力Qmaxを特定し、この地盤反力Qmaxを第二法線方向荷重とするのがよい。
【0056】
ここで、
図6に示すように、トンネル函体群20を構成する一つのトンネル函体21n(掘進機10側からn番目のトンネル函体)に着目して、軸方向(縦断方向)の力の釣り合いと、軸直角方向の力の釣り合いが成立する。
【0057】
軸方向の力の釣り合いは、(隣接鋼殻に伝達する荷重Pn)=(隣接鋼殻から伝達される荷重(ジャッキ推力)の軸方向分力Pn-1v)-(周面抵抗力F1n)-(地盤反力による摩擦抵抗力F2n)-(鋼殻自重の軸方向成分W2v)となる。
【0058】
一方、軸直角方向の力の釣り合いは、(地盤反力Q(外側への変形を抑制))=(隣接鋼殻から伝達される荷重(ジャッキ推力)の軸直角方向分力Pn-1h)となる。
【0059】
以上、入力条件の設定と、第一法線方向荷重の算定もしくは第二法線方向荷重の算定がA工程となる。
【0060】
次に、横断方向梁モデル(解析モデル)の作成を行う。本例では、
図7に示す横断方向断面の形状が横長矩形のトンネル函体21のモデル化を行う。ここで、
図7は、トンネル函体21の正面視形状であってリング継手面22を示しており、内部にある二つの隔壁にて剛性が付与されており、横断方向断面の線形に沿って複数のリング継手23を備えている。このリング継手23は、例えばリング継ぎボルト等により構成され、隣接する他方のトンネル函体との間で、複数のリング継手23を介してジャッキ推力が伝達される。
【0061】
図7に示す横断方向断面の形状を有するトンネル函体21は、
図8に示す横断方向梁モデルM2としてモデル化される。ここで、横断方向梁モデルM2は、トンネル函体21の横断方向断面の線形に沿う横断方向断面の梁モデルBM2に対して、地盤バネJM2を取り付けることにより作成される。尚、図示例の地盤バネJM2は、直バネのみを備えているが、地盤バネJM2が直バネとこれに直交するせん断バネの双方を備えていてもよい(以上、B工程)。
【0062】
次に、横断方向梁モデルM2に対して法線方向荷重(第一法線方向荷重もしくは第二法線方向荷重)を載荷する、横断方向第一解析を実施する。この横断方向第一解析では、A工程における縦断方向の解析において算定され、特定(抽出)されている最大の地盤反力Qmax(第二法線方向荷重)や、算定された必要ジャッキ推力に基づくトンネル函体に作用するジャッキ推力と折れ角とにより求められる第一法線方向荷重を、横断方向梁モデルM2に載荷する。
【0063】
図8は、横断方向梁モデルM2を示すとともに、リング継手面に設定されている各リング継手位置(梁モデルにおけるドット位置)に、地盤反力である第二法線方向荷重から逆算したジャッキ推力の法線方向分力を載荷している状態を示している。
【0064】
すなわち、最大の地盤反力Qmaxを、横断方向断面であるリング継手面に設けられているリング継手23の数で除すことによって、リング継手当たりのジャッキ推力の法線方向分力である集中荷重vを求め、各リング継手位置に対して、リング継手当たりのジャッキ推力の法線方向分力である集中荷重vを載荷する。
【0065】
尚、その他、法線方向荷重を
図7に示すリング継手面の周長で除すことによって(等)分布荷重を算定し、リング継手面の全域に分布荷重を載荷する方法であってもよい。特に、図示例の各リング継手位置は比較的均等に配置されていることから、分布荷重を求めてリング継手面の全域に載荷する方法でも精度の高い解析結果が得られる。
【0066】
このように、縦断方向の解析において算定さている法線方向荷重をリング継手23の数で除してリング継手当たりのジャッキ推力の法線方向分力である集中荷重vを求め、各リング継手位置に載荷することにより、各リング継手位置に実際にジャッキ推力が作用している状態を可及的忠実に模擬することができ、精度の高い横断方向断面における断面力(第一断面力)の算定が可能になる。また、第二法線方向荷重として最大の地盤反力Qmaxを用いることにより、安全側の設計を実現できる。
【0067】
横断方向第一解析により、地盤バネJM2には、
図8に示すように側壁や隔壁の下で反力が増加する、実際に生じ得る地盤反力がアウトプットされることになる(以上、C工程)。
【0068】
次に、
図9に示すように、横断方向断面の梁モデルBM2のみからなる(地盤バネJM2を備えていない)横断方向梁モデルM2'に対して土水圧を載荷する、横断方向第二解析を実施する。この横断方向第二解析では、横断方向梁モデルM2'に対して、天井鉛直土水圧U1,底盤鉛直土水圧U3と、左右の土水圧U2を載荷することにより、横断方向断面における断面力(第二断面力)を算定する(以上、D工程)。
【0069】
次に、C工程において算定された第一断面力とD工程において算定された第二断面力を重ね合わせて重ね合わせ断面力を算定し、この重ね合わせ断面力を用いて、横断方向断面の断面力照査(応力度照査)を実施する(以上、E工程)。尚、C工程とD工程を同時に実施してもよい。具体的には、横断方向断面の梁モデルBM2において、各リング継手位置に対して、リング継手当たりのジャッキ推力の法線方向分力である集中荷重vを載荷し、同時に、天井鉛直土水圧U1や底盤鉛直土水圧U3、左右の土水圧U2を載荷して断面力を算定してもよい。
【0070】
応力度照査により、当初設定していたトンネル函体の仕様(強度、耐力)や、地耐力、必要ジャッキ推力を特定し、トンネル函体が耐力不足である、地盤が地耐力不足である等の場合は、入力条件の設定に戻り、トンネル函体の仕様変更(トンネル函体の横断方向断面の変更を含む)、縦断線形の見直しや地耐力向上のための地盤改良の検討等を行い、縦断方向梁モデルや横断方向梁モデル等の解析モデルの再作成と縦断方向解析や、横断方向第一解析、横断方向第二解析等の再実施を行い、再度の応力度照査を行って、トンネル函体と地盤双方の耐力が満足する仕様を決定し、施工計画が作成される。
【0071】
図示するトンネル函体の横断方向断面の設計方法によれば、少なくとも曲線区間を有するトンネル函体群20を構成するトンネル函体21の横断方向の設計において、トンネル函体21のリング継手面22におけるジャッキ推力の作用位置が適切に反映されて各作用位置にジャッキ推力が載荷されることにより、精度の高い断面力の算定が可能になり、合理的なトンネル函体の横断方向断面の設計を実現できる。
【0072】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0073】
10:掘進機
11:前胴
12:後胴
13:カッタヘッド
20:トンネル函体群
21:トンネル函体
22:リング継手面
23:リング継手
25:余掘り部
28:滑材
30:元押し装置(元押しジャッキ)
G:地盤(地中)
P:ジャッキ推力
S:切羽圧(先端抵抗力)
W1:掘進機自重の軸方向分力
W2:トンネル函体群重量の軸方向分力
F1:周面摩擦力
F2:曲線区間における地盤反力による摩擦抵抗力
Q:地盤反力
Qmax:最大地盤反力
v:リング継手当たり地盤反力
U1:天井鉛直土水圧
U2:土水圧
U3:底盤鉛直土水圧
M1:縦断方向梁モデル
M2、M2':横断方向梁モデル
BM1:曲線含有梁モデル
BM2:横断方向断面の梁モデル
JM1,JM2:地盤バネ
JMa:法線方向地盤バネ
JMb:接線方向地盤バネ