(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174938
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】レーダ装置、信号処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20221117BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20221117BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080992
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 遼
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB18
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC13
5J070AD06
5J070AD13
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH12
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK16
5J070AK22
5J070BD04
5J070BD06
5J070BD08
(57)【要約】
【課題】物標の検出精度を向上させることが可能なレーダ装置、信号処理方法、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本技術の一形態に係るレーダ装置は、第1の抽出部と、第2の抽出部と、ピーク検出部とを具備する。前記第1の抽出部は、レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出する。前記第2の抽出部は、前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出する。前記ピーク検出部は、前記検出用信号のピークを検出する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出する第1の抽出部と、
前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出する第2の抽出部と、
前記検出用信号のピークを検出するピーク検出部と
を具備するレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号、又は前記第1の閾値よりも小さい信号の一部の信号を、前記ノイズ信号として抽出する
レーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち所定の範囲に含まれる信号を、前記ノイズ信号として抽出する
レーダ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち静止物体からの反射波に対応する信号以外の信号を、前記ノイズ信号として抽出する
レーダ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記第2の抽出部は、前記ノイズ信号に基づいてノイズフロアを算出し、算出された前記ノイズフロアよりも大きい値を、前記第2の閾値として設定する
レーダ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーダ装置であって、
前記第2の抽出部は、前記ノイズ信号の平均値、分散値、又は標準偏差を、前記ノイズフロアとして算出する
レーダ装置。
【請求項7】
請求項5に記載のレーダ装置であって、
前記第2の抽出部は、前記ノイズフロアに所定の係数を乗じた値、又は前記ノイズフロアに所定の定数を加算した値を、前記第2の閾値として設定する
レーダ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のレーダ装置であって、さらに、
連続波が周波数変調されたFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を送信信号として前記レーダ波を放射し、前記受信信号と前記送信信号とに基づいてビート信号を生成する送受信部を具備し、
前記第1の抽出部は、前記ビート信号を距離方向にフーリエ変換することで生成される距離に関する周波数スペクトルを、前記周波数スペクトルとして取得する
レーダ装置。
【請求項9】
請求項1に記載のレーダ装置であって、さらに、
前記ピーク検出部による検出結果に基づいて、周辺に存在する物標を検出する物標情報生成部を具備する
レーダ装置。
【請求項10】
請求項8に記載のレーダ装置であって、
移動体に搭載されるように構成され、
前記第1の抽出部は、前記移動体の速度と、前記距離に関する周波数スペクトルを相対速度方向にフーリエ変換することで生成される相対速度に関する周波数スペクトルとに基づいて、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち静止物体からの反射波に対応する信号以外の信号を、前記ノイズ信号として抽出する
レーダ装置。
【請求項11】
請求項1に記載のレーダ装置であって、さらに、
連続波が周波数変調されたFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を送信信号として前記レーダ波を放射し、前記受信信号と前記送信信号とに基づいてビート信号を生成する送受信部を具備し、
前記第1の抽出部は、前記ビート信号を距離方向にフーリエ変換することで生成される距離に関する周波数スペクトルに対して相対速度方向にフーリエ変換することで生成される相対速度に関する周波数スペクトルを、前記周波数スペクトルとして取得する
レーダ装置。
【請求項12】
レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出し、
前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出し、
前記検出用信号のピークを検出する
ことをコンピュータシステムが実行する信号処理方法。
【請求項13】
レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出するステップと、
前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出するステップと、
前記検出用信号のピークを検出するステップと
をコンピュータシステムに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、車両等に搭載可能なレーダ装置、信号処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の内部反射信号の誤検出を抑制可能なレーダ装置について開示されている。このレーダ装置では、雑音電力に基づいて閾値を検出する方法として、CFAR(Constant False Alarm Rate)検出が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両等に搭載されるレーダ装置において、物標の検出精度を向上させるための技術が求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、物標の検出精度を向上させることが可能なレーダ装置、信号処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係るレーダ装置は、第1の抽出部と、第2の抽出部と、ピーク検出部とを具備する。
前記第1の抽出部は、レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出する。
前記第2の抽出部は、前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出する。
前記ピーク検出部は、前記検出用信号のピークを検出する。
【0007】
このレーダ装置では、周波数スペクトルに対してCFAR処理が実行されて第1の閾値が設定され、周波数スペクトルのうち第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号が抽出される。また、ノイズ信号に基づいて第2の閾値が設定され、周波数スペクトルのうち第2の閾値よりも大きい信号が、検出用信号として抽出される。検出用信号のピークを検出することで、物標の検出精度を向上させることが可能となる。
【0008】
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号、又は前記第1の閾値よりも小さい信号の一部の信号を、前記ノイズ信号として抽出してもよい。
【0009】
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち所定の範囲に含まれる信号を、前記ノイズ信号として抽出してもよい。
【0010】
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち静止物体からの反射波に対応する信号以外の信号を、前記ノイズ信号として抽出してもよい。
【0011】
前記第2の抽出部は、前記ノイズ信号に基づいてノイズフロアを算出し、算出された前記ノイズフロアよりも大きい値を、前記第2の閾値として設定してもよい。
【0012】
前記第2の抽出部は、前記ノイズ信号の平均値、分散値、又は標準偏差を、前記ノイズフロアとして算出してもよい。
【0013】
前記第2の抽出部は、前記ノイズフロアに所定の係数を乗じた値、又は前記ノイズフロアに所定の定数を加算した値を、前記第2の閾値として設定してもよい。
【0014】
前記レーダ装置は、さらに、連続波が周波数変調されたFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を送信信号として前記レーダ波を放射し、前記受信信号と前記送信信号とに基づいてビート信号を生成する送受信部を具備してもよい。この場合、前記第1の抽出部は、前記ビート信号を距離方向にフーリエ変換することで生成される距離に関する周波数スペクトルを、前記周波数スペクトルとして取得してもよい。
【0015】
前記レーダ装置は、さらに、前記ピーク検出部による検出結果に基づいて、周辺に存在する物標を検出する物標情報生成部を具備してもよい。
【0016】
前記レーダ装置は、移動体に搭載されるように構成されてもよい。この場合、前記第1の抽出部は、前記移動体の速度と、前記距離に関する周波数スペクトルを相対速度方向にフーリエ変換することで生成される相対速度に関する周波数スペクトルとに基づいて、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち静止物体からの反射波に対応する信号以外の信号を、前記ノイズ信号として抽出してもよい。
【0017】
前記レーダ装置であって、さらに、連続波が周波数変調されたFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を送信信号として前記レーダ波を放射し、前記受信信号と前記送信信号とに基づいてビート信号を生成する送受信部を具備してもよい。この場合、前記第1の抽出部は、前記ビート信号を距離方向にフーリエ変換することで生成される距離に関する周波数スペクトルに対して相対速度方向にフーリエ変換することで生成される相対速度に関する周波数スペクトルを、前記周波数スペクトルとして取得してもよい。
【0018】
本技術の一形態に係る信号処理方法は、コンピュータシステムが実行する情報処理方法であって、レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出することを含む。
前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値が設定され、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号が検出用信号として抽出される。
前記検出用信号のピークが検出される。
【0019】
本技術の一形態に係るプログラムは、以下のステップを、コンピュータシステムに実行させる。
レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出するステップ。
前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出するステップと、
前記検出用信号のピークを検出するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】車両制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】送信アンテナから送信されるレーダ波を説明するための模式図である。
【
図5】信号処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】レーダ装置による計測を実行した場合に得られた距離スペクトルの一例を示すグラフである。
【
図7】距離スペクトルに対して設定されたCFAR閾値を示すグラフである。
【
図8】距離スペクトルに対して設定されたノイズ閾値を示すグラフである。
【
図9】方位角(Azimuth)に応じた距離スペクトルの一例を示すグラフである。
【
図10】距離(Range)及び相対速度(Speed)を2軸とする2次元的なスペクトルの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
[車両制御システムの構成例]
図1は、本技術が適用される移動装置制御システムの一例である車両制御システム11の構成例を示すブロック図である。
【0023】
車両制御システム11は、車両1に設けられ、車両1の走行支援及び自動運転に関わる処理を行う。
【0024】
車両制御システム11は、車両制御ECU(Electronic Control Unit)21、通信部22、地図情報蓄積部23、位置情報取得部24、外部認識センサ25、車内センサ26、車両センサ27、記憶部28、走行支援・自動運転制御部29、DMS(Driver Monitoring System)30、HMI(Human Machine Interface)31、及び、車両制御部32を備える。
【0025】
車両制御ECU21、通信部22、地図情報蓄積部23、位置情報取得部24、外部認識センサ25、車内センサ26、車両センサ27、記憶部28、走行支援・自動運転制御部29、ドライバモニタリングシステム(DMS)30、ヒューマンマシーンインタフェース(HMI)31、及び、車両制御部32は、通信ネットワーク41を介して相互に通信可能に接続されている。
通信ネットワーク41は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)、FlexRay(登録商標)、イーサネット(登録商標)といったディジタル双方向通信の規格に準拠した車載通信ネットワークやバス等により構成される。
通信ネットワーク41は、伝送されるデータの種類によって使い分けられてもよい。例えば、車両制御に関するデータに対してCANが適用され、大容量データに対してイーサネットが適用されるようにしてもよい。なお、車両制御システム11の各部は、通信ネットワーク41を介さずに、例えば近距離無線通信(NFC(Near Field Communication))やBluetooth(登録商標)といった比較的近距離での通信を想定した無線通信を用いて直接的に接続される場合もある。
【0026】
なお、以下、車両制御システム11の各部が、通信ネットワーク41を介して通信を行う場合、通信ネットワーク41の記載を省略するものとする。例えば、車両制御ECU21と通信部22とが通信ネットワーク41を介して通信を行う場合、単に車両制御ECU21と通信部22とが通信を行うと記載する。
【0027】
車両制御ECU21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)といった各種のプロセッサにより構成される。車両制御ECU21は、車両制御システム11全体又は一部の機能の制御を行う。
【0028】
通信部22は、車内及び車外の様々な機器、他の車両、サーバ、基地局等と通信を行い、各種のデータの送受信を行う。このとき、通信部22は、複数の通信方式を用いて通信を行うことができる。
【0029】
通信部22が実行可能な車外との通信について、概略的に説明する。
通信部22は、例えば、5G(第5世代移動通信システム)、LTE(Long Term Evolution)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)等の無線通信方式により、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク上に存在するサーバ(以下、外部のサーバと呼ぶ)等と通信を行う。
通信部22が通信を行う外部ネットワークは、例えば、インターネット、クラウドネットワーク、又は、事業者固有のネットワーク等である。通信部22が外部ネットワークに対して行う通信方式は、所定以上の通信速度、且つ、所定以上の距離間でディジタル双方向通信が可能な無線通信方式であれば、特に限定されない。
【0030】
また例えば、通信部22は、P2P(Peer To Peer)技術を用いて、自車の近傍に存在する端末と通信を行うことができる。自車の近傍に存在する端末は、例えば、歩行者や自転車等の比較的低速で移動する移動体が装着する端末、店舗等に位置が固定されて設置される端末、又は、MTC(Machine Type Communication)端末である。
さらに、通信部22は、V2X通信を行うこともできる。V2X通信とは、例えば、他の車両との間の車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路側器等との間の路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、家との間(Vehicle to Home)の通信、及び、歩行者が所持する端末等との間の歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信等の、自車と他との通信をいう。
【0031】
通信部22は、例えば、車両制御システム11の動作を制御するソフトウエアを更新するためのプログラムを外部から受信することができる(Over The Air)。
通信部22は、さらに、地図情報、交通情報、車両1の周囲の情報等を外部から受信することができる。また例えば、通信部22は、車両1に関する情報や、車両1の周囲の情報等を外部に送信することができる。
通信部22が外部に送信する車両1に関する情報としては、例えば、車両1の状態を示すデータ、認識部73による認識結果等がある。さらに例えば、通信部22は、eコール等の車両緊急通報システムに対応した通信を行う。
【0032】
例えば、通信部22は、電波ビーコン、光ビーコン、FM多重放送等の道路交通情報通信システム(VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標))により送信される電磁波を受信する。
【0033】
通信部22が実行可能な車内との通信について、概略的に説明する。
通信部22は、例えば無線通信を用いて、車内の各機器と通信を行うことができる。通信部22は、例えば、無線LAN、Bluetooth、NFC、WUSB(Wireless USB)といった、無線通信により所定以上の通信速度でディジタル双方向通信が可能な通信方式により、車内の機器と無線通信を行うことができる。
これに限らず、通信部22は、有線通信を用いて車内の各機器と通信を行うこともできる。例えば、通信部22は、図示しない接続端子に接続されるケーブルを介した有線通信により、車内の各機器と通信を行うことができる。
通信部22は、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、MHL(Mobile High-definition Link)といった、有線通信により所定以上の通信速度でディジタル双方向通信が可能な通信方式により、車内の各機器と通信を行うことができる。
【0034】
ここで、車内の機器とは、例えば、車内において通信ネットワーク41に接続されていない機器を指す。車内の機器としては、例えば、運転者等の搭乗者が所持するモバイル機器やウェアラブル機器、車内に持ち込まれ一時的に設置される情報機器等が想定される。
【0035】
地図情報蓄積部23は、外部から取得した地図及び車両1で作成した地図の一方又は両方を蓄積する。例えば、地図情報蓄積部23は、3次元の高精度地図、高精度地図より精度が低く、広いエリアをカバーするグローバルマップ等を蓄積する。
【0036】
高精度地図は、例えば、ダイナミックマップ、ポイントクラウドマップ、ベクターマップ等である。ダイナミックマップは、例えば、動的情報、準動的情報、準静的情報、静的情報の4層からなる地図であり、外部のサーバ等から車両1に提供される。
ポイントクラウドマップは、ポイントクラウド(点群データ)により構成される地図である。ベクターマップは、例えば、車線や信号機の位置といった交通情報等をポイントクラウドマップに対応付け、ADAS(Advanced Driver Assistance System)やAD(Autonomous Driving)に適合させた地図である。
【0037】
ポイントクラウドマップ及びベクターマップは、例えば、外部のサーバ等から提供されてもよいし、カメラ51、レーダ装置52、LiDAR53等によるセンシング結果に基づいて、後述するローカルマップとのマッチングを行うための地図として車両1で作成され、地図情報蓄積部23に蓄積されてもよい。
また、外部のサーバ等から高精度地図が提供される場合、通信容量を削減するため、車両1がこれから走行する計画経路に関する、例えば数百メートル四方の地図データが外部のサーバ等から取得される。
【0038】
位置情報取得部24は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からGNSS信号を受信し、車両1の位置情報を取得する。取得した位置情報は、走行支援・自動運転制御部29に供給される。なお、位置情報取得部24は、GNSS信号を用いた方式に限定されず、例えば、ビーコンを用いて位置情報を取得してもよい。
【0039】
外部認識センサ25は、車両1の外部の状況の認識に用いられる各種のセンサを備え、各センサからのセンサデータを車両制御システム11の各部に供給する。外部認識センサ25が備えるセンサの種類や数は任意である。
【0040】
例えば、外部認識センサ25は、カメラ51、レーダ装置52、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)53、及び、超音波センサ54を備える。これに限らず、外部認識センサ25は、カメラ51、レーダ装置52、LiDAR53、及び、超音波センサ54のうち1種類以上のセンサを備える構成でもよい。
カメラ51、レーダ装置52、LiDAR53、及び、超音波センサ54の数は、現実的に車両1に設置可能な数であれば特に限定されない。また、外部認識センサ25が備えるセンサの種類は、この例に限定されず、外部認識センサ25は、他の種類のセンサを備えてもよい。外部認識センサ25が備える各センサのセンシング領域の例は、後述する。
【0041】
なお、カメラ51の撮影方式は、特に限定されない。例えば、測距が可能な撮影方式であるToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラといった各種の撮影方式のカメラを、必要に応じてカメラ51に適用することができる。これに限らず、カメラ51は、測距に関わらずに、単に撮影画像を取得するためのものであってもよい。
【0042】
また、例えば、外部認識センサ25は、車両1に対する環境を検出するための環境センサを備えることができる。環境センサは、天候、気象、明るさ等の環境を検出するためのセンサであって、例えば、雨滴センサ、霧センサ、日照センサ、雪センサ、照度センサ等の各種センサを含むことができる。
【0043】
さらに、例えば、外部認識センサ25は、車両1の周囲の音や音源の位置の検出等に用いられるマイクロフォンを備える。
【0044】
車内センサ26は、車内の情報を検出するための各種のセンサを備え、各センサからのセンサデータを車両制御システム11の各部に供給する。車内センサ26が備える各種センサの種類や数は、現実的に車両1に設置可能な種類や数であれば特に限定されない。
【0045】
例えば、車内センサ26は、カメラ、レーダ装置、着座センサ、ステアリングホイールセンサ、マイクロフォン、生体センサのうち1種類以上のセンサを備えることができる。
車内センサ26が備えるカメラとしては、例えば、ToFカメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラといった、測距可能な各種の撮影方式のカメラを用いることができる。これに限らず、車内センサ26が備えるカメラは、測距に関わらずに、単に撮影画像を取得するためのものであってもよい。
車内センサ26が備える生体センサは、例えば、シートやステアリングホイール等に設けられ、運転者等の搭乗者の各種の生体情報を検出する。
【0046】
車両センサ27は、車両1の状態を検出するための各種のセンサを備え、各センサからのセンサデータを車両制御システム11の各部に供給する。車両センサ27が備える各種センサの種類や数は、現実的に車両1に設置可能な種類や数であれば特に限定されない。
【0047】
例えば、車両センサ27は、速度センサ、加速度センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、及び、それらを統合した慣性計測装置(IMU(Inertial Measurement Unit))を備える。
例えば、車両センサ27は、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ、ヨーレートセンサ、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ、及び、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサを備える。
例えば、車両センサ27は、エンジンやモータの回転数を検出する回転センサ、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ、タイヤのスリップ率を検出するスリップ率センサ、及び、車輪の回転速度を検出する車輪速センサを備える。
例えば、車両センサ27は、バッテリの残量及び温度を検出するバッテリセンサ、並びに、外部からの衝撃を検出する衝撃センサを備える。
【0048】
記憶部28は、不揮発性の記憶媒体及び揮発性の記憶媒体のうち少なくとも一方を含み、データやプログラムを記憶する。記憶部28は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)として用いられ、記憶媒体としては、HDD(Hard Disc Drive)といった磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、及び、光磁気記憶デバイスを適用することができる。
記憶部28は、車両制御システム11の各部が用いる各種プログラムやデータを記憶する。例えば、記憶部28は、EDR(Event Data Recorder)やDSSAD(Data Storage System for Automated Driving)を備え、事故等のイベントの前後の車両1の情報や車内センサ26によって取得された情報を記憶する。
【0049】
走行支援・自動運転制御部29は、車両1の走行支援及び自動運転の制御を行う。例えば、走行支援・自動運転制御部29は、分析部61、行動計画部62、及び、動作制御部63を備える。
【0050】
分析部61は、車両1及び周囲の状況の分析処理を行う。分析部61は、自己位置推定部71、センサフュージョン部72、及び、認識部73を備える。
【0051】
自己位置推定部71は、外部認識センサ25からのセンサデータ、及び、地図情報蓄積部23に蓄積されている高精度地図に基づいて、車両1の自己位置を推定する。
例えば、自己位置推定部71は、外部認識センサ25からのセンサデータに基づいてローカルマップを生成し、ローカルマップと高精度地図とのマッチングを行うことにより、車両1の自己位置を推定する。車両1の位置は、例えば、後輪対車軸の中心が基準とされる。
【0052】
ローカルマップは、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の技術を用いて作成される3次元の高精度地図、占有格子地図(Occupancy Grid Map)等である。
3次元の高精度地図は、例えば、上述したポイントクラウドマップ等である。
占有格子地図は、車両1の周囲の3次元又は2次元の空間を所定の大きさのグリッド(格子)に分割し、グリッド単位で物体の占有状態を示す地図である。物体の占有状態は、例えば、物体の有無や存在確率により示される。
ローカルマップは、例えば、認識部73による車両1の外部の状況の検出処理及び認識処理にも用いられる。
【0053】
なお、自己位置推定部71は、位置情報取得部24により取得される位置情報、及び、車両センサ27からのセンサデータに基づいて、車両1の自己位置を推定してもよい。
【0054】
センサフュージョン部72は、複数の異なる種類のセンサデータ(例えば、カメラ51から供給される画像データ、及び、レーダ装置52から供給されるセンサデータ)を組み合わせて、新たな情報を得るセンサフュージョン処理を行う。異なる種類のセンサデータを組合せる方法としては、統合、融合、連合等がある。
【0055】
認識部73は、車両1の外部の状況の検出を行う検出処理、及び、車両1の外部の状況の認識を行う認識処理を実行する。
【0056】
例えば、認識部73は、外部認識センサ25からの情報、自己位置推定部71からの情報、センサフュージョン部72からの情報等に基づいて、車両1の外部の状況の検出処理及び認識処理を行う。
【0057】
具体的には、例えば、認識部73は、車両1の周囲の物体の検出処理及び認識処理等を行う。物体の検出処理とは、例えば、物体の有無、大きさ、形、位置、動き等を検出する処理である。
物体の認識処理とは、例えば、物体の種類等の属性を認識したり、特定の物体を識別したりする処理である。ただし、検出処理と認識処理とは、必ずしも明確に分かれるものではなく、重複する場合がある。
【0058】
例えば、認識部73は、レーダ装置52又はLiDAR53等によるセンサデータに基づくポイントクラウドを点群の塊毎に分類するクラスタリングを行うことにより、車両1の周囲の物体を検出する。これにより、車両1の周囲の物体の有無、大きさ、形状、位置が検出される。
【0059】
例えば、認識部73は、クラスタリングにより分類された点群の塊の動きを追従するトラッキングを行うことにより、車両1の周囲の物体の動きを検出する。これにより、車両1の周囲の物体の速度及び進行方向(移動ベクトル)が検出される。
【0060】
例えば、認識部73は、カメラ51から供給される画像データに基づいて、車両、人、自転車、障害物、構造物、道路、信号機、交通標識、道路標示等を検出又は認識する。また、認識部73は、セマンティックセグメンテーション等の認識処理を行うことにより、車両1の周囲の物体の種類を認識してもよい。
【0061】
例えば、認識部73は、地図情報蓄積部23に蓄積されている地図、自己位置推定部71による自己位置の推定結果、及び、認識部73による車両1の周囲の物体の認識結果に基づいて、車両1の周囲の交通ルールの認識処理を行うことができる。認識部73は、この処理により、信号機の位置及び状態、交通標識及び道路標示の内容、交通規制の内容、並びに、走行可能な車線等を認識することができる。
【0062】
例えば、認識部73は、車両1の周囲の環境の認識処理を行うことができる。認識部73が認識対象とする周囲の環境としては、天候、気温、湿度、明るさ、及び、路面の状態等が想定される。
【0063】
行動計画部62は、車両1の行動計画を作成する。例えば、行動計画部62は、経路計画、経路追従の処理を行うことにより、行動計画を作成する。
【0064】
なお、経路計画(Global path planning)とは、スタートからゴールまでの大まかな経路を計画する処理である。この経路計画には、軌道計画と言われ、計画した経路において、車両1の運動特性を考慮して、車両1の近傍で安全かつ滑らかに進行することが可能な軌道生成(Local path planning)を行う処理も含まれる。
【0065】
経路追従とは、経路計画により計画された経路を計画された時間内で安全かつ正確に走行するための動作を計画する処理である。行動計画部62は、例えば、この経路追従の処理の結果に基づき、車両1の目標速度と目標角速度を計算することができる。
【0066】
動作制御部63は、行動計画部62により作成された行動計画を実現するために、車両1の動作を制御する。
【0067】
例えば、動作制御部63は、後述する車両制御部32に含まれる、ステアリング制御部81、ブレーキ制御部82、及び、駆動制御部83を制御して、軌道計画により計算された軌道を車両1が進行するように、加減速制御及び方向制御を行う。
例えば、動作制御部63は、衝突回避又は衝撃緩和、追従走行、車速維持走行、自車の衝突警告、自車のレーン逸脱警告等のADASの機能実現を目的とした協調制御を行う。例えば、動作制御部63は、運転者の操作によらずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行う。
【0068】
DMS30は、車内センサ26からのセンサデータ、及び、後述するHMI31に入力される入力データ等に基づいて、運転者の認証処理、及び、運転者の状態の認識処理等を行う。認識対象となる運転者の状態としては、例えば、体調、覚醒度、集中度、疲労度、視線方向、酩酊度、運転操作、姿勢等が想定される。
【0069】
なお、DMS30が、運転者以外の搭乗者の認証処理、及び、当該搭乗者の状態の認識処理を行うようにしてもよい。また、例えば、DMS30が、車内センサ26からのセンサデータに基づいて、車内の状況の認識処理を行うようにしてもよい。認識対象となる車内の状況としては、例えば、気温、湿度、明るさ、臭い等が想定される。
【0070】
HMI31は、各種のデータや指示等の入力と、各種のデータの運転者等への提示を行う。
【0071】
HMI31によるデータの入力について、概略的に説明する。
HMI31は、人がデータを入力するための入力デバイスを備える。HMI31は、入力デバイスにより入力されたデータや指示等に基づいて入力信号を生成し、車両制御システム11の各部に供給する。
HMI31は、入力デバイスとして、例えばタッチパネル、ボタン、スイッチ、及び、レバーといった操作子を備える。これに限らず、HMI31は、音声やジェスチャ等により手動操作以外の方法で情報を入力可能な入力デバイスをさらに備えてもよい。
さらに、HMI31は、例えば、赤外線又は電波を利用したリモートコントロール装置や、車両制御システム11の操作に対応したモバイル機器又はウェアラブル機器等の外部接続機器を入力デバイスとして用いてもよい。
【0072】
HMI31によるデータの提示について、概略的に説明する。
HMI31は、搭乗者又は車外に対する視覚情報、聴覚情報、及び、触覚情報の生成を行う。また、HMI31は、生成された各情報の出力、出力内容、出力タイミング及び出力方法等を制御する出力制御を行う。
HMI31は、視覚情報として、例えば、操作画面、車両1の状態表示、警告表示、車両1の周囲の状況を示すモニタ画像等の画像や光により示される情報を生成及び出力する。また、HMI31は、聴覚情報として、例えば、音声ガイダンス、警告音、警告メッセージ等の音により示される情報を生成及び出力する。
さらに、HMI31は、触覚情報として、例えば、力、振動、動き等により搭乗者の触覚に与えられる情報を生成及び出力する。
【0073】
HMI31が視覚情報を出力する出力デバイスとしては、例えば、自身が画像を表示することで視覚情報を提示する表示装置や、画像を投影することで視覚情報を提示するプロジェクタ装置を適用することができる。
なお、表示装置は、通常のディスプレイを有する表示装置以外にも、例えば、ヘッドアップディスプレイ、透過型ディスプレイ、AR(Augmented Reality)機能を備えるウエアラブルデバイスといった、搭乗者の視界内に視覚情報を表示する装置であってもよい。
また、HMI31は、車両1に設けられるナビゲーション装置、インストルメントパネル、CMS(Camera Monitoring System)、電子ミラー、ランプ等が有する表示デバイスを、視覚情報を出力する出力デバイスとして用いることも可能である。
【0074】
HMI31が聴覚情報を出力する出力デバイスとしては、例えば、オーディオスピーカ、ヘッドホン、イヤホンを適用することができる。
【0075】
HMI31が触覚情報を出力する出力デバイスとしては、例えば、ハプティクス技術を用いたハプティクス素子を適用することができる。ハプティクス素子は、例えば、ステアリングホイール、シートといった、車両1の搭乗者が接触する部分に設けられる。
【0076】
車両制御部32は、車両1の各部の制御を行う。車両制御部32は、ステアリング制御部81、ブレーキ制御部82、駆動制御部83、ボディ系制御部84、ライト制御部85、及び、ホーン制御部86を備える。
【0077】
ステアリング制御部81は、車両1のステアリングシステムの状態の検出及び制御等を行う。ステアリングシステムは、例えば、ステアリングホイール等を備えるステアリング機構、電動パワーステアリング等を備える。
ステアリング制御部81は、例えば、ステアリングシステムの制御を行うステアリングECU、ステアリングシステムの駆動を行うアクチュエータ等を備える。
【0078】
ブレーキ制御部82は、車両1のブレーキシステムの状態の検出及び制御等を行う。ブレーキシステムは、例えば、ブレーキペダル等を含むブレーキ機構、ABS(Antilock Brake System)、回生ブレーキ機構等を備える。
ブレーキ制御部82は、例えば、ブレーキシステムの制御を行うブレーキECU、ブレーキシステムの駆動を行うアクチュエータ等を備える。
【0079】
駆動制御部83は、車両1の駆動システムの状態の検出及び制御等を行う。駆動システムは、例えば、アクセルペダル、内燃機関又は駆動用モータ等の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構等を備える。
駆動制御部83は、例えば、駆動システムの制御を行う駆動ECU、駆動システムの駆動を行うアクチュエータ等を備える。
【0080】
ボディ系制御部84は、車両1のボディ系システムの状態の検出及び制御等を行う。ボディ系システムは、例えば、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウインドウ装置、パワーシート、空調装置、エアバッグ、シートベルト、シフトレバー等を備える。
ボディ系制御部84は、例えば、ボディ系システムの制御を行うボディ系ECU、ボディ系システムの駆動を行うアクチュエータ等を備える。
【0081】
ライト制御部85は、車両1の各種のライトの状態の検出及び制御等を行う。制御対象となるライトとしては、例えば、ヘッドライト、バックライト、フォグライト、ターンシグナル、ブレーキライト、プロジェクション、バンパーの表示等が想定される。
ライト制御部85は、ライトの制御を行うライトECU、ライトの駆動を行うアクチュエータ等を備える。
【0082】
ホーン制御部86は、車両1のカーホーンの状態の検出及び制御等を行う。ホーン制御部86は、例えば、カーホーンの制御を行うホーンECU、カーホーンの駆動を行うアクチュエータ等を備える。
【0083】
図2は、
図1の外部認識センサ25のカメラ51、レーダ装置52、LiDAR53、及び、超音波センサ54等によるセンシング領域の例を示す図である。なお、
図2において、車両1を上面から見た様子が模式的に示され、左端側が車両1の前端(フロント)側であり、右端側が車両1の後端(リア)側となっている。
【0084】
センシング領域101F及びセンシング領域101Bは、超音波センサ54のセンシング領域の例を示している。
センシング領域101Fは、複数の超音波センサ54によって車両1の前端周辺をカバーしている。センシング領域101Bは、複数の超音波センサ54によって車両1の後端周辺をカバーしている。
【0085】
センシング領域101F及びセンシング領域101Bにおけるセンシング結果は、例えば、車両1の駐車支援等に用いられる。
【0086】
センシング領域102F乃至センシング領域102Bは、短距離又は中距離用のレーダ装置52のセンシング領域の例を示している。
センシング領域102Fは、車両1の前方において、センシング領域101Fより遠い位置までカバーしている。センシング領域102Bは、車両1の後方において、センシング領域101Bより遠い位置までカバーしている。
センシング領域102Lは、車両1の左側面の後方の周辺をカバーしている。センシング領域102Rは、車両1の右側面の後方の周辺をカバーしている。
【0087】
センシング領域102Fにおけるセンシング結果は、例えば、車両1の前方に存在する車両や歩行者等の検出等に用いられる。センシング領域102Bにおけるセンシング結果は、例えば、車両1の後方の衝突防止機能等に用いられる。センシング領域102L及びセンシング領域102Rにおけるセンシング結果は、例えば、車両1の側方の死角における物体の検出等に用いられる。
【0088】
センシング領域103F乃至センシング領域103Bは、カメラ51によるセンシング領域の例を示している。
センシング領域103Fは、車両1の前方において、センシング領域102Fより遠い位置までカバーしている。センシング領域103Bは、車両1の後方において、センシング領域102Bより遠い位置までカバーしている。
センシング領域103Lは、車両1の左側面の周辺をカバーしている。センシング領域103Rは、車両1の右側面の周辺をカバーしている。
【0089】
センシング領域103Fにおけるセンシング結果は、例えば、信号機や交通標識の認識、車線逸脱防止支援システム、自動ヘッドライト制御システムに用いることができる。センシング領域103Bにおけるセンシング結果は、例えば、駐車支援、及び、サラウンドビューシステムに用いることができる。
センシング領域103L及びセンシング領域103Rにおけるセンシング結果は、例えば、サラウンドビューシステムに用いることができる。
【0090】
センシング領域104は、LiDAR53のセンシング領域の例を示している。
センシング領域104は、車両1の前方において、センシング領域103Fより遠い位置までカバーしている。一方、センシング領域104は、センシング領域103Fより左右方向の範囲が狭くなっている。
【0091】
センシング領域104におけるセンシング結果は、例えば、周辺車両等の物体検出に用いられる。
【0092】
センシング領域105は、長距離用のレーダ装置52のセンシング領域の例を示している。
センシング領域105は、車両1の前方において、センシング領域104より遠い位置までカバーしている。一方、センシング領域105は、センシング領域104より左右方向の範囲が狭くなっている。
【0093】
センシング領域105におけるセンシング結果は、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control)、緊急ブレーキ、衝突回避等に用いられる。
【0094】
なお、外部認識センサ25が含むカメラ51、レーダ装置52、LiDAR53、及び、超音波センサ54の各センサのセンシング領域は、
図2以外に各種の構成をとってもよい。具体的には、超音波センサ54が車両1の側方もセンシングするようにしてもよいし、LiDAR53が車両1の後方をセンシングするようにしてもよい。また、各センサの設置位置は、上述した各例に限定されない。また、各センサの数は、1つでもよいし、複数であってもよい。
【0095】
[レーダ装置の構成]
レーダ装置52について詳しく説明する。本実施形態では、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のレーダ装置を例に挙げて説明を行う。
図3は、レーダ装置52の構成例を示す模式図である。
図4は、送信アンテナから送信されるレーダ波を説明するための模式図である。
【0096】
レーダ装置52は、送信アンテナ110と、複数の受信アンテナ111と、信号発生器112と、複数のミキサ(混合器)113と、ADコンバータ114と、コントローラ115とを有する。
送信アンテナ110は、信号発生器112により生成された送信信号に基づいて、レーダ波(送信波)を出射する。
本実施形態では信号発生器112により、送信信号として、連続波が周波数変調されたFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号が生成される。そして送信アンテナ110からFMCW変調されたレーダ波が出射される。
【0097】
具体的には、
図4A及びBに示すように、変調時間Tにおいて、周波数が単調増加するレーダ波が出射される。このようなレーダ波は、チャープとも呼ばれる。
また本実施形態では、
図4Cに示すように、変調時間Tを間隔としてN個のレーダ波が連続的に送信される。これらN個のレーダ波を1組とするチャープフレームが、送信アンテナ110から送信される。
レーダ波として、例えば波長4mmのミリ波レーダであり、76~77GHzの周波数帯域で周波数が変化するレーダ波を用いることが可能である。これに限定されず、レーダ波の波長、開始周波数、周波数帯域、振幅、変調時間、周波数の増加率等は限定されず、任意に設定されてよい。
また、送信アンテナ110の具体的な構成も限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0098】
複数の受信アンテナ111は、水平方向に一列に配置される。各受信アンテナ111は、レーダ波が物標 により反射されて生じた反射波を受信して受信信号を出力する。
図4に示すように、複数の受信アンテナ111の各々に対して、1つずつミキサ113が配置される。従って、受信アンテナ111は、自身に対して配置されるミキサ113に対して、反射波を受信することで得られる受信信号を出力する。
受信アンテナ111の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0099】
信号発生器112は、FMCW変調されたレーダ波を出射するための送信信号(FMCW信号)を生成し、送信アンテナ110に出力する。また信号発生器112は、生成した送信信号を、複数のミキサ113の各々に出力する。
信号発生器の112の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0100】
複数のミキサ113の各々は、信号発生器112から出力された送信信号と、受信アンテナ111から出力された受信信号とを混合して、送信信号と受信信号との周波数の差分を周波数成分とするビート信号(周波数差信号)を生成する。
すなわち複数のミキサ113の各々は、受信信号と送信信号とに基づいて、ビート信号を生成する。ビート信号は、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号とも呼ばれる。
複数のミキサ113の各々は、生成したビート信号を、ADコンバータ114に出力する。
ミキサ113の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0101】
ADコンバータ114は、各ミキサ113から出力されるアナログデータのビート信号をサンプリングして、デジタルデータのビート信号に変換する。デジタルデータのビート信号は、コントローラ115に出力される。
ADコンバータ114の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0102】
図4Cに示すように、本実施形態では、送信アンテナ110により、変調時間Tを間隔としたN個1組のレーダ波(チャープフレーム)が送信される。
チャープフレーム内の各レーダ波に対応して、デジタルデータのビート信号が生成される。従って、N個のデジタルデータのビート信号が順次コントローラ115に出力される。
複数の受信アンテナ111を複数のチャンネルとした場合は、チャープフレームの送信に対応して、各チャンネルにてN個のデジタルデータのビート信号が生成され、コントローラ115に出力される。
【0103】
コントローラ115は、レーダ装置52が有する各ブロックの動作を制御する。コントローラ115は、例えばCPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア回路を有する。CPUがメモリに記憶されている本技術に係るプログラムを実行することにより、種々の処理が実行される。
コントローラ115として、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスが用いられてもよい。
本実施形態では、コントローラ115のCPUが本技術に係るプログラムを実行することで、機能ブロックとして、周波数解析部116、閾値設定部117、ノイズ信号抽出部118、検出用信号抽出部119、ピーク検出部120、及び物標情報生成部121が実現される。
そしてこれらの機能ブロックにより、本実施形態に係る信号処理方法が実行される。なお各機能ブロックを実現するために、IC(集積回路)等の専用のハードウェアが適宜用いられてもよい。
プログラムは、例えば記録媒体を介してレーダ装置52にインストールされる。あるいは、グローバルネットワーク等を介してプログラムがレーダ装置52にインストールされてもよい。その他、コンピュータ読み取り可能な非一過性の任意の記憶媒体が用いられてよい。
【0104】
[信号処理方法]
レーダ装置52により実行される信号処理方法について説明する。本実施形態では、コントローラ115により、デジタルデータのビート信号に対して、以下に説明する信号処理方法が実行される。
【0105】
図5は、信号処理方法の一例を示すフローチャートである。
周波数解析部116により、ビート信号が距離方向にフーリエ変換され、距離に関する周波数スペクトル(以下、距離スペクトルと記載する)が生成される(ステップ101)。
フーリエ変換としては、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)が実行される。なお、距離スペクトルの生成方法は、フーリエ変換に限定されない。例えば圧縮センシングのような処理を用いて距離スペクトルを算出してもよい。
またスペクトルは、スペクトラムとも呼ばれる。
【0106】
図6は、周辺環境が既知の状態で、レーダ装置52による計測を実行した場合に得られた距離スペクトルの一例を示すグラフである。すなわち、周辺に物表として他の車両や建物が存在している環境にて実測で得られた距離スペクトルである。なお、横軸は、周波数成分に応じた距離(Range(m))に変換されている。
図6A及びBは、異なる周辺環境でそれぞれ計測された距離と信号強度の結果である。
【0107】
図6A及びBにおいて、2つのクロスマークが互いに45度の角度でずれて重なっているマーク(以下、単にクロスマークと記載する)が付されているピークは、周辺に存在している物標(ターゲット)により発生しているピークである。
図6Bの楕円形状の枠により囲まれている領域には、クロスマークが付された4つのピークが、連なった状態で発生している。これらは、長さ(幅)を持った建物に対応して発生するピークとなる。例えば、ガードレール等が存在する場合も、複数のピークが連なった状態で発生する。
【0108】
閾値設定部117により、距離スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)処理が実行され、CFAR閾値が設定される(ステップ102)
図7は、
図6A及びBに示す距離スペクトルに対して設定されたCFAR閾値を示すグラフである。
CFAR処理の具体的なアルゴリズムは限定されない。例えば、GO(Greatest Of)-CFAR処理や、CA(Cell Averaging)-CFAR処理等、任意のCFAR処理が実行されてよい。
【0109】
ノイズ信号抽出部118により、距離スペクトルのうちCFAR閾値よりも小さい信号からノイズ信号が抽出される(ステップ103)。
例えば、距離スペクトルのうちCFAR閾値よりも小さい信号の全て、又は距離スペクトルのうちCFAR閾値よりも小さい信号の一部の信号が、ノイズ信号として抽出される。
例えば、CFAR閾値よりも小さい信号のうち所定の範囲に含まれる信号が、ノイズ信号として抽出されてもよい。
所定の範囲として、例えば、信号強度(Intensity)に関する範囲が規定される。例えば、第1の信号強度から第1の信号強度よりも大きい第2の信号強度までの範囲に含まれる信号が、ノイズ信号として抽出される。第1の信号強度及び第2の信号強度としては、任意の値が設定されてよい。
あるいは、CFAR閾値との信号強度の差が、所定の閾値よりも大きい信号が、ノイズ信号として抽出されてもよい。すなわち、CFAR閾値から所定の閾値を差分した値よりも小さい信号が、ノイズ信号として抽出されてもよい。なお所定の閾値は任意に設定されてよい。
逆に、CFAR閾値との信号強度の差が、所定の閾値よりも小さい信号が、ノイズ信号として抽出されてもよい。すなわち、CFAR閾値から所定の閾値を差分した値よりも大きい信号が、ノイズ信号として抽出されてもよい。なお所定の閾値は任意に設定されてよい。
【0110】
所定の範囲として、例えば、距離(Range)おける範囲が規定されてもよい。例えば、第1の距離から第1の距離よりも大きい第2の距離までの範囲に含まれる信号が、ノイズ信号として抽出される。第1の距離及び第2の距離としては、任意の値が設定されてよい。
あるいは、距離が所定の閾値よりも大きい信号が、ノイズ信号として抽出されてもよい。逆に、距離が所定の閾値よりも小さい信号が、ノイズ信号として抽出されてもよい。なお、所定の閾値は任意に設定されてよい。
【0111】
閾値設定部117により、ノイズ信号に基づいてノイズ閾値が設定される(ステップ104)。
図8は、
図6A及びBに示す距離スペクトルに対して設定されたノイズ閾値を示すグラフである。
図8A及びBに示すように、ノイズ閾値として、所定の信号強度が設定される。
【0112】
本実施形態では、ノイズ信号に基づいてノイズフロアが算出され、算出されたノイズフロアよりも大きい値がノイズ閾値として設定される。
ノイズフロアとして、例えばノイズ信号の平均値、分散値、又は標準偏差が用いられる。その他、最小値、最大値、モード(最頻値)やメジアン(中央値)等、ノイズ信号に対して任意の統計処理が実行され、その結果がノイズフロアとして算出されてもよい。
【0113】
ノイズ閾値は、例えばノイズフロアに所定の係数を乗じた値、又は所定の定数を加算した値が用いられる。もちろんこれに限定されず、ノイズフロアよりも大きい値が適宜設定されてよい。
例えば、所定の係数として1.0~2.0の値が乗算されてノイズ閾値が設定されてもよい。また所定の定数として、0.0~20dBが加算されてノイズ閾値が設定されてもよい。
なお、後にも説明するように、本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含まない概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aよりも大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。従って、ノイズ閾値として、ノイズフロアと同じ値が用いられてもよい。
また、ノイズフロアを算出することなく、ノイズ信号からノイズ閾値が直接的に算出されてもよい。例えば、ノイズ信号の平均値、分散値、又は標準偏差に基づいて、ノイズ閾値が算出されてもよい。
【0114】
検出用信号抽出部119により、距離スペクトルのうちノイズ閾値よりも大きい信号が検出用信号として抽出される(ステップ105)。
図8A及びBに示す距離スペクトルのうち、ノイズ閾値よりも大きい信号が、検出用信号として抽出される。
ピーク検出部120により、検出用信号のピークが検出される(ステップ106)。
【0115】
物標情報生成部121により、周辺に存在する物標に関する物標情報が生成される(ステップ107)。
本実施形態では、物標情報生成部121により、ピーク検出部120による検出結果に基づいて、周辺に存在する物標が検出される。また物標の距離が検出される。
【0116】
物標情報として、周辺に存在する物標に関する相対速度、角度(方位)等が生成されてもよい。これら全部の情報が生成されてもよいし、少なくとも1つの情報が生成されてもよい。
例えば、チャームフレームに対応するN個のビート信号の各々に対して、
図6等に例示する距離スペクトルが生成される。従って、チャームフレームの送信に対応してN個の距離スペクトルが生成される。
これらN個の距離スペクトルの同距離のデータに対して、相対速度方向にフーリエ変換することで、相対速度に関する周波数スペクトル(以下、相対速度スペクトルと記載する)が生成される。相対速度スペクトルのピーク周波数に応じて、物標の相対速度を検出することが可能となる。なお、相対速度スペクトルの生成方法は、フーリエ変換に限定されない。例えば圧縮センシングのような処理を用いて相対速度スペクトルを算出してもよい。
また、複数の受信アンテナ(複数のチャンネル)の各々において算出される相対速度スペクトルの同距離同速度データに対して、角度方向にフーリエ変換することで、角度に関する周波数スペクトル(以下、角度スペクトルと記載する)が生成される。角度スペクトルのピーク周波数に応じて、物標の角度を検出することが可能となる。なお、角度スペクトルの生成方法は、フーリエ変換に限定されない。例えばCaponやMUSICといった高分解能アルゴリズムを用いてもよい。
このように距離スペクトルに基づいて、物標の相対速度、及び角度を検出することが可能である。また距離スペクトルのうちノイズ閾値よりも大きい検出用信号を用いて、物標の相対速度、及び角度を検出することも可能である。
物標情報生成部121により生成された物標情報は、センシングデータ(センシング結果)として、
図1に示す走行支援・自動運転制御部29等の各ブロックに出力される。
【0117】
本実施形態において、
図6等に例示する距離スペクトルは、レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルの一実施形態となる。
CFAR閾値は、本技術に係る第1の閾値の一実施形態となる。
ノイズ閾値は、本技術に係る第2の閾値の一実施形態となる。
また、閾値設定部117及びノイズ信号抽出部118により、周波数スペクトルに対してCFAR処理を実行して第1の閾値を設定し、周波数スペクトルのうち第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出する第1の抽出部が実現される。
また、閾値設定部117及び検出用信号抽出部119により、ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、周波数スペクトルのうち第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出する第2の抽出部が実現される。
また、送信アンテナ110と、複数の受信アンテナ111と、信号発生器112と、複数のミキサ(混合器)113と、ADコンバータ114とにより、FMCW信号を送信信号としてレーダ波を放射し、受信信号と送信信号とに基づいてビート信号を生成する送受信部が実現される。
また、ピーク検出部120は、本技術に係るピーク検出部の一実施形態となる。
また、物標情報生成部121は、本技術に係る物標情報生成部の一実施形態となる。物標情報生成部121は、物標抽出部ともいえる。
【0118】
[本技術の効果についての説明]
距離スペクトルに対してCFAR処理を実行することでCFAR閾値を設定する。そして、CFAR閾値よりも大きい信号に対してピーク処理を実行することで、物標までの距離を検出する技術も考えられる。
例えば、
図7A及びBに示すCFAR閾値よりも大きい信号に対してピーク検出を実行し、物標までの距離を算出するとする。
この場合、
図6及び
図7のグラフを比較するとわかるように、クロスマークの付いたピーク、すなわち実際に物標が存在することにより発生するピークが、CFAR閾値を下回ってしまい検出されない場合が起こり得る。
図6A及び
図7Aに示す例では、左から6番目のピークがCFAR閾値よりも小さくなってしまい検出から漏れてしまう。これは、左から5番目の強いピークにCFAR閾値が引っ張られてしまうことが原因であると考えられる。
すなわちCFAR閾値を用いたピーク検出では、強いピークに閾値が引っ張られてしまい、強いピークのすぐ後ろの弱いピークが検出しづらくなるという問題がある。
【0119】
図6B及び
図7Bに示す例では、長さ(幅)を持った建物やガードレール等により発生する連なった状態の4つのピークが、CFAR閾値よりも小さくなってしまい検出から漏れてしまっている。
すなわち、CFAR閾値を用いたピーク検出では、長さ(幅)を持った建物やガードレール等により発生する連なった状態のピークを検出することも難しい。
このように、CFAR閾値を用いたピーク検出では、周辺に存在する物標を見逃す可能性がある。
【0120】
またCFAR閾値を用いたピーク検出では、ノイズを誤検出してしまう可能性もある。例えば、
図6A及び
図7Aに示す例では、三角マークのピークがノイズであるにもかかわらずCFAR閾値を上回ってしまい検出されてしまっている。
これは、非常に弱いノイズに閾値が引っ張られてしまい、すぐ後のノイズがCFAR閾値よりも大きい信号となってしまうことが原因であると考えられる。
このように、ノイズのみが発生している領域においては、ノイズの強弱によって、ノイズがCFAR閾値よりも大きい信号として検出されてしまう可能性がある。
【0121】
本技術では、CFAR処理により得られるCFAR閾値が、ノイズ信号の抽出及びノイズフロアの検出に用いられる点が大きな特徴である。すなわち距離スペクトル内の物標の存在により発生するピークと、ノイズとの分離に、CFAR閾値が用いられる。
例えば、CFAR閾値を用いたピーク検出による物標抽出率(CFAR閾値以上のデータの数/全ビン)はたかだか1%程度であり、残り99%近くはほとんどノイズである可能性が高い。
従って、この残り99%のデータをノイズであるとみなし、平均化等の統計処理をすればノイズフロアが検知可能であると考えられる。
【0122】
ノイズ信号(ノイズフロア)に基づいてノイズ閾値が設定され、ノイズ閾値よりも大きい信号が検出用信号として抽出される。この検出用信号に対してピーク検出を実行することで、周辺に存在する物標を見逃してしまう可能性を十分に抑制することが可能となる。すなわち、周辺に存在する物標の検出精度を十分に向上させることが可能となる。また高い精度で、ノイズを除去することが可能となる。
【0123】
図8に示すように、ノイズ閾値よりも大きい検出用信号に対してピーク検出を実行することで、
図6に示すクロスマークの付いたピークを精度よく検出することが可能となる。また、
図7Aに示す三角マークのピーク、すなわちノイズが検出されてしまうことも防止されている。
【0124】
図9は、方位角(Azimuth)に応じた距離スペクトルの一例を示すグラフである。
図9Aでは、方位角ごとの距離スペクトルの全ての信号が用いられている。
図9Bでは、ノイズ閾値よりも大きい検出用信号が抽出されている。
【0125】
本技術を適用することで、物標の存在により発生するピークとノイズとを高精度に分離することが可能となり、物表の検出精度を向上させることが可能となる。またノイズの誤検知を十分に抑制することが可能となる。
例えば、強いピークのすぐ後ろの弱いピークを共に検出することが可能となる。これにより、例えば車両と、その車両のすぐ後ろにいる歩行者や自転車等の強度差の大きい物標同士を分離し、精度よく検出することが可能となる。
また本技術を適用することで、連なった状態で発生する複数のピークを精度よく検出することが可能となる。これにより、例えば、長さ(幅)を持った建物やガードレール等を高精度に検出することが可能となる。
【0126】
[ノイズフロアの検出精度の向上]
ノイズ信号に基づいてノイズフロアが検出される際に、路面等の静止物体からの散乱による影響を除外することで、ノイズフロアの検出精度を向上させることが可能となる。例えば静止物体からのマルチパスによる反射の影響により、ノイズフロアが実際の値よりも大きくなってしまう場合があり得る。
例えば、ノイズ信号抽出部118により、CFAR閾値よりも小さい信号のうち静止物体からの反射波に対応する信号以外の信号が、ノイズ信号として抽出される。当該ノイズ信号を用いることで、ノイズフロアを高精度に検出することが可能となる。
【0127】
図10は、距離(Range)及び相対速度(Speed)を2軸とする2次元的なスペクトルの一例を示すグラフである。
図10に示す2次元スペクトルは、距離スペクトルと、距離スペクトルを相対速度方向にフーリエ変換することで生成される相対速度スペクトルとにより構成されている。
ノイズ信号抽出部118により、自車速度が取得される。自車速度は、例えば
図1に示す車両制御ECU21等から取得することが可能である。
自車に対して相対速度が(-自車速度)となる物標を、静止物体と見做すことが可能である。従って、相対速度スペクトルの静止物体のビン(=-自車速度のビン)の信号が除去される。この静止物体のビン(=-自車速度のビン)の信号が、静止物体からの反射波に対応する信号に相当する。
ノイズ信号抽出部118は、CFAR閾値よりも小さい信号のうち、相対速度スペクトルの静止物体のビン(=-自車速度のビン)の信号以外の信号を、ノイズ信号として抽出する。このノイズ信号に基づいて、精度の高いノイズフロアを検出することが可能となる。
精度の高いノイズフロアが検出されるので、ノイズ閾値の精度も向上する。この結果、ノイズ閾値よりも大きい検出用信号に基づいて、周辺に存在する物標を精度よく検出することが可能となる。
なお、相対速度スペクトルの静止物体のビンの信号のみならず、静止物体のビンの周辺の信号も合わせて除去されてもよい。例えば、静止物体のビンの周辺±10%の範囲のビンの信号が除去されてもよい。もちろん周辺の範囲(±%)は任意に設定されてよい。
【0128】
このように、自車速度と、相対速度スペクトルとに基づいてノイズ信号が抽出されてもよい。なお、本実施形態において、レーダ装置52が搭載される車両1は、移動体の一実施形態となる。また自車速度は、移動体の速度に相当する。
【0129】
以上、本実施形態に係るレーダ装置52では、距離スペクトルに対してCFAR処理が実行されてCFAR閾値が設定され、距離スペクトルのうちCFAR閾値よりも小さい信号からノイズ信号が抽出される。
また、ノイズ信号に基づいてノイズ閾値が設定され、距離スペクトルのうちノイズ閾値よりも大きい信号が、検出用信号として抽出される。
検出用信号のピークを検出することで、物標の検出精度を向上させることが可能となる。
本技術を適用することで、レーダによる物標検出において誤検出及び検出漏れを十分に防ぐことが可能となる。
【0130】
<その他の実施形態>
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0131】
上記では、距離スペクトルに対して、第1の閾値(CFAR閾値)の設定、ノイズ信号の抽出(ノイズフロアの検出)、第2の閾値(ノイズ閾値)の設定、検出用信号の抽出、及びピーク検出が実行された。
これに限定されず、相対速度スペクトル又は角度スペクトルに対して、第1の閾値(CFAR閾値)の設定、ノイズ信号の抽出(ノイズフロアの検出)、第2の閾値(ノイズ閾値)の設定、検出用信号の抽出、及びピーク検出が実行されてもよい。
すなわち、第1の抽出部により、相対速度スペクトル又は角度スペクトルが、レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルとして取得されてもよい。
【0132】
本技術は、FMCW方式以外のレーダ装置にも適用可能である。
【0133】
ネットワーク等を介して通信可能に接続された複数のコンピュータが協働することで、本技術に係る信号処理方法及びプログラムが実行され、本技術に係るレーダ装置のコントローラが構築されてもよい。
すなわち本技術に係る信号処理方法、及びプログラムは、単体のコンピュータにより構成されたコンピュータシステムのみならず、複数のコンピュータが連動して動作するコンピュータシステムにおいても実行可能である。
なお本開示において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれもシステムである。
コンピュータシステムによる本技術に係る信号処理方法、及びプログラムの実行は、例えば第1の閾値の設定、ノイズ信号の抽出、ノイズフロアの検出、第2の閾値の設定、検出用信号の抽出、ピーク検出等が、単体のコンピュータにより実行される場合、及び各処理が異なるコンピュータにより実行される場合の両方を含む。また所定のコンピュータによる各処理の実行は、当該処理の一部または全部を他のコンピュータに実行させその結果を取得することを含む。
すなわち本技術に係る情報処理方法及びプログラムは、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成にも適用することが可能である。
【0134】
各図面を参照して説明した車両制御システム、レーダ装置の各構成、各処理フロー等はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成やアルゴリズム等が採用されてよい。
【0135】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0136】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含まない概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0137】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【0138】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出する第1の抽出部と、
前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出する第2の抽出部と、
前記検出用信号のピークを検出するピーク検出部と
を具備するレーダ装置。
(2)(1)に記載のレーダ装置であって、
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号、又は前記第1の閾値よりも小さい信号の一部の信号を、前記ノイズ信号として抽出する
レーダ装置。
(3)(1)又は(2)に記載のレーダ装置であって、
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち所定の範囲に含まれる信号を、前記ノイズ信号として抽出する
レーダ装置。
(4)(1)又は(2)に記載のレーダ装置であって、
前記第1の抽出部は、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち静止物体からの反射波に対応する信号以外の信号を、前記ノイズ信号として抽出する
レーダ装置。
(5)(1)から(4)のうちいずれか1つに記載のレーダ装置であって、
前記第2の抽出部は、前記ノイズ信号に基づいてノイズフロアを算出し、算出された前記ノイズフロアよりも大きい値を、前記第2の閾値として設定する
レーダ装置。
(6)(5)に記載のレーダ装置であって、
前記第2の抽出部は、前記ノイズ信号の平均値、分散値、又は標準偏差を、前記ノイズフロアとして算出する
レーダ装置。
(7)(5)又は(6)に記載のレーダ装置であって、
前記第2の抽出部は、前記ノイズフロアに所定の係数を乗じた値、又は前記ノイズフロアに所定の定数を加算した値を、前記第2の閾値として設定する
レーダ装置。
(8)(1)から(7)のうちいずれか1つに記載のレーダ装置であって、さらに、
連続波が周波数変調されたFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を送信信号として前記レーダ波を放射し、前記受信信号と前記送信信号とに基づいてビート信号を生成する送受信部を具備し、
前記第1の抽出部は、前記ビート信号を距離方向にフーリエ変換することで生成される距離に関する周波数スペクトルを、前記周波数スペクトルとして取得する
レーダ装置。
(9)(1)から(8)のうちいずれか1つに記載のレーダ装置であって、さらに、
前記ピーク検出部による検出結果に基づいて、周辺に存在する物標を検出する物標情報生成部を具備する
レーダ装置。
(10)(8)又は(9)に記載のレーダ装置であって、
移動体に搭載されるように構成され、
前記第1の抽出部は、前記移動体の速度と、前記距離に関する周波数スペクトルを相対速度方向にフーリエ変換することで生成される相対速度に関する周波数スペクトルとに基づいて、前記第1の閾値よりも小さい信号のうち静止物体からの反射波に対応する信号以外の信号を、前記ノイズ信号として抽出する
レーダ装置。
(11)(1)から(7)のうちいずれか1つに記載のレーダ装置であって、さらに、
連続波が周波数変調されたFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を送信信号として前記レーダ波を放射し、前記受信信号と前記送信信号とに基づいてビート信号を生成する送受信部を具備し、
前記第1の抽出部は、前記ビート信号を距離方向にフーリエ変換することで生成される距離に関する周波数スペクトルに対して相対速度方向にフーリエ変換することで生成される相対速度に関する周波数スペクトルを、前記周波数スペクトルとして取得する
レーダ装置。
(12)
レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出し、
前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出し、
前記検出用信号のピークを検出する
ことをコンピュータシステムが実行する信号処理方法。
(13)
レーダ波が反射された反射波を受信することで得られる受信信号に基づいて生成される周波数スペクトルに対してCFAR(Constant False Alarm Rate)処理を実行して第1の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第1の閾値よりも小さい信号からノイズ信号を抽出するステップと、
前記ノイズ信号に基づいて第2の閾値を設定し、前記周波数スペクトルのうち前記第2の閾値よりも大きい信号を検出用信号として抽出するステップと、
前記検出用信号のピークを検出するステップと
をコンピュータシステムに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0139】
1…車両
11…車両制御システム
21…車両制御ECU
52…レーダ装置
110…送信アンテナ
111…受信アンテナ
112…信号発生器
113…ミキサ
114…ADコンバータ
115…コントローラ
116…周波数解析部
117…閾値設定部
118…ノイズ信号抽出部
119…検出用信号抽出部
120…ピーク検出部
121…物標情報生成部