(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174941
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】カメラ装置及び羽根駆動装置
(51)【国際特許分類】
G03B 11/04 20210101AFI20221117BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20221117BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G03B11/04 B
G03B17/02
H04N5/225 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081002
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
【テーマコード(参考)】
2H083
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H083CC01
2H083CC23
2H100AA61
2H100BB05
2H100CC07
5C122EA54
5C122GE01
5C122GE07
5C122GE11
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】カメラ装置の大型化を回避し、かつ、カメラ装置を撮影可能状態と撮影不能状態とに切替可能とする。
【解決手段】羽根駆動装置50は、撮影開口を閉じる閉位置と前記撮影開口を露出させる開位置とに移動される羽根70と、回転可能に支持され、羽根70に連結されたアーム80と、アーム80を第1方向と前記第1方向と反対の第2方向とに回転させるアクチュエータ90と、羽根70に固定される固定端部とアーム80の長孔に挿入される挿入端部とを備える接続部材100と、を有する。接続部材100は、アーム80が前記第1方向に回転するときに、前記長孔の第1内側面に押されて移動しつつ、前記第1内側面に沿って前記長孔の内部を移動する。接続部材100は、アーム80が前記第2方向に回転するときに、前記長孔の第2内側面に押されて移動しつつ、前記第2内側面に沿って前記長孔の内部を移動する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に対して直動可能に支持され、カメラ装置の開口部を閉じる閉位置と、前記開口部を開く開位置と、に移動される羽根と、
前記ベース部材に対して回転可能に支持され、前記羽根に連結されたアームと、
前記羽根を前記開位置から前記閉位置に移動させる第1方向と、前記羽根を前記閉位置から前記開位置に移動させる第2方向と、に前記アームを回転させるアクチュエータと、
前記羽根に固定される固定端部と、前記アームに設けられている長孔に挿入される挿入端部と、を備える接続部材と、を有し、
前記開口部への光の入射方向に沿って、前記羽根,前記アーム及び前記ベース部材がこの順で配置され、
前記アームの前記長孔は、対向する一対の第1内側面及び第2内側面を備え、
前記接続部材は、前記アームが前記第1方向に回転するときに、前記長孔の前記第1内側面に押されて移動しつつ、前記第1内側面に沿って前記長孔の内部を移動し、
前記接続部材は、前記アームが前記第2方向に回転するときに、前記長孔の前記第2内側面に押されて移動しつつ、前記第2内側面に沿って前記長孔の内部を移動する、羽根駆動装置。
【請求項2】
前記羽根が前記アームの回転に伴って前記開位置と前記閉位置との間を移動する間に、前記長孔の内部における前記接続部材の移動方向が反転する、請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記閉位置に移動した前記羽根と当接する受け面を備える緩衝部材を有し、
前記受け面は、前記羽根が前記閉位置に移動したときに、前記長孔の前記第1内側面に対して平行になる傾きを有する、請求項1又は2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
撮像素子と、
入射した光を前記撮像素子の受光面に集光させるレンズと、
前記レンズに対する光の入射を制御する羽根駆動装置と、
フロントケース及びリアケースから構成されるハウジングと、を有し、
前記フロントケースは、前記レンズに連通する開口部が設けられた天井板を備え、
前記羽根駆動装置は、
ベース部材と、
前記ベース部材に対して直動可能に支持され、前記開口部を閉じる閉位置と、前記開口部を開く開位置と、に移動される羽根と、
前記ベース部材に対して回転可能に支持され、前記羽根に連結されたアームと、
前記羽根を前記開位置から前記閉位置に移動させる第1方向と、前記羽根を前記閉位置から前記開位置に移動させる第2方向と、に前記アームを回転させるアクチュエータと、
前記羽根に固定される固定端部と、前記アームに設けられている長孔に挿入される挿入端部と、を備える接続部材と、を有し、
前記開口部への光の入射方向に沿って、前記羽根,前記アーム及び前記ベース部材がこの順で配置され、
前記アームの前記長孔は、対向する一対の第1内側面及び第2内側面を備え、
前記接続部材は、前記アームが前記第1方向に回転するときに、前記長孔の前記第1内側面に押されて移動しつつ、前記第1内側面に沿って前記長孔の内部を移動し、
前記接続部材は、前記アームが前記第2方向に回転するときに、前記長孔の前記第2内側面に押されて移動しつつ、前記第2内側面に沿って前記長孔の内部を移動する、カメラ装置。
【請求項5】
少なくとも前記羽根,前記アーム及び前記アクチュエータは、前記ベース部材に搭載され、
前記ベース部材は、前記フロントケースの前記天井板の内側に固定されている、請求項4に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記羽根に、当該羽根の移動方向に沿って延びるガイド孔が設けられ、
前記天井板の内面に、前記ガイド孔に挿入されるガイド突起が設けられている、請求項5に記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記天井板の前記内面に、前記接続部材の前記固定端部の一部を受け入れる逃げ溝が設けられている、請求項6に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置及びカメラ装置に用いられる羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、病院,介護施設,工場,店舗等の様々な場所に、監視カメラや見守りカメラ等のカメラ装置が設置されている。一方、カメラ装置の運用に際しては、個人のプライバシーを保護することが求められる。また、病院や介護施設等では、撮影される人(患者や被介護者)がなるべくストレスを感じないように配慮することが求められる。
【0003】
上記のような要求に応えるためには、カメラ装置が非作動状態のときには、カメラ装置を撮影不能状態にするとともに、カメラ装置が撮影不能状態であることを撮影される人が認識可能とすることが望ましい。
【0004】
ここで、カメラ装置の光学系に入射する光量を制限したり、調節したりする技術が特許文献1や特許文献2に開示されている。具体的には、所定方向に駆動される羽根によってカメラ装置のレンズや受光素子に入射する光の光路を開閉する技術が開示されている。
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示されている技術は、カメラ装置を撮影不能状態にすることを主目的とするものではない。しかし、かかる技術を応用することにより、カメラ装置を撮影不能状態にすることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-123079号公報
【特許文献2】特開平5-150287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に開示されているような羽根を応用してカメラ装置を撮影可能状態と撮影不能状態とに切り替える場合、カメラ装置の大型化(特に、厚みの増加)を回避することが求められる。
【0008】
本発明の目的は、カメラ装置の大型化を回避しつつ、カメラ装置を撮影可能状態と撮影不能状態とに切替可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態の羽根駆動装置は、ベース部材と、前記ベース部材に対して直動可能に支持され、カメラ装置の開口部を閉じる閉位置と前記開口部を開く開位置とに移動される羽根と、前記ベース部材に対して回転可能に支持され、前記羽根に連結されたアームと、前記羽根を前記開位置から前記閉位置に移動させる第1方向と前記羽根を前記閉位置から前記開位置に移動させる第2方向とに前記アームを回転させるアクチュエータと、前記羽根に固定される固定端部と前記アームに設けられている長孔に挿入される挿入端部とを備える接続部材と、を有する。前記開口部への光の入射方向に沿って、前記羽根,前記アーム及び前記ベース部材がこの順で配置される。前記アームの前記長孔は、対向する一対の第1内側面及び第2内側面を備える。そして、前記接続部材は、前記アームが前記第1方向に回転するときに、前記長孔の前記第1内側面に押されて移動しつつ、前記第1内側面に沿って前記長孔の内部を移動する。また、前記接続部材は、前記アームが前記第2方向に回転するときに、前記長孔の前記第2内側面に押されて移動しつつ、前記第2内側面に沿って前記長孔の内部を移動する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カメラ装置の大型化を回避し、かつ、カメラ装置を撮影可能状態と撮影不能状態とに切替可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】開状態のカメラ装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】中間状態のカメラ装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】閉状態のカメラ装置の外観を示す斜視図である。
【
図9】
図7中のa-a線に沿う部分拡大断面図である。
【
図12】羽根の動きを示すさらに他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。尚、実施形態を説明するための全ての図面において、同一又は実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用い、原則として再度の説明は行わない。
【0013】
<カメラ装置の概要>
本実施形態に係るカメラ装置の用途は特に限定されないが、病院,介護施設,工場,店舗等に、監視カメラや見守りカメラとして設置するのに適している。また、本実施形態に係るカメラ装置は、撮影可能状態と撮影不能状態とに切替可能である。より特定的には、結像光学系に光が入射不能な閉状態と、結像光学系に光が入射可能な開状態と、に切替可能である。さらに、本実施形態に係るカメラ装置が撮影不能状態(閉状態)に切り替えられると、撮影される人は、カメラ装置が撮影不能状態に切り替えられたことを認識可能である。
【0014】
図1~
図3は、本実施形態に係るカメラ装置1の外観を示す斜視図である。より特定的には、
図1は、開状態のカメラ装置1の外観を示す斜視図であり、
図3は、閉状態のカメラ装置1の外観を示す斜視図である。また、
図2は、開状態と閉状態との間の中間状態のカメラ装置1の外観を示す斜視図である。
【0015】
カメラ装置1は、開状態(
図1)から中間状態(
図2)を経て閉状態(
図3)に切り替えられる。また、カメラ装置1は、閉状態(
図3)から中間状態(
図2)を経て開状態(
図1)に切り替えられる。
【0016】
<ハウジング>
図1~
図3に示されるように、カメラ装置1は、フロントケース11及びリアケース12から構成されるハウジング(外装ケース)10を有する。
図1に示されているハウジング10の幅(W),高さ(H),厚み(D)は、カメラ装置1の外寸に相当する。
【0017】
図4に示されるように、フロントケース11は、概ね長方形の天井板13と、天井板13の各辺に連接する側壁板14a,14b,14c,14dと、を備えている。天井板13及び側壁板14a,14b,14c,14dは、合成樹脂によって一体成形されており、側壁板14aは、天井板13の一方の長辺に連接し、側壁板14bは、天井板13の他方の長辺に連接している。また、側壁板14cは、天井板13の一方の短辺に連接しており、側壁板14dは、天井板13の他方の短辺に連接している。
【0018】
フロントケース11の天井板13には、ハウジング10の内外に連通する円形の開口部15が設けられている。言い換えれば、開口部15は、天井板13に設けられた貫通孔である。撮影対象物から発せられる光は、開口部15を通してハウジング10内に取り込まれ、結像光学系に入射する。そこで、以下の説明では、開口部15を“撮影開口15”と呼ぶ場合がある。
【0019】
図1~
図3に示されるように、リアケース12は、フロントケース11に固定されて、フロントケース11の底部を閉塞している。
図4に示されるように、フロントケース11の四隅には、ねじ穴を備える複数のボス16が一体成形されている。リアケース12は、当該リアケース12を貫通してボス16にねじ結合された4本のねじによってフロントケース11に固定されている。
【0020】
<コネクタ,メモリスロット>
図5に示されるように、カメラ装置1は、電源ケーブルや通信ケーブル等を接続可能なコネクタ20を備えている。より特定的には、カメラ装置1は、USBケーブルを接続可能な雌型のコネクタ20を備えている。コネクタ20は、フロントケース11の側壁板14cに設けられている開口部に臨んでいる(
図2,
図3参照)。また、コネクタ20は、電源回路が設けられている基板21と電気的に接続されている。
【0021】
カメラ装置1は、所定の記録媒体を接続可能なスロットも備えている。より特定的には、カメラ装置1は、SDメモリカードを挿抜可能なスロットを備えている。フロントケース11の天井板13と側壁板14aとに跨っている蓋17(
図2,
図3)を開けると、スロットにSDメモリカードを抜き差しすることができる。
【0022】
<撮像素子,レンズ>
図6に示されるように、カメラ装置1は、撮像素子(イメージセンサ)30及びレンズ40を備えている。撮像素子30は、基板31に搭載されている。レンズ40は、撮像素子30の上方に配置され、レンズホルダ41によって保持されている。より特定的には、レンズ40の下部がレンズホルダ41にねじ結合されている。また、レンズ40の上部は、円筒形のレンズリング42によって囲まれている。尚、以下の説明では、基板31を“センサ基板31”と呼んで他の基板と区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0023】
撮影開口15に入射した光は、レンズ40によって撮像素子30の受光面30aに集光される。つまり、レンズ40は、撮像素子30の受光面30a上に撮影対象物の像をつくる結像光学系であるか、少なくとも結像光学系の一部である。撮像素子30は、レンズ40によって結像された像の光の明暗を電荷量に変換し、変換された電荷量に応じた信号を出力する。
【0024】
<アンテナ>
再び
図5を参照する。カメラ装置1は、アンテナ22を備えており、無線LAN(Wi-Fi)によって他の機器と相互接続が可能である。例えば、カメラ装置1は、撮像素子30から出力される信号(画像データ)をスマートフォンやタブレット端末等の他の機器に無線送信することができる。また、スマートフォン等の他の機器によってカメラ装置1を遠隔操作することもできる。
【0025】
<制御部>
カメラ装置1は、基板21及びセンサ基板31に加えて、制御部が設けられた基板23を備えている。以下の説明では、基板23を“制御基板23”と呼んで他の基板と区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0026】
制御基板23上に設けられている制御部は、基板21やセンサ基板31と電気的に接続されており、カメラ装置1を統括的に制御する。例えば、制御部は、撮像素子30に対する電力供給を制御する。また、制御部は、他の機器から送信され、アンテナ22によって受信された信号(命令)に基づいて、カメラ装置1の各部を作動させたり、停止させたりする。さらに、制御部は、撮像素子30から出力された信号(画像データ)を他の機器に無線送信したり、SDメモリカードに記録したりする。
【0027】
<羽根駆動装置の概要>
次に、
図5に示されている羽根駆動装置50について説明する。羽根駆動装置50は、ベース部材60,羽根70,アーム80,アクチュエータ90,接続部材100等から構成されている。
【0028】
羽根駆動装置50は、撮影開口15を開閉し、撮影開口15に隣接するレンズ40に対する光の入射を制御する。より特定的には、羽根駆動装置50の羽根70は、撮影開口15を閉じる閉位置と、撮影開口15を開く開位置と、に移動される。
【0029】
別の見方をすると、羽根駆動装置50は、カメラ装置1の撮影開口15を開状態(
図1)から閉状態(
図3)に切り替える。また、羽根駆動装置50は、カメラ装置1の撮影開口15を閉状態(
図3)から開状態(
図1)に切り替える。これにより、閉状態(
図3)ではレンズ40が被覆され、開状態(
図1)ではレンズ40が露出される。
【0030】
主に
図7~
図9を参照しながら、羽根駆動装置50の各部について詳細に説明する。
図7,
図8は、羽根駆動装置50の斜視図である。但し、
図8では、
図7に示されている羽根70が省略されている。また、
図9は、
図7中のa-a線に沿う部分拡大断面図である。
【0031】
<ベース部材>
ベース部材60は、メインプレート(カバープレート)61及びサブプレート(コイルカバー)62を含んでいる。メインプレート61は、板金によって形成されており、ベース部材60の大部分を構成している。
【0032】
ベース部材60には、少なくとも羽根70,アーム80及びアクチュエータ90が搭載されている。別の見方をすると、羽根70,アーム80及びアクチュエータ90を含む羽根駆動装置50の構成要素は、共通のベース部材60に搭載され、一体化(ユニット化)されている。尚、羽根70やアーム80は、主にメインプレート61によって支持されており、アクチュエータ90は、主にサブプレート62によって支持されている。
【0033】
羽根駆動装置50の構成要素が搭載されているベース部材60は、フロントケース11の天井板13の内側に固定されている。
図4に示されるように、天井板13の内側には、ねじ穴を備える複数のボス18が一体成形されている。ベース部材60は、当該ベース部材60を貫通してボス18にねじ結合されている複数本のねじによって天井板13の内側に固定されている。
【0034】
上記のとおり、羽根駆動装置50の構成要素は、ベース部材60によって一体化(ユニット化)されている。よって、ベース部材60が固定されているフロントケース11の天井板13は、羽根駆動装置50を保持する保持板(地板)でもある。
【0035】
図7,
図8に示されるように、メインプレート61の長手方向一側には、円形開口部63が形成されている。ここで、説明の便宜上の理由により、メインプレート61の長手方向を“左右方向”と定義する。さらに、円形開口部63が形成されている側を“左側”と定義し、円形開口部63が形成されている側と反対側を“右側”と定義する。
【0036】
尚、円形開口部63がレンズ40に入射する光の量を規制する「口径」である実施形態もある。このような実施形態では、ベース部材60に口径が設けられる。そこで、ベース部材60は「口径板」と呼ばれることもある。
【0037】
図5に示されるように、円形開口部63は、レンズ40を囲んでいるレンズリング42の外径と略同一の直径を有する丸穴である。また、円形開口部63の中心は、レンズ40及びレンズリング42の中心と一致している。つまり、円形開口部63の中心は、レンズ40の光軸上にある。
【0038】
<羽根>
再び
図7,
図8を参照する。羽根70は、合成樹脂によって形成されたシート又は薄板である。羽根70は、ベース部材60の上に配置され、ベース部材60と重なっている。より特定的には、羽根70は、メインプレート61と重なっており、メインプレート61を部分的に覆っている。
【0039】
羽根70は、ベース部材60に対して直動可能(スライド可能)に支持されている。より特定的には、羽根70は、ベース部材60上で左右に移動可能である。羽根70には、移動方向(左右方向)に延びる2つのガイド孔71が設けられている。一方、
図4に示されるように、フロントケース11の天井板13の内面には、2本のガイド突起13aが設けられている。
【0040】
ガイド孔71の幅は、ガイド突起13aの直径と略同一であり、それぞれのガイド突起13aが対応するガイド孔71に挿入されている(
図5参照)。この結果、羽根70は、ベース部材60(メインプレート61)とフロントケース11(天井板13)との間で、左右に移動可能(スライド可能)となっている。別の見方をすると、羽根70は、左右に移動することはできるが、その他の方向に移動することはできず、回転することもできない。
【0041】
羽根70は、円形開口部63を完全に塞ぐ位置まで左側に移動可能である。また、羽根70は、円形開口部63を完全に開く位置まで右側に移動可能である。円形開口部63を塞ぐ位置に移動した羽根70は、同時に撮影開口15を閉じ、かつ、レンズ40を被覆する。このとき、撮影開口15を塞いでいる羽根70の一部は、撮影開口15を通して目視可能となる(
図3参照)。したがって、カメラ装置1によって撮影される人は、羽根70によってレンズ40が被覆されていること、つまりカメラ装置1が撮影不能状態であることを目視によって確認することができる。
【0042】
一方、円形開口部63を開く位置に移動した羽根70は、同時に撮影開口15を開き、かつ、レンズ40を露出させる。このとき、撮影開口15を塞いでいた羽根70は、レンズ40の画角の外に退避する。したがって、カメラ装置1によって撮影される画像や映像に羽根70が映り込むことはない。
【0043】
上記のように、羽根70は、撮影開口15を閉じてレンズ40を被覆する閉位置と、撮影開口15を開いてレンズ40を露出させる開位置と、に移動される。羽根70の移動と撮影開口15の開閉については、後に改めて説明する。
【0044】
尚、羽根70は「バリヤ」と呼ばれることもある。そのため、羽根駆動装置50は「バリヤ開閉装置」や「バリヤ駆動装置」と呼ばれることもある。
【0045】
<アーム>
アーム80は、羽根70の移動方向と交差する方向に延びる細長の板金である。アーム80は、ベース部材60と羽根70との間に配置されている。より特定的には、アーム80は、メインプレート61の表面と羽根70の裏面との間の隙間に配置(挿入)されている。別の見方をすると、アーム80は、羽根70の裏側に配置されている。この結果、羽根70,アーム80及びベース部材60(メインプレート61)は、撮影開口15への光の入射方向に沿ってこの順で配置されている(重なっている)。尚、本実施形態では、撮影開口15への光の入射方向は、レンズ40への光の入射方向と一致する。
【0046】
アーム80は、ベース部材60に対して回転可能に支持されているとともに、羽根70に連結されている。より特定的には、
図7,
図8に示されるように、アーム80の長手方向一端側(基端側)は、支持軸81により、ベース部材60に対して回転自在に支持されている。一方、アーム80の長手方向他端側(先端側)には、長孔82が設けられている。そして、一部が羽根70に固定されている接続部材100の他の一部が長孔82に挿入されている。
【0047】
長孔82は、アーム80の長手方向に延びており、互いに平行な第1内側面82a及び第2内側面82bを備えている。第1内側面82aと第2内側面82bは、長孔82に挿入された接続部材100の一部を挟んで互いに対向している。
【0048】
<接続部材>
図9に示されるように、接続部材100は、羽根70に固定される固定端部101と、アーム80の長孔82に挿入される挿入端部102と、を備える金属部材である。接続部材100の固定端部101は、羽根70に設けられている貫通孔に差し込まれ、貫通孔の周縁にカシメ固定されている。
【0049】
一方、接続部材100の挿入端部102は、アーム80の長孔82を貫通してアーム80の裏側に突出しているが、アーム80に固定されてはいない。つまり、接続部材100は、羽根70に対しては固定されている一方、アーム80に対しては固定されていない。尚、アーム80の裏側に突出している挿入端部102の下端には、抜け止め用のフランジ102aが形成されている。
【0050】
別の見方をすると、接続部材100は、羽根70にカシメ固定される頭部(固定端部101)と、アーム80の長孔82に挿入される胴部(挿入端部102)と、を備えるリベットである。尚、接続部材100は、「羽根ダボ」または「ダボ」と呼ばれることもある。
【0051】
<アクチュエータ>
図7,
図8に示されるように、アクチュエータ90は、コイル91,ヨーク92,ロータマグネット93,駆動ピン94等から構成されている。コイル91は、ヨーク92に巻かれた導線によって構成されており、コイル91に電流が流されるとヨーク92が励磁される。
【0052】
ロータマグネット93は、円筒形の永久磁石であって、ヨーク92の一対の磁極部の間に配置されている。ロータマグネット93は、周方向に回転可能に支持されているとともに、周方向の半分はN極に着磁され、周方向の他の半分はS極に着磁されている。
【0053】
駆動ピン94は、クランク形状を有する。駆動ピン94の一端側は、ロータマグネット93に挿入され、ロータマグネット93に固定されている。よって、駆動ピン94は、ロータマグネット93と一体的に回転する。一方、駆動ピン94の他端側は、アーム80の基端に回転可能に連結されている。
【0054】
コイル91に電流が流され、ヨーク92が励磁されると、ヨーク92とロータマグネット93との間に電磁力(吸引力及び反発力)が生じる。この結果、ロータマグネット93及び駆動ピン94が回転する。例えば、コイル91にある向きの電流が流されると、ロータマグネット93及び駆動ピン94が時計回りに回転する。一方、コイル91に逆向きの電流が流されると、ロータマグネット93及び駆動ピン94が反時計回りに回転する。
【0055】
上記のようにして駆動ピン94が回転すると、アーム80が回転する。具体的には、アーム80が支持軸81を回転軸として回転する。別の見方をすると、長孔82が設けられているアーム80の先端側が、支持軸81を支点として左右に揺動する。尚、コイル91への通電が遮断された後も、ロータマグネット93の磁力によってアーム80の位置が保持される。つまり、アクチュエータ90は、非通電時にもアーム80の位置を保持する保持力を有する。
【0056】
<羽根駆動装置の動作>
次に、上記構成を有する羽根駆動装置50の動作について、主に
図10~
図12を参照しながら説明する。
【0057】
図10に示されている羽根駆動装置50の羽根70は、レンズ40を露出させる開位置にある。一方、
図12に示されている羽根駆動装置50の羽根70は、レンズ40を被覆する閉位置にある。
図11に示されている羽根駆動装置50の羽根70は、レンズ40の半分又は略半分を被覆し、レンズ40の残部を露出させる中間位置にある。
【0058】
図10に示されている羽根70は、アクチュエータ90によってアーム80が反時計回りに回転されると、
図11に示されている中間位置を経て
図12に示されている閉位置に移動する。一方、
図12に示されている羽根70は、アクチュエータ90によってアーム80が時計回りに回転されると、
図11に示されている中間位置を経て
図10に示されている開位置に移動する。
【0059】
つまり、
図10~
図12では、反時計回り方向が、羽根70が開位置から閉位置に移動される第1方向に相当する。また、
図10~
図12では、時計回り方向が、羽根70が閉位置から開位置に移動される第2方向に相当する。尚、アーム80の回転及び回転方向の切り替えが、コイル91への通電及び通電方向の切り替えによって実現されることは、既述のとおりである。
【0060】
また、本実施形態では、コイル91への通電や通電方向の切り替えは、スマートフォン等の他の機器を用いた遠隔操作によって実行される。もっとも、コイル91への通電や通電方向の切り替えを行うための操作ボタンや操作パネル等が設けられる実施形態もある。
【0061】
<開位置から閉位置への移動>
図10に示されているアーム80が反時計回り方向(第1方向)に回転すると、接続部材100がアーム80によって左側に押される。より特定的には、アーム80の長孔82に挿入されている接続部材100の挿入端部102(
図9)が、長孔82の第1内側面82aによって左側に押される。すると、アーム80に対して移動可能な接続部材100は、左側に移動しつつ、長孔82の内部を移動する。
【0062】
より特定的には、接続部材100は、左側に移動しつつ、長孔82の第1内側面82aに沿って支持軸81に近接する方向に移動する。このとき、接続部材100の挿入端部102は、長孔82の第1内側面82a上を摺動する。この結果、接続部材100が固定され、かつ、左右への直動(スライド)のみが許されている羽根70は、開位置(
図10)から中間位置(
図11)に向かって移動する。別の見方をすると、アーム80の回転運動が羽根70の直線運動に変換される。
【0063】
その後、アーム80がさらに反時計回り方向(第1方向)に回転すると、接続部材100は、さらに左側に移動しつつ、長孔82の内部を移動する。この結果、羽根70は、中間位置(
図11)を通過して閉位置(
図12)に至る。
【0064】
但し、羽根70が中間位置を通過すると、長孔82の内部における接続部材100の移動方向が反転する。具体的には、羽根70が中間位置を通過した後、接続部材100は、支持軸81から離間する方向に移動する。つまり、羽根70がアーム80の回転に伴って開位置から閉位置に移動する間に、長孔82の内部における接続部材100の移動方向が反転する。
【0065】
<閉位置から開位置への移動>
図12に示されているアーム80が時計回り方向(第2方向)に回転すると、接続部材100がアーム80によって右側に押される。より特定的には、アーム80の長孔82に挿入されている接続部材100の挿入端部102(
図9)が、長孔82の第2内側面82bによって右側に押される。すると、アーム80に対して移動可能な接続部材100は、右側に移動しつつ、長孔82の内部を移動する。
【0066】
より特定的には、接続部材100は、右側に移動しつつ、長孔82の第2内側面82bに沿って支持軸81に近接する方向に移動する。このとき、接続部材100の挿入端部102は、長孔82の第2内側面82b上を摺動する。この結果、接続部材100が固定され、かつ、左右への直動(スライド)のみが許されている羽根70は、閉位置(
図12)から中間位置(
図11)に向かって移動する。別の見方をすると、アーム80の回転運動が羽根70の直線運動に変換される。
【0067】
その後、アーム80がさらに時計回り方向(第2方向)に回転すると、接続部材100は、さらに右側に移動しつつ、長孔82の内部を移動する。この結果、羽根70は、中間位置(
図11)を通過して開位置(
図10)に至る。
【0068】
但し、羽根70が中間位置を通過すると、長孔82の内部における接続部材100の移動方向が反転する。具体的には、羽根70が中間位置を通過した後、接続部材100は、支持軸81から離間する方向に移動する。つまり、羽根70がアーム80の回転に伴って閉位置から閉位置に移動する間に、長孔82の内部における接続部材100の移動方向が反転する。
【0069】
上記のように、長孔82の内部における接続部材100の移動方向は、羽根70が開位置と閉位置との間を移動する間に、少なくとも1回反転する。本実施形態では、接続部材100は、羽根70が中間位置にあるときに、支持軸81に最も近接する(
図11)。また、接続部材100は、羽根70が開位置又は閉位置にあるときに、支持軸81から最も離間する(
図10,
図12)。
【0070】
もっとも、接続部材100が支持軸81に最も近接するタイミングや、接続部材100が支持軸81から最も離間するタイミングが本実施形態とは異なる実施形態もある。
【0071】
<緩衝部材>
図12に示されるように、閉位置に移動した羽根70は、緩衝部材110に当接する。別の見方をすると、緩衝部材110は、閉位置に移動した羽根70を受け止めるストッパである。
【0072】
図5に示されるように、緩衝部材110は、メインプレート61の左端に設けられている。緩衝部材110は、閉位置に移動した羽根70と当接する受け面111を備える弾性体である。より特定的には、緩衝部材110は、閉位置に移動した羽根70の端面と当接する受け面111を備える板状又はブロック状のゴムである。
【0073】
図12に示されるように、羽根70の端面及び緩衝部材110の受け面111は、羽根70が閉位置に移動したときに、アーム80の長孔82に対して平行になる傾きを有している。より特定的には、羽根70の端面及び緩衝部材110の受け面111は、羽根70が閉位置に移動したときに、長孔82の第1内側面82aに対して平行になる傾きを有している。この結果、長孔82の第1内側面82aが接続部材100を押す力(ベクトル)と、羽根70が緩衝部材110を押す力(ベクトル)と、が平行になる。
【0074】
上記のように、本実施形態のカメラ装置1には、撮影開口15を閉じる閉位置と、撮影開口15を開く開位置と、に移動される羽根70を備えた羽根駆動装置50が設けられている。そして、羽根70が閉位置に移動するとレンズ40への光の入射が阻止され、羽根70が開位置に移動するとレンズ40への光の入射が許可される。よって、カメラ装置1は、撮影可能状態と撮影不能状態とに切替可能である。
【0075】
また、羽根駆動装置50を構成している羽根70,アーム80及びベース部材60は、撮影開口15(レンズ40)への光の入射方向に沿ってこの順で配置されている。つまり、アーム80が羽根70の裏側に配置されている。したがって、フロントケース11の天井板13と羽根70との間に、アーム80を配置するための隙間を確保する必要がない。別の見方をすると、アーム80が羽根70の表側に配置されているレイアウトに比べて、羽根駆動装置50をフロントケース11の天井板13に近づけることができる。この結果、カメラ装置1の大型化(特に、厚みの増加)を回避することができる。言い換えれば、カメラ装置1を薄型化させることができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、
図4に示されるように、フロントケース11の天井板13の内面に逃げ溝13bが設けられている。逃げ溝13bは、羽根70の上面(表面)から突出している接続部材100の固定端部101の一部(上端)を受け入れる。したがって、羽根駆動装置50をフロントケース11の天井板13にさらに近づけることができる。
【0077】
羽根駆動装置50を天井板13に近づけることができると、レンズ40を天井板13に設けられている撮影開口15に近づけることができる。この結果、撮影開口15の縁が画像や映像に映り込むことを防止できる。言い換えれば、画像や映像が撮影開口15の縁によってケラレることを防止できる。かかる効果は、レンズ40の画角が広い場合に特に有効である。
【0078】
また、羽根70とアーム80とを連結している接続部材100は、アーム80の回転に伴ってアーム80に設けられている長孔82の内部を移動する。つまり、接続部材100は、羽根70に対しては移動不能であるが、アーム80に対しては移動可能である。この結果、接続部材100が羽根70とアーム80の双方に対して移動不能である場合に比べて、アーム80の回転量に対する羽根70の移動量を増大させることができる。
【0079】
さらに、相対的に体積が大きな羽根70が合成樹脂によって形成され、相対的に体積が小さなアーム80が板金によって形成されている本実施形態では、軽量化と耐久性の向上との両立が図られている。
【0080】
尚、他の実施形態では、閉状態であること明確にするために、羽根70が赤色に彩色されていてもよい。また、羽根70の色は赤色に限らず、例えばフロントケース11の色に対する補色であってもよい。さらに、羽根70の色は単色ではなく、例えばストライプ柄などが形成されるように彩色されてもよい。
【0081】
また、羽根70は、実質的な撮影不能状態を実現することができるのであれば、フィルター羽根や、複数の孔がメッシュ状に形成された羽根に置換してもよい。すなわち、一眼レフカメラに用いられるシャッタ羽根のように遮光性の高い羽根でなくてもよい。
【0082】
さらに、羽根70には、閉状態で撮影開口15から視認できるようにイラストやテキストなどが描かれていてもよい。
【0083】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本明細書に記載した材料などは一例であり、適宜変更することができる。
【0084】
ガイド突起13aやガイド孔71に代えて、ガイドレールやガイド溝によって羽根70が直動可能に支持される実施形態もある。また、電動及び手動の両方でアーム80を回転させることができる実施形態もある。
【符号の説明】
【0085】
1…カメラ装置、10…ハウジング、11…フロントケース、12…リアケース、13…天井板、13a…ガイド突起、13b…逃げ溝、14a,14b,14c,14d…側壁板、15…開口部(撮影開口)、16,18…ボス、17…蓋、20…コネクタ、21…基板、22…アンテナ、23…基板(制御基板)、30…撮像素子、30a…受光面、31…基板(センサ基板)、40…レンズ、41…レンズホルダ、42…レンズリング、50…羽根駆動装置、60…ベース部材、61…メインプレート、62…サブプレート、63…円形開口部、70…羽根、71…ガイド孔、80…アーム、81…支持軸、82…長孔、82a…第1内側面、82b…第2内側面、90…アクチュエータ、91…コイル、92…ヨーク、93…ロータマグネット、94…駆動ピン、100…接続部材、101…固定端部、102…挿入端部、102a…フランジ、110…緩衝部材、111…受け面