(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174960
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】破砕装置
(51)【国際特許分類】
B02C 1/04 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
B02C1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081037
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 弘志
(72)【発明者】
【氏名】橘川 智宏
(72)【発明者】
【氏名】冨永 秀樹
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063AA09
4D063AA18
4D063GA07
4D063GC05
4D063GC14
4D063GC23
4D063GC29
4D063GC40
4D063GD04
4D063GD12
4D063GD15
4D063GD20
(57)【要約】
【課題】 動歯に対する負荷に応じて調整部を制御し、不動歯と動歯の間隔を一時的に変化させて、破砕可能な状態を確保し、破砕対象物を適切に破砕する状態を確実に継続維持できる破砕装置を提供する。
【解決手段】 不動歯11と動歯12との間に入った破砕可能な破砕対象物又は破砕不能な異物によって、動歯11に対する負荷が増大しても、制御部に制御される調整部でスイングジョーを変位させ、不動歯と動歯との間隔を広げて、さらなる負荷の増大を抑えると共に破砕対象物の破砕又は異物の排出を行えるようにし、こうした破砕又は排出の完了後、調整部を元の状態に復帰させ、破砕を継続可能とすることから、破砕可能な破砕対象物の場合は、負荷増大による装置の停止を招かず、且つ動歯12を調整部で元の状態に速やかに復帰させて、破砕片を所望の大きさに問題なく維持でき、破砕作業を効率よく且つ精度よく行える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームに固定される不動歯と、当該不動歯に対向して配置される動歯と、当該動歯を取り付けられて少なくとも揺動可能に本体フレームに配設されるスイングジョーとを備え、不動歯に対して動歯をスイングジョーと共に動かして、不動歯と動歯との間に入れた破砕対象物を破砕する、ジョークラッシャである破砕装置において、
前記スイングジョーの本体フレームに対する可動範囲の位置決めを行って、前記不動歯と動歯の間隔を調整可能とする調整部と、
破砕時における動歯に対する負荷の変動に対応して、少なくとも前記調整部を制御する制御部とを備え、
破砕可能な破砕対象物又は破砕不能な異物によって、動歯に対し負荷が増大すると、前記制御部が、少なくとも前記調整部で不動歯と動歯との間隔を広げるようにし、負荷の増大の原因となった破砕対象物の破砕後、又は、異物の不動歯と動歯間からの排出後、調整部を元の状態に復帰させることを
特徴とする破砕装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の破砕装置において、
前記スイングジョー及び動歯を動かす電動機と、
当該電動機と別途にスイングジョーを動かせる流体圧モータとを備え、
前記制御部が、破砕不能な異物によって、動歯に対し負荷が増大すると、前記調整部で不動歯と動歯との間隔を広げるより前に、電動機による駆動を停止させると共に、流体圧モータを正逆回転駆動させて前記スイングジョーを動かし、不動歯と動歯との間隔を繰り返し変化させ、負荷上昇の原因となった異物が不動歯と動歯との間から排出されやすくすることを
特徴とする破砕装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の破砕装置において、
前記調整部が、前記スイングジョーに対し前記不動歯のある側とは反対側となる所定箇所に配設される流体圧シリンダとされ、当該流体圧シリンダの一端と他端との間隔を変えて前記スイングジョーを位置決めし、前記不動歯と動歯の間隔を調整可能とされ、
前記制御部が、動歯に対し負荷が増大すると、前記調整部としての流体圧シリンダの一端と他端との間隔を縮小させて前記スイングジョーを動かし、不動歯と動歯との間隔を広げるようにし、負荷の増大の原因となった破砕対象物の破砕後、又は、異物の不動歯と動歯間からの排出後、流体圧シリンダを元の状態に復帰させることを
特徴とする破砕装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載の破砕装置において、
前記制御部が、
動歯に対し負荷が増大して、スイングジョーを通じて前記流体圧シリンダの一端と他端との間隔を縮小しようとする力が強まり、流体圧シリンダに通じる流体圧回路の流体圧が高くなると、流体圧シリンダの一端と他端との間隔の一時的な縮小を伴いつつ流体を制御して、動歯に対する負荷を抑制可能とする流体圧制御手段と、
前記電動機に流れる電流を検出し、検出した電流値が、不動歯と動歯との間に破砕不能な異物が入って動歯に対し過負荷となる状況に対応した、あらかじめ設定された所定の条件を満たす場合には、電動機の駆動を停止させる一方、検出した電流値が前記条件を満たさない場合には、電動機の駆動を継続させる電動機制御手段とを備え、
前記流体圧制御手段が、破砕可能な破砕対象物によって動歯に対し過渡的に負荷が増大すると、前記電動機制御手段で検出される電動機の電流値が前記条件を満たす状態に到らない程度に、流体圧シリンダに通じる流体圧回路の流体を制御して流体圧シリンダの一端と他端との間隔を一時的に縮小させることを
特徴とする破砕装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の破砕装置において、
前記制御部の電動機制御手段が、動歯に対する負荷の上昇が生じた状態における電動機に流れる電流値であって、過負荷の状況に対応した前記条件を満たす場合の電流値より小さい所定の電流値を、第二の閾値としてあらかじめ設定し、
前記電動機制御手段が、電動機に流れる電流を検出し、検出した電流値が前記条件を満たさない場合で、且つ前記第二の閾値を超える場合には、電動機の駆動を継続させつつ、破砕装置に破砕対象物を供給するフィーダを停止させることを
特徴とする破砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石などの破砕対象物を破砕するジョークラッシャ等の破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、石やコンクリート廃材、アスファルト廃材などを所望の大きさに破砕する破砕装置として、ジョークラッシャが使用されている。ジョークラッシャは、固定された不動歯に対して、スイングジョーに取り付けた動歯を動かし、不動歯と動歯との間に導入した破砕対象物を不動歯と動歯で挟んで破砕するものである。
【0003】
従来のジョークラッシャのうち、多く利用されているシングルトッグル式のジョークラッシャでは、通常、不動歯を固定支持するジョークラッシャの本体フレームに、電動機や油圧モータ等で回転駆動される回転軸が回転可能に軸支され、この回転軸に軸中心をずらして一体化させて設けられる偏心軸部に対し、スイングジョーがその上部を相対回転可能に取り付けられて支持される。
【0004】
そして、このスイングジョーの下部が、本体フレームに別途揺動可能として設けられたトッグルプレートの一端部に当接すると共に、トッグルプレートとスイングジョーが互いに離隔せず当接を維持する状態で、スイングジョーがトッグルプレートに対し相対的に揺動可能とされることで、偏心軸部とスイングジョー、トッグルプレート、及び本体フレームが、本体フレームを静止節、偏心軸部を原動節、スイングジョーを従動節とするリンク機構をなし、スイングジョーを不動歯に対して近付けたり離したりする、スイングジョーの揺動を含む所定の動きを繰り返し生じさせられる仕組みである。
【0005】
スイングジョーの下部に当接するトッグルプレートの、スイングジョーに当接する一端部とは反対側の他端部は、本体フレーム上に設けられたトッグルブロック等の受部材により位置決めされている。この受部材(トッグルブロック)を位置調整し、トッグルプレートの本体フレーム上における揺動中心位置を変化させることで、不動歯に対するスイングジョーの相対位置関係を進退調整でき、スイングジョーに取り付けられた動歯と不動歯との間の隙間を、破砕対象物の破砕で得たい破砕片の粒度分布に合わせて調整可能となっている。
このような動歯と不動歯との間の隙間を調整可能な従来のジョークラッシャの例として、特開2001-70810号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のジョークラッシャは前記特許文献に例示される構成を有しており、不動歯と動歯との間に金属等の異物を投入された場合、これを破砕できないために過負荷となり、そのまま破砕を継続すると装置の破損等不具合を招くため、過負荷の状態が生じるとこれを判別して装置を停止させる仕組みが導入されていた。
【0008】
こうした従来のジョークラッシャで、スイングジョーを動かすための回転軸を電動機で駆動するものの場合、負荷が増大すると駆動源である電動機に流れる電流も増大することを利用して、金属等の異物を破砕できない過負荷の状態を電動機の電流値で判定するのが一般的であった。ただし、過負荷の状態を電動機の電流値で判定していたため、過負荷に対応して電動機を停止とする電流の閾値が低く設定されていると、本来破砕されるべき石などの破砕対象物が硬質で割れにくいものである場合などに、ピーク的に高くなる負荷で電動機の電流値が増大して閾値を超える状態となり、過負荷と誤判定して電動機が停止し、破砕が中断する事態が頻発するという課題を有していた。こうした電動機の停止の都度、電動機を再度起動させるために、その起動の支障となる破砕対象物の残りを不動歯と動歯との間から取り出す必要があるなど、復旧に時間がかかり、破砕作業の効率が低下するという問題もあった。
【0009】
これに対し、仮に破砕対象物が硬質の場合に、破砕に係る負荷で電動機の電流値が増大しても過負荷に対応する閾値を超えることがないよう、閾値を高く設定すると、破砕できない異物による負荷上昇に際しても過負荷と判定するタイミングが遅れることで、装置停止までに時間がかかり、装置を過負荷の状態でそのまま暫く作動させることによる不具合、例えば、トッグルプレートの曲がりや軸受の破損など、が発生しやすくなるという課題を有していた。こうして停止が遅れることで損傷や破損等の不具合が生じる箇所は、復旧に時間がかかる装置要部であることが多いため、これも破砕作業の効率を著しく低下させることに繋がった。
【0010】
一方、回転軸を油圧モータで駆動するものの場合、負荷の増大が油圧モータを含む油圧回路における油圧の増大としてあらわれることから、負荷の増大に伴う油圧の増大に反応して過負荷を判定し、駆動を停止させる油圧制御機構が採用され、過負荷を迅速に判定して破砕を停止できる仕組みを実現していた。また、油圧による駆動は、その性質上、負荷が電動機の場合のように異常に増大する事態は起こりにくいことに加え、電動機と比較して起動時のトルクを発生させやすく、停止後の起動が迅速に行える、といったメリットがあった。しかし、こうした油圧モータで駆動する装置は、駆動機構が複雑且つ大掛かりなものとなり、装置としてのコストがかかる上、油圧を発生させるために油圧ポンプを常時作動させておく必要があり、ランニングコストも大きくなるという課題を有していた。
【0011】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、動歯に対する負荷に応じて調整部を制御して、不動歯と動歯の間隔を一時的に大きくすると共に、破砕対象物の破砕や異物の排出に続いて調整部で不動歯と動歯の間隔を元の状態に復帰させて、破砕可能な状態を確保し、破砕対象物を適切に破砕する状態を確実に継続維持できる破砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る破砕装置は、本体フレームに固定される不動歯と、当該不動歯に対向して配置される動歯と、当該動歯を取り付けられて少なくとも揺動可能に本体フレームに配設されるスイングジョーとを備え、不動歯に対して動歯をスイングジョーと共に動かして、不動歯と動歯との間に入れた破砕対象物を破砕する、ジョークラッシャである破砕装置において、前記スイングジョーの本体フレームに対する可動範囲の位置決めを行って、前記不動歯と動歯の間隔を調整可能とする調整部と、破砕時における動歯に対する負荷の変動に対応して、少なくとも前記調整部を制御する制御部とを備え、破砕可能な破砕対象物又は破砕不能な異物によって、動歯に対し負荷が増大すると、前記制御部が、少なくとも前記調整部で不動歯と動歯との間隔を広げるようにし、負荷の増大の原因となった破砕対象物の破砕後、又は、異物の不動歯と動歯間からの排出後、調整部を元の状態に復帰させるものである。
【0013】
このように本発明によれば、不動歯と動歯との間に入った破砕可能な破砕対象物又は破砕不能な異物によって、動歯での破砕に際し負荷が増大しても、制御部に制御される調整部でスイングジョーを変位させ、不動歯と動歯との間隔を広げて、さらなる負荷の増大を抑えると共に破砕対象物の破砕又は異物の排出を行えるようにし、こうした破砕又は排出の完了後、調整部を元の状態に復帰させ、破砕を継続可能とすることにより、破砕可能な破砕対象物の場合は、負荷増大による装置の停止を招かず、且つ動歯を調整部で元の状態に速やかに復帰させて、破砕片を所望の大きさに問題なく維持でき、破砕作業を効率よく且つ精度よく行える。また、破砕不能な異物により負荷が増大して過負荷に至る場合も、調整部で不動歯と動歯との間隔を広げ、異物を排出した後は調整部で不動歯と動歯との間隔を速やかに元に戻すことができ、破砕の中断を必要最小限にして損失を抑えられる。
【0014】
また、本発明に係る破砕装置は必要に応じて、前記スイングジョー及び動歯を動かす電動機と、当該電動機と別途にスイングジョーを動かせる流体圧モータとを備え、前記制御部が、破砕不能な異物によって、動歯に対し負荷が増大すると、前記調整部で不動歯と動歯との間隔を広げるより前に、電動機による駆動を停止させると共に、流体圧モータを正逆回転駆動させて前記スイングジョーを動かし、不動歯と動歯との間隔を繰り返し変化させ、負荷上昇の原因となった異物が不動歯と動歯との間から排出されやすくするものである。
【0015】
このように本発明によれば、流体圧モータでスイングジョーを動かして動歯の位置を変更可能とし、破砕不能な異物による負荷上昇が生じた場合には、制御部で流体圧モータを正逆回転させ、スイングジョーと一体の動歯を揺動させて不動歯と動歯との間隔を変化させるようにすることにより、流体圧モータの正逆回転駆動に基づいた動歯の不動歯に近付いたり離れたりする動きが、異物と動歯との位置関係を変え、異物を不動歯と動歯との間に挟まって動かない状態から離脱させ、異物を不動歯と動歯との間で落下させるか上方に引き上げられる状態に移行させて、異物を排出可能とすることができ、必ずしも調整部でスイングジョーを動かして不動歯と動歯との間隔を広げる状態とせずに済み、異物排出後に破砕を速やかに再開できる。また、調整部による不動歯と動歯との間隔調整を伴わずに、流体圧モータの駆動で不動歯と動歯との間隔を繰り返し変化させることで、異物と共に不動歯と動歯との間にあった未破砕の大きな破砕対象物は、新たに破砕されて小さくなった状態で排出されるか、破砕されないまま不動歯と動歯との間に留まることとなり、大きな破砕対象物がそのまま不動歯と動歯との間から外に流出する事態を防止できる。
【0016】
また、本発明に係る破砕装置は必要に応じて、前記調整部が、前記スイングジョーに対し前記不動歯のある側とは反対側となる所定箇所に配設される流体圧シリンダとされ、当該流体圧シリンダの一端と他端との間隔を変えて前記スイングジョーを位置決めし、前記不動歯と動歯の間隔を調整可能とされ、前記制御部が、動歯に対し負荷が増大すると、前記調整部としての流体圧シリンダの一端と他端との間隔を縮小させて前記スイングジョーを動かし、不動歯と動歯との間隔を広げるようにし、負荷の増大の原因となった破砕対象物の破砕後、又は、異物の不動歯と動歯間からの排出後、流体圧シリンダを元の状態に復帰させるものである。
【0017】
このように本発明によれば、調整部をなす流体圧シリンダが、その一端と他端との間隔を変えてスイングジョーを動歯と共に位置決め可能とされ、動歯に対し負荷が増大すると、制御部が流体圧シリンダを作動させてスイングジョーを不動歯から遠ざけるように動かし、不動歯と動歯との間隔を広げる一方、破砕対象物の破砕、又は、異物の排出が完了すると、流体圧シリンダを元の状態に復帰させて不動歯と動歯との間隔を元に戻せることにより、負荷の変化に対して調整部としての流体圧シリンダを伸縮させてスイングジョーを動かし、速やかに不動歯と動歯との間隔を変えて対応でき、破砕可能な破砕対象物による負荷増大の場合は、流体圧シリンダの作動でスイングジョーを後退させている間に、より破砕しやすい状態となった破砕対象物を破砕でき、装置の停止を招かずに破砕作業を継続でき、作業効率を向上させられる。また、破砕不能な異物による負荷増大の場合は、流体圧シリンダの作動でスイングジョーを後退させ、広げた不動歯と動歯間の隙間から異物を排出でき、破砕の中断を必要最小限にして破砕作業を再開でき、破砕作業に係る時間的損失を抑えられる。
【0018】
また、本発明に係る破砕装置は必要に応じて、前記制御部が、動歯に対し負荷が増大して、スイングジョーを通じて前記流体圧シリンダの一端と他端との間隔を縮小しようとする力が強まり、流体圧シリンダに通じる流体圧回路の流体圧が高くなると、流体圧シリンダの一端と他端との間隔の一時的な縮小を伴いつつ流体を制御して、動歯に対する負荷を抑制可能とする流体圧制御手段と、前記電動機に流れる電流を検出し、検出した電流値が、不動歯と動歯との間に破砕不能な異物が入って動歯に対し過負荷となる状況に対応した、あらかじめ設定された所定の条件を満たす場合には、電動機の駆動を停止させる一方、検出した電流値が前記条件を満たさない場合には、電動機の駆動を継続させる電動機制御手段とを備え、前記流体圧制御手段が、破砕可能な破砕対象物によって動歯に対し過渡的に負荷が増大すると、前記電動機制御手段で検出される電動機の電流値が前記条件を満たす状態に到らない程度に、流体圧シリンダに通じる流体圧回路の流体を制御して流体圧シリンダの一端と他端との間隔を一時的に縮小させるものである。
【0019】
このように本発明によれば、動歯に対する負荷の増大で調整部をなす流体圧シリンダが力を受け、流体圧シリンダに通じる流体圧回路の流体圧が高くなると、制御部の流体圧制御手段が、流体圧シリンダの一時的な縮方向作動を生じるように流体圧回路の流体を制御して、動歯への負荷を適正化する一方、制御部の電動機制御手段が、異物により動歯に対し過負荷となる状況では、電動機に流れる電流の値に基づいて、電動機の駆動を停止させるようにし、破砕可能な破砕対象物により負荷が増大する場合には、流体圧制御手段が流体圧シリンダの縮方向作動を伴う流体の制御を行って動歯への負荷を抑え、電動機制御手段が電動機の駆動を停止させないようにすることにより、破砕可能な破砕対象物による負荷増大に対し、流体圧シリンダの一端と他端との間隔を一時的に縮めてスイングジョーを後退させ、不動歯と動歯との間隔を広げている間に、破砕しやすい状態となった破砕対象物を破砕して、通常の破砕状態に復帰できることとなり、過負荷の誤検出に伴う電動機の停止と、それによる破砕の中断を招くことなく破砕作業を継続でき、作業効率を向上させられる。
【0020】
また、制御部の電動機制御手段が、破砕不能な異物により生じる過負荷の状態を電動機の電流値から確実に判別できることで、異物に基づく過負荷の場合には電動機を停止させ、不動歯と動歯との間から異物を取り除く機会を確保でき、異物を破砕対象物と誤認して破砕装置から誤って排出して破砕片に混入させることはなく、破砕装置以降の工程での異物によるトラブルを回避できる。
【0021】
また、本発明に係る破砕装置は必要に応じて、前記制御部の電動機制御手段が、動歯に対する負荷の上昇が生じた状態における電動機に流れる電流値であって、過負荷の状況に対応した前記条件を満たす場合の電流値より小さい所定の電流値を、第二の閾値としてあらかじめ設定し、前記電動機制御手段が、電動機に流れる電流を検出し、検出した電流値が前記条件を満たさない場合で、且つ前記第二の閾値を超える場合には、電動機の駆動を継続させつつ、破砕装置に破砕対象物を供給するフィーダを停止させるものである。
【0022】
このように本発明によれば、制御部の電動機制御手段で、異物により動歯に対し過負荷となる状況より小さく負荷の増大した状態に対応する、電動機に流れる電流値の第二の閾値が設定され、電動機に流れる電流の電動機制御手段による検出値が、過負荷に対応する条件を満たさないまでも、第二の閾値を超えるようであれば、電動機の駆動は停止させない一方で、破砕対象物供給用のフィーダは停止させて、破砕対象物の供給を中断することにより、動歯に対する負荷の増大と共に破砕対象物の破砕の進行が滞る中、不動歯と動歯との間にそれ以上破砕対象物を供給しないようにして、負荷が増大する原因となった破砕しにくい破砕対象物の破砕又は異物の排出を集中的に実行でき、後から供給された破砕対象物の影響を受けることなく速やかに破砕又は排出を進められ、負荷の増大した状態をより短時間で解消して破砕作業を継続又は再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る破砕装置の概略構成説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る破砕装置における流体圧モータ及びフライホイール設置側の概略側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る破砕装置における制御系統説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る破砕装置における流体圧制御手段による不動歯と動歯との間隔の調整状態説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る破砕装置における不動歯と動歯間への異物進入時の電動機の電流値、流体圧シリンダの受ける圧力、及びトッグルブロックの位置ずれ量の各変化を示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る破砕装置における不動歯と動歯間への異物進入状態での流体圧モータの駆動によるスイングジョー作動状態説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る破砕装置における不動歯と動歯間への異物進入状態での流体圧シリンダの作動に伴うスイングジョーの不動歯から離れる側へのずれ状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る破砕装置を前記
図1ないし
図7に基づいて説明する。本実施形態では、シングルトッグル式のジョークラッシャである例について説明する。
前記各図において本実施形態に係る破砕装置1は、本体フレーム10に固定される不動歯11と、この不動歯11に対向して配置される動歯12と、この動歯12を取り付けられて少なくとも揺動可能に本体フレーム10に配設されるスイングジョー13と、このスイングジョー13の本体フレーム10に対する可動範囲の位置決めを行って、不動歯11と動歯12の間隔を調整可能とする前記調整部としての流体圧シリンダ16と、スイングジョー13及び動歯12を動かす電動機17と、この電動機17と別途にスイングジョー13を動かせる流体圧モータ18と、破砕時における動歯12に対する負荷の変動に対応して、流体圧シリンダ16、電動機17、及び流体圧モータ18を制御する制御部19とを備える構成である。
【0025】
この破砕装置1は、固定状態の不動歯11に対して動歯12をスイングジョー13と共に動かして、不動歯11と動歯12との間隔を周期変化させ、不動歯11と動歯12との間に供給、導入される破砕対象物を破砕するものである。
【0026】
破砕装置1は、スイングジョー13を動かすための機構として、スイングジョー13の下部に一端部を当接させて設けられるトッグルプレート14と、トッグルプレート14の他端部に当接するようにして本体フレーム10に位置調整可能として設けられるトッグルブロック15とをさらに有する。
【0027】
こうした破砕装置各部の機構については、本体フレーム10におけるトッグルブロック15の支持構造と、流体圧シリンダ16を作動させる流体圧回路と、流体圧シリンダ16等を制御する制御部19とを除いて、公知のシングルトッグル式のジョークラッシャと同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0028】
前記不動歯11と動歯12は、それぞれ平板状に形成され、各表面を、複数の突起が波状の横断面をなすように並列する突起面とされる構成である。
これら不動歯11が、スイングジョー13に取り付けられる動歯12と対向して配置される状態となる。そして、不動歯11と動歯12との間に、下方が狭く上方が広い破砕用空間が形成される。
【0029】
前記本体フレーム10は、例えば金属製の枠組や板組等による剛性の高い立体構造を有するものであり、安定した地面や床面に固定状態で設置される他、自走式台車上に搭載されることもある。この本体フレーム10が、不動歯11と、動歯12を取り付けられたスイングジョー13とを支持することとなる。
【0030】
本体フレーム10の上部には、スイングジョー13の支持のための回転軸20が回転可能に軸支される。この回転軸20上に、回転軸の中心から偏心させた偏心軸部21が一体に設けられ、この偏心軸部21周りにスイングジョー13の上端部が相対回転可能に取り付けられる。回転軸20の端部には、公知のジョークラッシャと同様に、フライホイール25と、電動機17からの駆動力を無端ベルトを介して伝えられるプーリ(図示を省略)が取り付けられる。
【0031】
前記回転軸20は、通常破砕時は電動機17で回転駆動される。起動時など大きな負荷により電動機に過大な電流が流れうる場合には、流体圧モータ18で回転軸20を駆動し、回転数上昇ののち電動機17による駆動に切り替える仕組みである。
【0032】
前記スイングジョー13は、その上部を回転軸20の偏心軸部21に支持される一方、下端部に連結されたテンションロッド30で不動歯11に対し離れる向きに付勢される構成である。
【0033】
前記スイングジョー13は、その上部を回転軸20の偏心軸部21に支持される一方、下部の凹部を、本体フレーム10に別途揺動可能として設けられるトッグルプレート14の一端部に当接させ、この当接を維持するように、下端部に連結されたテンションロッド30で不動歯11に対し離れる向きに付勢される構成である。
【0034】
前記トッグルプレート14は、金属製の略矩形板状体であり、回転軸20の軸方向(
図1の正面方向)と平行な向きとして配設される構成である(
図1参照)。このトッグルプレート14の一端部が、スイングジョー13下部の凹部に揺動可能に当接するようにされる。
【0035】
前記トッグルブロック15は、本体フレーム10上に、スイングジョー13に対し進退するように、本体フレーム10の一部に移動可能な向きを拘束され、且つ流体圧シリンダ16に連結されて通常は動かない状態として配設される構成である。このトッグルブロック15に設けられた凹部にトッグルプレート14の他端部が揺動可能に当接するようにされる。
【0036】
スイングジョー13が不動歯11に対し離れる向きに付勢されることで、スイングジョー13とトッグルブロック15との間にトッグルプレート14が位置して、スイングジョー13とトッグルプレート14の一端部、及び、トッグルブロック15とトッグルプレート14の他端部を、それぞれ当接させ、互いに離隔しない状態が維持される。これにより、スイングジョー13、トッグルプレート14、本体フレーム10、及び回転軸20が一種のリンク機構を構成する。
【0037】
回転軸20が電動機17や流体圧モータ18の駆動で回転すると、スイングジョー13は、リンク機構の特徴に基づいた、揺動だけではなく上下動なども伴った、不動歯11に対し近付いたり離れたりする所定の動きを繰り返すこととなる。
【0038】
前記流体圧シリンダ16は、前記調整部として、スイングジョー13に対し不動歯11のある側とは反対側となる本体フレーム10の所定箇所に配設され、一端をトッグルブロック15の端部に、他端を本体フレーム10の端部にそれぞれ取り付けられ、これら一端と他端の間隔を流体圧制御で可変とされて、本体フレーム10に対するトッグルブロック15の位置を調整して、これに連動するスイングジョー13及びこれと一体の動歯12を本体フレーム10に対し位置決めし、不動歯11と動歯12の間隔を調整可能とするものである。
【0039】
この流体圧シリンダ16は、本体フレーム10におけるスイングジョー13に対し不動歯11の位置する側とは反対側となる部位に、回転軸20の軸方向と平行な向きに並べて複数(例えば、三つ)配設される。
【0040】
破砕装置による破砕対象物の破砕で得たい破砕片の粒度に関わる、不動歯11と動歯12との間の隙間の調整は、流体圧シリンダ16でのトッグルブロック15の位置調整によって、トッグルプレート14を介してスイングジョー13及び動歯12を動かし、破砕片の大きさに対応する所定の隙間が得られる位置で、流体圧シリンダ16を静止状態とし、トッグルブロック15を本体フレーム10上で固定状態とする、という手順となる。
【0041】
また、流体圧シリンダ16は、不動歯11と動歯12の間で破砕が滞る異常時、すなわち、破砕中における、破砕可能であるものの破砕しにくい性質の破砕対象物、又は、破砕不能な異物の存在によって、動歯12に対し負荷が増大する際には、制御部19の制御に基づいて、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を小さくしてトッグルブロック15を不動歯11から離れる向きに動かし、不動歯11と動歯12の間隔を一時的に広げ、破砕対象物の破砕や、異物の不動歯11と動歯12間からの排出を促す仕組みである。
【0042】
前記電動機17は、回転軸20から離れた箇所に配設され、無端ベルトを介して回転軸20端部のプーリに駆動力を伝達し、回転軸20を回転駆動して、スイングジョー13及びこれに取り付けられる動歯12を動かすものである。
【0043】
前記流体圧モータ18は、本体フレーム10上部に取り付けられ、その出力軸を回転軸20端部のフライホイール25を介して回転軸20に連結され、電動機17と別途に回転軸20を回転駆動して、スイングジョー13及びこれに取り付けられる動歯12を動かすものである。
【0044】
この流体圧モータ18は、破砕中に、破砕不能な異物によって動歯12に対し負荷が増大し、破砕が中断すると、制御部19による制御によって回転軸20の正逆回転を小刻みに繰り返すようにされ、この正逆回転でスイングジョー13を動かし、不動歯11と動歯12との間隔を繰り返し変化させることとなる。
【0045】
前記制御部19は、破砕時における動歯12に対する負荷の変動に対応して、前記調整部としての流体圧シリンダ16や、スイングジョー13と動歯12を動かす電動機17及び流体圧モータ18を制御するものである。
【0046】
制御部19は、破砕中に不動歯11と動歯12の間に存在する、破砕可能な破砕対象物又は破砕不能な異物によって、動歯12に対し負荷が増大すると、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を縮めてスイングジョー13を動かし、不動歯11と動歯12との間隔を広げるようにして負荷を抑える。負荷の増大の原因となった破砕対象物の破砕後、又は、異物の不動歯11と動歯12間からの排出後、流体圧シリンダ16を元の状態に復帰させる。
【0047】
詳細には、制御部19は、流体圧制御手段19aと、電動機制御手段19bと、流体圧制御機構部19cとを備えるものである。
前記流体圧制御手段19aは、破砕中、破砕可能な破砕対象物によって、動歯12に対し負荷が増大して、スイングジョー13を通じて流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を縮めようとする力が強まり、流体圧シリンダ16に通じる流体圧回路の流体圧が高くなると、流体圧回路で流体圧シリンダの一端と他端との間隔の一時的な縮小を伴うように作動流体を制御して、動歯に対する負荷を抑制可能とするものである。
【0048】
この流体圧制御手段19aは、例えば、流体圧回路における流体圧シリンダ16の縮方向作動に伴って流体圧が増大する側の流路(例えば、複動型片ロッドタイプの流体圧シリンダの場合は、そのキャップ側のシリンダ室に通じる流路)に連通させて設けられるアキュムレータとすることができる。アキュムレータを用いる場合、負荷増大による流体圧シリンダ16に通じる流体圧回路の流体圧の一時的な増大が解消されると、一旦取り込んだ作動流体を流体圧回路の流路に戻して、流体圧シリンダ16を元の状態にそのまま復帰させられることから、スイングジョー13の位置決めに関わる流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔についての設定や流体圧シリンダ16の保持圧力の設定を調整せずに済み、こうした調整に係る手間やコストを抑えられる。
【0049】
この他、アキュムレータ同様に、流体圧シリンダ16に通じる流体圧回路の流体圧が増大すると、作動流体の一部を一時的に流体圧回路の流路外に逃がして流体圧シリンダの縮方向作動を許容し、流体圧が低下すると、逃がした作動流体の一部を流体圧回路の流路に速やかに戻せる仕組みであれば、他の制御手段を用いることもできる。
【0050】
前記電動機制御手段19bは、電動機17に流れる電流を検出し、検出した電流値が、不動歯11と動歯12との間に破砕不能な異物が入って動歯に対し過負荷となる状況に対応した、あらかじめ設定された所定の条件(例えば、電流値が過負荷に対応して設定された閾値を超える、など)を満たす場合には、電動機17の駆動を停止させる一方、検出した電流値が前記条件を満たさない場合には、電動機17の駆動を継続させるものである。
【0051】
この他、電動機制御手段19bは、電動機17の駆動を停止させるのに合わせて、破砕装置1の前段に設けられて破砕装置1に破砕対象物を供給するフィーダ(図示を省略)を停止させるようにしてもよい。
【0052】
このような電動機制御手段19bに対し、流体圧制御手段19aは、破砕可能な破砕対象物によって動歯12に対し過渡的に負荷が増大すると、電動機制御手段19bで検出される電動機17の電流値が前記条件を満たす状態に到らない程度に、作動流体を制御して流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を一時的に縮小させ、負荷を抑えるものとなっている。
【0053】
例えば、過負荷の状況に対応した条件として、電動機17に流れる電流値について、300Aを超える状態が0.6秒継続する場合を設定すると、
図5に示すように、破砕できない異物が実際に不動歯11と動歯12との間に挟まって動歯12の動きに支障を来す状態となる、運転開始から約327秒経過時以前は、破砕対象物により動歯12に対し過渡的に負荷が増大して流体圧シリンダ16に加わる圧力(トッグル圧)がピーク的に上昇した場合でも、流体圧制御手段19aの作用により流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を一時的に縮小させて、トッグルセットとして示されるトッグルブロック15の不動歯11との位置関係を変化させ、スイングジョー13及び動歯12を不動歯11から離すことで、動歯に対する負荷を抑制し、電動機17の電流値(ジョー電流)が過負荷の状況に対応した前記条件を満たさないようにする仕組みとなっている。
【0054】
前記流体圧制御機構部19cは、流体圧回路の要部をなして、流体圧シリンダ16及び流体圧モータ18の作動を制御するものである。
制御部19では、破砕不能な異物によって動歯に対する負荷が増大すると、流体圧シリンダ16で不動歯11と動歯12との間隔を広げるより前に、電動機17による回転軸を通じたスイングジョー13の駆動を停止させると共に、流体圧制御機構部19cにより、流体圧モータ18が回転軸20を正逆回転させてスイングジョー13を動かし、不動歯11と動歯12との間隔を繰り返し変化させるようにしている(
図6参照)。
【0055】
これにより、不動歯11と動歯12との間で負荷上昇の原因となっている異物を、この不動歯11と動歯12との間から排出されやすくしている。この場合、異物の排出が目的であり、起動時のトルクが重要となる一方、回転軸20を正逆回転させられれば、通常の破砕の場合より低い回転速度でも問題ないことから、流体圧モータ18は破砕に対応する能力を有する必要は無く、流体圧モータ18とこれを作動させるための流体圧回路を小型化することができる。
【0056】
そして、流体圧制御機構部19cは、流体圧モータ18を作動させても、不動歯11と動歯12の間から異物が排出されない場合には、流体圧モータ18を停止させ、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を縮めてスイングジョー13を動かし、不動歯11と動歯12との間隔を広げる(
図7参照)。負荷の増大の原因となった異物の不動歯11と動歯12間からの排出後、流体圧シリンダ16を元の状態に復帰させる。
【0057】
次に、前記構成に基づく破砕装置における、稼働中の過負荷時の対応状態について説明する。前提として、破砕装置1は破砕対象物に対し、電動機17による駆動で無理なくスイングジョー13を動かして、破砕対象物を不動歯11と動歯12との間で支障なく継続的に破砕可能な状態にあるものとする。
【0058】
また、破砕対象物の破砕を行う前に、あらかじめ不動歯11と動歯12との間の隙間調整が行われるものとする。この隙間調整では、制御部19による制御下で、流体圧シリンダ16を作動させて、トッグルブロック15を本体フレーム10に対し移動させ、これにトッグルプレート14を介して連動するスイングジョー13及びこれと一体の動歯12も移動させることで、不動歯11と動歯12との間の隙間が、得ようとする破砕片の大きさに対応した値となるようにされる。不動歯11と動歯12との間の隙間の大きさが、所望の値となったら、流体圧シリンダ16によるトッグルブロック15の位置調整(移動)が停止し、調整が完了となる。
【0059】
隙間調整完了後の破砕工程では、破砕装置の破砕に係る作動の開始として、まず流体圧モータ18により回転軸20が回転駆動される。回転軸20が適切な回転数に達すると、電動機17が回転軸20を回転駆動する状態に切り替わり、流体圧モータ18による駆動は停止となる。
こうした回転軸20の回転に伴い、スイングジョー13は動歯12と共に不動歯11に対し近付いたり離れたりする所定の動きを繰り返す。
【0060】
破砕を行う破砕装置1の上側には、破砕装置1に破砕対象物を供給するフィーダ(図示を省略)が設けられており、このフィーダにより、破砕対象物を不動歯11と動歯12との間の破砕用空間に供給、導入される。
【0061】
不動歯11と動歯12との間に投入され、不動歯11と動歯12に挟まれた破砕対象物は、スイングジョー13の動きにより、不動歯11と動歯12より挟圧力を受ける。この圧力に伴って破砕対象物の一部に応力が集中し、破砕対象物は応力集中箇所を起点として破砕され分割される。
【0062】
不動歯11と動歯12との間の破砕用空間を、破砕対象物が上から下に進行しながら、破砕力を受けて破砕され、粒度を小さくしていく過程が繰り返されて、最終的に、不動歯11と動歯12との間の隙間下端部(排出口)から、所望の大きさの破砕片が排出されることとなる。
【0063】
こうした破砕装置の稼働中、動いて破砕を行う動歯12に対する負荷は、動歯12をスイングジョー13と共に駆動する回転軸20の回転負荷となり、電動機17に流れる電流値として反映され、この電流値が制御部19の電動機制御手段19bにより監視されている。また、こうした動歯12に対する負荷の増大は、不動歯11と動歯12との間隔を広げようとする見かけの力としてスイングジョー13に作用し、スイングジョー13を後方から支えるトッグルプレート14及びトッグルブロック15を通じて、さらに流体圧シリンダ16を押し縮めようとする力として作用することとなり、流体圧シリンダ16を含む流体圧回路の一部における作動流体の流体圧の増大をもたらす。この流体圧回路における流体圧の増大は、制御部19の流体圧制御手段19aに反映される。
【0064】
そして、この稼働中に、不動歯11と動歯12との間で、破砕可能な破砕対象物がスムーズに破砕されないことや、破砕不能な異物が存在することでの、動歯12に対する負荷の増大が生じると、動歯12及びスイングジョー13の破砕に係る動きが滞ることで、スイングジョー13を適切に動かせない回転軸20の回転負荷の異常に繋がり、これに対応して電動機17の電流値が増大する。また、負荷の増大により、スイングジョー13他を通じて流体圧シリンダ16にこれを押し縮めようとする力が作用して、流体圧回路で流体圧が増大する。
【0065】
破砕中における、破砕可能な破砕対象物が破砕しにくい性質を有してスムーズに破砕されないことによる、動歯12に対する負荷の過渡的な増大に対しては、制御部19の流体圧制御手段19aが、流体圧シリンダ16に通じる流体圧回路の流体圧が高くなるのに対応して、連通する流体圧回路で、作動流体の一部を一時的に流体圧回路の流路外のスペースに逃がして流体圧シリンダ16の縮方向作動を許容する制御を行い、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を一時的に縮小させるようにする。
【0066】
こうして流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を一時的に小さくすることで、トッグルブロック15やこれに連動するスイングジョー13を不動歯11から離れる向きに動かし、不動歯11と動歯12の間隔を一時的に広げ(
図4参照)、動歯に破砕対象物からの反力として作用する負荷を緩和すると共に、破砕対象物と不動歯11及び動歯12との位置関係を変化させて、破砕対象物の破砕を促すことができる。
【0067】
破砕されなかった破砕対象物が破砕され、動歯12に対する負荷が減少すると、動歯12及びスイングジョー13の動きに対する破砕対象物からの反力も元の状態に戻ることで、流体圧シリンダ16を設定状態より押し縮めようとする力が前ほど作用せず、流体圧回路で流体圧が減少するのに伴い、流体圧制御手段19aが、逃がした作動流体の一部を流体圧回路の流路に速やかに戻し、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を元の状態に復帰させる。これに伴い、不動歯11と動歯12の間隔も当初の設定状態に戻ることとなる。
【0068】
この場合、流体圧制御手段19aが、動歯12に対する過渡的な負荷の増大に対応して、作動流体を制御して流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を一時的に縮小させ、負荷を抑えることで、電動機制御手段19bで検出される電動機17の電流値は、過負荷に対応した条件を満たす状態には到らず、電動機17が停止することはない。
【0069】
一方、破砕中における、不動歯11と動歯12との間に破砕不能な異物が存在することによる、動歯12に対する負荷の増大が生じると、その初期の、制御部19の電動機制御手段19bにおいて検出する電動機17の電流値が、動歯に対し過負荷となる状況に対応する条件を満たさない間は、電動機制御手段19bが電動機17の駆動を継続させる。
【0070】
そして、電動機制御手段19bが、検出した電動機17の電流値が過負荷に対応する前記条件を満たすまでに至ったことを認定した場合には、電動機17の駆動を停止させる。なお、この時、フィーダも停止させて、破砕装置1に破砕対象物が供給されないようにする。
【0071】
また、制御部19の流体圧制御機構部19cは、流体圧モータ18を作動させ、この流体圧モータ18で回転軸20を正逆回転させてスイングジョー13を動かし、不動歯11と動歯12との間隔を繰り返し変化させる(
図6参照)。こうして、不動歯11と動歯12との間に留まって過負荷の状態を招いている異物を、この不動歯11と動歯12との間から排出されやすくする。
【0072】
この流体圧モータ18の正逆回転駆動によって異物が不動歯11と動歯12との間から排出された場合には、破砕に係る作動開始時同様に流体圧モータ18を作動させ、次いで電動機17を作動させ、フィーダによる破砕対象物の供給を再開して、破砕作業状態に復帰する。
【0073】
流体圧モータ18の正逆回転駆動に伴う動歯12の動きを受けても、異物が不動歯11と動歯12との間から排出されない場合には、制御部19の流体圧制御機構部19cで流体圧回路における流体圧シリンダ16に接続する各流路の流体圧を制御して、流体圧シリンダ16を縮方向に作動させ、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を小さくする。この場合、破砕可能な破砕対象物がスムーズに破砕されないことで生じた負荷の過渡的な増大の場合より、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔は小さくなるようにされる。
【0074】
こうして流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を小さくし、トッグルブロック15やこれに連動するスイングジョー13を不動歯11から離れる向きに動かすことで、不動歯11と動歯12との間隔を広げ、不動歯11と動歯12との間から異物をさらに排出しやすい状態とする(
図7参照)。異物が不動歯11と動歯12との間の空間下端の排出口から排出されない場合は、あらかじめ流体圧モータ18を停止させてスイングジョー13及び動歯12の動きを止めた状態とした上で、不動歯11と動歯12との間の空間の上側から異物を取り出すようにしてもよい。
【0075】
異物が不動歯11と動歯12との間から排出されると、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を小さくしていた場合は、元の間隔となるよう制御部19の流体圧制御機構部19cで流体圧回路における流体圧シリンダ16に接続する各流路の流体圧を制御して、流体圧シリンダ16を伸方向に作動させ、不動歯11と動歯12との間隔を破砕作業時の設定状態に戻す。その上で、破砕に係る作動の開始時と同様に、流体圧モータ18により回転軸20を駆動し、回転軸20が適切な回転数に達すると、電動機17で回転軸20を回転駆動する状態へ移行させ、回転軸20の回転に伴ってスイングジョー13が動歯12と共に不動歯11に対し近付いたり離れたりする破砕時の作動状態に戻す。
そして、フィーダによる破砕対象物の不動歯11と動歯12との間への供給も再開することで、破砕作業状態に復帰する。
【0076】
破砕装置1では、制御部19の電動機制御手段19bで破砕中の電動機17の電流値を検出しており、破砕可能な破砕対象物が破砕しにくい性質を有してスムーズに破砕されないことによる、動歯12に対する負荷の過渡的な増大に対しては、制御部19の流体圧制御手段19aが、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を一時的に縮小させ、負荷を抑えて電動機17を停止させないようにしている。また、破砕不能な異物の存在による、動歯12に対する負荷の増大の場合には、電動機制御手段19bで検出される電動機17の電流値が過負荷に対応する条件を満たす状態になり、電動機制御手段19bが電動機17を停止させることとなる。
【0077】
こうして、主に金属である異物を電動機17の電流値に基づいて精度良く検知して、電動機17の停止で破砕を中断した破砕装置1から回収でき、破砕装置の後段側に金属の異物を流出させずに済むこととなる。仮に破砕装置の次工程に二次破砕装置を用いる場合でも、破砕装置がいわば金属検出器の役割を果たして、金属の異物が二次破砕装置に投入されることを防ぐことができ、二次破砕装置の保護のために破砕装置と二次破砕装置との間に金属検出器を設ける必要がなくなり、破砕に係る工程全体でコストを抑えられる。
【0078】
なお、制御部19は、電動機制御手段19bの検出した電動機17の電流値が過負荷に対応する前記条件を満たす場合、電動機17の駆動を停止させる一方で、流体圧モータ18を新たに作動させ、この流体圧モータ18で回転軸20を正逆回転させてスイングジョー13を動かし、不動歯11と動歯12との間隔を繰り返し変化させるようにしているが、これに限らず、仮に流体圧モータ18による駆動でスイングジョー13及び動歯12を動かしても、異物が不動歯11と動歯12との間から極めて排出されにくい状態にあると、過負荷を認定した当初から予想されるものである場合には、制御部19は流体圧モータ18を作動させず、電動機17の駆動の停止と同時又は停止直後に、流体圧制御機構部19cで流体圧回路における流体圧シリンダ16に接続する各流路の流体圧を制御して、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を小さくし、スイングジョー13を不動歯11から離れる向きに動かして不動歯11と動歯12との間隔を広げ、不動歯11と動歯12との間から異物を排出しやすい状態とするようにしてもかまわない。
【0079】
さらに、電動機制御手段19bで、電動機17の電流値が過負荷に対応する条件を満たす状態を検出し、電動機17の駆動を停止させるのとは別途に、制御部19の流体圧制御機構部19cが、負荷の増大により流体圧シリンダ16に通じる流体圧回路の流体圧が所定の上限値まで増大すると、流体圧を低圧側に逃がす制御を行うことで、流体圧シリンダ16の一端と他端との間隔を小さくし、不動歯11と動歯12との間隔を広げて異物の排出を促すようにすることもできる。この場合、流体圧制御機構部19cの要部として、例えば、流体圧シリンダ16に通じる流体圧回路にリリーフ弁を設けて、流体圧が増大して設定した圧力を超えると、リリーフ弁が作動して流体圧を低圧側に逃がす仕組みとしたり、流体圧回路に所定の流体制御手段を設けて、流体圧が上限値に達した際に、流体圧を低圧側に逃がす制御動作を実行させるものとすることができ、負荷の変化に遅れなく追従して変化する流体圧に基づいて流体圧制御機構部19cで制御を行うことで、破砕中における異物による負荷の増大に対し、不動歯11と動歯12との間隔を自動的に広げるなど、異常状態への有効且つ迅速な対策を講じることができる。
【0080】
このように、本実施形態に係る破砕装置においては、不動歯11と動歯12との間に入った破砕可能な破砕対象物又は破砕不能な異物によって、破砕に際して動く動歯12への負荷が増大しても、調整部としての流体圧シリンダ16でスイングジョー13を変位させ、不動歯11と動歯12との間隔を広げて、さらなる負荷の増大を抑えると共に破砕対象物の破砕又は異物の排出を行えるようにし、こうした破砕又は排出の完了後、流体圧シリンダ16で不動歯11と動歯12との間隔を元の状態に復帰させ、破砕を継続可能とすることから、破砕可能な破砕対象物の場合は、負荷増大による装置の停止を招かず、且つ動歯12を流体圧シリンダ16の動きで元の状態に速やかに復帰させて、破砕で得られる破砕物を所望の大きさに問題なく維持でき、破砕作業を効率よく且つ精度よく行える。また、破砕不能な異物により負荷が増大して過負荷に至る場合も、流体圧シリンダ16で不動歯11と動歯12との間隔を広げ、異物を排出した後は流体圧シリンダ16で不動歯11と動歯12との間隔を速やかに元に戻すことができ、破砕の中断を必要最小限にして損失を抑えられると共に、未破砕の大きな破砕対象物の流出を防止できる。
【0081】
なお、前記実施形態に係る破砕装置において、動歯12に対する負荷の増大が生じても、制御部19の電動機制御手段19bにおいて検出する電動機17の電流値が、動歯12に対し過負荷となる状況に対応する条件を満たさない間は、電動機制御手段19bが電動機17の駆動を継続させるようにし、電流値が過負荷に対応する前記条件を満たして、電動機17の駆動を停止させるまでは、制御部19として流体圧回路側での制御以外は特に制御を行わない構成としているが、これに限られるものではなく、制御部の電動機制御手段が、動歯に対する負荷の上昇が生じた状態における電動機に流れる電流値であって、過負荷の状況に対応した前記条件を満たす場合の電流値より小さい所定の電流値を、第二の閾値としてあらかじめ設定し、電動機制御手段の検出する電動機の電流値がこの第二の閾値を超える場合には、電動機の駆動を継続させる一方で、破砕装置に破砕対象物を供給するフィーダを停止させる構成とすることもできる。
【0082】
この場合、破砕しにくい破砕対象物や破砕不能な異物により動歯に対する負荷の増大が生じ、電動機制御手段で検出する電動機の電流値が、第二の閾値を超えると、まずフィーダによる破砕装置への破砕対象物の供給が停止される。破砕しにくい破砕対象物の場合で、破砕対象物が破砕され、動歯に対する負荷の減少に基づいて電動機の電流値が第二の閾値を下回ると、フィーダによる破砕対象物の供給が再開される。一方、異物の場合で、破砕できず負荷の増大がさらに進行し、電流値が過負荷に対応する前記条件を満たすと、電動機の駆動が停止される。その後、異物が不動歯と動歯との間から排出され、電動機による回転軸の回転駆動でスイングジョーが動歯と共に不動歯に対し近付いたり離れたりする破砕時の作動状態に戻ると、フィーダによる破砕対象物の不動歯と動歯との間への供給も再開することとなる。
【0083】
このように、電動機制御手段で検出される電動機の電流値が、過負荷に対応する条件を満たさないまでも、第二の閾値を超えるようであれば、電動機の駆動は停止させない一方で、フィーダを停止させ、破砕対象物の供給を中断することで、動歯に対する負荷の増大と共に破砕対象物の破砕の進行が滞る中、不動歯と動歯との間にそれ以上破砕対象物を供給しないようにして、負荷が増大する原因となった破砕しにくい破砕対象物の破砕又は異物の排出を集中的に実行でき、後から供給された破砕対象物の影響を受けることなく速やかに破砕又は排出を進められ、負荷の増大した状態をより短時間で解消して破砕作業を継続又は再開できる。
【0084】
この他、フィーダに対しては、電動機制御手段の検出する電動機の電流値に基づいて停止制御を行うのに代えて、トッグルブロックの位置を保持する流体圧シリンダに加わる圧力(トッグル圧)を監視し、破砕しにくい破砕対象物や破砕不能な異物による負荷の増大で流体圧シリンダに加わる圧力が所定の閾値を超えた場合に、フィーダを停止させるよう制御を行う構成とすることもできる。この場合、流体圧回路で負荷増大に応じて明確に圧力の上昇状態が現れることに基づいて、より適切なタイミングでフィーダを停止させることができ、フィーダによる供給を破砕装置の状況に適切に対応させられ、破砕装置で破砕を安全に継続できる。
【符号の説明】
【0085】
1 破砕装置
10 本体フレーム
11 不動歯
12 動歯
13 スイングジョー
14 トッグルプレート
15 トッグルブロック
16 流体圧シリンダ
17 電動機
18 流体圧モータ
19 制御部
19a 流体圧制御手段
19b 電動機制御手段
19c 流体圧制御機構部
20 回転軸
21 偏心軸部
25 フライホイール
30 テンションロッド