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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174970
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】旋回可能なカバー部材を備えた枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
A47G9/10 W
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081052
(22)【出願日】2021-05-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】505125727
【氏名又は名称】株式会社エイティー今藤
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】今藤 尚一
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102AA01
3B102AB07
3B102AC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】枕の洗濯時において、詰め物の枕外部への漏出を抑制する枕を提供する。
【解決手段】枕1は、上面部22と底面部23とを有する袋体21によって構成され、且つ内部に詰め物が充填される枕本体2と、枕本体2の底面部23に設けられた底面部開口24と、底面部開口24を開閉する底面部ファスナー25と、縫い付け部を中心として枕本体2の上面部22を覆う第1態様と底面部23を覆う第2態様との間で旋回可能なカバー部材3と、第1態様と第2態様の夫々において、カバー部材3を枕本体2に固定する外周縁ファスナー4と、を備え、枕本体2の上面部22、及びカバー部材3は、第1態様において寝心地を調整するための弾性シートを取り外し自在に収納するクッション体収納部を形成し、カバー部材3は、第2態様において底面部開口24を封止する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部と底面部とを有する袋体によって構成され、且つ内部に詰め物が充填される枕本体と、
前記枕本体の前記底面部に設けられた底面部開口と、
当該底面部開口を開閉し、前記枕本体の前記内部に前記詰め物を出し入れするときに開放される底面部ファスナーと、
柔軟なシート材によって作製され、且つ前記枕本体に縫い付けられた部分を中心として前記枕本体の前記上面部を覆う第1態様と前記底面部を覆う第2態様との間で旋回可能なカバー部材と、
前記第1態様と前記第2態様の夫々において、前記カバー部材を前記枕本体に固定する固定部と、
を備え、
前記枕本体の前記上面部、及び前記カバー部材は、前記第1態様において寝心地を調整するための弾性シートを取り外し自在に収納する弾性シート収納空間を形成し、
前記カバー部材は、前記第2態様において前記底面部開口を封止することを特徴とする枕。
【請求項2】
前記固定部は、前記枕本体の外周縁に設けた本体側エレメントと、前記カバー部材の外周縁の他の部分に設けたカバー側エレメントと、前記本体側エレメント、及び前記カバー側エレメントに沿って移動自在なスライダーとを備えた外周縁ファスナーであることを特徴とする請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記枕本体の前記底面部、及び前記カバー部材は、前記第2態様において枕の高さを調整するための高さ調整シートを取り外し自在に収納する高さ調整シート収納空間を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕本体に縫い付けられた部分を中心として旋回可能なカバー部材を備えた枕に関する。
【背景技術】
【0002】
枕は睡眠時において使用者の頭部が載せられるため、枕の高さは寝心地を左右する重要な要素である。このため、高さを調整可能な構成を備えた枕が提案されている。
特許文献1に記載された枕は、詰め物が充てんされた複数の区画を有する第1枕体と、第1枕体と上下方向に重なり合う第2枕体と、1つ以上のシートクッションとを備えている。第1枕体と第2枕体のそれぞれの外周縁の一部は折り曲げ可能に連結されており、外周縁の他部(残部)は外周縁ファスナーによって分離自在に連結されている。第2枕体の内表面と対向する第1枕体の内表面には、詰め物を出し入れするための詰め物挿入口と、詰め物挿入口を開閉するための挿入口ファスナーとが設けられている。
従って、特許文献1に記載された枕では、シートクッションを第1枕体の内表面と第2枕体の内表面との間に挟み込んだり、取り外したりすることにより、枕の高さを調整することができる。また、当該枕では、第1枕体の内部に充填された詰め物の量に基づいて、枕の高さを調整することもできる。
【0003】
ここで、枕には使用に伴って使用者の汗が浸透したり使用者の皮脂が付着するため、枕は定期的に洗濯することが望ましい。例えば、枕の洗濯は、枕を洗濯ネットの中に入れた状態で洗濯機によって行われる。
特許文献1に記載された枕を洗濯するときには、挿入口ファスナーによって詰め物挿入口が閉じられており、さらに第1枕体と第2枕体の外周縁の他部が外周縁ファスナーによって連結されている。このため、枕を洗濯しても詰め物の枕外部への漏出は防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3181946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された枕では、第1枕体の内表面に詰め物挿入口と挿入口ファスナーとが設けられているため、挿入口ファスナーが備えるスライダーによってシートクッションが傷つけられてしまう恐れがあった。シートクッションが傷つけられてしまうことを防止するため、詰め物挿入口と挿入口ファスナーとを第1枕体の外表面に設ける構成が考えられる。
特許文献1に記載された枕を改造して、詰め物挿入口と挿入口ファスナーとを第1枕体の外表面に設けた構成では、挿入口ファスナーを閉め忘れた状態で枕を洗濯機で洗濯してしまう恐れがある。挿入口ファスナーを閉め忘れた状態で枕を洗濯してしまうと、詰め物が詰め物挿入口から枕の外、すなわち洗濯槽の内部に漏出してしまう恐れがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、枕の洗濯時において、詰め物の枕外部への漏出を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る枕は、上面部と底面部とを有する袋体によって構成され、且つ内部に詰め物が充填される枕本体と、前記枕本体の前記底面部に設けられた底面部開口と、当該底面部開口を開閉し、前記枕本体の前記内部に前記詰め物を出し入れするときに開放される底面部ファスナーと、柔軟なシート材によって作製され、且つ前記枕本体に縫い付けられた部分を中心として前記枕本体の前記上面部を覆う第1態様と前記底面部を覆う第2態様との間で旋回可能なカバー部材と、前記第1態様と前記第2態様の夫々において、前記カバー部材を前記枕本体に固定する固定部と、を備え、前記枕本体の前記上面部、及び前記カバー部材は、前記第1態様において寝心地を調整するための弾性シートを取り外し自在に収納する弾性シート収納空間を形成し、前記カバー部材は、前記第2態様において前記底面部開口を封止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、枕の洗濯時において、詰め物の枕外部への漏出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】カバー部材を開いた状態を上面部側から見た枕の斜視図である。
図2】カバー部材を開いた状態を底面部側から見た枕の斜視図である。
図3】カバー部材で枕本体の上面部を覆った第1態様の枕の斜視図である。
図4】第1態様の枕の断面図である。
図5】カバー部材で枕本体の底面部を覆った第2態様の枕の斜視図である。
図6】枕本体の各小室に充填される詰め物を説明する図であり、(a)は柔軟な樹脂製パイプを示し、(b)は火山灰を含有する柔軟な樹脂製パイプを示し、(c)は羽毛を示し、(d)は粒綿等の粒状体を示す。
図7】詰め物の小室への充填作業を説明する断面図であり、(a)は上面側小室への充填作業を示し、(b)は底面側小室への充填作業を示す。
図8】枕本体に対して着脱自在に収納されるクッション材、及びクッション材を収納する収納部を説明する斜視図である。
図9】首元用クッション片の枕本体への収納を説明する部分拡大斜視図である。
図10】クッション小片のカバー部材への収納を説明する部分拡大斜視図である。
図11】カバー部材の旋回手順を説明する図であり、カバー部材と枕本体との間の外周縁ファスナーによる固定を解いた状態を示す。
図12】カバー部材の旋回手順を説明する図であり、カバー部材を枕本体の上面から持ち上げた状態を示す。
図13】カバー部材の旋回手順を説明する図であり、枕本体を反転させ、且つカバー部材を枕本体の底面側に旋回させた状態を示す。
図14】カバー部材の旋回手順を説明する図であり、カバー部材によって枕本体の底面を覆い、且つ外周縁ファスナーによってカバー部材を枕本体に固定した状態を示す。
図15】(a)は第2態様において、高さ調整シート収納空間に高さ調整シートを収納し、且つ各クッション小片収納部にクッション小片を収納した状態を示す枕の断面図、(b)は第2態様において、高さ調整シート収納空間から高さ調整シートを取り外し、且つ各クッション小片収納部からクッション小片を取り外した状態を示す枕の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<枕の概略について>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1はカバー部材3を開いた状態を上面部22側から見た枕1の斜視図、図2はカバー部材3を開いた状態を底面部23側から見た枕1の斜視図、図3はカバー部材3で枕本体2の上面部22を覆った第1態様の枕1の斜視図、図4は第1態様の枕1の断面図、図5はカバー部材3で枕本体2の底面部23を覆った第2態様の枕1の斜視図である。
【0010】
図1乃至図5に示す枕1は、上面部22と底面部23とを有する袋体21を有し、且つ袋体21の内部に設けられた複数の小室SP1,SP2(図4を参照)に詰め物51が充填される枕本体2と、枕本体2の底面部23に設けられた複数の底面部開口24と、各底面部開口24を開閉し、枕本体2の各小室SP1,SP2に詰め物51(51a,51d)を出し入れするときに開放される複数の底面部ファスナー25と、柔軟なシート材によって作製され、且つ枕本体2に縫い付けられた縫い付け部SW(図3を参照)を中心として枕本体2の上面部22を覆う第1態様(図3を参照)と底面部23を覆う第2態様(図5を参照)との間で旋回可能なカバー部材3と、第1態様と第2態様の夫々において、カバー部材3を枕本体2に固定する外周縁ファスナー4(固定部)と、を備えている。
図4に示すように、枕本体2の上面部22、及びカバー部材3は、第1態様において寝心地を調整するためのシート状クッション52(弾性シート)を取り外し自在に収納するクッション体収納部SP3(弾性シート収納空間)を形成する。そして、図5に示すように、カバー部材3は、第2態様において外周縁ファスナー4によって枕本体2の外周縁に固定されることにより、底面部開口24を封止する。
【0011】
以上ように構成された枕1では、図3及び図4に示す第1態様において、枕本体2の上面部22とカバー部材3との間のクッション体収納部SP3(図4参照)に対してシート状クッション52を収納したり、取り外したりすることにより、枕1の高さやクッション性を調整することができる。そして、枕本体2の上面部22にはファスナーが設けられていないため、クッション体収納部SP3に収納されたシート状クッション52の破損を抑制できる。
さらに、図5に示す第2態様では、外周縁ファスナー4によってカバー部材3を枕本体2の外周縁に固定することにより、底面部開口24をカバー部材3によって封止している。このため、底面部ファスナー25の閉め忘れによって底面部開口24が開放されたままになっていても、底面部開口24から漏出した詰め物51はカバー部材3と枕本体2の底面部23との間に留まる。
従って、枕1の洗濯時にカバー部材3を第2態様で固定することにより、詰め物51の枕1外部への漏出(すなわち、洗濯機の洗濯槽内への漏出)を抑制することができる。
【0012】
<枕本体2について>
以下、第一実施形態の枕1について詳細に説明する。図1、及び図2に示すように、枕1は、平面視において略横長四角形状であり、且つ扁平形状の枕本体2と、平面視において枕本体2と略同じ形状の横長四角形状の布地(シート材)によって作製され、且つ外周縁の一部分(縫い付け部SW、図3を参照)が枕本体2の外周縁の一部分に縫い付けられたカバー部材3と、を備えている。
枕本体2は、側生地を袋状に縫い合わせた袋体21を備えている。袋体21は、平面視において略横長四角形状である。
袋体21の上面部22であって縫い付け部SWの近傍には、図4に示す首元用クッション片53を着脱自在に収納するための首元用クッション片収納部SP4が設けられている。なお、首元用クッション片収納部SP4については後述する。
【0013】
図4に示すように、袋体21の内部には中布26とマチ布27とが縫い付けられており、袋体21の内部は複数の小室SP1,SP2に区画されている。
中布26は、袋体21の平面形状と略同じ横長四角形状の布地であり、袋体21の内部を上面部22側と底面部23側とに2分割するように配置され、袋体21の外周縁に沿って縫い付けられている。
マチ布27は、袋体21の上面部22側の内部と底面部23側の内部のそれぞれに縫い付けられており、上面部22側の内部を複数の上面側小室SP1に区画(分割)し、底面部23側の内部を複数の底面側小室SP2に区画している。例えば、枕本体2の横方向に沿って延びるマチ布27を、枕本体2の縦方向に間隔を空けて2枚縫い付け、且つ枕本体2の縦方向に沿って延びるマチ布27を、枕本体2の横方向に間隔を空けて2枚縫い付けることにより、袋体21の内部に合計18個の小室SP1,SP2を形成している。
【0014】
中布26には、上面側小室SP1に対応させて中布開口26aを設けている。本実施形態の枕1には、9つの上面側小室SP1が形成されているため、中布開口26aも9つ設けている。
各中布開口26aは線状の切り込みであり、各中布開口26aに沿って内側筒布28iの基端が縫い付けられている。内側筒布28iは、例えば布地を筒状に縫い合わせることによって作製されている。上面側小室SP1は、各中布開口26aを通じて各内側筒布28iの内側空所と連通している。各内側筒布28iは、例えば先端から基端に向けて渦巻き状に巻かれた状態で、底面側小室SP2内における中布開口26aの近傍に収納されている。
【0015】
袋体21の底面部23には、各底面側小室SP2に対応させて底面部開口24を設けている。本実施形態の枕1には、9つの底面側小室SP2が形成されているため、底面部開口24も9つ設けている。各底面部開口24は線状の切り込みであり、底面部ファスナー25によって開閉自在とされている。
各底面部開口24に沿って外側筒布28oの基端が縫い付けられている。外側筒布28oは、例えば布地を筒状に縫い合わせることによって作製されている。各底面側小室SP2は、各底面部開口24を通じて各外側筒布28oの内側空所と連通している。各外側筒布28oは、例えば先端から基端に向けて渦巻き状に巻かれた状態で、各底面側小室SP2内における底面部開口24の近傍に収納されている。従って、底面部ファスナー25は、外側筒布28oが収納された状態において、底面部開口24を開閉することができる。
【0016】
<詰め物51について>
枕本体2の各上面側小室SP1、及び各底面側小室SP2には、詰め物51が充填される。ここで、詰め物51について説明する。図6(a)乃至(d)は各種の詰め物51a、51b、51c、51dを説明する図、図7(a)及び(b)は詰め物51(51a、51d)の各小室SP1,SP2への充填作業を説明する断面図である。
本実施形態の枕1では、詰め物51として、例えば図6(a)に示した柔軟な樹脂製パイプ51a、図6(b)に示した火山灰を含有する柔軟な樹脂製パイプ51b、図6(c)に示した羽毛51c、及び図6(d)に示した粒綿51d(粒状体)が用意されている。図4に示す例では、上面側小室SP1に粒綿51dを充填し、底面側小室SP2に柔軟な樹脂製パイプ51aを充填している。
【0017】
図7(a)に示すように、上面側小室SP1に粒綿51dを充填するときには、まず枕本体2の底面部23を上側に向けた状態で底面部ファスナー25を開放し、外側筒布28oの先端を底面部開口24の外側(すなわち、袋体21の外部)に引き出す。次に、外側筒布28oの内側空所を通じて内側筒布28iの先端を底面部開口24の外側に引き出し、内側筒布28iの内側空所を通じて上面側小室SP1に粒綿51dを充填する。粒綿51dの充填が完了したならば、内側筒布28iを先端から基端に向けて渦巻き状に巻き、中布開口26aの近傍に収納する(図7(b)を参照)。
図7(b)に示すように、底面側小室SP2に樹脂製パイプ51aを充填するときには、まず枕本体2の底面部23を上側に向けた状態で底面部ファスナー25を開放し、外側筒布28oの先端を底面部開口24の外側に引き出す。次に、外側筒布28oの内側空所を通じて底面側小室SP2に樹脂製パイプ51aを充填する。樹脂製パイプ51aの充填が完了したならば、外側筒布28oを先端から基端に向けて渦巻き状に巻いて底面部開口24の近傍に収納し、底面部ファスナー25を閉じる。
【0018】
<カバー部材3について>
次に、カバー部材3について説明する。図1、及び図3に示すように、カバー部材3は、枕本体2と略同じ形状の横長四角形状の布地によって作製されている。
カバー部材3の外周縁の一部(一方の長辺)は、枕本体2の外周縁の一部(一方の長辺)に対して縫い付けられており、縫い付け部SWを構成している。本実施形態において、縫い付け部SWは、カバー部材3、及び枕本体2における使用者の首元側(肩側)の長辺同士を縫い付けることによって構成されているが、他の辺同士を縫い付けてもよい。
また、カバー部材3、及び枕本体2における外周縁の他部(残りの三片)には外周縁ファスナー4が取り付けられている。外周縁ファスナー4は例えば線ファスナーであり、スライダー42(42a、42b)をカバー部材3と枕本体2のそれぞれに取り付けたエレメント41(カバー部材3側のエレメント41u、枕本体2側のエレメント41d)に沿って移動させることにより、カバー部材3の外周縁を枕本体2の外周縁に対して固定(連結)したり、固定を解除したりする。
【0019】
カバー部材3は、例えば表側生地31(図3を参照)と裏側生地32(図10を参照)とを二枚重ねにして外周縁同士を縫い合わせることによって作製されている。表側生地31、及び裏側生地32は、例えば綿織物であり、一枚の布地によって作製されている。
裏側生地32には、図4に示すクッション小片54を着脱自在にするためのクッション小片収納部SP5を設けている。図1、及び図10に示すように、クッション小片収納部SP5は、複数枚の横長帯状の収納部布地61を裏側生地32に縫い付けることによって作製されている。
例えば、クッション小片収納部SP5は、各収納部布地61を長辺同士が重なるように縦方向に位置をずらして配置し、裏側生地32の外周縁に沿って縫い合わせ、その後、裏側生地32の縦方向に沿って横方向に間隔を空けて2箇所縫い合わせ、且つ裏側生地32の横方向に沿って縦方向に間隔を空けて2箇所縫い合わせることにより作製されている。
本実施形態の枕1において、クッション小片収納部SP5は、横方向に沿って3箇所、縦方向に沿って3箇所の合計9箇所設けられている。
【0020】
<クッション材について>
次に、クッション材について説明する。図8は枕本体2に対して着脱自在に収納されるクッション材、及びクッション材を収納する収納部を説明する斜視図、図9は首元用クッション片53の枕本体2への収納を説明する部分拡大斜視図、図10はクッション小片54のカバー部材3への収納を説明する部分拡大斜視図である。
図8に示すように、本実施形態の枕1では、クッション材として、シート状クッション52、首元用クッション片53、クッション小片54、及び高さ調整シート55が用意されている。
【0021】
シート状クッション52は、カバー部材3が枕本体2の上面部22を覆った第1態様において、カバー部材3と枕本体2の上面部22との間に形成されるクッション体収納部SP3に対して着脱自在に収納される。本実施形態において、シート状クッション52は、例えば厚さが1cm乃至3cm程度のシート状であって、枕本体2(袋体21)の上面部22よりも一回り小さい横長四角形状の発泡弾性体(例えばウレタンフォーム)によって作製されている。
シート状クッション52をクッション体収納部SP3内に収納することにより、枕本体2の上面部22とカバー部材3との間に厚みを持たせることができ、使用者HMの後頭部を支えることができる。そして、シート状クッション52の厚さ、及び柔らかさを調整することにより、使用者HMの後頭部に与える感触を変化させることができる。例えば、シート状クッション52として厚手(例えば3cm)の低反発性の発泡弾性体シートを使用することにより、後頭部に対してソフトタッチの感触(柔らかく包み込むように支える感触)を与えることができる。一方、シート状クッション52として薄手(例えば1cm)の硬質発泡弾性体シートを使用することにより、後頭部に対してハードタッチの感触(硬く、且つ強い反発力で支える感触)を与えることができる。
【0022】
高さ調整シート55は、カバー部材3が枕本体2の底面部23を覆った第2態様において、カバー部材3と枕本体2の底面部23との間に形成される高さ調整シート収納空間SP6(図15(a)を参照)に対して着脱自在に収納される。本実施形態において、高さ調整シート55は、厚さが0.5cm乃至1cm程度であって、枕本体2の底面部23よりも一回り小さい横長四角形状の発泡弾性体(例えばウレタンフォーム)によって作製されている。
高さ調整シート55は、シート状クッション52よりも硬い素材で作製されており、例えば樹脂板や硬質の発泡シートが使用される。高さ調整シート55を高さ調整シート収納空間SP6内に収納することにより、枕1の上面高さを変化させることができる。そして、高さ調整シート55の厚さを調整することにより、枕1の上面高さを使用者HM毎に最適化できる。
【0023】
首元用クッション片53は、枕本体2の上面部22に設けられた首元用クッション片収納部SP4に対し、着脱自在に収納される。
図9に示すように、首元用クッション片収納部SP4は、枕本体2におけるカバー部材3側の上面部22に収納部布地61を縫い付けることによって作成されている。収納部布地61は、帯形状をした布地であり、2枚の収納部布地61を長辺同士が重なるように縦方向に位置をずらして配置し、枕本体2(袋体21)の外周縁に沿って縫い付けることによって作製されている。
図4、及び図9に示すように、首元用クッション片53は、弾性を有した横長四角形状の板状部材であって、側面視において一方の長辺から他方の長辺に向かって厚さが漸次薄くなった楔形状をしている。本実施形態において、首元用クッション片53は、発泡弾性体(例えばウレタンフォーム)によって作製されており、厚さが薄い側の長辺を縫い付け部SWに向けて収納されている。
首元用クッション片53を首元用クッション片収納部SP4内に収納することにより、枕1の厚さは使用者HMの首から背中に向けて漸次薄くなる。これにより、使用者HMの首から肩の範囲を身体の表面形状に沿って滑らかに隙間を空けることなく支持することができる。
【0024】
図8、及び図10に示すように、クッション小片54は、カバー部材3の裏面に設けられたクッション小片収納部SP5に対し、着脱自在に収納される。クッション小片54は、弾性を有した四角形状の板状部材であり、発泡弾性体(例えばウレタンフォーム)によって作製されている。
本実施形態において、カバー部材3の裏面にはクッション小片収納部SP5が9箇所設けられているが、クッション小片54は全てのクッション小片収納部SP5に収納されている必要はなく、必要な箇所のクッション小片収納部SP5に収納されていればよい。そして、クッション小片54は、必要がなければ、全てのクッション小片収納部SP5に収納されていなくてもよい。
クッション小片54をクッション小片収納部SP5内に収納することにより、枕1の上面高さを局所的に増やすことができる。これにより、枕上面の凹凸形状を使用者HMの好みにあわせて調整できる。
なお、本実施形態において、クッション小片収納部SP5はカバー部材3の裏面に露出した状態で設けられているが、クッション小片収納部SP5を裏面カバー(不図示)によって覆ってもよい。裏面カバーは、例えばカバー部材3の裏面の外周縁に沿って設けたファスナーによって開閉自在に取り付けられた布地である。
【0025】
<カバー部材3の旋回手順について>
次に、カバー部材3の旋回手順について説明する。図11乃至図14はカバー部材3の旋回手順を説明する図である。ここでは、カバー部材3によって枕本体2の上面部22を覆った第1態様(図3を参照)から、底面部23を覆った第2態様(図5を参照)に移行する場合の旋回手順について説明する。カバー部材3の第2態様への移行は、例えば、枕1を洗濯機で洗濯するときに行われる。
【0026】
図11に示すように、最初に、外周縁ファスナー4の両スライダー42a,42bをエレメント41に沿って移動させ、一方のスライダー42は縫い付け部SWの一端近傍に位置付け、他方のスライダー42は縫い付け部SWの一端近傍に位置付ける。これにより、カバー部材3側のエレメント41uと、枕本体2側のエレメント41dとが分離され、カバー部材3は枕本体2に対して縫い付け部SWを中心に旋回可能な状態になる。言い換えれば、カバー部材3は、一部分(縫い付け部SW)が枕本体2に対して縫い付けられたまま、枕本体2の上面部22と底面部23の何れか一方を被覆可能な状態になる。
両スライダー42a,42bをエレメント41に沿って移動させたならば、図12に示すように、カバー部材3を枕本体2の上面部22から離隔させる。その後、図13に示すように、枕本体2を反転させて枕本体2の底面部23を上側に向け、カバー部材3を枕本体2の底面部23側に移動させる。
【0027】
次に、図14に示すように、カバー部材3の表側生地31を枕本体2の底面部23に対向させて、カバー部材3によって枕本体2の底面部23を覆い、その後、外周縁ファスナー4の両スライダー42が隣接するまで、両スライダー42a,42bをエレメント41(41u、41d)に沿って移動させる。
両スライダー42a,42bを隣接させると、枕本体2、及びカバー部材3における縫い付け部SWを除いた部分が外周縁ファスナー4によって封止される。言い換えれば、枕本体2の底面部開口24がカバー部材3によっても封止された状態になる。
従って、枕1を洗濯機によって洗濯する前にカバー部材3を第2態様で固定することにより、底面部ファスナー25を閉め忘れてしまったとしても、枕本体2の各小室SP1,SP2に充填された詰め物51が枕1外部へ漏出してしまう不都合が抑制される。
【0028】
<カバー部材3の第2態様について>
本実施形態の枕1において、枕本体2の上面部22には、詰め物51を出し入れするための開口やファスナーが設けられておらず、枕本体2の上面部22に使用者HMの頭部を載せても、不快な刺激を使用者HMに与え難い。従って、枕本体2の上面部22に使用者HMの頭部を載せて使用することもできる。
枕本体2の上面部22に使用者HMの頭部を載せる場合において、カバー部材3の表側生地31と枕本体2の底面部23との間には空間SP6が形成される。そして、当該空間SP6を、枕1の高さを調整するための高さ調整シート55を着脱自在に収納するための高さ調整シート収納空間SP6として使用することができる。
【0029】
ここで、図15(a)は第2態様において、高さ調整シート収納空間SP6に高さ調整シート55を収納し、且つ各クッション小片収納部SP5にクッション小片54を収納した状態を示す枕1の断面図、図15(b)は第2態様において、高さ調整シート収納空間SP6から高さ調整シート55を取り外し、且つ各クッション小片収納部SP5からクッション小片54を取り外した状態を示す枕1の断面図である。
図15(a)に示すように、高さ調整シート収納空間SP6に高さ調整シート55を収納し、且つ各クッション小片収納部SP5にクッション小片54を収納することにより、図15(b)に示すクッション材の非収納状態と比較して枕1の上面高さ(枕本体2の上面部22の高さ)を高くすることができる。
また、高さ調整シート収納空間SP6に高さ調整シート55を収納し、且つ各クッション小片収納部SP5からクッション小片54を取り外すことにより、枕1の上面高さを図15(a)に示すクッション材の収納状態よりも低く、且つ図15(b)に示すクッション材の非収納状態よりも高くすることができる。
【0030】
このように、本実施形態の枕1によれば、カバー部材3を第2態様で固定することにより、カバー部材3の表側生地31と枕本体2の底面部23との間の空間を高さ調整シート収納空間SP6として使用することができる。
そして、高さ調整シート55を高さ調整シート収納空間SP6に収納したり、高さ調整シート収納空間SP6から取り外したりすることにより、枕1の上面高さを使用者HMの好みにあわせて調整することができる。
高さ調整シート55を高さ調整シート収納空間SP6に収納すると、枕1の底面部23を上側にして使用したときであっても、底面部ファスナー25によって使用者HMに与えられる異物感が抑制される。さらに、クッション小片収納部SP5を裏面カバー(不図示)によって覆うと表面が平滑になるため、クッション小片収納部SP5の凹凸形状に起因する違和感も軽減される。
【0031】
<変形例について>
前述した実施形態の枕1では、カバー部材3を枕本体2に固定する固定部として線ファスナーで構成された外周縁ファスナー4を例示したが、固定部は第2態様においてカバー部材3によって底面部開口24を封止できるのであれば、外周縁ファスナー4に限られない。例えば、外周縁ファスナー4に代えて面ファスナーを用いてもよい。
また、第2態様において、カバー部材3を枕本体2に固定する箇所は、底面部開口24を封止できるのであれば外周縁に限られない。例えば、底面部開口24の周囲でカバー部材3を固定してもよい。
【0032】
前述した実施形態の枕1では、カバー部材3の裏側には複数のクッション小片収納部SP5を形成し、各クッション小片収納部SP5に対してクッション小片54を選択的に収納していたが、この構成に限定されない。例えば、クッション小片収納部SP5を省略し、クッション小片54を使用しない構成であってもよい。
前述した実施形態の枕1では、カバー部材3として平面視において枕本体2と略同じ形状の横長四角形状の布地を例示したが、柔軟なシート材であれば布地に限定されない。
【0033】
[本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ]
<第一の実施態様>
本態様に係る枕1は、上面部22と底面部23とを有する袋体21によって構成され、且つ内部に詰め物51が充填される枕本体2と、枕本体2の底面部23に設けられた底面部開口24と、底面部開口24を開閉し、枕本体2の内部に詰め物51を出し入れするときに開放される底面部ファスナー25と、柔軟なシート材によって作製され、且つ枕本体2に縫い付けられた部分を中心として枕本体2の上面部22を覆う第1態様と底面部23を覆う第2態様との間で旋回可能なカバー部材3と、第1態様と第2態様の夫々において、カバー部材3を枕本体2に固定する固定部(外周縁ファスナー4)と、を備え、枕本体2の上面部22、及びカバー部材3は、第1態様において寝心地を調整するための弾性シートを取り外し自在に収納するクッション体収納部SP3(弾性シート収納空間)を形成し、カバー部材3は、第2態様において底面部開口24を封止することを特徴とする。
本態様に係る枕1によれば、底面部ファスナー25の閉め忘れによって底面部開口24が開放されたままになっていても、底面部開口24から漏出した詰め物51はカバー部材3と枕本体2の底面部23との間に留まる。従って、枕1の洗濯時にカバー部材3を第2態様で固定することにより、詰め物51の枕外部への漏出を抑制することができる。
【0034】
<第二の実施態様>
本態様に係る枕1において、固定部は、枕本体2の外周縁に設けたエレメント41d(本体側エレメント)と、カバー部材3の外周縁に設けたエレメント41u(カバー側エレメント)と、エレメント41(41d、41u)に沿って移動自在なスライダー42とを備えた外周縁ファスナー4であることを特徴とする。
本態様に係る枕1によれば、枕本体2とカバー部材3とを外周縁ファスナー4によって固定しているので、詰め物51の枕外部への漏出を確実に抑制できる。
【0035】
<第三の実施態様>
本態様に係る枕1において、枕本体2の底面部23、及びカバー部材3は、第2態様において枕1の高さを調整するための高さ調整シート55を取り外し自在に収納する高さ調整シート収納空間SP6を形成することを特徴とする。
本態様に係る枕1によれば、第2態様において、枕本体2とカバー部材3との間の高さ調整シート収納空間SP6に対して高さ調整シート55を収納できるので、枕1の高さ調整が容易に行える。
【符号の説明】
【0036】
1…枕,2…枕本体,21…袋体,22…上面部,23…底面部,24…底面部開口,25…底面部ファスナー,26…中布,26a…中布開口,27…マチ布,28i…内側筒布,28o…外側筒布,3…カバー部材,4…外周縁ファスナー,41…エレメント,41d…枕本体の外周縁に設けたエレメント,41u…カバー部材3の外周縁に設けたエレメント,42(42a,42b)…スライダー,51…詰め物,51a…柔軟な樹脂製パイプ,51b…火山灰を含有する柔軟な樹脂製パイプ,51c…羽毛,51d…粒綿,52…シート状クッション(弾性シート),53…首元用クッション片,54…クッション小片,55…高さ調整シート,SW…縫い付け部,SP1…上面側小室,SP2…底面側小室,SP3…クッション体収納部,SP4…首元用クッション片収納部,SP5…クッション小片収納部,SP6…高さ調整シート収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2021-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記固定部は、前記枕本体の外周縁に設けた本体側エレメントと、前記カバー部材の外周縁設けたカバー側エレメントと、前記本体側エレメント、及び前記カバー側エレメントに沿って移動自在なスライダーとを備えた外周縁ファスナーであることを特徴とする請求項1に記載の枕。