(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174987
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】ドハティ増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
H03F1/02 188
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081075
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】住吉 高志
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AC81
5J500AC92
5J500AF10
5J500AH29
5J500AH33
5J500AK29
5J500AK68
5J500RG07
(57)【要約】
【課題】バランを介した2つのアンプの間の経路を直流的に接続するドハティ増幅器を提供する。
【解決手段】ドハティ増幅器は、入力信号を2つの信号に分配する分配器18と、前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し第1ノードに出力する第1アンプと、前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し第2ノードに出力する第2アンプと、前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成した信号を第3ノードに出力し、集中定数素子を含むバラン10と、前記第3ノードを介し前記第1ノードと前記第2ノードとを直流的に接続する経路17と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を2つの信号に分配する分配器と、
前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し第1ノードに出力する第1アンプと、
前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し第2ノードに出力する第2アンプと、
前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成した信号を第3ノードに出力し、集中定数素子を含むバランと、
前記第3ノードを介し前記第1ノードと前記第2ノードとを直流的に接続する経路と、
を備えるドハティ増幅器。
【請求項2】
前記経路に前記第1アンプと前記第2アンプにバイアス電圧を供給する第4ノードが1か所のみ設けられた請求項1に記載のドハティ増幅器。
【請求項3】
前記バランは、前記経路に直列接続されたインダクタと、前記経路にシャント接続されたキャパシタと、を備える請求項1または2に記載のドハティ増幅器。
【請求項4】
前記バランは、一端が前記第1ノードに接続され、他端が前記第3ノードに接続された第1インダクタと、前記第1ノードと前記第1インダクタとの間にシャント接続されたキャパシタと、一端が前記第2ノードに接続され、他端が第5ノードに接続された第2インダクタと、一端が前記第5ノードに接続され他端が前記第3ノードに接続された第3インダクタと、前記第2ノードと前記第2インダクタとの間にシャント接続された第4インダクタと、前記第5ノードにシャント接続された第5インダクタと、前記第3インダクタと前記第3ノードとの間にシャント接続された第6インダクタと、を備える請求項1または2に記載のドハティ増幅器。
【請求項5】
前記バランが有するインダクタのうち前記第2インダクタと前記第2ノードの間にシャント接続されたインダクタは第4インダクタのみである請求項4に記載のドハティ増幅器。
【請求項6】
前記第1アンプおよび前記第2アンプのいずれか一方は、前記入力信号を主に増幅するキャリアアンプであり、前記第1アンプおよび前記第2アンプの他方は前記入力信号のピークを増幅するピークアンプである請求項1から5のいずれか一項に記載のドハティ増幅器。
【請求項7】
前記第1アンプは前記入力信号を主に増幅するキャリアアンプであり、前記第2アンプは前記入力信号のピークを増幅するピークアンプであり、
前記第4ノードは前記バランと前記第2アンプとの間に設けられている請求項2に記載のドハティ増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波等の高周波信号を増幅する増幅器としてドハティ増幅器が知られている。ドハティ増幅器においてはキャリアアンプとピークアンプとが並列に入力信号を増幅し、増幅された信号は合成器により合成される。合成器として集中定数バランを用いることが知られている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】信学技報 MW2012-82(2012-10)p7-12。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成器として1/4波長線路を用いる並列負荷接続型のドハティ増幅器は1/4波長線路を用いるため回路が大型化する。合成器に集中定数バランを用いる直列負荷接続型のドハティ増幅器を用いることにより、増幅器を小型化できる。しかしながら、合成器に集中定数バランを用いる場合、バランを介したキャリアアンプとピークアンプとの間の経路にはキャパシタが直列に接続される。キャパシタがDC(Direct Current)カットとして機能するため、キャリアアンプとピークアンプに共通にバイアス電圧を印加できなくなる等の課題が生じる。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、バランを介した2つのアンプの間の経路を直流的に接続するドハティ増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、入力信号を2つの信号に分配する分配器と、前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し第1ノードに出力する第1アンプと、前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し第2ノードに出力する第2アンプと、前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成した信号を第3ノードに出力し、集中定数素子を含むバランと、前記第3ノードを介し前記第1ノードと前記第2ノードとを直流的に接続する経路と、を備えるドハティ増幅器である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、バランを介した2つのアンプの間の経路を直流的に接続するドハティ増幅器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1に係る増幅器のブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る増幅器の回路図である。
【
図3】
図3は、比較例1に係る増幅器の回路図である。
【
図4】
図4は、キャパシタをインダクタに変換できることを示す図である。
【
図5】
図5は、キャパシタをインダクタに変換できることを示す図である。
【
図6】
図6は、キャパシタをインダクタに変換できることを示す図である。
【
図7】
図7は、実施例1の変形例1に係る増幅器の回路図である。
【
図8】
図8は、実施例1における出力回路の回路図である。
【
図9】
図9は、実施例1における出力回路の平面図である。
【
図10】
図10は、比較例1における出力回路の平面図である。
【
図11】
図11は、実施例1の変形例2に係る増幅器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、入力信号を2つの信号に分配する分配器と、前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し第1ノードに出力する第1アンプと、前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し第2ノードに出力する第2アンプと、前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成した信号を第3ノードに出力し、集中定数素子を含むバランと、前記第3ノードを介し前記第1ノードと前記第2ノードとを直流的に接続する経路と、を備えるドハティ増幅器である。これにより、第1アンプと第2アンプとの間の経路にキャパシタを設けないドハティ増幅器を提供することができる。
(2)前記経路に前記第1アンプと前記第2アンプにバイアス電圧を供給する第4ノードが1か所のみ設けられたことが好ましい。
(3)前記バランは、前記経路に直列接続されたインダクタと、前記経路にシャント接続されたキャパシタと、を備えることが好ましい。
(4)前記バランは、一端が前記第1ノードに接続され、他端が前記第3ノードに接続された第1インダクタと、前記第1ノードと前記第1インダクタとの間にシャント接続されたキャパシタと、一端が前記第2ノードに接続され、他端が第5ノードに接続された第2インダクタと、一端が前記第5ノードに接続され他端が前記第3ノードに接続された第3インダクタと、前記第2ノードと前記第2インダクタとの間にシャント接続された第4インダクタと、前記第5ノードにシャント接続された第5インダクタと、前記第3インダクタと前記第3ノードとの間にシャント接続された第6インダクタと、を備えることが好ましい。
(5)前記バランが有するインダクタのうち前記第2インダクタと前記第2ノードの間にシャント接続されたインダクタは第4インダクタのみであることが好ましい。
(6)前記第1アンプおよび前記第2アンプのいずれか一方は、前記入力信号を主に増幅するキャリアアンプであり、前記第1アンプおよび前記第2アンプの他方は前記入力信号のピークを増幅するピークアンプであることが好ましい。
(7)前記第1アンプは前記入力信号を主に増幅するキャリアアンプであり、前記第2アンプは前記入力信号のピークを増幅するピークアンプであり、前記第4ノードは前記バランと前記第2アンプとの間に設けられていることが好ましい。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかる増幅器の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
図1は、実施例1に係る増幅器のブロック図である。
図1に示すように、増幅器では、入力端子Tinと出力端子Toutとの間にキャリアアンプ12とピークアンプ14とが並列に接続されている。入力端子Tinに入力信号として高周波信号が入力する。分配器18は入力信号を2つの信号に分配する。分配された一方の信号は位相調整器25および整合回路23を介しキャリアアンプ12に入力する。位相調整器25はキャリアアンプ12とピークアンプ14との位相を調整する。整合回路23は分配器18の出力インピーダンスとキャリアアンプ12の入力インピーダンスを整合させる。キャリアアンプ12は入力した信号を増幅しノードN1(第1ノード)に出力する。ノードN1に出力された信号は整合回路20を介しバラン10に入力する。整合回路20は、キャリアアンプ12の出力インピーダンスとバラン10の入力インピーダンスを整合させる。
【0012】
分配器18が分配した他方の信号は整合回路24を介しピークアンプ14に入力する。整合回路24は分配器18の出力インピーダンスとピークアンプ14の入力インピーダンスを整合させる。ピークアンプ14は入力した信号を増幅しノードN2(第2ノード)に出力する。ノードN2に出力された信号は整合回路21を介しバラン10に入力する。整合回路21は、ピークアンプ14の出力インピーダンスとバラン10の入力インピーダンスを整合させる。バラン10は2つの信号を合成しノードN3(第3ノード)を介し出力端子Toutに出力する。バラン10を合成器に用いたドハティ増幅器は直列負荷接続型ドハティ増幅器と呼ばれている。
【0013】
キャリアアンプ12およびピークアンプ14は、例えばFET(Field Effect Transistor)13および15であり、ソースSは接地され、ゲートGに高周波信号が入力し、ドレインDから信号が出力される。FET13および15は、例えばGaNFETまたはLDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor)である。キャリアアンプ12およびピークアンプ14にはそれぞれ多段のFET13および15が設けられていてもよい。分配器18は例えばウイルキンソン型分配器である。バイアス回路16はキャリアアンプ12およびピークアンプ14にドレインバイアス電圧Vdを供給する。バイアス回路26および27はそれぞれキャリアアンプ12およびピークアンプ14にゲートバイアス電圧VgcおよびVgpをそれぞれ供給する。バイアス回路16は、ノードN4に接続された1/4波長線路L11とシャント接続されたキャパシタC11を備えている。バイアス回路26および27は、キャリアアンプ12およびピークアンプ14の入力ノードにそれぞれ接続されたインダクタL21およびL22とシャント接続されたキャパシタC21およびC22を備えている。
【0014】
キャリアアンプ12は、AB級またはB級動作し、ピークアンプ14はC級動作する。入力電力が小さいときにはキャリアアンプ12が主に入力信号を増幅する。入力電力が大きくなると、キャリアアンプ12に加え、ピークアンプ14が入力信号のピークを増幅する。これにより、キャリアアンプ12とピークアンプ14とが入力信号を増幅する。入力電力が小さくピークアンプ14がオフのとき、キャリアアンプ12からバラン10をみたインピーダンスは出力端子Toutの負荷Rの2倍(例えば2×50Ω)である。入力電力が大きくピークアンプ14が動作するとき、キャリアアンプ12からバラン10をみたインピーダンス、並びに、ピークアンプ14からバラン10をみたインピーダンスは、各々負荷R(例えば50Ω)である。整合回路20および23は、ピークアンプ14がオフのとき負荷2Rにおいてキャリアアンプ12が飽和出力で最適動作するように調整されており、一方、ピークアンプ14が動作するとき負荷Rにおいてキャリアアンプ12が飽和出力で最適動作するように調整されている。整合回路21および24は、ピークアンプ14がオフのとき、バラン10からピークアンプ14をみたインピーダンスがオープンとなるように調整されており、一方、ピークアンプ14が動作するとき、負荷Rにおいてピークアンプ14が飽和出力で最適動作するように調整されている。
【0015】
バラン10は、2倍の負荷2Rを負荷Rに変換する。バラン10に入力する2つの信号を逆位相とするため位相調整器25はキャリアアンプ12に入力する信号の位相を調整する。キャリアアンプ12とピークアンプ14をそれぞれAB級(またはB級)およびC級動作させるため、FET13および15に供給されるゲートバイアス電圧VgcおよびVgpが異なる。このため、バイアス回路26はFET13のゲートGにゲートバイアス電圧Vgcを供給し、バイアス回路27はFET15のゲートGにゲートバイアス電圧Vgpを供給する。一方、FET13および15に供給されるドレインバイアス電圧Vdは同じである。このため、1つのバイアス回路16によりキャリアアンプ12およびピークアンプ14にドレインバイアス電圧Vdを供給できる。
【0016】
図2は、実施例1に係る増幅器の回路図である。
図2では、整合回路20、21、23、24、バイアス回路26および27の図示を省略している。
図2に示すように、バラン10は集中定数素子として、キャパシタC1、インダクタL1~L6を備えている。インダクタL1(第1インダクタ)の一端はノードN1(第1ノード)に接続され、他端はノードN3(第3ノード)に接続されている。キャパシタC1はノードN1とインダクタL1との間にシャント接続されている。インダクタL2(第2インダクタ)の一端はノードN2(第2ノード)に接続され、他端はノードN5(第5ノード)に接続されている。インダクタL3(第3インダクタ)の一端はノードN5に接続され、他端はノードN3に接続されている。インダクタL4(第4インダクタ)は、ノードN2とインダクタL2との間にシャント接続されている。インダクタL5(第5インダクタ)はノードN5においてシャント接続されている。インダクタL6(第6インダクタ)は、インダクタL3とノードN3との間においてシャント接続されている。ノードN3は出力端子Toutに接続されている。
【0017】
ノードN3を介しノードN1とN2とを接続する経路17にはインダクタが直列接続されておりキャパシタは直列接続されていない。このため、ノードN1とN2とは経路17を介し直流的に接続する。これにより、経路17のいずれかのノードN4においてにバイアス回路16を接続することにより、キャリアアンプ12とピークアンプ14の両方にドレインバイアス電圧Vdを供給できる。
図2では、ノードN4をインダクタL2の一端とノードN2との間においた例を示している。
【0018】
図3は、比較例1に係る増幅器の回路図である。
図3に示すように、比較例1のバラン10では、ノードN1とN3との間にインダクタL1が直列接続され、ノードN1とインダクタL1との間においてキャパシタC1がシャント接続されている。ノードN2とN3との間にキャパシタC0が直列接続され、ノードN2とキャパシタC0との間においてインダクタL0がシャント接続されている。一般的な集中定数素子を用いたバランでは、キャパシタC0が設けられている。これにより、経路17はキャパシタC0によりDCカットされる。よって、バイアス回路16はキャリアアンプ12にドレインバイアス電圧Vdを供給できない。そこで、ノードN1とバラン10との間のノードN4aにバイアス回路16aを設けることにより、キャリアアンプ12にドレインバイアス電圧Vdを供給する。
【0019】
このように、比較例1では、経路17が直流的に接続されていない。このため、バイアス回路16および16aを設けることになる。これにより、ドハティ増幅器が大型化する。また、キャリアアンプ12のノードN1の近くにバイアス回路16aが接続されると、バイアス回路16aの1/4波長線路およびキャパシタがキャリアアンプ12の出力側の整合回路20等のインピーダンスに影響し、キャリアアンプ12の性能劣化になりやすい。キャリアアンプ12は常時動作しており、キャリアアンプ12の性能がドハティ増幅器の性能に最も影響する。よって、比較例1では、ドハティ増幅器の性能(例えば効率)等が劣化しやすい。
【0020】
図4から
図6は、キャパシタをインダクタに変換できることを示す図である。
図4に示すように、端子T1とT2との間にキャパシタC0が接続されている。端子T1gおよびT2gはグランド端子である。
【0021】
図5に示すように、キャパシタC0は、シャント接続されたインダクタL00と、インダクタL00と端子T1およびT2との間に接続されたJインバータ32および34と、を有する回路30と等価である。
【0022】
図6に示すように、Jインバータ32は、直列接続されたインダクタL01とインダクタL01の両端においてシャント接続されたインダクタL02およびL03である。Jインバータ34は、直列接続されたインダクタL04とインダクタL04の両端においてシャント接続されたインダクタL05およびL06である。
【0023】
図7は、実施例1の変形例1に係る増幅器の回路図である。
図7に示すように、比較例1のキャパシタC0の代わりに
図6の回路30を用いる。その他の構成は実施例1と同じである。経路17にはインダクタL1、L01およびL04が直列接続される。これにより、経路17は直流的に接続された経路となる。よって、バイアス回路16はキャリアアンプ12にドレインバイアス電圧Vdを供給できる。
【0024】
実施例1の変形例1の
図7においてシャント接続されたインダクタL0とL02を、実施例1の
図2では、1つのインダクタL4に代替えする。実施例1の変形例1の
図7においてシャント接続されたインダクタL03、L00およびL05を1つのインダクタL5に代替えする。
図7のインダクタL06を
図2のインダクタL6とする。これにより、実施例1の変形例1の
図7の回路構成を
図2の実施例1の
図2の回路構成で実現できる。
【0025】
図8は、実施例1における出力回路の回路図である。整合回路20および21の詳細も示している。
図8に示すように、ノードN1とバラン10との間に整合回路20が接続されている。整合回路20は、インダクタL30およびキャパシタC30を備えている。ノードN2とバラン10との間に整合回路21が接続されている。整合回路21は、インダクタL31、L32、キャパシタC31およびC32を備えている。ノードN4にバイアス回路16が接続されている。バイアス回路16はインダクタL33および1/4波長線路L11を備えている。なお、バイアス回路16では
図1のようにシャント接続されたキャパシタC11を用いてもよいし、
図8のように直列接続されたインダクタL33を用いてもよい。ノードN3と出力端子Toutとの間にキャパシタC33およびC34が並列接続されている。キャパシタC33およびC34はDCカットキャパシタである。バラン10の回路構成は
図2と同じである。
【0026】
図9は、実施例1における出力回路の平面図である。
図9に示すように、基板40上に導電体パターン42が設けられている。基板40は、例えばFR-4(Flame Retardant Type 4)等の樹脂またはセラミック等の誘電体基板である。導電体パターン42は例えば銅または金等の金属層である。基板40上にキャリアアンプ12およびピークアンプ14が搭載されている。基板40は誘電体基板であり、下面にグランド電位が供給された金属層が設けられている。キャリアアンプ12およびピークアンプ14は例えばパッケージに搭載された半導体チップである。基板40上にバラン10、バイアス回路16、整合回路20および21が形成されている。インダクタL1~L6、L30~L33、キャパシタC1およびC30~C34としてチップ部品が基板40上に搭載されている。キャリアアンプ12、ピークアンプ14および各チップ部品間の接続には導電体パターン42が用いられる。1/4波長線路L11は導電体パターン42により形成される。
【0027】
図10は、比較例1における出力回路の平面図である。
図10に示すように、整合回路20、21およびバイアス回路16は、実施例1の
図9と同じである。バラン10は、比較例1の
図3と同じ回路構成である。整合回路20とバラン10との間にバイアス回路16aが設けられている。バイアス回路16aは、インダクタL35、キャパシタC35および1/4波長線路L12を備えている。
【0028】
実施例1では、比較例1に比べバラン10のチップ部品が多いためバラン10の面積が大きい。しかし、比較例1ではバイアス回路16および16aが設けられているのに対し、実施例1ではバイアス回路16aを設けなくてもよい。バイアス回路16aは、1/4波長線路L12を備えるため、面積が大きい。このため、増幅器全体の面積は、比較例1に比べ実施例1では増幅器全体を小型化できる。
【0029】
比較例1および実施例1の各キャパシタのキャパシタンスおよびインダクタのインダクタンスの例は以下である。
実施例1
C1:0.1pF、L1:0.1nH、L2:0.4nH、L3:0.1nH、L4:32nH、L5:36nH、L6:92nH
比較例1
C1:0.6pF、C0:0.6pH、L1:3.3nH、L0:3.3nH
【0030】
[実施例1の変形例2]
図11は、実施例1の変形例2に係る増幅器の回路図である。
図11に示すように、バラン10において、ノードN1とN3との間にインダクタL2およびL3が直列接続され、インダクタL4~L6がシャント接続されている。ノードN2とN3との間においてインダクタL1が直列接続されキャパシタC1がシャント接続されている。位相調整器25が分配器18とピークアンプ14との間に接続されている。その他の構成は実施例1の
図2と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例2のように、ノードN1とN3との間にインダクタL2およびL3が直列接続され、L4~L6がシャント接続され、ノードN2とN3との間にインダクタL1が直列接続され、キャパシタC1がシャント接続されていてもよい。
【0031】
実施例1およびその変形例によれば、
図2のように、集中定数素子を含むバラン10内のノードN3(第3ノード)を介しキャリアアンプ12(第1アンプ)の出力ノードN1(第1ノード)とピークアンプ14の出力ノードN2(第2ノード)とが直流的に接続される。これにより、キャリアアンプ12とピークアンプ14との間の経路17にキャパシタが直列に設けられない。よって、バイアス回路16からキャリアアンプ12にバイアス電圧を供給できる。
【0032】
ノードN3を介したノードN1とN2との間の経路17には、キャリアアンプ12とピークアンプ14にバイアス電圧を供給するノードN4(第4ノード)が1か所のみ設けられている。これにより、バイアス回路16を1つ設ければよく、
図9と
図10との比較のように、増幅器を小型化できる。
【0033】
ノードN4はバラン10とピークアンプ14との間に設けられている。これにより、バイアス回路16がキャリアアンプ12の出力側に影響することを抑制できる。
【0034】
図2のように、バラン10は、経路17に直列接続されたインダクタL1~L3と、経路17にシャント接続されたキャパシタC1と、を備える。これにより、経路17はDCカットされずかつバラン10を形成できる。
【0035】
図2のように、バラン10において、キャパシタC1およびインダクタL1~L6を設ける。これにより、
図4~
図6において説明したように、比較例1において経路17に直列接続されたキャパシタC0をインダクタL1~L6により置き換えることができる。これにより、経路17にキャパシタC0が直列接続されず、経路17は直流的に接続される。
【0036】
実施例1では、実施例1の変形例1の
図7におけるインダクタL0とL02とを
図2のようにインダクタL4とする。すなわち、バラン10が有するインダクタのうちインダクタL2とノードN2の間にシャント接続されたインダクタはインダクタL4のみである。これにより、インダクタの個数を削減できる。
【0037】
第1アンプおよび第2アンプとしてそれぞれキャリアアンプ12とピークアンプ14の例を説明したが、第1アンプおよび第2アンプはそれぞれピークアンプ14およびキャリアアンプ12でもよい。すなわち、第1アンプおよび第2アンプのいずれか一方は、キャリアアンプであり、第1アンプおよび第2アンプの他方はピークアンプであればよい。
【0038】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
10 バラン
12 キャリアアンプ(第1アンプ)
13、15 FET
14 ピークアンプ(第2アンプ)
16、16a、26、27 バイアス回路
17 経路
18 分配器
20、21、23、24 整合回路
25 位相調整器
30 回路
32、34 Jインバータ
40 基板
42 導電体パターン