(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017499
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】治療用抗癌ネオエピトープワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20220118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220118BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220118BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220118BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220118BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220118BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220118BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220118BHJP
C07K 7/04 20060101ALI20220118BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220118BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00 ZNA
A61P11/00
A61P13/08
A61P37/02
A61K47/65
A61K48/00
A61P35/04
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K14/47
C07K19/00
C07K7/04
C12N15/63 Z
A61P17/00
A61P1/00
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180825
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2018535138の分割
【原出願日】2017-01-05
(31)【優先権主張番号】16150574.8
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16178393.1
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512330710
【氏名又は名称】バッシボディ アクスイェ セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】スティーネ グラヌム
(72)【発明者】
【氏名】エリーサベト ステューブスルー
(72)【発明者】
【氏名】アグネテ ブルンスビック フレドリクセン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB25
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA52
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA03
4C085BB01
4C085BB11
4C085CC21
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA41
4H045CA41
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリヌクレオチド又はポリペプチドを含む抗癌ワクチンの提供。
【解決手段】1)ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、該ヌクレオチド配列が、標的化ユニット、二量化ユニット、第1のリンカー及び抗原性ユニットをコードし、ここで、前記抗原性ユニットはn-1個の抗原性サブユニットを含み、各サブユニットは少なくとも癌ネオエピトープ配列の一部分及び第2のリンカーを含み、前記抗原性ユニットは最終癌ネオエピトープ配列をさらに含み、ここで、nは3~50の整数であり、前記癌ネオエピトープ配列がそれぞれ、少なくとも1つの癌ネオエピトープを含む、ポリヌクレオチド;2)1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;あるいは、3)1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされる2つのポリペプチドからなる二量体タンパク質の免疫学的有効量を含む、治療用抗癌ネオエピトープワクチンである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用抗癌ネオエピトープワクチンであって、以下、
1)ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列が、以下、
・標的化ユニット、
・二量化ユニット、
・第1のリンカー、これに続いて
・抗原性ユニット、
をコードし、ここで、前記抗原性ユニットはn-1個の抗原性サブユニットを含み、各サブユニットは少なくとも癌ネオエピトープ配列の一部分及び第2のリンカーを含み、かつ、前記抗原性ユニットは最終癌ネオエピトープ配列をさらに含み、ここで、nは3~50の整数であり、かつ、前記癌ネオエピトープ配列がそれぞれ、少なくとも1つの癌ネオエピトープを含む、ポリヌクレオチド、あるいは
2)1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは
3)1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされる2つのポリペプチドからなる二量体タンパク質、
の免疫学的有効量を含む、治療用抗癌ネオエピトープワクチン。
【請求項2】
前記抗原性ユニットが、それぞれの癌ネオエピトープの1つのコピーを含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記抗原性ユニットが、少なくとも1つのネオエピトープの少なくとも2つのコピーを含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
前記癌ネオエピトープ配列が、7~30アミノ酸の長さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項5】
それぞれの癌ネオエピトープ配列が、同一の長さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項6】
前記癌ネオエピトープが本質的に、前記癌ネオエピトープ配列の中央に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項7】
前記癌ネオエピトープ配列が、癌新生抗原(cancer neoantigen)の部分配列である、請求項1から6のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項8】
前記抗原性サブユニットが、前記第1のリンカーから前記最終癌ネオエピトープ配列に向かう方向に、より抗原性の高いものからより抗原性の低いものの順で配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項9】
最も疎水性の抗原性サブユニット(複数)が実質的に前記抗原性ユニットの中央であり、かつ、最も親水性の抗原性サブユニット(複数)が前記抗原性ユニットの末端にある、請求項1から8のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項10】
前記第2のリンカーが、柔軟性リンカーである、請求項1から9のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項11】
前記第2のリンカーが、全ての抗原性サブユニットにおいて同一である、請求項1から10のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項12】
前記第2のリンカーが、セリン-グリシンリンカーである、請求項1から11のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項13】
前記抗原性ユニットの長さが、約300アミノ酸~約1000アミノ酸である、請求項1から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項14】
前記二量化ユニットが、配列番号3のアミノ酸配列94~237と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項15】
前記標的化ユニットが、CCR1、CCR3及びCCR5から選択されるケモカイン受容体に対する親和性を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項16】
前記標的化ユニットが、配列番号1のアミノ酸配列24~93と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項17】
前記ペプチド中の前記標的化ユニット、二量化ユニット及び抗原性ユニットが、N末端からC末端に、標的化ユニット、二量化ユニット及び抗原性ユニットの順である、請求項1から16のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項18】
前記標的化ユニットが、
配列番号1のアミノ酸配列24~93と同一であるアミノ酸配列、及び/又は、
配列番号3のアミノ酸配列94~237と同一であるアミノ酸配列を含む二量化ユニット、
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチドの配列が、DNAヌクレオチド配列又はRNAヌクレオチド配列であり、好ましくはDNAヌクレオチド配列である、請求項1から18のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項20】
薬学的に許容される担体及び/又はアジュバントをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項21】
請求項1から19のいずれか一項に記載のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項22】
癌の治療のための、請求項1から20のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項23】
前記癌が腫瘍をもたらす、請求項22に記載のワクチン。
【請求項24】
前記癌が、高い突然変異負荷を有する、請求項22又は23に記載のワクチン。
【請求項25】
前記癌が、黒色腫、肺癌、乳癌、前立腺癌又は結腸癌である、22から24のいずれか一項に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドを含む抗癌ワクチン、斯かる抗癌ワクチンが使用される癌の治療方法、並びにワクチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌の治療は、特に早期発見及び診断により過去数十年にわたって改善され、これは顕著に生存率を向上させたが、癌と診断された患者の約60%のみが診断後5年生存する。
【0003】
使用されている癌治療のほとんどは外科手術、放射線及び細胞傷害性化学療法であるが、しかしながらそれらは全て深刻な副作用を有する。最近では、既知の癌関連抗原に対する抗体を用いる治療も使用されている。
【0004】
ここ数年の間に、患者自身の免疫系の助けを借りて癌細胞を標的化する癌免疫療法、すなわち癌ワクチンが関心を集めており、これは、そのような療法が従来の癌治療に見られる副作用のいくつかを低減又はさらに排除することができるためである。免疫学の基礎は、自己-非自己の識別に基づいている。感染症を誘発する病原体の大半が、宿主によって認識されて免疫応答を誘発し得る分子署名(molecular signatures)を含む。しかしながら腫瘍細胞は、正常細胞に由来し、かつ一般に分子署名を発現しないので、それらを正常細胞と区別することがより困難となる。
【0005】
それにもかかわらず、ほとんどの腫瘍細胞が異なるタイプの腫瘍抗原を発現する。腫瘍抗原の1つのクラスは、いわゆる腫瘍関連抗原、すなわち、正常組織中に低いレベルで発現され、かつ腫瘍組織中により高いレベルで発現される抗原である。そのような腫瘍関連抗原は、過去10年間の癌ワクチンの標的であった。しかしながら、腫瘍関連抗原に対して行われる免疫学的治療は、問題の抗原を下方制御することによって腫瘍細胞が免疫系を回避する可能性があり、また、その治療が正常細胞破壊による毒性をもたらし得るという点において、いくつかの課題を提示する。
【0006】
近年、腫瘍抗原の別のクラス、いわゆる腫瘍新生抗原(tumor neoantigens)又は腫瘍特異的抗原が同定されている。腫瘍新生抗原は、腫瘍ゲノム中の1つ又は複数の突然変異によって生じ、問題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらす。これらの突然変異は正常組織には存在しないため、腫瘍関連抗原に対して行われる治療の副作用は、腫瘍新生抗原に対する免疫学的治療では生じない。
【0007】
悪性黒色腫についての体細胞の腫瘍特異的非同義突然変異の平均数は100~120である。遺伝的改変のいくつかは免疫系によって認識することができ、理想的な抗原を表す。動物モデルでは腫瘍新生抗原による免疫化の有用性を確認し、2つの臨床試験が開始された。一方は最大10の突然変異タンパク質を含むワクチンによるものであり、他方はRNAワクチン(IVAC MUTANOME)によるものであった。RNAワクチンは、2つのRNA分子を含み、RNA分子はそれぞれ5つの異なる突然変異コード配列を含む。
【0008】
しかしながら、いくつかの異なるタンパク質又はいくつかのRNA配列のいずれかの投与によって、投与された又はイン・ビボで発現された様々なタンパク質に対する免疫応答を制御することは困難である。
【0009】
従って、イン・ビボ又はイン・ビトロのいずれかでの突然変異タンパク質の発現を確実にし、かつ、抗原の送達、並びに強いT細胞応答を誘発するために必要とされる抗原提示細胞の活性化を保証する、より効率的なワクチンが必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明は、腫瘍新生抗原からの複数のネオエピトープに関する治療用抗癌ワクチンであって、ネオエピトープがワクシボディ(vaccibody)と呼ばれる二量体タンパク質として免疫系に提示される、治療用抗癌ワクチンに関する。国際公開第2004/076489号には、ワクシボディと呼ばれる二量体タンパク質が詳細に記載されている。
【0011】
一実施形態では、本発明は、治療用抗癌ネオエピトープワクチンであって、以下、
1)ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列が、以下、
・標的化ユニット
・二量化ユニット
・第1のリンカー
・抗原性ユニット、
をコードし、ここで、前記抗原性ユニットはn-1個の抗原性サブユニットを含み、各サブユニットは少なくとも癌ネオエピトープ配列の一部分及び第2のリンカーを含み、かつ、前記抗原性ユニットは最終癌ネオエピトープ配列をさらに含み、ここで、nは3~50の整数である、ポリヌクレオチド、あるいは
2)1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、又は
3)1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされる2つのポリペプチドからなる二量体タンパク質、
の免疫学的有効量を含む、治療用抗癌ネオエピトープワクチンに関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、上記で定義したポリヌクレオチドに関する。斯かるポリヌクレオチドは、例えば本発明に係るワクチンに有用である。
【0013】
第3の態様では、本発明は、上記で定義したポリヌクレオチドを含むベクターに関し、そして、第4の態様では、本発明は、上記で定義したポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞に関する。
【0014】
第5の態様では、本発明は、上記で定義したポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。斯かるポリペプチドは例えば、第本発明に係るワクチンに有用であり、そして、第6の態様では、本発明は、上記で定義した2つのポリペプチドからなる二量体タンパク質に関する。
【0015】
第7の態様では、本発明は、薬剤としての使用のための上記で定義したポリペプチド、二量体タンパク質、又はポリヌクレオチドに関する。
【0016】
上述のように、いくつかの実施形態では、ワクチンは、ポリペプチド又は二量体タンパク質を含み、従って、第8の態様では、本発明は、上記で定義した二量体タンパク質又はポリペプチドの調製方法に関し、当該方法は、以下、
a)上記で定義したポリヌクレオチドを細胞集団にトランスフェクトし;
b)細胞集団を培養し;
c)細胞集団から発現された二量体タンパク質、又はポリペプチドを収集及び精製すること、
を含む。
【0017】
他の実施形態では、ワクチンはポリヌクレオチドを含み、従って、第9の態様では、本発明は、ポリヌクレオチドの免疫学的有効量を含むワクチン、例えばDNA又はRNAワクチンの調製方法に関し、当該方法は、以下、
a.上記で定義したポリヌクレオチドを調製し;
b.ステップa)の下で得られたポリヌクレオチドを薬学的に許容される担体、希釈剤、又は緩衝液中で混合し、それによってワクチンを得ること、
を含む。
【0018】
第10の態様では、本発明は、患者の癌を治療する方法に関し、当該方法は、癌の治療を必要とする患者に、上記で定義したワクチンを投与することを含む。別の第10の態様では、本発明は、癌を治療する方法に使用するための上記で定義したワクチンに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、各単量体上にそれぞれ3、10又は20個のネオエピトープを有する本発明に係る二量体タンパク質概略図を示す。
【
図2】
図2は、VB10.NEOコンストラクトによるHEK293細胞のトランスフェクション後に、新生抗原ベースのワクシボディタンパク質が産生され、機能的ホモ二量体として分泌されることを示す。
図2の左上パネルは、10個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-X(VB4001)及びVB10.NEO B16-X(VB4003)のウェスタンブロットを示し、
図2の左下パネルは、3個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-III(VB4002)及びVB10.NEO B16-III(VB4004)のウェスタンブロットを示す。機能的ホモ二量体の形成は、各コンストラクトについてのウェスタンブロットの左パネルに示されている(-還元剤)。右パネルは、単量体を示す(+還元剤)。
図2の右パネルは、VB10.NEOコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞からの上清中のワクシボディタンパク質を検出する2つのELISA実験の結果を示す。右上パネルは、VB10.NEO CT26コンストラクトの発現レベル、VB4001及びVB4002を示し、右下パネルは、VB10.NEO B16コンストラクトの発現レベル、VB4003及びVB4004を示す。
【
図3】
図3は、10個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチンによる単回注入後に、3個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチンと比較して、強く広範なT細胞応答が誘導されることを示す。左パネルは、3及び10個のネオエピトープをそれぞれ含むVB10.NEO B16-III(VB4004)又はVB10.NEO B16-X(VB4003)を注入した際の、B16黒色腫モデルにおける個々のネオエピトープに対するIFN-γ応答を示す。右パネルは、3及び10個のネオエピトープをそれぞれ含むVB10.NEO CT26-III(VB4002)又はVB10.NEO CT26-X(VB4001)を注入した際の、CT26結腸癌モデルにおけるネオエピトープに対するIFN-γ応答を示す。x軸は、10個の異なるネオエピトープ、pepM1-M10を表す。VB10.NEO CT26-X = VB4001 = CT26 pepM1-M10、VB10.NEO CT26-III = VB4002 = CT26 pepM1-M3、VB10.NEO B16-X = VB4003 = B16 pepM1-M10、VB10.NEO B16-III = VB4004 = B16 pepM1-M3。
【
図4】
図4は、10個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチンが、3個のネオエピトープのみを含むワクシボディDNAワクチンよりも強く広範な全免疫応答を誘導することを示す。上パネル:10個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-X(VB4003)及び3個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-III(VB4004)それぞれを注入した際の、B16黒色腫モデルにおけるネオエピトープに対する免疫応答の比較。下パネル:10個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-X(VB4001)及び3個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-III(VB4002)をそれぞれ注入した際の、CT26結腸癌モデルにおけるネオエピトープに対する免疫応答の比較。VB10.NEO CT26-X = VB4001 = CT26 pepM1-M10、VB10.NEO CT26-III = VB4002 = CT26 pepM1-M3、VB10.NEO B16-X = VB4003 = B16 pepM1-M10、VB10.NEO B16-III = VB4004 = B16 pepM1-M3。
【
図5】10個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチンは、対応する10個のペプチド+アジュバントの混合物よりもはるかに強い免疫応答を誘導する。上パネル:サンドイッチELISAによって検出された、対応するワクシボディDNAコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞の上清中の、10個のネオエピトープ(VB4003及びVB4014)の順序を変えることによるVB10.NEO B16-Xの2つの変異体のワクシボディ発現レベルの比較。VB4003では、他の全てのネオエピトープは疎水性又は親水性のいずれかであり、一方で、VB4014では、疎水性ネオエピトープは、ネオエピトープ抗原モジュールの中央に位置している。抗原モジュールにおけるネオエピトープの疎水性コアは、同じコンストラクトにおける機能的ワクシボディタンパク質の発現及び分泌を改善し得る。下パネル:ヒストグラムは、DNAワクチンVB10.NEO B16-X VB4003及びVB4014、及び10個のペプチド+アジュバントの混合物(VB10.NEO B16-Xコンストラクトにコードされた同じ10個のネオエピトープ)によって誘導された免疫応答を示す。ネオエピトープ抗原モジュール内のネオエピトープの順序は、個々のネオエピトープの免疫原性の階層を変更しない。VB10.NEO B16-X = VB4003 = B16 pepM1-M10、VB10.NEO B16-X = VB4014 = B16 疎水性コア(pepM9+pepM5+pepM1+pepM4+pepM6+pepM8+pepM10+pepM3+pepM7+pepM2)。
【
図6】10個のネオエピトープが10アミノ酸(aa)リンカーで離間されているVB10.NEO B16-X DNAワクチン(VB4011)は、10個のネオエピトープが5aaリンカーで離間されているVB10.NEO B16-X DNAワクチン(VB4003)と比較して、より強い総免疫応答を誘導する。上パネル:サンドイッチELISAによって検出された、対応するワクシボディDNAコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞の上清中の、VB4003及びVB4011のワクシボディ発現レベルの比較。機能的ワクシボディタンパク質の同様の発現及び分泌が、VB4003及びVB4011について観察される。下パネル:VB4003又はVB4011を注入されたマウスのB16黒色腫モデルからのネオエピトープに対するIFN-γ免疫応答を示すヒストグラム。10アミノ酸リンカーで離間された10個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチンによる単回注入は、最も強い総免疫応答をもたらした。空ベクターを陰性対照として含めた。VB10.NEO B16-X = VB4003 = B16 pepM1-M10、5 aa リンカー、VB10.NEO B16-X = VB4011 = B16 pepM1-M10、10 aa リンカー。
【
図7】2x10個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチン(VB4018)は、1x10個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチン(VB4003)と比較して、個々のネオエピトープに対してより広範な免疫応答を誘導する。上パネル:サンドイッチELISAによって検出された、対応するワクシボディDNAコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞の上清中の、VB10.NEO B16-X(VB4003)及びVB10.NEO B16-XX(VB4018)のワクシボディ発現レベルの比較。下パネル:VB4003又はVB4018を注入されたマウスのB16黒色腫モデルからのネオエピトープに対するIFN-γ免疫応答を示すヒストグラム。それぞれのネオエピトープの2つのコピーを含むことの利点は総免疫応答に限られるが、しかしながら、より広範な免疫応答が個々のネオエピトープに対して観察される。空ベクターが陰性対照として含まれる。VB10.NEO B16-X = VB4003 = B16 pepM1-M10、5 aa リンカー、VB10.NEO B16-XX = VB4018 = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10 x 2、5 aa リンカー。
【
図8】ワクシボディコンストラクト中の各ネオエピトープのいくつかのコピーは、5つの選択された最良のネオエピトープに対するより均一な免疫応答を与える。上パネル:サンドイッチELISAによって検出された、対応するワクシボディDNAコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞の上清中の、VB10.NEO B16-X(VB4003及びVB4011)、VB10.NEO B16-XX(VB4018)、VB10.NEO B16-Vx2(VB4019)及びVB10.NEO B16-Vx4のワクシボディ発現レベルの比較。下パネル:全てこれらの5個のネオエピトープを含むが、文脈が異なる、5つの異なるワクシボディDNAワクチンを注入されたマウスのB16黒色腫モデルからの5個のネオエピトープ(PepM3、PepM4、PepM7、PepM9及びPepM10)に対するIFN-γ免疫応答を示すヒストグラム。空ベクターを陰性対照として含む。本図は、ワクシボディコンストラクトVB4019(Vx2)及びVB4021(Vx4)により観察された各ネオエピトープのいくつかのコピーが、5個の選択ネオエピトープが一度提示されるVB4003と比較して、5個の共有ネオエピトープに対してより均等に免疫応答を媒介することを示している。しかしながら、10個の異なるネオエピトープ(すなわち本アッセイで試験された5個のネオエピトープのただ単一のコピー)を保持するコンストラクトは、したがって、重要なことに、リンカーの長さが増加することにより(10アミノ酸、VB4011)、5個の共有ネオエピトープに対して最も強い総免疫応答を誘導した。VB10.NEO B16-X = VB4003 = B16 pepM1-M10、5 aa リンカー、VB10.NEO B16-X = VB4011 = B16 pepM1-M10、10 aa リンカー、VB10.NEO B16-XX = VB4018 = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10 x 2、5 aa リンカー、VB10.NEO B16-Vx2 = VB4019 = B16 pepM3+M4+M7+M9+M10 x 2、5 aa リンカー、VB10.NEO B16-Vx4 = VB4021 = B16 pepM3+M4+M7+M9+M10 x 4、5 aa リンカー。
【
図9】
図9は、20個のネオエピトープを含むワクシボディVB4018が、10個のネオエピトープを含むワクシボディVB4017と同じレベルに発現されることを示す。ワクシボディタンパク質は、サンドイッチELISAによって、異なるワクシボディDNAコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞の上清中に検出される。VB10.NEO B16-X = VB4017= B16 pepM1-M4+M11+M6-M10、5 aa リンカー、VB10.NEO B16-XX = VB4018 = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10 x 2、5 aa リンカー。
【
図10】3-ネオエピトープを含む異なるワクシボディコンストラクトの発現レベルを比較する。ワクシボディタンパク質は、サンドイッチELISAによって、異なるワクシボディDNAコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞の上清中に検出される。上パネル:3個のネオエピトープが、5aaリンカー(VB4004)と比較して、10aaリンカー(VB4012)で離間されている場合に、機能的ワクシボディタンパク質の改善された発現及び分泌が観察される。下パネル:本図は、ネオエピトープの順序の変更が、ワクシボディの発現に影響を与え得ることを示す。VB10.NEO B16-III = VB4004 = B16 pepM1-M3、5 aa リンカー、VB10.NEO B16-III = VB4012 = B16 pepM1-M3、10 aa リンカー、VB10.NEO B16-III = VB4015 = B16 pepM1+M8+M3、5 aa リンカー、VB10.NEO B16-III = VB4016 = B16 pepM1+M3+M2、5 aa リンカー。
【
図11】
図11は、10個のネオエピトープ(VB4011)、15個のネオエピトープ(VB4024)又は20個のネオエピトープ(VB4025)のいずれかを含むワクシボディDNAワクチンによる単回注入後に誘導される、B16黒色腫マウスにおける免疫応答を示す。上パネル:試験された10、15又は20個のネオエピトープを含むワクシボディコンストラクトの発現レベル。ワクシボディタンパク質は、サンドイッチELISAによって、異なるワクシボディDNAコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞の上清中に検出される。下パネル:10個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-X(VB4011)と比較した、DNAワクチン候補である15個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-XV(VB4024)又は20個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-XX(VB4025)を注入されたマウスにおけるネオエピトープに対する総免疫応答。本図は、10
6個の脾細胞当たりのIFNγ-スポットの総数を示す。陰性対照として、マウスにネオエピトープを含まない空ベクターを注入した。本図は、20個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチンが、10個のネオエピトープのみを含むワクシボディDNAワクチンよりも、強く広範な総免疫応答を誘導することを示す。
【
図12】
図12は、10個のネオエピトープ(VB4009)、15個のネオエピトープ(VB4026)又は20個のネオエピトープ(VB4027)のいずれかを含むワクシボディDNAワクチンによる単回注入後に誘導される、CT26結腸癌マウスにおける免疫応答を示す。上パネル:試験された10個のネオエピトープを含むワクシボディコンストラクトVB10.NEO CT26-X(左パネル)、並びに15及び20個のネオエピトープをそれぞれ含むワクシボディコンストラクトVB10.NEO CT26-XV及びXX(右パネル)の発現レベル。下パネル:10個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-X(VB4009)と比較して、DNAワクチン候補である15個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-XV(VB4026)又は20個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-XX(VB4027)を注入されたマウスの、CT26結腸癌モデルにおけるネオエピトープに対する総免疫応答。本図は、10
6個の脾細胞当たりのIFNγ-スポットの総数を示す。陰性対照として、マウスにネオエピトープを含まない空ベクターを注入した。本図は、20又は15個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチンが、10個のネオエピトープのみを含むワクシボディDNAワクチンよりも、強く広範な総免疫応答を誘導することを示す。NEO CT26-X = VB4009 = CT26 pepM1-M10、10 aa リンカー、NEO CT26-XV = VB4026 = CT26 pepM1-M15、10 aa リンカー、NEO CT26-XX = VB4027 = CT26 pepM1-M20、10 aa リンカー。
【
図13】
図13は、10個のネオエピトープを含むVB10.NEOワクチン候補で2回免疫されたマウスが、PBSのみを受けた陰性対照マウスと比較して、a)B16黒色腫モデル及びb)CT26結腸癌モデルにおける腫瘍成長を有意に遅延及び減少させることができることを示す。本図は、経時的な腫瘍体積の発達を示す。CT26結腸癌実験において、マウスは、腫瘍成長を安定化することができた応答者と、非応答者に分かれた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
腫瘍は、固体腫瘍、並びに血液などの体液中に見られる腫瘍細胞の両方について、本文脈で使用される。
【0021】
腫瘍新生抗原は、宿主のエクソーム(exome)と比較して1つ又は複数の突然変異を含む任意の腫瘍特異的抗原に使用され、癌新生抗原という用語と同義語として使用される。
【0022】
腫瘍ネオエピトープは、腫瘍抗原における任意の免疫原性突然変異について使用され、癌ネオエピトープという用語と同義語として使用される。
【0023】
腫瘍ネオエピトープ配列は、抗原性サブユニット中のネオエピトープを含む配列を説明するために使用され、癌ネオエピトープ配列という用語と同義語として使用される。
【0024】
治療用抗癌ワクチンは、ワクチンが患者に既に存在する腫瘍細胞を減少又は破壊するために使用されることを説明するために使用される。
【0025】
発明の詳細な説明
癌は、1つ又はいくつかの細胞が突然変異のために細胞の異常な制御不能な増殖を開始することによって、患者の正常組織から発生する。癌細胞は突然変異しているが、ゲノムの大部分はインタクトであり、患者の残りの細胞と同一である。このことは、抗癌ワクチンを開発する先の試みの失敗のいくつかの説明でもあり、すなわち、ワクチンがある程度、患者の正常細胞にも向けられているということである。上述したように、本発明によって定義された腫瘍を攻撃するアプローチは、突然変異による任意の腫瘍が、突然変異タンパク質、いわゆる、患者の正常細胞におけるタンパク質と同一でない新生抗原を発現し、従って、新生抗原は治療用抗癌ワクチンのための効率的な標的であるという知見を用いることである。腫瘍に見られる突然変異は、通常個体差が大きく、従って本発明に係るワクチンは、問題の突然変異を有する患者にのみ使用されるように個人化される。
【0026】
本発明に係るワクチンは、通常の適応免疫系を用いて、腫瘍細胞に対する免疫を提供する。適応免疫系は、あらゆる外来抗原が、抗原提示と呼ばれるプロセス中に特異的な「非自己」抗原の認識によって、前記外来抗原に対して特異的に免疫応答を引き起こすという点で特異的である。適応免疫系の細胞はリンパ球、特にB細胞及びT細胞である。B細胞が体液性免疫応答に関与しているのに対し、T細胞は細胞媒介性免疫応答に関与している。
【0027】
特に、本発明に係るワクチンは、新生抗原に対するT細胞の活性化を介して細胞媒介性免疫応答を引き起こすように設計されている。T細胞は、ネオエピトープがプロセシングされ、以下に論じられるようにMHC分子に複合体化されて提示された場合にネオエピトープを認識する。
【0028】
主要組織適合性複合体(Major histocompatibility complex)(MHC)
本発明に係るネオエピトープは、MHC-ネオエピトープ複合体で提示されるように設計されている。主要組織適合性複合体(MHC)分子には2つの主要なクラス、MHC I及びMHC IIがある。
【0029】
MHC Iは、体内の全ての有核細胞の細胞表面に見られる。MHC Iの機能の1つは、非自己タンパク質のペプチドを細胞内から細胞傷害性T細胞に提示することである。MHC I複合体-ペプチド複合体は細胞の原形質膜に挿入されて、ペプチドを細胞傷害性T細胞に提示し、特定のMHC-ペプチド複合体に対する細胞傷害性T細胞の活性化が引き起こされる。ペプチドはMHC I分子の溝に位置しており、ペプチドを約8~10アミノ酸の長さにしている。
【0030】
MHC II分子は、抗原提示細胞、例えば樹状細胞、単核食細胞、いくつかの内皮細胞、胸腺上皮細胞、及びB細胞にのみ通常見られる分子のファミリーである。
【0031】
MHC Iとは対照的に、クラスIIペプチドによって提示された抗原は、細胞外タンパク質に由来する。細胞外タンパク質はエンドサイトーシスされ、リソソームで消化され、得られた抗原ペプチドはMHCクラスII分子上に載せられ、次いで細胞表面で提示される。MHCクラスII分子の抗原結合溝は、両端が開いており、より長いペプチド、一般に15~24アミノ酸残基の長さを提示することができる。
【0032】
クラスI MHC分子は、通常CD8+細胞と呼ばれるT細胞上のCD8及びコレセプター(co-receptor)によって認識され、一方で、クラスII MHC分子は、通常CD4+細胞と呼ばれるT細胞上のCD4及びコレセプターによって認識される。
【0033】
ワクチン
本発明の新生抗原ワクチンは、3つのユニット、すなわち標的化ユニット、二量化ユニット及び抗原性ユニットを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。二量化ユニットのために、ポリペプチドはワクシボディと呼ばれる二量体タンパク質を形成する。
【0034】
3つのユニットをコードする遺伝子は遺伝子操作されて、1つの遺伝子として発現される。イン・ビボで発現される場合、ポリペプチド/二量体タンパク質は、抗原提示細胞(APC)を標的化し、これは、同一の標的化されていない抗原と比較して増強されたワクチン効力を生じる。
【0035】
本発明は、抗原性ユニットが抗原性サブユニットを含むワクチンに関し、ここで、各サブユニットは、癌ネオエピトープ配列又は少なくとも癌ネオエピトープ配列の一部分を含む。ネオエピトープ配列は、腫瘍DNA又はRNAをシークエンシングし、新生抗原を表す腫瘍特異的突然変異を同定することによって得られる。それにより、同定された腫瘍抗原を特異的に標的化する個別化新生抗原ワクチンが得られる。
【0036】
本発明の一態様は、治療用抗癌ネオエピトープワクチンであって、以下
ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列が、以下、
・標的化ユニット
・二量化ユニット
・第1のリンカー
・抗原性ユニット、
をコードし、ここで、前記抗原性ユニットはn-1個の抗原性サブユニットを含み、各サブユニットは少なくとも癌ネオエピトープ配列の一部分及び第2のリンカーを含み、かつ前記抗原性ユニットは最終癌ネオエピトープ配列をさらに含み、ここで、nは3~50の整数である、ポリヌクレオチド、あるいは
1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは
1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされる2つのポリペプチドからなる二量体タンパク質、
の免疫学的有効量を含む、治療用抗癌ネオエピトープワクチンに関する。
【0037】
したがって、ワクチンは、n個のネオエピトープ又はネオエピトープ配列及びn-1個の第2のリンカーを含み、ここで、nは3~50の整数である。
【0038】
抗原性ユニット
本発明に係る抗原性ユニットは、複数の腫瘍ネオエピトープを含み、ここで、各ネオエピトープは、腫瘍新生抗原において同定された突然変異に対応する。突然変異は、少なくとも1つのアミノ酸の変化をもたらす任意の突然変異であり得る。従って、突然変異は、以下のうちの1つであり得る:
-アミノ酸の変化をもたらす非同義突然変異
-フレームシフトをもたらす突然変異、及びそれによって突然変異後の方向において完全に異なったオープンリーディングフレーム
-終止コドンが修飾されるか又は欠失し、腫瘍特異的ネオエピトープを有するより長いタンパク質をもたらす、リードスルー(read-through)突然変異
-特有の腫瘍特異的タンパク質配列をもたらすスプライス突然変異
-2つのタンパク質の接合部に腫瘍特異的ネオエピトープを有するキメラタンパク質を生じる染色体再編成
【0039】
抗原性ユニットにおいて、腫瘍ネオエピトープの最後を除くすべてが抗原性サブユニットに配置され、ここで、各サブユニットは、腫瘍ネオエピトープ配列及び第2のリンカーからなり、一方で、最後のサブユニットはネオエピトープのみを含み、すなわちそのような第2のリンカーを含まない。前記第2のリンカーによる腫瘍ネオエピトープ配列の分離のために、各ネオエピトープは最適な方法で免疫系に提示され、それによって、後述するようにワクチンの効率が保証される。
【0040】
癌ネオエピトープ配列は好ましくは、上記で論じたMHC分子による提示に適した長さを有する。したがって、好ましい実施形態では、癌ネオエピトープは7~30アミノ酸長である。7~10アミノ酸の長さを有する癌ネオエピトープ配列、又は13~30アミノ酸の長さを有する癌ネオエピトープ配列が、より好ましい。
【0041】
腫瘍が、突然変異遺伝子の発現を停止することによって免疫系から逃れることを避けるために、ワクチンが前記遺伝子の発現産物に向けられる場合、複数の異なるネオエピトープを抗原性ユニットに含めることが好ましい。一般的に、腫瘍が停止しなければならない遺伝子が多くなればなるほど、腫瘍がそれらの全てを停止させて、依然として増殖するか又は生存することさえ可能であるという可能性が低くなる。さらに、腫瘍は、それぞれ及び全ての新生抗原が全ての腫瘍細胞によって発現されるわけではないという点で不均一であり得る。従って、本発明によれば、アプローチは、効率的に腫瘍を攻撃するために、できる限り多くのネオエピトープをワクチンに含めることである。また、全てのネオエピトープが同じ抗原提示細胞に効率的に載せられることを保証するために、それらは個別のペプチドとしてではなく1つのアミノ酸鎖として配置される。しかしながら、上述したように、ワクチンの目的はT細胞をネオエピトープに対して活性化することであり、ワクチンに含まれるネオエピトープが多すぎる場合にはT細胞は希釈され得るので、抗原性ユニット中のネオエピトープの最適数を有するワクチンを提供することはバランスである。
【0042】
以下でより詳細に論じるように、腫瘍エクソームを解析して、新生抗原を同定し、続いて、最も抗原性の高いネオエピトープを選択する。本発明者らは、実質的に全ての腫瘍細胞を十分に「攻撃する(hit)」ことを可能にするために、少なくとも3個のネオエピトープ、例えば少なくとも5個のネオエピトープ、例えば少なくとも7個のネオエピトープ、例えば少なくとも10個のネオエピトープが選択されて、ワクチンに組み込まれるべきであることを見出した。
【0043】
さらに、本発明の発明者らは、3個のネオエピトープから10個のネオエピトープへのワクチンコンストラクト中のネオエピトープ数の増加が、免疫応答の驚くべき増加をもたらすことを見出した(
図4参照)。さらに、10個のネオエピトープから15又は20個のネオエピトープへのワクチンコンストラクト中のネオエピトープ数の増加が、免疫応答のさらなる増加をもたらすことが見出された(
図11及び12参照)。
【0044】
したがって、好ましい実施形態では、本発明に係るワクチンは、少なくとも10個のネオエピトープを含む。別の好ましい実施形態では、本発明に係るワクチンは、少なくとも15個のネオエピトープ、例えば少なくとも20個のネオエピトープを含む。
【0045】
一実施形態では、T細胞を希釈することなく最も効率的な免疫応答を得るために、3~50個のネオエピトープ、例えば3~30個のネオエピトープ、例えば3~20個のネオエピトープ、例えば3~15個のネオエピトープ、例えば3~10個のネオエピトープがワクチンに含まれ、結果として、nは好ましくは、3~50、例えば3~30、例えば5~25、例えば3~20、例えば3~15、例えば3~10の整数である。
【0046】
別の実施形態では、T細胞を希釈することなく最も効率的な免疫応答を得るために、5~50個のネオエピトープ、例えば5~30個のネオエピトープ、例えば5~25個のネオエピトープ、例えば5~20個のネオエピトープ、例えば5~15個のネオエピトープ、例えば5~10個のネオエピトープがワクチンに含まれ得、結果として、nは好ましくは、5~50、例えば5~30、例えば5~25、例えば5~20、例えば5~15、例えば5~10の整数である。
【0047】
さらなる実施形態では、T細胞を希釈することなく最も効率的な免疫応答を得るために、10~50個のネオエピトープ、例えば10~40個のネオエピトープ、例えば10~30個のネオエピトープ、例えば10~25個のネオエピトープ、例えば10~20個のネオエピトープ、例えば10~15個のネオエピトープがワクチンに含まれ得、結果として、nは好ましくは、10~50、例えば10~30、例えば10~20、例えば10~15の整数のネオエピトープである。
【0048】
本発明の発明者らは、10個のネオエピトープを含むワクシボディDNAワクチンが、3個のネオエピトープのみを含むワクシボディDNAワクチンよりも強く広範な総免疫応答を誘導することを示した(
図4及び実施例2参照)。さらに、20を超えるネオエピトープ数の増加は、T細胞の希釈のために、より効率的でないワクチンをもたらし得る。さらに、それは20個超のネオエピトープを含む技術的困難性に関連し得る。
【0049】
従って、本発明の好ましい実施形態では、ワクチンは、10~20個のネオエピトープを含む。
【0050】
さらに別の実施形態では、T細胞を希釈することなく最も効率的な免疫応答を得るために、15~50個のネオエピトープ、例えば15~30個のネオエピトープ、又は例えば15~20個のネオエピトープがワクチンに含まれ、結果として、nは好ましくは、15~50、例えば15~30又は例えば15~20の整数のネオエピトープである。
【0051】
一実施形態では、抗原性ユニットは、それぞれの癌ネオエピトープの1つのコピーを含み、従って、10個のネオエピトープがワクチンに含まれる場合、10個の異なるネオエピトープに対する細胞媒介性免疫応答が引き起こされ得る。
【0052】
しかしながら、わずかな関連する抗原突然変異が同定された場合、これらネオエピトープに対する免疫応答を強化するために、抗原性ユニットは少なくとも1つのネオエピトープの少なくとも2つのコピーを含み得る。また、製造上及び規制上の理由から、プラスミドの長さ、すなわち抗原性ユニットを一定に保つことが有利であり得、従って、抗原性ユニット中に同じネオエピトープの複数のコピーを含むことが有利であり得る。
【0053】
上述したように、抗原性ユニットの長さを一定に保つことが有利であり得、従って、好ましい一実施形態では、全ての癌ネオエピトープ配列が同一の長さを有する。しかしながら、ネオエピトープの1つ又は複数が、フレームシフト又は終止コドン突然変異をもたらす突然変異から生じる場合、ネオエピトープは、例えばタンパク質の少なくとも突然変異部分、突然変異タンパク質の最も抗原性の高い部分、又はおそらく突然変異タンパク質全体からなる実質的な長さを有し得、それによって、ネオエピトープの少なくとも1つの長さは、非同義点突然変異から生じるネオエピトープよりも実質的に長い。
【0054】
抗原性ユニットの長さは、抗原性ユニットに配置されたネオエピトープの長さ及びネオエピトープの数によって主に決定され、約21~1500、好ましくは約30アミノ酸~約1000アミノ酸、より好ましくは約50~約500アミノ酸、例えば約100~約400アミノ酸、約100~約300アミノ酸である。
【0055】
特にネオエピトープが短い、例えば数アミノ酸長である場合、癌ネオエピトープ配列は、アミノ酸配列によって両側に隣接するネオエピトープを含む。好ましくは、ネオエピトープがプロセシング後に抗原提示細胞によって提示されることを確実にするために、ネオエピトープは本質的に癌ネオエピトープ配列の中央に位置する。ネオエピトープに隣接するアミノ酸配列は好ましくは、新生抗原中のネオエピトープに隣接するアミノ酸配列であり、それによって癌ネオエピトープ配列は、癌新生抗原アミノ酸配列の真の部分配列である。
【0056】
ネオエピトープが抗原性サブユニットにランダムに配置されている場合、腫瘍に対する関連免疫応答を得ることは可能であるが、免疫応答を増強するために、抗原性ユニット中のネオエピトープを順序付ける以下の方法の少なくとも1つに従うことが好ましい。
【0057】
一実施形態では、選択されたネオエピトープに応じて、抗原性サブユニットは、第1のリンカーから最終ネオエピトープに向かう方向に、より抗原性の高いものからより抗原性の低いものの順に配置される。
【0058】
別の実施形態では、特に、親水性/疎水性がネオエピトープ間で大きく変動する場合、最も疎水性の抗原性サブユニット(複数)が実質的に抗原性ユニットの中央に位置し、かつ最も親水性の抗原性サブユニット(複数)が抗原性ユニットの最初及び/又は最後に位置することが好ましい。あるいは、ネオエピトープは、親水性ネオエピトープと疎水性ネオエピトープとを交互に配置してもよい。
【0059】
さらに、GCリッチなネオエピトープは、GCクラスターを避けるように離間されるべきであり、好ましくはGCリッチなネオエピトープは少なくとも1つのサブユニットによって離間される。
【0060】
第2のリンカーは、非免疫原性となるように設計され、好ましくは柔軟性リンカーでもあり、それによって腫瘍ネオエピトープは、抗原性ユニットに存在する多数の抗原性サブユニットにも関わらず、T細胞に最適な様式で提示される。好ましくは、第2のリンカーの長さは、柔軟性を確保するために4~20アミノ酸である。別の好ましい実施形態では、第2のリンカーの長さは、8~20アミノ酸、例えば8~15アミノ酸、例えば8~12アミノ酸、又は例えば10~15アミノ酸である。特定の実施形態では、第2のリンカーの長さは10アミノ酸である。
【0061】
特定の実施形態では、本発明のワクチンは10個のネオエピトープを含み、ここで、第2のリンカーは8~20アミノ酸、例えば8~15アミノ酸、例えば8~12アミノ酸、又は例えば10~15アミノ酸の長さを有する。特定の実施形態では、本発明のワクチンは10個のネオエピトープを含み、ここで、第2のリンカーは10アミノ酸の長さを有する。
【0062】
第2のリンカーは好ましくは、全ての抗原性サブユニットにおいて同一である。しかしながら、ネオエピトープの1つ又は複数が、リンカーに類似のアミノ酸モチーフを含む場合、隣接する第2のリンカーを異なる配列の第2のリンカーで置換することが有利であり得る。また、ネオエピトープ-第2のリンカー結合がそれ自体でエピトープを構成すると予測される場合、異なる配列の第2のリンカーが使用され得る。
【0063】
第2のリンカーは好ましくは、セリン-グリシンリンカー、例えば柔軟性GGGGSリンカー、例えばGGGSS、GGGSG、GGGGS又はその複数の変異体、例えばGGGGSGGGGS又は(GGGGS)m、(GGGSS)m、(GGGSG)mであり、ここで、mは1~5、1~4又は1~3の整数である。好ましい実施形態では、mは2である。
【0064】
好ましい実施形態では、セリン-グリシンリンカーは、少なくとも1つのロイシン(L)、例えば少なくとも2又は少なくとも3つのロイシンをさらに含む。セリン-グリシンリンカーは、例えば1、2、3又は4つのロイシンを含んでもよい。好ましくは、セリン-グリシンリンカーは、1つのロイシン又は2つのロイシンを含む。
【0065】
一実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGGS、GLGGS、GGLGS、GGGLS又はGGGGLを含むか、又はそれらからなる。別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGSG、GLGSG、GGLSG、GGGLG又はGGGSLを含むか又はそれらからなる。さらに別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGSS、GLGSS、GGLSS、GGGLS又はGGGSLを含むか又はそれらからなる。
【0066】
さらに別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGLGS、GLGLS、GLLGS、LGGLS又はGLGGLを含むか又はそれらからなる。別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGLSG、GLLSG、GGLSL、GGLLG又はGLGSLを含むか又はそれらからなる。さらに別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGLSS、GLGLS、GGLLS、GLGSL又はGLGSLを含むか又はそれらからなる。
【0067】
本発明の別の実施形態では、第2のセリン-グリシンリンカーは、10アミノ酸の長さを有し、かつ1つのロイシン又は2つのロイシンを含む。
【0068】
一実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGGSGGGGS、GLGGSGGGGS、GGLGSGGGGS、GGGLSGGGGS又はGGGGLGGGGSを含むか又はそれらからなる。別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGSG GGGSG、GLGSGGGGSG、GGLSGGGGSG、GGGLGGGGSG又はGGGSLGGGSGを含むか又はそれらからなる。さらに別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGSSGGGSS、GLGSSGGGSS、GGLSSGGGSS、GGGLSGGGSS又はGGGSLGGGSSを含むか又はそれらからなる。
【0069】
さらなる実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGGSLGGGS、GLGGSGLGGS、GGLGSGGLGS、GGGLSGGGLS又はGGGGLGGGGLを含むか又はそれらからなる。別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGSGLGGSG、GLGSGGLGSG、GGLSGGGLSG、GGGLGGGGLG又はGGGSLGGGSLを含むか又はそれらからなる。さらに別の実施形態では、第2のリンカーは、配列LGGSSLGGSS、GLGSSGLGSS、GGLSSGGLSS、GGGLSGGGLS又はGGGSLGGGSLを含むか又はそれらからなる。
【0070】
好ましい実施形態では、本発明に係るワクチンは、10アミノ酸リンカーによって分離されている少なくとも10個のネオエピトープを含む。別の好ましい実施形態では、本発明に係るワクチンは、10アミノ酸リンカーによって分離されている少なくとも15個のネオエピトープを含み、例えば、10アミノ酸リンカーにより分離されている少なくとも20個のネオエピトープを含む。
【0071】
別の好ましい実施形態では、ワクチンは、第2のリンカーによって分離されている10~20又は10~25個のネオエピトープを含む。好ましくは、前記第2のリンカーは10アミノ酸である。第2のリンカーはまた、本明細書の上記に定義した任意の長さ、例えば8~12アミノ酸を有し得る。
【0072】
代替的なリンカーは、GSATリンカー及びSEGリンカー、又はそれらの複数の変異体からなる群から選択され得る。
【0073】
標的化ユニット
標的化ユニットによって、本発明のポリペプチド/二量体タンパク質は、樹状細胞(DC)、好中球及び他の免疫細胞の誘因をもたらす。したがって、標的化モジュールを含むポリペプチド/二量体タンパク質は、抗原を特異的細胞に標的化するだけでなく、さらに、ワクチンの投与部位に特異的免疫細胞を動員することによって応答増幅効果(アジュバント効果)を促進することになる。この独自のメカニズムは、ワクチンそれ自体がアジュバント効果を与えるので、患者が付加的なアジュバント無しにワクチンを受けることができる臨床設定において非常に重要である。
【0074】
用語「標的化ユニット」は、本明細書で使用される場合、CD4+T細胞へのMHCクラスIl制限提示のために、又はMHCクラスI制限によりCD8+T細胞に交差提示を提供するために、その抗原と共にポリペプチド/タンパク質を抗原提示細胞に送達するユニットを指す。
【0075】
標的化ユニットは二量化ユニットを介して抗原性ユニットに接続され、ここで、後者はポリペプチド/二量体タンパク質のCOOH末端又はNH2末端のいずれかにある。抗原性ユニットはポリペプチド/二量体タンパク質のCOOH末端にあることが好ましい。
【0076】
標的化ユニットは、本発明のポリペプチド/二量体タンパク質を、関連する抗原提示細胞上で発現される表面分子、例えば樹状細胞(DC)のサブセット上でのみ発現される分子に対して標的化するように設計される。
【0077】
APC上のそのような標的表面分子の例は、ヒト白血球抗原(HLA)、表面抗原分類14(cluster of differentiation 14)(CD14)、表面抗原分類40(CD40)、ケモカイン受容体及びToll様受容体(TLR)である。HLAはヒトの主要組織適合性複合体(MHC)である。Toll様受容体は例えばTLR-2、TLR-4及び/又はTLR-5を含み得る。
【0078】
本発明のポリペプチド/二量体タンパク質は、標的化ユニットによって前記表面分子に標的化することができ、斯かる標的化ユニットは、例えばCD14、CD40、又はToll様受容体に特異性を有する抗体結合領域;リガンド、例えば可溶性CD40リガンド;ケモカインのような天然リガンド、例えばRANTES又はMIP-1a;あるいは、例えばフラジェリンのような細菌抗原を含む。
【0079】
一実施形態では、標的化ユニットはMHCクラスIIタンパク質に親和性を有する。したがって、一実施形態では、標的化ユニットをコードするヌクレオチド配列は、抗HLA-DP、抗HLA-DR及び抗HLA-IIからなる群から選択されるMHCクラスIIタンパク質に特異性を有する抗体可変ドメイン(VL及びVH)をコードする。
【0080】
別の実施形態では、標的化ユニットは、CD40、TLR-2、TLR-4及びTLR-5からなる群から選択される表面分子に親和性を有し、したがって、一実施形態では、標的化ユニットをコードするヌクレオチド配列は、抗CD40、抗TLR-2、抗TLR-4及び抗TLR-5に特異性を有する抗体可変ドメイン(VL及びVH)をコードする。一実施形態では、標的化ユニットをコードするヌクレオチド配列はフラジェリンをコードする。フラジェリンはTLR-5に親和性を有する。
【0081】
好ましくは、標的化ユニットは、CCR1、CCR3及びCCR5から選択されるケモカイン受容体に親和性を有する。より好ましくは、標的化ユニットをコードするヌクレオチド配列はケモカインhMIP-1アルファ(LD78ベータ)をコードし、これはその同族受容体(cognate receptors)であるAPCの細胞表面上で発現される、CCR1、CCR3及びCCR5に結合する。
【0082】
本発明のポリペプチド/二量体タンパク質のその同族受容体への結合は、APCにおける内在化、及びタンパク質の小ペプチドへの分解をもたらし、小ペプチドはMHC分子上に載せられ、CD4+及びCD8+T細胞に提示されて、腫瘍特異的免疫応答を誘導する。一度刺激されると、活性化されたCD4+T細胞の助けを借りて、CD8+T細胞は同じ新生抗原を発現する腫瘍細胞を標的化し、殺すことになる。
【0083】
本発明の一実施形態では、標的化ユニットは、配列番号1のアミノ酸配列24~93と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、標的化ユニットは、配列番号1のアミノ酸配列24~93と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0084】
より好ましい実施形態では、標的化ユニットは、配列番号1のアミノ酸配列24~93と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、例えば配列番号1のアミノ酸配列24~93と少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0085】
二量化ユニット
用語「二量化ユニット」は、本明細書で用いられる場合、抗原性ユニットと標的化ユニットとの間のアミノ酸の配列を指す。したがって、二量化ユニットは、抗原性ユニットと標的化ユニットとを接続する役割を果たし、2つの単量体ポリペプチドの二量体タンパク質への二量化を促進する。さらに、二量化ユニットはまた、ポリペプチド/二量体タンパク質に柔軟性を与え、それらが可変距離に位置していたとしても、抗原提示細胞(APC)上の表面分子への標的化ユニットの最適な結合を可能にする。二量化ユニットは、これらの必要条件を満たす任意のユニットであり得る。
【0086】
従って、一実施形態では、二量化ユニットは、ヒンジ領域及び任意により二量化を促進する別のドメインを含んでもよく、ヒンジ領域及び他のドメインが第3のリンカーを介して接続されてもよい。
【0087】
用語「ヒンジ領域」は、二量化を促進する二量体タンパク質のペプチド配列を指す。ヒンジ領域は、それらが可変距離で発現されたとしても2つの標的化ユニットをAPC上の2つの標的分子に同時に結合させるユニット間の柔軟性スペーサーとして機能する。ヒンジ領域はIg由来、例えばIgG3に由来してもよい。ヒンジ領域は、共有結合(複数)、例えばジスルフィド架橋(複数)の形成を介して二量化に寄与し得る。したがって、一実施形態では、ヒンジ領域は1つ又は複数の共有結合を形成する能力を有する。共有結合は例えばジスルフィド架橋であり得る。
【0088】
一実施形態では、二量化を促進する他のドメインは免疫グロブリンドメイン、例えばカルボキシ末端Cドメイン、又はCドメインと実質的に同一である配列又はその変異体である。好ましくは、二量化を促進する他のドメインは、IgGに由来するカルボキシ末端Cドメインである。
【0089】
免疫グロブリンドメインは、非共有相互作用、例えば疎水性相互作用を介して二量化に寄与する。例えば、免疫グロブリンドメインは、非共有相互作用を介して二量体を形成する能力を有する。好ましくは、非共有相互作用は疎水性相互作用である。
【0090】
二量化ユニットはCH2ドメインを含まないことが好ましい。
【0091】
好ましい実施形態では、二量化ユニットは、第3のリンカーを介してヒトIgG3のCH3ドメインに接続されたヒンジエクソンh1及びh4からなる。
【0092】
本発明の一実施形態では、二量化ユニットは、配列番号3のアミノ酸配列94~237と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、二量化ユニットは、配列番号3のアミノ酸配列94~237と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0093】
より好ましい実施形態では、二量化ユニットは、配列番号3のアミノ酸配列94~237と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、例えば配列番号3のアミノ酸配列94~237と少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0094】
一実施形態では、第3のリンカーはG3S2G3SGリンカーである。
【0095】
二量化ユニットは抗原性ユニット及び標的化ユニットに対して任意の配向性を有し得ることが理解されるべきである。一実施形態では、抗原性ユニットは二量化ユニットのCOOH末端にあり、標的化ユニットは二量化ユニットのN末端にある。別の実施形態では、抗原性ユニットは二量化ユニットのN末端にあり、標的化ユニットは二量化ユニットのCOOH末端にある。抗原性ユニットは二量化ユニットのCOOH末端にあることが好ましい。
【0096】
第1のリンカー
抗原性ユニット及び二量化ユニットは、好ましくは、第1のリンカーを介して接続される。第1のリンカーは、ポリヌクレオチドの構築を促進するために制限部位を含み得る。第1のリンカーはGLGGLリンカー又はGLSGLリンカーであることが好ましい。
【0097】
シグナルペプチド
好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。シグナルペプチドは、前記ポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞において本発明のポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドの分泌を可能にするように構築される。
【0098】
任意の好適なシグナルペプチドが使用され得る。好適なペプチドの例は、Ig VHシグナルペプチド、例えば配列番号31、ヒトTPAシグナルペプチド、例えば配列番号32、及び配列番号1のアミノ酸配列1~23と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むシグナルペプチドである。
【0099】
好ましい実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列1~23と少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
より好ましい実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列1~23と少なくとも80%、好ましくは 少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる。
【0101】
配列同一性
配列同一性は以下のように決定することができる:高レベルの配列同一性は、第1の配列が第2の配列に由来する可能性を示す。アミノ酸配列同一性は、2つのアラインされた配列間で同一のアミノ酸配列を必要とする。したがって、参照配列と70%のアミノ酸同一性を共有する候補配列は、アラインメントに従って、候補配列中のアミノ酸の70%が参照配列中の対応するアミノ酸と同一であることを必要とする。同一性はコンピューター解析、例えば、限定するものではないが、ClustalWコンピューターアラインメントプログラム(Higgins D.、Thompson J.、Gibson T.、Thompson J.D.、Higgins D.G.、Gibson T.J.、1994.CLUSTAL W:配列重みづけ、位置特異的ギャップペナルティ及び重量マトリックス選択を介した革新的複数配列アラインメントの感度の改善(improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice)。Nucleic Acids Res.22:4673~4680)、及びその中に示唆されたデフォルトパラメータの助けを借りて決定することができる。そのデフォルト設定で本プログラムを使用して、クエリーの成熟(生物活性)部分及び参照ポリペプチドをアラインする。完全に保存された残基の数を数え、参照ポリペプチドの長さで割る。そうすることで、クエリー配列の一部を形成する任意のタグ又は融合タンパク質配列は、アラインメント及びその後の配列同一性の決定において無視される。
【0102】
ClustalWアルゴリズムは同様に、ヌクレオチド配列をアラインするために使用され得る。配列同一性は、アミノ酸配列について示されたものと同様の方法で計算することができる。
【0103】
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers及びMiller、CABIOS(1989)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれ、これはFASTA配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部である(Pearson WR、Methods Mol Biol、2000、132:185~219)。Alignはグローバルアラインメントに基づいて配列同一性を計算する。Align0は配列の最後のギャップにペナルティを課さない。アミノ酸配列を比較するためにALIGN og Align0プログラムを利用する場合、-12/-2のギャップ開始/伸長ペナルティを有するBLOSUM50置換マトリックスが好ましくは使用される。
【0104】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、上述したポリヌクレオチドに関する。ポリヌクレオチドは、DNAヌクレオチド配列又はRNAヌクレオチド配列、例えばゲノムDNA、cDNA、及びRNA配列、二本鎖又は一本鎖のいずれかを含み得る。
【0105】
ポリヌクレオチドは、本発明に係るポリペプチドを発現するように種に対して最適化されることが好ましく、すなわち、ポリヌクレオチド配列はヒトコドン最適化されていることが好ましい。
【0106】
ポリペプチド及び二量体タンパク質
本発明はさらに、上記で定義したポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに関する。ポリペプチドは、本発明に係るワクチンの製造のためにイン・ビトロで発現されてもよく、あるいは、ポリペプチドは、上記で定義したポリヌクレオチドの投与の結果としてイン・ビボで発現されてもよい。
【0107】
二量化ユニットの存在によって、ポリペプチドが発現された際に二量体タンパク質が形成される。二量体タンパク質はホモ二量体、すなわち2本のポリペプチド鎖が同一であり、結果として同一のネオエピトープを含む場合に、ホモ二量体であり得、あるいは、二量体タンパク質は、抗原性ユニットにコードされた2つの異なる単量体ポリペプチドを含むヘテロ二量体であり得る。後者は、ネオエピトープの量が抗原性ユニットの上限サイズを超える場合に関連する可能性がある。しかしながら、二量体タンパク質はホモ二量体タンパク質であることが好ましい。
【0108】
ベクター
さらに、本発明は、上記で定義したヌクレオチド配列を含むベクターに関する。ベクターは、上述した様々なユニット、特に抗原性ユニットの容易な交換を可能にすることが好ましい。特に、発現ベクターは、pUMVC4aベクター又はNTC9385Rベクター骨格であり得る。抗原性ユニットは、5’部位がGLGGL/GLSGLリンカーに組み込まれ、かつ3’部位がベクターの終止コドンの後に含まれる、SfiI制限酵素カセットによって制限された抗原性ユニットカセットと交換され得る。
【0109】
宿主細胞
本発明はまた、上記で定義したヌクレオチド配列を含むか、又は本発明に係るポリペプチドの発現のための上記で定義したベクターを含む、宿主細胞に関する。
【0110】
好適な宿主細胞は、原核生物、酵母、昆虫又は高等真核細胞を含む。
【0111】
ワクチンの調製方法
本発明に係るワクチンは好ましくは、新生抗原が患者の腫瘍において同定され、従って、ワクチンが患者の腫瘍中の特定の突然変異タンパク質に対して正確に指向されるという意味で、個別化されたワクチンである。
【0112】
従って、一態様では、本発明は、ポリペプチドをイン・ビトロで産生することによって、上記で定義した二量体タンパク質、又はポリペプチドの免疫学的有効量を含むワクチンを調製するための方法に関する。ポリペプチド及びタンパク質のイン・ビトロ合成は、当業者に知られている任意の好適な方法によって実施されてもよく、例えば、様々な発現システムのいずれかにおけるペプチド合成又はポリペプチドの発現、続く精製による。従って、一実施形態では、本方法は、以下、
a)上記で定義したポリヌクレオチドを細胞集団にトランスフェクトし;
b)細胞集団を培養し;
c)細胞集団から発現された二量体タンパク質、又はポリペプチドを収集及び精製し、並びに
d)ステップc)の下で得られた二量体タンパク質又はポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを混合し、それによってワクチンを得ること、
を含む。
【0113】
好ましい実施形態では、ステップc)の下で得られた二量体タンパク質又はポリペプチドは、前記薬学的に許容される担体に溶解される。
【0114】
さらに、アジュバント又は緩衝液がワクチンに添加されてもよい。
【0115】
精製は、任意の好適な方法、例えばクロマトグラフィー、遠心分離、又は示差溶解度(differential solubility)に従って行われ得る。
【0116】
別の態様では、本発明は、上記で定義したポリヌクレオチドの免疫学的有効量を含むワクチンの調製方法に関する。一実施形態では、当該方法は、以下、
a.上記で定義したポリヌクレオチドを調製し;
b.ステップa)の下で得られたポリヌクレオチドと薬学的に許容される担体とを混合し、それによってワクチンを得ること、
を含む。
【0117】
ポリヌクレオチドは当業者に知られている任意の好適な方法によって調製され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド合成機を用いた化学合成によって調製され得る。
【0118】
特に、より小さなヌクレオチド配列、例えば標的化ユニット、二量化ユニット及び/又は抗原性ユニットのサブユニットをコードするヌクレオチド配列は、個別に合成され、次いで連結されて、ベクター骨格中に最終的なポリヌクレオチドを生成し得る。
【0119】
個別化されたワクチンの設計のために、ポリヌクレオチドに含まれるべきネオエピトープを同定する方法が、上記方法に先行する。
【0120】
この方法は好ましくは、以下のステップ、
-腫瘍のゲノム、又はエクソームをシークエンシングし、
-前記腫瘍からネオエピトープを含む腫瘍新生抗原を同定し、
-予測された抗原性に基づいてネオエピトープを選択すること、
を含む。
【0121】
腫瘍又は腫瘍の部分は、任意の好適な方法を介することにより、例えば腫瘍の生検を得ることにより、又は腫瘍の切除によるか、あるいは任意の好適な体液、例えば血液試料又は尿試料からのものであってもよい。
【0122】
腫瘍ゲノム又はエクソームのシークエンシング
ゲノム又はエクソーム、すなわちゲノムのコード部分は、任意の好適な方法、例えば全エクソームシークエンシングを用いて配列決定することができる。特にシークエンサーは、Paired-end 2x100-125又はPE100-125(読み取り長)、マルチプレックスを用いるIllumina HiSeq2500)であり得る。
【0123】
腫瘍抗原の同定
腫瘍特異的突然変異が同定されると、次のステップは、ネオエピトープを含む予測される抗原性ペプチドを選択することである。
【0124】
腫瘍突然変異は、腫瘍及び正常組織のシークエンシング、及び得られた配列の比較によって発見される。個体のDNA又はRNAにおける特定の突然変異又は対立遺伝子の存在を検出するために様々な方法が利用可能である。例えば動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、マイクロプレートアレイ対角線ゲル電気泳動(microplate array diagonal gel electrophoresis)(MADGE)、パイロシークエンシング、オリゴヌクレオチド特異的ライゲーション、TaqManシステム、並びに様々なDNA「チップ」技術、例えばAffymetrix SNPチップを含む技法が適用され得る。あるいは、直接タンパク質シークエンシングによって突然変異を同定するための方法が実施され得る。
【0125】
腫瘍エクソームにおける数百又は数千の突然変異のうち、ネオエピトープは、予測的HLA結合アルゴリズムに基づいてイン・シリコ(in silico)で選択される。その目的は、全ての関連するネオエピトープを同定することであり、ランク付け又はスコア付けした後に、問題の特定の患者のためのワクチンに含めるべきネオエピトープを決定する。
【0126】
任意の好適なアルゴリズムが使用されてもよく、例えば以下のうちの1つであり得る:
ペプチド-MHC結合の利用可能なフリーソフトウェア解析(IEDB及びNetMHC)は、以下のウェブサイトからダウンロードすることができる:
http://www.iedb.org/
http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC/
ワクチン設計のための最適なペプチドを予測する市販の高度なソフトウェアは、以下にある:
http://www.oncoimmunity.com/
https://omictools.com/t-cell-epitopes-category
https://github.com/griffithlab/pVAC-Seq
http://crdd.osdd.net/raghava/cancertope/help.php
http://www.epivax.com/tag/neoantigen/
【0127】
各突然変異は、その抗原性に対してスコア付けされ、最も抗原性の高いネオエピトープが選択されて、ポリヌクレオチドに最適に設計される。上述したように、本発明によれば3~50個のネオエピトープが好ましい。
【0128】
ワクチン
次に、最終的なワクチンが、以下のうちの1つを含むように製造される:
-上記で定義したポリヌクレオチド
-上記で定義したポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド
-ポリペプチド鎖を含む二量体タンパク質
【0129】
ワクチンはさらに、薬学的に許容される担体、希釈剤、アジュバント又は緩衝液を含み得る。
【0130】
薬学的に許容される担体、希釈剤、及び緩衝液としては、これらに限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、滅菌等張水性緩衝液、及びそれらの組み合わせ、が挙げられる。
【0131】
特に、ポリペプチド/タンパク質を含むワクチンのための、薬学的に許容されるアジュバントとしては、これらに限定されるものではないが、ポリ-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS 15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact EV1P321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGA微粒子、レシキモド(resiquimod)、SRL172、Virosomes、及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、ベータ-グルカン、Pam3Cys、Aquila's QS21 stimulon、バディメザン(vadimezan)、及び/又は AsA404(DMXAA)が挙げられる。
【0132】
特に、ポリヌクレオチドを含むワクチンのために、担体は、細胞のトランスフェクションを容易にする分子を含んでもよく、アジュバントは、免疫応答を増強するためにケモカイン又はサイトカインをコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドを含み得る。
【0133】
ワクチンは、任意の好適な製剤、例えば皮内又は筋肉内注入のための液体製剤に製剤化される。
【0134】
投与
ワクチンは、ポリペプチド/タンパク質ワクチン又はポリヌクレオチドワクチンのいずれかのための任意の好適な経路で投与することができ、例えば皮内、筋肉内、皮下注入により、又は粘膜若しくは上皮適用、例えば鼻腔内、経口、経腸により、又は膀胱に投与され得る。
【0135】
特に、ワクチンがポリヌクレオチドワクチンである場合、ワクチンは好ましくは筋肉内又は皮内投与される。
【0136】
特定の実施形態では、ワクチンは節内(intranodal)注入によって投与される。本明細書で使用される場合、用語「節内注入(intranodal injection)」は、ワクチンがリンパ節に注入されることを意味する。
【0137】
治療
ポリヌクレオチド、ポリペプチド及び二量体タンパク質は、好ましくは、癌の治療に使用するためのものであり、上述のワクチンに製剤化される。本明細書に記載の方法により、患者の腫瘍に存在する任意の突然変異を検査し、ワクチンを製造し、次いで、彼又は彼女の腫瘍に存在する新生抗原に正確に指向するワクチンで患者を免疫することによって、癌に罹患している患者を治療することが可能である。今日、シークエンシング、エピトープ決定及びヌクレオチド配列の生成のための迅速かつ確実な方法によって、患者は腫瘍切除から12週間以内にワクチンを受けられる可能性が高くなった。
【0138】
癌は、癌細胞が突然変異を含む任意の癌であり得る。癌は、原発腫瘍、転移又はその両方であり得る。突然変異について検査された腫瘍は、原発腫瘍又は転移であり得る。治療されるべき癌は、特に、高い突然変異負荷を有することが知られている癌、例えば黒色腫、肺癌、乳癌、前立腺癌又は結腸癌である。好ましい実施形態では、治療は、上述したポリヌクレオチドを含むワクチンにより行われ、例えばポリヌクレオチドはDNA又はRNAである。
【0139】
ポリヌクレオチドワクチンを筋肉内に、例えば大きな筋肉、例えば肩、臀部又は大腿部に注入することが好ましい。ポリペプチドは局所的に産生され、関連する免疫細胞がポリペプチド/タンパク質を本質的に産生部位で内在化し、実質的にポリペプチド又はタンパク質は血流に達しないことが見出された。
【0140】
ポリヌクレオチドを注入するための任意の好適な方法が使用され、ジェットインジェクターの使用によるか、又はエレクトロポレーションにより補助され得る。
【0141】
投薬計画
ワクチンは、単回投与として投与されてもよく、又は反復されてもよい。ワクチン投与が繰り返される場合、T細胞の枯渇を避けるために少なくとも3週間間隔で投与することが好ましい。
【0142】
従って、一実施形態では、投薬計画は、患者が臨床上の利益を有する限り、0、3、6週目、次いで4週間ごとのワクチン接種であろう。ワクチンは少なくとも1年間投与され得る。
【0143】
ワクチンは免疫学的有効量で投与される。「免疫学的有効量(immunologically effective amount)」とは、腫瘍減少効果を確立するために必要とされるワクチンの量を意味する。最終的には、医師が投与量を決定し、典型的には、DNAワクチンについて0.3~6 mgの範囲、及びポリペプチド/タンパク質ワクチンについては5μg~5 mgの範囲である。
【0144】
組み合わせ治療
本発明に係るワクチン治療は、任意の他の抗癌治療、例えば放射線療法、化学療法、及び外科的治療と組み合わせることができる。
【0145】
本発明に係るワクチン治療はまた、チェックポイント-阻害(checkpoint-blockade)の阻害剤治療と組み合わせてもよい。
【0146】
特定の実施形態
1.治療用抗癌ネオエピトープワクチンであって、以下、
ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列が、以下、
・標的化ユニット
・二量化ユニット
・第1のリンカー、
・抗原性ユニット、
をコードし、ここで、前記抗原性ユニットはn-1個の抗原性サブユニットを含み、各サブユニットは少なくとも癌ネオエピトープ配列の一部分及び第2のリンカーを含み、かつ、前記抗原性ユニットは最終癌ネオエピトープ配列をさらに含み、ここで、nは3~50の整数である、ポリヌクレオチド、あるいは
1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは
1)に定義されたポリヌクレオチドによってコードされる2つのポリペプチドからなる二量体タンパク質、
の免疫学的有効量を含む、治療用抗癌ネオエピトープワクチン。
【0147】
2.抗原性ユニットが、それぞれの癌ネオエピトープの1つのコピーを含む、実施形態1に記載のワクチン。
【0148】
3.抗原性ユニットが、少なくとも1つのネオエピトープの少なくとも2つのコピーを含む、実施形態1に記載のワクチン。
【0149】
4.癌ネオエピトープ配列が、7~30アミノ酸の長さを有する、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0150】
5.癌ネオエピトープ配列が、7~10アミノ酸の長さを有する、実施形態4に記載のワクチン。
【0151】
6.癌ネオエピトープ配列が、13~30アミノ酸の長さを有する、実施形態4に記載のワクチン。
【0152】
7.それぞれの癌ネオエピトープ配列が、同一の長さを有する、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0153】
8.癌ネオエピトープが本質的に、癌ネオエピトープ配列の中央に位置する、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0154】
9.癌ネオエピトープ配列が、癌新生抗原の部分配列である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0155】
10.抗原性サブユニットが、第1のリンカーから、より抗原性の高いものからより抗原性の低いものの順である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0156】
11.最も疎水性の抗原性サブユニット(複数)が実質的に抗原性ユニットの中央であり、かつ最も親水性の抗原性サブユニット(複数)が抗原性ユニットの末端にある、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0157】
12.第2のリンカーが、柔軟性リンカーである、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0158】
13.第2のリンカーが、非免疫原性である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0159】
14.第2のリンカーが、全ての抗原性サブユニットにおいて同一である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0160】
15.第2のリンカーが、セリン-グリシンリンカーである、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0161】
16.第2のリンカーの長さが、4~20アミノ酸である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0162】
17.第2のリンカーの長さが、10アミノ酸である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0163】
18.抗原性ユニットの長さが、約100アミノ酸~約1000アミノ酸である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0164】
19.nが、3~30の整数である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0165】
20.二量化ユニットが、任意により第3のリンカーを介して接続された、ヒンジ領域、及び任意により二量化を促進する別のドメインを含む、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0166】
21.ヒンジ領域がIg由来である、実施形態20に記載のワクチン。
【0167】
22.ヒンジ領域が、1つ又は複数の共有結合を形成する能力を有する、実施形態20から21のいずれか一つに記載のワクチン。
【0168】
23.共有結合が、ジスルフィド架橋である、実施形態22に記載のワクチン。
【0169】
24.二量化を促進する別のドメインが、免疫グロブリンドメイン、好ましくはカルボキシ末端Cドメイン、又は前記Cドメインと実質的に同一である配列、あるいはそれらの変異体である、実施形態20から23のいずれか一つに記載のワクチン。
【0170】
25.カルボキシ末端Cドメインが、IgGに由来する、実施形態24に記載のワクチン。
【0171】
26.二量化ユニットの免疫グロブリンドメインが、ホモ二量体化する能力を有する、実施形態24から25のいずれか一つに記載のワクチン。
【0172】
27.前記免疫グロブリンドメインが、非共有相互作用を介してホモ二量体化する能力を有する、実施形態24から26のいずれか一つに記載のワクチン。
【0173】
28.前記非共有相互作用が、疎水性相互作用である、実施形態27に記載のワクチン。
【0174】
29.前記二量化ユニットが、CH2ドメインを含まない、実施形態20から28のいずれか一つに記載のワクチン。
【0175】
30.二量化ユニットが、前記第3のリンカーを介してヒトIgG3のCH3ドメインに接続されたヒンジエクソンh1及びh4からなる、実施形態20から29のいずれか一つに記載のワクチン。
【0176】
31.二量化ユニットが、配列番号3のアミノ酸配列94~237と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態20から30のいずれか一つに記載のワクチン。
【0177】
32.前記第3のリンカーがG3S2G3SGリンカーである、実施形態30から31のいずれか一つに記載のワクチン。
【0178】
33.前記抗原性ユニット及び二量化ユニットが前記第1のリンカーを介して接続されている、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0179】
34.第1のリンカーが制限部位を含む、実施形態33に記載のワクチン。
【0180】
35.第1のリンカーが、GLGGLリンカー又はGLSGLリンカーである、実施形態33又は34に記載のワクチン。
【0181】
36.標的化ユニットが、CCR1、CCR3及びCCR5から選択されるケモカイン受容体に親和性を有する、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0182】
37.前記標的化ユニットが、配列番号1のアミノ酸配列24~93と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0183】
38.前記標的化ユニットが、配列番号1のアミノ酸配列24~93と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0184】
39.前記ヌクレオチド配列が、シグナルペプチドをさらにコードする、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0185】
40.前記シグナルペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列1~23と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態39に記載のワクチン。
【0186】
41.前記シグナルペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列1~23と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、実施形態39又は40に記載のワクチン。
【0187】
42.前記ペプチド中の前記標的化ユニット、二量化ユニット及び抗原性ユニットが、N末端からC末端に、標的化ユニット、二量化ユニット及び抗原性ユニットの順である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0188】
43.前記ポリヌクレオチド配列が、ヒトコドン最適化されている、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0189】
44.前記ポリヌクレオチド配列が、DNAヌクレオチド配列又はRNAヌクレオチド配列である、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0190】
45.薬学的に許容される担体及び/又はアジュバントをさらに含む、先の実施形態のいずれかに記載のワクチン。
【0191】
46.実施形態1から45のいずれか一つに定義されたポリヌクレオチド。
【0192】
47.実施形態1から45のいずれか一つに定義されたヌクレオチド配列を含むベクター。
【0193】
48.実施形態1から45のいずれか一つに定義されたヌクレオチド配列を含むか、又は実施形態47に定義されたベクターを含む、宿主細胞。
【0194】
49.患者に投与するために製剤化されて、前記患者における二量体タンパク質の産生を誘導する、実施形態46に記載のポリヌクレオチド。
【0195】
50.実施形態1から45のいずれか一つに定義されたヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチド。
【0196】
51.実施形態50によって定義された2つのポリペプチドからなる二量体タンパク質。
【0197】
52.ホモ二量体タンパク質である、実施形態51に記載の二量体タンパク質。
【0198】
53.薬剤としての使用のための、実施形態50に定義されたポリペプチド、実施形態51から52に定義された二量体タンパク質、又は実施形態46に定義されたポリヌクレオチド。
【0199】
54.実施形態50に定義された二量体タンパク質、又は実施形態50に定義されたポリペプチドの免疫学的有効量を含むワクチンを調製するための方法であって、以下、
e)実施形態46に定義されたポリヌクレオチドを細胞集団にトランスフェクトし;
f)細胞集団を培養し;
g)細胞集団から発現した二量体タンパク質、又はポリペプチドを収集及び精製し
h)ステップc)の下で得られた二量体タンパク質又はポリペプチドと薬学的に許容される担体とを混合し、それによってワクチンを得ること、
を含む、方法。
【0200】
55.実施形態46に記載のポリヌクレオチドの免疫学的有効量を含むワクチンを調製するための方法であって、以下、
a.実施形態46に記載のポリヌクレオチドを調製し;
b.ステップa)の下で得られたポリヌクレオチドと薬学的に許容される担体とを混合し、それによってワクチンを得ること、
を含む、方法。
【0201】
56.実施形態55に記載の方法であって、ポリヌクレオチドを調製するステップの前に、以下のステップ:
-腫瘍のエクソームをシークエンシングし、
-前記腫瘍からネオエピトープを含む腫瘍新生抗原を同定し、
-抗原性に基づいてネオエピトープを選択すること、
を含む、方法。
【0202】
57.患者の癌を治療する方法であって、癌の治療を必要とする患者に、実施形態1から45のいずれか一つに定義されたワクチンを投与することを含む、方法。
【0203】
58.ワクチンがポリヌクレオチドを含み、かつ皮内又は筋肉内投与される、実施形態57に記載の方法。
【0204】
59.ポリヌクレオチドがDNAである、実施形態58に記載の方法。
【0205】
60.ポリヌクレオチドがRNAである、実施形態59に記載の方法。
【0206】
61.投与がジェットインジェクターで行われる、実施形態57から60に記載の方法。
【0207】
62.投与がエレクトロポレーションによって補助される、実施形態57から60に記載の方法。
【実施例0208】
実施例
実施例1:ワクチンの構築及び発現
遺伝子配列を以下の構造に従って設計した:
【0209】
【0210】
以前に記載されたマウス黒色腫癌細胞株B16-F10及びマウス結腸癌細胞株CT26のエクソームシークエンシング及びRNAシークエンシングは、数百から数千の腫瘍特異的非同義突然変異を明らかにした(Castleら2012、Castleら2014及びKreiterら2015)。イン・シリコベースの方法を使用して、潜在的な免疫原性ネオエピトープを同定した。マウスを、突然変異エピトープをコードするペプチドで免疫し、それらの免疫原性を特異的T細胞免疫応答として観察した(ELISpotアッセイ)。さらに、ELISpotから選択された最も免疫原性のエピトープによるマウスのワクチン接種は、強い抗腫瘍活性を与えた(Castleら2012及びKreiterら2015)。
【0211】
ネオエピトープの各々は、柔軟性GGGGSリンカーによって分離された27アミノ酸のペプチドである。短いペプチド(<20アミノ酸)がプロセシングされ、新規なエピトープがMHCクラスI分子に提示され、CD8+T細胞を活性化し得る。しかしながら、ワクチンがCD8+及びCD4+T細胞を活性化し、従って長いペプチド(>20アミノ酸)をコードするネオエピトープが選択されることが好ましい。これは、効率的なペプチドプロセシング、並びにMHCクラスI及びII両方に対する提示を可能にし得る(Kreiterら2015)。最初の2つのVB10.NEO-Xコンストラクトでは、選択された疎水性及び親水性ネオエピトープは均一に分布される。27merのネオエピトープ間の中性の柔軟性GGGGSリンカーは、組み合わされたネオエピトープの接合部における新しい免疫原性エピトープの生成を避けるために重要である。
【0212】
B16-F10及びCT26細胞株に見られるネオエピトープの配列を表1及び2に示す。
【0213】
【0214】
実施例2:3又は10個のネオエピトープを含むワクシボディの比較
3個又は10個いずれかのネオエピトープを含むワクシボディワクチンを比較した。10ネオエピトープワクシボディDNAコンストラクトにおいて、3つの最初の(N末端)ペプチドの配置及び順序は、3ネオエピトープワクシボディDNAコンストラクトと同様である。これは、3個を有する文脈とさらに7個のエピトープを含む文脈において、これら3個のネオエピトープの免疫原性の比較を可能にするために行われる。
【0215】
VB4001(VB10.NEO CT26-X)、VB4002(VB10.NEO CT26-III)、VB4003(VB10.NEO B16-X)及びVB4004(VB10.NEO B16-III)をワクチン候補として選択した。ワクシボディの概略図を
図1に示す。
【0216】
ワクチンVB4001-VB4021に使用されたネオエピトープを以下に示す。例えば、VB4015は、3個のネオエピトープ、B16 pepM1+pepM8+pepM3を含み、これらは5アミノ酸リンカーによって分離される。VB4018は、10個のネオエピトープ、B16 pepM1+pepM2+pepM3+pepM4+pepM11+pepM6+pepM7+pepM8+pepM9+pepM10の2つのコピーを含み、これらは5アミノ酸リンカーによって分離される。ネオエピトープ配列は表1及び2に示されている。
【0217】
VB4001 = VB10.NEO CT26-X = CT26 pepM1-M10、5 aa リンカー
VB4002 = VB10.NEO CT26-III = CT26 pepM1-M3、5 aa リンカー
VB4003 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M10、5 aa リンカー
VB4004 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1-M3、5 aa リンカー
VB4011 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M10、10 aa リンカー
VB4012 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1-M3、10 aa リンカー
VB4014 = VB10.NEO B16-X = B16 疎水性コア、(pepM9+pepM5+pepM1+pepM4+pepM6+pepM8+pepM10+pepM3+pepM7+pepM2)、5 aa リンカー
VB4015 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1+M8+M3、5 aa リンカー
VB4016 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1+M3+M2、5 aa リンカー
VB4017 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10、5 aa リンカー
VB4018 = VB10.NEO B16-XX = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10 x 2、5 aa リンカー
VB4019 = VB10.NEO B16-Vx2 = B16 pepM3+M4+M7+M9+M10 x 2、5 aa リンカー
VB4021 = VB10.NEO B16-Vx4 = B16 pepM3+M4+M7+M9-M10 x 4、5 aa リンカー
【0218】
全てのネオエピトープ遺伝子配列をGenescript(New Jersey、US)から注文し、LD78ベータ標的化ユニット及びhIgG3二量化ユニットを有する発現ベクターpUMVC4aにクローニングした。
【0219】
全てのコンストラクトをHEK293細胞にトランスフェクトし、上清中のワクシボディタンパク質をウェスタンブロット及び/又はサンドイッチELISAによって検証した。空のpUMVC4a ベクターを陰性対照として含めた。
図2、左パネル:インタクトなホモ二量体タンパク質の形成を示すために、トランスフェクトした細胞からの上清中のタンパク質を、還元剤の存在下又は非存在下のいずれかで、抗hMIP-1アルファ抗体によるウェスタンブロットで検出した。ホモ二量体の形成は左のレーン(-還元剤)に示され、一方で、単量体は右のレーン(+還元剤)に示される。
図2の右パネルは、hMIP-1アルファ及びhIgG3両方に対する抗体を用いるサンドイッチELISAによって検出された、異なるVB10.NEOコンストラクトでトランスフェクトされたHEK293細胞の上清中のワクシボディタンパク質の発現レベルを示す。右上パネルは、10又は3個のネオエピトープをそれぞれ含むVB10.NEO CT26-X(VB4001)及びVB10.NEO CT26-III(VB4002)コンストラクトの発現レベルを示す。右下パネルは、10又は3個のネオエピトープをそれぞれ含むVB10.NEO B16-X(VB4003)及びVB10.NEO B16-III(VB4004)コンストラクトの発現レベルを示す。3又は10個のネオエピトープを含むワクシボディの免疫原性を比較するために、それぞれのワクシボディ候補の20μgのプラスミドDNAを、C57BI/6-マウス(B16コンストラクトのため)又はBALB/c-マウス(CT26コンストラクトのため)の前脛骨筋(tibial anterior muscle)に筋肉内注入し、TriGrid、Ichor(US)を用いたエレクトロポレーションに続く。13日目に、マウスを安楽死させ、脾臓を採取した。
【0220】
T細胞応答をIFN-ガンマELISpotによって評価した。結果を
図3に示し、ここでは、T細胞応答がIFN-γスポット数/10
6個の脾細胞として示されている。本発明者らは、10個のネオエピトープを含むワクシボディが、同じマウスのネオエピトープに含まれる10個のうち4~6個に対して有意なT細胞応答を誘導することを観察する。最も強いIFN-γ応答を刺激するペプチドは一般に、最良のMHC I結合スコアを有する。
【0221】
3又は10個のネオエピトープを含むワクシボディコンストラクトによって誘導される総新生抗原特異的免疫応答を
図4に示す。10個のネオエピトープを含むワクシボディ(VB10.NEO B16-X及びVB10.NEO CT26-X)は、3個のネオエピトープを含むワクシボディ(VB10.NEO B16-III及びVB10.NEO CT26-III)と比較して、総新生抗原特異的免疫応答の増加をもたらした。
【0222】
実施例3:ワクシボディDNAワクチン及び対応するペプチド+アジュバントワクチンの免疫原性の比較
VB10.NEOコンストラクトをマウスワクチン接種研究に使用する前に、HEK293細胞におけるワクシボディタンパク質発現及び分泌を、
図2に関する文中に先に詳細に説明したように、サンドイッチELISAアッセイを用いて検証する。ネオエピトープの順序は機能的ワクシボディの発現及び分泌に影響を与える可能性がある。
図5の上パネルでは、本発明者らは、VB10.NEO B16-XコンストラクトVB4014が、VB10.NEO B16-XコンストラクトVB4003と比較して、機能的ワクシボディタンパク質の発現及び分泌をわずかに改善したことを観察する。VB4014における10個のネオエピトープは、VB4003に関するものと同様であるが、しかしながらネオエピトープの順序が変更され、かつ最も疎水性のネオエピトープがネオエピトープ抗原モジュールのコアに位置している。ポリ(I:C)アジュバントとの組み合わせで送達されるネオエピトープのみを含むペプチドと比較して、ワクシボディDNAワクチンVB4003及びVB4014の免疫原性を試験するために、C57/Bl6マウスに20μgのVB10.NEO B16-XコンストラクトVB4003及びVB4014を注入した(誘導された免疫応答を、VB4003及びVB4014によってコードされる10個のネオエピトープを含む20μg又は200μgのペプチドミックス+50μgのポリI:Cをs.c.注入されたマウスの免疫応答と比較した。T細胞応答をIFN-ガンマELISpotにより評価した。
図5の下パネルに示された結果は、ワクシボディが明らかに、ペプチド+アジュバントよりもはるかに強い応答を誘導することを示す。また、VB10.NEO B16-X VB4014コンストラクトで免疫された動物のいくつかは、ワクチンに含まれる10個全てのネオエピトープに応答した。
【0223】
実施例4:5又は10アミノ酸の長さを有する第2のリンカーを含むワクシボディの比較
ネオエピトープの各々は第2のリンカーによって分離される。本実施例では、第2のリンカーは柔軟性GGGGSリンカーである。第2のリンカーの長さが発現レベルに影響を及ぼすかを試験するために、HEK293細胞を、5又は10アミノ酸のいずれかの長さを有する第2のリンカーを含むVB10.NEO B16-Xコンストラクトでトランスフェクトした。
図6は、リンカー長を5(VB4003)から10(VB4011)アミノ酸に変更することが、10個のネオエピトープを含むワクシボディの発現に影響を及ぼさないことを示す(
図6、上パネル)。第2のリンカーの長さが免疫応答に影響を及ぼすかを試験するために、C57Bl/6マウスに、5(VB4003)又は10(VB4011)アミノ酸リンカーのいずれかを有する10個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-Xコンストラクトを注入した。13日目に、マウスを屠殺し、脾細胞を採取し、24時間個々の対応するネオエピトープペプチドで刺激し、T細胞応答をIFN-ガンマELISpotアッセイで定量した。結果は
図6の下パネルに示され、10アミノ酸リンカーを含むワクシボディコンストラクト(VB4011)が、5アミノ酸リンカーを含むワクシボディ(VB4003)と比較した場合、総免疫応答の増加をもたらすことを実証する。空ベクターを陰性対照として含めた。
【0224】
実施例5:同一のネオエピトープの異なるコピー数を含むワクシボディの比較
以下のコンストラクトを試験した:
VB4003 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M10、5 aa リンカー
VB4018 = VB10.NEO B16-XX = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10 x 2、5 aa リンカー
【0225】
10個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-X(VB4003)コンストラクトの発現レベルを、2x10個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-XX(VB4018)の発現レベルと比較した。結果は、20個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-XX(VB4018)が、10個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-X(VB4003)と比較してわずかに少なく発現されることを示す(
図7、上パネル)。
【0226】
10又は20個のネオエピトープのいずれかを含むワクシボディの免疫原性を、ワクシボディDNAワクチンVB10.NEO B16-X(VB4003)及びVB10.NEO B16-XX(VB4018)によるC57Bl/6マウスの筋肉内注入によって試験した。13日目に、マウスを屠殺し、脾細胞を採取し、24時間個々の対応するネオエピトープペプチドで刺激し、T細胞応答をIFN-ガンマELISpotアッセイで定量した。結果は
図7の下パネルに示され、ネオエピトープ当たり2つのコピー(2x10個のネオエピトープ)を含むことの利点は、総免疫応答に限られるが、しかしながら、より広範な免疫応答が個々のネオエピトープに対して観察されることを示している。
【0227】
次に、5個の選択されたネオエピトープ、PepM3、PepM4、PepM7、PepM9及びPepM10の1つ又は複数のコピーを含むワクシボディコンストラクトの発現レベルを試験した(
図8、上パネル)。
【0228】
C57Bl/6マウスに以下のワクシボディコンストラクトを注入した:
VB4003 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M10、5 aa リンカー
VB4011 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M10、10 aa リンカー
VB4018 = VB10.NEO B16-XX = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10 x 2、5 aa リンカー
VB4019 = VB10.NEO B16-Vx2 = B16 pepM3+M4+M7+M9+M10 x 2、5 aa リンカー
VB4021 = VB10.NEO B16-Vx4 = B16 pepM3+M4+M7+M9+M10 x 4、5 aa リンカー
【0229】
5個の選択されたネオエピトープのそれぞれについてのワクシボディ候補の免疫応答を、
図8の下パネルに示す。5個のネオエピトープの複数のコピーは、総免疫応答に対して限定された効果を有した。しかしながら、各ネオエピトープのいくつかのコピー(VB4018、VB4019及びVB4021)は、5個のネオエピトープが1回提示されるデカトープ(decatope)VB4003と比較して、5個の共有ネオエピトープに対してより均一な免疫応答を与える。興味深いことに、10アミノ酸の第2のリンカー及び1回のみのネオエピトープを含むワクシボディ(VB4011)は、5個のネオエピトープの複数コピーを含むワクシボディよりも優れた総免疫応答を示した。
【0230】
実施例6:異なるネオエピトープ数を含むワクシボディの比較
異なる数のネオエピトープを含むワクシボディコンストラクトの免疫応答を比較して、さらなるネオエピトープを追加することの免疫学的効果を試験した。
【0231】
総免疫応答を、B16黒色腫マウスモデルで以下のコンストラクトを用いて試験した:
NEO B16-X = VB4011 = B16 pepM1-M10、10 aa リンカー
NEO B16-XV = VB4024 = B16 pepM1-M15、10 aa リンカー
NEO B16-XX = VB4025 = B16 pepM1-M20、10 aa リンカー
ネオエピトープ配列は表2に示されている。
【0232】
3つの試験されたワクシボディコンストラクトの発現レベルを、
図11の上パネルに示す。
【0233】
C57Bl/6マウスに、DNAワクチン候補である15個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-XV(VB4024)又は20個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-XX(VB4025)を注入し、10個のネオエピトープを含むVB10.NEO B16-X(VB4011)と比較した。
図11の下パネルは、10
6個の脾細胞当たりのIFNγ-スポットの総数を示す。15及び20個のネオエピトープを有するコンストラクトは、10個のネオエピトープのみを有するコンストラクトと比較した場合、より多くの個々のネオエピトープに対するより広範な免疫応答、及びより高い総T細胞応答をもたらした。陰性対照として、マウスにネオエピトープを含まない空ベクターを注入した。
図11の下パネルからわかるように、空ベクターによる注入は、個々のネオエピトープに対する有意な免疫応答をもたらさなかった。
【0234】
さらに、総免疫応答を、CT26黒色腫マウスモデルで以下のコンストラクトを用いて試験した。
NEO CT26-X = VB4009 = CT26 pepM1-M10、10 aa リンカー
NEO CT26-XV = VB4026 = CT26 pepM1-M15、10 aa リンカー
NEO CT26-XX = VB4027 = CT26 pepM1-M20、10 aa リンカー
ネオエピトープ配列は表1に示されている。
【0235】
BALB/cマウスに、DNAワクチン候補である15個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-XV(VB4026)又は20個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-XX(VB4027)を注入し、10個のネオエピトープを含むVB10.NEO CT26-X(VB4009)と比較した。
図12の下パネルは、10
6個の脾細胞当たりのIFNγ-スポットの総数を示す。15及び20個のネオエピトープを有するコンストラクトは、10個のネオエピトープのみを有するコンストラクトと比較した場合、より多くの個々のネオエピトープに対するより広範な免疫応答、及びより高い総T細胞応答をもたらした。陰性対照として、マウスにネオエピトープを含まない空ベクターを注入した。
図12の下パネルからわかるように、空ベクターによる注入は、個々のネオエピトープに対する有意な免疫応答をもたらさなかった。
【0236】
実施例7:異なるワクシボディコンストラクトの発現レベルの比較
以下のコンストラクトを試験した:
VB4004 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1-M3、5 aa リンカー
VB4012 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1-M3、10 aa リンカー
VB4015 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1+M8+M3、5 aa リンカー
VB4016 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1+M3+M2、5 aa リンカー
VB4017 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10、5 aa リンカー
VB4018 = VB10.NEO B16-XX = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10 x 2、5 aa リンカー
【0237】
機能的ワクシボディタンパク質の同様の発現及び分泌が、VB10.NEO B16-X(VB4017)及びVB10.NEO B16-XX(VB4018)について観察される(
図9)。
【0238】
VB10.NEO B16-III(VB4004)コンストラクトにおける5 aaリンカーと比較して、3個のネオエピトープがVB10.NEO B16-III(VB4012)コンストラクトにおけるように10 aaリンカーで離間されている場合に、機能的ワクシボディタンパク質の改善された発現及び分泌が観察される(
図10、上パネル)。また、VB4004、VB4015及びVB4016を比較することによって示されるように、3個のネオエピトープの順序を変えることによって(
図10、下パネル)、ワクシボディの発現レベルに影響を与え得る。
【0239】
実施例8:治療効果
VB10.NEOを治療用ワクチン研究のためのワクチン候補として使用した。
【0240】
7.5x10
4個のB16.F10細胞又は1x10
5個のCT26細胞(ATCC)を、C57BI/6マウス又はBALB/cマウスの大腿部領域に注入した。1日後及び8日後に、マウスに20μgのプラスミドDNAでワクチン接種し、エレクトロポレーション、TriGrid、Ichor、USに続く。腫瘍サイズを週に2~3回測定する。
図13は、10個のネオエピトープを含むVB10.NEO DNAワクチン候補が、腫瘍成長を有意に遅延及び減少させることができることを示している。
【0241】
実施例9:治療用DNAワクチン
使用されるべき治療用DNAワクチンは、規制当局のガイドラインに従うプラスミドワクチンのGMP製造、及びDNAワクチンのFill & Finishによって調製され得る。DNAワクチンは生理食塩水溶液、例えば2~6 mg/mlの濃度でのPBSに溶解することによって製剤化され得る。ワクチンは、続くエレクトロポレーションを用いて若しくは用いずに、又は代替的にジェットインジェクターを用いて、皮内又は筋肉内のいずれかで投与することができる。
【0242】
配列
配列番号1
C-Cモチーフケモカイン3様1前駆体、シグナルペプチド及び成熟ペプチド(LD78-ベータ)を含む、aa24~93:
MQVSTAALAVLLCTMALCNQVLSAPLAADTPTACCFSYTSRQIPQNFIADYFETSSQCSKPSVIFLTKRGRQVCADPSEEWVQKYVSDLELSA
【0243】
配列番号2
VB10.NEOコンストラクトの定常コーディング部分のDNA配列
例示の目的のためのみに、コンストラクトの異なるドメインは「I」により分離され、ドメインは以下の順序である:シグナルペプチド | ヒトΜΙΡ-Ια | ヒンジhi | ヒンジh4 I Gly-Serリンカー又はGly-Leuリンカー| hCH3 IgG3 | Gly-Serリンカー又はGly-Leu リンカー|
コンストラクトは、ネオエピトープを挿入するために使用することができる標準的なコンストラクトである。ネオエピトープ配列は、リンカーGGCCTCGGTGGCCTGの後に付加され得る。
ATGCAGGTCTCCACTGCTGCCCTTGCCGTCCTCCTCTGCACCATGGCTCTCTGCAACCAGGTCCTCTCT | GCACCACTT GCTGCTGACACGCCGACCGCCTGCTGCTTCAGCTACACCTCCCGACAGATTCCACAGAATTTCATAGCTGACTACTTTG AGACGAGCAGCCAGTGCTCCAAGCCCAGTGTCATCTTCCTAACCAAGAGAGGCCGGCAGGTCTGTGCTGACCCCAGTGA GGAGTGGGTCCAGAAATACGTCAGTGACCTGGAGCTGAGTGCC | GAGCTCAAAACCCCACTTGGTGACACAACTCACAC A I GAGCCCAAATCTTGTGACACACCTCCCCCGTGCCCAAGGTGCCCA | GGCGGTGGAAGCAGCGGAGGTGGAAGTGGA | GGACAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCT GCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAGCGGGCAGCCGGAGAACAACTACAACAC CACGCCTCCCATGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAG GGGAACATCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCGCTTCACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGG GTAAA I GGCCTCGGTGGCCTG |
【0244】
配列番号3
全てのVB10.NEOタンパク質の定常コーディング部分のアミノ酸配列:B4001
MQVSTAALAVLLCTMALCNQVLS | APLAADTPTACCFSYTSRQIPQNFIAD
YFETSSQCSKPSVIFLTKRGRQVCADPSEEWVQKYVSDLELSA | ELKTPLG
DTTHT I EPKSCDTPPPCPRCP | GGGSSGGGSG | GQPREPQVYTLPPSREEMTK
NQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESSGQPENNYNTTPPMLDSDGSFFLYSKL TVDKSRWQQGNIFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGK | GLGGL |
【0245】
配列番号4
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM1、アミノ酸配列
PSKPSFQEFVDWENVSPELNSTDQPFL
【0246】
配列番号5
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM2、アミノ酸配列
REGVELCPGNKYEMRRHGTTHSLVIHD
【0247】
配列番号6
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM3、アミノ酸配列
SHCHWNDLAVIPAGVVHNWDFEPRKVS
【0248】
配列番号7
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM4、アミノ酸配列
GRGHLLGRLAAIVGKQVLLGRKVVVVR
【0249】
配列番号8
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM5、アミノ酸配列
FRRKAFLHWYTGEAMDEMEFTEAESNM
【0250】
配列番号9
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM6、アミノ酸配列
VVDRNPQFLDPVLAYLMKGLCEKPLAS
【0251】
配列番号10
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM7、アミノ酸配列
SSPDEVALVEGVQSLGFTYLRLKDNYM
【0252】
配列番号11
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM8、アミノ酸配列
EFKHIKAFDRTFANNPGPMVVFATPGM
【0253】
配列番号12
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM9、アミノ酸配列
STANYNTSHLNNDVWQIFENPVDWKEK
【0254】
配列番号13
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM10、アミノ酸配列
DSGSPFPAAVILRDALHMARGLKYLHQ
【0255】
配列番号14
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM1、アミノ酸配列
VILPQAPSGPSYATYLQPAQAQMLTPP
【0256】
配列番号15
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM2、アミノ酸配列
LHSGQNHLKEMAISVLEARACAAAGQS
【0257】
配列番号16
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM3、アミノ酸配列
PLLPFYPPDEALEIGLELNSSALPPTE
【0258】
配列番号17
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM4、アミノ酸配列
AGTQCEYWASRALDSEHSIGSMIQLPQ
【0259】
配列番号18
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM5、アミノ酸配列
AAYKGHHYPGPGNYFWKCLFMSGLSEV
【0260】
配列番号19
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM6、アミノ酸配列
DTLSAMSNPRAMQVLLQIQQGLQTLAT
【0261】
配列番号20
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM7、アミノ酸配列
DKPLRRNNSYTSYIMAICGMPLDSFRA
【0262】
配列番号21
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM8、アミノ酸配列
EVIQTSKYYMRDVIAIESAWLLELAPH
【0263】
配列番号22
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM9、アミノ酸配列
GYISRVTAGKDSYIALVDKNIMGYIAS
【0264】
配列番号23
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM10、アミノ酸配列
EHIHRAGGLFVADAIQVGFGRIGKHFW
【0265】
配列番号24
第1のリンカー、アミノ酸配列:GLSGL
【0266】
配列番号25
第1のリンカー、アミノ酸配列:GLGGL
【0267】
配列番号26
ヒンジ領域(IgG3 UHヒンジ)、12アミノ酸:ELKTPLGDTTHT
【0268】
配列番号27
ヒンジ領域(IgG3、MHヒンジ、15アミノ酸):EPKSCDTPPPCPRCP
【0269】
配列番号28
Gly-Serリンカー:GGGSSGGGSG
【0270】
配列番号29
hCH3 IgG3、アミノ酸配列:
GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESSGQPENNYNTTPPMLDSDGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NIFSCSVM H EALH N RFTQKSLSLSPGK
【0271】
配列番号30
VB4001 = VB10.NEO CT26-X = CT26 pepM1-M10、5 aa リンカーのアミノ酸配列
ネオエピトープ配列は、GGGSSGGGSGの後に挿入される。
【0272】
【0273】
配列番号31
VB4002 VB10.NEO CT26-III = CT26 pepM1-M3、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0274】
【0275】
配列番号32
VB4003 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M10、5 aa リンカー(VB10.Neo-10B)のアミノ酸配列
【0276】
【0277】
配列番号33
VB4004 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1-M3、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0278】
【0279】
配列番号34
シグナルペプチド
MNFGLRLIFLVLTLKGVQC
【0280】
配列番号35
シグナルペプチド
MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP
【0281】
配列番号36
B16-F10突然変異エピトープ、B16-pepM11、アミノ酸配列
ANFESGKHKYRQTAMFTATMPPAVERL
【0282】
配列番号37
VB4011 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M10、10 aa リンカーのアミノ酸配列
【0283】
【0284】
配列番号38
VB4012 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1-M3、10 aa リンカーのアミノ酸配列
【0285】
【0286】
配列番号39
VB4014 = VB10.NEO B16-X = B16 疎水性コア、(pepM9+M5+M1+M4+M6+M8+M10+M3+M7+M2)、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0287】
【0288】
配列番号40
VB4015 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1-M8-M3、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0289】
【0290】
配列番号41
VB4016 = VB10.NEO B16-III = B16 pepM1-M3-M2、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0291】
【0292】
配列番号42
VB4017 = VB10.NEO B16-X = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0293】
【0294】
配列番号43
VB4018 = VB10.NEO B16-XX = B16 pepM1-M4+M11+M6-M10 x 2、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0295】
【0296】
配列番号44
VB4019 = VB10.NEO B16-Vx2 = B16 pepM3-M4-M7-M9-M10 x 2、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0297】
【0298】
配列番号45
VB4021 = VB10.NEO B16-Vx4 = B16 pepM3-M4-M7-M9-M10 x 4、5 aa リンカーのアミノ酸配列
【0299】
【0300】
配列番号46
VB4024 = VB10.NEO B16-XV = B16 pepM1-M15、10 aa リンカーのアミノ酸配列
【0301】
【0302】
配列番号47
VB4025 = VB10.NEO B16-XX = B16 pepM1-M20、10 aa リンカーのアミノ酸配列
【0303】
【0304】
配列番号48
VB4026 = VB10.NEO CT26-XV = CT26 pepM1-M15、10 aa リンカーのアミノ酸配列
【0305】
【0306】
配列番号49
VB4027 = VB10.NEO CT26-XX = CT26 pepM1-M20、10 aa リンカーのアミノ酸配列
【0307】
【0308】
配列番号50
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM11、アミノ酸配列
QAIVRGCSMPGPWRSGRLLVSRRWSVE
【0309】
配列番号51
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM12、アミノ酸配列
DGQLELLAQGALDNALSSMGALHALRP
【0310】
配列番号52
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM13、アミノ酸配列
SHDSRKSTSFMSVNPSKEIKIVSAVRR
【0311】
配列番号53
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM14、アミノ酸配列
HTPSSYIETLPKAIKRRINALKQLQVR
【0312】
配列番号54
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM15、アミノ酸配列
MKAFIFKYSAKTGFTKLIDASRVSETE
【0313】
配列番号55
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM16、アミノ酸配列
EGDPCLRSSDCIDEFCCARHFWTKICK
【0314】
配列番号56
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM17、アミノ酸配列
WKGGPVKIDPLALMQAIERYLVVRGYG
【0315】
配列番号57
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM18、アミノ酸配列
VTSIPSVSNALNWKEFSFIQSTLGYVA
【0316】
配列番号58
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM19、アミノ酸配列
YRGANLHLEETLAGFWARLLERLFKQL
【0317】
配列番号59
CT26突然変異エピトープ、CT26-PepM20、アミノ酸配列
KTTLSHTQDSSQSLQSSSDSSKSSRCS
【0318】
配列番号60
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM12、アミノ酸配列
NHSGLVTFQAFIDVMSRETTDTDTADQ
【0319】
配列番号61
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM13、アミノ酸配列
CGTAFFINFIAIYHHASRAIPFGTMVA
【0320】
配列番号62
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM14、アミノ酸配列
FVVKAYLPVNESFAFTADLRSNTGGQA
【0321】
配列番号63
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM15、アミノ酸配列
TPPPEEAMPFEFNGPAQGDHSQPPLQV
【0322】
配列番号64
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM16、アミノ酸配列
PKPDFSQLQRNILPSNPRVTRFHINWD
【0323】
配列番号65
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM17、アミノ酸配列
IPSGTTILNCFHDVLSGKLSGGSPGVP
【0324】
配列番号66
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM18、アミノ酸配列
GFSQPLRRLVLHVVSAAQAERLARAEE
【0325】
配列番号67
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM19、アミノ酸配列
ECRITSNFVIPSEYWVEEKEEKQKLIQ
【0326】
配列番号68
B16-F10突然変異エピトープ、B16-PepM20、アミノ酸配列
NIEGIDKLTQLKKPFLVNNKINKIENI
【0327】
配列番号69.リンカー:GGGSS
配列番号70.リンカー:GGGSG
配列番号71.リンカー:GGGGS
配列番号72.リンカー:LGGGS
配列番号73.リンカー:GLGGS
配列番号74.リンカー:GGLGS
配列番号75.リンカー:GGGLS
配列番号76.リンカー:GGGGL
配列番号77.リンカー:LGGSG
配列番号78.リンカー:GLGSG
配列番号79.リンカー:GGLSG
配列番号80.リンカー:GGGLG
配列番号81.リンカー:GGGSL
配列番号82.リンカー:LGGSS
配列番号83.リンカー:GLGSS
配列番号84.リンカー:GGLSS
配列番号85.リンカー:GGGLS
配列番号86.リンカー:GGGSL
配列番号87.リンカー:LGLGS
配列番号88.リンカー:GLGLS
配列番号89.リンカー:GLLGS
配列番号90.リンカー:LGGLS
配列番号91.リンカー:GLGGL
配列番号92.リンカー:LGLSG
配列番号93.リンカー:GLLSG
配列番号94.リンカー:GGLSL
配列番号95.リンカー:GGLLG
配列番号96.リンカー:GLGSL
配列番号97.リンカー:LGLSS
配列番号98.リンカー:GLGLS
配列番号99.リンカー:GGLLS
配列番号100.リンカー:GLGSL
配列番号101.リンカー:GLGSL
配列番号102.リンカー:LGGGSGGGGS
配列番号103.リンカー:GLGGSGGGGS
配列番号104.リンカー:GGLGSGGGGS
配列番号105.リンカー:GGGLSGGGGS
配列番号106.リンカー:GGGGLGGGGS
配列番号107.リンカー:LGGSGGGGSG
配列番号108.リンカー:GLGSGGGGSG
配列番号109.リンカー:GGLSGGGGSG
配列番号110.リンカー:GGGLGGGGSG
配列番号111.リンカー:GGGSLGGGSG
配列番号112.リンカー:GGGSLGGGSG
配列番号113.リンカー:GLGSSGGGSS
配列番号114.リンカー:GGLSSGGGSS
配列番号115.リンカー:GGGLSGGGSS
配列番号116.リンカー:GGGSLGGGSS
配列番号117.リンカー:LGGGSLGGGS
配列番号118.リンカー:GLGGSGLGGS
配列番号119.リンカー:GGLGSGGLGS
配列番号120.リンカー:GGGLSGGGLS
配列番号121.リンカー:GGGGLGGGGL
配列番号122.リンカー:LGGSGLGGSG
配列番号123.リンカー:GLGSGGLGSG
配列番号124.リンカー:GGLSGGGLSG
配列番号125.リンカー:GGGLGGGGLG
配列番号126.リンカー:GGGSLGGGSL
配列番号127.リンカー:LGGSSLGGSS
配列番号128.リンカー:GLGSSGLGSS
配列番号129.リンカー:GGLSSGGLSS
配列番号130.リンカー:GGGLSGGGLS
配列番号131.リンカー:GGGSLGGGSL
前記抗原性サブユニットが、前記第1のリンカーから前記最終癌ネオエピトープ配列に向かう方向に、より抗原性の高いものからより抗原性の低いものの順で配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載のワクチン。
最も疎水性の抗原性サブユニット(複数)が実質的に前記抗原性ユニットの中央であり、かつ、最も親水性の抗原性サブユニット(複数)が前記抗原性ユニットの末端にある、請求項1から8のいずれか一項に記載のワクチン。
前記二量化ユニットが、配列番号3のアミノ酸配列94~237と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のワクチン。
前記標的化ユニットが、CCR1、CCR3及びCCR5から選択されるケモカイン受容体に対する親和性を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のワクチン。
前記標的化ユニットが、配列番号1のアミノ酸配列24~93と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のワクチン。