(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174993
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】抜き出し可能なスライドレール
(51)【国際特許分類】
A47B 88/57 20170101AFI20221117BHJP
【FI】
A47B88/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081088
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津村 優
【テーマコード(参考)】
3B160
【Fターム(参考)】
3B160AA01
3B160AB32
3B160AB48
3B160AB53
3B160EA03
3B160EA13
3B160EA33
3B160EA37
3B160EA52
3B160EA55
3B160EB76
3B160EB82
(57)【要約】
【課題】本発明は、誤操作をし難く、破損も少なく、左右の勝手方向が発生しない抜き出し可能なスライドレールを提供することを課題とする。
【解決手段】
固定側レールと、ボ-ルリテーナを介して固定側レールに支持される移動側レールと、固定側レールより移動側レールを抜き出し可能とする抜け止め解除用レバー等から成るスライドレールであって、抜け止め解除用レバーは、ストッパーと操作部を有し、ストッパーはボールリテーナ側のストッパー突き部と当接し移動側レールの移動を停止させ、抜け止め解除用レバーは、左右方向に回動可能に設置され、抜け止め解除用レバーの左右のいずれの方向の回動においても、ストッパーとストッパー突き部の当接が外れるようにし、操作部を移動側レールの両側面側に突出するように固定側レールに回動自在に設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材に連結される固定側レールと、ボールを回転自在に保持するボ-ルリテーナを介して固定側レールに対して引き出し可能に支持される移動側レールと、固定側レールより移動側レールを抜き出し可能とする抜け止め解除用レバー等から成る抜き出し可能なスライドレールであって、移動側レールに連結された移動側部材が固定側部材に収納された状態であっても、移動側部材が固定側部材から最大引き出された状態であっても、固定側レールは、移動側部材によって隠蔽される長さに設定され、移動側レールが移動側部材と共に固定側レールから抜き出されたとき、抜け止め解除用レバーが、固定側レールの先端側で、固定側レールと共に固定部材側に残るスライドレールにおいて、抜け止め解除用レバーは、少なくともストッパー部と操作部を有し、ストッパー部はボールリテーナに設けられたストッパー突き部と当接し移動側レールの移動を停止させるもので、抜け止め解除用レバーは、スライドレールの摺動方向に対して直行方向である左右方向に回動可能に設置され、抜け止め解除用レバーの該回動により、ストッパー部とストッパー突き部の当接が外れるとともに、抜け止め解除用レバーの左右のいずれの方向の回動においても、ストッパー部とストッパー突き部の当接が外れ、操作部は、移動側レールの両側面側に突出するように固定側レールに回動自在に設けられていることを特徴とする抜き出し可能なスライドレール。
【請求項2】
操作部は、回動軸部を有する抜け止め解除用レバーの基体に一体的に連結され、基体は抜け止め解除用レバーの作動において弾性変形を必要としない剛性体であることを特徴とする請求項1に記載の抜き出し可能なスライドレール。
【請求項3】
抜け止め解除用レバーを合成樹脂で一体的に形成するとともに、抜け止め解除用レバーの回転軸部周辺とストッパー部にかけて、一体的な金属製の補強片を装着し基体を補強すること特徴とする請求項1、あるいは、請求項2に記載の抜き出し可能なスライドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽斗、機器類等が本体より最も引き出された状態で一旦停止し、必要に応じて簡単な操作で、抽斗、機器類等(移動側レール)を本体(固定側レール)から抜き出すことが出来ると共に、その装着が容易な抜き出し可能なスライドレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固定側部材に連結される固定側レールと、ボ-ルリテーナを介して固定側レールに対して引き出し可能に支持される移動側レールと、固定側レールより移動側レールを抜き出し可能とする抜け止め解除用レバー等からなる抜き出し可能なスライドレールにおいて、移動側部材が固定側部材から最大引き出された状態であっても、固定側レールは、移動側部材によって隠蔽される長さに設定されて、移動側レールが移動側部材と共に固定側レールから抜き出されたとき、抜け止め解除用レバーが、固定側レールの先端側で、固定側レールと共に固定部材側に残るスライドレールが本願の出願人によって提供されている。(特許文献1参照)
【0003】
特許文献1には、抜け止め解除用レバーとして、取り付け用基板51と、弾性変移部52と、操作部61、ストッパー63が設けられた変移ストッパー部6とで構成されるものが実施例として段落0030に記載されている。
そして、特許文献1の段落0040の記載のとおり、操作部61を引き出し方向で内側に押しやることにより移動側レール2を固定側レール1より抜き出すものである。
【0004】
そして、弾性変移部52は積極的に弾性変形を促すため、剛性を確保することが難しく、段落0039に記載のように、ボールリテーナー3のストッパー突き部313が、抜け止め解除用レバーのストッパー63に当接することにより、移動側レールの抜け止め機能が作用するが、ストッパー63に衝撃が加わると弾性変移部52が破損しやすいといった問題があった。
特に、弾性変移部52の剛性が高すぎると、操作部の操作が重たくなり、剛性を弱めると破損することとなり弾性変移部52の剛性の設定が難しかった。
また、操作部は通常、移動部材により隠れているため、操作者が、操作部を引き出し方向の内側に押しやるだけでなく、誤って反対方向の引き込み方向の外側に押しやってしまうことがある。
作業者が引き込み方向の外側に押しやり、移動側レール2が外れる状態にあると誤認識して移動側レール2を引っ張ると、ストッパー突き部313とストッパー63当接した状態であるから、弾性変移部52が伸ばされるように無理な負荷がかかり破損してしまうといった問題がある。
このように、特許文献1の実施例のような形態では、通常の使用では問題が起こらないが、通常の使用外の使用において破損しやすいといった問題がある。
さらに、このようなスライドレールは、通常2本一組として一対で使用されるが、特許文献1の実施例のように、操作部61が固定側レール1の一側面側のみに配置されている場合、スライドレールを右用、左用の2種類を用意する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、簡単な構成で、誤操作をし難く、破損も少なく、左右の勝手方向が発生しない抜き出し可能なスライドレールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
固定側部材に連結される固定側レールと、ボールを回転自在に保持するボ-ルリテーナを介して固定側レールに対して引き出し可能に支持される移動側レールと、固定側レールより移動側レールを抜き出し可能とする抜け止め解除用レバー等から成る抜き出し可能なスライドレールであって、移動側レールに連結された移動側部材が固定側部材に収納された状態であっても、移動側部材が固定側部材から最大引き出された状態であっても、固定側レールは、移動側部材によって隠蔽される長さに設定され、移動側レールが移動側部材と共に固定側レールから抜き出されたとき、抜け止め解除用レバーが、固定側レールの先端側で、固定側レールと共に固定部材側に残るスライドレールにおいて、抜け止め解除用レバーは、少なくともストッパー部と操作部を有し、ストッパー部はボールリテーナに設けられたストッパー突き部と当接し移動側レールの移動を停止させるもので、抜け止め解除用レバーは、スライドレールの摺動方向に対して直行方向である左右方向に回動可能に設置され、抜け止め解除用レバーの該回動により、ストッパー部とストッパー突き部の当接が外れるとともに、抜け止め解除用レバーの左右のいずれの方向の回動においても、ストッパー部とストッパー突き部の当接が外れ、操作部は、移動側レールの両側面側に突出するように固定側レールに回動自在に設けられる構成とする。
【0008】
操作部は、回動軸部を有する抜け止め解除用レバーの基体に一体的に連結され、基体は抜け止め解除用レバーの作動において弾性変形を必要としない剛性体で構成する。
【0009】
抜け止め解除用レバーを合成樹脂で一体的に形成するとともに、抜け止め解除用レバーの回転軸部周辺とストッパー部にかけて、一体的な金属製の補強片を装着し基体を補強する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
抜け止め解除用レバーの左右のいずれの方向の回動においても、ストッパーとストッパー突き部の当接が外れるものであるから、操作部を、引いても、押しても、ストッパーを解除することが可能であり、操作性が良く、誤操作を軽減できる。また、操作部は、移動側レールの両側面側に突出するように固定側レールに回動自在に設けられているから、右用、左用ともに同じスライドレールを使用することできるので、スライドレールの生産、管理が容易である。
【0011】
操作部は、回動軸部を有する抜け止め解除用レバーの基体に一体的に連結され、基体は弾性変形を必要としない剛性体であるから、ストッパー機能の解除にあたり基体の弾性変形に頼る必要がないため、弾性変移部の剛性の設定が必要なくスライドレールの使用状況に合わせての設計が容易であるばかりか、抜け止め解除用レバーの不用意な破損を軽減できる。
【0012】
抜け止め解除用レバーは、合成樹脂で一体的に形成するとともに、回転軸部周辺とストッパー部にかけて、一体的な金属製の補強片を装着し基体を補強されているので、抜け止め解除用レバーが容易に破損しないため、抜け止め解除用レバーを金属製の成型品を用いることなく合成樹脂で成型できることから、製造コスト、生産性が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のスライドレールの最収納状態の斜視図
【
図2】本発明のスライドレールの移動側レールの引き出し状態の斜視図
【
図5】本発明のスライドレールの下面側からの分解斜視図
【
図8】補強片が装着された抜け止め解除用レバーの斜視図
【
図9】ストッパー機能が働いた状態を説明する概略平面図
【
図10】ストッパー機能を解除した状態を説明する概略平面
図1
【
図11】ストッパー機能を解除した状態を説明する概略平面
図2
【
図12】移動側レールを装着する時のストッパー機能を説明する概略平面
図1
【
図13】移動側レールを装着する時のストッパー機能を説明する概略平面
図2
【
図14】移動側レールを装着する時のストッパー機能を説明する概略平面
図3
【
図15】本発明のスライドレールを固定側部材、移動側部材に装着した状態の斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
操作性に優れ、破損の少ないストッパー装置を備えた抜き出し可能なスライドレールを実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例のスライドレールの基本的構成を
図1~
図5、
図15に基づいて説明する。
スライドレール100は、家具等の本体の固定側部材Eの上面に連結ネジ等で連結される固定側レール取り付け基台10の上面に固着された固定側レール1と、固定側レール1に対し、ボールリテーナ3に回転自在に保持された複数個のボール30・・・を介して摺動自在に設けられた移動側部材Fと連結される移動側レール2と、固定側(固定側レール1及び固定側レール取り付け基台10)の先端部に設けられた抜け止め解除用レバー5より構成されている。
以下、
図1における左側斜め下方向を引き出し側(先端側)、右側斜め上方向を収納側(後端側)、引き出し側、収納側への移動をスライド方向、
図4における上下方向の上側、下側を同じく上側、下側、左右方向の左側、右側は、
図4が収納側から見た図であるため、引き出し側から見た状態を正として、
図4の左側を右側、
図4の右側を左側として説明する。
【0016】
固定側レール1は、固定側レール取り付け基台10とほぼ同等の長さで、金属製の細長条板の短手両端部(左右両端部)を外向き円弧状に折り曲げて形成された外面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する左右折曲縁11、11と、基板12より断面略上向きC字形に形成されている。
そして、移動側レール2が収納状態に移動する時、ボール30・・・がスリップしてもボールリテーナ3を所定位置まで強制的に移動させるためのリテーナ移動用突部121と、抜け止め解除用レバー5を取り付けるためのレバー連結孔122(
図5)が基板12の所定位置に設けられている。
【0017】
固定側レール1が固着されている固定側レール取り付け基台10は、固定側レール1の基板12が固着される、基板12とほぼ同長の上面板101と、上面板101の左右端部を前後方向に所定間隔を有して下方に折り曲げられた略L字形の連結用脚部102・・・と、連結用脚部102・・・間で、移動側レール2の左右端部側に、上面板101から上方に突出する左右の変形防止突片103・・・より形成されている。
【0018】
そして、上面板101には固定側レール1のレバー連結孔122に対応してレバー取り付け孔104が形成され、連結用脚部102・・・には固定側部材Eに連結するための固定側レール取り付け孔106・・・が形成されている。
尚、左右の変形防止突片103は、不測の力よって移動側レール2が変形し、固定側レール1から移動側レール2が脱落する(例えば、移動側レール2が最も引き出された際に、先端部分に不用意に重量物が載置され、移動側レール2の後端部が浮き上がるとき、移動側レール2の左右端部が広がる)のを防止するため設けられたものである。
【0019】
移動側レール2は、実施例では固定側レール1の約5倍弱の長さで、金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて形成された内面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する左右折曲縁21、21と、基板22より固定側レール1に対向する断面略下向きC字形に形成されている。
【0020】
そして、基板22の引き出し側端部には、前記固定側レール1方向に突出し、移動側レール2が収納方向に最も移動した状態(移動側レール2の収納状態。
図1に示す状態。)
で、抜け止め解除用レバー5の先端部分に衝突して、移動側レール2の摺動が停止するレール収納時ストッパー220が形成され、基板22の収納側端部には前記固定側レール1方向に突出し、移動側レール2が引き出し方向に最も移動した状態(移動側レール2の引き出し状態。
図2に示す状態。)で、ボールリテーナ3の後端部が当接し、ボールリテー3の停止と共に移動側レール2の摺動が停止するレール引き出し時ストッパー221が形成されている。
図5に示す222はスライド規制部材で、板バネで形成されており、スライドレールを組み立てた状態で、ボールリテーナ3の基板31の上面に接触し、ボールリテーナ3のスライド速度を規制するとともに、スライドレールのスライドの重さを調整している。
スライド規制部材222を設置すると、スライドは重くなるため、過度にスライドすることを規制することができる。
【0021】
ボールリテーナ3は帯条金属板にて移動側レール2より所定寸法短くした、固定側レール1と移動側レール2間に挿入可能な大きさの基板31と、固定側レール1と固定側レール2の各左右折曲縁11、11、21、21間に位置する左右突出縁32、32より断面下向き略コ字形に形成され、左右突出縁32、32の長手方向(摺動方向)数個所でボール30・・・を回転自在に保持している。
【0022】
そして、基板31の先端部側には前記固定側レール1のリテーナ移動用突部121に対応してリテーナ強制移動突起311が形成され、基板31の後端部には移動側レール2の引き出し時ストッパー221に対応して、リテーナ引き出し時ストッパー312が形成され、移動側レール2が最も引き出された時に、リテーナ出し時ストッパー312に移動側レール2の引き出し時ストッパー221が当接すると、同時に抜け止め解除用レバー5の一部に当接し、移動側レール2の摺動を停止させるストッパー突部313が、基板31の後端部寄りに形成されている。
ストッパー突部313は、左右突出縁32、32間の略中央に形成され、スライド方向に細長く形成され、長尺側の一側面が、収納側に向かって先細り状に形成され、収納側端部に案内円弧部314が形成されるものである。
ここまでがスライドレールの構成であって、該スライドレールに抜け止め解除用レバー5が装着されてスライドレール100となる。
【0023】
抜け止め解除用レバー5は、
図3に示すように固定側レール1の基板12の裏面側(実施例では、固定側レール取り付け基台10の上面板101の下面)に連結される基体51と基体51の引き出し側に連設された操作部52、52と、操作部52、52間に設けられたストッパー部53と、ストッパー部53の対向面側に設けられた振れ止め54と、基体51の両側面部外側に形成されるレバー位置保持部材55、55が合成樹脂材にて一体に成形されている。
【0024】
基体51は、スライド方向に長い略長方形であって。上下面の面積が広い面として板状に形成され、基体51の収納側に上下方向に貫通する回転孔511が設けられており、基体51は、容易に弾性変形しないように厚みと幅が設定され剛性を保つように設定されている。
そして、レバー位置保持部材55は、基体51の収納側端部の左右両側面からそれぞれ外側に向かって設けられており、該基体51の側面に連接され、該側面から外側に突出する連結部551と、連結部551から基体51の側面とほぼ平行かつ離間して引き出し側に延伸する弾性変形部552と、弾性変形部552の延伸端に形成されるガイド体553からなる。
操作部52は、基体51の引き出し側端部の左右両側面からそれぞれ外側に向かって突出して設けられており、操作部52は、スライドレールに設置された状態で、移動側レール2の左右折曲縁21、21より左右方向の外側に突出する長さに設定されている。
そして、それぞれの操作部52の収納側面には、基体51との連結部から操作部52の左右方向の中間部に向かって、引き出し側に傾斜する傾斜面が設けられており、該傾斜面は、後述する抜け止め解除用レバー5の回転時に所定の回転量で停止させる回転ストッパー面521とされる。
【0025】
ストッパー部53は、操作部52、52間であって基体51の上面に設けられるものであり、基体51の上方に突出して形成されている。
そして、ストッパー部53はスライドレールに設置された状態で、ボールリテーナ3の基板31に近接する位置まで突出するように設定されている。
ストッパー部53には、収納側に、スライド方向に直行する平面のストッパー面531が形成され、左右側面は、ストッパー面531の左右両端から引き出し方向に向かって傾斜しており、
前記ストッパー突部313の収納側に向かって先細り状の側面と同じ側(左側)の一側面が中心から外側に向かって傾斜した側面傾斜面532を形成し、他方側面(右側)が外側から中心向かってに傾斜した側面傾斜案内面533を形成し、平面視で略平行四辺形形状に形成されている。
そして、ストッパー面531は、基体51の短尺方向の中心に配置され、スライドレールに組み込まれた状態で、ストッパー突部313の引き出し側の面と正対する位置とされている。
【0026】
振れ止め54は、基体51からストッパー部53と反対方向に突出しており、スライドレールに設置された状態で、連結用脚部102の突出高さより若干低い高さになるように設定されており、基体51が下方に変形した場合、振れ止めの突出端面(実施例の下側の面)が、連結用脚部102が固定されている固定側部材Eの表面に接触し、基体51の変形を防止するものである。
また、後述するストッパー突部313とストッパー部53が接触し、移動側スライドレール2の抜け止めを行うストッパーとなるが、振れ止め54によって基体51の変形を防止できるから、移動側レール2に不測の引き出し力が付加され、ストッパー部53にボールリテーナ3のストッパー突部313が衝突したとき、下面が固定側部材Eの上面に当接して、ストッパー突部313がストッパー部53を乗り越えるのを防止することができる。
【0027】
そして、基材51の上面には、回転孔511の周辺からストッパー面53にかけて凹状の溝部56が設けられ、該溝に前記補強片6が装着される。
補強片6は、平板鋼板をプレス成型し製作される金属製であって、平面視雫状を成す補強基板61と、補強基板61の雫状の細くなった個所から上方に折り曲げられたストッパー補強部62と、更にストッパー補強部62の上端で補強基板61と反対側に向かって水平状に小さく折り曲げられた補強基板63と、補強基板63の先端で下方に折り曲げられた係合片64からなり、補強基板61には上下方向に貫通する回転孔611が設けられている。
【0028】
溝部56は、平面視で補強片6の補強基板61に対応して雫状に形成された回転孔周辺溝561と、回転孔周辺溝561に連接しストッパー補強62に対応しストッパー面531に設けられるストッパー面溝562と、補強片63に対応しストッパー部53の上面に設けられるストッパー溝563と、ストッパー溝563で係合片64に対応し下方に向かって設けられる係合穴564で形成される。
このように形成された溝部56に、補強片6が溝部56に勘合するようにはめ込まれる。
この時、係合片64は、係合孔564に差し込まれ、補強片63は、ストッパー面531と略面一となるようになり、また、基体51の回転孔511と補強片6の回転孔611は、中心が揃うように設定されている。
該補強片によって、回転孔511周辺からストッパー面531が金属片である補強片6で補強されるので、抜け止め解除用レバー5が、後述するストッパー面とストッパー突部との接触によって破損することを防止することができる。
【0029】
このように補強片6が装着された抜け止め解除用レバー5は、固定側レール1の基板12と固着される固定側レール取り付け基台10の裏面(
図4の下側の面)から固定軸4によって回動自在に取り付けられる。
尚、固定軸4は、金属製で、回転孔511、611に内包される太さで円柱状の回転軸41と、回転軸41の下面(
図4の下側の面)に設けられ、回転孔の直径より大きい円盤状のフランジ部42と、回転軸41の上面に設けられ回転軸の直径より小さい直径で円柱状のカシメ部とが一体的に構成されたものである。
【0030】
次に抜け止め解除用レバー5の装着方法を説明する。
抜け止め解除用レバー5のガイド体553、553の両外側面を若干弾性変形させながら、ストッパー部53側(補強片6が装着された側)を上面にして、固定側レール取り付け基台10の裏面に下面から引き出し側端部の連結用脚部102、102の鉛直面の内面にガイド体553、553を当接させて、固定側レール取り付け基台10に設けられたレバー取り付け孔106の中心と、回転孔511の中心を合わせる。
そして、下方から回転孔511に、固定軸4をカシメ部43側から挿入し、カシメ部43を、回転孔511上方のレバー取り付け孔106に挿入する。
固定側レール取り付け基台10と固着されている固定側レール1の基板12にも、レバー取り付け孔106に対応してレバー連結孔122が設けられ、レバー連結孔122はレバー取り付け孔106よりも大径に形成されているから、カシメ部43の先端はレバー連結孔122から臨んだ状態となる。
そして、レバー連結孔122から臨んだカシメ部43をカシメ機で突くと、カシメ部が開き、レバー連結孔122に固定される。
フランジ42が、回転孔511の周辺の基体51を支持するから、抜け止め解除用レバー5は、外れることなく回転軸41を中心軸として回動可能に固定側レール取り付け基台10に装着される。
【0031】
この状態で、抜け止め解除用レバー5は、固定側レール取り付け基台10の引き出し側端面から操作部52、52と、操作部52、52間のストッパー部53が突出している。
また、抜け止め解除用レバー5は、ストッパー部53を除き左右対称に形成されており、回転軸41は、上面板101の左右の中心部分に配置されている。
そして、レバー位置保持部材55、55は、連結用脚部102、102の鉛直面の内面より左右幅より若干広く設定されており、弾性変形部552、552が多少弾性変形し、ガイド体553、553が連結用脚部102、102の内面に入るように設定されているから、抜け止め解除用レバー5の左右対称の中心線と、スライドレールの左右対称の中心線が一致する待機位置で、抜け止め解除用レバー5は、レバー位置保持部材55、55の弾性変形力で保持される。
【0032】
該待機位置から操作部52を引き出し側に引く、もしくは、収納側に押すと、抜け止め解除用レバー5は、前述のとおり回動するが、この時、ガイド体553、553が連結用脚部102、102の鉛直面の内面に当接しているから、回転方向側の弾性変形部552を弾性変形させながら回動する。
そして、回転方向側の操作部52の回転ストッパー面521が、連結用脚部102の引き出し側端面に当接し、抜け止め解除用レバー5が回動できなくなる。
この状態から、操作部52の操作をやめると、弾性変形している弾性変形部552が元の状態に復元するので、抜け止め解除用レバー5は待機位置に復旧する。
このように、レバー位置保持部材55、55は抜け止め解除用レバー5の位置を維持するバネの役割を有している。また、連結用脚部102、102の鉛直面の内面を利用して弾性変形部552を弾性変形させているから、構造が簡単で部品点数が少なく、組み立て、製造管理が容易になる。
【0033】
次に、スライドレール100の組み立て方法を説明する。
移動側レール1に、ボール30・・・が組み付けられたボールリテーナ3を装着し、移動側レール1内を、左右折曲縁11、11でボールが転動しながらボールリテーナ3がスライドする状態にする。
この時、ボールリテーナ3のストッパー突部313が、移動側レール2の収納端側、リテーナ強制移動突起311が、移動側レール2の引き出し端側になるように装着される。
【0034】
そして、抜け止め解除用レバー5が連結され固定側レール1に固着された固定側レール取り付け基台10が固定側部材Eにネジ留め連結され、ボールリテーナ3が装着された移動側レール2は、移動側部材Fにネジ留め連結される。
【0035】
次に、操作部52、52が突出している固定側レール1の引き出し側端部より、移動側レール2の収納側端部を挿入していく。この時、移動側レール2の左右折曲縁21、21を、両外側から、固定側レール取り付け基台10の変形防止突片103、103が抱え込むようにかつ接触しないで覆う状態となり、前述のとおり固定側レール1から移動側レール2が脱落することを防止できる。
そして、固定側レール1を、引き出し側端部から、ボールリテーナ3の対向するボール30、30間に挿入していくことにより、固定側レール1は、ボールリテーナ3内をスライドすることが可能となる。
【0036】
この過程において、固定側レール1がボールリテーナ3内をスライド可能となる前に、固定側レ-ル1(抜け止め解除用レバー5)の側面傾斜案内面533が、ボールリテーナ3のストッパー突部313の案内円弧部314に接触する。
さらに移動側レール2を押し込むと、傾斜面を形成している側面傾斜案内面533が案内円弧部314の円弧部に沿って移動するので、側面傾斜案内面533が左側(
図13における上方向)に押しやられ、抜け止め解除用レバー5を回動させながら、移動側レール2が移動する。
そして、側面傾斜案内面533がストッパー突部313の引き出し側端部を超えると同時に弾性変形部552の復元力によって、抜け止め解除用レバー5が待機位置に戻りストッパー部53がストッパー突部313の移動線上に位置となる。
尚、なんらかの要因で、右側(
図13の下方向)に抜け止め解除用レバー5が回動したとしても、後述するとおり、抜け止め解除用レバー5は、操作部52を押しても引いても作動可能であるから、ストッパー突部313によって側面傾斜面532が右側(
図13における下方向)に押しやられストッパー突部313を回避できる。
【0037】
この状態で、固定側レール1は、ボールリテーナ3内をスライドすることが可能となる。
さらに移動側レール2をスライドさせると、リテーナ移動用突部121がリテーナ強制移動突起311に接触し、ボールリテーナ3は該接触位置から移動できずに移動側レール2のみが、スライドする。そして、ストッパー部53の引き出し側端面が、移動側レール2の引き出し側端部に設けられた収納時ストッパー220に接触して、スライドは停止し、スライドレール100は、最も収納された状態となる。
【0038】
最も収納された状態で、操作部52、52は、固定側レール1の引き出し側の外部に位置して、かつ、それぞれが左右側方に突出し、移動側レール2の左右折曲縁21の外側で、移動側レール3に連結される移動側部材Fの下面下方から操作可能な位置で、且つ、移動側部材Fに上方から隠蔽された状態となっている。
【0039】
ストッパー装置は、抜け止め解除用レバー5のストッパー部53とボールリテーナ3のストッパー突部313にて形成されるもので、ストッパー機能の動作について説明する。
スライドレールが最も収納された状態から、移動側部材Fを引き出していくと、移動側部材Fに連結された移動側レール2は引き出し方向にスライドし、同時にボールリテーナ3も移動側レールの移動距離の2分の1移動し、やがて、移動側レールのレール引き出し時ストッパー221、221が、リテーナ引き出し時ストッパー312、312に当接すると同時に、ボールリテーナ3のストッパー突部313が抜け止め解除用レバー5のストッパー部53のストッパー面531(ストッパー補強部62)に当接して、移動側レール2とボールリテーナ3(移動側部材F)のスライド(引き出し移動)が停止する(
図9の状態)。このようにストッパー装置は機能している。
【0040】
この停止状態で、固定側レール1(固定側レール取り付け基台10)、抜け止め解除用レバー5は移動側部材Fの収納側左右端部下面に位置し、移動側部材Fによって隠蔽された状態となっている。
そして、移動側部材Fを固定側部材Eより抜き出すときは、移動側部材Fの収納側左右端部の下面側より指先で、抜け止め解除用レバー5の操作部52、52のいずれかの先端側を、引き出し方向に引くか、収納方向に押すと、抜け止め解除用レバー5が回動し、ストッパー面531がストッパー突部313の移動線上から退避するので、抜け止めストッパー機能は解除される(
図10、
図11に示す状態)。
そして、この状態を維持しながら、移動側部材F(移動側レール2、ボールリテーナ3)を固定側部材E(固定側レール1、固定側レール取り付け基台10)より抜き出すことが可能となる。
【0041】
このように、抜け止め解除用レバー5は、左右のどちらの操作部52を引き出し方向に引いても、収納方向に押しても抜け止めストッパー機能の解除が可能であるから、スライドレール100は右用・左用の二種類を用意する必要がなく、同じものを2本用意するだけでよいので、生産の管理面・在庫の管理面などが容易となる。また、操作部52を引き出し方向に引いても、収納方向に押してもいいので、抜け止め解除用レバー5を誤った方向に押す、引くといったことがなくなり、誤操作を防止でき、誤操作による破損を防止できる。
【0042】
そして、前述のストッパー突部313がストッパー面531に当接し、移動側レール2とボールリテーナ3(移動側部材F)の摺動(引き出し移動)は停止する点において、本実施例の場合、ストッパー面531は、補強片6のストッパー補強部62により補強されており、ストッパー突部313は、金属部品であるストッパー面531のストッパー補強部62に当接することになるから、合成樹脂製のストッパー部53の破損を防止することが可能となる。
特に、移動側レール2が勢いよく収納されると、ストッパー突部313との接触によりストッパー部53に衝撃が加わるから、金属部品である補強片6は、ストッパー部53の破損防止に有効である。
さらに、基体51は、合成樹脂製であるが、通常使用時には弾性変形を有しないように剛性を高めて設定されているが、該衝撃力が加わった場合、合成樹脂製であるため、破損することもありうるため、補強片6によって、基体51の回転孔511からストッパー部53に架けて補強されているから、基体51の破損を防止することが可能である。