(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174994
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】コンクリート締固め方法、コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め装置用針アタッチメント
(51)【国際特許分類】
E04G 21/08 20060101AFI20221117BHJP
B28B 11/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
E04G21/08
B28B11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081089
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 三馨
(72)【発明者】
【氏名】伊東 稔明
(72)【発明者】
【氏名】木ノ村 幸士
(72)【発明者】
【氏名】張 文博
【テーマコード(参考)】
2E172
4G055
【Fターム(参考)】
2E172AA07
2E172FA09
2E172FA14
2E172FA21
4G055AA01
4G055AC01
4G055AC09
4G055BA01
(57)【要約】
【課題】作業効率の大幅な低下を招くことなく、力学的特性を向上させることができるコンクリート締固め方法、コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め装置用針アタッチメントを提供する。
【解決手段】本発明は、セメント系材料により積層体を製造する製造工程S1と、前記積層体の層間の面に直交する方向から前記積層体に複数の針を挿入する針挿入工程S2と、前記複数の針を前記積層体に挿入した状態で前記複数の針に振動を加える振動工程S3とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系材料により積層体を製造する製造工程と、
前記積層体の層間の面に直交する方向から前記積層体に複数の針を挿入する針挿入工程と、
前記複数の針を前記積層体に挿入した状態で前記複数の針に振動を加える振動工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート締固め方法。
【請求項2】
前記製造工程において、材料押出方式の付加製造装置を用いて前記積層体を製造することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート締固め方法。
【請求項3】
前記複数の針における針と針との間隔Dおよび前記セメント系材料の押出し幅WがD<Wであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート締固め方法。
【請求項4】
前記振動工程における振動が鉛直方向の振動であり、当該振動は、最大加速度90~139m/s2、振動幅0.2~0.4mm、周波数80~120Hz、10~30秒間の条件で行われることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のコンクリート締固め方法。
【請求項5】
セメント系材料で製造された積層体を締固めるコンクリート締固め装置であって、
振動を発生させる振動機と、
一方の面で前記振動機に固定される固定板と、
前記固定板の他方の面に固定された複数の針と、
を備えることを特徴とするコンクリート締固め装置。
【請求項6】
前記固定板は、前記振動機と対向する前記一方の面に磁石が固定されており、
前記振動機と前記固定板との固定が、前記磁石によってなされることを特徴とする請求項5に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項7】
前記振動機で発生させる振動が鉛直方向の振動であり、当該振動は、最大加速度90~139m/s2、振動幅0.2~0.4mm、周波数80~120Hz、10~30秒間の条件で行われることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項8】
前記複数の針における針と針との間隔Dおよび前記セメント系材料の押出し幅WがD<Wであることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項9】
セメント系材料で製造された積層体を締固めるコンクリート締固め装置に取り付けて使用される針アタッチメントであって、
前記コンクリート締固め装置が備える振動機に一方の面が固定される固定板と、
前記固定板の他方の面に固定された複数の針と、
を備えることを特徴とするコンクリート締固め装置用針アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタにより製造したセメント系の積層体の締固めを行うコンクリート締固め方法、コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め装置に用いられる針アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設分野においても、セメント系材料を対象とした3Dプリンティング技術の開発が進められている。当該3Dプリンティング技術の一つに、高チクソトロピー性を有するセメント系材料を吐出して積層させる形式の建設用コンクリート3Dプリンタ(以下、建設3Dプリンタ)がある。建設3Dプリンタには、時間短縮、コスト削減、省力化、省人化、24時間施工、危険作業の無人化による安全性向上などの様々な利点が見込まれるため、その研究は益々盛んに行われている。ここで、建設3Dプリンタによる積層体の問題として、層間に生じるコールドジョイントのような不連続層の存在と、層間に生じる粗大な空隙の存在と、それらによる強度低下が挙げられる。
【0003】
この問題に対し、非特許文献1には、層間に金属繊維を埋設し、不連続層による強度低下の抑制を図る旨記載されている。しかし、非特許文献1の結論に記載されているように、金属繊維の挿入が適切に行われない場合には、金属繊維の周囲に空隙を生じさせる場合があるため、力学的特性の低下につながる恐れがあった。
また、前記問題に対し、特許文献1には、セメント系材料を積層することにより積層構造を製造する方法であって、セメント系材料の凝結時間を遅らせる凝結遅延性能を有する凝結遅延剤を層間に設ける工程を有することを特徴とする積層構造の製造方法が記載されている。しかし、当該技術を材料押出(ME)方式の付加製造装置(建設3Dプリンタ)に適用した場合、当該建設3Dプリンタは連続的にノズルから押し出される材料を一旦停止し、凝結遅延剤を噴霧等する必要がある。そのため、作業効率が大幅に低下する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】宮田賢優、西脇智哉、古江翔子、深津志向、「建設用コンクリート3Dプリンターによる積層構造体の層間補強に関する基礎的研究」、コンクリート工学年次論文集、2020年、Vol.42、No.1、pp.1888~1893.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、作業効率の大幅な低下を招くことなく、力学的特性を向上させることができるコンクリート締固め方法、コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め装置用針アタッチメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を有する。
本発明は、セメント系材料により積層体を製造する製造工程と、前記積層体の層間の面に直交する方向から前記積層体に複数の針を挿入する針挿入工程と、前記複数の針を前記積層体に挿入した状態で前記複数の針に振動を加える振動工程と、を含むこととした。
また、本発明は、セメント系材料で製造された積層体を締固めるコンクリート締固め装置であって、振動を発生させる振動機と、一方の面で前記振動機に固定される固定板と、前記固定板の他方の面に固定された複数の針と、を備えることとした。
また、本発明は、セメント系材料で製造された積層体を締固めるコンクリート締固め装置に取り付けて使用される針アタッチメントであって、前記コンクリート締固め装置が備える振動機に一方の面が固定される固定板と、前記固定板の他方の面に固定された複数の針と、を備えることとした。
【0008】
本発明のコンクリート締固め方法、コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め装置用針アタッチメントは、セメント系材料の積層体に対して、積層体の積層間の面に直交する方向から針を挿入し、当該複数の針を振動させることができる。これにより、積層体の層間の少なくとも一部に互いの層間が一体化してなる部分が生じると考えられる。また、針の挿入に伴って互いに接する一方の界面の一部が他方の界面の一部にくい込んでスパイク機能が発揮されると考えられる。これらのうちの少なくとも一方の効果が得られることにより、セメント系材料の積層体の力学的特性、例えば、割裂引張強度が向上すると考えられる。また、複数の針が、積層体の積層間の面に直交する方向から挿入されるので、挿入時に空気を巻き込み難く、積層体中に空隙ができ難い。さらに、複数の針を振動させるので、積層体中の空気を追い出すことができ、これにより、密度を向上させることができると考えられる。従って、これらの効果によっても、セメント系材料の積層体の力学的特性が向上すると考えられる。さらに、製造工程で製造される積層体はセメント系材料を複数層積層するものであり、針挿入工程や振動工程は針アタッチメントが当該複数層積層されてなる積層体を処理するから、一層ごとに凝結遅延剤を層間に設ける場合や層間に金属繊維を埋設する場合と比較して、作業効率の低下を招き難い。
【0009】
前記製造工程においては、材料押出方式の付加製造装置を用いて前記積層体を製造することが好ましい。このようにすると、積層体を好適に製造できる。
前記複数の針における針と針との間隔Dおよび前記セメント系材料の押出し幅WがD<Wであることが好ましい。このようにすると、ノズルから押し出されたセメント系材料で形成された積層体の層間に確実に振動を加えることができる。よって、前記したセメント系材料の積層体の力学的特性が向上するという効果を確実に得ることができる。
【0010】
前記振動工程における振動または前記振動機で発生させる振動が鉛直方向の振動であり、当該振動は、最大加速度90~139m/s2、振動幅0.2~0.4mm、周波数80~120Hz、10~30秒間の条件で行われることが好ましい。ここで、本明細書における「鉛直方向」とは、建設3Dプリンタにより、ベースとなる地面や壁面などから離れる方向に積層数が増える積層体を形成する場合において、当該ベースに対して垂直な方向をいう。なお、本明細書における「水平方向」とは、建設3Dプリンタにより、ベースとなる地面や壁面などから離れる方向に積層数が増える積層体を形成する場合において、当該ベースと平行な方向をいう。前記した条件で振動を行うと、鉛直方向の振動が、当該鉛直方向の振動に対して垂直な方向の層間に作用して当該層間の一体性が向上するため、確実に積層体の力学的特性を向上させることができる。
前記固定板は、前記振動機と対向する前記一方の面に磁石が固定されており、前記振動機と前記固定板との固定が、前記磁石によってなされることが好ましい。このようにすると、振動機と固定板とを好適にかつ着脱自在に固定できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンクリート締固め方法、コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め装置用針アタッチメントは、作業効率の大幅な低下を招くことなく、力学的特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート締固め方法の内容を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート締固め装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコンクリート締固め装置の構成を示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るコンクリート締固め装置の構成を示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るコンクリート締固め装置の構成を示す側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る針アタッチメントを固定板の一方の面から見た斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る針アタッチメントを固定板の他方の面から見た斜視図である。
【
図8】第1試験における針の挿入および振動の態様を説明する概要図である。
【
図9】第1試験の割裂引張強度試験におけるコア供試体の配置と押圧力の印加方向との関係を示す概要図である。
【
図10】実施例1~4、比較例1、2および参照例1に係る積層体の割裂引張強度(N/mm
2)を示すグラフである。
【
図11】第2試験で作製した供試材の一部を上方かつ斜め方向から見た斜視図である。
【
図12】第2試験で作製した供試材を側方かつ斜め方向から見た斜視図である。
【
図13】第2試験の割裂引張強度試験におけるコア供試体の配置と押圧力の印加方向との関係を示す概要図である。
【
図14】コア供試体の抜き出し方向が上抜きである参照例2、比較例3および実施例5、6に係る積層体の割裂引張強度の平均値(N/mm
2)を示すグラフである。
【
図15】コア供試体の抜き出し方向が横抜きである参照例3、比較例4および実施例7、8に係る積層体の割裂引張強度の平均値(N/mm
2)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照して本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の名称、符号で表し、重複する説明は省略する場合がある。
【0014】
[コンクリート締固め方法]
はじめに、
図1を参照して、本発明に係るコンクリート締固め方法(以下、単に「本方法」ということがある)の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート締固め方法の内容を示すフローチャートである。
図1に示すように、本方法は、製造工程S1と、針挿入工程S2と、振動工程S3とを含んでいる。
【0015】
(製造工程S1)
製造工程S1は、セメント系材料により積層体を製造する工程である。セメント系材料とは、石灰を主成分とし、水と反応して硬化する土木建築用の無機質接合剤をいう。セメント系材料としてはコンクリートが挙げられる。コンクリートとは、一般的に、セメント、細骨材(例、砂)、粗骨材(例、砂利)に水を混合したものをいい、必要に応じて各種の混和材料を混和させることができる。本実施形態においては、混和材料を混和させるなどしてチクソトロピー性を高めた建設3Dプリンタ用のセメント系材料(コンクリート)を用いることが好ましい。ここで、チクソトロピー性は、水セメント比を調節して高めることもできる。なお、本実施形態で用いることのできるセメント系材料は前記したものに限定されず、例えば、高チクソトロピー性を有するセメントペースト、モルタルなどを用いることができる。ここで、セメントペーストとは、セメントと水とを練り混ぜたものをいう。モルタルとは、セメントと細骨材とを水で練り混ぜたものをいう。セメントペーストおよびモルタルには、各種の混和材料を混和することができる。セメント系材料には、任意の繊維を添加することができる。繊維は、例えば、長さ15mmで直径0.3mmのビニロン繊維などを用いることができるが、これに限定されない。繊維の添加量は、例えば、2.5vol%などとすることができるが、これに限定されない。
【0016】
なお、製造工程S1において、積層体は、材料押出方式の付加製造装置、つまり、前記した建設3Dプリンタを用いて製造することが好ましい。このようにすると、積層体を好適に製造できる。建設3Dプリンタは、所定の開口幅を有するノズルを備えており、当該ノズルからセメント系材料を吐出する。
【0017】
(針挿入工程S2)
針挿入工程S2は、製造工程S1で製造した積層体の層間の面に直交する方向から、積層体に複数の針を挿入する工程である。針挿入工程S2では、セメント系材料の積層体に対して積層体の積層間の面に直交する方向から針を挿入する(つまり、例えば、積層間の面に対して直角に針を挿入する)ので、針の挿入時に空気を巻き込み難い。また、針の挿入に伴って互いに接する一方の界面の一部が他方の界面の一部にくい込んでスパイク機能が発揮されると考えられる。これにより、セメント系材料の積層体の力学的特性が向上すると考えられる。力学的特性としては、例えば、割裂引張強度が挙げられる。本実施形態において、針とは、細骨材の粒径(5mm)以下の金属製の棒状体であり、例えば、直径0.5~4mm、好ましくは直径1~2mmの金属製の棒状体をいう。針の長さは任意に設定可能であるが、例えば、5~20cm、好ましくは5~15cm、より好ましくは6~10cmであり、実施例では7cmとした。
【0018】
複数の針における針と針との間隔Dおよびセメント系材料の押出し幅WがD<Wであることが好ましい。このようにすると、ノズルから押し出されたセメント系材料で形成された積層体の層間に確実に振動を加えることができる。よって、前記したセメント系材料の積層体の力学的特性が向上するという効果を確実に得ることができる。
なお、前記した間隔Dおよび押出し幅Wは、D:Wを1:1~2とすることもできる。このようにしても、ノズルから押し出されたセメント系材料で形成された積層体の層間に確実に振動を加えることができる。よって、前記したセメント系材料の積層体の力学的特性が向上するという効果を確実に得ることができる。
【0019】
針と針との間隔Dは、例えば、25mmや50mmなどとすることができるが、これに限定されない。なお、この例の場合、前記比などの条件を反映して、針と針との間隔Dを25mm、セメント系材料の押出し幅Wを25~50mmとすることができる。また、針と針との間隔Dを50mm、セメント系材料の押出し幅Wを50~100mmとすることができる。前記した比などの条件は一態様に過ぎないので、それ以外の態様とすることも可能である。例えば、針と針との間隔Dを50mmとした場合にセメント系材料の押出し幅Wを100mm超などとすることも可能である。
積層体への複数の針の挿入および振動の印加は、コンクリート締固め装置で行うことができる。当該装置については後述する。
【0020】
(振動工程S3)
振動工程S3は、針挿入工程S2で積層体に挿入した複数の針を積層体に挿入した状態で複数の針に振動を加える工程である。振動を加えることにより、積層体の層間の少なくとも一部に(例えば、層間を貫く針の周囲に)互いの層間が一体化してなる部分が生じると考えられる。これにより、セメント系材料の積層体の力学的特性が向上すると考えられる。また、複数の針を振動させるので、積層体中の空気を追い出すことができ、これにより、密度を向上させることができると考えられる。
振動工程S3は、針挿入工程S2と同時に行ってもよい。つまり、針を振動させながら積層体に針を挿入させてもよい。また、針を振動させながら積層体から針を引き抜いてもよい。これらによれば、針の挿入時および引き抜き時に空隙が生じるのを防止することができる。
【0021】
振動工程S3における振動は鉛直方向であり、例えば、最大加速度90~139m/s2、振動幅0.2~0.4mm、周波数80~120Hzの振動を10~30秒間の条件で行うことが好ましい。このようにすると、振動の条件が適切であるので、鉛直方向の振動が、当該鉛直方向の振動に対して垂直な方向の層間に作用して当該層間の一体性が向上するため、確実に積層体の力学的特性を向上させることができる。なお、最大加速度は、例えば、99m/s2や111m/s2や133m/s2などとすることができる。振動幅は、例えば、0.3mmなどとすることができる。周波数は、例えば、100Hzなどとすることができる。振動時間は、例えば、20秒間などとすることができる。
【0022】
また、振動工程S3における振動は水平方向とすることもできる。この場合の振動条件も上記と同様とすることができる。このようにすると、水平方向の振動が、当該水平方向の振動に対して垂直な方向の層間に作用して当該層間の一体性が向上するため、積層体の力学的特性を向上させることができる。なお、水平方向の振動は、振動による作用をより確実に層間に及ぼすため、ノズルから押し出されたセメント系材料の幅方向に対して平行な方向に振動するように設定することが好ましい。
【0023】
針挿入工程S2および振動工程S3は、製造工程S1で所定の積層数を積層させるごとに行うことができる。積層数は、層の厚さと針の長さとにより適宜設定することができる。例えば、針の長さが7cmで一層の厚さが1cmの場合、製造工程S1で5層形成するごとに針挿入工程S2および振動工程S3を1セットで行うとよい。このようにすると、複数層単位で針挿入工程S2および振動工程S3を行うことができるため、作業効率の作業効率の低下を招き難い。なお、この場合、針が固定されている固定板と積層体の上面との間に厚さ1cmのスペースを確保しつつ、最下層から針の先端が1cm突出させることができる。従って、積層数が多い積層体であっても、前回の製造工程S1~振動工程S3で形成された積層体の上面と、今回の製造工程S1で積層された積層体の下面とに対して針の挿入と振動とを行うことができる。これにより、これらの層間の一部を一体化させたり、スパイク機能を発揮させたりすることができるので、積層体の力学的特性を向上させることができる。なお、針が固定されている固定板と積層体の上面との間に厚さ1cmのスペースが確保されており、これらが接触しないので、積層体の表面が荒れることもない。針は、その長さを長くするほど積層数を多くすることができ、作業効率が向上する。
【0024】
[コンクリート締固め装置]
次に、
図2~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係るコンクリート締固め装置(以下、単に「本装置」ということがある)1について説明する。
図2は、本装置1の構成を示す斜視図である。
図3は、本装置1の構成を示す平面図である。
図4は、本装置1の構成を示す正面図である。
図5は、本装置1の構成を示す側面図である。
【0025】
本装置1は、セメント系材料で製造された積層体LPを締固める装置である。本装置1は、強度試験の供試体を締め固める装置として使用できる。
図2~
図5に示すように、本装置1は、振動を発生させる振動機2と、一方の面で振動機2に固定される板状の固定板3と、固定板3の他方の面に固定された複数の針4とを備えている。本装置1は架台5を備えている。架台5は、4本の柱と、これらの柱の上部に設けられた4本の横架材と、これらの柱の下部において互いに対向するように設けられた2本の横架材とで形成されている。架台5は移動機構51を有している。移動機構51は、高さ方向(Z方向)移動機構52および平面方向(Y方向)移動機構53のうちの少なくとも一方を備えている。なお、
図2~5では、高さ方向移動機構52および平面方向移動機構53の両方を備えている様子を図示している。図示はしないが、架台5は、積層体LPの形状に応じて適宜設定すればよい。例えば、平面方向移動機構53は、Y方向およびX方向の両方向に移動可能なものであってもよい。また、架台5は、コンクリートを積層するノズルの架台であってもよい。
【0026】
振動機2は移動機構51に固定されており、高さ方向移動機構52および平面方向移動機構53により、本装置1における高さ方向(Z方向)および平面方向(Y方向)に、振動機2を自在に移動させることができる。
本装置1の場合、平面方向移動機構53によって振動機2を移動させることにより、締固めの対象物である積層体LPの所定の位置の上に複数の針4を配置することができる。そして、高さ方向移動機構52により振動機2およびこれに固定された複数の針4を下方に移動させ、積層体LPの層間の面に直交するようにして、積層体LPに複数の針4を挿入することができる。その後、振動機2を稼働させることにより、複数の針4を積層体LPに挿入した状態で複数の針4に振動を加えることができる。振動を加え終わったら、本装置1は、高さ方向移動機構52により振動機2およびこれに固定された複数の針4を上方に移動させて、積層体LPから複数の針4を引き抜く。
【0027】
振動機2で発生させる振動は鉛直方向の振動であり、当該振動を、例えば、最大加速度90~139m/s2、振動幅0.2~0.4mm、周波数80~120Hz、10~30秒間の条件で発生させることができるものであれば、どのようなものも使用できる。なお、振動機2は前記したものに限定されず、セメント系材料(例えば、コンクリート)の力学的特性を向上させることができるものであれば、どのようなものも使用できる。
【0028】
本装置1においては、複数の針4における針4と針4との間隔Dおよびセメント系材料の押出し幅WがD<Wであることが好ましい。このようにすると、ノズルから押し出されたセメント系材料で形成された積層体LPの層間に確実に振動を加えることができる。よって、前記したセメント系材料の積層体LPの力学的特性が向上するという効果を確実に得ることができる。
なお、前記した間隔Dおよび押出し幅Wは、D:Wを1:1~2とすることもできる。このようにしても、ノズルから押し出されたセメント系材料で形成された積層体LPの層間に確実に振動を加えることができる。よって、前記したセメント系材料の積層体LPの力学的特性が向上するという効果を確実に得ることができる。
【0029】
なお、押出し幅Wは、建設3Dプリンタのノズルの吐出口と同じ寸法であるが、ノズルからのセメント系材料の押出し圧力・流量やセメント系材料の物性などによって増減する場合がある。前記したように、針4と針4との間隔Dは、例えば、25mmや50mmなどとすることができる。なお、この例の場合、前記比などの条件を反映して、針4と針4との間隔Dを25mm、セメント系材料の押出し幅Wを25~50mmとすることができる。また、針4と針4との間隔Dを50mm、セメント系材料の押出し幅Wを50~100mmとすることができる。前記した比などの条件は一態様に過ぎないので、それ以外の態様とすることも可能である。例えば、針4と針4との間隔Dを50mmとした場合にセメント系材料の押出し幅Wを100mm超などとすることも可能である。
複数の針4の本数は、例えば、16本などとすることができるが、これに限定されることなく、任意に設定できる。
固定板3への複数の針4の固定は、例えば、固定板3に設けられた針固定用の穴に針4を挿入してかしめることにより行うことができる。
【0030】
また、固定板3と振動機2との固定は、固定板3の一方の面に磁石6(
図6参照)を固定しておき、当該磁石6の磁力による吸着力を利用して行うことができる。この場合における磁石6の磁力の吸着力は、例えば、784N(80kgf)などとすることができる。このようにすると、前記した条件の振動を加えた場合であっても固定板3および複数の針4を脱落等させることなく、好適に振動を積層体LPに伝えることができる。なお、固定板3と振動機2との固定はこれに限定されず、例えば、結束バンドなどを使用して、または併用して固定することもできる。針4の材質としては、例えば、JIS G 4403:2015に規定の高速度工具鋼鋼材、具体的には、SKH51などが挙げられる。また、固定板3の材質としては、例えば、JIS H 4000:2014に規定のアルミニウム合金板、具体的には、A2017などが挙げられる。なお、針4および固定板3の材質はそれぞれ前記したものに限定されない。
【0031】
[針アタッチメント]
次に、
図6および
図7を参照して、本発明に係るコンクリート締固め装置用針アタッチメント(以下、単に「針アタッチメント」ということがある)Aの一実施形態について説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る針アタッチメントAを固定板3の一方の面3aから見た斜視図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る針アタッチメントAを固定板3の他方の面3bから見た斜視図である。
本実施形態に係る針アタッチメントAは、前述したコンクリート締固め装置(本装置1)に取り付けて使用される。具体的には、本装置1の振動機2に取り付けて使用される。
【0032】
図6に示すように、針アタッチメントAは板状の固定板3を備えている。固定板3の一方の面3aには前記した磁石6が固定されており、これによって針アタッチメントAは振動機2に着脱自在に取り付けることができる。なお、図示はしないが、振動機2にはこの磁石6と対向する位置に磁石6が吸着し得る鉄製の部材または磁石6と吸着し合う磁石が設けられている。これにより、針アタッチメントAと振動機2とは強固かつ正確に固定できる。
【0033】
また、
図7に示すように、針アタッチメントAはこの固定板3の他方の面3bに複数の針4が固定されている。前記した磁石6は、固定板3の他方の面3bから磁石固定ねじ6aによって固定されている。磁石6をこのようにして固定すると、振動機2による振動でねじが緩み、磁石6や磁石固定ねじ6aが脱落するのを防ぐことができる。
なお、針アタッチメントAは、他の手段により振動機2に着脱自在に取り付けることができるのであれば、磁石6や磁石固定ねじ6aを備えていなくてもよい。
【0034】
以上に説明した本方法、本装置1および針アタッチメントAは、セメント系材料の積層体LPに対して、積層体LPの積層間の面に直交する方向から針4を挿入し、当該複数の針4を振動させることができる。これにより、積層体LPの層間の少なくとも一部に互いの層間が一体化してなる部分が生じる(一体性が改善される)と考えられる。また、針4の挿入に伴って互いに接する一方の界面の一部が他方の界面の一部にくい込んでスパイク機能が発揮されると考えられる。これらのうちの少なくとも一方の効果が得られることにより、セメント系材料の積層体LPの力学的特性、例えば、割裂引張強度が向上すると考えられる。本方法、本装置1および針アタッチメントAは、複数層形成した後に、積層体LPに対して針4を挿入し、振動を加えることができるので、一層ごとに凝結遅延剤を層間に設ける場合や層間に金属繊維を埋設する場合と比較して、作業効率の低下を招き難い。また、本装置1および針アタッチメントAは、層間に金属繊維を埋設しないので、金属繊維の埋設時に空気を巻き込むことがなく、強度が低下し難い。
【実施例0035】
次に、実施例および比較例により、本発明に係るコンクリート締固め方法、コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め装置用針アタッチメントについて具体的に説明する。
【0036】
〔1〕第1試験
第1試験は、上層および下層の2層でなる供試材に対して針の挿入と振動とを行う場合について検討した。
第1試験で使用する供試材は、表1に示す配合の建設3Dプリンタ用セメント系材料を使用して作製した。なお、表1において、Pは結合材を示している。当該結合材は、初期の反応性を高めた速硬性を有するセメントである。Wは水を示している。S1およびS2は細骨材を示している。具体的には、S1は砕砂を示し、S2は微粉末を示し、Vは分離低減剤を示している。砕砂(S1)の最大粒径は2mm、微粉末(S2)は比表面積が8000cm2/g程度の非常に微細なものを使用した。
【0037】
【0038】
第1試験では、二軸強制ミキサを用い、表1に示す配合の結合材、細骨材、分離低減剤を低速15秒空練りし、水を注水した。そして、低速で2分練り混ぜ、かき落としした後、低速でさらに2分練り混ぜた。練りあがったコンクリートの体積、すなわち、練り量は9リットルであった。表1に示すように、繊維は添加しなかった。
【0039】
上記のようにして製造したセメント系材料で供試体の下層となる部分を形成し(厚さ5cm)、10分または20分経過後に供試体の上層となる部分を形成して(厚さ5cm)、下層と上層の間に不連続面(打継面)を有する2層構造の供試体を作製した。また、参照用として、下層形成直後(0分)に上層を形成することで、打継面を有さない供試材を作製した。供試材の材齢は7日とした。
【0040】
そして、
図2~
図5に示す本装置1を使用して、後記する表2に示す種々の条件で針4により鉛直方向の振動を供試体に加えるなどした後、力学的特性を測定した。針4の振動の周波数は、全て100Hzとした。表2中の「―」は針4の挿入および振動を行っていないことを示す。
針4の振動は、針4の直径1mm×長さ7cmの針アタッチメントA(
図6、
図7)と、針4の直径2mm×長さ7cmの針アタッチメントA(
図6、
図7)とを条件に応じて交換して加えた。針アタッチメントAは、アルミニウム合金板(JIS H 4000に規定のA2017)の固定板3に、JIS G 4403:2015に規定の高速度工具鋼鋼材(SKH51)の針4が固定されている。固定板3への針4の固定は、固定板3に形成した穴に針4を挿入してかしめることによって行った。針アタッチメントAは、固定板3の一方の面3aに固定された磁石6(最大磁力吸着力784N(80kgf))により振動機2に着脱自在に固定した。また、今回、針アタッチメントAは、磁石6とともに結束バンドを使用して振動機2に固定した。固定板3は100×100×86mmの板状であり、他方の面3bに針4を縦横それぞれ2.5cmの間隔で合計16本固定している。
【0041】
前記したように、針4の長さが7cmであるので、
図8に示すように、針アタッチメントAの固定板3と積層体LPの上面とのクリアランスを1cm確保してこれらが直接接触しないようにした。従って、下層には針4の先端が1cmの深さで挿入される。なお、
図8は、第1試験における針4の挿入および振動の態様を説明する概要図である。
表2において、振動時間が10秒のものは、針4により10秒間鉛直方向の振動を行った後、前回の針4の振動を行った箇所に重複しないように針アタッチメントAを完全に移動させて積層体LPに挿入し、次回の針4による鉛直方向の振動を行った。また、振動時間が20秒のものは、針4により10秒間鉛直方向の振動を行った後、前回の針4の振動を行った箇所の半分が重複するように針アタッチメントAを移動させて積層体LPに挿入し、次回の針4による鉛直方向の振動を10秒間行った。これにより、振動時間が20秒のものは、両端を除き、振動時間が20秒となる。
【0042】
力学的特性については、
図9に示すように、供試材から打継面が最大径(直径)となる円柱状の試験片(コア供試体)を抜き出して割裂引張強度試験を行い、その強度を測定した。割裂引張強度試験は、JIS A 1108に準拠して行った。当該試験にあたっては、
図9に示すように、コア供試体の打継面に対して平行な方向(
図9中の矢印方向)となるよう押圧力を印加した(縦目で行った)。なお、
図9は、第1試験の割裂引張強度試験におけるコア供試体の配置と押圧力の印加方向との関係を示す概要図である。
この試験は、表2に示す実施例1~4、比較例1、2および参照例1についてそれぞれn=3で行い、その平均を算出した。表2に下層形成後上層形成までの時間、針の直径、針の鉛直方向の振動の条件とともに割裂引張強度の平均値を示す。
【0043】
【0044】
図10は、実施例1~4、比較例1、2および参照例1に係る積層体の割裂引張強度の平均値(N/mm
2)を示すグラフである。
図10に示すように、実施例1~3は、同じ条件の打継面を有する比較例1に対して割裂引張強度が向上していることが確認された。また、実施例4は、同じ条件の打継面を有する比較例2に対して割裂引張強度が向上していることが確認された。今回の実験では、実施例2は、打継面を有さない参照例1と同程度の割裂引張強度が得られていた。振動締固めによって上下層の一体性が改善、具体的には、上下層の水平方向の層間の一体性が改善されたことで、割裂引張強度が向上したものと考えられる。
【0045】
〔2〕第2試験
第2試験は、さらに積層数の多い供試体に対して針の挿入と振動とを行う場合について検討した。
第2試験で使用する供試材は、表3に示す配合の建設3Dプリンタ用セメント系材料を使用して作製した。表3中のW、P、S1、S2、Vは表1と同様である。繊維は、長さ15mmで直径0.3mmのビニロン繊維を用いた。
【0046】
【0047】
なお、第2試験における供試体の作製は、既報の論文(村田哲、木ノ村幸士、小尾博俊、山本悠人著、「3Dプリンタ技術を応用した新たなコンクリート施工法の開発と展望」、大成建設技術センター報、第51号、pp.23-1~23-6、2018)に記載されている材料押出方式の付加製造装置(建設3Dプリンタ)を使用して行った。ここで、当該建設3Dプリンタのノズル幅は25mmであった。建設3Dプリンタのノズルを予め設定された順序に従ってXYZ方向に移動させつつセメント系材料を押出して積層体からなる供試材を作製した。当該供試材の作製にあたり、5層形成ごとに(50mm形成ごとに)、第1試験と同様に締固め、すなわち、針4の挿入および鉛直方向の振動の印加を行った。針4と針4の間隔は、建設3Dプリンタのノズル幅(=押出し幅)と同じ25mmとした。なお、振動による形状保持性能を確認するために、光学3D変形分析(ARAMIS)を用いて、3次元的に変形を測定した。供試材の材齢は7日とした。なお、参照用として、針4の挿入および鉛直方向の振動の印加に換えて、突固めを行った供試材を作製した。突固めは、JIS A 1132に準拠して行った。
【0048】
図11は、第2試験で作製した供試材の一部を上方かつ斜め方向から見た斜視図である。
図12は、第2試験で作製した供試材を側方かつ斜め方向から見た斜視図である。供試材の寸法は、コア供試体の抜き出し方向に応じて異ならせた。
図11および
図12中の円形の点線は、供試材から抜き出すコア供試体の位置を示しており、その位置で円柱状にコア供試体を抜き出した。
【0049】
コア供試体を上方から抜き出す(上抜き)供試材(
図11参照)の寸法は、W225mm×B610mm×H130mmとした。なお、この供試材は高さが130mmあるので、50mm積層するごとに(最後は30mm積層した後に)、つまり、高さ方向に3回針を挿入して締固めを行った。これを所定の間隔(80mm)あけて平面方向に3か所行った。そして、締固めを行った箇所から円柱状にコア供試体(直径100mm)を抜き出した。つまり、1つの供試材からコア試供体を3つ抜き出した(n=3)。
また、コア供試体を側方から抜き出す(横抜き)供試材(
図12参照)の寸法は、W175mm×B610mm×H230mmとした。なお、この供試材は高さが230mmあるので、50mm積層するごとに(最後は30mm積層した後に)、つまり、高さ方向に5回針を挿入して締固めを行った。これを所定の間隔(80mm)あけて平面方向に3か所行った。そして、締固めを行った箇所から円柱状にコア供試体(直径100mm)を抜き出した。つまり、1つの供試材からコア試供体を3つ抜き出した(n=3)。
抜き出したコア供試体はいずれもH110mmになるように両端を研磨した。
【0050】
そして、第1試験と同様にして、力学的特性として割裂引張強度試験(JIS A 1108に準拠)を行い、その平均を算出した。ただし、当該試験にあたっては、
図13に示すように、コア供試体の打継面(層間)に対して平行な方向(
図13中の矢印方向)となるよう押圧力を印加した(縦目で行った)。なお、
図13は、第2試験の割裂引張強度試験におけるコア供試体の配置と押圧力の印加方向との関係を示す概要図である。
第2試験における実施例5~8、比較例3、4、参照例2、3に係る供試体の作製条件(積層体への振動の印加または突固め、および針の鉛直方向の振動の条件)と、コア供試体の抜き出し方向と、割裂引張強度の平均値とを表4に示す。なお、表4中の「―」は振動を加えていないことや、振動を加えていないため該当する数値が存在しないことを示している。
【0051】
【0052】
図14は、コア供試体の抜き出し方向が上抜きである参照例2、比較例3および実施例5、6に係る積層体の割裂引張強度の平均値(N/mm
2)を示すグラフである。
図15は、コア供試体の抜き出し方向が横抜きである参照例3、比較例4および実施例7、8に係る積層体の割裂引張強度の平均値(N/mm
2)を示すグラフである。なお、
図14および
図15中の割裂引張強度は平均値を示している。
【0053】
図14に示すように、実施例5、6は、同じ条件の打継面(層間)を有する比較例3に対して割裂引張強度が向上していることが確認された。実施例6は、突固めで積層体を作製した参照例2と同程度の割裂引張強度が得られていた。
【0054】
また、
図15に示すように、実施例8は、同じ条件の打継面(層間)を有する比較例4に対して割裂引張強度が向上していることが確認された。実施例8は、突固めで積層体を作製した参照例3と同程度の割裂引張強度が得られていた。今回の実験では、実施例8は、参照例3を超える割裂引張強度が得られていた。
【0055】
以上、本発明の実施形態および実施例について説明したが、本発明は、前述の実施形態および実施例に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。