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特開2022-175004複合容器、複合プリフォームおよび複合容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175004
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】複合容器、複合プリフォームおよび複合容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20221117BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20221117BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20221117BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B65D1/02 110
B65D23/00 G
B29C49/22
B29C49/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081101
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 紗奈
(72)【発明者】
【氏名】関根 章智
(72)【発明者】
【氏名】南條 佳代子
(72)【発明者】
【氏名】古谷 紀子
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BA21
3E033BB08
3E033CA16
3E033DA03
3E033DB01
3E033DD02
3E033FA03
3E033GA02
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC02
3E062JA01
3E062JA08
3E062JB30
3E062JC07
3E062JD01
3E062JD04
4F208AG03
4F208AG07
4F208AH55
4F208AR12
4F208LA02
4F208LA08
4F208LB01
4F208LB22
4F208LG03
4F208LG06
4F208LG28
4F208LG32
4F208LH06
(57)【要約】
【課題】使用する樹脂量を低減するとともに、容器に対して様々な機能や特性を付与することが可能な、複合容器、複合プリフォームおよび複合容器の製造方法を提供する。
【解決手段】複合容器10Aは、胴部20と底部30とを有する容器本体10と、容器本体10の外側に密着して設けられた樹脂フィルム40とを備えている。胴部20に対応する位置において、樹脂フィルム40の厚みTは、5μm以上30μm以下である。複合容器10Aは、樹脂フィルム40の破断伸度をA1[%]とし、胴部20に対応する位置における樹脂フィルム40の厚みをT[μm]とした場合、
2≦A1/T≦15
という関係を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合容器において、
胴部と底部とを有する容器本体と、
前記容器本体の外側に密着して設けられた樹脂フィルムとを備え、
前記胴部に対応する位置において、前記樹脂フィルムの厚みは、5μm以上30μm以下であり、
前記樹脂フィルムの破断伸度をA1[%]とし、前記胴部に対応する位置における前記樹脂フィルムの厚みをT[μm]とした場合、
2≦A1/T≦15
という関係を満たす、複合容器。
【請求項2】
前記樹脂フィルムは、多層である、請求項1に記載の複合容器。
【請求項3】
前記容器本体は、外面を構成するバリア層を更に有する、請求項1または2に記載の複合容器。
【請求項4】
複合プリフォームにおいて、
胴部と底部とを有するプリフォームと、
前記プリフォームの外側に密着して設けられた樹脂フィルムとを備え、
前記胴部に対応する位置において、前記樹脂フィルムの厚みは、50μm以上300μm以下であり、
前記樹脂フィルムの破断伸度をA2[%]とし、前記胴部に対応する位置における前記樹脂フィルムの厚みをt[μm]とした場合、
2≦A2/t≦15
という関係を満たす、複合プリフォーム。
【請求項5】
前記樹脂フィルムは、多層である、請求項4に記載の複合プリフォーム。
【請求項6】
前記プリフォームは、外面を構成するバリア層を更に有する、請求項4または5に記載の複合プリフォーム。
【請求項7】
複合容器の製造方法において、
プリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側に樹脂フィルムを設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記樹脂フィルムに対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記樹脂フィルムを一体として膨張させ、前記プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に密着して設けられた樹脂フィルムとを作製する工程とを備え、
前記プリフォームの外側に樹脂フィルムを設ける工程は、
前記樹脂フィルムを加熱することにより、軟化させる工程と、
軟化した前記樹脂フィルムを前記プリフォームの外側に被せる工程と、
前記樹脂フィルムを真空吸引することにより、前記樹脂フィルムを前記プリフォームの外側に密着させる工程とを有する、複合容器の製造方法。
【請求項8】
前記容器本体は、胴部と底部とを有し、前記胴部に対応する位置において、前記樹脂フィルムの厚みは、5μm以上30μm以下である、請求項7に記載の複合容器の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂フィルムの破断伸度をA1[%]とし、前記胴部に対応する位置における前記樹脂フィルムの厚みをT[μm]とした場合、
2≦A1/T≦15
という関係を満たす、請求項8に記載の複合容器の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂フィルムは、多層である、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の複合容器の製造方法。
【請求項11】
前記容器本体は、外面を構成するバリア層を更に有する、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の複合容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合容器、複合プリフォームおよび複合容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、飲食品等の内容液を収容するボトルとして、プラスチック製のものが一般化してきており、このようなプラスチックボトルには内容液が収容される。
【0003】
このような内容液を収容するプラスチックボトルは、金型内にプリフォームを挿入し、2軸延伸ブロー成形することにより製造される。
【0004】
ところで、従来の2軸延伸ブロー成形法では、例えばPETやPP等の単層材料、多層材料又はブレンド材料等を含むプリフォームを用いて容器形状に成形している。しかしながら、従来の2軸延伸ブロー成形法においては、単にプリフォームを容器形状に成形するだけであるのが一般的である。このため、容器に対して様々な機能や特性(バリア性や保温性等)を持たせる場合、例えばプリフォームを構成する材料を変更する等、その手段は限定されてしまう。とりわけ、容器の部位(例えば胴部や底部)に応じて、異なる機能や特性を持たせることは難しい。
【0005】
これに対して本出願人は、特許文献1において、容器に対して様々な機能や特性を付与することが可能な複合容器を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-128858号公報
【0007】
一方、近年、海洋汚染の問題や環境負荷の低減を目的として、このような容器に使用する樹脂量の低減が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、使用する樹脂量を低減するとともに、容器に対して様々な機能や特性を付与することが可能な、複合容器、複合プリフォームおよび複合容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態による複合容器は、胴部と底部とを有する容器本体と、前記容器本体の外側に密着して設けられた樹脂フィルムとを備え、前記胴部に対応する位置において、前記樹脂フィルムの厚みは、5μm以上30μm以下であり、前記樹脂フィルムの破断伸度をA1[%]とし、前記胴部に対応する位置における前記樹脂フィルムの厚みをT[μm]とした場合、
2≦A1/T≦15
という関係を満たす、複合容器である。
【0010】
一実施の形態による複合容器において、前記樹脂フィルムは、多層であってもよい。
【0011】
一実施の形態による複合容器において、前記容器本体は、外面を構成するバリア層を更に有していてもよい。
【0012】
一実施の形態による複合プリフォームは、胴部と底部とを有するプリフォームと、前記プリフォームの外側に密着して設けられた樹脂フィルムとを備え、前記胴部に対応する位置において、前記樹脂フィルムの厚みは、50μm以上300μm以下であり、前記樹脂フィルムの破断伸度をA2[%]とし、前記胴部に対応する位置における前記樹脂フィルムの厚みをt[μm]とした場合、
2≦A2/t≦15
という関係を満たす、複合プリフォームである。
【0013】
一実施の形態による複合プリフォームにおいて、前記樹脂フィルムは、多層であってもよい。
【0014】
一実施の形態による複合プリフォームにおいて、前記プリフォームは、外面を構成するバリア層を更に有していてもよい。
【0015】
一実施の形態による複合容器の製造方法は、プリフォームを準備する工程と、前記プリフォームの外側に樹脂フィルムを設ける工程と、前記プリフォームおよび前記樹脂フィルムに対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記樹脂フィルムを一体として膨張させ、前記プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に密着して設けられた樹脂フィルムとを作製する工程とを備え、前記プリフォームの外側に樹脂フィルムを設ける工程は、前記樹脂フィルムを加熱することにより、軟化させる工程と、軟化した前記樹脂フィルムを前記プリフォームの外側に被せる工程と、前記樹脂フィルムを真空吸引することにより、前記樹脂フィルムを前記プリフォームの外側に密着させる工程とを有する、複合容器の製造方法である。
【0016】
一実施の形態による複合容器の製造方法において、前記容器本体は、胴部と底部とを有し、前記胴部に対応する位置において、前記樹脂フィルムの厚みは、5μm以上30μm以下であってもよい。
【0017】
一実施の形態による複合容器の製造方法において、前記樹脂フィルムの破断伸度をA1[%]とし、前記胴部に対応する位置における前記樹脂フィルムの厚みをT[μm]とした場合、
2≦A1/T≦15
という関係を満たしてもよい。
【0018】
一実施の形態による複合容器の製造方法において、前記樹脂フィルムは、多層であってもよい。
【0019】
一実施の形態による複合容器の製造方法において、前記容器本体は、外面を構成するバリア層を更に有していてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、複合容器に使用する樹脂量を低減するとともに、複合容器に対して様々な機能や特性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施の形態による複合容器を示す部分垂直断面図である。
図2図2は、一実施の形態による複合容器を示す水平断面図(図1のII-II線断面図)である。
図3図3(a)-(f)は、一実施の形態による複合容器の樹脂フィルムの層構成の一例を示す断面図である。
図4図4は、一実施の形態による複合プリフォームを示す部分垂直断面図である。
図5図5は、一実施の形態による複合プリフォームを示す水平断面図(図4のV-V線断面図)である。
図6図6(a)-(e)は、一実施の形態による複合プリフォームの製造方法を示す概略図である。
図7図7(a)-(d)は、一実施の形態による複合容器の製造方法を示す概略図である。
図8図8は、一実施の形態による複合容器の変形例を示す部分垂直断面図である。
図9図9は、一実施の形態による複合プリフォームの変形例を示す部分垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。図1乃至図7は一実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0023】
複合容器の構成
まず、図1および図2により、本実施の形態による複合容器の概要について説明する。
なお、本明細書中、「上」および「下」とは、それぞれ複合容器10Aを正立させた状態(図1)における上方および下方のことをいう。
【0024】
図1および図2に示す複合容器10Aは、後述するように、ブロー成形型50を用いてプリフォーム10aおよび樹脂フィルム40aを含む複合プリフォーム70(図4および図5参照)に対して2軸延伸ブロー成形を施すことにより、複合プリフォーム70のプリフォーム10aおよび樹脂フィルム40aを一体として膨張させて得られたものである。
【0025】
このような複合容器10Aは、内側に位置するプラスチック材料製の容器本体10と、容器本体10の外側に密着して設けられた樹脂フィルム40とを備えている。
【0026】
このうち容器本体10は、口部11と、口部11下方に設けられた首部13と、首部13下方に設けられた肩部12と、肩部12下方に設けられた胴部20と、胴部20下方に設けられた底部30とを備えている。
【0027】
他方、樹脂フィルム40は、容器本体10の外面に薄く延ばされた状態で密着されており、容器本体10に対して容易に移動又は回転しない状態で取付けられている。
【0028】
次に、容器本体10について詳述する。容器本体10は、上述したように口部11と、首部13と、肩部12と、胴部20と、底部30とを有している。
【0029】
このうち口部11は、図示しないキャップに螺着されるねじ部14と、ねじ部14下方に設けられたフランジ部17とを有している。なお、口部11の形状は、従来公知の形状であっても良い。容器本体10に内容液等の内容物が充填され、口部11に図示しないキャップが螺着されることにより、内容物入り複合容器が作製される。
【0030】
首部13は、フランジ部17と肩部12との間に位置しており、略均一な径をもつ略円筒形状を有している。また、肩部12は、首部13と胴部20との間に位置しており、首部13側から胴部20側に向けて徐々に径が拡大する形状(水平断面において徐々に面積が拡大する形状)を有している。
【0031】
胴部20は、全体として略均一な径をもつ円筒形状を有している。しかしながら、これに限られるものではなく、胴部20が四角形筒形状や八角形筒形状等の多角形筒形状を有していても良い。あるいは、胴部20が上方から下方に向けて均一でない水平断面をもつ筒形状を有していても良い。胴部20の外面には、後述する光変調部21以外の凹凸、例えば、減圧吸収パネル又は溝等の凹凸が形成されていても良い。
【0032】
一方、底部30は、中央に位置する凹部31と、この凹部31周囲に設けられた接地部32とを有している。なお、底部30の形状についても特に限定されるものではなく、従来公知の底部形状(例えばペタロイド底形状や丸底形状等)を有していても良い。
【0033】
また、胴部20における容器本体10の厚みは、これに限定されるものではないが、例えば50μm以上250μm以下程度に薄くすることができる。さらに、容器本体10の重量についても、これに限定されるものではないが、10g以上20g以下とすることができる。このように容器本体10の肉厚を薄くすることにより、容器本体10の軽量化を図ることができる。
【0034】
このような容器本体10は、合成樹脂材料を射出成形して製作したプリフォーム10a(後述)を2軸延伸ブロー成形することにより作製することができる。なお容器本体10の材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)を使用することが好ましい。容器本体10は、赤色、青色、黄色、緑色、茶色、黒色、白色等の色に着色されていても良いが、リサイクルのしやすさを考慮した場合、無色透明であることが好ましい。また、上述した各種樹脂をブレンドして用いても良い。さらに、容器本体10の内面に、容器のバリア性を高めるために、例えばダイヤモンド状炭素膜や酸化珪素薄膜等の蒸着膜を形成しても良い。
【0035】
また、容器本体10は、2層以上の多層成形ボトルとして形成することもできる。すなわち射出成形により、例えば、中間層をMXD6、MXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性を有する樹脂(中間層)として3層以上からなるプリフォーム10aを射出成形後、ブロー成形することによりガスバリア性を有する多層ボトルとして形成しても良い。なお、中間層としては、上述した各種樹脂をブレンドした樹脂を用いても良い。
【0036】
また、熱可塑性樹脂の溶融物に不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)を混ぜることで、0.5μm以上100μm以下の発泡セル径を持つ発泡プリフォームを成形し、この発泡プリフォームをブロー成形することによって、容器本体10を作製しても良い。このような容器本体10は、発泡セルを内蔵しているため、容器本体10全体の遮光性を高めることができる。
【0037】
このような容器本体10は、例えば満注容量が100ml以上2000ml以下のボトルからなっていても良い。あるいは、容器本体10は、満注容量が例えば10L以上60L以下の大型のボトルであっても良い。
【0038】
次に、樹脂フィルム40について説明する。樹脂フィルム40(40a)は後述するようにプリフォーム10aの外側を取り囲むように設けられ、プリフォーム10aの外側に密着された後、プリフォーム10aとともに2軸延伸ブロー成形されることにより得られたものである。
【0039】
樹脂フィルム40は容器本体10の外面に接着されることなく取付けられており、容器本体10に対して移動又は回転しないほどに密着されている。この樹脂フィルム40は、容器本体10の外面において薄く引き延ばされて容器本体10を覆っている。また、図2に示すように、樹脂フィルム40は、容器本体10を取り囲むようにその周方向全域にわたって設けられており、略円形状の水平断面を有している。
【0040】
この場合、樹脂フィルム40は、容器本体10のうち、口部11以外の全域に設けられている。すなわち、樹脂フィルム40は、口部11を除く、首部13、肩部12、胴部20および底部30の全域を覆うように設けられている。これにより、容器本体10の首部13、肩部12、胴部20および底部30の全域に対して所望の機能や特性を付与することができる。
【0041】
なお、樹脂フィルム40は、容器本体10のうち口部11以外の一部領域に設けられていても良い。例えば、樹脂フィルム40は、容器本体10のうち、口部11および首部13を除く、肩部12、胴部20および底部30の全体を覆うように設けられていても良い。
【0042】
樹脂フィルム40は、容器本体10に対して溶着ないし接着されていないため、容器本体10から剥離して除去することができる。具体的には、例えば刃物等を用いて樹脂フィルム40を切除したり、樹脂フィルム40に予め図示しない切断線を設け、この切断線に沿って樹脂フィルム40を剥離したりすることができる。これにより、樹脂フィルム40を容器本体10から分離除去することができる。
【0043】
樹脂フィルム40は、赤色、青色、黄色、緑色、茶色、黒色、白色等の色に着色されていても良く、さらに透明であっても不透明であっても良い。
【0044】
また、容器本体10の胴部20に対応する位置において、樹脂フィルム40の厚みT(図1参照)は、5μm以上30μm以下である。胴部20に対応する位置において、厚みTが5μm以上であることにより、複合容器10Aに対して様々な機能や特性を付与することができる。また、胴部20に対応する位置において、厚みTが30μm以下であることにより、複合容器10Aに使用する樹脂量を低減できる。
【0045】
また、樹脂フィルム40の破断伸度をA1[%]とした場合、
2≦A1/T≦15
という関係を満たしている。
A1/T、すなわち、単位厚み(1μm)当たりの破断伸度が2[%]以上であることにより、厚みを薄くした場合に、樹脂フィルム40が伸びにくくなってしまうことを抑制できる。このため、厚みを薄くした場合であっても、落下時の衝撃などにより複合容器10Aの樹脂フィルム40が破れてしてしまうことを抑制できる。また、単位厚み当たりの破断伸度が15[%]以下であることにより、樹脂フィルム40のコストを低減できる。すなわち、樹脂フィルム40の単位厚み当たりの破断伸度を大きくさせる場合、樹脂フィルム40におけるアイオノマーの含有率を高くすることが考えられる。一方、樹脂フィルム40におけるアイオノマーの含有率を高くした場合、樹脂フィルム40のコストが増加してしまう可能性がある。これに対して、単位厚み当たりの破断伸度が15[%]以下であることにより、樹脂フィルム40におけるアイオノマーの含有率が高くなり過ぎることを抑制でき、樹脂フィルム40のコストを低減できる。
【0046】
ここで、樹脂フィルム40の破断伸度A1は、JIS K7127に準拠して測定され得る。また、測定器としては、例えば、オリエンテック社製の引張試験機(例えば、STA-1150)を用いることができる。試験片としては、複合容器10Aの容器本体10から剥がされた樹脂フィルム40を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出したものを用いることができる。試験片を保持する一対のチャック間の、測定開始時の間隔は30mmであり、引張速度は、200mm/分である。また、破断伸度の測定時の環境は、温度23℃である。なお、試験片の長さは、一対のチャックによって試験片を把持することができる限りにおいて、調整可能である。
【0047】
また、試験片の長手方向は、容器本体10の上下方向に対応していてもよく、容器本体10の周方向に対応していてもよい。ところで、周方向における単位厚み(1μm)当たりの破断伸度(A1/T)は、上下方向における単位厚み(1μm)当たりの破断伸度(A1/T)よりも大きくなっていてもよい。ここで、消費者が複合容器10Aを開栓する際に、消費者の指によって、複合容器10Aが径方向に潰されてしまう場合がある。とりわけ、容器本体10に使用する樹脂量を低減させた場合には、容器本体10の胴部20等の厚みが薄くなることにより、容器本体10が変形しやすくなる。そして、容器本体10が変形しやすくなった場合、消費者が複合容器10Aを開栓する際に、複合容器10Aが径方向に潰されやすくなる。このように、これに対して、周方向における単位厚み当たりの破断伸度を、上下方向における単位厚み当たりの破断伸度よりも大きくすることにより、複合容器10Aが径方向に潰された場合であっても、複合容器10Aの樹脂フィルム40が破れてしてしまうことを効果的に抑制できる。なお、上述した「周方向における単位厚み当たりの破断伸度(A1/T)」とは、試験片の長手方向が容器本体10の周方向に対応している場合における、単位厚み当たりの破断伸度を意味する。また、上述した「上下方向における単位厚み当たりの破断伸度(A1/T)」とは、試験片の長手方向が容器本体10の上下方向に対応している場合における、単位厚み当たりの破断伸度を意味する。試験片の長手方向が容器本体10の上下方向に対応している場合、
2≦A1/T≦10
という関係を満たすことが好ましい。
一方、試験片の長手方向が容器本体10の周方向に対応している場合、
2≦A1/T≦15
という関係を満たすことが好ましい。
【0048】
次に、樹脂フィルム40(樹脂フィルム40a)の層構成について説明する。図3(a)に示すように、樹脂フィルム40は、単層であってもよい。また、図3(b)-(f)に示すように、樹脂フィルム40は、多層であってもよい。この場合、図3(b)に示すように、樹脂フィルム40は、バリア層45と、第1樹脂層41とを有し、バリア層45が、樹脂フィルム40の内面401を構成し、第1樹脂層41が、樹脂フィルム40の外面402を構成してもよい。また、図3(c)に示すように、樹脂フィルム40は、第1樹脂層41と、バリア層45と、第2樹脂層42とを有し、第1樹脂層41が、樹脂フィルム40の内面401を構成し、第2樹脂層42が、樹脂フィルム40の外面402を構成してもよい。
【0049】
また、図3(d)に示すように、樹脂フィルム40は、第1樹脂層41と、第2樹脂層42と、第3樹脂層43とを有していてもよい。図3(d)に示す例においては、第1樹脂層41が、樹脂フィルム40の内面401を構成し、第3樹脂層43が、樹脂フィルム40の外面402を構成してもよい。この場合、樹脂フィルム40は、例えば以下の層構成であってもよい。
(内面側)直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)15μm/アイオノマー(IO)70μm/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)15μm(外面側)
なお、「/」は、互いに隣接する層同士の境界を意味する。
【0050】
さらに、図3(e)に示すように、樹脂フィルム40は、第2樹脂層42と第3樹脂層43との間に設けられたバリア層45を有していてもよい。また、図3(f)に示すように、樹脂フィルム40は、樹脂フィルム40の内面401を構成するバリア層45を有していてもよい。
【0051】
なお、上記各層は常法に従い、インフレーション法、キャスト法、ドライラミネーション法、押出ラミネーション法、押出コーティング法その他のコーティング法によって形成される。なお、バリア層45は、後述する方法によって形成されてもよい。
【0052】
樹脂フィルム40のうち、バリア層45以外の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹旨、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、フタル酸ジアリル樹脂、フッ素系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリブタジエン、ポリブテン-1、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテレフタル酸エチレン、ポリテレフタル酸ブチレン、ポリナフタレン酸エチレン、Uポリマー、液晶ポリマー、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアセタール、エポキシ樹脂等を挙げることができる。このうち低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性非弾性樹脂を用いることが好ましい。また、それらのブレンド材料であってもよい。
【0053】
バリア層45としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(MXD6)等の樹脂を用いることができる。
【0054】
また、バリア層45は、カルボキシ基含有樹脂と、ポリビニルアルコール系樹脂とを含んでいてもよい。複合容器10Aが、このようなバリア層45を備えることにより、複合容器10Aのバリア性を向上できる。
【0055】
以下、バリア層45に含まれるポリビニルアルコール系樹脂及びカルボキシ基含有樹脂について説明する。
【0056】
ポリビニルアルコール系樹脂(「PVA系樹脂」とも称する)は、ポリマーの構造中にアルコール性ヒドロキシ基を含有する樹脂である。PVA系樹脂は、通常、ビニルエステル系重合体をケン化することにより得られる。
【0057】
ビニルエステル系重合体は、通常、ビニルエステルモノマーを重合成分として重合することにより得られる。ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル及びモノクロロ酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル、並びに安息香酸ビニル等のアレーンカルボン酸ビニル(例えば、C7-12アレーンカルボン酸-ビニルエステル)等の芳香族カルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
ビニルエステル系重合体は、他の重合性モノマー(ビニルエステルと共重合可能なモノマー)由来の単位を有してもよい。他の重合性モノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有ビニルモノマー;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;イタコン酸アルキルエステル類等が挙げられる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0059】
PVA系樹脂は、ビニルアルコール単位の一部が、アセタール化、エーテル化、アセトアセチル化、カチオン化等の反応によって、変性されたものでもよい。
【0060】
PVA系樹脂の重合度は、好ましくは1000以上4000以下であり、より好ましくは1500以上3500以下であり、更に好ましくは2000以上3000以下である。PVA樹脂の平均重合度は、JIS K 6726:1994に準拠して測定できる。
【0061】
PVA系樹脂のケン化度は、溶媒への溶解性や組成物の保管安定性が優れる等の観点から、好ましくは70モル%以上99.9モル%以下であり、より好ましくは90モル%以上99.5モル%以下であり、更に好ましくは95モル%以上99.5モル%以下である。PVA系樹脂のケン化度は、JIS K 6726:1994に準拠して測定できる。
【0062】
PVA系樹脂は、1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0063】
カルボキシ基含有樹脂は、既存のカルボキシ基含有樹脂を使用できる。カルボキシ基含有樹脂とは、ポリマーの構造中にカルボキシ基を含有する樹脂の総称である。カルボキシ基含有樹脂は、カルボキシ基含有不飽和モノマーの単独重合体、カルボキシ基含有不飽和モノマーの共重合体、カルボキシ基含有不飽和モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体、及び分子内にカルボキシ基を含有する多糖類(「酸性多糖類」とも称する)が挙げられる。これらのカルボキシ基含有樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、カルボキシ基には、遊離のカルボキシ基のみならず、酸無水物基(具体的には、ジカルボン酸無水物基)も含まれる。酸無水物基は、部分的に開環してカルボキシ基となってもよい。カルボキシ基含有樹脂において、カルボキシ基の一部は、アルカリで中和されてもよい。
【0064】
カルボキシ基含有不飽和モノマーは、好ましくはα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸である。従って、カルボキシ基含有樹脂には、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体、2種以上のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、及びα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と他の重合性モノマーとの共重合体が含まれる。他の重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和モノマー等が挙げられる。
【0065】
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらの酸は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸の1種又は2種以上から選択され、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の1種又は2種以上から選択される。
【0066】
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他の重合性モノマー、特にエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有ビニルモノマー;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;イタコン酸アルキルエステル類等を挙げることができる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0067】
カルボキシ基含有多糖類としては、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシ基を有する酸性多糖類等が挙げられる。これらの酸性多糖類は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸性多糖類をα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体と組み合わせて使用できる。
【0068】
本実施の形態で使用するカルボキシ基含有樹脂が、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体である場合には、その共重合体の組成は、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの組成を、好ましくは60モル%以上とし、より好ましくは80モル%以上とし、更に好ましくは90モル%以上とする。
【0069】
カルボキシ基含有樹脂は、好ましくは、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみの重合によって得られる単独重合体又は共重合体である。ポリカルボン酸系重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる(共)重合体の場合、カルボキシ基含有樹脂は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸の1種又は2種以上から選択されるカルボン酸のよって得られる単独重合体、共重合体、及びそれらの2種以上の混合物であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸の1種又は2種以上から選択されるカルボン酸のよって得られる単独重合体、共重合体、及びそれらの2種以上の混合物である。
【0070】
カルボキシ基含有樹脂は、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びマレイン酸重合体の1種又は2種以上から選択される。カルボキシ基含有樹脂は、入手が比較的容易であると共に、リサイクル性及びガスバリア性の観点から、好ましくはポリアクリル酸である。
【0071】
カルボキシ基含有樹の数平均分子量は、好ましくは2,000以上10,000,000以下の範囲であり、より好ましくは5,000以上1,000,000以下の範囲であり、更に好ましくは10,000以上500,000以下の範囲である。
【0072】
ポリビニルアルコール系樹脂に対するカルボキシ基含有樹脂の質量比(カルボキシ基含有樹脂/ポリビニルアルコール系樹脂)は、好ましくは1/20以上10/1以下であり、より好ましくは1/15以上5/1以下であり、更に好ましくは1/10以上2/1以下である。上記質量比が10/1以下であることにより、複合容器10Aのガスバリア性をより向上できる。なお、上記質量比は固形分比である。
【0073】
カルボキシ基含有樹脂の含有量は、バリア層45に含まれる全成分に対して、好ましくは1質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上70質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上60質量%以下である。カルボキシ基含有樹脂の含有量が80質量%以下であることにより、複合容器10Aのガスバリア性をより向上できる。
【0074】
ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、バリア層45に含まれる全成分に対して、好ましくは20質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上98質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以上95質量%以下である。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が20質量%以上であることにより、複合容器10Aのガスバリア性をより向上できる。
【0075】
バリア層45は、バリア層45の特性を損なわない範囲において、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、酸素吸収剤、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤及びイオン交換剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0076】
バリア層45は、単層でも、2層以上の多層でもよい。また、バリア層45が多層である場合には、各層が、同一の組成でも、異なる組成でもよい。
【0077】
バリア層45の厚みは、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下である。なお、バリア層45の厚みは、例えば、容器本体10の胴部20に対応する位置において測定できる。バリア層45が多層である場合には、バリア層45の厚みは、全ての層の厚みの合計である。
【0078】
バリア層45は、赤色、青色、黄色、緑色、茶色、茶褐色、橙色、黒色、及び白色等の色に着色されてもよく、さらに透明でも不透明でもよい。バリア層45が着色されていることにより、日光等の外部から複合容器10A内に進入してくる可視光線を吸収でき、複合容器10Aの内容物の味及び色の変化を抑制できる。とりわけ、バリア層45は、波長400nm以上500nm以下の可視光線を吸収できることが好ましい。これにより、内容物がビールである場合に、ビール中の苦味成分が日光によって分解されて、日光臭成分である3-メチル-2-ブテン-1-チオールが生成される不具合を抑制できる。波長400nm以上500nm以下の可視光線を効果的に吸収できるようにするために、バリア層45は、好ましくは茶褐色又は橙色等に着色されていてもよい。バリア層45色は、例えば、着色剤を使用することにより、着色されていてもよい。
【0079】
ここで、バリア層45は、例えば、以下のようにして形成してもよい。
【0080】
まず、バリア層45が形成される前の樹脂フィルム(例えば、図3(d)に示す樹脂フィルム40)を準備する。
【0081】
また、バリア層45を構成する材料と、溶媒とを含むバリア層用塗工液を準備する。
【0082】
次に、バリア層用塗工液を、例えば、第1樹脂層41(図3(d)参照)上に塗工して、塗工膜を形成する。その後、塗工膜を乾燥して溶媒を除去することにより、バリア層45を有する樹脂フィルム40(図3(f)参照)が得られる。
【0083】
バリア層用塗工液に使用する溶媒は、バリア層45を構成する材料を溶解又は乳化分散できるものである。溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の極性有機溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。溶媒は、好ましくは、水、アルコール類、又はこれらの混合物を使用する。これにより、バリア層用塗工液の粘性が向上し、塗工回数を少なくすることが可能となるため、樹脂フィルム40の生産性を向上できる。
【0084】
バリア層用塗工液において、バリア層45を構成する材料の固形分の合計濃度は、好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上10質量%以下である。これにより、厚さの均一なバリア層45を形成できる。
【0085】
バリア層用塗工液の粘度は、好ましくは150mPa・s以上4000mPa・s以下であり、より好ましくは200mPa・s以上2500mPa・s以下である。これにより、樹脂フィルム40の生産性をより向上できる。バリア層用塗工液の粘度は、JIS Z 8803:2011に準拠して、20℃の温度において、回転式粘度計を使用して測定できる。
【0086】
バリア層用塗工液の塗工は、従来公知の方法により行うことができる。塗工方法は、例えば、印毛等により塗布する方法、バリア層用塗工液を噴霧する方法、または、グラビア印刷法等により印刷する方法等が挙げられる。
【0087】
バリア層用塗工液から形成された塗工膜の乾燥温度は、溶媒を除去できる温度である。乾燥温度は、好ましくは40℃以上120℃以下であり、より好ましくは60℃以上110℃以下である。
【0088】
複合プリフォームの構成
次に、図4および図5により、複合プリフォームの構成について説明する。
【0089】
図4および図5に示すように、複合プリフォーム70は、プラスチック材料製のプリフォーム10aと、プリフォーム10aの外側に密着して設けられた有底円筒状の樹脂フィルム40aとを備えている。
【0090】
プリフォーム10aは、口部11aと、口部11aに連結された胴部20aと、胴部20aに連結された底部30aとを備えている。このうち口部11aは、上述した容器本体10の口部11に対応するものであり、口部11と略同一の形状を有している。また、胴部20aは、上述した容器本体10の首部13、肩部12および胴部20に対応するものであり、略円筒形状を有している。底部30aは、上述した容器本体10の底部30に対応するものであり、略半球形状を有している。
【0091】
樹脂フィルム40aは、プリフォーム10aの外面に接着されることなく取付けられており、プリフォーム10aに対して移動又は回転しないほどに密着されているか、又は自重で落下しない程度に密着されている。樹脂フィルム40aは、プリフォーム10aを取り囲むようにその周方向全域にわたって設けられており、円形状の水平断面を有している。
【0092】
この場合、樹脂フィルム40aは、口部11a以外の全域に設けられている。すなわち、樹脂フィルム40aは、胴部20aの全域と、底部30aの全域とを覆うように設けられている。なお、樹脂フィルム40aは、口部11a以外の一部領域に設けられていても良い。
【0093】
プリフォーム10aの胴部20aに対応する位置において、樹脂フィルム40aの厚みt(図4参照)は、50μm以上300μm以下である。これにより、胴部20aに対応する位置において、厚みtが50μm以上であることにより、複合プリフォーム70から作製する複合容器10Aに対して様々な機能や特性を付与することができる。また、胴部20aに対応する位置において、厚みtが300μm以下であることにより、複合プリフォーム70から作製する複合容器10Aに使用する樹脂量を低減できる。
【0094】
また、樹脂フィルム40aの破断伸度をA2[%]とした場合、
2≦A2/t≦15
という関係を満たしている。
A2/t、すなわち、単位厚み(1μm)当たりの破断伸度が2[%]以上であることにより、厚みを薄くした場合に、樹脂フィルム40aが伸びにくくなってしまうことを抑制できる。このため、厚みを薄くした場合であっても、2軸延伸ブロー成形に対する追従性を向上できる。この結果、2軸延伸ブロー成形時に、樹脂フィルム40aが破れてしてしまうことを抑制できる。また、単位厚み当たりの破断伸度が15[%]以下であることにより、樹脂フィルム40aのコストを低減できる。
【0095】
なお、樹脂フィルム40aの破断伸度A2を測定する場合の試験片の長手方向は、プリフォーム10aの上下方向に対応していてもよく、プリフォーム10aの周方向に対応していてもよい。ところで、周方向における単位厚み(1μm)当たりの破断伸度(A2/t)は、上下方向における単位厚み(1μm)当たりの破断伸度(A2/t)よりも大きくなっていてもよい。ここで、プリフォームに対して2軸延伸ブロー成形を施した場合、一般的に、周方向における延伸倍率は、上下方向における延伸倍率よりも大きくなり得る。このため、周方向における単位厚み当たりの破断伸度を、上下方向における単位厚み当たりの破断伸度よりも大きくすることにより、2軸延伸ブロー成形時に、樹脂フィルム40aが破れてしてしまうことを更に効果的に抑制できる。なお、上述した「周方向における単位厚み当たりの破断伸度(A2/t)」とは、試験片の長手方向がプリフォーム10aの周方向に対応している場合における、単位厚み当たりの破断伸度を意味する。また、上述した「上下方向における単位厚み当たりの破断伸度(A2/t)」とは、試験片の長手方向がプリフォーム10aの上下方向に対応している場合における、単位厚み当たりの破断伸度を意味する。
【0096】
試験片の長手方向がプリフォーム10aの上下方向に対応している場合、
2≦A2/t≦10
という関係を満たすことが好ましい。
一方、試験片の長手方向がプリフォーム10aの周方向に対応している場合、
2≦A2/t≦15
という関係を満たすことが好ましい。
【0097】
複合プリフォーム及び複合容器の製造方法
次に、図6(a)-(e)および図7(a)-(d)により、本実施の形態による複合容器10Aの製造方法(ブロー成形方法)について説明する。
【0098】
まず、プラスチック材料製のプリフォーム10aを準備する(図6(a)参照)。この場合、例えば図示しない射出成形機を用いて、射出成形法によりプリフォーム10aを作製しても良い。また、プリフォーム10aとして、従来一般に用いられるプリフォームを用いても良い。そして、プリフォーム10aは、口部11aを下に向けた状態で、樹脂フィルム40aを真空吸引するための載置台55上に載置される。この載置台55には、複数の貫通孔56が設けられており、後述するように、図示しない吸引装置によって貫通孔56から空気が吸引されることにより、樹脂フィルム40aが真空吸引されるようになっている。
【0099】
次に、プリフォーム10aの外側に樹脂フィルム40aを設ける。これにより、プリフォーム10aと、プリフォーム10aの外側に密着された樹脂フィルム40aとを有する複合プリフォーム70を作製する(図6(b)-(e)参照)。
【0100】
この際、まず、樹脂フィルム40aを加熱することにより、軟化させる(図6(b)参照)。このとき、樹脂フィルム40aは、加熱装置57によって、約110℃の加熱温度で約30秒間加熱されてもよい。
【0101】
次に、軟化した樹脂フィルム40aをプリフォーム10aの外側に被せる(図6(c)参照)。
【0102】
次いで、樹脂フィルム40aを真空吸引することにより、樹脂フィルム40aをプリフォーム10aの外側に密着させる(図6(d)参照)。このとき、図示しない吸引装置によって、貫通孔56から空気が吸引される。これにより、樹脂フィルム40aが、プリフォーム10aに吸い付けられる。このようにして、樹脂フィルム40aが、プリフォーム10aに密着する。
【0103】
その後、樹脂フィルム40aが、所望の形状に切断される。これにより、図6(e)に示すように、プリフォーム10aと、プリフォーム10aの外側に密着して設けられた樹脂フィルム40aとを備える複合プリフォーム70が得られる。
【0104】
このように、予めプリフォーム10aの外側に樹脂フィルム40aを密着させ、複合プリフォーム70を作製しておくことにより、複合プリフォーム70を作製する一連の工程(図6(a)-(e))と、複合容器10Aをブロー成形により作製する一連の工程(図7(a)-(d))とを別々の場所(工場等)で実施することが可能になる。
【0105】
次に、複合プリフォーム70は、加熱装置51によって加熱される(図7(a)参照)。このとき、複合プリフォーム70は、口部11aを下に向けた状態で回転しながら、加熱装置51によって周方向に均等に加熱される。この加熱工程におけるプリフォーム10aおよび樹脂フィルム40aの加熱温度は、例えば90℃乃至130℃としても良い。
【0106】
また、ブロー成形型50を準備する。そして、加熱装置51によって加熱された複合プリフォーム70は、複合容器10Aを作製するためのブロー成形型50に送られる(図7(b)参照)。
【0107】
複合容器10Aは、このブロー成形型50を用いて成形される。この場合、ブロー成形型50は、金属型または樹脂型である型本体52を備えており、型本体52は、互いに分割された一対の胴部型50a、50bと、底部型50cとからなる(図7(b)参照)。型本体52の内面は、容器本体10の首部13、胴部20および底部30に対応する形状を有している。図7(b)において、一対の胴部型50a、50b間は互いに開いており、底部型50cは上方に上がっている。この状態で型本体52の一対の胴部型50a、50b間に、複合プリフォーム70が挿入される。
【0108】
次に、図7(c)に示すように、底部型50cが下がったのちに一対の胴部型50a、50bが閉鎖され、型本体52の一対の胴部型50a、50bおよび底部型50cにより密閉されたブロー成形型50が構成される。次に、プリフォーム10a内に空気が圧入され、複合プリフォーム70に対して2軸延伸ブロー成形が施される。
【0109】
これにより、複合プリフォーム70は、ブロー成形型50の内面に対応する形状に賦形され、ブロー成形型50内でプリフォーム10aから容器本体10が得られる。この間、胴部型50a、50bは30℃乃至80℃まで加熱され、底部型50cは5℃乃至25℃まで冷却される。この際、ブロー成形型50内では、複合プリフォーム70のプリフォーム10aおよび樹脂フィルム40aが一体として膨張される。これにより、プリフォーム10aおよび樹脂フィルム40aは、一体となってブロー成形型50の内面に対応する形状に賦形される。
【0110】
このようにして、容器本体10と、容器本体10の外面に設けられた樹脂フィルム40とを備えた複合容器10Aが得られる。
【0111】
その後、図7(d)に示すように、型本体52の一対の胴部型50a、50bおよび底部型50cが互いに離れ、ブロー成形型50内から複合容器10Aが取出される。このようにして、図1および図2に示す複合容器10Aが得られる。
【0112】
以上説明したように、本実施の形態によれば、胴部20に対応する位置において、樹脂フィルム40の厚みTが5μm以上30μm以下である。胴部20に対応する位置において、厚みTが5μm以上であることにより、複合容器10Aに対して様々な機能や特性を付与することができる。また、胴部20に対応する位置において、厚みTが30μm以上であることにより、複合容器10Aに使用する樹脂量を低減できる。
【0113】
また、樹脂フィルム40の破断伸度をA1[%]とした場合、
2≦A1/T≦15
という関係を満たしている。
A1/T、すなわち、単位厚み(1μm)当たりの破断伸度が2[%]以上であることにより、厚みを薄くした場合に、樹脂フィルム40が伸びにくくなってしまうことを抑制できる。このため、厚みを薄くした場合であっても、落下時の衝撃などにより複合容器10Aの樹脂フィルム40が破れてしてしまうことを抑制できる。また、単位厚み当たりの破断伸度が15[%]以下であることにより、樹脂フィルム40のコストを低減できる。
【0114】
また、本実施の形態によれば、樹脂フィルム40を容器本体10から分離除去することができるので、従来と同様に無色透明な容器本体10をリサイクルすることができる。
【0115】
さらに、本実施の形態によれば、樹脂フィルムは、多層である。これにより、複合容器10Aに対して様々な機能や特性をより効果的に付与することができる。
【0116】
[変形例]
次に、複合容器10Aおよび複合プリフォーム70の変形例について説明する。図8は、複合容器10Aの一変形例を示し、図9は、複合プリフォーム70の一変形例を示している。図8および図9に示す変形例は、容器本体10およびプリフォーム10aの層構成が異なるものであり、他の構成は上述した図1乃至図7に示す実施の形態と略同一である。図8および図9において、図1乃至図7に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0117】
図8において、容器本体10は、外面を構成するバリア層100を更に有している。この場合、バリア層100は、首部13、肩部12、胴部20および底部30の全域を覆っている。これにより、容器本体10のバリア性を向上できる。このバリア層100は、複合プリフォーム70に対して2軸延伸ブロー成形を施すことにより、プリフォーム10aのバリア層100aから得られたものである。
【0118】
本変形例では、図9に示すように、プリフォーム10aは、外面を構成するバリア層100aを更に有している。この場合、バリア層100aは、胴部20aおよび底部30aの全域を覆っている。
【0119】
このようなバリア層100aは、例えば、上述した樹脂フィルム40のバリア層45と同様の材料および方法により形成することができる。すなわち、プリフォームに対して上述したバリア層用塗工液を塗工することにより、バリア層100aを形成することができる。なお、上述したように、塗工方法は、例えば、印毛等により塗布する方法、バリア層用塗工液を噴霧する方法、または、バリア層100aが形成される前のプリフォームをバリア層用塗工液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0120】
バリア層用塗工液から形成された塗工膜の乾燥温度は、溶媒を除去できる温度である。乾燥温度は、好ましくは20℃以上80℃以下であり、より好ましくは40℃以上70℃以下であり、更に好ましくは50℃以上70℃以下である。
【0121】
本変形例によれば、容器本体10が、外面を構成するバリア層100を更に有している。これにより、複合容器10Aのバリア性を向上できる。また、本実施の形態では、プリフォーム10aのバリア層100aは、バリア層100aを構成する材料と溶媒とを含むバリア層用塗工液を、例えば、プリフォーム上に塗工することにより形成され得る。このため、所望の厚みのバリア層100aを容易に得ることができ、複合容器10Aのバリア性を容易に向上できる。
【0122】
上記実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0123】
10 容器本体
10A 複合容器
10a プリフォーム
20 胴部
20a 胴部
30 底部
30a 底部
40 樹脂フィルム
40a 樹脂フィルム
70 複合プリフォーム
100 バリア層
100a バリア層
401 内面
402 外面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9