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特開2022-175015活性炭入り発泡ガラス、その製造方法及びそれを含む水質向上剤
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  • 特開-活性炭入り発泡ガラス、その製造方法及びそれを含む水質向上剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175015
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】活性炭入り発泡ガラス、その製造方法及びそれを含む水質向上剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20221117BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20221117BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B01J20/20 D
B01J20/30
C02F1/28 D
C02F1/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081117
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】510040363
【氏名又は名称】株式会社鳥取再資源化研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】中野 惠文
(72)【発明者】
【氏名】今崎 孝治
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 義章
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
【Fターム(参考)】
4D624AA01
4D624AB05
4D624AB11
4D624AB17
4D624BA02
4D624BB01
4D624BC04
4G066AA05B
4G066AA71C
4G066AA75D
4G066AC07A
4G066BA09
4G066BA22
4G066CA31
4G066CA50
4G066CA56
4G066DA07
4G066FA02
4G066FA22
4G066FA34
4G066FA37
4G066FA40
(57)【要約】
【課題】天然の素材を用いながら、取り扱いやすく、価格も高価でなく、水質向上に優れる、新たな水質向上剤を提供する。
【解決手段】内部に細孔を有する発泡ガラスであって、発泡ガラスの表面及び内部に、100.0質量部のガラスに対して、11.0質量部以上24.0質量部以下の活性炭を含む、活性炭入り発泡ガラス、及びその活性炭入り発泡ガラスを含む水質向上剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に細孔を有する発泡ガラスであって、
発泡ガラスの表面及び内部に、100.0質量部のガラスに対して、11.0質量部以上24.0質量部以下の活性炭を含む、活性炭入り発泡ガラス。
【請求項2】
発泡ガラス内部の細孔に活性炭が存在する、請求項1に記載の活性炭入り発泡ガラス。
【請求項3】
発泡ガラス内部の細孔は、連続孔である、請求項1又は2に記載の活性炭入り発泡ガラス。
【請求項4】
ガラスを粉砕して、ガラス粉を得ること;
100.0質量部のガラス粉に、11.0質量部以上24.0質量部以下の活性炭と、0.1質量部以上6.0質量部以下の発泡剤を混合して混合物を得ること;
混合物を、650℃以上1150℃以下に加熱して、発泡ガラスを得ること
を含む、活性炭入り発泡ガラスの製造方法。
【請求項5】
ガラスを粉砕して、ガラス粉を得ること;
100.0質量部のガラス粉に、11.0質量部以上24.0質量部以下の炭と、0.1質量部以上6.0質量部以下の発泡剤を混合して混合物を得ること;
混合物を、650℃以上1150℃以下に加熱して、発泡ガラスを得ること
を含む、活性炭入り発泡ガラスの製造方法。
【請求項6】
炭は、木炭、もみ殻炭、竹炭、草炭、ヤシ殻炭から選択される少なくとも一種を含む、請求項5に記載の活性炭入り発泡ガラスの製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の活性炭入り発泡ガラスを含む、水質向上剤。
【請求項8】
水質向上剤は、残留塩素除去剤、6価クロム除去剤、フミン酸除去剤及び色度低下剤から選択される、請求項7に記載の水質向上剤。
【請求項9】
請求項7に記載の水質向上剤を用いる、水質向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭入り発泡ガラス、その製造方法及びそれを含む水質向上剤に関し、さらに詳しくは、発泡ガラスの表面及び内部に活性炭を含む、活性炭入り発泡ガラス、その製造方法及びそれを含む水質向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
単体の塩素(Chlorine、Cl)は、水1L当たり、標準状態で2.5Lのその気体が溶けて、塩素水となり、その塩素水中に、塩素(Cl)及び次亜塩素酸(Hypochlorous Acid , HClO)が存在する。HClOのpKaは、約7.5なので、pH7では、HClOの約80%がHClOとして存在し、残りの約20%がClOとして存在する。
【0003】
塩素(Cl)は、化学工業の原料、水の殺菌、紙パルプ業での消毒及び漂自剤等として使用されている。2012年6月に、日本では食品添加物として指定され、使用基準及び成分規格が定められた。
【0004】
Clが水に溶けて生成する次亜塩素酸及びクロラミン(Clがアンモニアと結合して生じる物質)の両者を合わせて残留塩素(Residual Chlorine)といい、前者を遊離残留塩素といい、後者を結合残留塩素という。
【0005】
ところで活性炭は、多孔性の炭素質吸着剤であり、水処理及び脱臭などに広範に用いられる。塩素は、活性炭に吸着されるとともに、接触的に還元されて、塩化物イオン(Cl)になるので、活性炭は、残留塩素の低減にも使用される。
【0006】
そのような活性炭は、破砕粉末か粒状であり、容器又は袋に入れて取り扱わねばならず、用途に応じて、適切な形状に適宜成形することが困難であるという問題がある。
例えば、特許文献1は、多孔質セラミック構造体(具体的には、酸化ケイ素及びアルミナ等)に活性炭を担持させてなるコア部と、このコア部を覆う多孔質セラミックからなる表層部とを備える吸着セラミックを開示する。このコア部は、5~60重量%のセラミック構造体と40~95重量%の活性炭を含む(特許文献1請求項1~3参照)。活性炭の集合体や活性炭セラミックの表面から活性炭の微粉末が粉落ちすることを防止することができるという有利な効果を奏する。
【0007】
特許文献2は、もみ殻を炭化して多孔質もみ殻に炭素を付着させたもみ殻活性炭及びもみ殻活性炭を、通油性を有する袋体に充填する油吸着材を開示する。特許文献2は、袋体に充填したもみ殻活性炭の表面積の大きさに特徴を有し、水浄化環境浄化に使用できることを開示する(特許文献2請求項1~4、[0008]~[0014]等参照)。
【0008】
特許文献3は、PVA樹脂多孔質体に、粉末又は粒状の活性炭が混在して定着した活性炭複合体を開示し、それは、PVA樹脂多孔質体の特性を損なわず、かつ活性炭の吸着性能を有効に発揮させることができることを開示する(特許文献3請求項1~2、[0006]~[0010]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-211428号公報
【特許文献2】特開2011-20192号公報
【特許文献3】特開2018-177588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、ますます、環境保護が重要になりつつあり、天然の素材を用いながら、取り扱いやすく、価格も高価でなく、水質向上に優れる、新たな水質向上剤及びその製造方法が要求されている。
特許文献1の吸着セラミックは、多孔質セラミックからなる表層部と多孔質セラミックに活性炭を担持させてなるコア部からなるという2重構造を有する。特許文献1は、その吸着セラミックの製造方法を何ら開示することはなく、その製造法が不明である。
特許文献2のもみ殻活性炭は、通油性を有する袋に充填して使用するので、必ずしも取り扱い易いとは言えない。
特許文献3の活性炭複合体は、PVA樹脂の多孔質体を使用するので、使用後の廃棄に問題を生じ得る。
その他、特許文献1~3には、吸着性能及び吸着効率が十分ではない、寿命が十分ではないという問題もある。また、活性炭そのものを使用しなければならないので取り扱い性に劣る、または活性炭を高割合で添加し又は加工しなければ、その吸着性能を有効に活かすことができないという問題もある。
【0011】
本発明は、天然の素材を用いながら、取り扱いやすく、価格も高価でなく、水質向上に優れる、新たな水質向上剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、発泡ガラスがその細孔内部に、特定量の活性炭を含む場合、優れた水質向上効果を奏することを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本明細書は、下記の形態を含む。
1.内部に細孔を有する発泡ガラスであって、
発泡ガラスの表面及び内部に、100.0質量部のガラスに対して、11.0質量部以上24.0質量部以下の活性炭を含む、活性炭入り発泡ガラス。
2.発泡ガラス内部の細孔に活性炭が存在する、請求項1に記載の活性炭入り発泡ガラス。
3.発泡ガラス内部の細孔は、連続孔である、上記1又は2に記載の活性炭入り発泡ガラス。
4.ガラスを粉砕して、ガラス粉を得ること;
100.0質量部のガラス粉に、11.0質量部以上24.0質量部以下の活性炭と、0.1質量部以上6.0質量部以下の発泡剤を混合して混合物を得ること;
混合物を、650℃以上1150℃以下に加熱して、発泡ガラスを得ること
を含む、活性炭入り発泡ガラスの製造方法。
5.ガラスを粉砕して、ガラス粉を得ること;
100.0質量部のガラス粉に、11.0質量部以上24.0質量部以下の炭と、0.1質量部以上6.0質量部以下の発泡剤を混合して混合物を得ること;
混合物を、650℃以上1150℃以下に加熱して、発泡ガラスを得ること
を含む、活性炭入り発泡ガラスの製造方法。
6.炭は、木炭、もみ殻炭、竹炭、草炭、ヤシ殻炭から選択される少なくとも一種を含む、上記5に記載の活性炭入り発泡ガラスの製造方法。
7.上記1~3のいずれか1つに記載の活性炭入り発泡ガラスを含む、水質向上剤。
8.水質向上剤は、残留塩素除去剤、6価クロム除去剤、フミン酸除去剤及び色度低下剤から選択される、上記7に記載の水質向上剤。
9.上記7に記載の水質向上剤を用いる、水質向上方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態の発泡ガラスは、内部に細孔を有する発泡ガラスであって、発泡ガラスの表面及び内部に、ガラス100質量部あたり、活性炭を、11.0~24.0質量部含む、活性炭入り発泡ガラスである。本発明の実施形態の発泡ガラスは、天然の素材を用いて製造することができ、取り扱いやすく、価格も高価でなく、水質向上に優れる効果を奏することができる。従って、本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスは、水質向上剤として、好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、デジタルマイクロスコープによる、実施例1の活性炭入り発泡ガラスの画像を示す。
図2図2は、デジタルマイクロスコープによる、比較例1の発泡ガラスの画像を示す。
図3図3は、実施例1~2の発泡ガラス(100質量部にガラスに対する活性炭含有量:20.0質量部、15.0質量部)及び比較例1~3の発泡ガラス(100質量部にガラスに対する活性炭含有量:0質量部、10.0質量部、25.0質量部)の各々を、NaClO溶液(液温:25℃、pH:約7)と、発泡ガラス/NaClO溶液=1/50の(固/液)比で、30分間接触させたときの残留塩素濃度を示す。即ち、図3は、活性炭添加量の影響を示す。
図4図4は、実施例1の発泡ガラス(◆:「ACPG」ともいう)及び比較例1の発泡ガラス(■:「PG」ともいう)、比較例4の活性炭(▲:「AC」ともいう)の各々を、NaClO溶液(液温:25℃、pH:約7)と、発泡ガラス/NaClO溶液=1/50の(固/液)比で、接触時間を変えて接触させたときの、残留塩素の残留率を示す。即ち、図4は、接触時間の影響を示す。
図5図5は、実施例1の発泡ガラス(◆)及び比較例1の発泡ガラス(■)、比較例4の活性炭(▲)の各々を、NaClO溶液(液温:25℃、pHを種々変える)と、発泡ガラス/NaClO溶液=1/50の(固/液)比で、30分間接触させたときの、残留塩素の残留率を示す。即ち、図5は、(固/液)比が1/50場合の、pHの影響を示す。
図6図6は、実施例1の発泡ガラス(◆)及び比較例1の発泡ガラス(■)、比較例4の活性炭(▲)の各々を、NaClO溶液(液温:25℃、pH:約7)と、発泡ガラス/NaClO溶液の(液/固)比を種々変えて、30分間接触させたときの、残留塩素の残留率を示す。即ち、図6は、(液/固)比の影響を示す。
図7図7は、実施例1の発泡ガラス及び比較例1の発泡ガラス、比較例4の活性炭そのものの各々を、Cr(VI)溶液(液温:25℃、pHを種々変える)と、発泡ガラス/Cr(VI)溶液=1/20の(固/液)比で、10分間接触させたときの、Cr(VI)の残留率を示す。即ち、図7は、Cr(VI)の除去における、pHの影響を示す。
図8図8は、実施例1の発泡ガラス及び比較例1の発泡ガラス、比較例4の活性炭そのものの各々を、フミン酸溶液(液温:25℃、pH:約7)と、発泡ガラス/フミン酸溶液=1/20の(固/液)比で、種々の接触時間で接触させたときの、フミン酸の残留率を示す。即ち、図8は、フミン酸除去における、接触時間の影響を示す。
図9図9は、実施例1の発泡ガラス及び比較例1の発泡ガラス、比較例4の活性炭そのものの各々を、フミン酸溶液(液温:25℃、pH:約7)と、発泡ガラス/フミン酸溶液=1/20の(固/液)比で、種々の接触時間で接触させたときの、色度の残留率を示す。即ち、図9は、フミン酸色素除去における、接触時間の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一の要旨において、活性炭入り発泡ガラスを提供し、それは、
内部に細孔を有する発泡ガラスであって、
発泡ガラスの表面及び内部に、ガラス100質量部あたり、活性炭を、11.0~24.0質量部含む。
【0017】
本発明の実施形態において、発泡ガラスとは、多くの細孔が存在するガラスであり、その細孔に活性炭を保持することができ、好ましくは水を透過することができ、本発明が目的とする活性炭入り発泡ガラスを得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0018】
本発明の実施形態において、活性炭入り発泡ガラスは、透水性を有することが好ましい。
活性炭入り発泡ガラスの透水性は、約5×約5×約5cmの直方体の塊状発泡ガラスを、200mLの蒸留水が通過する時間を測定することで、評価することができる。200mLの蒸留水の少なくとも1部が、発泡ガラスを通過する時間が、24時間以内である場合、透水性を有すると考えられる。この場合、本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスを用いることで、水質をより容易に向上させることができるという有利な効果を奏する。
【0019】
活性炭入り発泡ガラスは、二酸化ケイ素と活性炭を主成分とし、二酸化ケイ素は、土壌と実質的に同じ成分なので、土壌にもどることが可能であり、地球環境を汚染する恐れが小さい。
【0020】
活性炭入り発泡ガラスのサイズは、例えば、30mm以下であり、例えば、25mm以下であり、例えば、20mm以下であり、例えば、15mm以下であり、例えば、10mm以下であり、例えば、7mm以下である。多孔質体のサイズは、例えば、30mm以下であり、例えば、25mm以下であり、例えば、20mm以下であり、例えば、0.5mm以上であり、例えば、1mm以上であり、例えば、2mm以上であり、3mm以上である。多孔質体のサイズは、篩の目開きがXmmである篩を通りぬけるか否かで示す。
【0021】
活性炭入り発泡ガラスの細孔径は、例えば、0.1~1000μmであり、0.3~500μmであることが好ましく、0.6~100μmであることがより好ましく、1~50μmであることが特に好ましい。
【0022】
本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスは、発泡ガラス内部の細孔に活性炭が存在することが好ましい。活性炭が、発泡ガラス内部の細孔に活性炭が存在する場合、吸着作用及び還元反応がより効率的に生じ得るという有利な効果を奏し得る。
【0023】
本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスは、発泡ガラス内部の細孔は、連続孔であることが好ましい。細孔が連続孔である場合、より軽量となり、取り扱い性がより向上し、より透水性に富み、水との接触性がより向上し、吸着作用及び還元反応がより効率的に生じ得るという有利な効果を奏し得る。
【0024】
本明細書において、活性炭とは、吸着効率を高めるために化学的または物理的な処理(活性化、賦活)を施した多孔質の炭素を主な成分とする物質をいい、本発明が目的とする活性炭入り発泡ガラスを得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0025】
活性炭の大きさは、発泡ガラスの細孔に入る大きさであることが好ましく、0.01~1.0mmであることが好ましく、0.02~0.9mmであることがより好ましく、0.03~0.8mmであることが更に好ましい。活性炭の大きさが、0.01~1.0mmである場合、活性炭入り発泡ガラスは、還元反応がより短時間で進行するという有利な効果を奏し得る。
【0026】
本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスは、ガラス100質量部あたり、活性炭を、11.0~24.0質量部含むことが好ましく、11.5~23.5質量部含むことがより好ましく、12.0~23.0質量部含むことが更に好ましく、12.5~22.5質量部含むことが更により好ましい。活性炭入り発泡ガラスが、活性炭を11.0~24.0質量部含む場合、残留塩素除去、6価クロム除去、フミン酸除去、着色の低下という有利な効果を奏することができる。
【0027】
また、本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスは、ガラス100質量部あたり、活性炭を、11.0~24.0質量部含むことが好ましく、11.5~23.5質量部含むことがより好ましく、12.0~23.0質量部含むことが更に好ましく、12.5~22.5質量部含むことが更により好ましい。活性炭入り発泡ガラスが、活性炭を11.0~24.0質量部含む場合、残留塩素除去、6価クロム除去、フミン酸除去、着色の低下という有利な効果を奏することができる。
【0028】
本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスは、それを製造することができる限り、その製造方法は特に制限されることはないが、例えば、粉砕したガラス、発泡剤、及び活性炭又は炭の混合物を焼成することで製造することができる。
【0029】
本発明の実施形態において、活性炭入り発泡ガラスの製造方法を提供し、それは、
ガラスを粉砕して、ガラス粉を得ること;
ガラス粉100質量部あたり、11.0質量部以上24.0質量部以下の活性炭と、0.1質量部以上6.0質量部以下の発泡剤を混合して混合物を得ること;
混合物を、650℃以上1150℃以下に加熱して、発泡ガラスを得ること
を含む。
【0030】
本発明の他の実施形態において、他の活性炭入り発泡ガラスの製造方法を提供し、それは、
ガラスを粉砕して、ガラス粉を得ること;
ガラス粉100質量部あたり、11.0質量部以上24.0質量部以下の炭と、0.1質量部以上6.0質量部以下の発泡剤を混合して混合物を得ること;
混合物を、650℃以上1150℃以下に加熱して、発泡ガラスを得ること
を含む。
そのような本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスの製造方法について詳細に説明する。
【0031】
まず、発泡ガラスの原料となるガラス(以下、「原料ガラス」と称する)を粉砕する。本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスを得られる限り、原料ガラスの種類は特に限定されないが、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどが例示される。原料のガラスには、ブラウン管、液晶、プラズマディスプレイなどに由来する廃ガラスを用いてもよい。原料ガラスの粉砕方法は特に限定されず、市販の振動ミルなどを用いて粉砕することができる。粉砕後のガラス(以下、「粉砕ガラス」と称する)の粒径は、特に限定されないが、粉砕ガラスと後述する発泡剤とが均一に混合されるように小さい方が好ましい。一例では、原料ガラスの粉砕後に目開きが500μm以下である篩を用いて粒度選別を行って、粉砕ガラスの粒径が500μm以下になるようにすることが好ましい。
なお、本明細書において、「粒径がXμm以下である」とは、篩の目開きがXμmである篩を通りぬけることを意味する。
【0032】
次に、粉砕ガラスに発泡剤を加える。本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスを得られる限り、発泡剤の種類は、特に限定されないが、例えば、Si、CaCO、及びCaCOを含む材料(例えば、貝殻)等を用いることができる。このような発泡剤は、ガラスが軟化する温度でガスを発生させるので、その結果、ガラス内部に多数の細孔が形成されて、発泡ガラスが製造される。また、発泡剤の含有量は、特に限定されないが、ガラス100.0質量部当たり、0.1~6.0質量部であることが好ましく、0.2~4.0質量部であることが特に好ましい。上述の含有量である場合、発泡がより十分に起こるので、より強度が向上した発泡ガラスが得られるので好ましい。
発泡剤は、炭酸カルシウムを(好ましくは主成分として)含むことが好ましい。
発泡剤は、貝殻を(好ましくは主成分として)含むことが好ましい。
【0033】
更に、粉砕ガラスに活性炭を混合する。本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスを得られる限り、活性炭の種類は特に制限されることはない。尚、粉砕ガラスに発泡剤と活性炭を加える順序は、いずれが先であってもよく、特に制限されることはない。
活性炭として、例えば、一般的に選択的吸着剤、分離剤、担体、イオン交換用途などに使用されている活性炭を例示することができ、市販品を使用することができる。
活性炭は、混合する前に粉砕して、粉末状にすることが好ましい、活性炭の大きさは、0.01~1.0mmであることが好ましく、0.02~0.9mmであることがより好ましく、0.03~0.8mmであることが更に好ましい。活性炭の大きさが、0.01~1.0mmである場合、活性炭入り発泡ガラスは、還元反応がより短時間で進行し得るという有利な効果を奏し得る。尚、活性炭の大きさとは、マイクロスコープによる目視観察において観察される、活性炭の形状の一番長い径を測定して、活性炭の大きさとした。従って、例えば、活性炭が楕円形の形状で観察されたならば、その楕円形の長軸の長さを活性炭の大きさとした。
活性炭は、粉砕ガラス100質量部当たり、11.0~24.0質量部加えることが好ましく、11.5~23.5質量部加えることがより好ましく、12.0~23.0質量部加えることが更に好ましく、12.5~22.5質量部加えることが更により好ましい。
【0034】
次に、粉砕ガラスと発泡剤と活性炭の混合物を焼成する。本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスを得られる限り、焼成温度及び焼成時間は、特に限定されることはなく、ガラスが適切に発泡するように、活性炭が適切に活性を維持できるように、ガラスや発泡剤の種類に応じて適宜設定することができる。焼成温度は、一例では、650~1150℃である。さらに例えば、700~1100℃である。焼成温度は、ソーダ石灰ガラスについては、800~1000℃が好ましい。このような焼成温度の場合、ガラスがより十分に軟化して細孔がより適切に形成され、より好ましい発泡ガラスを製造することができる。また、焼成時間は、一例では、1~60分であり、一例では、3~25分であり、好ましくは、5~20分である。このような焼成時間の場合、発泡がより十分に起こり、より好ましい活性炭入り発泡ガラスを製造することができる。
【0035】
一方、粉砕ガラスに、活性炭の代わりに、炭を加えることができる。本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスを得られる限り、炭の種類は特に制限されることはない。尚、粉砕ガラスと発泡剤と炭を混合する順序は、いずれが先であってもよく、特に制限されることはない。炭として、例えば、木炭、竹炭、もみ殻炭、草炭、ヤシ殻炭等を例示することができ、市販品を使用することができる。炭として、木炭、竹炭が好ましい。近年活性炭の需要が世界的に増加しており、価格も上昇しているので、より安価でより容易に入手可能な炭を使用すると、未利用資源がより有効活用され、より低コストで、より安定して、国際情勢に影響されることなく活性炭入り発泡ガラスを製造することが可能であり、より好ましい。
【0036】
炭は、混合する前に粉砕して、粉末状にすることが好ましい、炭の大きさは、0.01~1.0mmであることが好ましく、0.02~0.9mmであることがより好ましく、0.03~0.8mmであることが更に好ましい。炭の大きさが、0.01~1.0mmである場合、炭入り発泡ガラスは、還元反応がより短時間で進行するという有利な効果を奏し得る。尚、炭の大きさとは、マイクロスコープによる目視観察において観察される、炭の形状の一番長い径を測定して、炭の大きさとした。従って、例えば、炭が楕円形の形状で観察されたならば、その楕円形の長軸の長さを活性炭の大きさとした。
炭は、粉砕ガラス100質量部当たり、11.0~24.0質量部加えることが好ましく、11.5~23.5質量部加えることがより好ましく、12.0~23.0質量部加えることが更に好ましく、12.5~22.5質量部加えることが更により好ましい。
【0037】
次に、粉砕ガラスと発泡剤と炭の混合物を焼成する。本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスを得られる限り、焼成温度及び焼成時間は、特に限定されることはなく、ガラスが適切に発泡するように、炭が適切に活性化されて(賦活されて)、活性炭に変換されるように、ガラスや発泡剤の種類に応じて適宜設定することができる。焼成温度は、一例では、600~1150℃である。さらに例えば、700~1100℃である。焼成温度は、ソーダ石灰ガラスについては、800~1000℃が好ましい。このような焼成温度の場合、ガラスがより十分に軟化して細孔がより適切に形成され、より好ましい発泡ガラスを製造することができる。また、焼成時間は、一例では、1~60分であり、一例では、3~25分であり、好ましくは、5~20分である。このような焼成時間の場合、発泡がより十分に起こり、より好ましい活性炭入り発泡ガラスを製造することができる。
【0038】
製造された活性炭入り発泡ガラスは、塊状のまま用いてもよいが、粉砕したものを用いてもよい。粉砕後の発泡ガラスの粒径は、特に限定されないが、例えば、30mm以下であり、例えば、25mm以下であり、例えば、20mm以下であり、例えば、15mm以下であり、例えば、10mm以下であり、例えば、7mm以下である。
なお、活性炭入り発泡ガラスの「粒径がXmm以下である」とは、篩の目開きがXmmである篩を通りぬけることを意味する。
【0039】
本発明の実施形態において、活性炭入り発泡ガラスを含む、水質向上剤を提供することができる。
その水質向上剤は、水中の種々の物質を減らすことができる、例えば、残留塩素、フミン酸、水中の色素、汚濁物質、6価クロム等を減少させることができる。従って、本発明の実施形態において、活性炭入り発泡ガラスを含む、残留塩素除去剤、フミン酸除去剤、色度低下剤、6価クロムから選択される、水質向上剤を提供することができる。尚、フミン酸とは、腐植酸ともいい、植物などが微生物による分解を経て形成された最終生成物であるフミン質(腐植物質)のうち、酸性の無定形高分子有機物であり、通常、フミン酸と理解される物質であれば特に制限されることはない。
更に、そのような水質向上剤を用いる、水質向上方法を提供することができる。
【実施例0040】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0041】
(1)本実施例で使用した材料を以下に示す。
ガラス: リサイクルされたビンガラス
木炭:針葉樹及び広葉樹硬質炭(奈良炭化工業株式会社製 グリーンタンソ1号(粒径:1mm以下、比重が重く水に沈む。農業用土壌改良炭として販売されている。活性炭ではない。)
貝殻:ムール貝
活性炭(比較例4として使用した):活性炭(富士フィルム和光純薬工業製、粒径:3~5mm)
【0042】
実施例1:活性炭入り発泡ガラス1の製造
ガラスを粉砕し、30 meshの篩を通して、ガラス粉を得た。次に、ガラス粉100g に対し貝殻1.2 gと木炭20 gを加えて、930℃、20分で融解し発泡させた。発泡したガラスを粉砕し、1mmの篩を通し、実施例1の活性炭入り発泡ガラス1の粉体1を得た。粒径は2mm以下であった。
【0043】
実施例2:活性炭入り発泡ガラス2の製造
ガラス粉100g に対し貝殻1.2 gと木炭15 gを加えたことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、実施例2の活性炭入り発泡ガラス2の粉体2を得た。粒径は2mm以下であった。
【0044】
比較例1:活性炭を含まない発泡ガラス11の製造
ガラス粉100g に対し貝殻1.2 gを加えたこと、920℃、15分で融解し発泡させたことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、比較例1の活性炭を含まない発泡ガラス11の粉体11を得た。粒径は2mm以下であった。
【0045】
比較例2:活性炭入り発泡ガラス12の製造
ガラス粉100g に対し貝殻1.2 gと木炭10.0 gを加えたことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、比較例2の活性炭入り発泡ガラス12の粉体12を得た。粒径は2mm以下であった。
【0046】
比較例3:活性炭入り発泡ガラス13の製造
ガラス粉100g に対し貝殻1.2 gと木炭25.0 gを加えたことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、比較例3の活性炭入り発泡ガラス13の粉体13を得た。粒径は2mm以下であった。
【0047】
【表1】
【0048】
(2)活性炭入り発泡ガラスの顕微鏡観察
実施例1の発泡ガラスと比較例1の発泡ガラスの各発泡ガラスを、ロータリーカッターで1cm角程度の大きさに裁断後、表面の削り屑をダスターで除去して、各サンプルを得た。各々のサンプルを、デジタルマイクロスコープ(VH-5500, キーエンス製)を用いて、観察した。図1に、デジタルマイクロスコープによる実施例1の発泡ガラスの画像を示した。図2に、比較例1の発泡ガラスの画像を示した。
【0049】
図1より、実施例1の発泡ガラスでは、活性炭と考えられる黒色物質が細孔に挟まっている状態が確認された(図1の中央に見える黒色物質(活性炭)は、長軸約680μm×単軸約250μmである)。このように、発泡ガラスの大小さまざまな細孔内に活性炭が埋め込まれるように存在している事が示された。また、発泡ガラス表面の一部にも活性炭と思われる黒色粒子が付着している事が確認された。
これに対し、図2から、比較例1の発泡ガラスでは、活性炭と考えられる黒色物質は、認められなかった。マイクロスコープによる観察において、実施例1の発泡ガラスと比較例1の発泡ガラスが有する細孔はどちらも、約20μm~1000μmの種々の大きさの径を有し、それらの細孔径の大きさは、さまざまであった。尚、細孔径は、マイクロスコープによる目視観察において、細孔の長さ方向と垂直方向で一番長い径を、細孔径とした。従って、例えば、細孔の長さ方向と垂直方向の細孔の形状が楕円である場合、楕円の長軸の長さを細孔の径とした。
【0050】
(3)残留塩素除去試験
種々のpHを示す塩素(Cl)含有溶液を以下のように準備した。
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)溶液(有効塩素(Cl):5.0質量%、富士フィルム和光純薬(株)製)を用い、その塩素(Cl)濃度が1000 mg L-1となるように調整し、必要に応じて希釈して、塩素(Cl)含有溶液として使用した。
この塩素含有溶液のpHを、一旦pH7付近に調整するために、0.2 mol L-1リン酸二水素カリウム(KHPO)溶液を加えた(全量20 mLに対し1mL)。その後、0.5 mol L-1の塩酸または0.5 mol L-1の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、所定のpHに調整し、脱イオン水で全量を20 mLとして、目的とするpHを有する塩素含有溶液を得た。
【0051】
残留塩素除去試験は下記のように行った。
実施例1~2の発泡ガラス(ガラス100質量部あたり活性炭含有量:20.0質量部、15.0質量部)及び比較例1~3の発泡ガラス(ガラス100質量部あたり活性炭含有量:0質量部、10.0質量部、25.0質量部)の各々を、pH 7付近(pH6.7~7.3)に調整したNaClO溶液(CIの初濃度:80~90 mg L-1)に加えて混合物を得た。各混合物の発泡ガラスとNaClO溶液との比(固/液比)は、各々1/50(0.4g/20mL)であった。25℃の液温で、混合物を30分間振とうして、発泡ガラスとNaClO溶液を接触させた(接触時間:30分間)。
0.45μmフィルターを用いて、混合物をろ過後、ろ液中の残留Cl濃度をジエチルパラフェニレンジアミン硫酸塩による吸光光度法を用いて残留塩素濃度を分析して示した。結果を図3に示した。
【0052】
発泡ガラスに含まれる活性炭の含有量が増加するにつれて残留Cl濃度は減少し、実施例2及び1(ガラス100質量部あたり、15.0及び20.0質量部)の場合、各々、1.5及び1.1 mg L-1であった。比較例3(ガラス100質量部当たり活性炭含有量:25.0質量部)の場合、残留Cl濃度は上昇して、20.8 mg L-1であった。比較例3では、活性炭の含有量が多いので、ガラス粉との混合(発泡体への担持及び付着)が不十分であった可能性がある。
【0053】
残留塩素の残留率に関する発泡ガラスとNaClO溶液との接触時間の影響
実施例1の発泡ガラス(◆:「ACPG」ともいう)及び比較例1の発泡ガラス(■:「PG」ともいう)、比較例4の活性炭(▲:「AC」ともいう)の各々に、NaClO溶液(初濃度86.1 - 90.1mg L-1)を加えた混合物を得た。各混合物の接触時間を変えたことを除いて、上述の残留塩素除去試験に記載の方法と同様の方法を用いて、残留塩素の残留率を調べた。尚、比較例4の活性炭とNaClO溶液との固液比について、実施例1の発泡ガラス中の活性炭含有量と同様にするため、比較例4とNaClO溶液との固液比を、0.08 g/20 mLとした。その結果を図4に示した。
【0054】
実施例1の発泡ガラス1(◆)では、接触時間10分で、残留Cl濃度が0近くに減少した。つまり、10分間で、HClOの還元が完了して、無害なClになったと考えられる。これに対し比較例1の発泡ガラス(■)では、残留Cl濃度は全く変化することはなく、比較例1の発泡ガラスには、HClOの還元作用が認められないことが明らかであった。比較例4の活性炭のみ(▲)では、HClO残留率は減少したが、実施例1より残留率が大きかった。このHClO還元作用は実施例1と比較例4の結果を考慮すると、活性炭単独より活性炭が発泡ガラスに組み込まれている方が短い接触時間で進むことが示された。
【0055】
残留塩素の残留率に関するNaClO溶液のpHの影響(その1)
実施例1の発泡ガラス(◆)及び比較例1の発泡ガラス(■)、比較例4の活性炭(▲)の各々に、NaClO溶液(初濃度83.8 - 88.5 mg L-1)を加えて混合物を得た。各混合物のpHを変えたこと、接触時間を30分間にしたことを除いて、上述の発泡ガラスとNaClO溶液との接触時間の影響に記載の方法と同様の方法を用いて、残留塩素の残留率を調べた。その結果を図5に示した。
【0056】
実施例1の発泡ガラス1は、pH2.5から8付近の広範な範囲で、残留Cl濃度が0付近となることが分かった。実施例1の発泡ガラスは、比較例4の活性炭単独よりも、pH5~8の範囲で、より優れた残留塩素除去性能を示した。
【0057】
残留塩素の残留率に関するNaClO溶液のpHの影響(その2)
実施例1の発泡ガラス(◆)と比較例1の発泡ガラス(■)の混合物について、各混合物の発泡ガラスとNaClO溶液との比(固/液比)を、各々1/20(1.0g/20mL)に変えたこと、実施例1の発泡ガラス中の活性炭含有量と同様にするため、比較例4とNaClO溶液との固液比を、0.2 g/20 mLとしたことを除いて、NaClO溶液のpHの影響(その1)に記載の方法と同様の方法を用いて、残留塩素の残留率を調べた(図示せず)。
【0058】
実施例1の発泡ガラス1は、固液比1/20の場合では、より広範囲なpH2.5から11.2の範囲で残留Cl濃度が0付近となることが分かった。これは、塩素に対して活性炭入り発泡ガラスの量が増えたからと考えられる。
【0059】
残留塩素の残留率に関する発泡ガラスとNaClO溶液との比(固/液比)の影響
NaClO溶液(初濃度85.2 - 87.2 mg L-1)のpHを7付近に調節したこと、液温は25℃付近に調整したこと、接触時間を30分間に調整したこと、発泡ガラスとNaClO溶液との固/液比1/2~1/500の範囲で変えたことを除いて、上述の発泡ガラスとNaClO溶液との接触時間の影響に記載の方法と同様の方法で残存塩素の残留率を調べた。その結果を図6に示した。尚、図6では、固/液比の逆数の液/固比で示されている。
【0060】
実施例1の発泡ガラス1では、固液比1/2から1/100にわたって残留Cl濃度が0付近となることが分かった。比較例4の活性炭単独と同じ活性炭量が用いられているにも関わらず、実施例1の発泡ガラスは、固/液比の非常に広範な範囲で残留Clに対する非常に高い除去能を示す事が分かった。
【0061】
残留塩素の残留率に関するNaClOの液温の影響
NaClO溶液(初濃度81.8-86.4 mg L-1)のpHを、pH 3.5-4.5の範囲に調整したこと、液温を20, 30, 40, 50℃の各々の温度に調整したことを除いて、上述の発泡ガラスとNaClO溶液との接触時間の影響に記載の方法と同様の方法で残存塩素の残留率を調べた(図示せず)。
【0062】
実施例1の発泡ガラス1は、20~50℃のいずれの液温でも残留Cl濃度がほぼ0となり、非常に広範な温度範囲で、有効に使用できることが分かった。これに対し比較例4の活性炭のみは、室温付近で必ずしも十分でない可能性があることが分かった。
【0063】
残留塩素の残留率に関する共存塩の影響
実施例1の発泡ガラスについて、NaClO溶液(初濃度約50 mg L-1)に共存塩を加えたこと、接触時間を30分間としたことの他は、上述の発泡ガラスとNaClO溶液との接触時間の影響に記載の方法と同様の方法で残存塩素の残留率を調べた(図示せず)。
1mg/L共存したとしても、発泡ガラス1を用いる残留Cl除去に影響が見られなかった金属イオンは、鉄 Fe (III)、マンガンMn (II)、シュウ酸であった。
【0064】
(4)六価クロム除去試験
Cr(VI)溶液 (100 mg L-1)は、クロム標準液(Cr 1000)(二クロム酸カリウム含量:0.28 %, 富士フィルム和光純薬(株)製)を用い、Cr(VI)濃度が100 mg L-1となるようにイオン交換水で希釈して準備した。
Cr(VI)溶液(100 mg L-1)2 mLにpH調整のため塩酸(0.1 mol L-1 または0.2 mol L-1)または0.05 mol L-1の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、イオン交換水で全量を20 mLとし、目的とするpHを有するCr(VI)含有溶液(Cr(VI)濃度 10. 05 - 10.08 mg L-1)を得た。
実施例1及び比較例1の発泡ガラスおよび比較例4の活性炭を、各々pH調整したCr(VI)含有溶液に加えた。実施例1及び比較例1とCr(VI)溶液との比(固/液比)は1/20 (1.0 g/20 mL)とした。比較例4の場合は実施例1中の活性炭含有量と同様にするため、0.2 g/20 mLとした。
25℃の水温で、混合物を170rpmで10分間振とうし、発泡ガラスとCr(VI)溶液を接触させた(接触時間:10分間)。その後、孔径0.45 mmのメンブレンフィルターで混合物をろ過後、ろ液についてジフェニルカルバジド吸光光度法を用いてCr(VI)濃度を分析し、Cr(VI)の残留率を求めた。結果を図7に示す。
【0065】
実施例1の活性炭含有発泡ガラス(▲)ではpHが8より小さくなると、Cr(VI)の残留率が急激に減少し、pH 5付近で6.6%、pH2付近では残留Cr(VI)濃度が0付近となることが分かった。薄黄色を呈するCr(VI)含有溶液(pH 2~7.5付近)に実施例1の発泡ガラスを加えて混合すると、ろ液はほぼ無色透明になったことから、発泡ガラスへのCr(VI)の吸着が起こっていることが示唆された。また、酸性領域ではCr(VI)が活性炭によってCr(III)へ還元される事が報告されていることから(吉田久良, 亀川克美, 有田静児, 活性炭による6価クロムの吸着及び還元, 日本化学会誌, 3, 387 (1977)参照)、実施例1の発泡ガラスではCr(VI)の吸着と共に、酸性側ではCr(III)への還元が起こっていると考えられる。一方で比較例1の発泡ガラス(■)ではCr(VI)の残留率はほぼ変化せず、比較例4の活性炭のみ(◆)では、酸性領域で残留率が低下したが実施例1ほど顕著には認められなかった。これにより、実施例1の発泡ガラスはpH 2から7付近の範囲でより優れた六価クロム除去性能を示すことが分かった。
【0066】
(5)フミン酸除去試験
0.2mol L-1リン酸緩衝液(pH7.0)1Lに対し、0.5 gのフミン酸(富士フィルム和光純薬工業(株)製)を秤量して加え、4時間攪拌混合後、5Cフィルターでろ過して、フミン酸溶液を準備した。
【0067】
フミン酸除去試験は下記のように行った。
実施例1の発泡ガラス(活性炭含有量:16.5質量%)及び比較例1の発泡ガラス(活性炭含有量:0質量%)及び比較例4の活性炭そのものの各々を、pH 7付近(pH7.1~7.2)に調整したフミン酸溶液(フミン酸の初濃度:50.1~52.6mg L-1)に加えて混合物を得た。各混合物の発泡ガラスとフミン酸溶液との比(固/液比)は、実施例1及び比較例1について1/20(1.0g/20mL)であり、比較例4(活性炭そのもの)について0.2g/20mLであった。25℃の液温で、混合物を1~6時間振とうして、発泡ガラスとフミン酸溶液を接触させた(接触時間:1~6時間)。
0.45μmフィルターを用いて、混合物をろ過後、ろ液中のフミン酸濃度を、全有機体炭素測定(TOC)を、JIS K0102 工場排水試験方法に記載の方法に準拠して行って、フミン酸濃度を得、更に、フミン酸残留率を得た。その結果を図8に示した。
【0068】
実施例1の発泡ガラス1では、接触時間が1時間から6時間の間で、フミン酸残留率が、43.4~68.8%となることが分かった。これに対し、比較例1及び4ではいずれも、接触時間が1時間から6時間の間で、フミン酸残留率が、各々97.1~100%及び83.5~100%であった。活性炭は、発泡ガラスと組み合わせることで、フミン酸除去に関する優れた活性を示すことが分かった。
【0069】
(6)着色除去試験
実施例1の発泡ガラス(活性炭含有量:16.5質量%)及び比較例1の発泡ガラス(活性炭含有量:0質量%)及び比較例4の活性炭そのものの各々を、上述のフミン酸溶液に加えて混合物を得た。各混合物の発泡ガラスとフミン酸溶液との比(固/液比)は、実施例1及び比較例1について各々1/20(1.0g/20mL)であり、比較例4について0.2g/20mLであった。25℃の液温で、混合物を1~6時間振とうして、発泡ガラスとフミン酸溶液を接触させた(接触時間:1~6時間)。
457nmの波長の光で測定したことを除いて、特許第4882038号明細書に記載の456.8nmでの色度測定方法と同様に方法を用いて、457nmの波長の光の吸光度を測定して色度を測定した。より具体的には、0.22μmフィルターを用いて、混合物をろ過後、ろ液について457nmの波長の光の吸光度を測定して色度を測定し、色度の残留率を計算して得た。その結果を図9に示した。
【0070】
実施例1の発泡ガラス1では、接触時間が1時間から6時間の間で、色度残留率が、29.0~47.0%となることが分かった。これに対し、比較例1及び4ではいずれも、接触時間が1時間から6時間の間で、色度残留率が、各々88.0~92.1%及び79.8~83.0%であった。活性炭は単独で使用するよりも、発泡ガラスと組み合わせることで、色素除去に関する優れた活性を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の実施形態の発泡ガラスは、内部に細孔を有する発泡ガラスであって、発泡ガラスの表面及び内部に、ガラス100質量部あたり、活性炭を、11.0~24.0質量部含む、活性炭入り発泡ガラスである。本発明の実施形態の発泡ガラスは、天然の素材を用いて製造することができ、取り扱いやすく、価格も高価でなく、水質向上に優れるという有利な効果を奏する。従って、本発明の実施形態の活性炭入り発泡ガラスは、水質向上剤として、好適に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9