(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175022
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタン、及び熱可塑性ポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/42 20060101AFI20221117BHJP
C08G 63/16 20060101ALI20221117BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20221117BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
C08G18/42
C08G63/16
C08G18/76 057
C08G18/66 040
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081128
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】藤部 聡
(72)【発明者】
【氏名】太田 啓介
【テーマコード(参考)】
4J029
4J034
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AC04
4J029AD01
4J029AD03
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4J034BA08
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4J034QC10
4J034QD04
4J034RA03
4J034RA07
4J034RA08
4J034RA10
(57)【要約】
【課題】高い機械強度を持ち、かつ耐加水分解性に優れる熱可塑性ポリウレタンを提供すること。
【解決手段】少なくとも、ポリエステルポリオールに由来する構造単位と有機ジイソシアネートに由来する構造単位とを含む熱可塑性ポリウレタンであって、ポリエステルポリオールが、ジオールに由来する構造単位とジカルボン酸に由来する構造単位とからなり、ジオールに由来する構造単位の80mol%以上が、2-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構造単位である熱可塑性ポリウレタン。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリエステルポリオールに由来する構造単位と有機ジイソシアネートに由来する構造単位とを含む熱可塑性ポリウレタンであって、
前記ポリエステルポリオールは、ジオールに由来する構造単位とジカルボン酸に由来する構造単位とからなり、
前記ジオールに由来する構造単位の80mol%以上が、2-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構造単位である熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記ジカルボン酸に由来する構造単位は、アジピン酸に由来する構造単位のみからなる、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記ジオールに由来する構造単位は、2-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構造単位のみからなる、請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
前記有機ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオールは、レオメーターを用いて測定した75℃における粘度が1,000mPa・s以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
更に、1,4-ブタンジオールに由来する構造単位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
重量平均分子量が10,000~100,000である、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
75℃、95%RHで160時間保持した後の重量平均分子量保持率が80%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
ゲル化しておらず、N,N-ジメチルアセトアミド中に溶解する、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
少なくとも、2-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構造単位を含むポリエステルポリオールと有機ジイソシアネートとを重付加反応させる工程を含む、熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項11】
前記ポリエステルポリオールは、アジピン酸に由来する構造単位を含む、請求項10に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項12】
前記有機ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項10又は11に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン、及び熱可塑性ポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知のポリエステルポリオールを用いた熱可塑性ポリウレタンは、耐摩耗性、機械的強度、及び耐油性などに優れることから、幅広く使用されている。熱可塑性ポリウレタンは、用いるポリエステルポリオールやジイソシアネート、及び鎖延長剤の組み合わせによって、化学的・物理的性質を調整することができ、硬質又は軟質ウレタンフォーム、エラストマー、塗料、接着剤、コーティング材、繊維などの用途に用いられている。
【0003】
しかし、ポリエステルポリオールを用いた熱可塑性ポリウレタンは、エステル構造を有することから、耐加水分解性に劣る課題があり、長期間に渡って湿熱環境下で使用すると分子鎖の切断による劣化が起こることが知られていた。
【0004】
耐加水分解性の向上を目的として、ポリエステルポリオールに代えてポリエーテルポリオールを用いることが知られている。しかし、ポリエーテルポリオールを用いたポリウレタンは、耐光性が悪く、機械強度や耐摩耗性においても、一般にポリエステルポリオールを用いたポリウレタンに比べて劣ることが知られている。
【0005】
ポリエステルポリオールを用いた熱可塑性ポリウレタンについては、ポリエステルポリオールの直鎖状分子部分の炭素数を長くしたり、側鎖を導入したりすることで、ポリウレタンの疎水性を高めることが知られているが、耐加水分解性については、更なる改善の余地があった。
【0006】
特許文献1及び2には、3-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構造単位を有するポリエステルポリオールを用いたポリウレタンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5-239175号公報
【特許文献2】特開2018-193568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、高い機械強度を持ち、かつ耐加水分解性に優れる熱可塑性ポリウレタンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、特定の構造を有するジオールに由来する構造単位を有するポリエステルポリオールに由来する構成単位を含む熱可塑性ポリウレタンは、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の[1]~[12]に関する。
[1]
少なくとも、ポリエステルポリオールに由来する構造単位と有機ジイソシアネートに由来する構造単位とを含む熱可塑性ポリウレタンであって、
前記ポリエステルポリオールは、ジオールに由来する構造単位とジカルボン酸に由来する構造単位とからなり、
前記ジオールに由来する構造単位の80mol%以上が、2-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構造単位である熱可塑性ポリウレタン。
[2]
前記ジカルボン酸に由来する構造単位は、アジピン酸に由来する構造単位のみからなる、[1]に記載の熱可塑性ポリウレタン。
[3]
前記ジオールに由来する構造単位は、2-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構造単位のみからなる、[1]又は[2]に記載の熱可塑性ポリウレタン。
[4]
前記有機ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである、[1]~[3]のいずれか一態様に記載の熱可塑性ポリウレタン。
[5]
前記ポリエステルポリオールは、レオメーターを用いて測定した75℃における粘度が1,000mPa・s以下である、[1]~[4]のいずれか一態様に記載の熱可塑性ポリウレタン。
[6]
更に、1,4-ブタンジオールに由来する構造単位を含む、[1]~[5]のいずれか一態様に記載の熱可塑性ポリウレタン。
[7]
重量平均分子量が10,000~100,000である、[1]~[6]のいずれか一態様に記載の熱可塑性ポリウレタン。
[8]
75℃、95%RHで160時間保持した後の重量平均分子量保持率が80%以上である、[1]~[7]のいずれか一態様に記載の熱可塑性ポリウレタン。
[9]
ゲル化しておらず、N,N-ジメチルアセトアミド中に溶解する、[1]~[8]のいずれか一態様に記載の熱可塑性ポリウレタン。
[10]
[1]~[9]のいずれか一態様に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
少なくとも、2-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する構造単位を含むポリエステルポリオールと有機ジイソシアネートとを重付加反応させる工程を含む、熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
[11]
前記ポリエステルポリオールは、アジピン酸に由来する構造単位を含む、[10]に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
[12]
前記有機ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである、[10]又は[11]に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐加水分解性及び機械強度に優れた熱可塑性ポリウレタンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1及び比較例1のポリウレタンの耐加水分解性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、特定の構造を有するジオールに由来する構造単位を有するポリエステルポリオールに由来する構成単位を含む熱可塑性ポリウレタンである。
【0014】
<熱可塑性ポリウレタン>
一実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも、有機ジイソシアネートとジオールとを重付加させて得ることができる。一実施形態のジオールは、ポリエステルポリオールである。一実施形態のポリエステルポリオールは、ジオールに由来する構造単位とジカルボン酸に由来する構造単位とからなり、ジオールに由来する構造単位の80mol%以上が、2-メチル-1,5-ペンタンジオール(以下「2-MPD」と略記することがある。)に由来する構造単位である。一実施形態のポリウレタンは、当該特定のポリエステルポリオールに由来する構造単位を含むことにより、機械強度、耐加水分解性などの各種物性に優れる。
【0015】
ポリエステルポリオールを用いた熱可塑性ポリウレタンの加水分解は、ポリエステルポリオールに由来するエステル構造に対して水が攻撃して、エステル構造が切断されることで進行する。一実施形態にかかる特定のポリエステルポリオールは、エステル構造のカルボニル基を構成する炭素原子から数えて3原子の位置に分岐鎖を有する。この分岐鎖による立体障害と疎水性向上の効果により、エステル構造に対する水分子の攻撃が抑制され、ポリエステルポリオール及びポリウレタンの加水分解性が向上すると考えられる。
【0016】
【0017】
一実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、上記のポリエステルポリオールと有機ジイソシアネートとを反応させることにより得ることができる。より好ましくは、上記のポリエステルポリオール、有機ジイソシアネート、及び鎖延長剤を、重付加反応させることにより得ることができる。
【0018】
[2-メチル-1,5-ペンタンジオール]
一実施形態の2-メチル-1,5-ペンタンジオール(2-MPD)は、公知の方法により製造することができる。
【0019】
例えば、特開2013-35759号公報に記載の方法に従って、トルエン中でビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)にトリフルオロメタンスルホン酸とトリn-ブチルホスフィンとを反応させて得られる二量化触媒を用いて、アリルアルコールの二量化を行うことで2-メチリデン-1,5-ペンタンジオールを製造し、これを水素化することで2-MPDを製造することができる。
【0020】
あるいは、2-メチルグルタロニトリルを加水分解して2-メチルグルタル酸とし、これを還元することでも2-MPDを製造することができる。
【0021】
[ポリエステルポリオール]
一実施形態のポリエステルポリオールは、ジオールに由来する構造単位と、ジカルボン酸に由来する構造単位とからなり、ジオールに由来する構造単位のうち2-メチル-1,5-ペンタンジオール(2-MPD)に由来する構造単位の割合が、80mol%以上である。
【0022】
2-MPD以外のジオールとしては、従来からポリエステルポリオールの製造に用いられているものを使用することができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどを使用できる。これらの2-MPD以外のジオールは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0023】
熱可塑性ポリウレタンの耐加水分解性を向上させる観点から、2-MPDに由来する構成単位の割合は、85mol%以上が好ましく、90mol%以上がより好ましく、95mol%以上が特に好ましく、100mol%であってもよい。
【0024】
ポリエステルポリオールの構造単位を形成するジカルボン酸としては、従来からポリエステルポリオールの製造に用いられているものを使用することができる。例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸などを使用できる。これらのジカルボン酸は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。熱可塑性ポリウレタンの耐加水分解性と機械強度のバランスから、アジピン酸が特に好ましい。
【0025】
一実施形態のポリエステルポリオールは、1分子あたり2つ以上(好ましくは2つ)の水酸基を有する。水酸基は、分子鎖末端の少なくとも一部に存在することが好ましく、実質的に全ての分子鎖末端に存在することがより好ましい。
【0026】
ポリエステルポリオールに含まれる水酸基の数は、水酸基価を測定することで求められる。また、水酸基価から換算することで、ポリエステルポリオールの数平均分子量を求めることができる。
【0027】
ジカルボン酸の使用量は、ジオールとのモル比(ジオール[mol]/ジカルボン酸[mol])により設計することがでる。当該モル比は、1.0~1.5が好ましく、1.02~1.3がより好ましく、1.05~1.2が特に好ましい。当該モル比が1.5以下であれば、未反応のジオールが少なくなり、ポリエステルポリオールからの分離が容易となる。当該モル比が1.0以上であれば、ポリエステルポリオールの分子鎖末端に水酸基が存在しなくなることがなく、有機ジイソシアネートとの反応性が保たれる。
【0028】
一実施形態のポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、特に制限はないが、各種用途での取り扱い易さを考慮すると、500~10,000であることが好ましく、1,000~8,000であることがより好ましく、1,500~5,000であることが特に好ましい。Mnが500以上であれば、固体状イソシアネートとの相溶性が良好である。Mnが10,000以下であれば、ポリウレタン調製時の組成物の粘度が著しく高くなることがなく、取り扱いが容易である。
【0029】
一実施形態のポリエステルポリオールの具体的な製造方法には、特に制限はなく、従来から用いられてきた公知のポリエステル縮重合方法が適用できる。2-MPDと多価カルボン酸、又は2-MPDと多価カルボン酸エステルとを、必要に応じてその他の任意成分と共に一段階で反応させて、目的とするポリエステルポリオールを得てもよい。あるいは、一段階目で低分子量のポリエステルポリオールを得た後に、更に重合させて、二段階で高分子量のポリエステルポリオールを得てもよい。
【0030】
得られたポリエステルポリオールにジオールを加えて解重合させることで、分子量を調製してもよい。分子量の調整は、触媒の存在下又は触媒の非存在下で行うことができる。
【0031】
二段階でポリエステルポリオールを製造する方法としては、例えば下記のように行うことができる。すなわち、2-MPDと、必要に応じて加える上記の他のジオールと、多価カルボン酸成分とを混合し、常圧又は減圧下、100~250℃で一段階目の反応を行い、低分子量のポリエステルポリオールを含む生成物を得る。その後、二段階目の反応として、一段階目の反応で得られた生成物を、減圧下、160~250℃で加熱し、未反応のジオール成分と多価カルボン酸成分とを除去しつつ、低分子量のポリエステルポリオールを縮合させて、目的とする分子量のポリエステルポリオールを得る。
【0032】
上記の一段階目の反応及び二段階目の反応のいずれも、触媒の存在下又は触媒の非存在下で行うことができ、一段階目の反応を触媒の非存在下に行い、二段階目の反応を触媒の存在下に行うことが好ましい。
【0033】
触媒には特に制限はないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコラート、水素化物、オキシド、アミド、炭酸塩、水酸化物、窒素含有ホウ酸塩、有機酸塩等のアルカリ金属系又はアルカリ土類金属系化合物などが挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。
【0034】
また、触媒として、アルカリ金属系又はアルカリ土類金属系以外の他の触媒を用いることもできる。他の触媒としては、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、タリウム、鉛、ビスマス、イッテルビウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属の単体、無機塩、有機化合物などが挙げられる。ここで金属の有機化合物としては、例えば、金属のアルコラート、有機酸塩などが挙げられる。
【0035】
触媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、反応性や、後のウレタン化反応に対する影響などの観点から、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外の金属の単体、無機塩、及び有機化合物が好ましく、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、イッテルビウムの単体、無機塩、及び有機化合物がより好ましく、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、イッテルビウムの有機化合物が更に好ましく、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、イッテルビウムの金属アルコラート(イソプロポキシド等)が特に好ましい。
【0036】
上記の一段階目の反応及び二段階目の反応のいずれも、溶媒を使用してもよい。溶媒を用いる場合には、エステル化又はエステル交換反応で生成する水やアルコールと共沸可能な有機溶媒を用いることが好ましい。使用できる有機溶媒は、特に限定されないが、炭素原子数4~10の脂肪族又は脂環式の炭化水素、又はその混合物が挙げられ、具体的には、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。これらの炭化水素系溶媒の中でも、n-ヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましい。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
一実施形態のポリエステルポリオールの粘度は、1,000mPa・s以下であることが好ましく、800mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0038】
粘度が1,000mPa・s以下であれば、配管を通した送液や、有機ジイソシアネートとの均一な混合が容易になる。粘度の測定にはレオメーターを用いる。測定条件の詳細は実施例の項に記載する。
【0039】
[有機ジイソシアネート]
一実施形態の有機ジイソシアネートは、目的や用途に応じて適宜選択することができる。例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート;4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが使用できる。
【0040】
これらのうち、熱可塑性ポリウレタンの機械強度と耐加水分解性を高める観点で、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が特に好ましい。これらの有機ジイソシアネートは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0041】
有機ジイソシアネートの使用量は、有機ジイソシアネートのイソシアナト基と、ポリエステルポリオールの水酸基並びに後述する鎖延長剤の水酸基及びアミノ基の合計とのモル比(イソシアナト基[mol]/(水酸基[mol]+アミノ基[mol]))により設計することができる。当該モル比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1が特に好ましい。当該モル比が1.2以下であれば、ビウレット結合やアロファナート結合の生成により架橋反応が起こり、ポリウレタンがゲル化するおそれが低下する。当該モル比が0.8以上であれば、ウレタン結合の生成が十分に進行し、機械強度を保つことができる。
【0042】
[鎖延長剤]
ポリウレタン化反応において、分子量を増大させることを目的として、鎖延長剤を用いることができる。使用する鎖延長剤としては、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
【0043】
鎖延長剤としては、水;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサンなどの低分子ポリオール;ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどの高分子ポリオール;エチレンジアミン、イソホロンジアミン、2-メチル-2,5-ペンタンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミンを使用することができる。
【0044】
これらの中では、熱可塑性ポリウレタンの柔軟性と耐加水分解性を向上させる観点で、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。これらの鎖延長剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0045】
鎖延長剤の使用量は、特に制限は無いが、鎖延長剤とポリエステルポリオールとのモル比(鎖延長剤[mol]/ポリエステルポリオール[mol])として10以下が好ましく、5以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。モル比が10以下であれば、耐加水分解性の低下を抑制することができる。
【0046】
<熱可塑性ポリウレタンの製造>
一実施形態の熱可塑性ポリウレタンの製造方法には、特に制限はなく、上記のポリエステルポリオール、有機ジイソシアネート、及び必要に応じて更に鎖延長剤を使用し、公知のウレタン化反応技術を用いて製造することができる。
【0047】
反応温度は、特に制限はないが、ウレタン化の反応速度の向上と、ポリエステルポリオールの分解を抑制する観点から、20~200℃が好ましく、50~150℃がより好ましく、80~120℃が特に好ましい。
【0048】
熱可塑性ポリウレタンの製造には、ワンショット法又はプレポリマー法のいずれの方法を用いてもよい。例えば鎖延長剤を用いる場合には、反応に使用する各成分を一括して反応させて目的とする熱可塑性ポリウレタンを製造してもよいし、まずポリエステルポリオールと有機ジイソシアネートとを、有機ジイソシアネートのモル当量が過剰となる条件で反応させることによりイソシアナト基末端を有するウレタンプレポリマーを生成させた後、得られたウレタンプレポリマーに鎖延長剤を反応させることにより高分子量化して、目的の熱可塑性ポリウレタンを製造してもよい。
【0049】
ウレタン化反応は、ウレタン化反応触媒を用いて行ってもよい。ウレタン化反応触媒の種類に特に制限はなく、例えば、トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン等の第3級アミンなどのアミン系化合物、トリメチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレート等の有機スズ系化合物、有機チタン系化合物、オクチル酸鉛等の有機鉛系化合物などが挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0050】
ウレタン化反応は、実質的に溶媒の不存在下で行ってもよいし、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、エチルセロソルブなどが挙げられる。これらの中では、溶解性の観点から、ジメチルホルムアミドが特に好ましい。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0051】
一実施形態の熱可塑性ポリウレタンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、特に制限はないが、機械物性と成形性のバランスを考えると、10,000~100,000であることが好ましく、15,000~80,000がより好ましく、20,000~50,000が特に好ましい。Mwが100,000以下であれば、溶融粘度が大きくなりすぎず、成形性が良好である。Mwが10,000以上であれば、機械的な強度を保つことができる。Mwの測定条件の詳細は、実施例の項に記載する。
【0052】
一実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、ゲル化しておらず、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解する。「ゲル化している」とは、架橋構造の存在により、いかなる溶媒にも溶解しない成分が存在する状態をいい、ゲル化したポリウレタンは膨潤するのみで溶解しない。ゲル化しているか否かは、60℃に加熱したDMACにポリウレタンを浸漬して十分な時間加熱し、室温に冷却しても全て溶解しているか否かを目視観察することで判断される。
【0053】
一実施形態の熱可塑性ポリウレタンの、75℃、95%RHで160時間保持した後の重量平均分子量保持率は、80%以上である。重量平均分子量保持率の測定条件の詳細は、実施例の項に記載する。
【0054】
<ポリウレタンを含む組成物>
一実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、そのままの状態で各種用途に使用してもよいし、それを含む組成物の形態で各種用途に使用してもよい。当該組成物に含まれるポリウレタン以外の成分には、特に制限はなく、各種用途などに応じて適宜選択することができる。
【0055】
ポリウレタン以外の成分としては、例えば、熱安定剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、無機充填材、滑剤、着色剤、発泡剤、難燃剤、シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0056】
<成形体>
一実施形態のポリウレタン成形体は、一実施形態のポリウレタンを単独で成形してもよいし、一実施形態のポリウレタンを含む組成物を成形してもよい。
【0057】
成形方法には特に制限はなく、ポリウレタンの成形法として従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶剤に溶かして均一溶液とした上でシート化又はフィルム化する、キャスティング、ディッピング;加熱、混練した後に成形を行う、押出成形、射出成形、カレンダー成形、注型成形、ブロー成形、インフレーション成形、発泡成形、回転成形、スラッシュ成形等が挙げられる。
【0058】
[用途]
一実施形態の熱可塑性ポリウレタン又はそれを含む組成物の用途には、特に制限はないが、機械物性と耐加水分解性に優れることから、塗料、接着剤、シーラント、エラストマー、スパンデックス(弾性繊維)、合成皮革、インキバインダー、硬質フォーム及び軟質フォームなどとして広く用いることができる。これらの用途における熱可塑性ポリウレタンの形態としては、無溶剤系のほか、溶剤系、水系であってもよい。
【実施例0059】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。なお、実施例中の部、及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0060】
実施例及び比較例における試験及び評価は、以下の方法で行った。
【0061】
(1)水酸基価
JIS K 1557-1:2007に準拠して測定した。
【0062】
(2)ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)
一つのポリマー分子あたり2つの水酸基が含まれると仮定し、水酸化カリウムの分子量56.1と水酸基価を用いて、下記式により算出した。
数平均分子量=(56.1×2×1000)/水酸基価
【0063】
(3)熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)
GPCカラムとして昭和電工(株)製KD-806M(2本直列)及びKD-802を連結し、検出器として昭和電工(株)製Shodex(登録商標)RI-101を用いた。溶離液としてはジメチルホルムアミド+10mM臭化リチウムを用いて、カラム温度50℃でGPCによる測定を行い、重量平均分子量(Mw)を算出した。標準物質としては、ポリエチレンオキシド及びポリエチレングリコールを用いた。
【0064】
(4)レオメーターによる粘度測定
以下の装置を用いて、以下の条件にて、レオメーターによる粘度測定を実施した。
装置名:サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製HAAKE MARSIII
コーンプレート:φ60mm×2°
温度:75℃
せん断速度:10s-1
【0065】
(5)引張試験(引張破断強さ及び引張応力)
JIS K 7311:1995に準拠し、試験片形状はJIS K 6251:2017 3号形ダンベル(厚さ1mm)とし、23±1℃、50±5%RHの環境において、試験速度300mm/minで引張試験を行い、引張破断強さと伸び200%における引張応力を求めた。
【0066】
(6)耐加水分解性
エスペック(株)製恒温恒湿槽SH-662を用いて、循環大気の湿熱条件(75℃、95%RH)下で、約10mm×10mm角にカットした熱可塑性ポリウレタンサンプルを保持した。一定時間経過後の重量平均分子量(Mw)をGPCによって測定し、湿熱処理前のMwに対する保持率を算出することで、耐加水分解性を評価した。
【0067】
(7)ゲルの生成の有無
ガラス容器中にて、ポリウレタンサンプル(0.2g)をN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)5mLに加え、溶解した。60℃の油浴で10時間加熱した後に、室温に冷却し、不溶分が無ければ、ゲル「無し」と判定した。
【0068】
<合成例1>2-MPD(2-メチル-1,5-ペンタンジオール)の合成
撹拌装置と還流コンデンサーを備えた1Lフラスコを、窒素ガスで置換し、50gの水を室温で入れた後、濃硫酸220.4gを加え、撹拌しつつ、油浴で内温を105℃とした。
【0069】
続いて、2-メチルグルタロニトリル108.68g(1.0mol)を、2時間かけて滴下した。温度を15分間保持した後、58.5gの水を加え、油浴温度を125℃まで上げて6時間保持した。その後、撹拌を停止した上で反応液を90℃に冷却し、分離した上層として、148g(1.0mol)の2-メチルグルタル酸を得た。
【0070】
得られた2-メチルグルタル酸のうち73g(0.5mol)を、1Lのメタノールに溶解し、濃硫酸50mLをゆっくりと加えて反応液を得た。得られた反応液を還流しながら撹拌し、続いて溶媒留去した後に砕氷に注いだ。その後、ジクロロメタンで抽出することで、2-メチルグルタル酸ジメチルエステルを得た。
【0071】
87g(0.50mol)の2-メチルグルタル酸ジメチルエステルを、1Lのテトラヒドロフランに溶解して冷却し、この溶液に水素化リチウムアルミニウム(1.5mol)のテトラヒドロフラン溶液を加えて反応液を得た。得られた反応液を室温で16時間撹拌した後、0℃に冷却し、100mLの水及び水酸化ナトリウム水溶液を加えて撹拌した。続いて、酢酸エチルで希釈してろ過し、溶媒留去して、2-メチル-1,5-ペンタンジオールを得た。
【0072】
<合成例2>2-MPD由来のポリエステルポリオール(PEP-A)の合成
窒素ガス導入管、還流管、温度計、及びDean-Starkを備えた1000mL四口フラスコに、合成例1で得られた2-MPDを97g(0.82mol)と、アジピン酸(東京化成工業(株)製)100g(0.68mol)を加え、キシレンを加えて水を共沸除去しながら、180℃の常圧で4時間加熱した。
【0073】
その後、窒素ガス導入管とDean-Starkを取り外して真空ポンプにつなぎ、200mmHgに減圧して、180℃で2.5時間、水の共沸除去を継続した。更に、テトライソプロピルチタネート(東京化成工業(株)製)0.04g(0.1mmol)を加えて、20mmHg以下に減圧して4時間加熱することで、2-MPD由来のポリエステルポリオール(PEP-A0)を得た。
【0074】
得られたポリエステルポリオール(PEP-A0)の水酸基価は、38.2mgKOH/gであり、水酸基価から換算した数平均分子量(Mn)は、2,900であった。
【0075】
分子量調整のため、得られたポリエステルポリオール(PEP-A0)140gに、2-MPDを3g加え、200℃で1.5時間加熱して解重合させることで、2-MPD由来のポリエステルポリオール(PEP-A)を得た。
【0076】
得られたポリエステルポリオール(PEP-A)の水酸基価は、58.5mgKOH/gであり、水酸基価から換算した数平均分子量(Mn)は、1,900であった。また、75℃におけるレオメーター測定による粘度は、444mPa・sであった。
【0077】
<実施例1>2-MPD由来の熱可塑性ポリウレタンの合成
合成例2で得た2-MPD由来のポリエステルポリオール(PEP-A)50g(0.026mol)に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東京化成工業(株)製)13.7g(0.055mol)を加え、窒素ガス雰囲気下において80℃で2時間加熱して、プレポリマー化を行った
【0078】
得られたプレポリマーを減圧脱泡した後、ポリプロピレン容器に入れ、鎖延長剤として1,4-ブタンジオール2.35g(0.026mol)を加えて、撹拌脱泡を行った。そのまま80℃で16~24時間の加熱を行い、ポリウレタンのタブレットを作製した。続いて、タブレットに対して170~180℃で圧縮成形を5分行い、1mm厚みのシートを作製した。
【0079】
作製したシートをGPCにより分析したところ、重量平均分子量(Mw)は24,000であった。また、作製したシートから試験片を作製し、引張試験を実施したところ、引張破断強さは14MPa、伸び200%における引張応力は2.3MPaであった。
【0080】
<合成例3>3-MPD由来のポリエステルポリオール(PEP-B)の合成
窒素ガス導入管、還流管、温度計、及びDean-Starkを備えた1000mL四口フラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(3-MPD)(東京化成工業(株)製)357g(3.0mol)と、アジピン酸407g(2.8mol)を加え、キシレンを加えて水を共沸除去しながら、180℃の常圧で6時間加熱した。
【0081】
その後、窒素ガス導入管とDean-Starkを取り外して真空ポンプにつなぎ、200mmHgに減圧して180℃で2.5時間、水の共沸除去を継続した。更に、テトライソプロピルチタネート(東京化成工業(株)製)0.16g(0.6mmol)を加えて、20mmHg以下に減圧して5.5時間加熱することで、3-MPD由来のポリエステルポリオール(PEP-B0)を得た。
【0082】
得られたポリエステルポリオール(PEP-B0)の水酸基価は、40.7mgKOH/gであり、水酸基価から換算した数平均分子量は、2,800であった。
【0083】
分子量調整のため、得られたポリエステルポリオール(PEP-B0)478gに3-MPDを9.5g加え、200℃で1.5時間加熱して解重合させることで、3-MPD由来のポリエステルポリオール(PEP-B)を得た。
【0084】
得られたポリエステルポリオール(PEP-B)の水酸基価は、54.3mgKOH/gであり、水酸基価から換算した数平均分子量は、2,100であった。また、75℃におけるレオメーター測定による粘度は、378mPa・sであった。
【0085】
<比較例1>3-MPD由来の熱可塑性ポリウレタンの合成
合成例3で得た3-MPD由来のポリエステルポリオール(PEP-B)80g(0.038mol)に、MDIを19.3g(0.077mol)加え、窒素ガス雰囲気下において80℃で2時間加熱して、プレポリマー化を行った。
【0086】
得られたプレポリマーを減圧脱泡した後、ポリプロピレン容器に入れ、鎖延長剤として1,4-ブタンジオール3.48g(0.039mol)を加えて、撹拌脱泡を行った。そのまま80℃で16~24時間の加熱を行い、ポリウレタンのタブレットを作製した。続いて、タブレットに対して170~180℃で圧縮成形を5分行い、1mm厚みのシートを作製した。
【0087】
作製したシートをGPCにより分析したところ、重量平均分子量(Mw)は52,000であった。また、作製したシートから試験片を作製し、引張試験を実施したところ、引張破断強さは5MPa、伸び200%における引張応力は1.7MPaであった。
【0088】
<比較例2>PTMG由来の熱可塑性ポリウレタンの合成
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)(富士フイルム和光純薬(株)製、数平均分子量2,000)100g(0.050mol)に、MDIを24.9g(0.099mol)を加え、窒素ガス雰囲気下において80℃で2時間加熱して、プレポリマー化を行った。
【0089】
得られたプレポリマーを減圧脱泡した後、ポリプロピレン容器に入れ、鎖延長剤として1,4-ブタンジオール4.51g(0.050mol)を加えて、撹拌脱泡を行った。そのまま80℃で16~24時間の加熱を行い、ポリウレタンのタブレットを作製した。続いて、タブレットに対して170~180℃で圧縮成形を5分行い、1mm厚みのシートを作製した。
【0090】
作製したシートをGPCにより分析したところ、重量平均分子量(Mw)は30,000であった。また、作製したシートから試験片を作製し、引張試験を実施したところ、引張り破断強さは7MPa、伸び200%における引張応力は2.3MPaであった。
【0091】
実施例1、比較例1、及び比較例2で得られた熱可塑性ポリウレタンの物性を、表1に示す。また、実施例1と比較例1の熱可塑性ポリウレタンについて、75℃かつ95%RH下での重量平均分子量保持率の変化を、
図1に示す。
【0092】
表1及び
図1より、2-MPD由来のポリエステルポリオールを用いた熱可塑性ポリウレタンの機械物性と耐加水分解性は、PTMG由来のポリウレタンと同等以上であり、3-MPD由来のポリウレタンよりも優れていることが分かる。
【0093】