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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175041
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20221117BHJP
【FI】
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081163
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シートパッドにおける繰り返し荷重の印加に対して、作動装置とハーネスとの接続部における断線を抑制することが可能な車両用シートを得る。
【解決手段】ハーネス22における振動体20R、20L側には余長部36が設けられており、当該余長部36は、クッションパッド14が弾性変形及び復元する方向に沿って折り返して形成され、折り返し量の変化によって振動体20R、20Lとハーネス22との接続部23の上下方向の差分を吸収することができる。これにより、振動体20R、20Lとハーネス22との接続部23において発生する繰り返し荷重の印加による当該接続部23の断線を抑制することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員を弾性的に支持するシートパッドに設けられ少なくとも乗員が着座している状態で作動可能な作動装置と、
前記シートパッドに設けられ、前記作動装置と当該作動装置を作動させる制御部とを電気的に接続し、前記シートパッドの弾性変形及び復元に伴って移動する前記作動装置の移動分を許容する余長部が設けられたハーネスと、
前記シートパッドに設けられ、前記ハーネスが配策され、かつ前記作動装置側において前記余長部が収容される収容部が形成された配策部と、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記余長部は、前記シートパッドが弾性変形及び復元する方向に沿って折り返して形成されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記余長部は、前記シートパッドが弾性変形及び復元する方向に沿ってS字状を成し、
前記作動装置側に設けられ、前記シートパッドが弾性変形する方向に沿って突出する変形凸部と、
前記変形凸部と連続して形成され、前記シートパッドが復元する方向に沿って突出する復元凸部と、
を含んで構成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記収容部には、前記復元凸部が当接し当該復元凸部による前記シートパッドの復元方向側への移動を制限する段部が設けられている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記ハーネスは、ハーネス本体部と、前記ハーネス本体部を外装する外装材と、を含んで構成され、前記余長部は前記ハーネス本体部が露出している請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記作動装置は、車両の危険状況を検出した場合に振動する振動体とされる請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記シートパッドは、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するクッションパッドとされる請求項1~請求項6の何れか1項に記載の車両用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用シート(運転席)では、クッションパッドとシート表皮との間に円板状の振動体が配置された技術が開示されている。この先行技術では、クッションパッドとシート表皮との間に振動体を配置することによって、振動体が小型かつ振動力の弱い場合であっても、振動体の振動を運転者に伝えることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-120015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、振動体(作動装置)は、当該振動体を作動させる制御部との間でハーネスを介して電気的に接続されている。一方、車両用シートは、運転者の着座によりクッションパッド(シートパッド)は撓み変形し、運転者の退座によりクッションパッドは復元する。すなわち、クッションパッドには、繰り返し荷重が印加され、振動体は、繰り返し荷重が入力される方向に沿って移動する。このため、当該振動体とハーネスとの接続部には繰り返し応力が作用し、当該ハーネスの接続部が断線する可能性が懸念される。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートパッドにおける繰り返し荷重の印加に対して、作動装置とハーネスとの接続部における断線を抑制することが可能な車両用シート。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、着座乗員を弾性的に支持するシートパッドに設けられ少なくとも乗員が着座している状態で作動可能な作動装置と、前記シートパッドに設けられ、前記作動装置と当該作動装置を作動させる制御部とを電気的に接続し、前記シートパッドの弾性変形及び復元に伴って移動する前記作動装置の移動分を許容する余長部が設けられたハーネスと、前記シートパッドに設けられ、前記ハーネスが配策され、かつ前記作動装置側において前記余長部が収容される収容部が形成された配策部と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートでは、着座乗員を弾性的に支持するシートパッドに、作動装置、ハーネス及び配策部が設けられている。作動装置は、車両用シートに対して少なくとも乗員が着座している状態で作動可能とされ、作動装置と当該作動装置を作動させる制御部は、ハーネスによって電気的に接続されている。当該ハーネスには、余長部が設けられており、当該余長部は、シートパッドの弾性変形及び復元に伴って移動する作動装置の移動分を許容する。一方、配策部にはハーネスが配策される。ここで、配策部の作動装置側には収容部が形成されており、当該収容部にハーネスの余長部が収容される。
【0008】
ところで、車両用シートは、運転者の着座によりシートパッドは撓み変形(弾性変形)し、運転者の退座によりシートパッドは復元する(自然状態に戻る)。例えば、当該シートパッドがシートクッションに適用された場合、運転者の着座によりシートクッションは、自然状態から撓み変形して、当該シートクッションの上面は車両上下方向の下方側へ移動する。これにより、例えば、シートクッションの上部に作動装置が設けられた場合、作動装置の位置は車両上下方向の下方側へ移動する。
【0009】
一方、運転者が退座により当該シートクッションは復元する。これにより、当該シートクッションの上面は車両上下方向の上方側へ移動し、作動装置の位置は車両上下方向の上方側へ移動することになる。
【0010】
このような作動装置の車両上下方向に沿った移動によって、当該作動装置とハーネスとを接続させる接続部の位置は、車両上下方向に沿って移動することになる。
【0011】
本発明では、ハーネスにおいて、作動装置側に余長部が設けられている。このため、運転者の着座及び退座によるシートパッドの弾性変形及び復元に伴って車両上下方向に沿って移動する作動装置との接続部の上下方向の差分をハーネスの余長部によって吸収することができる。これにより、運転者の着座及び退座により作動装置とハーネスとの接続部において発生する繰り返し荷重の印加による当該接続部の断線を抑制することが可能となる。
【0012】
なお、本発明における「シートパッド」は、シートクッション以外にシートバックにも適用可能である。また、「作動装置」として、車両の危険状況を検出した場合に振動する振動体(振動デバイスを含む)が挙げられ、これ以外にも、スピーカー、ヒーター、送風機等の装置が挙げられる。当該作動装置は、車両用シートに対して少なくとも乗員が着座している状態で作動可能であるため、車両用シートに乗員が着座している状態で作動装置が作動可能とされるだけでなく、車両用シートに乗員が着座していない状態でも作動装置が作動可能とされる。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記余長部は、前記シートパッドが弾性変形及び復元する方向に沿って折り返して形成されている。
【0014】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートでは、ハーネスの余長部が、シートパッドが弾性変形及び復元する方向に沿って折り返して形成されることによって、シートパッドの弾性変形及び復元に伴って余長部の折り返し量が変化する。つまり、シートパッドの弾性変形及び復元に伴って車両上下方向に沿って移動する作動装置とハーネスとの接続部の上下方向の差分をハーネスの余長部における折り返し量の変化によって吸収することができる。
【0015】
例えば、シートパッドの弾性変形により作動装置が下方側へ移動すると、ハーネスの余長部の弛み量が増大し余長部における折り返し量が大きくなる。一方、シートパッドの復元により作動装置が上方側へ移動すると、ハーネスの余長部の弛み量は減少し余長部における折り返し量は小さくなる。
【0016】
ここで、本発明では、ハーネスの余長部をシートパッドが弾性変形及び復元する方向に沿って折り返して形成し、ハーネスの余長部が折り返される方向をシートパッドが弾性変形及び復元する方向と略同じにしている。
【0017】
これにより、本発明では、比較例として、例えば、ハーネスの余長部が折り返される方向が、シートパッドが弾性変形及び復元する方向に対して直交する方向に沿って形成された場合と比較して、シートパッドの弾性変形及び復元に伴って変化するハーネスの余長部の折り返し量をスムーズに調整することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記余長部は、前記シートパッドが弾性変形及び復元する方向に沿ってS字状を成し、前記作動装置側に設けられ前記シートパッドが弾性変形する方向に沿って突出する変形凸部と、前記変形凸部と連続して形成され前記シートパッドが復元する方向に沿って突出する復元凸部と、を含んで構成されている。
【0019】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートでは、余長部は、シートパッドが弾性変形及び復元する方向に沿ってS字状を成しており、変形凸部及び復元凸部を含んで構成されている。変形凸部は、作動装置側に設けられており、シートパッドが弾性変形する方向に沿って突出している。一方、復元凸部は、変形凸部と連続して形成されており、シートパッドが復元する方向に沿って突出する。
【0020】
このように、余長部が、シートパッドが弾性変形及び復元する方向に沿ってS字状を成し、変形凸部及び復元凸部を含んで構成されることによって、変形凸部と復元凸部の離間距離が小さい場合、余長部における折り返し量は小さくなる。一方、変形凸部と復元凸部の離間距離が大きい場合、余長部における折り返し量は大きくなる。
【0021】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記収容部には、前記復元凸部が当接し当該復元凸部による前記シートパッドの復元方向側への移動を制限する段部が設けられている。
【0022】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートでは、収容部に復元凸部が当接する段部が設けられており、当該段部に復元凸部が当接することによって、当該復元凸部によるシートパッドの復元方向側への移動を制限している。
【0023】
ハーネスの余長部が折り返し量を変化させる際に、収容部に設けられた段部に当該余長部の復元凸部が当接することによって、ハーネスの余長部が収容部から抜け出さないようにしている。
【0024】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記ハーネスは、ハーネス本体部と、前記ハーネス本体部を外装する外装材と、を含んで構成され、前記余長部は前記ハーネス本体部が露出している。
【0025】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートでは、ハーネスは、ハーネス本体部の外側が外装材によって外装されており、ハーネス本体部が保護されている。
【0026】
ここで、一般に、シートパッドには、ウレタンフォーム等の発泡体が用いられ、外装材には、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂材が用いられる。このため、外装材がシートパッドに接触すると摺動抵抗が大きい。
【0027】
一方、ハーネスの余長部では、折り返し量を変化させる必要があるため、ハーネス同士が接触する可能性があるが、外装材同士が接触すると摺動抵抗が大きい。このため、当該余長部では、ハーネス本体部が露出し、ハーネス同士の接触による摩擦を低減させ、折り返し量の変化をスムーズに行えるようにしている。また、ハーネスにおいて、余長部以外の部分は、外装材によって外装されているため、外装材とシートパッドとの摺動抵抗を利用して、シートパッドに対する所定の位置にハーネスを固定させることが可能となる。
【0028】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記作動装置は、車両の危険状況を検出した場合に振動する振動体とされる。
【0029】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートでは、作動装置は振動体とされ、当該振動体は、車両の危険状況を検出した場合に振動する。
【0030】
請求項7に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記シートパッドは、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するクッションパッドとされる。
【0031】
請求項7に記載の発明に係る車両用シートでは、シートパッドはクッションパッドとされ、着座乗員の臀部及び大腿部を支持する。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、請求項1に記載の車両用シートによれば、シートパッドにおける繰り返し荷重の印加に対して、作動装置とハーネスとの接続部における断線を抑制することができる。
【0033】
請求項2に記載の車両用シートによれば、シートパッドの弾性変形及び復元に伴ってハーネスの余長部の折り返し量をスムーズに変化させることができる。
【0034】
請求項3に記載の車両用シートによれば、余長部における変形凸部と復元凸部の離間距離を変化させることによって、ハーネスの余長部の折り返し量を変化させることができる。
【0035】
請求項4に記載の車両用シートによれば、ハーネスの余長部が折り返し量を変化させる際に、当該余長部が収容部から抜け出さないようにすることができる。
【0036】
請求項5に記載の車両用シートによれば、ハーネスの余長部において、折り返し量の変化をスムーズに行うことができ、また、シートパッドに対してハーネスを固定させることができる。
【0037】
請求項6に記載の車両用シートによれば、振動体の振動によって、車両の危険状況に備えることができる。
【0038】
請求項7に記載の車両用シートによれば、シートクッションに繰り返し荷重が印加されても作動装置とハーネスとの接続部における断線を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本実施の形態に係る車両用シートの一部を構成するシートクッションの概略を示す概略斜視図である。
図2】本実施の形態に係る車両用シートの一部を構成するシートクッションの要部が拡大された要部拡大平面図である。
図3】本実施の形態に係る車両用シートの一部を構成するシートクッションに設けられた振動体及びハーネスを示す概略的な平面図である。
図4】本実施の形態に係る車両用シートの一部を構成するシートクッションに設けられたハーネスの余長部及び収容部を含む要部が拡大された要部拡大断面図である。
図5】本実施の形態に係る車両用シートの一部を構成するシートクッションが撓み変形したときのハーネスの余長部及び収容部を含む要部が拡大された要部拡大断面図である。
図6】本実施の形態に係る車両用シートの一部を構成するシートクッションに設けられたハーネスの余長部の折り返し量の変化を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、以下の図において適宜示される矢印FRは、車両前後方向の前方向(着座者の向く方向)を示しており、矢印UPは車両上下方向の上方向を示し、矢印RHは車両幅方向の右方向を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、車両の進行方向を向いた場合のシート幅方向の左右を示すものとする。
【0041】
(車両用シートの構成)
まず、本実施形態に係る車両用シート10の構成について説明する。
【0042】
図1に示されるように、車両用シート10は、図示はしないが、着座者である運転者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、運転者の腰部及び背部を支持するシートバック(図示省略)と、を含んで構成されている。
【0043】
シートクッション12は、運転者を弾性的に支持するためのクッションパッド(シートパッド)14と、このクッションパッド14の表面を覆うシート表皮(図示省略)と、クッションパッド14を下方側から支持するシートクッションパン(図示省略)と、を備えている。
【0044】
クッションパッド14は、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって形成されており、クッションパッド14の硬度は、乗り心地に適正な硬度に設定されている。シート表皮は、例えば布材、皮革、合成皮革又はPVC等によって形成されており、シートクッションパンは、例えば、鋼板、アルミニウム合金等によって形成されている。
【0045】
また、クッションパッド14は、シート幅方向の中間部に設けられたパッド本体部18Aと、シート幅方向の右側に設けられたパッドサイド部18Rと、シート幅方向の左側に設けられたパッドサイド部18Lと、を含んで構成されている。左右のパッドサイド部18R、18Lは、パッド本体部18Aよりも上方側へ膨出(突出)して形成されており、パッド本体部18Aは、運転者の臀部及び大腿部を下方側から支持し、左右のパッドサイド部18R、18Lは、運転者の臀部及び大腿部を側方から支持する。
【0046】
なお、説明は省略するが、図示しないシートバックもシートクッション12と同様に、発泡体などからなるシートパッドとしてのバックパッドと、このバックパッドの表面を覆うシート表皮と、バッグパッドを支持するシートバックフレームと、を備えている。そして、シートバックフレームの下端部がシートクッションフレームの後端部に連結された構成になっている。
【0047】
ここで、本実施形態では、車両用シート10において、例えば、クッションパッド14のパッド本体部18Aにおいて、左右のパッドサイド部18R、18L側かつ当該パッド本体部18Aの前部側に、それぞれ振動体(作動装置)20R、20Lが設けられている。なお、各振動体20R、20Lは、例えば、偏心モータとされ、図3に示されるように、ハーネス22を介して制御部としてのECU(Electronic Control Unit)24と電気的にそれぞれ接続されている。ECU24には、車外カメラ25が電気的に接続されている。当該車外カメラ25は、例えば車室の前端部に設けられており、車両前方の画像データを取得してECU24に送信する。
【0048】
ECU24は、例えば、車外カメラ25から送信された画像データに所定の処理を行って、車両前方の状況(道路の車線等)を認識するように設定されている。このため、ECU24は、車両(自車両)が車線を逸脱する等、自車両の危険状況を検知した場合、振動体20R、20Lに対して電気信号を出力して振動体20R、20Lを作動(振動)させる。
【0049】
なお、図3では、ハーネス22とECU24の接続関係について模式的に示している。図3では、振動体において、図1に示す振動体20R側のみが図示されているが、振動体20Rと振動体20Lとでは、クッションパッド14における配置場所が異なるのみであり、機能上は略同じである。このため、説明の便宜上、図3では、20Lの符号も付している。
【0050】
また、図2図4図6図3と同様に、振動体は、20R、20Lと付している。ここで、図2は、クッションパッド14の振動体20R側の周辺部が拡大された要部拡大平面図であり、図4図6は、クッションパッド14の振動体20R側に接続されたハーネス22を含む要部が拡大された要部拡大断面図である。
【0051】
ところで、図1に示されるように、振動体20R、20LとECU24(図3参照)を接続するためのハーネス22は、クッションパッド14に配策される。このため、クッションパッド14には、ハーネス22を配策する配策部26が形成されている。
【0052】
具体的に説明すると、クッションパッド14において、パッド本体部18Aの左右のパッドサイド部18R、18L側かつ当該パッド本体部18Aの前部側には、それぞれ略円柱状の凹部28が設けられており、当該凹部28内に円板状の振動体20R、20Lがそれぞれ収容される。振動体20R、20Lには、ハーネス22の一端部(以下、「接続部」と称する)23(図2参照)が接続される。
【0053】
振動体20R、20Lに接続されたハーネス22は、クッションパッド14とクッションパッド14を支持する図示しないクッションパンとの間を配策する。このため、図4に示されるように、クッションパッド14に形成された凹部28のシート幅方向の内側には、クッションパッド14の上面14Aから下面14Bへ貫通する収容部30が形成されている。
【0054】
また、当該凹部28と収容部30の間には、溝部(受け部)32が形成されており、溝部32内をハーネス22が配策される。つまり、振動体20R、20Lに接続されたハーネス22は、溝部32を経て、収容部30を通じて、クッションパッド14の上面14A側から下面14B側へ配策されることになる。したがって、本実施形態では、配策部26は、溝部32及び収容部30を含んで構成されている。
【0055】
ここで、収容部30は、略円柱状を成しており、収容部30の上縁には、当該収容部30の上縁からクッションパッド14の上面14Aに亘って、シート幅方向の外側へ向かって張り出す段部34が形成されている。
【0056】
一方、ハーネス22には、振動体20R、20Lとの接続部23側にそれぞれ余長部36が設けられており、当該余長部36は収容部30内に収容される。クッションパッド14は、運転者の着座により圧縮される方向へ撓み変形し、運転者の退座によりクッションパッド14は復元する。このため、ハーネス22の余長部36は、クッションパッド14が撓み変形及び復元する方向(上下方向)に沿って、略S字状に折り返して形成されている。
【0057】
例えば、余長部36は、クッションパッド14が撓み変形する下方側へ向かって(クッションパッド14の変形方向に沿って)突出する下凸部(変形凸部)36Aと、クッションパッド14が復元する上方側へ向かって(クッションパッド14の復元方向に沿って)突出する上凸部(復元凸部)36Bと、を含んで構成されている。
【0058】
当該上凸部36Bは、下凸部36Aと連続して形成されており、下凸部36Aと上凸部36Bはシート幅方向に沿って配置されている。このため、図6に示されるように、収容部30の内径寸法(Z)は、ハーネス22の最小曲げ直径(D)の約2倍程度に設定されている。また、段部34の張出量(Y)は、ハーネス22の最小曲げ半径以上となるように設定されると共に、ハーネス22が収容部30内へ通過する隙間が確保できる寸法に設定されている。
【0059】
また、下凸部36Aは振動体20R、20L側にそれぞれ設けられており、クッションパッド14の変形(弾性変形及び復元)に伴って、図4図5に示されるように、下凸部36Aの位置が上下方向に沿って移動する。そして、当該下凸部36Aの移動に追従して上凸部36Bも上下方向に沿って移動する。
【0060】
なお、本実施形態では、下凸部36Aと上凸部36Bはシート幅方向に沿って配置されているが、下凸部36Aの移動に追従して上凸部36Bが上下方向に沿って移動可能であればよいため、これに限るものではない。例えば、下凸部36Aと上凸部36Bがシート前後方向に沿って配置されてもよいし、下凸部36Aと上凸部36Bがシート幅方向に対して交差する斜め方向に沿って配置されてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、ハーネス22の余長部36は、上下方向に沿って、略S字状に折り返して形成されているが、クッションパッド14の弾性変形及び復元に伴って余長部36の折り返し量を変化させることができればよいため、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、ハーネス22の余長部36が、上下方向に沿って形成される螺旋軸を有するように螺旋状に形成されてもよいし、略U字状を成すように形成されてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、図4に示されるように、クッションパッド14の自然状態(復元後)において、余長部36における折り返し量が小さくなった状態で、上凸部36Bが、収容部30の上縁からクッションパッド14の上面14Aに架けて形成された段部34に当接可能とされる。
【0063】
一方、図3に示されるように、ハーネス22は、例えば、ワイヤ(ハーネス本体部)22Aと、ワイヤ22Aを外装するいわゆるコルゲートチューブ等の外装材22Bと、を含んで構成されている。ワイヤ22Aは、長尺状に細長く形成されると共に可撓性を有し、弾性的に撓み変形可能とされ、外装材22Bによって保護されている。
【0064】
なお、図4に示されるように、ハーネス22の余長部36では、ワイヤ22Aが露出している。そして、クッションパッド14の収容部30の上縁部30A及び収容部30の下縁部30B側では、ハーネス22の外装材22Bが接触している。
【0065】
(車両用シートの作用及び効果)
次に、本実施形態に係る車両用シート10の作用及び効果について説明する。
【0066】
図1に示されるように、本実施形態では、クッションパッド14に振動体20R、20L、ハーネス22及び配策部26が設けられている。振動体20R、20Lは、車両用シート10に乗員が着座している状態で作動し、配策部26には、振動体20R、20Lを作動させるECU24と当該振動体20R、20Lとを電気的に接続するハーネス22が配策される。
【0067】
図6に示されるように、当該ハーネス22には、余長部36が設けられており、当該余長部36は、収容部30内に収容され、クッションパッド14の弾性変形及び復元に伴って移動する振動体20R、20Lの移動分を許容する。
【0068】
具体的に説明すると、図6の二点鎖線で示されるように、クッションパッド14は、運転者の着座により撓み変形し、当該クッションパッド14の上面14Aは下方側へ移動する。これにより、クッションパッド14の上面14A側に設けられた振動体20R、20Lの位置は下方側へ移動する。一方、図6の実線で示されるように、当該クッションパッド14は運転者が退座すると復元する。これにより、当該クッションパッド14の上面14Aは上方側へ移動し、振動体20R、20Lの位置は上方側へ移動することになる。
【0069】
このような振動体20R、20Lの上下方向に沿った移動によって、当該振動体20R、20Lとハーネス22とを接続させる接続部23の位置は、上下方向に沿って移動する。
【0070】
前述のように、本実施形態では、ハーネス22において、振動体20R、20L側に余長部36が設けられている。このため、運転者の着座及び退座によるクッションパッド14の弾性変形及び復元に伴って上下方向に沿って移動する振動体20R、20Lとの接続部23の上下方向の差分をハーネス22の余長部36によって吸収することができる。
【0071】
これにより、本実施形態では、運転者の着座及び退座により振動体20R、20Lとハーネス22との接続部23において発生する繰り返し荷重の印加による当該接続部23の断線を抑制することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態では、ハーネス22の余長部36は、クッションパッド14が弾性変形及び復元する方向に沿って折り返して形成されている。これにより、本実施形態では、クッションパッド14の弾性変形及び復元に伴って余長部36の折り返し量が変化する。
【0073】
つまり、クッションパッド14の弾性変形及び復元に伴って上下方向に沿って移動する振動体20R、20Lとハーネス22との接続部23の上下方向の差分をハーネス22の余長部36における折り返し量の変化によって吸収することができる。
【0074】
例えば、クッションパッド14の弾性変形により作動装置が下方側へ移動すると、図5に示されるように、ハーネス22の余長部36の弛み量が増大し余長部36における折り返し量が大きくなる。一方、クッションパッド14の復元により作動装置が上方側へ移動すると、図4に示されるように、ハーネス22の余長部36の弛み量が減少し余長部36における折り返し量が小さくなる。
【0075】
このため、本実施形態では、ハーネス22の余長部36をクッションパッド14が弾性変形及び復元する方向に沿って折り返して形成し、ハーネス22の余長部36が折り返される方向をクッションパッド14が弾性変形及び復元する方向と略同じにしている。
【0076】
これにより、本実施形態では、比較例として、例えば、図示はしないが、ハーネス22の余長部36が折り返される方向が、クッションパッド14が弾性変形及び復元する方向に対して直交する方向に沿って形成された場合と比較して、クッションパッド14の弾性変形及び復元に伴って変化するハーネス22の余長部36の折り返し量をスムーズに調整することが可能となる。
【0077】
さらに具体的に説明すると、本実施形態では、ハーネス22の余長部36は、クッションパッド14が弾性変形及び復元する方向に沿ってS字状を成しており、下凸部36A及び上凸部36Bを含んで構成されている。
【0078】
当該下凸部36Aは、振動体20R、20L側に設けられており、クッションパッド14が弾性変形する方向に沿って突出している。一方、当該上凸部36Bは、下凸部36Aと連続して形成されており、クッションパッド14が復元する方向に沿って突出し、下凸部36Aと上凸部36Bはシート幅方向に沿って配置されている。
【0079】
このように、ハーネス22に設けられた余長部36が、クッションパッド14が弾性変形及び復元する方向に沿ってS字状を成し、下凸部36A及び上凸部36Bを含んで構成されることによって、クッションパッド14の変形(弾性変形及び復元)に伴って、図4図5に示されるように、下凸部36A及び上凸部36Bの位置が上下方向に沿って移動する。
【0080】
図4に示されるように、下凸部36Aと上凸部36Bの離間距離が小さい場合、ハーネス22の余長部36の弛み量が減少し、余長部36における折り返し量は小さくなる。一方、図5に示されるように、下凸部36Aと上凸部36Bの離間距離が大きい場合、ハーネス22の余長部36の弛み量が増大し、余長部36における折り返し量は大きくなる。
【0081】
以上のようにして、本実施形態では、クッションパッド14の弾性変形及び復元に伴って上下方向に沿って移動する振動体20R、20Lとの接続部23の上下方向の差分をハーネス22の余長部36における折り返し量の変化によって吸収することができる。
【0082】
これにより、本実施形態では、運転者の着座及び退座により振動体20R、20Lとハーネス22との接続部23において発生する繰り返し荷重F(図5参照)の印加による当該接続部23の断線を抑制することが可能となる。
【0083】
一方、収容部30には、ハーネス22の余長部36に設けられた上凸部36Bが当接する段部34が設けられている。当該段部34に上凸部36Bが当接することによって、当該上凸部36Bによるクッションパッド14の復元方向側への移動を制限している。
【0084】
ハーネス22の余長部36が折り返し量を変化させる際に、収容部30に設けられた段部34に当該余長部36の上凸部36Bが当接することによって、ハーネス22の余長部36が収容部30から抜け出さないようにすることができる。
【0085】
一方、本実施形態では、図3に示されるように、ハーネス22は、ワイヤ22Aの外側が外装材22Bによって外装されており、ワイヤ22Aが保護されている。ここで、クッションパッド14には、ウレタンフォーム等の発泡体が用いられ、外装材22Bには、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂材が用いられる。
【0086】
このため、外装材22Bがクッションパッド14に接触すると摺動抵抗が大きくなる。ハーネス22の余長部36では、折り返し量を変化させる必要があるため、ハーネス22同士が接触する可能性があるが、外装材22B同士が接触すると摺動抵抗が大きい。したがって、当該余長部36では、ワイヤ22Aが露出し、ハーネス22同士の接触による摩擦を低減させ、折り返し量の変化をスムーズに行えるようにしている。
【0087】
一方、ハーネス22において、余長部36以外の部分は、外装材22Bによって外装されているため、外装材22Bとクッションパッド14との摺動抵抗を利用して、クッションパッド14に対する所定の位置にハーネス22を固定させることが可能となる。
【0088】
ところで、本実施形態では、振動体20R、20Lは振動体20R、20Lとされ、当該振動体20R、20Lは、車両の危険状況を検出した場合に振動する。言い換えると、振動体20R、20Lの振動によって、車両の危険状況に備えることができる。
【0089】
このように、本実施形態では、自車両の危険状況を検知した場合、左右の振動体20R、20Lが作動するように設定されているが、これに限るものではない。例えば、ECU24は、自車両が当該自車両の右側に位置する車線を逸脱した場合、シート幅方向の右側に位置する振動体20Rのみに電気信号を出力するようにしてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、作動装置として、車両の危険状況を検出した場合に振動する振動体20R、20Lについて説明したが、これに限るものではない。例えば、車両の危険状況を検出した場合に警報を示す音等を発生させるスピーカーでもよい。さらには、車両の危険状況の有無に関係なく、作動装置として、ヒーター、送風機等の装置であってもよい。なお、これらの作動装置の適用に伴い、クッションパッド14において、作動装置が設けられる位置は適宜変更可能とされる。
【0091】
また、本実施形態では、シートクッション12のクッションパッド14について説明したが、本実施形態における構成は、シートバックにおいて適用可能である。
【0092】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
10 車両用シート
12 シートクッション(シートパッド)
14 クッションパッド(シートパッド)
20L 振動体(作動装置)
20R 振動体(作動装置)
22 ハーネス
22A ワイヤ(ハーネス本体部、ハーネス)
22B 外装材(ハーネス)
24 ECU(制御部)
26 配策部
30 収容部
32 溝部(受け部)
34 段部
36 余長部
36A 下凸部(変形凸部)
36B 上凸部(復元凸部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6