IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図1
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図2
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図3
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図4
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図5
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図6
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図7
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図8
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図9
  • 特開-電子機器及び光伝送装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175044
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電子機器及び光伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20221117BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20221117BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H01L23/46 Z
G06F1/20 A
G06F1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081167
(22)【出願日】2021-05-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発/ポスト5G情報通信システムにおけるテラビット光伝送システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翼
(72)【発明者】
【氏名】飯野 和広
(72)【発明者】
【氏名】倉光 浩一
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AA07
5E322AA11
5E322AB04
5E322FA04
5F136CB06
5F136EA36
(57)【要約】
【課題】液冷によって冷却対象を冷却する電子機器及び光伝送装置において、簡易な構造を実現する。
【解決手段】電子機器10は、筐体12と、冷却部材(コールドプレート14)と、ケージ16と、弾性部材(板バネ18)と、を備える。冷却部材は、筐体12に固定され、内部を冷却液が流れる。ケージ16は、冷却部材に対して接離可能に筐体12に支持され、冷却対象(光伝送モジュール20)が挿入される。弾性部材はケージ16を冷却部材側に押圧する。さらに冷却部材は、ケージ16に冷却対象が挿入された状態において冷却対象と接触する位置に設けられた接触部(突出部42)を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に固定され、内部を冷却液が流れる冷却部材と、
前記冷却部材に対して接離可能に前記筐体に支持され、冷却対象が挿入されるケージと、
前記ケージを前記冷却部材側に押圧する弾性部材と、
を備え、
前記冷却部材は、前記ケージに前記冷却対象が挿入された状態において前記冷却対象と接触する位置に設けられた接触部を有する、
電子機器。
【請求項2】
前記接触部は、前記ケージ側に突出する突出部である、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
複数の前記ケージは、前記冷却部材に沿って前記筐体への前記冷却対象の挿入方向と交差する方向に並んで配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記冷却部材は、複数の前記ケージに対して共通に用いられている、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記冷却部材の厚み方向における第一側に設けられた前記ケージとしての第一ケージと、
前記冷却部材の厚み方向における第一側と反対側の第二側に設けられた前記ケージとしての第二ケージと、
を備える、
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記冷却部材は、内部に前記冷却液を流す冷却液流路を有し、
前記冷却液流路は、前記冷却部材に沿って前記ケージへの前記冷却対象の挿入方向と交差する方向に蛇行している、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記筐体に固定される固定基板と、
前記ケージに取り付けられる可動基板と、
前記固定基板と前記可動基板とを電気的に接続する可撓性の接続ケーブルと、
を備える、
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
筐体と、
前記筐体に固定され、内部を冷却液が流れる冷却部材と、
前記冷却部材に対して接離可能に前記筐体に指示されたケージと、
前記ケージを前記冷却部材側に押圧する弾性部材と、
前記ケージに挿入された光伝送モジュールと、
を備え、
前記冷却部材は、前記ケージに前記光伝送モジュールが挿入された状態において前記光伝送モジュールと接触する位置に設けられた接触部を有する、
光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、電子機器及び光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱部を有する機器類を搭載するためのラック搭載装置として、ラックに固定される外筐体内に、この外筐体内にラックの前面側から脱着可能に設けられると共に、機器類が搭載された内筐体を備える構造のものがある。このラック搭載装置では、外筐体に、発熱部で発生した熱を吸収するための排熱手段が設けられ、かつ外筐体と内筐体の間に、内筐体側と外筐体側とを熱的に密着させて発熱部の熱を排熱手段に吸収させる熱伝達手段が設けられる。
【0003】
ところで、筐体のケージに冷却対象が接続される電子機器では、冷却対象に接触して冷却対象の熱を受けるコールドプレート等の冷却部材として、内部を冷却液が流れる液冷構造が適用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-351585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように液冷によって冷却対象を冷却する電子機器において、冷却対象と冷却部材とを接触させるために、たとえば、操作部材の回転操作を、冷却部材が冷却対象に接近する移動に変換する変換機構を設けると、構造の複雑化を招く。冷却対象として光伝送モジュールを備えた光伝送装置においても、光伝送モジュールを移動させるためにこのような変換機構を設けると、構造の複雑化を招く。
【0006】
そこで、本願の開示する技術は、一つの側面として、簡易な構造で、液冷によって冷却対象を冷却する電子機器及び光伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願の開示する技術の一観点によれば、筐体と、冷却部材と、ケージと、弾性部材と、を備える電子機器が提供される。冷却部材は、筐体に固定され、内部を冷却液が流れる。ケージは、冷却部材に対して接離可能に筐体に支持され、冷却対象が挿入される。弾性部材はケージを冷却部材側に押圧する。さらに冷却部材は、ケージに冷却対象が挿入された状態において冷却対象と接触する位置に設けられた接触部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する技術によれば、一例として、簡易な構造で、液冷によって冷却対象を冷却する電子機器及び光伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願の開示する技術の一実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図2図1に示される電子機器を部分的に示す分解斜視図である。
図3図2に示される電子機器のコールドプレートを示す平面図である。
図4図1に示される電子機器を光伝送モジュールの挿入前の状態で示す側面断面図である。
図5図1に示される電子機器を光伝送モジュールの挿入前の状態で部分的に示す斜視図である。
図6図1に示される電子機器を光伝送モジュールの挿入途中の状態で示す側面断面図である。
図7図1に示される電子機器を光伝送モジュールの挿入途中の状態で部分的に示す斜視図である。
図8図1に示される電子機器を光伝送モジュールの挿入後の状態で示す側面断面図である。
図9図1に示される電子機器を光伝送モジュールの挿入後の状態で部分的に示す斜視図である。
図10】比較例の電子機器を光伝送モジュールの挿入途中の状態で部分的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の開示する技術の一実施形態を説明する。
【0011】
図1及び図2には、本願の開示する技術の一実施形態に係る電子機器10が示されている。矢印FRは電子機器10の前後方向前側、矢印RHは電子機器10の左右方向右側、矢印UPは電子機器10の上下方向上側をそれぞれ示している。
【0012】
本実施形態に係る電子機器10は、図1に示されるように筐体12を備える。また、電子機器10は、図2に示されるように、コールドプレート14と、ケージ16と、板バネ18と備える。この電子機器10には、図1に示されるように、複数の光伝送モジュール20が接続される。電子機器10及び光伝送モジュール20は、光伝送装置22を形成する。電子機器10は、たとえば、光伝送モジュール20により伝送された光信号を電気信号に変換して外部装置に出力したり、外部からの電気信号を光信号に変換して光伝送モジュール20により外部装置に送ったりすることが可能である。
【0013】
図1に示されるように、筐体12は平盤状を成しており、筐体12の背面側には、電子機器10を他の機器等に接続するためのコネクタ24、26が設けられている。筐体12の内部には、各種の電子部品28が搭載されている。
【0014】
筐体12の前壁30には、接続される光伝送モジュール20に対応した接続口32が形成されている。図1に示した例では、接続口32は電子機器10の上下方向に2列であり、各列において左右方向に8個形成されている。したがって、筐体12は合計で16個の接続口32を有している。
【0015】
図4にも示されるように、筐体12の内部には、コールドプレート14が配置されている。コールドプレート14は、銅等の熱伝導性が高い金属で形成された平盤状の部材である。また、コールドプレート14は、上側の接続口32と下側の接続口32の間の位置で、筐体12に、図示しないブラケットやボルト等の固定具を用いて固定されている。コールドプレート14の長手方向は、電子機器10の左右方向と一致し、コールドプレート14の短手方向は、電子機器10の前後方向と一致し、コールドプレート14の厚み方向は、電子機器10の上下方向と一致している。
【0016】
コールドプレート14の内部には、冷却液が流れる冷却液流路38が設けられている。図3に示すように、冷却液流路38は、ケージ16への光伝送モジュール20の挿入方向(矢印A方向)と直交する方向に蛇行して形成されている。冷却液流路38は、例えば、パイプであり、コールドプレート14の熱を、冷却液流路38を流れる冷却液に伝えることができる。冷却液流路38は、コールドプレート14に形成された空間部分であってもよい。
【0017】
図2及び図4に示されるように、コールドプレート14の上面側は第一側14Aであり、下面側、すなわち第一側14Aの反対側は第二側14Bである。
【0018】
コールドプレート14の第一側14A及び第二側14Bには、電子機器10に接続される光伝送モジュール20にそれぞれ対応して複数のケージ16が設けられている。第一側14Aに配置されるケージが第一ケージ16Aであり、第二側14Bに配置されるケージ16が第二ケージ16Bである。複数のケージ16は、電子機器10の左右方向に並べて配置されており、複数のケージ16に共通で1つのコールドプレート14が用いられている。
【0019】
ケージ16は、電子機器10の前後方向が長手方向と一致する向きで配置された直方体の箱状の部材である。ケージ16において、電子機器10の前後方向前側は開口されており、光伝送モジュール20が挿抜可能である。光伝送モジュール20は、ケージ16に挿入された状態で、図示しないストッパにより係止されることで、挿入状態に維持される。そして、ストッパによる係止を解除することで光伝送モジュール20はケージ16から抜き出すことが可能となる。
【0020】
第一ケージ16Aの上面には、可動基板40が固定されている。同様に、第二ケージ16Bの下面にも、可動基板40が固定されている。
【0021】
上側の可動基板40と天板34の間、及び、下側の可動基板40と底板36の間には、弾性部材の一例としての板バネ18が配置されている。
【0022】
上側の可動基板40と天板34の間の板バネ18のそれぞれにおいて、一方の端部は天板34に、他方の端部は可動基板40に接触している。これによって、上側の可動基板40及び第一ケージ16Aは、コールドプレート14に対し接離可能に、筐体12に支持されている。第一ケージ16Aがコールドプレート14から離間する方向(上方向)に移動すると、板バネ18のバネ力が可動基板40を介して第一ケージ16Aに作用し、板バネ18は第一ケージ16Aを下方向、すなわちコールドプレート14側に押圧する。
【0023】
同様に、下側の可動基板40と底板36の間の板バネ18のそれぞれにおいて、一方の端部は底板36に、他方の端部は可動基板40に接触されている。これによって、下側の可動基板40及び第二ケージ16Bは、コールドプレート14に対し接離可能に、筐体12に支持されている。第二ケージ16Bがコールドプレート14から離間する方向(下方向)に移動すると、板バネ18のバネ力が可動基板40を介して第二ケージ16Bに作用し、第二ケージ16Bを上方向、すなわちコールドプレート14側に押圧する。
【0024】
図2に示されるように、本実施形態では、1つのケージ16に対し、電子機器10の左右方向及び前後方向で2列ずつ、合計で4つの板バネ18が用いられている。
【0025】
コールドプレート14の上面及び下面には、ケージ16にそれぞれ対応する突出部42が形成されている。突出部42は、凸形状、段差形状等の形状をしており、ケージ16側に突出している。ケージ16には、突出部42と対応する位置に開口する開口部44が形成されている。突出部42のそれぞれの頂面46は平面であり、接触面の一例である。突出部42は、後述するように、ケージ16に光伝送モジュール20が挿入された状態で、光伝送モジュール20が接触する位置に設けられた接触部である。
【0026】
突出部42において、頂面46よりも電子機器10の前後方向前側、すなわちケージ16への光伝送モジュール20の入口側には、傾斜面48が形成されている。傾斜面48は、ケージ16の奥側、すなわち電子機器10の前後方向後側へ向かうにしたがって、対応する板バネ18側へ傾斜する面である。
【0027】
図4に示されるように、ケージ16に光伝送モジュール20が挿入されていない状態で、ケージ16のそれぞれは板バネ18に押圧されてコールドプレート14側に移動している。この状態で、突出部42における頂面46側の一部は、ケージ16の内部に位置している。そして、入口側から矢印A方向に電子機器10を見ると、傾斜面48の一部、具体的には頂面46に近い部分が見えるようになっている。
【0028】
ケージ16において、対応する突出部42と対向している部分を対向部50とする。図4に示されるように光伝送モジュール20がケージ16に挿入されていない状態では、板バネ18によって押圧されたケージ16はコールドプレート14側に移動した位置にある。この状態における突出部42の頂面46(接触面)と対向部50との間隔寸法D1は、光伝送モジュール20の高さ寸法H1よりも短く設定されている。
【0029】
そして、図8に示されるように、ケージ16に光伝送モジュール20が挿入された状態で、ケージ16がコールドプレート14から離れる方向に移動し、板バネ18によってコールドプレート14側へ押圧されている。この状態では、間隔寸法D1はケージ16の高さ寸法H1と一致し、光伝送モジュール20は突出部42の頂面46に接触している。このように、ケージ16に光伝送モジュール20が挿入された状態で、光伝送モジュール20がコールドプレート14に確実に接触するように、突出部42の突出寸法T1(図2参照)が設定されている。
【0030】
なお、冷却液流路38は、図4に示される例では、コールドプレート14において突出部42の部分には形成されていないが、突出部42の部分まで冷却液流路38が形成されていてもよい。
【0031】
図4及び図5に示されるように、筐体12の内部には、固定基板52が設けられている。固定基板52は、筐体12の底板36に固定されている。固定基板52と可動基板40、及び、固定基板52と可動基板40は、可撓性を有する接続ケーブル54で電気的に接続されている。
【0032】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
本実施形態に係る電子機器10では、図4に示されるように、ケージ16に光伝送モジュール20が挿入されていない状態で、ケージ16は板バネ18に押圧されてコールドプレート14に接近した位置にある(図5にも実線で示すケージ16参照)。そしてこの状態で、開口部44から、突出部42において頂面46を含む一部が、ケージ16内に突出している。突出部42の傾斜面48は、ケージ16の入口側から見える位置にあり、奥側へ向かうにしたがって、対応する板バネ18側へ傾斜している。
【0034】
この状態でケージ16に光伝送モジュール20が挿入されると、挿入途中で、図6に示されるように、光伝送モジュール20の先端が傾斜面48に当たる。傾斜面48は奥側へ向かうにしたがって板バネ18側へ傾斜しているので、光伝送モジュール20は、図6に矢印Bで示されるように、奥側へ移動するに連れて板バネ18側へも移動する(図7に二点鎖線で示すケージ16参照)。そして、光伝送モジュール20が傾斜面48を超えると、頂面46に沿ってさらに奥側へ移動する。
【0035】
そして、図8に示されるように、ケージ16内の所定位置まで光伝送モジュール20が挿入された状態となる。この状態では、光伝送モジュール20が突出部42に接触しており、ケージ16は図9に矢印Cで示されるように、コールドプレート14から離れる方向に移動している。これにより、板バネ18からのバネ力が、矢印Dで示されるようにケージ16に作用する。コールドプレート14には突出部42が形成されており、ケージ16に挿入された状態の光伝送モジュール20は、突出部42に押し付けられる。
【0036】
このように、本実施形態に係る電子機器10では、ケージ16に光伝送モジュール20が挿入された状態で、板バネ18のバネ力によってケージ16をコールドプレート14側に押圧することで、光伝送モジュール20をコールドプレート14に接触させている。光伝送モジュール20をコールドプレート14に接触させるために、たとえば操作部材の回転操作を、コールドプレート14に対しケージ16を接近させる動作に変換する変換機構等を設けると、構造の複雑化を招く。これに対し、本実施形態に係る電子機器10では、ケージ16に挿入された光伝送モジュール20をコールドプレート14に接触させるために、このような変換機構が不要である。すなわち、本実施形態に係る電子機器10では、簡易な構造で、光伝送モジュール20をコールドプレート14に接触させて冷却することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る電子機器10では、いわゆる液冷の構造である。すなわち、コールドプレート14の内部に冷却液が流れるので、コールドプレート14の熱を冷却液に移動させることで、光伝送モジュール20の冷却を図ることができる。そして、コールドプレート14を筐体に固定していることで、液冷構造の簡素化を図ることが可能である。この点について、図10に示す比較例の電子機器70と比較しつつ説明する。
【0038】
比較例に係る電子機器70では、ケージ72は筐体(図10では図示省略)に固定され、コールドプレート74がケージ72に対し矢印Fで示すように接離可能に、筐体に取り付けられている。そして、ケージ72に光伝送モジュール20が挿入された状態で、コールドプレート14がケージ72に接近することで光伝送モジュール20に接触する構造である。
【0039】
比較例に係る電子機器70では、コールドプレート74が筐体に対し可動であるため、コールドプレート74に冷却液を供給する供給管の接続部分での液漏れを抑制することが求められる。また、比較例に係る電子機器70では、ケージ72ごとにコールドプレート74を分割している。このため、複数のコールドプレート74に冷却液を供給するために、コールドプレート74を接続して冷却液を流すための配管76が設けられており、構造の複雑化を招く。さらに、配管76とコールドプレート74との接続部分等からの漏液を抑制することも求められる。
【0040】
しかも、比較例に係る電子機器70では、冷却液が複数のコールドプレート74を順に流れるため、冷却液の流れ方向の下流側に位置するコールドプレート74には温度が上昇した状態で冷却液が流入することになる。すなわち、複数の光伝送モジュール20に対する冷却効果に偏りが生じ、冷却効果の均一化を図ることが難しい。
【0041】
これに対し、本実施形態に係る電子機器10では、コールドプレート14が筐体12に対し固定されており、複数のケージ16に対し共通化されている。複数のコールドプレート14を配管で接続しないので、構造の簡素化を図ることが可能である。また、コールドプレート14が固定されているので、配管との接続部分からの漏液を抑制する構造を採らずに済む。
【0042】
さらに、本実施形態に係る電子機器10では、図3に示されるように、コールドプレート14において冷却液流路38が、光伝送モジュール20の挿入方向(矢印A方向)に対し蛇行して形成されている。そして、複数のケージ16に対し、コールドプレート14の平面視で、電子機器10の左右方向の右側から左側へ横断する冷却液の流れと、左側から右側へ横断する冷却液の流れが交互に生成される構造である。このため、特定の光伝送モジュール20に対する冷却効果が低くなることを抑制でき、複数の光伝送モジュール20に対する冷却効果の偏りを抑制して、冷却効果の均一化を図ることができる。
【0043】
そして、本実施形態に係る電子機器10では、コールドプレート14に冷却液を流し、液冷によって光伝送モジュール20を冷却する。このような液冷に代えて空冷とした場合には、冷却風に伝熱する面積を広くするためにフィン等を設けることとなり、構造の大型化を招くことがある。これに対し本実施形態では、このようなフィンが不要であり、構造の小型化を図ることが可能である。
【0044】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0045】
上記実施形態では、突出部42が傾斜面48を有する構造であるが、このような傾斜面48がない構造であってもよい。すなわち、傾斜面48がなくても、ケージ16に光伝送モジュール20が挿入された状態で板バネ18がケージ16をコールドプレート14側に押圧することで、光伝送モジュール20をコールドプレート14に接触させる構造が実現されていればよい。たとえば、間隔寸法D1(図4参照)が光伝送モジュール20の高さ寸法H1よりも長くなるようにケージ16をコールドプレート14から離れた位置でロック部材によりロックしておく構造でもよい。この場合、ケージ16へのコールドプレート14の挿入状態でロック解除されるようにすれば、板バネ18がケージ16をコールドプレート14側に押圧する構造を実現できる。
【0046】
また、上記実施形態では、突出部42の頂面46が平面である構造としているが、頂面46は平面ではなく、凹凸を有する形状でもよい。頂部46を平面とすれば、凹凸を有する形状と比較して、接触面積を広く確保できる。
【0047】
また、上記実施形態では、コールドプレート14が接触部の一例としての突出部42を有する構造としているが、接触部としては突出部42でなくてもよい。たとえば、コールドプレート14の上面の全体及び下面の全体が平面に形成されていてもよい。この場合は、第一ケージ16Aの開口部44を、コールドプレート14の上面及び下面に対応させて開口しておけばよい。すなわち、これにより、コールドプレート14の上面又は下面がケージ16の内部に位置する構造、すなわちケージ16に挿入された光伝送モジュール20がコールドプレート14に接触する構造を実現できる。
【0048】
また、上記実施形態では、コールドプレート14の第一側14A及び第二側14Bの両側にケージ16が設けられた構造を挙げたが、いずれか一方の側にのみケージ16が設けられる構造でもよい。たとえば、コールドプレート14の第一側14Aにのみケージ16を設けた構造では、第二側14Bにおいてコールドプレート14と底板36とが接近した配置とすることで、電子機器10の高さ寸法を低くすることが可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、複数のケージ16が、コールドプレート14の長手方向、すなわち電子機器10の左右方向に沿って並べて配置された構造とされているが、ケージ16がコールドプレート14の長手方向に沿った方向に1つ配置された構造でもよい。複数のケージ16が並べて配置された構造では、電子機器10により多くの光伝送モジュール20を接続することが可能である。そして、上記実施形態では、複数のケージ16に共通でコールドプレート14を設けているので、複数のケージ16のそれぞれに対応してコールドプレート14を設けた例と比較して、構造の簡素化を図ることが可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、冷却部材の一例として平盤状のコールドプレート14を用いているが、冷却部材としては、平盤状でなくてもよい。たとえば、ブロック状の部材であってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、固定基板52と可動基板40とが可撓性の接続ケーブル54で接続された構造としている。可動基板40及び可動基板40が移動しても、接続ケーブル54に余長をもたせることで、固定基板52との相対位置の変化を接続ケーブル54の変形により吸収できる。これに代えて、可撓性がない、すなわち実質的に変形しない接続部材で固定基板52と可動基板40とが接続された構造としてもよい。可撓性がない接続部材を用いた場合は、可動基板40の可動範囲で、固定基板52との相対的な位置の変化を吸収できる構造を採ればよい。
【0052】
また、上記実施形態では、弾性部材として板バネ18を用いているが、板バネ18に代えて、皿バネやコイルバネ等のバネを用いてもよく、さらにはスポンジやゴム等を用いてもよい。板バネ18を用いると、筐体12内の限られたスペースであっても配置が容易である。板バネ18の数は限定されず、1つのケージ16に対し1つでもよいが、1つのケージ16を複数の板バネ18で押圧することで、安定的に押圧することが可能となる。
【0053】
また、上記実施形態では、冷却対象としての光伝送モジュール20がケージ16に挿抜可能とされた構造としており、電子機器10と光伝送モジュール20とで光伝送装置22を成している。ただし、冷却対象は光伝送モジュール20でなくてもよい。たとえば電気信号を伝送するプラグがケージ16に挿抜可能とされた構造でもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、電子機器10の筐体12が横置きされた状態を示したが、筐体12は縦置き、すなわち、図1における矢印A方向に見て、前壁30の長手方向が鉛直方向となる向きで設置されてもよい。
【0055】
以上、本願の開示する技術の一実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0056】
なお、上述の本願の開示する技術の一実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
筐体と、
前記筐体に固定され、内部を冷却液が流れる冷却部材と、
前記冷却部材に対して接離可能に前記筐体に支持され、冷却対象が挿入されるケージと、
前記ケージを前記冷却部材側に押圧する弾性部材と、
を備え、
前記冷却部材は、前記ケージに前記冷却対象が挿入された状態において前記冷却対象と接触する位置に設けられた接触部を有する、
電子機器。
(付記2)
前記接触部は、前記ケージ側に突出する突出部である、
付記1に記載の電子機器。
(付記3)
複数の前記ケージは、前記冷却部材に沿って前記筐体への前記冷却対象の挿入方向と交差する方向に並んで配置されている、
付記1又は付記2に記載の電子機器。
(付記4)
前記冷却部材は、複数の前記ケージに対して共通に用いられている、
付記3に記載の電子機器。
(付記5)
前記冷却部材の厚み方向における第一側に設けられた前記ケージとしての第一ケージと、
前記冷却部材の厚み方向における第一側と反対側の第二側に設けられた前記ケージとしての第二ケージと、
を備える、
付記1~付記4の何れか一項に記載の電子機器。
(付記6)
前記冷却部材は、内部に前記冷却液を流す冷却液流路を有し、
前記冷却液流路は、前記冷却部材に沿って前記ケージへの前記冷却対象の挿入方向と交差する方向に蛇行している、
付記1~付記5のいずれか一項に記載の電子機器。
(付記7)「請求項7」
前記筐体に固定される固定基板と、
前記ケージに取り付けられる可動基板と、
前記固定基板と前記可動基板とを電気的に接続する可撓性の接続ケーブルと、
を備える、
付記1~付記6の何れか一項に記載の電子機器。
(付記8)
前記ケージは、前記突出部と対応する位置に開口する開口部を有する、
付記2に記載の電子機器。
(付記9)
前記突出部は、前記ケージへの前記冷却対象の入口側に設けられ奥側へ向かうに従って前記弾性部材側へ傾斜する傾斜面を有する、
付記8に記載の電子機器。
(付記10)
前記突出部は、前記ケージに挿入された前記冷却対象と接触する接触面を有し、
前記ケージは、前記接触面と対向する対向部を有し、
前記接触面と前記対向部との間隔寸法は、前記冷却対象が前記ケージに挿入されていない状態での前記冷却対象の高さ寸法よりも短く設定されている、
付記8又は付記9に記載の電子機器。
(付記11)
前記突出部の頂面が平面である付記8~付記10の何れか一項に記載の電子機器。
(付記12)
前記冷却対象は、光伝送モジュールである、
付記1~付記11の何れか一項に記載の電子機器。
(付記13)⇒
筐体と、
前記筐体に固定され、内部を冷却液が流れる冷却部材と、
前記冷却部材に対して接離可能に前記筐体に支持されたケージと、
前記ケージを前記冷却部材側に押圧する弾性部材と、
前記ケージに挿入された光伝送モジュールと、
を備え、
前記冷却部材は、前記ケージに前記光伝送モジュールが挿入された状態において前記光伝送モジュールと接触する位置に設けられた接触部を有する、
光伝送装置。
【符号の説明】
【0057】
10 電子機器
12 筐体
14 コールドプレート(冷却部材の一例)
14A 第一側
14B 第二側
16 ケージ
16A 第一ケージ
16B 第二ケージ
18 板バネ(弾性部材の一例)
20 光伝送モジュール(冷却対象の一例)
22 光伝送装置
24、26 コネクタ
28 電子部品
30 前壁
32 接続口
34 天板
36 底板
38 冷却液流路
40 可動基板
42 突出部
44 開口部
46 頂面(接触面の一例)
48 傾斜面
50 対向部
52 固定基板
54 接続ケーブル
D1 間隔寸法
H1 高さ寸法

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
なお、上述の本願の開示する技術の一実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
筐体と、
前記筐体に固定され、内部を冷却液が流れる冷却部材と、
前記冷却部材に対して接離可能に前記筐体に支持され、冷却対象が挿入されるケージと、
前記ケージを前記冷却部材側に押圧する弾性部材と、
を備え、
前記冷却部材は、前記ケージに前記冷却対象が挿入された状態において前記冷却対象と接触する位置に設けられた接触部を有する、
電子機器。
(付記2)
前記接触部は、前記ケージ側に突出する突出部である、
付記1に記載の電子機器。
(付記3)
複数の前記ケージは、前記冷却部材に沿って前記筐体への前記冷却対象の挿入方向と交差する方向に並んで配置されている、
付記1又は付記2に記載の電子機器。
(付記4)
前記冷却部材は、複数の前記ケージに対して共通に用いられている、
付記3に記載の電子機器。
(付記5)
前記冷却部材の厚み方向における第一側に設けられた前記ケージとしての第一ケージと、
前記冷却部材の厚み方向における第一側と反対側の第二側に設けられた前記ケージとしての第二ケージと、
を備える、
付記1~付記4の何れか一項に記載の電子機器。
(付記6)
前記冷却部材は、内部に前記冷却液を流す冷却液流路を有し、
前記冷却液流路は、前記冷却部材に沿って前記ケージへの前記冷却対象の挿入方向と交差する方向に蛇行している、
付記1~付記5のいずれか一項に記載の電子機器。
(付記7)
前記筐体に固定される固定基板と、
前記ケージに取り付けられる可動基板と、
前記固定基板と前記可動基板とを電気的に接続する可撓性の接続ケーブルと、
を備える、
付記1~付記6の何れか一項に記載の電子機器。
(付記8)
前記ケージは、前記突出部と対応する位置に開口する開口部を有する、
付記2に記載の電子機器。
(付記9)
前記突出部は、前記ケージへの前記冷却対象の入口側に設けられ奥側へ向かうに従って前記弾性部材側へ傾斜する傾斜面を有する、
付記8に記載の電子機器。
(付記10)
前記突出部は、前記ケージに挿入された前記冷却対象と接触する接触面を有し、
前記ケージは、前記接触面と対向する対向部を有し、
前記接触面と前記対向部との間隔寸法は、前記冷却対象が前記ケージに挿入されていない状態での前記冷却対象の高さ寸法よりも短く設定されている、
付記8又は付記9に記載の電子機器。
(付記11)
前記突出部の頂面が平面である付記8~付記10の何れか一項に記載の電子機器。
(付記12)
前記冷却対象は、光伝送モジュールである、
付記1~付記11の何れか一項に記載の電子機器。
(付記13)
筐体と、
前記筐体に固定され、内部を冷却液が流れる冷却部材と、
前記冷却部材に対して接離可能に前記筐体に支持されたケージと、
前記ケージを前記冷却部材側に押圧する弾性部材と、
前記ケージに挿入された光伝送モジュールと、
を備え、
前記冷却部材は、前記ケージに前記光伝送モジュールが挿入された状態において前記光伝送モジュールと接触する位置に設けられた接触部を有する、
光伝送装置。