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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175072
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20221117BHJP
   H02K 29/08 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
H02K3/18 P
H02K29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081210
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊村 直人
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓司
【テーマコード(参考)】
5H019
5H603
【Fターム(参考)】
5H019AA08
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB20
5H019BB23
5H019CC03
5H019DD01
5H019EE09
5H603AA03
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CE01
(57)【要約】
【課題】軸方向における長さを抑制する。
【解決手段】モータは、ステータと、基板とを備える。前記ステータは、周方向に並んで配置された複数の磁性体と、前記複数の磁性体にそれぞれ巻かれたコイルと、を備える。前記基板は、回転軸方向において、前記ステータに対向する。前記コイルは、第1層と、当該第1層の上に積み重なった第2層と、を備える。前記回転軸方向における前記磁性体の厚さをL、径方向における前記磁性体の幅をDとして、1≦D/Lである。前記第2層は、前記磁性体から最も離れた層である。径方向において、前記コイルの内縁を構成する、前記第1層の導線と前記第2層の導線とは接触しており、径方向において、前記コイルの外縁を構成する、前記第1層の導線と前記第2層の導線とは接触している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並んで配置された複数の磁性体と、前記複数の磁性体にそれぞれ巻かれたコイルと、を有するステータと、
回転軸方向において、前記ステータに対向する基板と、を備え、
前記コイルは、第1層と、当該第1層の上に積み重なった第2層と、を備え、
前記回転軸方向における前記磁性体の厚さをL、径方向における前記磁性体の幅をDとして、1≦D/Lであり、
前記第2層は、前記磁性体から最も離れた層であり、
径方向において、前記コイルの内縁を構成する、前記第1層の導線と前記第2層の導線とは接触しており、
径方向において、前記コイルの外縁を構成する、前記第1層の導線と前記第2層の導線とは接触している、
モータ。
【請求項2】
前記内縁を構成する前記第2層の導線は、前記内縁を構成する前記第1層の導線に対して、径方向において前記外縁側にあり、
前記外縁を構成する前記第2層の導線は、前記外縁を構成する前記第1層の導線に対して、径方向において前記内縁側にある、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1層を形成する、径方向において相互に隣接する導線は、径方向において互いに接触しており、
前記第2層を形成する、径方向において相互に隣接する導線は、径方向において互いに接触している、
請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記磁性体の外周部の端面の延長線に対して、前記第2層全体は前記コイルが巻かれた前記磁性体の一部分の側にある、
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項5】
回転軸方向における前記磁性体の厚さと同じ又は大きい厚さを有するロータと、
回転軸方向において、前記ロータに対向して配置されたセンサと、を備え、
回転軸方向において、前記センサは前記基板に対して前記ロータ側にある、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項6】
前記複数の磁性体のうち、周方向において隣接する2つの磁性体それぞれに巻かれたコイルの間には隙間がある、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項7】
前記コイルから引き出された引出線の引出位置は、当該コイルの外縁である、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項8】
前記引出線は、前記基板の外周部に形成された凹部を通過して引き出されている、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記引出線と、他の前記コイルから引き出された引出線とは、前記基板を介して電気的に接続される、請求項7又は8に記載のモータ。
【請求項10】
径方向において、前記基板の内周部から外周部までの長さに対する、前記第2層の内縁から外縁までの長さの比率は50%~90%の範囲にある、請求項1乃至9のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項11】
前記磁性体の回転軸方向における厚さは、前記コイルの回転軸方向における厚さよりも大きい、請求項1乃至10のいずれか1つに記載のモータ。
【請求項12】
前記コイルの第1層は、前記コイルの外縁から巻き始められて、前記コイルの内縁側方向へ巻き回され、
前記コイルの第2層の巻き始めが、前記コイルの内縁を構成する前記第2層の導線における、前記コイルの周方向における端部に形成される、請求項1乃至11のいずれか1つに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ステータコアの軸方向における長さに対して、径方向における長さの方が大きい、いわゆる扁平モータが知られている。扁平モータにおいては、基板等の接続部材が、モータのステータに近接して配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-033873号公報
【特許文献2】特開2000-166193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
扁平モータにおいては、モータの軸方向における長さを抑えることが要求される一方、磁束の飽和を抑制し、トルクを増加させるには、ステータコアの軸方向における高さ(スタック長)を確保することが好ましい。
【0005】
一つの側面では、軸方向における長さを抑制できるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様において、モータは、ステータと、基板とを備える。前記ステータは、周方向に並んで配置された複数の磁性体と、前記複数の磁性体にそれぞれ巻かれたコイルと、を備える。前記基板は、回転軸方向において、前記ステータに対向する。前記コイルは、第1層と、当該第1層の上に積み重なった第2層と、を備える。前記回転軸方向における前記磁性体の厚さをL、径方向における前記磁性体の幅をDとして、1≦D/Lである。前記第2層は、前記磁性体から最も離れた層である。径方向において、前記コイルの内縁を構成する、前記第1層の導線と前記第2層の導線とは接触しており、径方向において、前記コイルの外縁を構成する、前記第1層の導線と前記第2層の導線とは接触している。
【0007】
一つの態様によれば、軸方向における長さを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態におけるモータの一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態におけるモータの一例を示す分解斜視図である。
図3図3は、実施形態におけるモータの一例を示す断面斜視図である。
図4図4は、実施形態におけるモータの一例を示す側断面図である。
図5図5は、実施形態におけるステータコアの一例を示す分解斜視図である。
図6図6は、実施形態におけるコイルが巻き回されたステータコアの一例を示す断面図である。
図7図7は、実施形態におけるコイルが巻き回されたステータコアの一例を示す側断面図である。
図8図8は、実施形態におけるステータの一例を示す断面図である。
図9図9は、実施形態におけるステータの一例を示す斜視図である。
図10図10は、実施形態における接続部の一例を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示するモータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。例えば、以下に示す図2等においては、後に説明するインシュレータ12の壁部122の形状が、図1等に示される形状とは異なる。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0010】
なお、以下の説明では、便宜上、図示の軸方向は、本実施形態におけるモータの回転軸方向とする。軸方向のうち、一方(上方向)を第1方向、他方(下方向)を第2方向とする。図示の径方向は、本実施形態におけるモータの回転軸方向と直交する径方向とする。径方向のうち、後に説明する回転軸Zから遠ざかる方向を径方向外側、回転軸Zに向かう方向を径方向内側とする。図示の周方向は、本実施形態におけるモータの回転方向と一致する方向とする。各図面において、説明を分かりやすくするために、軸方向、径方向及び周方向のうち、少なくともいずれかを含む座標軸を図示する場合がある。また、座標軸において、径方向の外側に向かう方向を正方向とする場合がある。
【0011】
(実施形態)
まず、実施形態におけるモータについて、図1乃至図4を用いて説明する。図1は、実施形態におけるモータの一例を示す斜視図である。図2は、実施形態におけるモータの一例を示す分解斜視図である。図3は、実施形態におけるモータの一例を示す断面斜視図である。図4は、実施形態におけるモータの一例を示す側断面図である。図3及び図4は、図1のA-A線で切断した断面を示す。
【0012】
図1乃至図4に示すように、実施形態におけるモータ1は、基板2と、ステータ3と、ロータ80と、ハウジング90とを備える。なお、以下においては、ハウジング90の蓋部以外の図示を省略する場合がある。本実施形態におけるモータ1は、例えば、インナーロータ型のブラシレスモータである。
【0013】
図1に示すステータ3は、ロータ80を取り囲むように配置される。本実施形態におけるモータ1は、いわゆる分割コアを採用する。本実施形態におけるステータ3は、後に説明する複数の分割コア10を備える。ステータ3は、複数の分割コア10を周方向に沿って円環状に配置し、隣接する各分割コア10を接合して一体化させたものである。複数の分割コア10は、例えば、周方向に沿って円環状に配置される。各分割コア10は、例えば、インサートモールドにより一体成形されている。
【0014】
ステータ3は、図4に示すように、ステータコア11と、インシュレータ12と、コイル30とを備える。なお、ステータコア11は、磁性体の一例である。コイル30は、導線14を、インシュレータ12を介してステータ3に巻き回すことにより形成される。コイル30からは、図2に示すように、引出線として、導線14の第1端部141、第2端部142が同一方向(第1方向)に引き出されている。ステータコア11、インシュレータ12及びコイル30については、後に詳しく説明する。
【0015】
ステータ3には、図2に示すように、軸方向においてステータ3と対向するように円環状に形成された基板2が、軸方向の第1方向側に配置されている。基板2は、例えばエポキシ等の絶縁性を有する樹脂材料で形成される。基板2は、2つの表面2a及び2bを備える。基板2上には、電子部品(不図示)が配置される。電子部品には、例えばコンデンサ、抵抗体、インバータ及びIC等が含まれる。基板2は、例えば、図4に示すように、軸方向において、表面2bがステータ3と対向するように、ステータ3に直接又は他の部材を介して支持されて配置される。なお、基板2は、ハウジング90に支持されて配置されても構わない。
【0016】
基板2は、図2に示すように、外周端から径方向内側に凹み、周方向に隣り合う複数の凹部21、22を備える。以下、凹部21を、第1凹部21又は基板側第1凹部21、凹部22を、第2凹部22又は基板側第2凹部22と呼称する場合がある。本実施形態において、基板2の表面2aには、ランド29が形成される。また、基板側第1凹部21と基板側第2凹部22との間には、周方向において、凸部としての基板凸部23が形成される。基板凸部23は、基板2の外周から径方向外側に突出して形成される。
【0017】
ランド29は、導電性を有する部材で形成され、導線14に接続される接続部である。ランド29には、後に説明するように、コイル30から引き出された導線14の第1端部141、第2端部142が、図1に示す合金である半田19により物理的及び電気的に接続される。なお、図3及び図4においては、ランド29は、半田19に覆われているため視認されない。
【0018】
ロータ80は、径方向において、ステータ3の内側に配置される。ロータ80は、図3に示すように、ロータマグネット81と、ロータコア82とを備える。ロータマグネット81は、例えば、ロータコア82の外周面に固定された、筒状又は円筒状の磁石である。ロータマグネット81は、例えば、ネオジム磁石のような希土類磁石により形成される。ロータコア82は、例えば、図示しないシャフトの外周面に固定される。
【0019】
また、図3及び図4に示すように、本実施形態において、ロータマグネット81の高さ(軸方向における大きさ)L2は、ステータコア11の高さ(軸方向における大きさ)Lよりも大きくなるように形成される。
【0020】
ハウジング90は、基板2、ステータ3、及びロータ80を収容する。ハウジング90は、蓋部と、図示しない外周部及び底部とを備える。ハウジング90の蓋部は、図2に示すように、上面視において、基板2及びステータ3の一部または全体を覆う。
【0021】
また、ハウジング90は、センサ91と、センサホルダ92とをさらに備える。センサ91は、ロータマグネット81の磁束を検出することにより、ロータ80の回転速度及び回転角度のうち、少なくともいずれかを検出する。センサホルダ92は、図4に示すように、ハウジング90の軸方向における第2方向側の面から、第2方向側に延在する。センサ91は、センサホルダ92の第2方向側(ロータ80側)の面に配置される。図2乃至図4に示すように、センサ91は、軸方向において、ロータマグネット81と対向するように、所定の距離だけ離間して配置される。また、センサ91の軸方向における位置P1は、基板2の軸方向における位置P2よりもロータ80側、すなわち軸方向における第2方向側である。
【0022】
次に、各分割コア10の構成について、図5乃至図8を用いて説明する。図5は、実施形態におけるステータコアの一例を示す分解斜視図である。図6は、実施形態におけるコイルが巻き回されたステータコアの一例を示す断面図である。図7は、実施形態におけるコイルが巻き回されたステータコアの一例を示す側断面図である。図8は、実施形態におけるステータの一例を示す断面図である。図5乃至図8に示すように、各分割コア10は、それぞれステータコア11と、インシュレータ12と、コイル30とを備える。なお、図5においては、コイル30の図示を省略している。また、図7においては、コイル30から引出線として引き出される導線14の図示を省略している。
【0023】
ステータコア11は、例えば、電磁鋼板等を軸方向に複数枚積層した積層構造を有する磁性体である。複数のステータコア11は、周方向に沿って円環状に配置される。ステータコア11は、ロータ80に対向する磁極部を端部として有するティース11aと、ヨーク11bとを有する。ティース11aは、ヨーク11bの内面から径方向内側(ロータ80側)に向かって延在する。ヨーク11bは、図8に示すように、複数の分割コア10が周方向に沿って円環状に配置された状態において、隣接するヨーク11bと周方向に連結される。なお、ヨーク11bは、外周部の一例である。
【0024】
いわゆる扁平モータであるモータ1のステータコア11において、径方向における長さ(幅)が、軸方向における高さ(厚さ)よりも大きくなるように形成される。本実施形態においては、図7に示すように、ステータコア11の径方向における幅Dと、ステータコア11の軸方向における厚さLとの比(D/L)は、1よりも大きい。さらに、D/Lは、4.5より大きいことが好ましい。なお、本実施形態におけるステータコア11の厚さLは、例えば、20mm以下である。
【0025】
インシュレータ12は、例えば、樹脂などの絶縁体で形成され、ステータコア11とコイル30との間に介在してコイル30とステータコア11とを電気的に絶縁するものである。インシュレータ12は、図5に示すように、ステータコア11を内部に収容する収容部121と、収容部121の径方向外側の端部に形成された壁部122と、収容部121の軸方向外側の両端部に形成された天面123と、収容部121の周方向における両端部に形成された側面125とを有する。インシュレータ12は、2つに分割可能に形成され、分割された状態で軸方向における内部にステータコア11を収容することができる。
【0026】
インシュレータ12の壁部122は、基板2がステータ3に組み付けられた組付状態で、当該基板2の外周側に位置する。壁部122は、径方向から見た場合、略矩形状に形成されており、軸方向においてヨーク11bから突出して形成されている。また、本実施形態において、壁部122には、図5に示すように、軸方向において凹んだ凹部122Aと、軸方向に対して所定の角度を成すように傾斜した傾斜面122Bとが形成される。
【0027】
次に、本実施形態におけるインシュレータ12に導線14を巻回してコイル30を形成する作業について説明する。コイル30は、インシュレータ12の天面123と側面125とを囲むように、インシュレータ12の収容部121を介して、ステータコア11のティース11aに時計回りまたは反時計回しで巻回される。本実施形態におけるコイル30は、例えば、1つのステータコア11に巻き回される、いわゆる集中巻きのコイルである。また、本実施形態における導線14は、例えば銅製の丸線である。
【0028】
図6乃至図8に示すように、コイル30は、第1層31と、軸方向において第1層31の上に積み重なる第2層32とを備える。インシュレータ12に導線14を巻回した場合、コイル30の第1層31は天面123に巻かれる。その際、コイル30の第1層31を形成する複数の導線1nが、例えば、図7及び図8に示すように、径方向において相互に接触するように巻かれる。また、本実施形態において、導線1nは、径方向において、例えばコイル30の外縁oEを構成する第1層の導線1oから巻き始め、コイル30の内縁iEを構成する第1層の導線1iに向かって、径方向における内側へと巻き回される。
【0029】
次に、第1層の導線1iから、軸方向における外側に導線が巻き回されることにより、コイル30の第2層が形成される。この場合において、図7に示すように、コイル30の内縁iEを構成する第1層の導線1iと第2層の導線2iとは相互に接触する。
【0030】
そして、コイル30の第2層を形成する導線2nは、導線2iから、コイル30の外縁oEを形成する第2層の導線2oに向かって、径方向における外側へと巻き回される。この場合において、図7に示すように、コイル30の外縁oEを構成する第1層の導線1oと第2層の導線2oとは相互に接触する。
【0031】
本実施形態において、例えば、図6及び図7に示すように、導線2iの径方向内側の端部I2は、導線1iの径方向内側の端部I1よりも外縁oE側、すなわち径方向において外側に位置する。同様に、導線2oの径方向内側の端部O2は、導線1oの径方向内側の端部O1よりも内縁iE側、すなわち径方向において内側に位置する。この場合、第2層32を構成する導線2nの巻数は、例えば、第1層31を構成する導線1nの巻数よりも小さい。より具体的には、導線2nの巻数T2は、導線1nの巻数T1と同じか、T1よりも1小さい。
【0032】
また、本実施形態において、第2層を構成する導線2nの内縁側の導線2iから外縁側の導線2oまでの径方向における長さTは、図7に示すように、基板2の内周側から外周側までの径方向における長さSよりも小さい。
【0033】
また、本実施形態におけるコイル30の全体は、上面視において、ステータコア11のヨーク11bの延長線よりも、周方向における内側に収まる。例えば、図6に示すように、コイル30の最外層にある第2層32は、ステータコア11のヨーク11bの周方向における端面Ea及びEbの延長線Xa及びXbよりも、周方向においてステータコア11に近い側に位置する。かかる構成においては、図8に示すように、周方向において隣接する分割コア10のコイル30の間に、隙間G1及びG2が形成される。また、本実施形態において、コイル30の外縁oEは、図6に示すように、インシュレータ12の傾斜部B1よりも、径方向において内側に位置する。
【0034】
また、本実施形態において、ステータコア11の軸方向における長さ(厚さ)Lは、図4に示すように、コイル30の軸方向における長さ(コイルエンド部分の厚さ)Ta及びTbの和よりも大きい。なお、本実施形態においては、ステータコア11の厚さLは、Ta及びTbに加えて、さらにインシュレータ12の軸方向における厚みTx及びTyを加えた大きさよりも大きい。
【0035】
この場合において、コイル30の第2層32は、ステータコア11から、軸方向及び周方向において、最も離れた層となる。コイル巻き数を少なくすることで、ステータの高さを抑える。
【0036】
次に、本実施形態におけるコイル30から引き出された引出線である導線14の第1端部141及び第2端部142を引き回して基板側第1凹部21及び基板側第2凹部22に組み付ける作業について、図9及び図10を用いて説明する。図9は、実施形態におけるステータの一例を示す斜視図である。図10は、実施形態における接続部の一例を示す拡大斜視図である。本実施形態において、コイル30の第1端部141は、図7に示すコイル30の第2層32の外縁側の導線2oから引き出され。コイル30の第2端部142は、コイル30の第1層31の外縁側の導線1oから引き出される。本実施形態において、第1端部141及び第2端部142のいずれも、図9に示すように、コイル30の径方向における外周側から引き出される。
【0037】
第1方向に向かって引き出された導線14の第1端部141及び第2端部142は、図10に示すように、基板2のランド29に接続される。その際、第1端部141及び第2端部142は、例えば、図5に示す傾斜面122B側、すなわち径方向における外側に倒れることにより、傾斜面122Bに沿って、凹部122Aに向けて逃がれる。
【0038】
基板側第1凹部21には、図10に示すように、ステータ3に基板2が組み付けられた組付状態で、コイル30から引き出された導線14の一方の端部である第1端部141が通される。基板側第2凹部22は、図10に示すように、ステータ3に基板2が組み付けられた組付状態で、コイル30から引き出された導線14の他方の端部である第2端部142が通される。
【0039】
導線14の第1端部141は、ステータ3に基板2が組み付けられた組付状態で、基板側第1凹部21の内側にあり、他方の第2端部142は、基板側第2凹部22の内側にある。第1端部141及び第2端部142は、周方向において、互いに向き合う方向に配置される。第1端部141及び第2端部142は、基板側第1凹部21と基板側第2凹部22との間の基板凸部23を周方向に挟む。第1端部141及び第2端部142は、図10に示すように、基板側第1凹部21と基板側第2凹部22との間の基板凸部23を周方向に挟んだ状態で、例えば半田19により基板2のランド29に接合される。
【0040】
本実施形態において、導線14の第1端部141と、他の分割コア10に巻き回された他のコイル30とは、基板2を介して電気的に接続される。この場合において、第1端部141と他のコイル30から引き出された引出線とは相互に交差することがない。これにより、引出線を交差するためのスペースを確保する必要がなくなるため、モータ1の軸長を抑制することができる。
【0041】
コイル30の第1層31と第2層32は、図6に示すコイル30の断面形状が略長方形状の枠内になるように巻き回される。なお、第2層32の導線2nの巻数T2が第1層31の導線1nの巻数T1よりも小さい場合、コイル30の断面形状は略台形の枠内に収まり、第2層32の径方向における長さが第1層31の長さよりも若干小さくなる。いずれの場合においても、軸方向において、コイル30の第2層32(軸方向外側)で形成されるコイル30の外形は、略長方形又は略台形の枠外に突出した部位を備えていない。
【0042】
本実施形態において、コイル30の第2層32は、第1層31が外縁側の導線1oから内縁側の導線1iまで巻かれた後に、コイル30の内縁側の導線2iのうち周方向側にある一部分を巻き始めとして巻かれる。すなわち、第2層32の巻き始めは、コイル30の内縁iEにおける周方向側の端部に形成される。この場合においても、周方向において隣接する2つのコイル30の内縁の間に隙間G2が確保されることで、周方向において隣接する他のコイル30と干渉することを抑制できる。また、コイル30の軸方向側の端部において第2層32を巻き始める場合に比べて、コイル30の巻崩れを抑制できるとともに、モータの軸長を抑制できる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態におけるモータ1は、ステータ3と、基板2とを備える。ステータ3は、周方向に並んで配置された複数の磁性体11と、複数の磁性体11にそれぞれ巻かれたコイル30とを備える。基板2は、回転軸方向において、ステータ3に対向する。コイル30は、第1層31と、第1層31の上に積み重なった第2層32と、を備える。回転軸方向における磁性体11の厚さをL、径方向における磁性体11の幅をDとして、1≦D/Lである。第2層32は、磁性体11から最も離れた層である。径方向において、コイル30の内縁iEを構成する、第1層31の導線1iと第2層32の導線2iとは接触しており、径方向において、コイル30の外縁oEを構成する、第1層31の導線1oと第2層32の導線2oとは接触している。かかる構成によれば、モータ1の軸方向における長さを抑制できる。
【0044】
また、モータ1において、内縁iEを構成する第2層32の導線2iは、内縁iEを構成する第1層31の導線1iに対して、径方向において外縁oE側にあり、外縁oEを構成する第2層32の導線2oは、外縁oEを構成する第1層31の導線1oに対して、径方向において内縁iE側にある、また、モータ1において、第1層31を形成する、径方向において相互に隣接する導線1nは、径方向において互いに接触しており、第2層32を形成する、径方向において相互に隣接する導線2nは、径方向において互いに接触している。また、コイル30から引き出された引出線14の引出位置は、コイル30の外縁oEである。さらに、モータ1のコイル30において、第2層32の巻き始めが、コイル30の内縁iEを構成する第2層32の導線2iにおける、コイル30の周方向における端部に形成される。かかる構成によれば、コイル30の占積率を確保しながら、コイル30の巻崩れを抑制できる。
【0045】
また、モータ1において、磁性体11の外周部11bの端面Ea,Ebの延長線X1,X2に対して、コイル30全体は、周方向において、磁性体11側にある。この場合において、複数の磁性体11のうち、周方向において隣接する2つの磁性体11それぞれに巻かれたコイル30の間には、周方向において隙間が形成される。また、径方向において、基板2の内周部から外周部までの長さSに対する、第2層32の内縁側の導線2iから外縁側の導線2oまでの長さTの比率は50%~90%の範囲にある。かかる構成によれば、図8に示すような隙間G1及びG2が設けられることにより、周方向において隣接する2つのコイル30が相互に干渉し、ステータ3の真円度の低下を抑制できる。また、隙間G1及びG2が確保されることで、空冷によるコイル30の巻線放熱性が向上するとともに、モールドやワニスなど樹脂によって放熱性を高める際にも、粘性の制約を受けず樹脂の選択性が広がる。
【0046】
また、モータ1において、回転軸方向における磁性体11の厚さLと同じ又は大きい厚さL2を有するロータ80と、回転軸方向において、ロータ80に対向して配置されたセンサ91と、を備える。回転軸方向において、高さP2に位置するセンサは、高さP1に位置する基板に対してロータ80側、すなわち回転軸方向における負方向側にある。引出線14は、基板2の外周部に形成された凹部21,22を通過して引き出される。引出線14と、他のコイル30から引き出された引出線14とは、基板2を介して電気的に接続される。かかる構成によれば、基板2に形成される凹部21,22により、引出線14と基板2との接続領域を確保し、基板2とステータ3との距離を小さくすることができるため、モータ1の軸方向における長さを抑制できる。また、センサ91をロータマグネット81に近づけることができるので、センサ91における磁束の検出精度を向上できる。さらに、ロータ80の厚さL2を、ステータコア11の厚さLよりも大きくすることにより、ステータ3の磁束と、ロータ80の磁束との干渉による減磁が生じにくくなる。
【0047】
また、モータ1において、磁性体11の軸方向における厚さLは、コイル30の軸方向における厚さTa,Tbの和よりも大きい。かかる構成によれば、扁平モータであるモータ1においても、ステータコアの枚数(スタック長)を拡大できるので、磁束の飽和の発生を抑制し、トルクを増加できる。
【0048】
以上、本実施形態における構成について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、モータ1はブラシレスモータに限られない。また、コイル30の第1層31よりも軸方向におけるさらに内側、すなわちステータコア11に近い位置に、導線14がさらに巻き回されていてもよい。
【0049】
また、インシュレータ12の壁部122には、図2図9及び図10に示すように、2つの凹部126及び127と、2つの凹部の間に位置する凸部128とが形成されていてもよい。この場合において、2つの凹部126及び127は、それぞれ、コイル30から引き出された2つの導線14の引出し位置に径方向において対向する。また、凸部128の端部は、壁部122の第1方向における端部よりも、軸方向における高さが低くなる(軸方向における負方向側に位置する)ように形成される。また、図9及び図10に示す構成においては、第1端部141及び第2端部142を径方向における外側に倒すことにより、凹部126及び127に逃がしてもよい。
【0050】
さらに、コイル30を形成する導線14は、単一の銅製の丸線により構成されるが、これに限られず、導線14が、複数の丸線により構成されていてもよい。この場合、相互に隣接する導線14を構成する複数の丸線のうちのいずれかが、他の導線14を構成する複数の丸線のうちのいずれかと接していればよい。また、銅製の丸線の代わりに、平角線等の異なる形状の導線14であってもよい。
【0051】
以上、本発明を実施形態及び各変形例に基づき説明したが、本発明は実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0052】
1 モータ、2 基板、3 ステータ、10 分割コア、11 ステータコア、11a ティース、11b ヨーク、12 インシュレータ、14 導線、19 半田、2a,2b 表面、21 基板側第1凹部、22 基板側第2凹部、29 ランド、30 コイル、31 第1層、32 第2層、80 ロータ、81 ロータマグネット、82 ロータコア、90 蓋部(ハウジング)、91 センサ、92 センサホルダ、121 収容部、122 壁部、123 天面、125 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10