(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175097
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20221117BHJP
G09F 9/46 20060101ALI20221117BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221117BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20221117BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20221117BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
G09G3/20 680F
G09F9/46 Z
G09F9/00 324
G09G5/00 550C
G09G3/20 642F
G02F1/133 580
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081242
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】宮戸 泰三
(72)【発明者】
【氏名】張 鳴暁
【テーマコード(参考)】
2H193
3D344
5C080
5C094
5C182
5G435
【Fターム(参考)】
2H193ZH04
2H193ZH07
2H193ZH37
2H193ZH52
2H193ZQ13
2H193ZR06
3D344AA21
3D344AA27
3D344AD01
3D344AD13
5C080AA06
5C080DD01
5C080EE28
5C080HH09
5C080JJ06
5C080JJ07
5C080KK20
5C080KK52
5C094AA01
5C094AA06
5C094BA07
5C094BA08
5C094BA27
5C094BA43
5C094DA02
5C094DA03
5C182AA02
5C182AB25
5C182BA14
5C182BA25
5C182BB14
5G435BB05
5G435BB12
5G435BB15
5G435DD14
(57)【要約】
【課題】透過型であって、強い外光の場合には優れた遮光性能を発揮できる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置100では、透過表示部70の背面73には、遮光表示部80が配置される。そして表示制御部63は、情報取得部62が取得した光が強くなるほど、遮光表示部80が表示する遮光画像の透過率を低く調整する。そして遮光表示部80は、2つの遮光層81,82を有する。これによって1つの遮光層では、遮光性能が不足する場合であっても、2つの遮光層81,82を用いることで1つの遮光層では不足する遮光性能を補うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過可能な表示面(71)に、情報画像を表示する透過表示部(70)と、
前記透過表示部の前記表示面とは反対側の背面(73)に配置され、光の透過率を調整可能な遮光画像を表示する遮光表示部(80)と、
前記遮光表示部の背面側から入射する光の強さを取得する光強度取得部(62)と、
前記光強度取得部が取得した光が強くなるほど、前記遮光画像の透過率を低く調整する表示制御部(63)と、を含み、
前記遮光表示部は、少なくとも2つの遮光層(81,82)を有し、それぞれを独立して光の透過率を調整可能である表示装置。
【請求項2】
前記遮光表示部は、前記遮光層として、前記遮光画像を表示した遮光状態で相対的に高いヘイズ率を有する高ヘイズ層(81)と、前記遮光状態で前記高ヘイズ層よりも低いヘイズ率を有する低ヘイズ層(82)と、を有し、
前記表示制御部は、前記光強度取得部が取得した光の強さが所定の直射光強度以上の場合には、前記高ヘイズ層および前記低ヘイズ層において最も透過率が低い前記遮光画像をそれぞれ形成するように前記遮光表示部を制御する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記光強度取得部が取得した光の強さが所定の直射光強度未満であり、所定の外光強度以上の場合には、前記高ヘイズ層は前記遮光画像を形成せず、前記光強度取得部が取得した光が強くなるほど前記低ヘイズ層において透過率が低く調整した前記遮光画像を形成するように前記遮光表示部を制御する請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記遮光表示部は、前記光強度取得部が取得した輝度が10億cd/m2の場合、全ての前記遮光層が最も透過率が低い前記遮光画像を表示したときの平行光線の輝度が10万cd/m2以下であり、拡散光線の輝度が1000cd/m2以下である請求項1~3のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項5】
前記透過表示部および前記遮光表示部は、車両の室内であって、ウィンドシールドの上方に配置される請求項1~4のいずれか1つに記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、光を透過する表示部を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の表示装置は、透過型の液晶パネルの光源として、透過型のバックライトを用いている。そして、外光が強い場合にはバックライトをオフにして外光を用いて液晶表示し、外光が弱い場合にはバックライトを点灯して液晶表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透過型の液晶パネルの光源に外光を用いる場合、外光が直射日光のように強いと画像の視認が困難になる。したがって光源に外光を用いる場合、優れた遮光性能が必要になるという問題がある。
【0005】
そこで、開示される目的は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、透過型であって、強い外光の場合には優れた遮光性能を発揮できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
ここに開示された表示装置は、光を透過可能な表示面(71)に、情報画像を表示する透過表示部(70)と、透過表示部の表示面とは反対側の背面(73)に配置され、光の透過率を調整可能な遮光画像を表示する遮光表示部(80)と、遮光表示部の背面側から入射する光の強さを取得する光強度取得部(62)と、光強度取得部が取得した光が強くなるほど、遮光画像の透過率を低く調整する表示制御部(63)と、を含み、遮光表示部は、少なくとも2つの遮光層(81,82)を有し、それぞれを独立して光の透過率を調整可能である表示装置である。
【0008】
このような表示装置に従えば、透過表示部の背面には、遮光表示部が配置される。そして表示制御部は、光強度取得部が取得した光が強くなるほど、遮光表示部が表示する遮光画像の透過率を低く調整する。そして遮光表示部は、少なくとも2つの遮光層を有する。これによって1つの遮光層では、遮光性能が不足する場合であっても、2つの遮光層を用いることで1つの遮光層では不足する遮光性能を補うことができる。これによって強い外光であっても、充分な遮光性能を実現することができる。
【0009】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の表示装置の電気的構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に関して、
図1および
図2を用いて説明する。本実施形態の表示装置100は、車両において用いられ、車両に関連する種々の情報を、表示面71の表示を通じて運転者を含む乗員に表示する。表示装置100には、
図1に示すように、映像生成装置20、外部カメラ30、ドライバーステータスモニタ(Driver Status Monitor,以下「DSM」)40、及び車載ネットワーク50の通信バス等が直接的又は間接的に電気接続されている。ドライバーステータスモニタは、登録商標である。
【0012】
以下の説明における前後、上下、左右等の方向に関する表現は、水平面に置かれた車両を基準として定義される。そして、右及び左については、運転席に着座した運転者を基準に定義される。
【0013】
映像生成装置20は、車両に搭載された複数の表示デバイスの表示を統合的に制御する制御装置である。映像生成装置20は、各表示デバイスに表示される映像を生成する回路を主体に構成されている。映像生成装置20は、車載ネットワーク50等から取得する車両情報に基づき、各表示デバイスへ向けて出力される映像信号を生成する。映像生成装置20は、例えばデジタルスピードメータの表示画像を含んだ映像信号を生成し、表示装置100等へ向けて逐次出力する。
【0014】
外部カメラ30は、撮像素子及びレンズ部と、撮像素子を制御する制御ユニットとを有する構成である。外部カメラ30は、車両の進行方向に撮像方向を向けた姿勢にて、車両に固定されている。外部カメラ30は、ウィンドシールドを通して運転者に視認される前景範囲を撮影し、当該前景範囲を撮像した前方画像を生成する。前方画像は、たとえば車両に搭載された自動運転機能にて用いられる。
【0015】
外部カメラ30は、前方画像の情報から、車両の外部からウィンドシールドを通して車室内に入射する直射光の強さを検出可能である。外部カメラ30は、例えば西日及び朝日、並びに対向車のヘッドライト及びストップランプ等、光強度であって、水平に近い角度で車室内に入射する直射光を、少なくとも検出する。車室内に入射する直射光は、外光とも言う。外部カメラ30は、直射光の強さを示した光強度情報を、表示装置100に逐次出力する。
【0016】
DSM40は、運転者の状態、たとえば運転者の脇見、眠気、居眠り、不適切な運転姿勢などの状態を検知して、運転者に警告する。DSM40は、近赤外光源及び近赤外カメラと、これらを制御する制御ユニットとを有している。DSM40は、近赤外カメラを運転席側となる後方に向けた姿勢にて、例えばステアリングコラムのカバー上面等に設置されている。DSM40は、ステアリングホイールの開口部を通して、近赤外光源によって近赤外光を照射された運転者の顔周辺を、近赤外カメラによって撮影する。近赤外カメラによって撮像された顔画像は、制御ユニットによって解析される。制御ユニットは、例えば運転者の顔向き、目の開き具合、視点位置及び視線方向等を、顔画像から推定する。また制御ユニットは、運転者の目に直射日光が当たっているかを顔画像の輝度分布から推定する。DSM40は、解析によって推定されたこれらの情報のうちで、少なくとも目の周辺の輝度分布を示す輝度分布情報を、表示装置100に逐次提供する。
【0017】
車載ネットワーク50の通信バスには、多数の車載ECU(Electronic Control Unit)及び車載センサ等が直接的又は間接的に電気接続されている。車載ネットワーク50は、通信バスに出力された種々の車両情報を、映像生成装置20及び表示装置100に提供可能である。車載ネットワーク50は、映像生成に用いられる車両情報として、例えば車両の走行速度等を映像生成装置20に逐次提供する。車両情報には、現在時刻を示す時刻情報、および車両の現在位置を示す位置情報も含む。
【0018】
加えて車載ネットワーク50には、照度センサの検出結果に基づくヘッドライトの点灯制御情報が、例えばボディECU等によって出力されている。また照度センサが検出した車外の照度は、車載ネットワーク50に出力される。さらに車載ネットワーク50には、自動運転機能の作動状態を示すステータス情報が、自動運転ECU等によって出力されている。車載ネットワーク50は、点灯制御情報及び自動運転機能のステータス情報等を、表示装置100に逐次提供する。また外部カメラ30による光強度情報及びDSM40による輝度分布情報は、車両情報と同様に、車載ネットワーク50を経由して、表示装置100に提供されてもよい。
【0019】
表示装置100は、車両の車室内に設けられている。表示装置100は、運転席の前方に配置されており、車両用のコンビネーションメータの一部を代替する表示デバイスとして機能する。表示装置100は、表示面71を運転席側へ向けた姿勢にて、ウィンドシールドの上方に配置される。表示装置100は、より具体的には、運転者の目に太陽からの直射日光を遮るような位置、いわゆるサンバイザーが開いた状態の位置に配置される。
【0020】
表示装置100は、全体として光を透過させることが可能な無色透明な板状を呈している。運転者は、表示装置100に遮られることなく、車両の前景を視認できる。運転者は、表示面71を通して見える前景に、表示画像が重畳された表示を視認する。
【0021】
表示装置100は、
図1に示すように、透過表示部70、遮光表示部80及びドライバ回路60等によって構成されている。まず、透過表示部70に関して説明する。透過表示部70は、光を透過可能な表示面71に、情報画像を表示する。透過表示部70は、本実施形態では透過型の有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイによって実現される。透過表示部70は、ガラス、石英及び樹脂等の透明材料よりなる透明基板により、横長の板状に形成されている。透過表示部70の両面のうちで、運転席側に向けられる一方が表示面71となり、表示面71の反対側に位置して車両の前方を向く他方が背面73となる。表示面71及び背面73に入射した光は、透過表示部70を透過可能である。透過表示部70は、表示面71及び背面73に沿って2次元配列された多数の発光素子により、種々の情報画像をフルカラー表示する。
【0022】
透過表示部70の透明基板上には、薄膜状のITO(Indium Tin Oxide)よりなる透明電極が形成された透明電極層と、透明電極に電気接続された発光層とが設けられている。発光層には、有機EL材料よりなる赤、緑及び青の各発光体が、個々の発光画素を形成するように規則的に配列されている。透過表示部70は、透明電極を通じた各発光体への電流の印加により、各発光画素を発光させることで、表示面71に情報画像を発光表示する。また発光体よって放出される情報画像の光は、表示面71及び背面73の両面から射出される。
【0023】
遮光表示部80は、透過表示部70の表示面71とは反対側の背面73に配置され、光の透過率を調整可能な遮光画像を表示する。遮光表示部80は、横長の板状に形成されている。遮光表示部80の外縁形状は、透過表示部70の外縁形状と実質同一である。遮光表示部80は、本実施形態では2つの遮光層81,82を有し、それぞれを独立して光の透過率を調整可能である。2つ遮光層81,82は、遮光画像を表示した遮光状態で高いヘイズ率を有する高ヘイズ層81と、遮光状態で低いヘイズ率を有する低ヘイズ層82である。
【0024】
低ヘイズ層82と高ヘイズ層81とは、異なる特性を有する。具体的には、高ヘイズ層81は遮光状態では、直射光を遮るために平行光透過率を、たとえば1/10万に下げるために高いヘイズ値を有する。したがって高ヘイズ層81は、直射光における眩しさを回避するための遮光特性を有する。また低ヘイズ層82は、均一に明るい外光状態に対して低ヘイズ値で遮光する。したがって低ヘイズ層82は、非直射光において、表示画像の見やすさを向上するための遮光特性を有する。
【0025】
まず、低ヘイズ層82に関して説明する。低ヘイズ層82は、光の透過率を調整可能な調光フィルムである。低ヘイズ層82は、たとえば着色状態から透明状態まで変化でき、可視光線の透過率をたとえば数%から60%まで制御可能である。低ヘイズ層82は、透明導電層の間に、配向粒子を分散させた液滴を配置して構成される。そして、電圧を印加しない場合は配向粒子が無秩序な状態に存在し、入射光は配向粒子に吸収され、あるいは一部が乱反射するので光の透過率を調節できる。換言すると、配向粒子の量、大きさなどによって、電圧を印加していない場合の光の透過率を調節することができる。電圧を印加した場合は配向粒子が電場と平行に配向し、入射光は直進して後方に透過して、より透明な状態になる。
【0026】
したがって低ヘイズ層82は、2種類の透過率を調節できる。具体的には、低ヘイズ層82は、電圧オフ状態では無秩序な配向粒子によって遮光画像を形成した遮光状態であり、電圧オン状態では配向した配向粒子によって遮光画像を形成していない透光状態となる。低ヘイズ層82は、電圧オフ状態が最も透過率が低い状態である。低ヘイズ層82は、遮光状態であっても、光を全く通さない状態ではなく、透過率10%などの状態である。
【0027】
次に、高ヘイズ層81に関して説明する。高ヘイズ層81は、光の透過率を調整可能な調光フィルムである。高ヘイズ層81は、遮光状態において低ヘイズ層82よりもヘイズ値が高い。ヘイズ値は、透明度の参考となる値であって、曇りの度合を表す値であり、数値が小さい程、透明性が高いことを示す。高ヘイズ層81は、遮光状態において、特に直線透過率を下げる構成を有する。
【0028】
高ヘイズ層81は、たとえば高分子分散型液晶(PDLC)を用いて構成される。高分子分散型液晶とは、高分子マトリクス内において液晶が相分離した構造を取ることを利用した液晶方式のことである。高分子分散型液晶では、電場をかけない場合には、分散した液晶滴の配向ベクトルが異なった方向を向いているため、界面で光が散乱することでヘイズ値が高い不透明な白色状態を作り出す。逆に、高分子分散型液晶に電場を加えることによって、高分子と液晶の屈折率がほぼ等しくなり、透明状態になる。
【0029】
高ヘイズ層81は、透明基板および液晶層を含んで構成される。高ヘイズ層81の透明基板上には、薄膜状のITOよりなる透明電極が形成された透明電極層と、透明電極に電気接続された液晶層とが設けられている。液晶層には、前述の高分子分散型の液晶分子が含まれる。電圧を印加されない場合では、液晶層に含まれる液晶分子の方向が不揃いな状態となる。そのため、液晶層を通過する光の偏光方向は、液晶分子による散乱して、紙に類似した白さとなる。一方で、電圧を印加された場合では、液晶分子が電界方向に向くようになる。こうした液晶分子の配向により、液晶層が透明となる。
【0030】
したがって高ヘイズ層81は、2種類の透過率を調節できる。具体的には、高ヘイズ層81は、電圧オフ状態では白色の遮光画像を形成した遮光状態であり、電圧オン状態では液晶分子が配列して遮光画像を形成していない透光状態となる。高ヘイズ層81は、電圧オフ状態が最も透過率が低い状態である。
【0031】
ドライバ回路60は、透過表示部70及び遮光表示部80の作動を制御する電気回路である。ドライバ回路60は、筐体に収容された状態で、各表示部70,80と電気接続されていてもよく、又は各表示部70,80のいずれかと一体的に設けられていてもよい。ドライバ回路60は、少なくとも一つのプロセッサ、プロセッサに結合されたRAM、記憶媒体を含むメモリ装置、及び入出力インターフェース等を有するマイクロコントローラを備えている。ドライバ回路60のメモリ装置には、映像生成装置20から取得する映像信号に従い、各表示部70,80の作動を制御する表示制御プログラムが格納されている。ドライバ回路60は、メモリ装置に記憶された表示制御プログラムをプロセッサによって実行し、映像取得部61、情報取得部62、及び表示制御部63等の機能ブロックを構築する。
【0032】
映像取得部61は、映像生成装置20から映像信号を取得する。情報取得部62は、透過表示部70へ向かう直射光の強さを示した光強度情報を、外部カメラ30から逐次取得する。したがって情報取得部62は、光強度取得部としても機能する。また情報取得部62は、運転者の輝度分布情報を、DSM40から逐次取得する。さらに情報取得部62は、車載ネットワーク50から、点灯制御情報及び自動運転機能のステータス情報等を取得する。点灯制御情報は、車両が明るい外光環境下にあるのか、又は暗い外光環境下にあるのかを示す昼夜情報として使用される。
【0033】
表示制御部63は、映像取得部61により取得された映像信号に基づき、透過表示部70の表示面71に情報画像を表示させる。また表示制御部63は、情報取得部62が取得した光強度情報に基づいて、遮光表示部80の透過率を調節する。
【0034】
次に、ドライバ回路60の表示処理に関して
図2のフローチャートを用いて説明する。
図2に示すフローチャートは、表示装置100に電源投入状態において、短時間に繰り返し実行される。
【0035】
ステップS1では、情報取得部62が光強度情報および輝度分布情報などの各種の情報を取得し、ステップS2に移る。ステップS2では、光強度情報および輝度分布情報から直射日光が運転者の目の付近に当たっているか否かを判断し、当たっている場合には、ステップS4に移り、当たっていない場合には、ステップS3に移る。直射日光であるかは、光強度情報の光の強さから判断する。また運転者の目の付近にあたっているかどうかは、輝度分布情報から判断する。
【0036】
ステップS4では、直射日光が当たっているので、さらに直射日光が所定の直射光強度以上であるか否かを判断し、直射日光が所定の直射光強度以上の場合には、ステップS5に移り、直射日光が所定の直射光強度以上でない場合には、ステップS6に移る。ステップS5では、直射日光が所定の直射光強度以上であるので、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82を遮光状態にし、ステップS9に移る。ステップS5では、たとえば強い日差しが運転者の顔に差し込むシーンである。所定の強さは、強い日差しに応じた値に設定される。
【0037】
ステップS6では、直射日光が所定の直射光強度以上ではないので、高ヘイズ層81を遮光状態にし、低ヘイズ層82を透光状態に制御し、ステップS9に移る。ステップS6では、たとえば西日など比較的弱い日差しが運転者の顔に差し込むシーンである。
【0038】
ステップS3では、光強度情報から外光が所定の外光強度以上であるか否かを判断し、外光が所定の外光強度以上の場合には、ステップS7に移り、外光が外光強度以上でない場合には、ステップS8に移る。ステップS3は、直射日光は運転者の顔に来ていないが、外光が強く表示画像を視認しにくいか否かを判断するステップである。
【0039】
ステップS7では、外光が所定の外光強度以上の場合であるので、高ヘイズ層81は透光状態にし、低ヘイズ層82は遮光状態に制御し、ステップS9に移る。ステップS7では、たとえば直射日光は運転者の顔に来ていないが、真夏日など外光が強いシーンである。
【0040】
ステップS8では、外光が所定の外光強度以上でない場合であるので、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82を透光状態にし、ステップS7に移る。ステップS8では、たとえば直射日光もなく、曇りなどの外光が比較的弱いシーンである。これによって遮光表示部80が最も光を透過可能な状態で、透過表示部70が情報画像を表示する。
【0041】
ステップS7では、時刻情報および点灯制御情報を用いて、明所モードまたは暗所モードに設定し、設定したモードの輝度となるように、透過表示部70を制御し、本フローを終了する。
【0042】
このように表示制御部63は、情報取得部62にて取得される車両情報に基づき、表示装置100の表示モードを複数のうちで切り替える。複数の表示モードには、たとえば明所モード及び暗所モードである。表示制御部63は、それぞれ昼夜に対応する明所モード及び暗所モードを設定可能であり、情報取得部62にて取得される点灯制御情報に基づき、明所モードと暗所モードとを切り替える。ヘッドライトのオンオフは、照度センサの検出結果に応じて選択される。したがって照度センサによって、車外が暗い場合にはヘッドライトがオン状態となり、車外が明るい場合にはヘッドライトはオフ状態となる。
【0043】
明所モードは、車両が暗所モードよりも明るい環境下にあることを想定した表示モードである。表示制御部63は、ヘッドライトのオフ状態を示す点灯制御情報に基づき、表示モードを明所モードに設定する。一方、暗所モードは、車両が明所モードよりも暗い環境下にあることを想定した表示モードである。表示制御部63は、ヘッドライトのオン状態を示す点灯制御情報に基づき、表示モードを暗所モードに設定する。明所モードでは、発光画素の状態制御において、許容される発光画素の最大輝度が、暗所モードよりも高く設定される。換言すれば、暗所モードでは、運転者に表示画像が眩しく感じられ難いように、発光画素の表示輝度が抑制される。
【0044】
このように表示制御部63は、情報取得部62にて取得される光強度情報に基づき、発光画素の輝度制御及び遮光表示部80の透過率制御を実施する。表示制御部63は、現在の光強度情報に加えて、現在の表示モードを参照し、これらに対応する表示輝度及び透過率を設定する。外光量が多く、車両が明るい環境下にある場合、表示制御部63は、情報画像の表示輝度を高く設定する。対して、外光量が少なく、車両が暗い環境下にある場合、表示制御部63は、情報画像の表示輝度を低く設定する。さらに、車両前方から表示装置100へ向かう直射光が強くなるほど、表示制御部63は、遮光表示部80の透過率を低く調整する。
【0045】
遮光表示部80の透過率として、(1)高ヘイズ層81および低ヘイズ層82が透光状態、(2)高ヘイズ層81が透光状態、低ヘイズ層82が遮光状態、(3)高ヘイズ層81が遮光状態、低ヘイズ層82が透光状態、(4)高ヘイズ層81および低ヘイズ層82が遮光状態の順に低くなる。
【0046】
次に、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82の遮光能力に関して説明する。表示装置100は、透過型のディスプレイであるので、その透過性を活かして視界や背景情報を確保し、また眩しい場合には透過率を下げる必要がある。太陽光を遮ることにおいて重要なのは、平行光線透過率を下げることである。しかし、太陽光の輝度は1億cd/m2を超えるため、透過型液晶での遮光能力、おおよそ1/1000では、太陽光を遮光後は10万cd/m2と非常に明るい。そこで、本実施形態では、前述のように複数の遮光層である高ヘイズ層81および低ヘイズ層82を用いて、遮光能力を確保している。
【0047】
高ヘイズ層81および低ヘイズ層82の具体的な遮光能力の特性値の選択に関して説明する。まず、太陽光および外光の変数を以下のように定義する。
【0048】
太陽光の輝度(cd/m2)をLsun、太陽光の照度(lx)をPsun、外光の輝度(cd/m2)をLext、外光の照度(lx)をPextとする。たとえばLsunは、日中では、1~10億cd/m2であり、日没時は60万cd/m2である。またPsunは、日中では、10万lxである。
【0049】
高ヘイズ層81および低ヘイズ層82の遮光能力を以下のように定義する。全線透過率(%)をTtotal、平行光線透過率(%)をTst、拡散光線透過率(ヘイズ)(%)とTsca、拡散の立体角(sr)をαとする。TstとTscaは、以下の関係式(1)が成立する。
【0050】
Tst+Tsca=1 …(1)
次に、高ヘイズ層81の係数を1とし、高ヘイズ層81の係数を2とした場合、遮光状態にある高ヘイズ層81を透過した光の平行光線の輝度、平行光線の照度、および拡散光線の輝度は以下の式で表すことができる。
【0051】
【数1】
さらに遮光状態にある高ヘイズ層81および低ヘイズ層82を透過した光の平行光線の輝度、平行光線の照度、および拡散光線の輝度は、前述の高ヘイズ層81の数式を踏まえて、以下の式で表すことができる。
【0052】
【数2】
ここで、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82が遮光状態にある場合に、直射日光を遮るための条件を、以下の式で設定する。
【数3】
式(7)の条件は、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82を合わせた全線透過率が、0.1、すなわち10%になるという条件である。式(8)の条件は、視認性を確保するために、外光が入射した場合に、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82が通過した平行光線の輝度が低くなりすぎないように、10cd/m
2以上を確保するための条件である。
【0053】
式(9)の条件は、10億cd/m2の太陽光が入射した場合に、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82が通過した平行光線の輝度が、眩しすぎずに許容できる輝度として、10万cd/m2以下となるように設定している。
【0054】
式(10)の条件は、10億cd/m2の太陽光が入射した場合に、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82が通過した拡散光線の輝度が、眩しすぎずに許容できる輝度として、1000cd/m2以下となるように設定している。そして、これらの条件を満たす平行線透過率の関係は、たとえば次式(11)となる。
【0055】
Tst1×Tst2=0.01 …(11)
たとえば高ヘイズ層81のTst1を0.02、Tsca1を2πとし、低ヘイズ層82のTst2を0.5、Tsca2をπとした場合、式(10)の左辺の値は、約0.081となり、式(10)の条件を満たす。
【0056】
したがって以上の条件を満たす高ヘイズ層81および低ヘイズ層82の遮光能力を選択することで、直射日光を確実に遮光することができる。
【0057】
以上説明したように本実施形態の表示装置100では、透過表示部70の背面73には、遮光表示部80が配置される。そして表示制御部63は、情報取得部62が取得した光が強くなるほど、遮光表示部80が表示する遮光画像の透過率を低く調整する。そして遮光表示部80は、2つの遮光層81,82を有する。これによって1つの遮光層では、遮光性能が不足する場合であっても、2つの遮光層81,82を用いることで1つの遮光層では不足する遮光性能を補うことができる。これによって強い外光であっても、充分な遮光性能を実現することができる。
【0058】
また本実施形態では、表示制御部63は、情報取得部62が取得した光の強さが所定の直射光強度以上の場合には、高ヘイズ層81および低ヘイズ層82において最も透過率が低い遮光画像をそれぞれ形成するように遮光表示部80を制御する。これによって2種類の異なる遮光層81,82によって、直射日光を遮光することができる。また高ヘイズ層81によって、直射光をより効果的に拡散して、遮光することができる。
【0059】
さらに本実施形態では、表示制御部63は、情報取得部62が取得した光の強さが所定の直射光強度未満であり、所定の外光強度以上の場合には、高ヘイズ層81は遮光画像を形成せず、光強度取得部が取得した光が強くなるほど低ヘイズ層82において透過率が低く調整した遮光画像を形成するように遮光表示部80を制御する。これによって直射日光ほど強くない場合には、低ヘイズ層82によって遮光するので、透光性を確保しつつ遮光することができる。
【0060】
また本実施形態では、透過表示部70および遮光表示部80は、ウィンドシールドの上方に配置される。これによっていわゆるサンバイザー位置に搭載された透過型の表示装置100について、外光状況に応じて適切に遮光および視界を確保しつつ情報提示を行うことができる。
【0061】
(その他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0062】
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0063】
前述の第1実施形態では、遮光表示部80は、異なる特性を有する遮光層を有しているが、このような構成に限るものではない。たとえば同じ特性を有する2つ以上の遮光層によって、遮光表示部80を構成してもよい。たとえば第1の遮光層のTst1を0.1、Tsca1をπとし、第2の遮光層のTst2を0.1、Tsca2をπとした場合、式(10)の左辺の値は、約0.057となり、式(10)の条件を満たす。
【0064】
前述の第1実施形態では、遮光表示部80の各遮光層は、遮光状態であるか透光状態であるかの2段階の光透過率を調整する構成であったが、2段階に限るものではく、多段階であってもよい。また光強度取得部は、外部カメラ30が検出した直射光の強さを取得しちえるが、外部カメラ30の他のセンサ、たとえば照度センサの検出結果を用いて、直射光の強さを検出してもよい。
【0065】
前述の第1実施形態では、表示装置100の設置位置は、ウィンドシールドの上部に限るものではない。表示装置100は、車両の運転者から視認できる他の場所、たとえばインスツルメントパネルの上面に取り付けてもよい。また表示装置100の設置場所は、車両に限るものではなく、建物の窓などに設置してもよい。
【0066】
また遮光表示部80は、電圧の印加が無い状態で実質透明な状態となる構成であるノーマリーホワイトであってもよく、電圧の印加が無い状態で黒色の遮光状態となる構成であるノーマリーブラックであってもよい。
【0067】
前述の第1実施形態において、ドライバ回路60によって実現されていた機能は、前述のものとは異なるハードウェアおよびソフトウェア、またはこれらの組み合わせによって実現してもよい。ドライバ回路60は、たとえば他の車両用制御装置などと通信し、他の制御装置が処理の一部または全部を実行してもよい。ドライバ回路60が電子回路によって実現される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって実現することができる。
【0068】
前述の第1実施形態では、表示は車両で用いられているが、車両に搭載された状態に限定されるものではなく、少なくとも一部が車両に搭載されていなくてもよい。また表示装置100を車両の他の移動体、たとえば船舶、航空機、及び輸送機器等であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
20…映像生成装置 30…外部カメラ 40…DSM 50…車載ネットワーク
60…ドライバ回路 61…映像取得部 62…情報取得部(光強度取得部)
63…表示制御部 70…透過表示部 71…表示面 73…背面
80…遮光表示部 81…高ヘイズ層(遮光層) 82…低ヘイズ層(遮光層)
100…表示装置