(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175102
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】飛灰処理装置および飛灰処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20221117BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20221117BHJP
C01B 3/08 20060101ALI20221117BHJP
C01B 3/50 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
B09B3/00 304G
B09B3/00 ZAB
C01B3/08 Z
C01B3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081249
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 光宏
【テーマコード(参考)】
4D004
4G140
【Fターム(参考)】
4D004AA37
4D004AA44
4D004AA50
4D004AB05
4D004BA05
4D004BA10
4D004CA13
4D004CA15
4D004CA35
4D004CA40
4D004CA41
4D004CB05
4D004CB21
4D004CC03
4D004CC12
4D004DA03
4G140FA02
4G140FB06
4G140FB09
4G140FC04
4G140FE01
(57)【要約】
【課題】アルミ含有廃棄物を有効利用するとともに、飛灰に対する処理によって生じるアルカリ溶液を処理すること。
【解決手段】飛灰処理装置は、廃棄物の焼却によって生じる飛灰を処理する飛灰処理装置であって、洗浄用液体によって飛灰が洗浄されて得られるアルカリ溶液と、アルミニウムまたはアルミニウム化合物を含むアルミ含有廃棄物とが供給可能に構成され、アルカリ溶液とアルミ含有廃棄物とが反応する反応手段と、反応手段において発生した気体を回収可能に構成された気体回収手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の焼却によって生じる飛灰を処理する飛灰処理装置であって、
洗浄用液体によって前記飛灰が洗浄されて得られるアルカリ溶液と、アルミニウムまたはアルミニウム化合物を含むアルミ含有廃棄物とが供給可能に構成され、前記アルカリ溶液と前記アルミ含有廃棄物とが反応する反応手段と、
前記反応手段において発生した気体を回収可能に構成された気体回収手段と、を備える
飛灰処理装置。
【請求項2】
前記アルカリ溶液の流れ方向に沿った前記反応手段の上流側に、前記飛灰を洗浄する前段洗浄手段と、前記前段洗浄手段によって洗浄された灰スラリに対して脱水処理を行って前記アルカリ溶液を排出する前段脱水手段と、を備える
請求項1に記載の飛灰処理装置。
【請求項3】
前記反応手段における反応によって得られた混合スラリに対して脱水処理を行う混合スラリ脱水手段をさらに備える
請求項1または2に記載の飛灰処理装置。
【請求項4】
前記混合スラリ脱水手段によって得られたスラリに対して洗浄を行う後段洗浄手段と、前記後段洗浄手段によって得られたスラリに対して脱水処理を行う後段脱水手段と、を備える
請求項3に記載の飛灰処理装置。
【請求項5】
前記後段脱水手段から排出された排液を前記洗浄用液体として用いる
請求項4に記載の飛灰処理装置。
【請求項6】
前記気体回収手段によって回収される前記気体が水素を含む
請求項1~5のいずれか1項に記載の飛灰処理装置。
【請求項7】
前記気体回収手段が、水素と水素以外の気体とを分離する気体分離手段を有する
請求項6に記載の飛灰処理装置。
【請求項8】
前記アルカリ溶液のpHがpH10以上である
請求項1~7のいずれか1項に記載の飛灰処理装置。
【請求項9】
前記アルミ含有廃棄物におけるアルミニウムまたはアルミニウム化合物の平均粒径が1mm以下である
請求項1~8のいずれか1項に記載の飛灰処理装置。
【請求項10】
廃棄物の焼却によって生じる飛灰を処理する飛灰処理方法であって、
洗浄用液体によって前記飛灰が洗浄されて得られるアルカリ溶液と、アルミニウムまたはアルミニウム化合物を含むアルミ含有廃棄物とが供給されて、前記アルカリ溶液と前記アルミ含有廃棄物とが反応する反応工程と、
前記反応工程において発生した気体を回収する気体回収工程と、を含む
飛灰処理方法。
【請求項11】
前記反応工程の前に、前記飛灰を洗浄する前段洗浄工程と、
前記前段洗浄工程によって洗浄された灰スラリに対して脱水処理を行って前記アルカリ溶液を排出する前段脱水工程と、を含む
請求項10に記載の飛灰処理方法。
【請求項12】
前記反応工程において得られた混合スラリに対して脱水処理を行う混合スラリ脱水工程を含む
請求項10または11に記載の飛灰処理方法。
【請求項13】
前記混合スラリ脱水工程によって得られたスラリに対して洗浄を行う後段洗浄工程と、
前記後段洗浄工程によって得られたスラリに対して脱水処理を行う後段脱水工程と、を含む
請求項12に記載の飛灰処理方法。
【請求項14】
前記気体回収工程が、水素と水素以外の気体とを分離する気体分離工程を含む
請求項10~13のいずれか1項に記載の飛灰処理方法。
【請求項15】
前記アルミ含有廃棄物におけるアルミニウムまたはアルミニウム化合物の平均粒径を1mm以下にする粉砕工程を含む
請求項10~14のいずれか1項に記載の飛灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛灰処理装置および飛灰処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム(Al)をリサイクルする際などにアルミニウムを溶解させると、副産物として表面酸化物などの溶融残渣(アルミドロス)や、さらにアルミ溶解炉におけるばいじんなどを含むアルミ灰(以下、アルミ含有廃棄物)が発生する(特許文献4参照)。アルミ含有廃棄物は、水、酸性溶液、またはアルカリ性溶液を添加することによって、水素(H2)を発生する。アルミ含有廃棄物の成分には、金属としてのAl(金属Al)以外にも、大気との反応によって生成される酸化アルミニウム(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)、および使用されるフラックスに含まれるハロゲン類が含まれている。アルミ含有廃棄物においては、金属Alの含有率が低い場合、埋立て処分がされているが、近年、埋立て処理が困難になってきており、処理コストも高い。また、アルミ含有廃棄物の埋め立て処理を行った場合、水分と反応してアンモニアや水素の発生、およびハロゲン類の土壌への溶出などが生じる(非特許文献1参照)。
【0003】
アルミ含有廃棄物に対しては、金属Alの含有率が30~40wt%より高濃度である場合には、リサイクル処理がされている。一方、金属Alの含有率が30wt%未満の10~20wt%の低濃度であるアルミ含有廃棄物においては、主に金属Alの含有率の高い廃棄物と混合させて鉄鋼の副資材として再利用したり、アルカリ性溶液によって水素やアンモニアを放出する、いわゆるガス抜きを行った後、埋め立て処理が行われたり、直接的に焼却処理や溶解処理がされたりしている。
【0004】
また、焼却施設などにおいて発生する飛灰を水によって洗浄して飛灰中の塩素を取り除き、脱水した残渣をセメント原料などに利用して、発生する高アルカリ溶液を酸で中和処理する技術が知られている(非特許文献2、特許文献1参照)。特許文献2には、水素の製造方法として、アルミニウムとアルカリ水とが反応すると水素が発生することが開示されている。さらに、特許文献3には、焼却灰に含まれる金属Alを利用して水素を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-187748号公報
【特許文献2】特開2004-231466号公報
【特許文献3】特開2017-19739号公報
【特許文献4】特開2017-217606号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】東北大学大学院 平木岳人他、第30回廃棄物資源循環学会研究発表会2019,p209-210
【非特許文献2】伊藤光弘、太平洋セメント、粉体工学会誌,vol.37,No.12,2000,p876-886
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した背景技術において、アルミ含有廃棄物を、アルミ含有廃棄物に含まれるAlを有効利用できないままに埋め立て処分すると、水素ガスやアンモニアガスが発生する可能性があった。また、飛灰の洗浄によって生じる洗浄排液である高いpHのアルカリ溶液を、硫酸や塩酸などの鉱酸、または二酸化炭素ガスなどの酸によって中和する必要があった。そこで、アルミ含有廃棄物を有効利用しつつ、飛灰に対する処理によって生じるアルカリ溶液を処理できる技術の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、アルミ含有廃棄物を有効利用するとともに、飛灰に対する処理によって生じるアルカリ溶液を処理できる飛灰処理装置および飛灰処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様による飛灰処理装置は、廃棄物の焼却によって生じる飛灰を処理する飛灰処理装置であって、洗浄用液体によって前記飛灰が洗浄されて得られるアルカリ溶液と、アルミニウムまたはアルミニウム化合物を含むアルミ含有廃棄物とが供給可能に構成され、前記アルカリ溶液と前記アルミ含有廃棄物とが反応する反応手段と、前記反応手段において発生した気体を回収可能に構成された気体回収手段と、を備える。
【0010】
本発明の一態様による飛灰処理装置は、上記の発明において、前記アルカリ溶液の流れ方向に沿った前記反応手段の上流側に、前記飛灰を洗浄する前段洗浄手段と、前記前段洗浄手段によって洗浄された灰スラリに対して脱水処理を行って前記アルカリ溶液を排出する前段脱水手段と、を備える。
【0011】
本発明の一態様による飛灰処理装置は、上記の発明において、前記反応手段における反応によって得られた混合スラリに対して脱水処理を行う混合スラリ脱水手段をさらに備える。
【0012】
本発明の一態様による飛灰処理装置は、この構成において、前記混合スラリ脱水手段によって得られたスラリに対して洗浄を行う後段洗浄手段と、前記後段洗浄手段によって得られたスラリに対して脱水処理を行う後段脱水手段と、を備える。
【0013】
本発明の一態様による飛灰処理装置は、上記の発明において、前記後段脱水手段から排出された排液を前記洗浄用液体として用いる。
【0014】
本発明の一態様による飛灰処理装置は、上記の発明において、前記気体回収手段によって回収される前記気体が水素を含む。
【0015】
本発明の一態様による飛灰処理装置は、この構成において、前記気体回収手段が、水素と水素以外の気体とを分離する気体分離手段を有する。
【0016】
本発明の一態様による飛灰処理装置は、上記の発明において、前記アルカリ溶液のpHがpH10以上である。
【0017】
本発明の一態様による飛灰処理装置は、上記の発明において、前記アルミ含有廃棄物におけるアルミニウムまたはアルミニウム化合物の平均粒径が1mm以下である。
【0018】
本発明の一態様による飛灰処理方法は、廃棄物の焼却によって生じる飛灰を処理する飛灰処理方法であって、洗浄用液体によって前記飛灰が洗浄されて得られるアルカリ溶液と、アルミニウムまたはアルミニウム化合物を含むアルミ含有廃棄物とが供給されて、前記アルカリ溶液と前記アルミ含有廃棄物とが反応する反応工程と、前記反応工程において発生した気体を回収する気体回収工程と、を含む。
【0019】
本発明の一態様による飛灰処理方法は、上記の発明において、前記反応工程の前に、前記飛灰を洗浄する前段洗浄工程と、前記前段洗浄工程によって洗浄された灰スラリに対して脱水処理を行って前記アルカリ溶液を排出する前段脱水工程と、を含む。
【0020】
本発明の一態様による飛灰処理方法は、上記の発明において、前記反応工程において得られた混合スラリに対して脱水処理を行う混合スラリ脱水工程を含む。
【0021】
本発明の一態様による飛灰処理方法は、この構成において、前記混合スラリ脱水工程によって得られたスラリに対して洗浄を行う後段洗浄工程と、前記後段洗浄工程によって得られたスラリに対して脱水処理を行う後段脱水工程と、を含む。
【0022】
本発明の一態様による飛灰処理方法は、上記の発明において、前記気体回収工程が、水素と水素以外の気体とを分離する気体分離工程を含む。
【0023】
本発明の一態様による飛灰処理方法は、上記の発明において、前記アルミ含有廃棄物におけるアルミニウムまたはアルミニウム化合物の平均粒径を1mm以下にする粉砕工程を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明による飛灰処理装置および飛灰処理方法によれば、アルミ含有廃棄物を有効利用できるとともに、飛灰の処理によって生じるアルカリ溶液を処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による飛灰処理装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態による飛灰処理装置を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態の変形例による飛灰処理装置を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、従来技術による飛灰処理装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0027】
まず、本発明の理解を容易にするために、従来の飛灰処理装置について説明する。
図4は、従来技術による飛灰処理装置を示す概略構成図である。
図4に示すように、従来の飛灰処理装置100は、洗浄部101、脱水処理部102、および廃水処理部103を備える。
【0028】
洗浄部101は、例えば焼却炉(図示せず)などから排出された、不純物や塩類を含む飛灰を、洗浄用液体としての水(H2O)を用いて洗浄する水槽などの洗浄槽を有して構成される。ここで、塩類に起因する飛灰の塩素濃度は5~40%程度である。洗浄部101は、飛灰に含まれる不純物や塩類を洗浄用液体に溶解させて洗浄後の残渣(灰スラリ)を生成する。灰スラリは、pH10以上の高アルカリ性を有する溶解溶液(高アルカリ溶液)とともに、脱水処理部102に供給される。
【0029】
脱水処理部102は、供給された高アルカリ溶液および灰スラリを分離させる。脱水処理部102は、灰スラリを脱水するためのベルトフィルタやフィルタプレスなどの脱水機を有して構成される。脱水処理部102は、供給された灰スラリを脱水して、灰分系残渣を排出するとともに、洗浄廃液としての高アルカリ溶液を排出する。
【0030】
脱水処理部102から排出された高アルカリ溶液は、廃水処理部103に供給される。一方、脱水処理部102から排出された灰分系残渣は、好適にはセメント原料として利用される。灰分系残渣をセメント原料として用いるためには、鉄筋の腐食などを抑制する観点から、脱水処理部102から排出される灰分系残渣の塩素濃度を500ppm未満にする必要がある。そのため、洗浄部101においては、洗浄用液体の供給流量を調整したり、灰分系残渣を洗浄部101に戻してリンス洗浄を行ったりすることにより、脱水処理部102から排出される灰分系残渣の塩素濃度が500ppm未満になるように調整される。
【0031】
廃水処理部103は、高アルカリ溶液に対して、中和処理を行う処理部である。廃水処理部103には、脱水処理部102から高アルカリ溶液が供給される一方、中和処理を行うための塩酸(HCl)や硫酸(H2SO4)などの鉱酸や、二酸化炭素ガス(CO2)などが供給される。廃水処理部103からは、高アルカリ溶液が中和された後の水が廃水される。
【0032】
上述したように、従来の飛灰処理装置100においては、飛灰を洗浄する際に生じる洗浄廃液としての高アルカリ溶液を、硫酸や塩酸などの鉱酸や二酸化炭素ガスで中和処理する必要があった(特許文献1、非特許文献2参照)。この場合、灰分系残渣の塩素濃度を500ppm未満にするために、洗浄用液体の供給流量を増加させたりすると、高アルカリ溶液の流量が増加して、中和処理に用いる酸の量が増加してしまう。そこで、本発明者は、中和処理において酸の量を低減するために、種々実験および鋭意検討を行った。
【0033】
本発明者は、鋭意検討において、従来は埋め立て処理されるアルミドロスに代表されるアルミ含有廃棄物に着目した。本発明者は、鋭意検討を行い、埋め立て処理されるアルミ含有廃棄物を有効利用することによって、廃水処理部103で行われる中和処理に使用される酸の量を低減する方法を案出するに至った。すなわち、本発明者は、飛灰洗浄技術の付帯設備として、分離された高アルカリ溶液にアルミ含有廃棄物を投入して水素を含むガスを発生させる工程と、この工程において発生したガスから、水素を回収して、アンモニアとを分離する工程と、灰スラリを脱水する工程とを含む飛灰洗浄方法を案出した。換言すると、飛灰の洗浄によって発生する高アルカリ溶液を分離し、アルミ含有廃棄物と反応させる密閉工程を設け、真空またはパージを行った後、アルミ含有廃棄物を攪拌しながら徐々に添加して、生成する水素を排気口から回収し、発生するガスから水素とアンモニアを分離させる。
【0034】
さらに、本発明者は、上述した案出についてさらに鋭意検討を進め、アルミ含有廃棄物に含まれる金属としてアルミニウム(以下、金属Al)や、アルミニウム化合物(Al化合物)の粒径を1mm以下、例えば100μm以下程度にすることを見出した。これにより、アルミニウム(Al)とpH10以上の高アルカリ溶液とを好適に反応させることができ、水素を効率良く発生させることができる。また、本発明者は、飛灰の洗浄においては、液固比(重量比)、すなわち、飛灰の重量に対する洗浄液体(水)の重量比(液体/飛灰)を5以上10以下にすることが好ましいことも見出した。さらに、本発明者は、アルミ含有廃棄物と高アルカリ溶液との混合物を脱水した後に得られるアルミナ系残渣を、必要に応じてリンス洗浄する一方、得られた排水から重金属類を除去して、さらに飛灰の洗浄用液体として用いる方法も案出した。以下に説明する実施形態は、以上の本発明者の鋭意検討に基づいて、案出されたものである。
【0035】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による飛灰処理装置を示す概略構成図である。
図1に示すように、第1の実施形態による飛灰処理装置1は、第1洗浄部11、第1脱水処理部12、反応部13、第2脱水処理部14、排水処理部15、および水素回収部16を備える。また、以下の説明において、前段および後段とはそれぞれ、洗浄用液体や高アルカリ溶液の流れ方向に沿った前段および後段である。
【0036】
前段洗浄手段としての第1洗浄部11は、上述した洗浄部101と同様に、例えば焼却炉(図示せず)などから排出された、不純物や塩類を含む飛灰を、例えば水(H2O)などの洗浄用液体を用いて洗浄する洗浄槽である。第1洗浄部11においては、飛灰に含まれる不純物や塩類を洗浄用液体に溶解して移行させるとともに洗浄後の灰スラリを生成する前段洗浄工程が行われる。飛灰には、酸化カルシウム(CaO)、酸化ケイ素(SiO2)、および酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)などの、セメントの原料として有効な成分が含まれる。さらに、飛灰には、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)などのアルカリ成分、塩素(Cl)などの塩素成分、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、クロム(Cr)などの重金属成分なども含まれる。灰スラリは、典型的にはpH10以上pH12以下、好適にはpH11以上pH12以下に調整された高アルカリ性を有する溶解溶液(以下、高アルカリ溶液)とともに、第1脱水処理部12に供給される。
【0037】
前段脱水手段としての第1脱水処理部12は、上述した脱水処理部102と同様に、第1洗浄部11から供給された高アルカリ溶液および灰スラリを分離させる。第1脱水処理部12は、灰スラリを脱水するためのベルトフィルタやフィルタプレスなどの脱水機を有して構成される。第1脱水処理部12は、供給された灰スラリを脱水して、灰分系残渣を排出するとともに、洗浄廃液としての高アルカリ溶液を排出する前段脱水工程が行われる。
【0038】
排出された灰分系残渣は、好適にはセメント原料として利用される。灰分系残渣をセメント原料として用いるためには、鉄筋の腐食などを抑制する観点から、第1脱水処理部12から排出される灰分系残渣の塩素濃度を500ppm未満にする必要がある。そのため、第1洗浄部11においては、洗浄用液体の供給流量を調整したり、灰分系残渣を第1洗浄部11に戻してリンス洗浄を行ったりすることにより、第1脱水処理部12から排出される灰分系残渣の塩素濃度が500ppm未満になるように調整される。
【0039】
一方、第1脱水処理部12から排出された高アルカリ溶液は、反応部13に供給される。反応手段としての反応部13は、密閉された反応槽などから構成されるが限定されない。また、反応部13には、外部からアルミ含有廃棄物が供給される。反応部13においては、供給されたアルミ含有廃棄物に含まれるAl成分と、第1脱水処理部12から供給された高アルカリ溶液に含まれる塩基や水とが反応する反応工程が行われる。反応工程においては、例えば以下の反応式(1)などの反応によって水素および塩類が生成される。なお、以下の反応式(1)はあくまでも一例であり、反応が反応式(1)に限定されるものではない。
2Al+6H2O+3Ca(OH)2 → 3H2+Ca3Al2(OH)12 …(1)
【0040】
これにより、アルミナ(Al2O3)などのアルミニウム塩であるAl化合物が、水などの溶媒に混合された混合スラリとして生成されるとともに、アンモニアガス(NH3)および水素ガス(H2)などが発生する。なお、アルミ含有廃棄物に含まれる金属AlやAl化合物は、表面に酸化膜が生じやすいことから、平均粒径が1mm以下、好適には100μm以下にされているのが好ましいが限定されない。廃棄物として得られるアルミ含有廃棄物におけるAl化合物の平均粒径が1mmより大きい場合、粉砕機などを用いて平均粒径を低下させる粉砕工程を行うようにしても良い。これにより、高アルカリ溶液とアルミ含有廃棄物中のAlとの反応性を向上させることができ、水素ガスを効率良く発生させることができる。
【0041】
また、反応部13においては、高アルカリ溶液とアルミ含有廃棄物との反応によって、高アルカリ溶液のpHが低減されて、中性から弱アルカリ性の混合液が得られる。これにより、従来行われていた酸を添加する中和処理の処理負荷を低減できる。なお、アルミ含有廃棄物に含まれる重金属類などが混合液にさらに混合される場合もある。反応部13において生成された、Al化合物を含む混合スラリ、および発生したアンモニアガスならびに水素ガスは、密閉空間を通じて第2脱水処理部14に供給される。
【0042】
第2脱水処理部14は、内部が密閉された、例えばフィルタプレスや遠心分離機などから構成される。混合スラリ脱水手段としての第2脱水処理部14においては、第1脱水処理部12と同様に、供給された灰スラリを脱水して、アルミナ(Al2O3)などのAl化合物を含むアルミナ系残渣を排出する混合スラリ脱水工程が行われる。アルミナ系残渣は、例えば耐火構造物の原料(以下、耐火物原料)として好適に使用される。混合スラリ脱水工程において第2脱水処理部14は、分離されなかった重金属類などを含む水などの混合液を排液として排出する。また、重金属類などを含む混合液は排水処理部15に供給される。第2脱水処理部14においては、発生したアンモニアガスおよび水素ガスなどの気体が分離されて、水素回収部16に供給される。
【0043】
排水処理部15においては、供給された混合液から重金属類を分離する重金属処理を行う。重金属類が分離された液体としての水は、回収液として第1洗浄部11に戻されて洗浄用液体として再利用される。これにより、外部から供給する洗浄用液体の使用量を低減することができる。
【0044】
気体回収手段および気体分離手段としての水素回収部16においては、供給されたアンモニアガスおよび水素ガスを含む気体から、水素ガスを分離して回収する気体分離工程および気体回収工程が行われる。回収された水素ガスは所定の貯留部(図示せず)に貯留される。分離されたアンモニアガスは、湿式スクラバなどの従来公知の排ガス洗浄装置(図示せず)に供給されて除害された後、排出される。以上により、飛灰処理装置1によって、飛灰が洗浄されるとともに、アルミ含有廃棄物が処理されて、セメント原料となる灰分系残渣や耐火物原料となるアルミナ系残渣が生成される。
【0045】
以上説明した第1の実施形態によれば、飛灰の洗浄処理によって生じる高アルカリ溶液に対して、Al含有廃棄物を添加して反応させていることにより、高アルカリ溶液のpHを降下させることができるので、酸の添加などの処理負荷を低減できる。また、アルミドロスなどのアルミ含有廃棄物を飛灰の洗浄処理の排液である高アルカリ溶液に導入していることにより、新たな処理溶液などを用いることなく、アルミ含有廃棄物を廃棄処理するための前処理を行うことができる。さらに、従来廃棄処分がされていた高アルカリ溶液およびアルミ含有廃棄物によって水素ガスを回収することができるので、燃料電池などの原料となる水素ガスを安価に製造することが可能になる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による飛灰処理装置について説明する。
図2は、第2の実施形態による飛灰処理装置を示す概略構成図である。
図2に示すように、第2の実施形態による飛灰処理装置2は、第1洗浄部11、第1脱水処理部12、反応部13、第2脱水処理部14、排水処理部15、水素回収部16、第2洗浄部17、および第3脱水処理部18を備える。第1洗浄部11、第1脱水処理部12、反応部13、第2脱水処理部14、排水処理部15、および水素回収部16については、第1の実施形態による飛灰処理装置1と同様である。
【0047】
第2の実施形態による飛灰処理装置2は、第1の実施形態と異なり、第2脱水処理部14の後段に第2洗浄部17および第3脱水処理部18が順次設けられている。後段洗浄手段としての第2洗浄部17は、第1洗浄部11と同様に構成され、第2脱水処理部14から排出されたアルミナ系残渣を、例えば水などの洗浄用液体を用いて洗浄する洗浄槽を有して構成される。第2洗浄部17においては、アルミナ系残渣に含まれる不純物や塩類を洗浄用液体に溶解して移行させるとともに洗浄後のスラリを生成する後段洗浄工程が行われる。アルミナ系残渣には、飛灰およびアルミ含有廃棄物に由来する各種成分が含まれている。スラリは、洗浄用液体とともに、第3脱水処理部18に供給される。
【0048】
第3脱水処理部18は、スラリを脱水するためのフィルタプレスなどの脱水機を有して構成される。後段脱水手段としての第3脱水処理部18は、上述した第2脱水処理部14と同様に、第2洗浄部17から供給されたスラリを脱水する後段脱水工程を行う。後段脱水工程において第3脱水処理部18は、供給されたアルミナ系残渣を含むスラリを脱水して、さらに脱水されたアルミナ系残渣を排出する。アルミナ系残渣は、例えば耐火物原料として好適に使用される。一方、第3脱水処理部18によって分離された液体は回収液として第1洗浄部11に戻される。これにより、洗浄用液体を有効利用できる。なお、第3脱水処理部18は内部が密閉されていても密閉されていなくても良い。
【0049】
以上説明した第2の実施形態によれば、反応部13、第2脱水処理部14、水素回収部16を有していることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2洗浄部17および第3脱水処理部18を有していることにより、第2脱水処理部14から排出されたアルミナ系残渣を含むスラリの含水率が50%以上、さらには70%以上である場合など、第2脱水処理部14から排出されたスラリの含水率が高い場合に、アルミナ系残渣をさらに洗浄したりさらに脱水を行ったりできるので、より高品質な耐火物原料を得ることができる。
【0050】
(第2の実施形態の変形例)
次に、本発明の第2の実施形態の変形例による飛灰処理装置について説明する。
図3は、第2の実施形態の変形例による飛灰処理装置を示す概略構成図である。
図3に示すように、変形例による飛灰処理装置3は、第1洗浄部11、第1脱水処理部12、第2脱水処理部31、排水処理部15、水素回収部16、第2洗浄部17、および第3脱水処理部18を備え、第2の実施形態と異なり、反応部13が設けられていない。
【0051】
変形例による第2脱水処理部31は、飛灰処理装置1,2における第2脱水処理部14と異なり、反応部13による処理および第2脱水処理部14による処理を合わせて行う処理部である。
【0052】
すなわち、飛灰処理装置3においては、第1脱水処理部12から第2脱水処理部31に高アルカリ溶液が供給されるとともに、外部から第2脱水処理部31にアルミ含有廃棄物が導入される。第2脱水処理部31において、高アルカリ溶液とアルミ含有廃棄物とが反応することにより、水素ガスおよびアンモニアガスを含む気体と、混合液と、アルミナ系残渣とが分離される。その他の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0053】
変形例によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良く、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0055】
例えば、上述した実施形態においては、洗浄用液体として水を採用しているが、必ずしも水に限定されるものではなく、例えばメタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)などの有機溶媒を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1,2,3 飛灰処理装置
11 第1洗浄部
12 第1脱水処理部
13 反応部
14,31 第2脱水処理部
15 排水処理部
16 水素回収部
17 第2洗浄部
18 第3脱水処理部