(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175107
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】吸収性物品の濡れ報知システム、電極付き吸収性物品及び吸収性物品の濡れ報知装置
(51)【国際特許分類】
A61F 13/42 20060101AFI20221117BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20221117BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20221117BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20221117BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20221117BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20221117BHJP
【FI】
A61F13/42 F
A61F13/47
A61F13/49
G01N27/22 B
G01N27/06 A
G01N27/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081257
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】517398036
【氏名又は名称】土屋 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】土屋 正人
【テーマコード(参考)】
2G060
3B200
【Fターム(参考)】
2G060AA07
2G060AC01
2G060AE11
2G060AE12
2G060AF03
2G060AF07
2G060AF10
2G060AG11
2G060HA02
2G060HD01
2G060HD03
2G060KA05
3B200AA01
3B200DF04
3B200DF05
(57)【要約】
【課題】吸収性物品の濡れを、服を着たままで、外側から精度よく検知することができるようにした吸収性物品の濡れ報知システム、電極付き吸収性物品及び吸収性物品の濡れ報知装置を提供する。
【解決手段】吸収性物品と、電極付き吸収性物品と、吸収性物品着用者側に配される第一電極と装置使用者側に配される第二電極とを有する装置と、前記装置使用者が、前記電極付き吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチすると前記吸収性物品着用者の身体を経由した電気特性の変化が計測される計測部と、前記計測部で計測された結果に応じて、前記電極付き吸収性物品の濡れレベルを表示する濡れレベル表示部と、を備える、吸収性物品の濡れ報知装置と、を含む、吸収性物品の濡れ報知システムとした。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性の裏面シートと、前記トップシートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体と、を有する吸収性物品と、
少なくとも一部が前記裏面シートに取り付けられ、少なくとも一部が前記吸収性物品の外部に露出した、吸収性物品側検出電極と、
を備える、電極付き吸収性物品と、
吸収性物品着用者側に配される第一電極と装置使用者側に配される第二電極とを有する装置と、前記装置使用者が、前記電極付き吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチすると前記吸収性物品着用者の身体を経由した電気特性の変化が計測される計測部と、
前記計測部で計測された結果に応じて、前記電極付き吸収性物品の濡れレベルを表示する濡れレベル表示部と、
を備える、吸収性物品の濡れ報知装置と、
を含む、
吸収性物品の濡れ報知システム。
【請求項2】
前記電気特性の変化が、静電容量の変化又は電気抵抗の変化である、請求項1記載の吸収性物品の濡れ報知システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸収性物品の濡れ報知システムに用いられる電極付き吸収性物品であり、
液透過性のトップシートと液不透過性の裏面シートと前記トップシートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する吸収性物品と、
少なくとも一部が前記裏面シートに取り付けられ、少なくとも一部が前記吸収性物品の外部に露出した、吸収性物品側検出電極と、
を備える、電極付き吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品側検出電極が、前記裏面シートに取り付けられる裏面シート取付電極と、前記裏面シート取付電極にリード線で接続され、且つ前記吸収性物品の外部に露出した露出電極と、を含む、請求項3記載の電極付き吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性物品が、おむつ又は尿取りパッドである、請求項3又は4記載の電極付き吸収性物品。
【請求項6】
請求項1又は2記載の吸収性物品の濡れ報知システムに好適に用いられる吸収性物品の濡れ報知装置であり、
吸収性物品着用者側に配される第一電極と装置使用者側に配される第二電極とを有する装置本体と、前記装置使用者が、吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチしつつ、前記吸収性物品の位置に前記濡れ報知装置の第一電極を当接すると前記吸収性物品着用者の身体を経由した前記吸収性物品の電気特性の変化が計測される計測部と、
前記計測部で計測された結果に応じて、前記吸収性物品の濡れレベルを表示する濡れレベル表示部と、
を備える、吸収性物品の濡れ報知装置。
【請求項7】
前記吸収性物品が電極付き吸収性物品であり、前記計測部が、前記電極付き吸収性物品の吸収性物品側検出電極に、前記濡れ報知装置の第一電極を当接すると前記吸収性物品着用者の身体を経由した電気特性の変化が計測される計測部である、請求項6記載の吸収性物品の濡れ報知装置。
【請求項8】
前記電気特性の変化が、静電容量の変化又は電気抵抗の変化である、請求項6又は7記載の吸収性物品の濡れ報知装置。
【請求項9】
請求項1又は2記載の吸収性物品の濡れ報知システムを用いた吸収性物品の濡れ報知方法であり、
前記装置使用者が、前記第二電極に触れながら、前記電極付き吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチしつつ、前記電極付き吸収性物品の吸収性物品側検出電極に、前記濡れ報知装置の第一電極を当接させることで、前記吸収性物品の濡れレベルが報知されるようにした、吸収性物品の濡れ報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつや尿取りパッドなどの吸収性物品の濡れ報知システム、電極付き吸収性物品及び吸収性物品の濡れ報知装置並びに吸収性物品の濡れ報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつは乳幼児だけで無く老人介護施設等でもたくさん利用されている。排泄によって濡れたおむつは、できるだけ早く交換することが利用者にとって理想的である。介護施設ではそれぞれの要介護者の排泄の周期をデータ化し、それに基づく交換のタイミングを予測して交換作業を実施しているが、その的中率は60%から70%程度で、予測が外れた場合でも排泄の確認作業は必要で介護者の負担を増加させている。そこで、おむつや尿取りパッドなどの吸収性物品の濡れを検知したり或いは報知したりする様々な装置などが従来から提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一対の電極を僅か離して並べて付着形成して両電極間に静電容量を形成し、おむつが濡れたとき静電容量が変化するおむつの濡れ検知センサと、該濡れ検知センサの前記電極に交流信号を印加する発振器と、前記一対の電極間の静電容量の変化を捉える検知器と、該検知器の出力信号によって作動するバイブレータ、ブザーの少なくとも一方を備えたおむつ濡れ報知装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、第一基材表面および相対する第二基材表面を有する基材と第一電極表面および相対する第二電極表面を有し、且つ、前記第一電極表面を前記基材の前記第一基材表面に設置する第一電極片を有し、前記第二電極表面をおむつの外側に向けて、前記おむつの外側に貼付し、且つ、前記第一電極片が前記おむつ内側に電気的に結合されて、結合容量を形成する検知素子と、前記検知素子と電気的に接続される前記接地素子を有し、前記結合容量を測定する測定ユニット、および、前記測定ユニットと電気的に接続し、且つ、前記結合容量値の変化にしたがって、おむつ湿潤信号を生成するかどうか判断する処理ユニット、を有するおむつ湿度検知装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのおむつ濡れ報知装置では、僅かな静電容量の変化を検知することになるため、昨今の吸収層の厚いおむつや更にその中にセットされた尿取りパッド等の吸収性物品の濡れを、服を着たままで、外側から検知する事が非常に難しく不安定で有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-220259
【特許文献2】実用新案登録第3208131号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、吸収性物品の濡れを、服を着たままで、外側から精度よく検知することができるようにした吸収性物品の濡れ報知システム、電極付き吸収性物品及び吸収性物品の濡れ報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の吸収性物品の濡れ報知システムは、液透過性のトップシートと、液不透過性の裏面シートと、前記トップシートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体と、を有する吸収性物品と、少なくとも一部が前記裏面シートに取り付けられ、少なくとも一部が前記吸収性物品の外部に露出した、吸収性物品側検出電極と、を備える、電極付き吸収性物品と、吸収性物品着用者側に配される第一電極と装置使用者側に配される第二電極とを有する装置本体と、前記装置使用者が、前記電極付き吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチすると前記吸収性物品着用者の身体を経由した電気特性の変化が計測される計測部と、前記計測部で計測された結果に応じて、前記電極付き吸収性物品の濡れレベルを表示する濡れレベル表示部と、を備える、吸収性物品の濡れ報知装置と、を含む、吸収性物品の濡れ報知システムである。
【0009】
前記電気特性の変化が、静電容量の変化又は電気抵抗の変化であるのが好適である。
【0010】
本発明の電極付き吸収性物品は、前記吸収性物品の濡れ報知システムに用いられる電極付き吸収性物品であり、液透過性のトップシートと液不透過性の裏面シートと前記トップシートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する吸収性物品と、少なくとも一部が前記裏面シートに取り付けられ、少なくとも一部が前記吸収性物品の外部に露出した、吸収性物品側検出電極と、を備える、電極付き吸収性物品である。
【0011】
前記吸収性物品側検出電極が、前記裏面シートに取り付けられる裏面シート取付電極と、前記裏面シート取付電極にリード線で接続され、且つ前記吸収性物品の外部に露出した露出電極と、を含むのが好適である。
【0012】
前記吸収性物品が、おむつ又は尿取りパッドであるのが好適である。
【0013】
本発明の吸収性物品の濡れ報知装置は、前記吸収性物品の濡れ報知システムに好適に用いられる吸収性物品の濡れ報知装置であり、吸収性物品着用者側に配される第一電極と装置使用者側に配される第二電極とを有する装置本体と、前記装置使用者が、吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチしつつ、前記吸収性物品の位置に前記濡れ報知装置の第一電極を当接すると前記吸収性物品着用者の身体を経由した前記吸収性物品の電気特性の変化が計測される計測部と、前記計測部で計測された結果に応じて、前記吸収性物品の濡れレベルを表示する濡れレベル表示部と、を備える、吸収性物品の濡れ報知装置である。
【0014】
前記吸収性物品が電極付き吸収性物品であり、前記計測部が、前記電極付き吸収性物品の吸収性物品側検出電極に、前記濡れ報知装置の第一電極を当接すると前記吸収性物品着用者の身体を経由した電気特性の変化が計測される計測部であるのが好適である。
【0015】
前記電気特性の変化が、静電容量の変化又は電気抵抗の変化であるのが好適である。
【0016】
本発明の吸収性物品の濡れ報知方法は、前記吸収性物品の濡れ報知システムを用いた吸収性物品の濡れ報知方法であり、前記装置使用者が、前記第二電極に触れながら、前記電極付き吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチしつつ、前記電極付き吸収性物品の吸収性物品側検出電極に、前記濡れ報知装置の第一電極を当接させることで、前記吸収性物品の濡れレベルが報知されるようにした、吸収性物品の濡れ報知方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸収性物品の濡れを、服を着たままで、外側から精度よく検知することができるようにした吸収性物品の濡れ報知システム、電極付き吸収性物品及び吸収性物品の濡れ報知装置を提供することができるという著大な効果を奏する。
【0018】
そして、服を着たままで、吸収性物品の濡れを検知するにあたり、吸収性物品着用者の人体と、本発明の濡れ報知装置との間に、装置使用者の身体を経由することで、積層方向の検出方法となり、従来の同一平面的な電極の配置方法よりも検知精度の向上を可能とし、更に濡れ検知装置の携帯化も容易とした。
【0019】
本発明の吸収性物品の濡れ報知装置を介護者や保育者などの装置使用者が携帯し使用することで、的中率60%から70%程度の排尿排便の予測システムの最終確認を作業直前に実施でき、介護者などの無駄な作業を、本装置で防止し、介護者などの負担低減を可能とすることができる。
【0020】
また、介護施設での介護者と被介護者の信頼関係は非常に大切で、介護効果を向上させる基本と成っている。本発明の濡れ報知方法で介護者が被介護者の手などの素肌部に接触しスキンシップしながら確認作業ができるので被介護者に安心感と親近感を与え介護者と被介護者の高い信頼関係を自然に醸成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る吸収性物品の濡れ報知装置の一つの実施の形態の上面図である。
【
図4】本発明に係る吸収性物品の濡れ報知装置の別の実施の形態であり、第一電極を筐体から突出させた濡れ報知装置の上面図である。
【
図6】本発明に係る吸収性物品の濡れ報知装置の一つの実施形態を表す内部回路の機能ブロック図である。
【
図7】本発明に係る吸収性物品の濡れ報知装置の一つの実施形態を示し、濡れ報知装置、吸収性物品着用者の人体及び装置使用者の関係を表す概略図である。
【
図8】本発明に係る吸収性物品の濡れ報知システムの一つの実施形態を示し、濡れ報知装置、リード電極付きおむつ、吸収性物品着用者の人体及び装置使用者の関係を表す概略図である。
【
図9】本発明に係る吸収性物品の濡れ報知システムの一つの実施形態を示し、濡れ報知装置、リード電極付き尿取りパッド、吸収性物品着用者の人体及び装置使用者の関係を表す概略図である。
【
図10】尿取りパッドとおむつの基本的な断面構造の説明図である。
【
図11】本発明に係るコンデンサーの静電容量を決定する各要素と、その原理を説明する図である。
【
図12】本発明に係る抵抗式リード電極付き尿取りパッドの一つの実施の形態の構造図である。
【
図13】
図12の抵抗式リード電極付き尿取りパッドのa―a断面図である。
【
図14】本発明に係る静電容量式リード電極付き尿取りパッドの一つの実施の形態の構造図である。
【
図15】
図14の静電容量式リード電極付き尿取りパッドのb―b断面図である。
【
図16】本発明に係る抵抗式リード電極付きおむつの一つの実施の形態の構造図である。
【
図17】
図16の抵抗式リード電極付きおむつのc-c断面図である。
【
図18】本発明に係る静電容量式リード電極付きおむつの一つの実施の形態の構造図である。
【
図19】
図18の静電容量式リード電極付きおむつのd―d断面図である。
【
図20】本発明に係るリード電極付きおむつとリード電極付き尿取りパッドの、電極の概略寸法図である。
【
図21】実施例1及び実施例2の測定方法を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~3に、本発明に係る吸収性物品の濡れ報知装置10Aの一つの実施の形態を示す。濡れ報知装置10Aは、筐体2を備えており、筐体2の両側面と上面にかけ、装置使用者9が装置を把持する時に接触する第二電極5が配置されており、筐体下面には吸収性物品着用者側に配される第一電極1が設けられている。また、濡れ報知装置10Aには、吸収性物品の濡れレベルを、LEDが点灯する数で段階的に表示する表示部3と、装置が正常動作している事を点滅表示で行う装置動作表示LED4が設けられており、装置動作表示LED4が点滅していない時は異常動作か電池切れが表わされるようになっている。
【0023】
吸収性物品には、乳幼児用おむつや、主に介護を必要とする高齢者や障害者向けの、尿や便を吸収保持する使い捨て尿パッド、テープ型おむつ、パンツ型おむつ、軽失禁パッド等の使い捨て吸収性物品がいずれも含まれる。吸収性物品着用者は、老人や障碍者などの被介護者や乳幼児などの被保育者である。装置使用者は、介護者や保育者などである。
【0024】
図3は、吸収性物品の濡れ報知装置10Aの下面図であり、筐体2の下面には、吸収性物品着用者側に配される第一電極1が配置されている。この第一電極の面積は5cm×5cm程度の面積であり、尿取りパッドの濡れ状態をその上のおむつや、更に上の1mm程度のカバー体の外側から報知する事が可能であり、更に、後述するリード電極付きおむつやリード電極付き尿取りパッドを使用する時は、その電極の電極部に直接接触させ静電容量又は抵抗値の測定を行う。
介護の現場では、尿取りパッドの上に更におむつを履いて使用したりすることがある。そのような吸収性物品の重畳的使用の場合には、一般的には、濡れを報知するのは容易ではないが、本発明では、そのような吸収性物品の重畳的使用であっても濡れを報知することが可能である。
【0025】
図4~5に本発明に係る吸収性物品の濡れ報知装置の別の実施の形態である吸収性物品の濡れ報知装置10Bを示す。
図4は、第一電極1を筐体から突出させた濡れ報知装置の上面図で、第一電極1は1mm~2mm程度の金属板で、濡れ検知の作業を実施する際に狭い部分の検知作業を第一電極1の表面と裏面を状況に合わせて使い分けて使用する事により作業を容易とする事が出来る。
【0026】
図5は、第一電極1を筐体から突出させた濡れ報知装置の側面図で、第一電極の上下両面のいずれかを選択して、濡れ検知箇所に宛がうことが可能となり、表示部3の見にくい体勢でも見やすい方向に表示部3を向け作業をすることができる。
【0027】
図6に示すものは、本発明の濡れ報知装置10A,10B内の回路機能ブロック図である。
図6に示す符号7のR・C測定手段は、抵抗値の測定と静電容量の測定のどちらでも測定可能な測定器である。このR・C測定手段7により、電気特性の変化を計測することができる。
【0028】
本発明の濡れ報知装置10A,10Bは、R・C測定手段7に接続された第一電極1と、第二電極5間で構築されるコンデンサー構造の静電容量を、最小分解能0.1pfで最大測定範囲を2000pf程度まで計測可能とし、この信号を解析手段8に取り込み静電容量の変化を解析し段階的に表示する表示部3にて複数の段階で報知する。
【0029】
R・C測定手段7は、濡れ報知装置10A,10Bの第一電極1と、第二電極5の間の、静電容量又は抵抗値に基づく発振をさせ、その発振信号をR・C測定手段7の出力とするものである。
【0030】
静電容量又は抵抗値を計測する方法は、この発振法に限らず交流インピーダンスの比較による交流電圧の電圧出力で有っても良く、又は定電流電源によるコンデンサーの、充電時間や放電時間の時間や、抵抗両端の電圧をC・R測定手段の出力とするもので有っても良い。C・R測定手段の測定方法に関してはこの様な多種多様な組合せが可能で、いずれの方法で有っても良い。
【0031】
解析手段8は前記R・C測定手段7の出力である発振信号を一定のゲート時間でカウントし数値化する、この数値の最小値と最大値の間に複数の濡れレベル報知の為の閾値を実測の上設け、この閾値を超える信号毎に段階的な濡れレベル報知信号として段階的に表示する表示部3に送る。
【0032】
解析手段8は上記の様なデジタル処理装置でなくR・C測定手段7の出力を周波数電圧変換し、その電圧の最小値と最大値の間に複数の濡れレベル報知の為の閾値を複数設定する為のアナログ電圧コンパレーターを設け、この閾値を超える信号毎に段階的な濡れレベル報知信号として段階的に表示する表示部3に送ることもできる。
【0033】
段階的に表示する表示部3は解析手段8からの段階的な濡れレベル報知信号を受け4個のLEDで4段階の濡れレベルを報知している。
もちろん、段階的に表示する表示部3は必要に応じた濡れ状態を、閾値の設定を変更することにより任意に設定することが可能である。
【0034】
濡れレベル報知手段は、この他ブザー音やLEDの色の変化を持って濡れレベルを報知することや、パネルディスプレーにて段階的な濡れレベル報知をヒストグラムや文字列を合わせて報知することも可能である。
【0035】
このように、本発明に係る吸収性物品の濡れ報知装置10A,10Bは、吸収性物品着用者側に配される第一電極1と装置使用者側に配される第二電極5とを有する装置本体と、前記装置使用者が、吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチしつつ、前記吸収性物品の位置に前記濡れ報知装置の第一電極1を当接すると前記吸収性物品着用者の身体を経由した前記吸収性物品の電気特性の変化が計測される計測部であるR・C測定手段7と、前記計測部で計測された結果に応じて、前記吸収性物品の濡れレベルを表示する濡れレベル表示部である表示部3と、を備える吸収性物品の濡れ報知装置である。
【0036】
図7に本発明に係る濡れ報知装置10Aの一つの実施の形態と使用例を示す。
図7に示すように、濡れ報知装置10Aの第一電極1を測定対象部位である吸収性物品の位置に宛がい当接させて、濡れ報知装置10Aの第二電極5に、濡れ報知装置10Aを右手で把持することで電気的に接続された装置使用者9が、吸収性物品着用者の人体6の素肌部に左手でタッチし、装置使用者9を経由し吸収性物品着用者の人体6に、第二電極5を電気的に接続させる。勿論左右の手はどちらの手でも良い。
【0037】
図7の説明図は静電容量の計測が前提であるので、装置使用者9は素手で吸収性物品着用者の人体6にタッチし接触することが理想的であるが、装置使用者が吸収性物品着用者にタッチする箇所の面積としては手のひらサイズの面積が有れば、薄い50μm程度の医療用手袋をしていても交流的な結合が得られるので、報知可能である。
【0038】
図7に示すように、濡れ報知装置10Aの第一電極1と、カバー体11と、おむつ12と、尿取りパッド13が、装置使用者9を介して第二電極5に接続された人体6との間でコンデンサー回路が構築される。この状態で濡れ報知装置10Aの装置起動スイッチ18を押し起動する。
吸収性物品であるおむつ12と尿取りパッド13はいずれか1つでも良く、この状態で排尿や排便による水分が、おむつ12又は尿取りパッド13に取り込まれていると、濡れ報知装置10Aの第一電極1と第二電極5の間の静電容量が上昇し、その変化を捉えて濡れを検知し、その検知信号のレベルから段階的な表示を表示部3にて報知する濡れ報知装置である。
【0039】
図8に本発明に係る吸収性物品の濡れ報知システム50の一つの実施の形態を示す。吸収性物品の濡れ報知システム50は、
図10に示されるような、液透過性のトップシート(水分透過シート16)と、液不透過性の裏面シート(防水シート14)と、前記トップシートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体(吸水材と吸水剤保持繊維15)と、を有する吸収性物品(おおむつ12又は尿取りパッド13)と、少なくとも一部が前記裏面シートに取り付けられ、少なくとも一部が前記吸収性物品の外部に露出した、吸収性物品側検出電極(図示例では、リード電極の電極部23、リード電極のリード部21及びおむつ又は尿取りパッド側の電極25から構成される)と、を備える、電極付き吸収性物品(リード電極付きおむつ19又はリード電極付き尿取りパッド20)と、吸収性物品着用者側に配される第一電極1と装置使用者側に配される第二電極5とを有する装置本体と、前記装置使用者が、前記電極付き吸収性物品が装着された吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチすると前記吸収性物品着用者の身体を経由した電気特性の変化が計測される計測部(R・C測定手段7)と、前記計測部で計測された結果に応じて、前記電極付き吸収性物品の濡れレベルを表示する濡れレベル表示部(表示部3)と、を備える、吸収性物品の濡れ報知装置10Aと、を含む、吸収性物品の濡れ報知システムである。
【0040】
前記吸収性物品側検出電極は、図示例では、前記裏面シート(防水シート14)に取り付けられる裏面シート取付電極(おむつ又は尿取りパッド側の電極25)と、前記裏面シート取付電極にリード線(リード電極のリード部21)で接続され、且つ前記吸収性物品の外部に露出した露出電極(リード電極の電極部23)と、を含む構成とされている。
【0041】
図8では吸収性物品がリード電極付きのおむつ19となっている。
図8に示すように、濡れ報知装置10Aの第一電極1をリード電極付きおむつ19のリード電極の電極部23に当接し電気的に接触させ、濡れ報知装置10Aの第二電極5に濡れ報知装置10Aを右手で把持することで電気的に接続された装置使用者9が、吸収性物品着用者の人体6である素肌部に左手でタッチし、第二電極5を、装置使用者9を経由し吸収性物品着用者の人体6に電気的に接続させる。勿論左右の手はどちらの手でも良く装置使用者9を介して第二電極5に接続された吸収性物品着用者の人体6との間で測定回路が構築され、この状態で装置起動スイッチ18を押し起動すると排尿や排便による水分が、リード電極付きおむつ19に吸収されて取り込まれていると、濡れ報知装置10Aの第一電極1と第二電極5の間の静電容量又は、抵抗値が変化し、その検知信号のレベルから濡れレベルの段階的な表示を表示部3にて報知する。
リード電極のリード部21(リード線)は絶縁加工されておりリード電極の電極部23は絶縁加工が無くカバー体11の外側に面ファスナー等で止められると良い。
【0042】
図9では吸収性物品がリード電極付きの尿取りパッド20となっている。
図9に示すように、濡れ報知装置10Aの第一電極1をリード電極付き尿取りパッド20のリード電極の電極部23に当接し電気的に接触させ、濡れ報知装置10Aの第二電極5に濡れ報知装置10Aを右手で把持することで電気的に接続された装置使用者9が、吸収性物品着用者の人体6である素肌部に左手でタッチし、第二電極5を、装置使用者9を経由し吸収性物品着用者の人体6に電気的に接続させる。勿論左右の手はどちらの手でも良く装置使用者9を介して第二電極5に接続された吸収性物品着用者の人体6との間で測定回路が構築され、この状態で装置起動スイッチ18を押し起動すると排尿や排便による水分が、リード電極付き尿取りパッド20に取り込まれていると、濡れ報知装置10Aの第一電極1と第二電極5の間の静電容量又は、抵抗値が変化し、その検知信号のレベルから濡れレベルの段階的な表示を表示部3にて報知する。
リード電極のリード部21は絶縁加工されておりリード電極の電極部23は絶縁加工が無くカバー体11の外側に面ファスナー等で止められると良い。
【0043】
図10は、吸収性物品である尿取りパッドとおむつの基本的な断面構造図である。装着される人体側は水分を透過する水分透過シート16(液透過性のトップシート)で中間部に吸水剤と吸水剤保持繊維15(吸収体)を配置し外側に水分の漏れを防止する防水シート14(液不透過性の裏面シート)で構成されている。尿取りパッドとおむつの構造は基本的に同様である。
【0044】
図11はコンデンサーの原理説明図で、その静電容量は電極の面積と、電極間の距離と、電極の間に有る物質の誘電率で決定される。誘電率は、空気を1とすると、水は80程度の誘電率を持つと言われている。
【0045】
図12は、抵抗式リード電極付き尿取りパッドの平面図である。外側に水分の漏れを防止する不導体の防水シート14(液不透過性の裏面シート)で覆われその直下に第二電極5が配置されている。第二電極5は、防水シート14に付着された導電性薄膜でも良く、その延長上にリード電極のリード部と電極部を設ける事が製造工程上良いと思われる。
【0046】
図13は、
図12に示した抵抗式リード電極付き尿取りパッドのa-a断面図である。
不導体の防水シート14(液不透過性の裏面シート)で覆われ、その直下に第二電極5が配置され、その下に吸水剤と吸水剤保持繊維15(吸収体)が配置され、最下部は人体に接する水分透過シート16(液透過性のトップシート)で密閉されている。
水分が、水分透過シート16を透過し吸水剤と吸水剤保持繊維15に吸水されると、人体と第二電極5の間の抵抗値が低下する。
【0047】
図14は、静電容量式リード電極付き尿取りパッドの平面図である。
外側に水分の漏れを防止する不導体の防水シート14(液不透過性の裏面シート)で覆われその直上に第二電極5が配置されている。
第二電極5は、防水シート14に付着された導電性薄膜でも良く、その延長上にリード電極のリード部と電極部を設ける事が製造工程上良いと思われる。
【0048】
図15は、
図14に示した静電容量式リード電極付き尿取りパッドのb-b断面図である。不導体の防水シート14で覆われ、その直上に第二電極5が配置され、その下に吸水剤と吸水剤保持繊維15(吸収体)が配置され、最下部は人体に接する水分透過シート16(液透過性のトップシート)で密閉されている。
水分が、水分透過シート16を透過し吸水剤と吸水剤保持繊維15に吸水されると、人体と第二電極5の間の静電容量が増加する。
【0049】
図16は、抵抗式リード電極付きおむつの平面図である。
外側に水分の漏れを防止する不導体の防水シート14(液不透過性の裏面シート)で覆われその直下に第二電極5が配置されている。
第二電極5は、防水シート14に付着された導電性薄膜でも良く、その延長上にリード電極のリード部と電極部を設ける事が製造工程上良いと思われる。符号22は、おむつ巻保持用面ファスナーである。
【0050】
図17は、
図16に示した抵抗式リード電極付きおむつの c-c断面図である。
不導体の防水シート14(液不透過性の裏面シート)で覆われ、その直下に第二電極5が配置され、その下に吸水剤と吸水剤保持繊維15(吸収体)が配置され、最下部は人体に接する水分透過シート16(液透過性のトップシート)で密閉されている。
水分が、水分透過シート16を透過し吸水剤と吸水剤保持繊維15に吸水されると、人体と第二電極5の間の抵抗値が低下する。
【0051】
図18は、静電容量式リード電極付きおむつの平面図である。
外側に水分の漏れを防止する不導体の防水シート14(液不透過性の裏面シート)で覆われその直上に第二電極5が配置されている。
第二電極5は、防水シート14に付着された導電性薄膜でも良く、その延長上にリード電極のリード部と電極部を設ける事が製造工程上良いと思われる。符号22は、おむつ巻保持用面ファスナーである。
【0052】
図19は、
図18に示した静電容量式リード電極付きおむつのd-d断面である。
不導体の防水シート14(液不透過性の裏面シート)で覆われ、その直上に第二電極5が配置され、その下に吸水剤と吸水剤保持繊維15(吸収体)が配置され、最下部は人体に接する水分透過シート16(液透過性のトップシート)で密閉されている。
水分が、水分透過シート16を透過し吸水剤と吸水剤保持繊維15に吸水されると、人体と第二電極5の間の静電容量が増加する。
【0053】
図20は、本発明に係るリード電極付きおむつとリード電極付き尿取りパッドの、電極サイズの1例を示す電極の概略寸法図である。
【0054】
本発明の吸収性物品の濡れ報知方法は、装置使用者9が、前記第二電極5に触れながら、前記電極付き吸収性物品(リード電極付きおむつ19又はリード電極付き尿取りパッド20)が装着された吸収性物品着用者の人体6のいずれかの部位にタッチしつつ、前記電極付き吸収性物品の吸収性物品側検出電極(図示例では、リード電極の電極部23)に、前記濡れ報知装置10A,10Bの第一電極1を当接させることで、前記吸収性物品の濡れレベルが報知される方法である。
【実施例0055】
図20に示した電極の寸法で、
図12及び
図13に示したリード電極付き尿取りパッドのタイプ並びに
図14及び
図15に示したリード電極付き尿取りパッドのタイプを準備した。
図12及び
図13に示したリード電極付き尿取りパッドでは、防水シート14の内側に、尿取りパッド側の電極25が配置されているのに対し、
図14及び
図15に示したリード電極付き尿取りパッドでは、防水シート14の外側に、尿取りパッド側の電極25が配置されている、という違いがある。
【0056】
<実施例1>
図21に示すようにして、
図12及び
図13に示したリード電極付き尿取りパッド並びに
図14及び
図15に示したリード電極付き尿取りパッドのそれぞれに抵抗計26をリード線29で接続し電気抵抗を測定した。防水シート14の内側に尿取りパッド側の電極25が配置されているタイプ(
図12及び
図13)で測定を行った。符号28は、人体のダミーであり、人体のダミー28として、アルミ箔を使用した。人体のダミー28と抵抗計26とは人体のダミー接続リード線30で接続した。吸水剤と吸水剤保持繊維15(水分の吸収体)がドライの状態から、水分を徐々に注入し、電気抵抗の変化を測定した。なお、実施例1では、吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチすることはしていないが、代わりに人体のダミー接続リード線30で抵抗計26に直接接続して計測した。吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチすることで、この人体のダミー接続リード線30を無くすことができる利点がある。人体にタッチして計測する場合には、装置使用者と濡れ報知装置の接触抵抗と、測定される側(吸収性物品着用者側)の人体と装置使用者との接触抵抗が加算され計測結果の抵抗値が増加するが、その増加量は合計で多くても10KΩ程度なので、本実施例の測定結果からみて無視できる範囲である。
電気抵抗の計測結果を下記に示す。
【0057】
[電気抵抗の計測結果]
1)水分吸収体はドライのままで測定: 測定結果 無限大
2)水分吸収体の中央部に20ccの水を注入: 測定結果 20MΩ
3)水分吸収体の中央部に50ccの水を注入: 測定結果 5MΩ
4)水分吸収体の中央部に100ccの水を注入: 測定結果 2.5MΩ
5)水分吸収体の中央部に150ccの水を注入: 測定結果 0.7MΩ
【0058】
上記実施例1の計測結果から、吸水剤と吸水剤保持繊維15(水分の吸収体)に水分を注入するに従い、電気特性である電気抵抗の有意な変化が見られた。本発明では、この電気抵抗の変化を検知し、報知するシステム及び装置である。
【0059】
<実施例2>
実施例1の抵抗計26を静電容量計27に変更し、防水シート14の外側に尿取りパッド側の電極25が配置されているタイプ(
図14及び
図15)に変更した以外は、実施例1と同様にして測定を行った。人体のダミー28と静電容量計27とは人体のダミー接続リード線30で接続した。実施例1と同様に、吸水剤と吸水剤保持繊維15(水分の吸収体)がドライの状態から、水分を徐々に注入し、静電容量の変化を測定した。なお、実施例2では、吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチすることはしていないが、代わりに人体のダミー接続リード線30で静電容量計27に直接接続して計測した。吸収性物品着用者のいずれかの部位にタッチすることで、この人体のダミー接続リード線30を無くすことができる利点がある。人体にタッチして計測する場合には、装置使用者と吸収性物品着用者の静電容量が加算されるが、装置使用者と吸収性物品着用者の静電容量は2000pf以上有るので、本実施例の測定結果の減少量としては本実施例の測定結果からみて無視できる範囲である。
静電容量の計測結果を下記に示す。
【0060】
[静電容量の計測結果]
1)水分吸収体はドライのままで測定: 測定結果 30pf
2)水分吸収体の中央部に20ccの水を注入: 測定結果 50pf
3)水分吸収体の中央部に50ccの水を注入: 測定結果 100pf
4)水分吸収体の中央部に100ccの水を注入: 測定結果 160pf
5)水分吸収体の中央部に150ccの水を注入: 測定結果 250pf
【0061】
上記実施例2の計測結果から、吸水剤と吸水剤保持繊維15(水分の吸収体)に水分を注入するに従い、電気特性である静電容量の有意な変化が見られた。本発明では、この電気抵抗の変化を検知し、報知するシステム及び装置である。