(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175128
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/10 20200101AFI20221117BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20221117BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20221117BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221117BHJP
【FI】
H05B47/10
F21S2/00 622
F21V23/00 140
F21S2/00 370
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081308
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】高柳 佳幸
【テーマコード(参考)】
3K014
3K273
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K273PA05
3K273QA23
3K273TA17
3K273TA28
3K273UA22
3K273VA10
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で高出力の動作を可能とする照明装置を提案する。
【解決手段】実施形態に係る照明装置は、筐体部と、複数の発光素子が銀を有しない無機材をベースとした基板に配置され、発光面を有する光源部と、光源部の駆動を所定の駆動条件で制御する駆動制御部とを具備する。駆動条件は、光束発散度[lm/mm
2]を縦軸とし、ジャンクション温度[℃]を横軸としたときの光束発散度とジャンクション温度との関係を示す平面上において、光束発散度=30~210及びジャンクション温度=150~250で囲まれる領域である。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体部と;
複数の発光素子が銀を有しない無機材をベースとした基板に配置され、発光面を有する光源部と;
前記光源部の駆動を所定の駆動条件で制御する駆動制御部と;
を具備し、
前記駆動条件は、
光束発散度[lm/mm2]を縦軸とし、ジャンクション温度[℃]を横軸としたときの光束発散度とジャンクション温度との関係を示す平面上において、光束発散度=30~210及びジャンクション温度=150~250で囲まれる領域である
ことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いたLED照明装置の高出力化が進んでいる。例えば、高密度実装されたLEDモジュールを複数使用し、各々のモジュールからの配光を制御することにより、所望の明るさを実現する照明装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、照明装置の中には、大きな光量による照明を行うために高出力な光源を搭載する器具がある。このような器具において、高出力な光源をLEDに置き換える場合、LED光源が高負荷で駆動することとなり、LED光源から多くの熱が発生する。そして、その熱を放熱するための放熱構造を導入するため、照明装置が大型化・重量化したり、照明装置構造が複雑になってしまったり、という課題が存在していた。
【0005】
本開示では、簡単な構造で高出力の動作を可能とする照明装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一例に係る照明装置は、筐体部と、複数の発光素子が銀を有しない無機材をベースとした基板に配置され、発光面を有し、他方側に発光素子の実装面を有する光源部と、光源部の駆動を所定の駆動条件で制御する駆動制御部とを具備する。駆動条件は、光束発散度[lm/mm2]を縦軸とし、ジャンクション温度[℃]を横軸としたときの光束発散度とジャンクション温度との関係を示す平面上において、光束発散度=30~125及びジャンクション温度=150~250で囲まれる領域である。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一例に係る照明装置によれば、簡単な構造で高出力の動作を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る照明装置の外観構成の一例を示す図(その1)である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る照明装置の外観構成の一例を示す図(その2)である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る照明装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る照明データ記憶部に記憶される情報の一例を示す概要図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る光源の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る光源部の一例を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る光源部における発光径と光束との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、ライフ試験の試験条件の概要を示す図である。
【
図9】
図9は、ライフ試験結果における光量(光束)の低下を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る駆動条件を説明するための図(その1)である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る駆動条件を説明するための図(その2)である。
【
図12】
図12は、光源部への投入電力と光源部の全光束値の関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、光源部への投入電力と光源部の全光束値と光源部のジャンクション温度の関係を示す表である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係るライフ試験結果を光源のジャンクション温度と光束発散度との関係で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施形態に係る照明装置1は、筐体部10と、複数の発光素子が銀を有しない無機材をベースとした基板33に配置され、発光面を有する光源部3と、光源部3の駆動を所定の駆動条件で制御する駆動制御部101とを具備する。駆動条件は、光束発散度[lm/mm2]を縦軸とし、ジャンクション温度Tj[℃]を横軸としたときの光束発散度とジャンクション温度Tjとの関係を示す平面上において、光束発散度=30~210及びジャンクション温度Tj=150~250で囲まれる領域ARである。
【0010】
実施形態に係る照明装置1は、HID(High Intensity Discharge Lamp)ランプのように高出力な照明器具の光源をLED等の半導体発光素子(以下、単に発光素子という)が実装された光源に置き換えることを想定したものである。高出力な照明器具は、長寿命(例えば、製品寿命20000時間以上)は求められてはいないが、例えば、所定の光量を満たす照明が可能な状態で1000時間以上の製品寿命といったように、ある程度の製品寿命は望まれている。なお、ここでの製品寿命は、製品の全光束値が、初期の値を100%とした場合に、規定の割合以上で維持されている時間である。例えば、規定の割合が70%の場合、初期(100%)から全光束値が70%に下がるまでの時間、もしくは製品が不点灯となる時間を製品寿命とする。
【0011】
LED等の発光素子に光源を置き換えた高出力の照明装置は、例えば、投入電力及び照明装置全体の重量が同一である場合、一般的なLED器具と比べ、基板の温度がおよそ40[℃]高くなる高負荷での動作(いわゆるオーバードライブ駆動)となる。オーバードライブ駆動の一例を上げれば、室温(25℃)の環境下で、1[kg]の重量の放熱器に取り付けたLEDモジュールへの投入電力が200[W]であるとき、LEDモジュールの基板の温度Tcは、およそ105[℃]となり、一般的なLED器具で用いられるLEDモジュールの基板温度と比べ、およそ40[℃]高くなる。なお、本動作時のジャンクション温度(発光素子の温度)はおよそ140[℃]となる。このように一般的に用いられるLEDの動作点よりも高負荷な動作点でLEDを駆動することをオーバードライブ駆動という。
【0012】
また、LED照明では、放熱器として、HIDランプに搭載されるイグナイタよりも軽量なものを選定することにより、装置全体の軽量化が図られる。
【0013】
<第1の実施形態>
<<外観構成例>>
図1及び
図2を参照して第1の実施形態に係る照明装置1の概要を説明する。
図1及び
図2は、第1の実施形態に係る照明装置1の外観構成の一例を示す図である。なお、以下の説明において、同一の部位あるいは実質的に同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。例えば、照明装置1が備えるドア部2a,2b,2c,2dを特に区別する必要がない場合、単に「ドア部2」と記載する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、照明装置1は、例えば、持ち運び可能な高出力の照明装置であり、ドア部2(2a,2b,2c,2d)と、光源部3と、筐体部10とを備える。
【0015】
ドア部2は、照明装置1に対して例えば着脱可能に取り付けられる板状の部品であり、光源部3の周囲を取り囲むように設置される。ドア部2は、上下方向及び左右方向に向きを変更でき、光源部3からの光の照射方向を制限する。
【0016】
光源部3は、LED等の発光素子を有する光源である。光源部3は、例えば、複数の発光素子が規則的に基板33(
図6参照)に実装されたCOB(Chip On Board)型の光源である。
【0017】
筐体部10は、制御部100と、記憶部110とを備えるとともに、光源部3が設置される。なお、光源部3は、筐体部10から着脱することができるように取り付けられている。制御部100は、照明装置1の各種動作を制御する。記憶部110は、照明装置1に関する情報を記憶する。
【0018】
また、筐体部10には、ユーザに照明装置1に関する通知を行うために点灯する通知部20(
図3参照)が設置される。
【0019】
また、筐体部10には、光源部3の発光により発生した熱を放熱するための図示しない放熱器が設置される。
【0020】
<<機能構成例>>
図3を参照して第1の実施形態に係る照明装置1の機能構成の一例を説明する。
図3は、第1の実施形態に係る照明装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
図3に示すように、照明装置1は、光源部3と、通知部20と、制御部100と、記憶部110とを備える。
【0022】
光源部3は、複数の発光素子が基板33(
図6参照)に実装されたCOB型の光源31(
図6参照)であり、複数の発光素子がシリコーンなどの樹脂材料で封止されることで発光部32を構成する。そして、光源部3は、後述する制御部100の制御に基づいて発光する。
【0023】
通知部20は、ランプ等を備え、制御部100の制御により点灯する。通知部20は、制御部100(管理部102)により、照明装置1が所定の状態(光源部3の交換時期等)をユーザへ通知するように点灯制御される。なお、通知部20は、点灯だけでなく、所定の回数の点滅等の種々のパターンで点滅するように制御されてもよい。
【0024】
制御部100は、照明装置1の各部を制御する制御回路であり、マイクロコンピュータ等により実装される。マイクロコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサ、並びにROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置を搭載する。ROMは、照明装置1の各部を制御するためのプログラムを記憶している。CPU等のプロセッサが、ROM112が記憶しているプログラムを実行することで、マイクロコンピュータによる照明装置1の制御が実現される。RAMには、CPU等のプロセッサによる演算の実行等に必要なメモリ領域として使用される。なお、制御部100は、記憶部110が記憶しているプログラムを読み込んで、読み込んだプログラムを実行することにより、照明装置1の制御を実現してもよい。
【0025】
制御部100は、駆動制御部101と、管理部102とを備え、これらの各部により、第1の実施形態に係る照明装置1の制御を実現する。
【0026】
駆動制御部101は、光源部3を駆動するための駆動回路を介して、光源部3の駆動を制御する。駆動回路は、回路デバイス等で構成される。駆動制御部101は、光源部3の試験結果において基板33を黒化させないことが確認されたときの光源部3の光束発散度と光源部3のジャンクション温度T
jとの関係に基づいて規定された駆動条件で光源部3を駆動させる。駆動制御部101が光源部3を駆動する際の駆動条件は、光源部3に使用される光源31(
図5参照)に対応した製品のライフ試験結果(後述)に基づいて設計される。
【0027】
管理部102は、照明装置1に関する情報を管理する。管理部102は、照明装置1に関する情報を取得し、取得した情報を記憶部110へ送る。なお、管理部102は、光源部3に供給される電力に関する情報(2次電圧等の電圧値の情報等)を取得し、照明装置1に関する情報として、記憶部110へ送ってもよい。
【0028】
記憶部110は、照明装置1の各種制御を実現するためのプログラムやデータを記憶する。記憶部110は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置により実装される。
【0029】
記憶部110は、管理部102から送られた情報を記憶する照明データ記憶部111を有する。
【0030】
図4は、第1の実施形態に係る照明データ記憶部111に記憶される情報の一例を示す概要図である。
図4に示すように、照明データ記憶部111に記憶される照明データは、識別番号、通電時間、照度、色特性、電気特性等の項目を有する。識別番号の項目には、照明装置1に固有に割り当てられる番号の情報(例えば、製造番号)が記憶される。通電時間の項目には、光源部3の通電時間に関する情報が累積して記憶される。照度の項目には、光源部3の照度に関する情報が記憶される。色特性の項目には、光源部3の色特性に関する情報が記憶される。電気特性の項目には、光源部3の電気特性に関する情報が記憶される。なお、照度や色特性は、照明装置1に配設された図示しないセンサによって取得される。
【0031】
<<光源(COBモジュール)>>
図5~
図7を参照して光源部3について説明する。光源部3は、光源31と、ベース部材34と、放熱部材35と、ソケット36とを備える。ベース部材34は、ソケット36の一部であってもよい。
図5は、第1の実施形態に係る光源31を上面側から見た場合の一例を示す模式図である。
図6は、第1の実施形態に係る光源部3の一例を示す模式断面図である。なお、
図5及び
図6には、光源31として、COB型の光源(COBモジュール)を示している。
図7は、第1の実施形態に係る光源部3(光源31)における発光径dと光束との関係を示す図である。
【0032】
光源31は、例えば、COBモジュールであり、LED等の発光素子を含む発光部32と、複数の発光素子が配置された基板33と、を備える。発光部32は、例えば、円形の発光面を有する。なお、発光面は、円形以外の矩形や多角形のように様々な形状に形成されてよい。また、
図5に示す例では、発光面の発光径dは、33[mm]である。
【0033】
発光部32が備える発光素子は、上記したように、LEDである。また、発光素子から放出される光の波長は、例えば、420~470[nm]の範囲である。なお、発光素子と基板33との間の熱抵抗は、約0.11[℃/W]となるような接合材料やパラメータを用いて、発光素子は基板33に実装される。また、本実施形態では発光素子は、サファイア基板上にGaN(窒化ガリウム)系半導体を形成したGaN-on-サファイア発光素子や、GaN基板上にGaN系半導体を形成したGaN-on-GaN発光素子が用いられる。GaN-on-GaN発光素子は、GaN-on-サファイア発光素子に比べて、発光素子の単位面積(単位体積)あたりに多くの電流を投入することが可能である。そのため、GaN-on-GaN発光素子から照射される光量の限界値は、GaN-on-サファイア発光素子より多く、例えば、光束の場合は、GaN-on-GaN発光素子は、GaN-on-サファイア発光素子の3.3倍の限界光束を得ることが可能である。
【0034】
図6に示すように、基板33は、発光部32と対向する面に実装面を有する。また、基板33は、無機材をベースとしており、例えば、アルミニウム等の金属材料で構成される。
【0035】
ベース部材34は、板状であり、例えば、アルミニウムで構成される。放熱部材35は、例えば、金属酸化物を主成分とするシリコーングリースである。ソケット36は、ベース部材34上において、発光面の外周を囲むように設けられる。なお、基板33とソケット36との間は、放熱部材35がないとき最大0.2[mm]である。なお、0.2[mm]よりも厚くなると熱抵抗が大きくなるため、最大0.2[mm]とする。また、放熱部材35は、グリース状とすることにより、放熱面の凹凸に対応して接触抵抗を小さくできる。このようなシリコーングリースである放熱部材35は、例えば、0.3~0.7[g]の範囲で塗布することが好ましい。
【0036】
また、
図5及び
図6に示すように、発光部32は、蛍光体が含有された透明なシリコーン樹脂を含んでいる。蛍光体は、緑色蛍光体や赤色蛍光体で構成される。緑色蛍光体には、シリケートやYAG(イットリウム(Yttrium)、アルミニウム(Aluminum)、ガーネット(Garnet))等の酸化物半導体を使用することが好ましく、赤色蛍光体には、ユウロピウム等を含有する窒化物半導体を使用することが好ましい。緑色蛍光体の発光ピークは、490~600[nm]の範囲に含まれている。赤色蛍光体の発光ピークは、600~750[nm]の範囲に含まれている。
【0037】
図7に示すように、光源部3では、発光部32の発光径dが33[mm]とすると、光束25000[lm]の場合、光束発散度29.6[lm/mm
2]であり、光束30000[lm]の場合、光束発散度が35.5[lm/mm
2]であり、光束45000[lm]の場合、光束発散度53.3[lm/mm
2]であり、光束54000[lm]の場合、光束発散度63.9[lm/mm
2]であり、光束108000[lm]の場合、光束発散度127.8[lm/mm
2]であり、光束178200[lm]の場合、光束発散度が210.9[lm/mm
2]である。なお、光束発散度は、光束を発光面積で除算した値である。
【0038】
ここで、例えば、光源31が、基板33が反射率の高いアルミニウムで構成された、発光効率の高いCOB型の場合、高負荷での駆動を行うことにより、基板33のLED等の半導体素子の実装面が黒化し、外観が鏡面銀色から黒色や褐色に変色することで、光源31の発光効率(反射率)が大幅に低下することが知られている。
【0039】
発光素子の実装面が黒化する原因は、反射率の高いアルミニウムで構成された基板33は反射材として銀が蒸着されているが、その銀が、発光素子から生じる熱や光を受けて凝集し、基板33の反射率が低下することにあることが確認されている。銀の凝集は、熱負荷(熱エネルギー)のみでは発生しにくく、LED等の発光素子の光エネルギーと、LED等の発光素子の熱エネルギーとの複合的な要因で発生する(もしくは、発生が加速される)ことが明らかとなっている。
【0040】
一方、銀の凝集が発生するメカニズムについては完全には解明されていないが、仮に、光化学反応を伴うという仮説を立てた場合、銀の凝集の発生にはエネルギー閾値が存在するものと推察される。そして、エネルギー閾値を超えない範囲であれば、熱化学反応として取り扱うことにより、通常のアレニウス則を用いて、照明装置1について高出力での動作と所定の製品寿命(商品性)とを両立させることが可能であると考えられる。
【0041】
このため、第1の実施形態に係る照明装置1では、基板33における発光素子の実装面に銀を有しない(基板33の断面において銀の層を有しない)構成としている。第1の実施形態に係る照明装置1では、基板33における発光素子の実装面に銀を有しないため、基板33におけるアルミニウム基板部分を研磨によって反射率90%以上として利用する。
【0042】
<<ライフ試験>>
以下に、光源31が、基板33が反射率の高いアルミニウムで構成された、発光効率の高いCOB型の場合において、高負荷での駆動を行った場合のライフ試験結果を示す。なお、光源31の基板33は、反射材として銀が蒸着されたものを用いている。
【0043】
図8は、ライフ試験の試験条件の概要を示す図である。上述したように、基板33として、反射材に銀が蒸着されたアルミニウム基板を用いている製品Aについて、
図8に示す条件でライフ試験を実施する。なお、製品Aの発光部32の発光径は33mmである。また、当ライフ試験は、
図6同様に、光源31である製品Aを、放熱部材35を介してベース部材34上に配置し、ソケット36で挟み込んだ形態で実施した。また、ライフ試験装置は、温度調整機能を備え、放熱器のサイズが可変であるという前提条件のもと、投入電力とジャンクション温度を
図8に示す試験条件にあわせて調整することにより実施される。ライフ試験では、発光素子の実装面に反射材として用いられる銀の凝集が、発光素子の発光と発熱の複合的な要因で起こることが確認されている点に着目して、試験条件の設定を行っている。すなわち、同一の製品について、発光及び発熱の影響を見るために電力[W]及びジャンクション温度[℃]を適宜変更した試験条件を設定している。例えば、製品Aについて、電力を200[W]として、ジャンクション温度を125[℃]、135[℃]、145[℃]としたもの、ジャンクション温度を135[℃]として、電力を200[W]、300[W]としたもの等を試験条件として設定している。
【0044】
図9は、ライフ試験結果における光量(光束)の変化を示す図である。
図9には、使用開始時の光束を100[%]としたときのライフ時間の経過に伴う光束の減衰率を光束維持率として示している。
【0045】
図9に示すように、製品Aは、ジャンクション温度T
jが120[℃]~145[℃]であるとき、ライフ時間が1000時間を経過するまでの間、およそ90%程度の光束維持率を保っている。また、ジャンクション温度T
jが120[℃]~145[℃]であるとき、ライフ時間が1000時間を経過するまでの間、基板(発光素子の実装面)の黒化は確認されなかった。また、
図9に示すように、投入電力400[W]で、ジャンクション温度T
jが172[℃]となる「A社製品(製品A)、400W」のライフ試験では、1000時間を経過するまでの間、90%以上の光束維持率を保つことができず、基板(発光素子の実装面)の黒化も確認された。
【0046】
ライフ試験においては、製品Aは、投入電力400[W]、ジャンクション温度Tj172[℃]の条件で駆動した際に、基板33の銀が凝集することで基板33の表面状態が変化(結果、見た目上は黒化したように見える)し、その結果、基板33の反射率が低下し光束が低下したと考えられる。そのため、基板33に銀を用いないことで、投入電力400[W]、ジャンクション温度Tj172[℃]の条件で駆動しても、1000時間×光束維持率90%の規定寿命を満たすことは可能である。
【0047】
<<駆動条件>>
次に、
図10及び
図11を参照して、第1の実施形態において、駆動制御部101(
図3参照)が光源部3(
図5等参照)を駆動制御する際の所定の駆動条件について説明する。
図10及び
図11は、第1の実施形態に係る駆動条件を説明するための図である。なお、
図10には、第1の実施形態に係る駆動条件の表を示し、
図11には、第1の実施形態に係る駆動条件を説明するために、光源31のジャンクション温度T
jと光束発散度との関係で示すグラフを示している。なお、以下で光束値[lm]について述べる場合は、光源部3の発光径d(
図5参照)が33[mm]の場合の光束値[lm]である。しかし、本実施形態においては、光源部3の発光径dは33[mm]に限定されるものではなく、光源部3の発光径dは33[mm]より大きくてもよいし、小さくてもよい。その場合、発光径d内に存在する発光素子の数量が変化するため、光束値[lm]も変動(多くの場合は、発光径dに比例して変動)する。
【0048】
図10及び
図11に示すように、第1の実施形態に係る照明装置1では、駆動制御部101(
図3参照)による駆動条件は、光束発散度[lm/mm
2]を縦軸とし、ジャンクション温度T
j[℃]を横軸としたときの光束発散度とジャンクション温度T
jとの関係を示す平面上において、光束発散度が30[lm/mm
2]以上210[lm/mm
2]以下(30~210[lm/mm
2])、ジャンクション温度T
jが150[℃]以上250[℃]以下(150~250[℃])で囲まれる領域ARで動作させるために設計された条件である。
【0049】
上記したように、駆動制御部101による駆動条件は、縦軸である光束発散度の下限値を、30[lm/mm2]と設定している。光束発散度は、一般的な光束発散度を用いる値が5~20[lm/mm2]であることを考慮して、30[lm/mm2]以上と設定している。
【0050】
また、光束発散度の上限値は、210[lm/mm2]であるが、その理由について説明する。
【0051】
光源部3がGaN-on-サファイアの発光素子を用いている場合、
図12、
図13に示すように、光源部3に投入する電力を増やしていくと、光束値が約36000[lm]で飽和(限界値に達する)する。このときの投入電力は550[W]であり、発光素子のジャンクション温度T
jは約220[℃]である。投入電力約550W以上の領域は、電力増加による光束増加よりも、温度上昇を主とする光束低下の方が支配的になる領域である。また、
図12、
図13に示す光束値は、色温度が3000[K]、演色評価数Raが95の光源部3を用いたときの値である。そして、この時の光束発散度は約42.1[lm/mm
2]である。
【0052】
そして、この光束発散度を、光源部3の色温度が5000[K]、演色評価数Raが70の状態に換算すると、光束値が約60000[lm]となる。この時の光束発散度は約70.1[lm/mm2]である。
【0053】
また、上述したように、光源部3の発光素子にGaN-on-GaN発光素子を用いることで、約3倍の光束を得ることが可能となる。そのため、発光素子にGaN-on-GaN発光素子を用いた、色温度が3000[K]、演色評価数Raが95の光源部3においては、36000[lm]×3=108000[lm]を得ることが期待できる。この時の光束発散度は約126.3[lm/mm2]である。また、発光素子にGaN-on-GaN発光素子を用いた、色温度が5000[K]、演色評価数Raが70の光源部3においては、60000[lm]×3=180000[lm]を得ることが期待できる。この時の光束発散度は約210.5[lm/mm2]である。
【0054】
以上より、光束発散度の上限値は、210[lm/mm2]が期待できる。光束発散度の上限値については、光源部3の発光素子の種類や、色温度、演色評価数の違いに応じて、適宜上述した値を参考に定められてもよい。
【0055】
また、横軸であるジャンクション温度Tjの下限値を、150[℃]と設定している。ジャンクション温度Tjは、一般照明用LEDのメーカが定める絶対最大定格ジャンクション温度が150[℃]であることを考慮して、150[℃]以上と設定している。
【0056】
また、ジャンクション温度Tjの上限値を、250[℃]と設定している。250[℃]の高温下においては、発光部32が備える蛍光体が含有されたシリコーン樹脂が300時間程度で割れてしまうため、ジャンクション温度Tjは、250[℃]以下と設定している。
【0057】
また、第1の実施形態に係る照明装置1は、上述した駆動条件である、光束発散度[lm/mm2]を縦軸とし、ジャンクション温度Tj[℃]を横軸としたときの光束発散度とジャンクション温度Tjとの関係を示す平面上において、光束発散度=30~210及びジャンクション温度Tj=150~250で囲まれる領域ARで動作させる点に加えて、光源部3の基板33は、銀を有しない無機材をベースとした材料で構成されている。このような構成によれば、高出力で動作させても、発光素子の実装面において銀の凝集による黒化が発生せず、所定の製品寿命(例えば、1000時間や3000時間といった、通常LEDを用いた照明装置において期待されるよりも短い製品寿命)を満たすことができる。すなわち、高出力の動作と所定の製品寿命とを両立することができる。
【0058】
なお、上記した第1の実施形態において、光源部3の光源31としては、COB型の光源に限定されず、例えば、SMD(Surface Mount Device)型の光源でもよい。
【0059】
<第2の実施形態>
例えば、スタジオや劇場等で使用されるような演出用のLED照明装置は、高光束、低消費電力等の特徴から普及が進んでいる。ところが、このような照明装置は、高光束化により光源であるLEDモジュールに投入する電力が増加し、これに伴い発熱量が増加している。発熱量が多いほど、放熱器は大型化し、照明装置そのものが大型化している。
【0060】
ここで、製品寿命を犠牲にすることになるが、小型の放熱器にLEDモジュールを搭載することで、照明装置の小型化、軽量化を図ることが考えられる。ところが、このような照明装置では、搭載するLEDモジュールとして、例えば、一般的なCOBモジュールを使用すると光の色偏差がプラス側(緑色寄り)になるため、すなわち、光が緑がかった色味となるため適切ではなく、色偏差がマイナス側(赤色寄り)のCOBモジュールを使用することがある。しかし、色偏差がマイナス側のCOBモジュールでは、相対的な赤色蛍光体の含有量が多くなるため、小型の放熱器に搭載して高温の動作環境で動作させた場合に寿命が想定よりも短くなってしまうことがある。
【0061】
第2の実施形態に係る照明装置は、LEDモジュールとして色偏差がマイナス側のCOBモジュールを用いて高出力の動作を行っても、所定の製品寿命を満たすことができるものである。
【0062】
以下で説明する第2の実施形態に係る照明装置は、LED等の発光素子が実装される基板に銀を有する点において、上記した第1の実施形態とは異なる。なお、基板は、発光素子の実装面に反射材として銀が蒸着されたアルミニウム等の金属材料で構成される。また、第2の実施形態に係る照明装置は、駆動制御部101(
図3参照)による駆動条件においても、上記した第1の実施形態とは異なる。なお、第2の実施形態に係る照明装置は、基板に銀を有する点以外、構造的な違いはない。このため、第2の実施形態の説明においても、上記した第1の実施形態と同一又は同等の箇所に同一の符号を付す場合がある。
【0063】
<<駆動条件>>
図14を参照して駆動制御部101(
図3参照)が光源部3(
図5等参照)を駆動制御する際の所定の駆動条件について説明する。
図14は、第2の実施形態に係るライフ試験結果を光源のジャンクション温度T
jと光束発散度との関係で示す図であり、第2の実施形態に係る駆動条件を説明するための図である。
【0064】
以下の説明では、
図14において、ライフ試験結果を光源のジャンクション温度T
jと光束発散度との関係で示している。光束維持率の代わりに、光の明るさ(投入電力[W])の影響と、光の強さの影響の双方を反映した指標として、光束を発光面積で除算した値である光束発散度を用いている。これにより、ライフ試験結果を、光の強さと、ジャンクション温度T
jとの関係で検証できる。また、ライフ試験結果を、ジャンクション温度T
jと光束発散度との関係で検証する意図は、発光素子の実装面に反射材として用いられる銀の凝集が、発光素子の発光(明るさ、強さ)と発熱の複合的な要因で起こることが確認されている点に着目したものである。銀の凝集は、上記したように、発光素子の実装面を黒化させ、光の反射率を低下させる原因と考えられている。
【0065】
図14において、横軸は、ライフ試験を行った試験体200のジャンクション温度T
j[℃](発光素子の温度)を示し、縦軸は、光束発散度[lm/mm
2]を示す。光束発散度は、上記したように、光束を発光面積で除算した値である。
【0066】
また、照明装置に搭載する光源31(
図5等参照)であるCOBモジュールは、平均演色評価数が90以上のものを用いる。COBモジュールは、420[nm]以上470[nm]以下(420~470[nm])に発光ピークを有する青色LEDと、490[nm]以上600[nm]以下(490~600[nm])に発光ピークを有する緑色蛍光体と、600[nm]以上750[nm]以下(600~750[nm])に発光ピークを有する赤色蛍光体とで構成される。なお、試験体200(
図13参照)においても、同様のものを用いる。
【0067】
また、可視光領域の分光分布は、420~470[nm]の範囲の青色LEDのピーク強度を1としたときに、490~600[nm]の範囲の緑色領域、及び600~750[nm]の範囲の赤色領域の相対ピーク強度が0.6以下になる。色偏差は0以下である。
【0068】
図14において、点P1~P4は、ライフ試験結果として得られた複数のデータに対応する点である。
図14に示す点P1~P4に対応するデータサンプルでは、ライフ試験の結果、試験体200の基板(発光素子の実装面)の黒化が確認されなかった。
【0069】
また、
図14において、L1で示す直線は、点P1と点P2との2点を結ぶグラフ(直線)である。直線L1は、光束発散度とジャンクション温度T
jとの関係を示す以下の式(1)で表すことができる。
【0070】
光束発散度=-0.1×ジャンクション温度Tj+42・・・(1)
【0071】
図14に示すように、ジャンクション温度T
jが高くなるほど、光束発散度が小さくなく傾向がある。そして、
図14に示すように、点P1~P2に対応するデータサンプルでは、試験体200の基板(発光素子の実装面)の黒化が確認されなかった。ここで、上記したように、基板(発光素子の実装面)は、エネルギーが高いほど、すなわち基板の温度(≒ジャンクション温度T
j)や投入電力(≒光束発散度)が高いほど黒化する。このため、
図14において、基板が黒化しないことが確認された領域よりもエネルギーが低いと考えられる領域、すなわち、点P1~P4のうち、点P1と点P2とを結ぶ直線L1の下側の領域では、基板(発光素子の実装面)の黒化が確認されない領域であると推測できる。言い換えれば、直線L1の下側の領域は、少なくとも1000時間、光束維持率90%を保つことができる領域であると推測できる。
【0072】
ライフ試験結果における、直線L1の左側の領域におけるジャンクション温度T
jと光束発散度との関係に基づいて光源部の駆動条件を設計する。これにより、直線L1の下側の領域で光源部3(
図5等参照)を駆動させることができ、高出力での動作と所定の製品寿命とを両立させることができる。
【0073】
また、光源部3(
図5等参照)を駆動させる駆動条件を、光源部3のジャンクション温度T
jが絶対最大定格ジャンクション温度以下となるように設計してもよい。具体的には、
図14に示す直線L1の下側の領域のうち、直線L2の左側の領域で、光源部3を駆動させるように設計できる。これにより、高出力での動作と所定の製品寿命とを両立させつつ、光源部3の製品保証範囲で光源部を駆動させることができる。なお、
図14において、L2で示す直線は、絶対最大定格ジャンクション温度を示し、例えば、140[℃]である。
【0074】
すなわち、駆動制御部101(
図3参照)による駆動条件は、光束発散度=-0.1×ジャンクション温度T
j+42、絶対最大定格ジャンクション温度をAとした場合、ジャンクション温度T
j<A、0よりも大きい閾値をBとした場合、光束発散度>B、光束発散度<Bにおいて、ジャンクション温度T
j=絶対最大定格ジャンクション温度で囲まれる領域で動作させるために予め設計された条件である。
【0075】
また、発光ピークが420~470[nm]の範囲の青色LEDの光のピーク強度を1としたときに、発光ピークが490~600[nm]の範囲の緑色蛍光体の光のピーク強度と、発光ピークが600~750[nm]の範囲の赤色蛍光体の光のピーク強度が0.6以下である。
【0076】
以上説明したように、第2の実施形態に係る照明装置は、420~470[nm]に発光ピークを有する青色LEDと、490~600[nm]に発光ピークを有する緑色蛍光体と、600~750[nm]に発光ピークを有する赤色蛍光体とを有し、平均演色評価数が90以上、かつ、色偏差が0以下の光を照射する光源部3(
図5等参照)と、光源部3の駆動を所定の駆動条件で制御する駆動制御部101(
図3参照)とを具備し、駆動条件は、光束発散度=-0.1×ジャンクション温度T
j+42、絶対最大定格ジャンクション温度をAとした場合、ジャンクション温度T
j<A、0よりも大きい閾値をBとした場合、光束発散度>B、光束発散度<Bにおいて、ジャンクション温度T
j=絶対最大定格ジャンクション温度で囲まれる領域で動作させるために予め設計された条件である。
【0077】
このような構成によれば、光源部3(
図5等参照)であるLEDモジュールとして色偏差がマイナス側のCOBモジュールを用いて高出力で動作させても、LED等の発光素子の実装面の銀の凝集による黒化を抑えることができ、所定の製品寿命を満たすことができる。すなわち、高出力の動作と所定の製品寿命とを両立することができる。
【0078】
また、第2の実施形態に係る照明装置において、光源部3(
図5等参照)の青色LEDのピーク強度を1としたときに、緑色蛍光体の発光ピーク及び赤色蛍光体のピーク強度が0.6以下である。
【0079】
このような構成によれば、色偏差が0以下の適切なCOBモジュールを用いることができる。
【0080】
なお、上記した第2の実施形態においても、光源部3(
図5等参照)の光源31(
図5等参照)としては、COB型の光源に限定されず、例えば、SMD(Surface Mount Device)型の光源でもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 照明装置
2(2a,2b,2c,2d) ドア部
3 光源部
10 筐体部
31 光源
32 発光部
33 基板
34 ベース部材
35 放熱部材
36 ソケット
100 制御部
101 駆動制御部
102 管理部
110 記憶部
111 照明データ記憶部
AR 領域