(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022175136
(43)【公開日】2022-11-25
(54)【発明の名称】電子基板用ケース及び電子基板用ケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
H05K5/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081325
(22)【出願日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】521205386
【氏名又は名称】TIM合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(72)【発明者】
【氏名】相原 ティム 敬雄
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB03
4E360AB08
4E360BD02
4E360CA02
4E360EA12
4E360EC16
4E360ED07
4E360GA08
4E360GA24
4E360GA26
4E360GA34
4E360GA51
4E360GA53
4E360GB13
4E360GC02
4E360GC08
4E360GC20
(57)【要約】
【課題】熱伝導性又は意匠性を改善することが可能な電子基板用ケース及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電子基板用ケース10は、前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30を含む直方体状である。少なくとも前板20、後ろ板22、上板24、左側板28及び右側板30は石材で形成される。石材は、花崗岩、御影石、大理石、安山岩、閃緑岩、斑レイ岩及び片麻岩のいずれかから選択してもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板、後ろ板、上板、下板、左側板及び右側板を含む直方体状の電子基板用ケースであって、
少なくとも前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記左側板及び前記右側板が石材で形成される
ことを特徴とする電子基板用ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の電子基板用ケースにおいて、
前記石材は、電磁波シールド性を有する鉱物を含む
ことを特徴とする電子基板用ケース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子基板用ケースにおいて、
前記石材は、花崗岩、御影石、大理石、安山岩、閃緑岩、斑レイ岩及び片麻岩のいずれかから選択される
ことを特徴とする電子基板用ケース。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子基板用ケースにおいて、
前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記下板、前記左側板及び前記右側板は、接着剤により互いに接合されている
ことを特徴とする電子基板用ケース。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子基板用ケースにおいて、
前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記下板、前記左側板及び前記右側板のいずれかには、前記電子基板用ケースの内側に突出する矩形状の位置決め用凸部が設けられ、
前記位置決め用凸部の各辺の長さは、前記位置決め用凸部が面する前記電子基板用ケースの内部空間の各辺の長さより短い
ことを特徴とする電子基板用ケース。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子基板用ケースにおいて、
前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記下板、前記左側板及び前記右側板のいずれかには、配線用の孔部が形成されている
ことを特徴とする電子基板用ケース。
【請求項7】
前板、後ろ板、上板、下板、左側板及び右側板を含む直方体状の電子基板用ケースの製造方法であって、
石材を板状に加工して少なくとも前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記左側板及び前記右側板を形成するステップと、
前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記下板、前記左側板及び前記右側板を組み立てて前記電子基板用ケースを形成するステップと
を有することを特徴とする電子基板用ケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオアンプ回路等の電子基板を収納する電子基板用ケース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子基板用ケースとして、電磁波シールド性を考慮して、鉄等の金属製のものが広く用いられている。例えば、特許文献1では、上面及び下面がなくて4つの側壁のみから成る箱状の金属製のケース(1)と、このケース(1)の上面をスッポリ被う底の浅い蓋状の金属製の表カバー(2)と、プリント基板(3)に取り付けられたケース(1)に対してプリント基板(3)を隔てた反対側の位置に取り付けられる底の浅い蓋状の金属製の裏カバー(4)とから基本的に構成される構造が示されている([0008]、
図1)。このような構造により、電磁気的なシールドが可能とされている([0008])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、電子基板を金属製のケース(カバーを含み得る。)内に収納した場合、電磁波の遮蔽が可能である。しかしながら、例えば、熱伝導性又は意匠性の点で改善の余地がある。例えば、金属製ケースは、比較的熱伝導性が高い。そのため、ケース周辺に発熱体が存在すると、ケース内部の電子基板に熱が伝導してしまう可能性がある。また、金属製ケースの場合、重厚感等を与え難くなる。
【0005】
本発明は上記のような課題を考慮してなされたものであり、熱伝導性又は意匠性を改善することが可能な電子基板用ケース及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子基板用ケースは、前板、後ろ板、上板、下板、左側板及び右側板を含む直方体状のものであって、
少なくとも前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記左側板及び前記右側板が石材で形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、直方体状の電子基板用ケースにおいて少なくとも前板、後ろ板、上板、左側板及び右側板が石材で形成される。一般に、石材は、金属と比較して熱伝導性が低い。従って、ケース周辺に発熱体が存在する場合、電子基板を熱から保護することが可能となる。また、例えばオーディオアンプ回路基板(特にハイレゾリューションタイプ)では良い音を出すためには、回路基板が安定して動作する必要がある。本発明では、ケースを石材で構成することにより、回路基板の発した熱を石材が緩やかに吸収するため、回路基板を安定して動作させ易くなる(他の用途の電子基板についても同様である。)。さらに、前板、後ろ板、上板、左側板及び右側板が石材で形成されることにより、金属製ケースと比較した場合、重厚感等の特有な意匠性をもたらすことが可能となる。
【0008】
前記石材は、電磁波シールド性を有する鉱物を含んでもよい。これにより、ケース内部の電子基板に対する電磁シールド性を向上可能となる。
【0009】
前記石材は、花崗岩、御影石、大理石、安山岩、閃緑岩、斑レイ岩及び片麻岩のいずれかから選択されてもよい。これらの石材を用いることで、例えば墓石に用いられるような重厚な外観をもたらすことが可能となる。
【0010】
前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記下板、前記左側板及び前記右側板は、接着剤により互いに接合されてもよい。これにより、電子基板用ケースの組立てが容易となる。
【0011】
前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記下板、前記左側板及び前記右側板のいずれかには、前記電子基板用ケースの内側に突出する矩形状の位置決め用凸部が設けられてもよい。また、前記位置決め用凸部の各辺の長さは、前記位置決め用凸部が面する前記電子基板用ケースの内部空間の各辺の長さより短くてもよい。これにより、電子基板用ケースの組立てが容易となる。
【0012】
前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記下板、前記左側板及び前記右側板のいずれかには、配線用孔部が形成されてもよい。これにより、電子基板の配線の引き回しが容易になる。
【0013】
本発明に係る製造方法は、前板、後ろ板、上板、下板、左側板及び右側板を含む直方体状の電子基板用ケースの製造方法であって、
石材を板状に加工して少なくとも前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記左側板及び前記右側板を形成するステップと、
前記前板、前記後ろ板、前記上板、前記下板、前記左側板及び前記右側板を組み立てて前記電子基板用ケースを形成するステップと
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱伝導性又は意匠性を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子基板用ケースの外観斜視図である。
【
図2】前記実施形態に係る前記電子基板用ケースの分解斜視図である。
【
図3】前記実施形態に係る前記電子基板用ケース及び電子基板を含む電子基板ユニットの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<A.一実施形態>
[A-1.構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電子基板用ケース10の外観斜視図である。
図2は、本実施形態に係る電子基板用ケース10の分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、電子基板用ケース10は、直方体状であり、前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30を有する。電子基板用ケース10の内部に電子基板(図示せず)が配置される。電子基板としては、例えば、オーディオアンプ回路基板(特にハイレゾリューションタイプ)を用いることができる。
【0017】
前板20には、電子基板の端子等を挿入するための配線用孔部40が形成されている。また、
図2に示すように、後ろ板22には位置決め用凸部50が形成されている。凸部50は、矩形状であり、電子基板用ケース10の内側に突出する。凸部50の各辺の長さは、凸部50が面する電子基板用ケース10の内部空間の各辺の長さより若干短い。これにより、組み立てた状態の上板24、下板26、左側板28及び右側板30に対して後ろ板22の位置決めが容易となる。図示していないが、前板20にも凸部50が形成されている。これにより、組み立てた状態の上板24、下板26、左側板28及び右側板30に対して前板20の位置決めが容易となる。
【0018】
前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30のそれぞれは、天然又は人工の石材で形成される。石材は、例えば、花崗岩、御影石、大理石、安山岩、閃緑岩、斑レイ岩及び片麻岩のいずれかから選択される。また、本実施形態の石材は、電磁波シールド性を有する鉱物(鉄、銅、アルミニウム、ニッケル等)を含む。
【0019】
[A-2.製造方法]
次に本実施形態に係る電子基板用ケース10の製造方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る電子基板用ケース10及び電子基板を含む電子基板ユニットの製造方法を示す。
【0020】
ステップS1において、前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30それぞれを形成するために石材を板状に加工する。当該加工には、ダイヤモンドカッター等を用いる。ステップS2において、ダイヤモンドドリル等を用いて前板20に配線用孔部40を形成すると共に、ダイヤモンドカッター等を用いて前板20及び後ろ板22に位置決め用凸部50を形成する。
【0021】
ステップS3において、接着剤を用いて下板26、左側板28、右側板30及び上板24を接合する。接着剤としては、例えば、紫外線硬化樹脂を用いることができる。ステップS4において、接着剤を用いてさらに後ろ板22を接合する。ステップS5において、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30の組立体の内部に電子基板を配置する。ステップS6において、接着剤を用いて組立体に前板20を接合する。その際、前板20の孔部40に電子基板の端子を挿入する。
【0022】
[A-3.本実施形態の効果]
本実施形態によれば、直方体状の電子基板用ケース10において前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30それぞれが石材で形成される。一般に、石材は、金属と比較して熱伝導性が低い。従って、ケース10周辺に発熱体が存在する場合、電子基板を熱から保護することが可能となる。例えばオーディオアンプ回路基板(特にハイレゾリューションタイプ)では良い音を出すためには、回路基板が安定して動作する必要がある。本実施形態では、ケース10を石材で構成することにより、回路基板の発した熱を石材が緩やかに吸収するため、回路基板を安定して動作させ易くなる(他の用途の電子基板についても同様である。)。さらに、また、前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30が石材で形成されることにより、金属製ケースと比較した場合、重厚感等の特有な意匠性をもたらすことが可能となる。
【0023】
本実施形態において、電子基板用ケース10を構成する石材は、電磁波シールド性を有する鉱物(鉄、銅、アルミニウム、ニッケル等)を含む。これにより、ケース10内部の電子基板に対する電磁シールド性を向上可能となる。
【0024】
本実施形態において、電子基板用ケース10を構成する石材は、花崗岩、御影石、大理石、安山岩、閃緑岩、斑レイ岩及び片麻岩のいずれかから選択される。これらの石材を用いることで、墓石に用いられるような重厚な外観をもたらすことが可能となる。
【0025】
本実施形態において、前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30は、接着剤(紫外線硬化樹脂等)により互いに接合されている。これにより、電子基板用ケース10の組立てが容易となる。
【0026】
本実施形態において、前板20及び後ろ板22には、電子基板用ケース10の内側に突出する矩形状の位置決め用凸部50が設けられる(
図2)。位置決め用凸部50の各辺の長さは、凸部50が面する電子基板用ケースの内部空間の各辺の長さより若干短い。これにより、電子基板用ケース10(特に前板20及び後ろ板22)の組立てが容易となる。
【0027】
本実施形態において、前板20には、配線用孔部40が形成されている(
図1)。これにより、電子基板の配線の引き回しが容易になる。
【0028】
<B.変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0029】
<B-1.石材>
上記実施形態では、電子基板用ケース10を構成する全ての板材(すなわち、前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30)を石材で構成した。しかしながら、例えば、電子基板用ケース10の意匠性の観点からすれば、これに限らない。例えば、前板20、後ろ板22、上板24、下板26、左側板28及び右側板30は石材で構成する一方、下板26は、別の素材(例えば金属板)から構成してもよい。
【0030】
上記実施形態では、電子基板用ケース10を構成する各板材を構成する石材は電磁波シールド性を有する鉱物を含んでいた。しかしながら、例えば、意匠性の観点からすれば、これに限らず、石材は、電磁波シールド性を有する鉱物を含まないことも可能である。そのような場合、ケース10の内部において、各板の内面に石材以外の電磁波シールド材(例えば金属製メッシュ、金属製シート又は樹脂製シート)を配置してもよい。
【0031】
<B-2.配線用孔部40>
上記実施形態では、配線用孔部40を前板20に設けた(
図1)。しかしながら、例えば、電子基板の配線を外部に引き回す観点からすれば、配線用孔部40は他の板に設けてもよい。或いは、例えば下板26の幅を前板20及び後ろ板22よりも小さくすることで下板26と左側板28又は右側板30の間に配線用孔部40を設けることも可能である。さらに、ケース10内の電子基板への給電及び信号のやり取りが無線で可能である場合、電子基板用ケース10に配線用孔部40を設けないことも可能である。
【0032】
<B-3.位置決め用凸部50>
上記実施形態では、前板20及び後ろ板22に位置決め用凸部50(
図2)を設けたが、必要に応じて他の板(上板24、下板26、左側板28及び右側板30のいずれか)に設けてもよい。また、例えば、各板を石材で構成する点に着目すれば、位置決め用凸部50は設けなくてもよい。
【0033】
<B-4.製造方法>
上記実施形態では、
図3に示す順番で電子基板用ケース10(又は電子基板ユニット)を組み立てた。しかしながら、例えば、各板を石材で構成する観点からすれば、これに限らず、別の順番で電子基板用ケース10を組み立ててもよい。
【0034】
上記実施形態では、接着剤を用いて各板を接合した。しかしながら、例えば、各板を石材で構成する観点からすれば、これに限らない。例えば、各板に係合部を設け、これらの係合部により各板を接合してもよい。
【0035】
<B-5.その他>
上記実施形態では、電子基板用ケース10は配線用孔部40を除き閉塞していたが(
図1)、他に孔部を形成してもよい。例えば、放熱用孔部を上板24に形成してもよい。或いは、前記放熱用孔部は、上板24の幅を前板20及び後ろ板22よりも小さくすることで上板24と左側板28又は右側板30の間に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…電子基板用ケース 20…前板
22…後ろ板 24…上板
26…下板 28…左側板
30…右側板 40…配線用孔部
50…位置決め用凸部